説明

透明導電体及びこれを用いたタッチパネル

【課題】低い表面電気抵抗値を有し、光線透過率が高く且つ着色が非常に少な透明導電体を提供する。前記透明導電体を用いたタッチパネルを提供する。
【解決手段】透明基材と、前記透明基材の一方の面上の反射低減層と、前記反射低減層上の透明導電層とを有する透明導電体であって、前記透明基材と前記反射低減層との間に、硬化性化合物を含む組成物の硬化物からなる厚みが2000nm以下の第1色相調整層が設けられ、前記透明基材の他方の面上に、硬化性化合物を含む組成物の硬化物からなる厚みが2000nm以下の第2色相調整層が設けられ、全光線透過率が90%以上であり、且つ、JIS Z8729に定められているL* * * 表色系のa* 値が−1〜1の範囲であり、b* 値が−2〜1の範囲である透明導電体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電体、及びこれを用いたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスパネル(有機EL、無機EL)、タッチパネル、エレクトロクロミック素子といった表示装置には、透明電極が用いられている。このような透明電極は、基材と基材上に形成された透明導電層とからなる透明導電体(透明導電性フィルム又はシート、透明導電性ガラス)によって構成されることが多い。また、透明導電体は、透明な電磁波遮蔽膜として用いることもできる。
【0003】
タッチパネル(タッチスイッチ、フラットスイッチとも称される)は、液晶装置などのディスプレイ表面に配置されたタブレット型の情報入力装置であり、携帯電話、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータ、券売機、銀行のATM端末などの電子機器に広く使用されている。
【0004】
タッチパネルには、位置の検出方法によりいくつかの方式が知られている。それらの中でも、抵抗膜方式と静電容量方式がほとんどを占めている。抵抗膜方式のタッチパネルは、一般に、透明導電層を有する一対のパネル板が、前記透明導電層同士が対向するようにスペーサを介して配置されて成るものである。静電容量方式のタッチパネルは、例えば、基板上に設けられる第1の電極と、第1の電極を覆って形成される絶縁膜と、絶縁膜上に前記第1の電極と交差して設けられる第2の電極とを含んで構成されるものである。いずれのタッチパネルにおいても、液晶装置の画像表示領域に表示された指示画像を参照しながら、この指示画像が表示されている箇所に指やタッチペンなどが接触あるいは近接することで、その位置が検出され、指示画像に対応する情報の入力が行えるようになされている。
【0005】
タッチパネルには、液晶ディスプレイの表示画像のコントラストや輝度を低下させないために、光線透過率が高く、且つ液晶ディスプレイの表示画像の色相を変化させないために、着色が少ないことが要求される。このような要求は、近年の液晶ディスプレイ表示、特に携帯電話、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータの液晶ディスプレイ表示の高精細化により、ますます高まっている。
【0006】
例えば、特開2000−301648号公報には、有機高分子基材の少なくとも一方の最表面に透明導電層が積層されてなる透明導電性積層体において、基板側から順に、(A1)屈折率が1.7から透明導電層の屈折率+0.3の範囲にあり膜厚が20〜90nmの層(H1 層)、(B1)屈折率が1.35〜1.5の範囲にあり膜厚が30〜110nmの層(L1 層)、(C)膜厚が12〜30nmの透明導電層が積層されており、
(D)該3層の光学膜厚の和が180〜230nmの範囲であり、
(F)該透明導電層の積層面の波長450〜650nmにおける平均反射率が5.5%以下であって、且つ(G)該積層体の透過光のJIS Z7829に定めるL* * * 表色系のクロマティクネス指数b* 値が0〜2の範囲にある透明導電性積層体が開示されている(請求項1)。また、有機高分子基材の片面もしくは両面に樹脂架橋層からなる保護層が積層されることが開示されている(請求項9)。
【0007】
しかしながら、同号公報によれば、全光線透過率を90%以上とすれば、黄色味を帯びた積層体となり(実施例4,7)、着色をほとんどなくすようにすれば、全光線透過率は90%に満たない積層体となった(実施例1〜3、5〜6、8〜10)ことが示されている。
【0008】
特開2009−283348号公報には、透明プラスチックフィルム基材上に、高屈折率層、低屈折率層及び透明導電層をこの順に積層した透明導電性フィルムであって、高屈折率層は非晶質インジウム−スズ複合酸化物からなる無機薄膜であり、低屈折率層は屈折率が1.30〜1.60の無機薄膜からなり、透明導電層は屈折率が1.80〜2.20の無機薄膜からなり、且つ全光線透過率が90%以上、カラーb値が−2〜2である透明導電性フィルムが開示されている(請求項1)。また、基材と透明導電層との間に、硬化型樹脂を主たる成分とする硬化物層を設けてもよいことが開示されている(段落[0013])。また、透明導電層の形成面とは反対側の基材の面に、硬化型樹脂組成物からなるハードコート層を設けてもよいことが開示されている(段落[0038])。
【0009】
しかしながら、同号公報によれば、透明導電性フィルムの全光線透過率91%が得られたが、カラーa値、及びb値は満足される値ではなく、着色が見られるものであった(実施例1〜4)。
【0010】
特開2010−27567号公報には、透明フィルム基材の一方の面に、前記透明フィルム基材の側から第1透明誘電体層、第2透明誘電体層、第3透明誘電体層及び透明導電層がこの順に形成されている透明導電性フィルムであって、
前記透明フィルム基材の厚みが2〜200μm、屈折率が1.50〜1.70であり、
前記第1透明誘電体層の厚みが110〜400nm、屈折率が1.30〜1.65であり、
前記第2透明誘電体層の厚みが15〜65nm、屈折率が1.80〜2.40であり、
前記第3透明誘電体層の厚みが40〜100nm、屈折率が1.30〜1.65であり、前記透明導電層の厚みが15〜30nm、屈折率が1.75〜2.10である透明導電性フィルムが開示されている(請求項1、2、5)。
【0011】
同号公報によれば、透明導電性フィルムの波長550nmにおける透過率95%が得られたが、着色の程度については言及されていない(実施例1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−301648号公報
【特許文献2】特開2009−283348号公報
【特許文献3】特開2010−27567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のように、光線透過率が高く且つ着色が非常に少ない透明導電性フィルム、特に、高精細化された液晶ディスプレイ表示と組み合わせて用いられ得るタッチパネル用途の透明導電性フィルムの開発が望まれる。
【0014】
本発明の目的は、低い表面電気抵抗値を有し、光線透過率が高く且つ着色が非常に少な透明導電体を提供することにある。また、本発明の目的は、前記透明導電体を用いたタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、基材の両面に色相調整のための薄膜層を設けることによって、上記目的が達成されることを見出した。
【0016】
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1) 透明基材と、前記透明基材の一方の面上の反射低減層と、前記反射低減層上の透明導電層とを有する透明導電体であって、
前記透明基材と前記反射低減層との間に、硬化性化合物を含む組成物の硬化物からなる厚みが2000nm以下の第1色相調整層が設けられ、
前記透明基材の他方の面上に、硬化性化合物を含む組成物の硬化物からなる厚みが2000nm以下の第2色相調整層が設けられ、
全光線透過率が90%以上であり、且つ、
JIS Z7829に定められているL* * * 表色系のa* 値が−1〜1の範囲であり、b* 値が−2〜1の範囲である透明導電体。
【0017】
(2) 前記反射低減層は、前記第1色相調整層上の高屈折率層と、前記高屈折率層上の低屈折率層とを含み、
前記高屈折率層の屈折率は1.70〜1.90であり、厚みは10〜100nmであり、
前記低屈折率層の屈折率は1.30〜1.60であり、厚みは10〜100nmである、上記(1)に記載の透明導電体。
【0018】
(3) 前記第1色相調整層の屈折率は1.40〜前記透明基材の屈折率−0.05の値であり、厚みは200〜2000nmである、上記(1)又は(2)に記載の透明導電体。
【0019】
(4) 前記第2色相調整層の屈折率は1.40〜前記透明基材の屈折率−0.05の値であり、厚みは200〜2000nmである、上記(1)〜(3)のうちのいずれかに記載の透明導電体。
【0020】
(5) 前記第1色相調整層を構成する前記組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から選ばれる、上記(1)〜(4)のうちのいずれかに記載の透明導電体。
【0021】
(6) 前記第2色相調整層を構成する前記組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から選ばれる、上記(1)〜(5)のうちのいずれかに記載の透明導電体。
【0022】
(7) 前記透明基材は、屈折率が1.55〜1.70であり、厚みが10〜200μmである有機樹脂製フィルムである、上記(1)〜(6)のうちのいずれかに記載の透明導電体。
【0023】
(8) 上記(1)〜(7)のうちのいずれかに記載の透明導電体が、透明電極として含まれているタッチパネル。
【0024】
なお、本発明において、「透明導電体」には、透明導電性フィルム又はシート、透明導電性ガラスが含まれる。また、通常は、フィルムにはシートも含まれる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の透明導電体は、上述のように、反射低減層及び透明導電層が設けられる側の透明基材の面に第1色相調整層が設けられ、前記透明基材の他方の面に第2色相調整層が設けられ、全光線透過率が90%以上、a* 値が−1〜1、b* 値が−2〜1とされている。従って、本発明の透明導電体は、全光線透過率が高く且つ着色が非常に少ないという利点を有し、高品位のタッチパネル用途に好適に用いられる。
【0026】
本発明の透明導電体は、タッチパネル用途以外にも、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスパネル(有機EL、無機EL)、エレクトロクロミック素子、電子ペーパーなどの各種表示装置において、透明電極用、帯電防止用、電磁波シールド用として用いることができ、また、アンテナにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の透明導電体の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
(1) :透明基材
(2) :第1色相調整層
(3) :高屈折率層
(4) :低屈折率層
(5) :透明導電層
(6) :第2色相調整層
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1を参照しつつ、本発明の透明導電体について説明する。
【0030】
本発明の透明導電体は、透明基材(1) と、前記透明基材(1) の一方の面上に第1色相調整層(2) 、高屈折率層(3) 、低屈折率層(4) 及び透明導電層(5) をこの順で有し、前記透明基材(1) の他方の面上に第2色相調整層(6) を有している。高屈折率層(3) 及び低屈折率層(4) は反射低減層を構成する。
【0031】
透明基材(1) は、透明導電体の用途に応じて、ガラス板、有機樹脂製フィルム(シートを含む)から選ばれる。本発明における透明とは、可視光を透過することを意味し、透明性は高いことが好ましい。透明基材の全光線透過率は、例えば86%以上であり、90%以上であることが好ましい。後述する反射低減層による反射率低減の効果は4%程度までと考えられる。そのため、透明導電体の全光線透過率を90%以上とするためには、透明基材の全光線透過率は86%以上であることが必要となる。また、光をある程度散乱しても透明の概念に含まれる。光の散乱度合いについては、用途により要求されるレベルが異なり、一般に半透明といわれるような光の散乱のある場合も透明の概念に含まれる。光の散乱度合いは小さい方が望ましい。
【0032】
透明基材として、可撓性有機樹脂フィルムが好適である。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルムが好ましい。
【0033】
透明基材としての可撓性有機樹脂フィルムの厚みは、10〜200μmであることが好ましい。基材としての機械的強度を維持しつつ、導電体としての薄膜化が得られる。また、透明基材の屈折率は1.55〜1.70であることが好ましい。屈折率は、反射分光膜厚計を用いて550nmでの値として求められる。
【0034】
透明基材としての樹脂フィルムは、予め、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理等の表面処理が行われていてもよい。また、樹脂フィルムは、その両面又は片面に易接着層が形成されていてもよい。
【0035】
本発明の透明導電体をタッチパネルに用いる場合に、抵抗膜方式タッチパネルを構成する一対の透明電極パネル板のうちの入力側(表面側)の透明電極パネル板として用いる場合には、指、ペン等の外部入力に対して適度に変形できるように、透明基材としては可撓性有機樹脂フィルムが好適である。一方、本発明の透明導電体を、入力側(表面側)の透明電極パネル板と対向して配置される内部側の透明電極パネル板として用いる場合には、可撓性は要求されず、透明基材として可撓性のないようなガラス板を用いることも好ましい。
【0036】
透明基材(1) の一方の面上に第1色相調整層(2) が設けられる。第1色相調整層(2) は、硬化性化合物を含む組成物の硬化物からなる厚みが2000nm以下の層である。
【0037】
前記硬化性化合物を含む組成物は、熱硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であってよい。
【0038】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、メラミン系樹脂等が挙げられる。
【0039】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の活性エネルギー線反応性基を有する硬化性化合物を含む組成物である。なお、(メタ)アクリロイル基なる表記は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を含む意味である。前記硬化性化合物は、1つの分子内に2つ以上、好ましくは3つ以上の活性エネルギー線反応性基を含む多官能モノマーもしくはオリゴマーを含んでいることが好ましい。
【0040】
前記硬化性化合物は、好ましくはアクリル系モノマーを含んでいる。アクリル系モノマーとしては、具体的には、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。また、ウレタン変性アクリレート、エポキシ変性アクリレート等も挙げられる。
【0041】
また、前記硬化性化合物として、ビニル基を有する化合物を用いてもよい。ビニル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ヒドロキノンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンポリビニルエーテル等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0042】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に、それ自身は反応硬化性を有しないような高分子樹脂成分、例えばアクリル樹脂を含ませてもよい。高分子樹脂成分の添加により該組成物の粘度は高くなる。
【0043】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中には、紫外線により硬化させるために、通常、さらに光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、種々のものを用いることができ、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の公知のものから適宜選択すればよい。例えば、ダロキュア1173、イルガキュア651、イルガキュア184、イルガキュア907(チバスペシャルティケミカルズ社製)、 KAYACURE DETX-S(日本化薬(株)製)が挙げられる。光重合開始剤の量は、前記硬化性化合物の重量に対して、0.01〜20重量%程度、あるいは0.5〜5重量%程度とすればよい。また、光重合開始剤として、アクリル系モノマーに光重合開始剤を加えた公知のものを用いてもよい。アクリル系モノマーに光重合開始剤を加えたものとしては、例えば、紫外線硬化型樹脂SD−318(大日本インキ化学工業(株)製)、XNR5535(長瀬産業(株)製)等が挙げられる。
【0044】
また、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中には、塗膜の強度を高める、屈折率を調整する等のために、有機又は無機の微粒子が含まれていてもよい。有機微粒子としては、例えば、有機シリコン微粒子、架橋アクリル微粒子、架橋ポリスチレンン微粒子等が挙げられる。無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、ジルコニア微粒子、チタニア微粒子、酸化鉄微粒子等が挙げられる。これらのうちでも、シリカ微粒子が好ましい。また、微粒子はその表面がシランカップリング剤で処理され、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の活性エネルギー線反応性基が表面に存在しているものも好ましい。このような反応性微粒子を用いると、活性エネルギー線照射の際に、微粒子同士の反応や、微粒子と多官能モノマーもしくはオリゴマーとの反応が起こり、膜の強度が高くなる。(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤で処理されたシリカ微粒子が好ましい。微粒子の平均粒径としては、第1色相調整層(2) の厚みよりも小さいことが必要であり、透明性を確保するために通常100nm以下、好ましくは20nm以下であり、コロイド溶液製造上の観点から通常5nm以上、好ましくは10nm以上である。有機又は無機の微粒子を用いる場合には、前記硬化性化合物100重量部に対して、例えば5重量部以上500重量部以下程度を用いるとよく、好ましくは20重量部以上200重量部以下を用いるとよい。反応性基修飾シリカ微粒子としては、例えば、特開平9−100111号公報に記載された反応性シリカ粒子があり、本発明において好ましく用いることができる。
【0045】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いると、紫外線等の活性エネルギー線照射によって硬化させることができるので、製造工程上からも好ましい。
【0046】
第1色相調整層(2) は、樹脂組成物の溶液を透明基材(1) の一方の面上に塗布、乾燥し、その後硬化させて形成するとよい。この際の塗布は、公知の方法により行うことができる。例えば、エクストルージョンノズル法、ブレード法、ナイフ法、バーコート法、キスコート法、キスリバース法、グラビアロール法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、カーテン法、スクイズ法などの塗布法によって行うことができる。
【0047】
第1色相調整層(2) の厚みは2000nm以下とする。厚みが2000nmを超えると、該色相調整層の分光透過率曲線におけるピーク(極大、極小)の数が増え、極大値が小さく極小値が大きくなり、極大値と極小値との間の透過率差が小さくなり、色相調整効果が小さくなる。そのため、透明導電体において、JIS Z8729に定められているL* * * 表色系のa* 値、b* 値が所望の範囲から外れやすい。
【0048】
第1色相調整層(2) の厚みは、上限について、好ましくは1200nm以下とし、下限について、好ましくは200nm以上、より好ましくは500nm以上とする。厚みが200nmを下回ると、分光透過率曲線におけるピーク(極大、極小)の数が減り、極大値が大きく極小値が小さくなり、極大値と極小値との間の透過率差が大きくなり、僅かな厚みの違いでピーク波長が変わりやすく色相が顕著に変わるため、色ムラになりやすく、厚みのコントロールが難しい。同じ色調を維持するためには、厳しい厚み精度が要求される。
【0049】
第1色相調整層(2) の屈折率は1.40以上、用いられた透明基材(1) の屈折率−0.05の値(透明基材の屈折率よりも0.05小さい値)以下であることが好ましく、より具体的には、1.40以上1.60以下であることが好ましい。第1色相調整層(2) の屈折率が透明基材(1) の屈折率と同じでは干渉が起きないため、色相調整効果は発現しないので、透明基材の屈折率−0.05の値以下が好ましい。第1色相調整層(2) の屈折率が1.40を下回ると、後述する高屈折率層(好ましい屈折率:1.70〜1.90)との屈折率差が大きくなりすぎ、僅かな厚みの違いで色相が顕著に変わるため、色ムラになりやすい。
【0050】
また、第1色相調整層(2) 及び後述する第2色相調整層(6) は、透明基材フィルム中に含まれる可塑剤やオリゴマー等の低分子量成分のブリードアウトを防ぐ役割も果たす。
【0051】
第1色相調整層(2) 上に、高屈折率層(3) 及び低屈折率層(4) が設けられる。高屈折率層(3) 及び低屈折率層(4) は、光学干渉により、透明導電層(5) 表面の反射率を低減するための層(反射低減層)を構成する。
【0052】
高屈折率層(3) は第1色相調整層(2) と接して設けられ、両者の界面の屈折率差は0.10以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。そのような屈折率差があれば、より高い光学干渉が得られ、透明導電層(5) 表面の反射率の低減が得られやすい。両者の屈折率差が大きくなりすぎると、高屈折率層の厚み制御が厳しくなり、色ムラになりやすいので、厚み制御のし易さの点から、屈折率差は0.5以下が好ましい。
【0053】
このような観点から、高屈折率層の屈折率は1.70〜1.90であることが好ましい。また、高屈折率層の厚みは、反射率低減の観点から、10〜100nmであることが好ましい。
【0054】
低屈折率層(4) の屈折率は、前記高屈折率層の屈折率よりも小さく、1.30〜1.60であることが好ましい。また、低屈折率層の厚みは、反射率低減の観点から、10〜100nmであることが好ましい。
【0055】
高屈折率層(3) と低屈折率層(4) の屈折率差が大きいほど反射低減効果は高くなるが、両層の屈折率差が大きすぎると、両層の厚みの僅かな変化が、色ムラとなりやすい。反射率をもっとも低く(光線透過率を高く)するためには、それぞれの層について、1/4λ=nd(ここで、λ:波長、n:屈折率、d:膜厚)にすると良い。可視光の中心550nmでは、n=1.3として、d=106nmとなる。n=1.9として、d=72nmとなる。このように最適な厚みは屈折率によって異なる。なお、10nmよりも薄いと、膜として形成されないので適当ではない。一方、100nmを超えると、反射低減効果が得られにくくなる。
【0056】
高屈折率層(3) は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などの真空成膜法によって形成することができる。高屈折率層(3) 用材料として、例えば、TiO2 (屈折率:2.35)、ZrO2 (2.05)、CeO2 (2.30)、Nb2 3 (2.15)、Sb2 3 (2.10)、Ta2 5 (2.10)など、及びこれらの混合を用いることができる。( )内の数字は、屈折率を表している。
【0057】
しかしながら、本発明においては、高屈折率層(3) の屈折率1.70〜1.90を得るために、上記の高屈折率材料からなる微粒子が分散された樹脂材料を塗布することにより、高屈折率層(3) を形成することが好ましい。この際の樹脂材料は、第1色相調整層(2) の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として説明したのと同様に、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の活性エネルギー線反応性基を有する硬化性化合物を含む活性エネルギー線硬化性樹脂材料である。また、高屈折率材料微粒子はその表面がシランカップリング剤で処理され、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の活性エネルギー線反応性基が表面に存在しているものであってもよい。このような反応性微粒子を用いると、活性エネルギー線照射の際に、微粒子同士の反応や、微粒子と多官能モノマーもしくはオリゴマーとの反応が起こり、膜の強度が高くなる。高屈折率材料の微粒子は、前記硬化性化合物100重量部に対して、例えば5重量部以上500重量部以下程度を用いるとよく、好ましくは20重量部以上200重量部以下を用いるとよい。高屈折率材料の微粒子の含有量が小さくなるに従い、高屈折率層(3) の屈折率が小さくなる。
【0058】
高屈折率材料の微粒子が分散された樹脂材料として、例えば、TiO2 がアクリル系樹脂中に分散されたTYT80(屈折率:1.80、東洋インキ(株)製)、ZrO2 がアクリル系樹脂中に分散されたTYZ74(屈折率:1.74、東洋インキ(株)製)等が挙げられ、好適に用いることができる。
【0059】
第1色相調整層(2) 上に、高屈折率材料の微粒子が分散された樹脂材料を塗布、乾燥し、その後、紫外線照射を行い硬化させ、高屈折率層(3) を形成する。この際の塗布は、公知の方法により行うことができる。例えば、エクストルージョンノズル法、ブレード法、ナイフ法、バーコート法、キスコート法、キスリバース法、グラビアロール法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、カーテン法、スクイズ法などの塗布法によって行うことができる。この塗布法は、スパッタリング法などの真空成膜法よりも製造コストの観点からも利点がある。
【0060】
低屈折率層(4) は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などの真空成膜法によって形成することができる。低屈折率層(4) 用材料として、例えば、SiO2 (屈折率:1.46)、NaF(1.30)、Na3 AlF6 (1.35)、LiF(1.36)、MgF2 (1.38)、CaF2 (1.40)、BaF2 (1.30)、LaF3 (1.55)など、及びこれらの混合を用いることができる。( )内の数字は、屈折率を表している。
【0061】
あるいは、屈折率1.30〜1.60の範囲のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂などの樹脂を用いて、高屈折率層(3) 上に塗布、乾燥することにより、低屈折率層(4) を形成してもよい。
【0062】
低屈折率層(4) 上に、透明導電層(5) が設けられる。透明導電層(5) は、金属(又は半金属)の酸化物からなる薄膜である。例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、インジウム−錫複合酸化物、錫−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物などが挙げられる。これらのうち、インジウム−錫複合酸化物が好ましい。透明導電層(5) は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などの真空成膜法によって形成することができる。
【0063】
透明導電層(5) の厚みは、抵抗値と光線透過率の観点から、10〜50nmとすることが好ましい。透明導電層(5) の屈折率は、1.80〜2.20とすることが好ましい。厚みが10nm未満であると、膜として形成されない場合が多く、安定した抵抗値が得られにくい。一方、厚みが50nmを超えると、反射低減層の効果のみで透明導電体の全光線透過率90%以上を確保することが難しくなる。
【0064】
本発明において、透明導電層(5) の表面抵抗値は、用途にもよるが、300Ω/□(すなわち、Ω/sq.)以下が好ましい。表面抵抗値は小さい方が良いので、下限は特に定められることはないが、50Ω/□程度である。
【0065】
透明基材(1) の他方の面上に第2色相調整層(6) が設けられる。第2色相調整層(6) は、硬化性化合物を含む組成物の硬化物からなる厚みが2000nm以下の層である。
【0066】
前記硬化性化合物を含む組成物は、熱硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であってよい。
【0067】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、メラミン系樹脂等が挙げられる。
【0068】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、第1色相調整層(2) の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として説明したのと同様に、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の活性エネルギー線反応性基を有する硬化性化合物を含む組成物である。
【0069】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中には、第1色相調整層(2) の場合と同様に、紫外線により硬化させるために、通常、さらに光重合開始剤が含まれる。また、第1色相調整層(2) の場合と同様に、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中には、塗膜の強度を高める、屈折率を調整する等のために、有機又は無機の微粒子が含まれていてもよい。
【0070】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いると、紫外線等の活性エネルギー線照射によって硬化させることができるので、製造工程上からも好ましい。
【0071】
第2色相調整層(6) は、樹脂組成物の溶液を透明基材(1) の他方の面上に塗布、乾燥し、その後硬化させて形成するとよい。この際の塗布は、公知の方法により行うことができる。例えば、エクストルージョンノズル法、ブレード法、ナイフ法、バーコート法、キスコート法、キスリバース法、グラビアロール法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、カーテン法、スクイズ法などの塗布法によって行うことができる。
【0072】
第2色相調整層(6) の厚みは2000nm以下とする。厚みが2000nmを超えると、該色相調整層の分光透過率曲線におけるピーク(極大、極小)の数が増え、極大値が小さく極小値が大きくなり、極大値と極小値との間の透過率差が小さくなり、色相調整効果が小さくなる。そのため、透明導電体において、JIS Z8729に定められているL* * * 表色系のa* 値、b* 値が所望の範囲から外れやすい。
【0073】
第2色相調整層(6) の厚みは、上限について、好ましくは1200nm以下とし、下限について、好ましくは200nm以上、より好ましくは500nm以上とする。厚みが200nmを下回ると、分光透過率曲線におけるピーク(極大、極小)の数が減り、極大値が大きく極小値が小さくなり、極大値と極小値との間の透過率差が大きくなり、僅かな厚みの違いでピーク波長が変わりやすく色相が顕著に変わるため、色ムラになりやすく、厚みのコントロールが難しい。同じ色調を維持するためには、厳しい厚み精度が要求される。
【0074】
第2色相調整層(6) の屈折率は1.40以上、用いられた透明基材(1) の屈折率−0.05の値(透明基材の屈折率よりも0.05小さい値)以下であることが好ましく、より具体的には、1.40以上1.60以下であることが好ましい。第2色相調整層(6) の屈折率が透明基材(1) の屈折率と同じでは干渉が起きないため、色相調整効果は発現しないので、透明基材の屈折率−0.05の値以下が好ましい。第2色相調整層(6) の屈折率が1.40を下回っても、特に問題はないが、第1色相調整層(2) と同じ塗料を使用すると、塗料調製の工程数が省けるので製造工程上好ましい。また、1.40未満の屈折率を有するフッ素系材料(屈折率:1.33)を使用するためには、その後の工程での真空装置は使用できず(有毒ガスが発生するため)、大気圧CVD装置を使用するなど、工程が制限される可能性がある。
【0075】
本発明の透明導電体は、全光線透過率が90%以上であり、且つ、JIS Z8729に定められているL* * * 表色系のa* 値が−1〜1の範囲であり、b* 値が−2〜1の範囲である。a* 、b* は色の方向を示している。プラスのa* は赤方向、マイナスのa* は緑方向を示し、プラスのb* は黄方向、マイナスのb* は青方向を示している。従って、a* 値が0に近い値ほど、赤の色味も緑の色味も少ないことを意味する。b* 値が0に近い値ほど、黄の色味も青の色味も少ないことを意味する。本発明の透明導電体は、a* 値が−1〜1の範囲であり、b* 値が−2〜1の範囲であるので、着色は非常に少なく、そして、全光線透過率が90%以上であるので、無色透明からやや青いものである。
【0076】
* 値をよりプラス側にしたい場合には、JIS Z8701に記載されている赤のピーク波長660nm近傍の透過率を上げる、あるいは、緑のピーク波長550nm近傍の透過率を下げるとよい。a* 値をよりマイナス側にしたい場合には、上記と逆である。
【0077】
* 値をよりマイナス側にしたい場合には、JIS Z8701に記載されている緑のヒーク波長550nm近傍と赤のピーク波長660nm近傍の透過率を下げる、あるいは、青のピーク波長450nm近傍の透過率を上げるとよい。b* 値をよりプラス側にしたい場合には、上記と逆である。
【0078】
透明導電層にITOを用いると、青のピーク波長450nm近傍の反射が強くなり、青みが失われ、黄色になりやすい。嗜好的なものではあるが黄色のものは嫌われやすく、無色から青みのものが好まれる。よって、本発明の第1色目調整層及び第2色目調整層の少なくとも一方のピーク波長を400〜500nm近傍、もしくは700〜800nm近傍に調整すると、分光透過率曲線のピークが450nm近傍に発現するので、青味を出しやすく、無色を出しやすい。
【実施例】
【0079】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
[実施例1]
図1に示すように、透明基材(1) と、前記透明基材(1) の一方の面上に第1色相調整層(2) 、高屈折率層(3) 、低屈折率層(4) 及び透明導電層(5) をこの順で有し、前記透明基材(1) の他方の面上に第2色相調整層(6) を有する透明導電体フィルムを次のように作製した。
【0081】
(透明基材)
100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、A4300、両面に易接着層を有する)を透明基材(1) として用いた。このPETフィルムの全光線透過率は92%、ヘイズは1%、屈折率は550nmにて1.65であった。屈折率は、反射分光膜厚計FE−3000(大塚電子社製)で測定した。
【0082】
(第1色相調整層用塗料、及び第2色相調整層用塗料)
メタクリロイル基修飾コロイダルシリカ(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、不揮発分:40重量%、平均粒径10〜20nm) 100重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 48重量部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 12重量部
光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 2.5重量部
【0083】
上記配合の組成物を、溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMA)で希釈・混合・分散し、不揮発分濃度NV:25.5重量%に調整した。得られたアクリル塗料を、第1色相調整層用塗料、及び第2色相調整層用塗料として用いた。
【0084】
(高屈折率層用塗料)
TiO2 含有インクTYT80(屈折率:1.80、東洋インキ(株)製)を溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMA)で希釈し、不揮発分濃度NV:2.6重量%に調整した。得られた高屈折率インクを、高屈折率層用塗料として用いた。
【0085】
PETフィルム基材(1) をロールから繰り出し、フィルム(1) の一面上に、上記アクリル塗料をキスリバース方式でオンライン膜厚計(MultiPointOpticalGage:光学式膜厚計、浜松ホトニクス社製)を用いて380nmの乾燥膜厚となるように塗布し、塗布膜を形成した。続いて、80℃に設定した熱風乾燥炉において溶剤を除去し、その後、UV処理装置で積算光量400mJ/cm2 の紫外線を照射して硬化させ、ロール状に巻き取った。このようにして、第1色相調整層(2) を形成した。
【0086】
次に、PETフィルム基材をロールから繰り出し、フィルム(1) の他面上に、上記アクリル塗料をキスリバース方式でオンライン膜厚計(MultiPointOpticalGage )を用いて550nmの乾燥膜厚となるように塗布し、塗布膜を形成した。続いて、80℃に設定した熱風乾燥炉において溶剤を除去し、その後、UV処理装置で積算光量400mJ/cm2 の紫外線を照射して硬化させ、ロール状に巻き取った。このようにして、第2色相調整層(6) を形成した。
【0087】
次に、PETフィルム基材をロールから繰り出し、第1色相調整層(2) 面上に、上記高屈折率インクをキスリバース方式でオンライン膜厚計(MultiPointOpticalGage )を用いて50nmの乾燥膜厚となるようにロールトゥロール方式で塗布し、塗布膜を形成した。続いて、80℃に設定した熱風乾燥炉において溶剤を除去し、その後、UV処理装置で積算光量400mJ/cm2 の紫外線を照射して硬化させ、ロール状に巻き取った。このようにして、高屈折率層(3) を形成した。なお、オンライン膜厚計の値は、SEM断面測定値から検量線を作成して算出したものであり、成膜後のSEM断面測定値ともほぼ一致した。
【0088】
次に、高屈折率層(3) 面上に、Si(Bドープ)をターゲットに用いて、アルゴンガス82%と酸素ガス18%とからなる0.5Paの雰囲気中で、反応性スパッタリング法で、SiO2 からなる47nm厚の低屈折率層(4) を成膜し、続いて、In2 3 −5wt%SnO2 をターゲットに用いて、アルゴンガス98%と酸素ガス2%とからなる0.5Paの雰囲気中で、反応性スパッタリング法で、酸化インジウムと酸化スズとの複合酸化物からなる27nm厚の透明導電層(5) を成膜した。成膜後、熱風循環オーブンDN64(ヤマト科学社製)を用いて、140℃、30分間の加熱処理を行い、結晶化させた。このようにして、透明導電体フィルムを作製した。層の厚みは、SEM断面測定値から検量線を作成して、成膜速度で算出した。算出された層の厚みは、成膜後のSEM断面測定値ともほぼ一致した。
【0089】
[実施例2〜6、比較例1〜6]
第2色相調整層(6) 、第1色相調整層(2) 、高屈折率層(3) 、低屈折率層(4) 、及び透明導電層(5) の厚みをそれぞれ表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、透明導電体フィルムを得た。なお、比較例1、2において、層の厚み0と表示されているのは、その層を形成していないことを意味する。
【0090】
[評価]
1.全光線透過率、ヘイズ
ヘイズメーターNDH5000(日本電色工業社製)を用いて全光線透過率(%)、ヘイズを測定した。
【0091】
2.色相a* 値、b*
分光色差計CM−5(コニカミノルタ社製)を用いて測定し、a* 値、b* 値を求めた。(D65光源 透過条件 視野角10度)
【0092】
3.表面抵抗値
Loresta−GP(MCP−T600、三菱化学社製)を用いて4端子法にて表面抵抗値(Ω/sq.)を測定した。
【0093】
以上の結果を表1に示す。実施例1〜6の透明導電体フィルムは、いずれも、91%以上の高い全光線透過率を有し、且つ、a* 値、b* 値からも分かるように、着色が目視にも認められず、非常に優れていた。
【0094】
一方、比較例1、3〜6の透明導電体フィルムは、a* 値及び/又はb* 値からも分かるように、着色が認められた。また、比較例1では、第1及び第2色相調整層が形成されておらず、比較例2では、第2色相調整層が形成されていなかったために、PETフィルム基材中の可塑剤等の成分がブリードアウトして白化が認められた。
【0095】
【表1】

【0096】
[実施例8〜15、比較例7〜9]
(第1色相調整層用塗料、及び第2色相調整層用塗料)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 80重量部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 20重量部
光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 3重量部
【0097】
上記配合の組成物を、溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMA)で希釈・混合・分散し、不揮発分濃度NV:25.5重量%に調整した。得られたアクリル塗料を、第1色相調整層用塗料、及び第2色相調整層用塗料として用いた。
【0098】
(高屈折率層用塗料)
ZrO2 含有インクTYZ74(屈折率:1.74、東洋インキ(株)製を溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMA)で希釈し、不揮発分濃度NV:2.6重量%に調整した。得られた高屈折率インクを、高屈折率層用塗料として用いた。
【0099】
第1色相調整層用塗料、第2色相調整層用塗料、及び高屈折率層用塗料として上記のものを用いて、第2色相調整層(6) 、第1色相調整層(2) 、高屈折率層(3) 、低屈折率層(4) 、及び透明導電層(5) の厚みをそれぞれ表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、透明導電体フィルムを得た。
【0100】
以上の結果を表2に示す。実施例9〜15の透明導電体フィルムは、いずれも、91%以上の高い全光線透過率を有し、且つ、a* 値、b* 値からも分かるように、着色が目視にも認められず、非常に優れていた。
【0101】
一方、比較例7〜9の透明導電体フィルムは、a* 値及び/又はb* 値からも分かるように、着色が認められた。
【0102】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、前記透明基材の一方の面上の反射低減層と、前記反射低減層上の透明導電層とを有する透明導電体であって、
前記透明基材と前記反射低減層との間に、硬化性化合物を含む組成物の硬化物からなる厚みが2000nm以下の第1色相調整層が設けられ、
前記透明基材の他方の面上に、硬化性化合物を含む組成物の硬化物からなる厚みが2000nm以下の第2色相調整層が設けられ、
全光線透過率が90%以上であり、且つ、
JIS Z8729に定められているL* * * 表色系のa* 値が−1〜1の範囲であり、b* 値が−2〜1の範囲である透明導電体。
【請求項2】
前記反射低減層は、前記第1色相調整層上の高屈折率層と、前記高屈折率層上の低屈折率層とを含み、
前記高屈折率層の屈折率は1.70〜1.90であり、厚みは10〜100nmであり、
前記低屈折率層の屈折率は1.30〜1.60であり、厚みは10〜100nmである、請求項1に記載の透明導電体。
【請求項3】
前記第1色相調整層の屈折率は1.40〜前記透明基材の屈折率−0.05の値であり、厚みは200〜2000nmである、請求項1又は2に記載の透明導電体。
【請求項4】
前記第2色相調整層の屈折率は1.40〜前記透明基材の屈折率−0.05の値であり、厚みは200〜2000nmである、請求項1〜3のうちのいずれかの記載の透明導電体。
【請求項5】
前記第1色相調整層を構成する前記組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から選ばれる、請求項1〜4のうちのいずれかに記載の透明導電体。
【請求項6】
前記第2色相調整層を構成する前記組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物から選ばれる、請求項1〜5のうちのいずれかに記載の透明導電体。
【請求項7】
前記透明基材は、屈折率が1.55〜1.70であり、厚みが10〜200μmである有機樹脂製フィルムである、請求項1〜6のうちのいずれかに記載の透明導電体。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれかに記載の透明導電体が、透明電極として含まれているタッチパネル。

【図1】
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【公開番号】特開2012−20425(P2012−20425A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158324(P2010−158324)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】