説明

透明導電性フィルム、透明導電性積層体及びタッチパネル

【課題】電磁波を遮蔽できる透明導電性フィルムと、これを用いた透明導電性積層体及びタッチパネルを提供する。
【解決手段】透明フィルム基材(1)の片面に、透明フィルム基材(1)側から、第1透明導電性薄膜(2)、透明絶縁層(3)及び第2透明導電性薄膜(4)がこの順に形成された透明導電性フィルム(10)であって、第1透明導電性薄膜(2)における透明絶縁層(3)側の面の一部が露出している透明導電性フィルム(10)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルムと、これを用いた透明導電性積層体及びタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電性部材としては、ガラス上に酸化インジウム薄膜を形成した、いわゆる導電性ガラスがよく知られているが、導電性ガラスは基材がガラスであるために可撓性、加工性に劣り、用途によっては好ましくない場合がある。そのため、近年では可撓性、加工性に加えて、耐衝撃性に優れ、軽量であるなどの利点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムをはじめとする各種のプラスチックフィルムを基材とした透明導電性フィルムが使用されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、タッチパネル用の透明導電性フィルムとして、透明フィルム基材の一方の面に、当該透明フィルム基材側から第1透明誘電体薄膜、第2透明誘電体薄膜及び透明導電性薄膜がこの順に形成されている透明導電性フィルムが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−346878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のタッチパネル用透明導電性フィルムを液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイと組み合わせて使用すると、ディスプレイから発せられる電磁波によって、透明導電性フィルム上のタッチ位置を正確に検知できなくなるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電磁波を遮蔽できる透明導電性フィルムと、これを用いた透明導電性積層体及びタッチパネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の透明導電性フィルムは、透明フィルム基材の片面に、当該透明フィルム基材側から、第1透明導電性薄膜、透明絶縁層及び第2透明導電性薄膜がこの順に形成された透明導電性フィルムであって、前記第1透明導電性薄膜における前記透明絶縁層側の面の一部が露出している透明導電性フィルムである。
【0008】
本発明の透明導電性フィルムによれば、第1透明導電性薄膜の露出部分に接地端子を設けることができるため、当該接地端子を介して接地することにより、ディスプレイ等から発せられる電磁波を容易に遮蔽できる。これにより、位置検出の精度を向上させることができる。
【0009】
前記第1透明導電性薄膜の露出部分は、前記透明絶縁層側の面の周縁部の少なくとも一部に設けられていることが好ましい。接地端子を容易に設けることができるからである。
【0010】
前記第1透明導電性薄膜は、表面抵抗が1×10Ω/□以下であることが好ましい。電磁波の遮蔽効果がより有効に発揮されるからである。なお、上記「表面抵抗」とは、二端子法を用いて測定された、第1透明導電性薄膜の表面電気抵抗をさす。
【0011】
前記第2透明導電性薄膜は、パターン化されていることが好ましい。位置検出の精度を向上させることができるからである。
【0012】
前記透明絶縁層は、厚みが100nm以上であることが好ましい。第1透明導電性薄膜と第2透明導電性薄膜との導通を確実に防止できるため、電磁波の遮蔽効果がより有効に発揮されるからである。
【0013】
前記透明フィルム基材は、厚みが2〜200μmであることが好ましい。機械的強度を確保した上で、フィルムの薄膜化が容易となるからである。
【0014】
前記透明絶縁層は、耐酸性を有し、かつアルカリでエッチングされる材料により形成されていることが好ましい。第2透明導電性薄膜を酸でエッチングしてパターン化する場合、透明絶縁層が耐酸性を有していると、上記エッチング時に透明絶縁層の損傷を防ぐことができる。また、透明絶縁層がアルカリでエッチングされる材料により形成されていると、透明絶縁層の一部をエッチングすることにより、第1透明導電性薄膜に上記露出部分を形成することができる。このような材料としては、無機物等が例示できる。透明絶縁層に無機物を使用すると、光劣化を防ぐことができるため、透明導電性フィルムの耐久性を向上させることもできる。この場合、前記無機物がSiOであることが好ましい。SiOは安価で入手しやすい上、耐酸性が高いため、第2透明導電性薄膜を酸でエッチングしてパターン化する場合、上記エッチング時に透明絶縁層の損傷を確実に防ぐことができる。
【0015】
本発明の透明導電性フィルムは、前記透明フィルム基材における前記第1透明導電性薄膜とは反対側の面に設けられた透明基体を更に含んでいてもよい。フィルムの機械的強度が向上し、特にカールなどの発生を防止できるからである。
【0016】
本発明の透明導電性積層体は、上述した本発明の透明導電性フィルムと、少なくとも1枚の透明導電性フィルムとが、透明粘着剤層を介して積層されている透明導電性積層体であって、前記透明導電性積層体の少なくとも一方の面に透明導電性薄膜が配置されている透明導電性積層体である。この構成によれば、上述した本発明の透明導電性フィルムと同様の効果が得られる上、静電容量方式のタッチパネルに適用した場合、ディスプレイから発せられる電磁波に起因するノイズを低減させ、位置検出の精度を向上させることができる。
【0017】
本発明のタッチパネルは、上述した本発明の透明導電性フィルム、又は上述した本発明の透明導電性積層体を備えたタッチパネルである。本発明のタッチパネルによれば、上述した本発明の透明導電性フィルムや透明導電性積層体の効果と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る透明導電性フィルムの断面図である。図1に示すように、透明導電性フィルム10は、透明フィルム基材1と、この透明フィルム基材1の片面に順次形成された、第1透明導電性薄膜2、透明絶縁層3及び第2透明導電性薄膜4とを含む。また、第2透明導電性薄膜4はパターン化されている。なお、本実施形態では、パターン化された第2透明導電性薄膜4を用いているが、本発明では、第2透明導電性薄膜4はパターン化されていなくてもよい。また、本実施形態では、単層の透明絶縁層を使用しているが、本発明では、複数の透明絶縁性薄膜が積層された透明絶縁層を使用してもよい。
【0020】
そして、透明導電性フィルム10では、第1透明導電性薄膜2における透明絶縁層3側の面の一部が露出している。これにより、第1透明導電性薄膜2の露出部分21に接地端子240(後述する図5参照)を設けることができるため、当該接地端子240を介して接地することにより、ディスプレイ等から発せられる電磁波を容易に遮蔽できる。露出部分21は、本実施形態のように、透明絶縁層3側の面の周縁部の少なくとも一部に設けられていることが好ましい。接地端子240を容易に設けることができるからである。なお、露出部分21の面積は、接地端子240を設けることができる限り、特に限定されないが、例えば0.1mm〜1cm程度である。
【0021】
透明フィルム基材1としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。例えば、その材料として、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂である。
【0022】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載の高分子フィルムを使用することもできる。例えば、側鎖に置換及び/又は非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換及び/又は非置換フェニル並びにニトリル基を有する熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物が例示できる。具体的には、イソブチレン及びN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物の高分子フィルムを用いることもできる。
【0023】
透明フィルム基材1の厚みは、2〜200μmの範囲内であることが好ましく、2〜100μmの範囲内であることがより好ましい。この範囲内であれば、機械的強度を確保した上で、フィルムの薄膜化が容易となるからである。
【0024】
透明フィルム基材1は、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられる第1透明導電性薄膜2の透明フィルム基材1に対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、第1透明導電性薄膜2を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0025】
第1透明導電性薄膜2の構成材料としては、電磁波を遮蔽できる材料である限り特に限定されず、例えばインジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム及びタングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属(又は半金属)の酸化物が用いられる。当該酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子や、その酸化物が添加されていてもよい。例えば酸化スズを含有する酸化インジウムや、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられる。
【0026】
第1透明導電性薄膜2の表面抵抗は、1×10Ω/□以下であることが好ましく、1×10Ω/□以下であることがより好ましい。電磁波の遮蔽効果がより有効に発揮されるからである。
【0027】
透明絶縁層3は、無機物や有機物、又は無機物と有機物との混合物により形成することができる。例えば、無機物として、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF3(1.63)、Al23(1.63)などの無機物〔上記各材料の括弧内の数値は光の屈折率である。〕があげられる。これらのなかでも、SiO2、MgF2、A123などが好ましく用いられる。また、上記の他、酸化インジウム及び酸化セリウムを少なくとも含む複合酸化物を用いることもできる。また有機物としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などがあげられる。
【0028】
透明絶縁層3は、耐酸性を有し、かつアルカリでエッチングされる材料により形成されていることが好ましい。後述するように第2透明導電性薄膜4を酸でエッチングしてパターン化する場合、透明絶縁層3が耐酸性を有していると、上記エッチング時に透明絶縁層3の損傷を防ぐことができる。また、透明絶縁層3がアルカリでエッチングされる材料により形成されていると、透明絶縁層3の一部をエッチングすることにより、第1透明導電性薄膜2に露出部分21を形成することができる。このような材料としては、上記列挙した無機物等が例示できる。また、透明絶縁層3に無機物を使用すると、光劣化を防ぐことができるため、透明導電性フィルム10の耐久性を向上させることもできる。この場合、上記無機物がSiOであることが好ましい。SiOは安価で入手しやすい上、耐酸性が高いため、第2透明導電性薄膜4を酸によりエッチングしてパターン化する場合は、透明絶縁層3の損傷を確実に防ぐことができる。
【0029】
透明絶縁層3は、第1透明導電性薄膜2と第2透明導電性薄膜4との間に設けられるものであり、導電層としての機能を有しないものである。即ち、透明絶縁層3は、第1透明導電性薄膜2と第2透明導電性薄膜4との間の絶縁性、及び第2透明導電性薄膜4のパターン間の絶縁性を確保するために設けられる。従って、透明絶縁層3は、表面抵抗が、例えば1×106Ω/□以上であり、好ましくは1×107Ω/□以上、さらに好ましくは1×108Ω/□以上である。なお、透明絶縁層3の表面抵抗の上限は特にない。一般的には、透明絶縁層3の表面抵抗の上限は測定限界である1×1013Ω/□程度であるが、1×1013Ω/□を超えるものであってもよい。
【0030】
第2透明導電性薄膜4の構成材料としては、特に限定されず、例えば上述した第1透明導電性薄膜2と同様の材料が使用できる。特に、第2透明導電性薄膜4を酸によりエッチングする場合は、酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズ等を好適に用いることができる。
【0031】
第1透明導電性薄膜2の厚みは、5〜200nmが好ましく、10〜180nmがより好ましい。また、第2透明導電性薄膜4の厚みは、5〜40nmが好ましく、10〜40nmがより好ましい。各層が前記範囲内であれば、連続被膜を容易に形成でき、かつ透明性を確保できる。
【0032】
透明絶縁層3の厚みは、第1透明導電性薄膜2と第2透明導電性薄膜4との導通を確実に防止して、電磁波の遮蔽効果をより有効に発揮させるには、100nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがより好ましい。
【0033】
第1透明導電性薄膜2の屈折率は、1.8〜2.4が好ましく、1.8〜2.3がより好ましい。透明絶縁層3の屈折率は、1.35〜2.0が好ましく、1.35〜1.9がより好ましい。第2透明導電性薄膜4の屈折率は、1.8〜2.4が好ましく、1.8〜2.3がより好ましい。各層の屈折率が前記範囲内であれば、第2透明導電性薄膜4のパターン部とパターン開口部の直下との間の反射率差を低減し、見栄えの良好な透明導電性フィルム10とすることができる。
【0034】
透明導電性フィルム10の製造方法としては、例えば、透明フィルム基材1の片面に、透明フィルム基材1側から、第1透明導電性薄膜2、透明絶縁層3及び第2透明導電性薄膜4をこの順に形成する工程と、第2透明導電性薄膜4を酸によりエッチングしてパターン化する工程と、透明絶縁層3をアルカリによりエッチングして第1透明導電性薄膜2に露出部分21を形成する工程とを有する方法が例示できる。
【0035】
第1透明導電性薄膜2、透明絶縁層3及び第2透明導電性薄膜4の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられ、材料の種類および必要とする厚みに応じて適宜の方法を採用することができるが、これらのなかでもスパッタリング法が一般的である。なお、透明絶縁層3の形成方法については、塗工法などを採用することもできる。
【0036】
第2透明導電性薄膜4のエッチングに際しては、パターンを形成するためのマスクにより第2透明導電性薄膜4を覆って、酸により第2透明導電性薄膜4をエッチングすればよい。この際、上述した露出部分21の上方部分(即ち、第2透明導電性薄膜4の周縁部の一部)についてもエッチングされるように、マスクのパターンを設計しておけばよい。上記酸としては、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液が挙げられる。
【0037】
第2透明導電性薄膜4のパターンの態様については、特に限定されず、透明導電性フィルム10が適用される用途に応じて、ストライプ状等の各種のパターンを形成することができる。
【0038】
続いて、透明絶縁層3の周縁部の一部のみが露出するように、第2透明導電性薄膜4の上方にマスクを配置し、透明絶縁層3の周縁部の一部(露出部分21の上方部分)をアルカリによりエッチングする。使用できるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水溶液、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
なお、透明絶縁層3の周縁部の一部をエッチングした後、必要に応じて、パターン化された第2透明導電性薄膜4を熱処理してもよい。第2透明導電性薄膜4の構成成分が結晶化されるため、透明性及び導電性を向上させることができるからである。この際の加熱温度は、例えば100〜150℃の範囲内であり、処理時間は、例えば10〜180分の範囲内である。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る透明導電性フィルムについて説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係る透明導電性フィルムの断面図である。図2に示すように、透明導電性フィルム30は、上述した透明導電性フィルム10の透明フィルム基材1の図中下面に透明粘着剤層5を介してセパレータSが設けられている。
【0041】
透明粘着剤層5の構成材料としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0042】
また、透明粘着剤層5は、通常、ベースポリマー又はその組成物を溶剤に溶解又は分散させた粘着剤溶液(固形分濃度が10〜50重量%程度)から形成される。前記溶剤としては、トルエン、酢酸エチル等の有機溶剤や水等の粘着剤の種類に応じたものを適宜に選択して用いることができる。
【0043】
透明導電性フィルム30にはセパレータSが設けられているため、このセパレータSを剥がして、接着させる面に透明粘着剤層5を転写させることができる。その様なセパレータSとしては、例えば、透明粘着剤層5側に移行防止層及び/又は離型層が積層されたポリエステルフィルム等を用いるのが好ましい。
【0044】
前記セパレータSの総厚みは、30μm以上であることが好ましく、60〜100μmの範囲内であることがより好ましい。透明粘着剤層5にセパレータSを設けた後、ロール状態にて保管する場合に、ロール間に入り込んだ異物等により発生することが想定される透明粘着剤層5の変形(打痕)を抑制する為である。
【0045】
前記移行防止層としては、ポリエステルフィルム中の移行成分、特に、ポリエステルの低分子量オリゴマー成分の移行を防止する為の適宜な材料にて形成することができる。移行防止層の形成材料として、無機物若しくは有機物、又はそれらの複合材料を用いることができる。移行防止層の厚みは、0.01〜20μmの範囲で適宜に設定することができる。移行防止層の形成方法としては特に限定されず、例えば、塗工法、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法などが用いられる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法等も用いることができる。
【0046】
前記離型層としては、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の適宜な剥離剤からなるものにて形成することができる。離型層の厚みは、離型効果の点から適宜に設定することができる。一般には、柔軟性等の取り扱い性の点から、該厚みは20μm以下であることが好ましく、0.01〜10μmの範囲内であることがより好ましく、0.1〜5μmの範囲内であることが特に好ましい。離型層の形成方法としては特に制限されず、前記移行防止層の形成方法と同様の方法を採用することができる。
【0047】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る透明導電性フィルムについて説明する。図3は、本発明の第3実施形態に係る透明導電性フィルムの断面図である。図3に示すように、透明導電性フィルム50は、上述した透明導電性フィルム10の透明フィルム基材1の図中下面(即ち、透明フィルム基材1における第1透明導電性薄膜2とは反対側の面)に、透明粘着剤層6を介して透明基体7が設けられている。透明粘着剤層6の構成材料には、上述した透明粘着剤層5と同様のものが使用できる。
【0048】
透明基体7の厚みは、25〜300μmであるのが好ましく、より好ましくは25〜150μmである。また、透明基体7を複数の基体フィルムにより形成する場合、各基体フィルムの厚みは10〜200μmであるのが好ましく、20〜150μmであるのがより好ましい。透明基体7や前記基体フィルムとしては、上述した透明フィルム基材1と同様のものが使用できる。
【0049】
透明フィルム基材1と透明基体7との貼り合わせは、透明基体7側に透明粘着剤層6を設けておき、これに透明フィルム基材1を貼り合わせるようにしてもよいし、逆に透明フィルム基材1側に透明粘着剤層6を設けておき、これに透明基体7を貼り合わせるようにしてもよい。後者の方法では、ロール状の透明フィルム基材1に対して、透明粘着剤層6を連続的に形成できるため、生産性の面で一層有利である。また、透明フィルム基材1に、順次に複数の基体フィルムを透明粘着剤層(図示せず)により貼り合せることによっても、透明基体7を形成することができる。なお、基体フィルムの積層に用いる透明粘着剤層には、上述した透明粘着剤層5と同様のものを用いることができる。
【0050】
透明粘着剤層6は、例えば、透明基体7の接着後に於いては、そのクッション効果により、第2透明導電性薄膜4の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性(所謂ペン入力耐久性や面圧耐久性)を向上させる機能を有する。この機能をより効果的に発揮させる観点から、透明粘着剤層6の弾性係数を1〜100N/cmの範囲、厚みを1μm以上(より好ましくは5〜100μm)の範囲に設定するのが好ましい。この範囲内であれば、上記効果が十分発揮され、透明基体7と透明フィルム基材1との密着力も十分となる。なお、本発明の透明導電性フィルムに適用する透明粘着剤層の弾性係数の好ましい範囲や、その厚みの好ましい範囲は、他の実施形態においても同様である。
【0051】
この様な透明粘着剤層6を介して貼り合わされる透明基体7は、透明フィルム基材1に対して良好な機械的強度を付与し、ペン入力耐久性や面圧耐久性を向上させることができる上、カールなどの発生防止に寄与する。なお、本実施形態では、透明基体7が透明粘着剤層6を介して透明フィルム基材1に貼り合わされた例を示したが、例えば透明な液状樹脂を透明フィルム基材1に塗布して、これを乾燥させることによって透明基体7を形成してもよい。
【0052】
また必要に応じて、透明基体7の外表面(透明粘着剤層6とは反対側の面)に、外表面の保護を目的としたハードコート層(図示せず)を設けるようにしてもよい。このハードコート層としては、例えば、メラニン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬化型樹脂からなる硬化被膜が好ましく用いられる。前記ハードコート層の厚みとしては、硬度の観点、及びクラックやカールの発生を防止する観点から、0.1〜30μmが好ましい。
【0053】
以上、本発明の一例である透明導電性フィルムについて説明したが、本発明は上記実施形態には限定されない。例えば、本発明の透明導電性フィルムには、視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層を設けることもできる。特に抵抗膜方式のタッチパネルに用いる場合には、上述したハードコート層と同様に透明基体の外表面(透明粘着剤層とは反対側の面)に、防眩処理層や反射防止層を設けることができる。また、ハードコート層上に、防眩処理層や反射防止層を設けることもできる。一方、静電容量方式のタッチパネルに用いる場合には、防眩処理層や反射防止層は、第2透明導電性薄膜上に設けられることもある。
【0054】
上記防眩処理層の構成材料としては特に限定されず、例えば電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。防眩処理層の厚みは、0.1〜30μmが好ましい。
【0055】
上記反射防止層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられる。反射防止機能を一層大きく発現させる為には、酸化チタン層と酸化ケイ素層との積層体を用いることが好ましい。前記積層体は、透明基体やハードコート層上に屈折率の高い酸化チタン層(屈折率:約1.8)が形成され、該酸化チタン層上に屈折率の低い酸化ケイ素層(屈折率:約1.45)が形成された2層積層体が好ましい。更に、この2層積層体上に、酸化チタン層及び酸化ケイ素層がこの順序で形成された4層積層体がより好ましい。この様な2層積層体又は4層積層体の反射防止層を設けることにより、可視光線の波長領域(380〜780nm)の反射を均一に低減させることが可能となる。また、これらの積層体に更に防汚層を形成してもよい。
【0056】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る透明導電性積層体について説明する。図4は、本発明の第4実施形態に係る透明導電性積層体の断面図である。図4に示すように、透明導電性積層体200は、透明導電性フィルム10及び透明導電性フィルム210を有している。透明導電性フィルム210は、透明フィルム基材211と、この透明フィルム基材211上に順次形成された透明絶縁層212及び透明導電性薄膜213とを有している。透明フィルム基材211、透明絶縁層212及び透明導電性薄膜213は、それぞれ上述した透明フィルム基材1、透明絶縁層3及び第2透明導電性薄膜4と同様の材料が使用できる。また、透明導電性薄膜213はパターン化されている。そして、透明導電性積層体200は、透明導電性フィルム10の第2透明導電性薄膜4と、透明導電性フィルム210の透明フィルム基材211とが、透明粘着剤層8により貼り合わされることによって、2枚の透明導電性フィルム10,210が積層されている。透明導電性積層体200においても、透明導電性フィルム10の第1透明導電性薄膜2に設けられた露出部分に接地端子240(後述する図5参照)を設けることができるため、当該接地端子240を介して接地することにより、ディスプレイ等から発せられる電磁波を容易に遮蔽できる。
【0057】
以上、本発明の一例である透明導電性積層体について説明したが、本発明の透明導電性積層体は、少なくとも一方の面(外表面)に透明導電性薄膜が配置されている限り、上記実施形態には限定されない。例えば、3枚以上の透明導電性フィルムが積層されていてもよい。
【0058】
次に、本発明の透明導電性積層体をタッチパネルに適用した例について説明する。図5は、上記第4実施形態に係る透明導電性積層体を用いた静電容量方式のタッチパネルの概略断面図である。図5では、透明導電性積層体200の透明導電性薄膜213上に、透明粘着剤層220を介して透明カバーフィルム230が積層されている。透明粘着剤層220及び透明カバーフィルム230としては、それぞれ上述した透明粘着剤層5及び透明フィルム基材1と同様のものが使用できる。また、透明導電性積層体200の第1透明導電性薄膜2の露出部分に接地端子240が設けられている。そして、第1透明導電性薄膜2は、接地端子240を介して接地されている。これにより、液晶ディスプレイ等のディスプレイ250から発せられる電磁波を容易に遮蔽できる。
【0059】
以上、本発明の一例であるタッチパネルについて説明したが、本発明のタッチパネルは、本発明の透明導電性フィルムや本発明の透明導電性積層体が使用される限り、上記実施形態には限定されない。例えば、光学方式、超音波方式、抵抗膜方式等の検出方式のタッチパネルであってもよい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
<光の屈折率>
各層の光の屈折率は、アタゴ社製のアッベ屈折率計を用い、各種測定面に対して測定光を入射させるようにして、該屈折計に示される規定の測定方法により測定を行った。
【0062】
<ITO膜の表面抵抗値>
二端子法を用いて、ITO膜の表面抵抗値(Ω/□)を測定した。
【0063】
<各層の厚み>
1μm以上の厚みを有するものに関しては、ミツトヨ社製マイクロゲージ式厚み計にて測定を行った。また、1μm未満の厚みを有するものに関しては、大塚電子社製の瞬間マルチ測光システムであるMCPD2000(商品名)を用い、干渉スペクトルの波形を基礎に算出した。
【0064】
<パターン部間の導通の有無>
電気的に独立して並列する第2のITO膜(第2透明導電性薄膜)のパターン部間について、テスタにより電気抵抗(Ω)を測定し、導通の有無を確認した。電気抵抗が1×106Ω以上であれば導通がないと判断できる。なお、テスタは、カスタム社製のデジタルテスタ「CDM‐2000D」を用いた。
【0065】
<実施例1>
(第1透明導電性薄膜の形成)
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる透明フィルム基材の一方の面に、アルゴンガス97%と酸素ガス3%とからなる0.4Paの雰囲気中で、厚さ10nmの第1のITO膜(第1透明導電性薄膜)を形成した。第1のITO膜の光の屈折率は2.00で、表面抵抗値は1×10Ω/□であった。
【0066】
(透明絶縁層の形成)
次いで、シリカゾル(コルコート社製コルコートP)を、固形分濃度が2重量%になるようにエタノールで希釈し、これを上記第1のITO膜上にシリカコート法により塗布し、150℃で2分間乾燥、硬化させて、厚さ150nmのSiO膜(透明絶縁層)を形成した。SiO膜の光の屈折率は1.46であった。
【0067】
(第2透明導電性薄膜の形成)
上記SiO膜上に、アルゴンガス97%と酸素ガス3%とからなる0.4Paの雰囲気中で、厚さ22nmの第2のITO膜(第2透明導電性薄膜)を形成した。第2のITO膜の光の屈折率は2.00で、表面抵抗値は250Ω/□であった。
【0068】
(ハードコート層の形成)
アクリル・ウレタン系樹脂(大日本インキ化学社製ユニディック17−806)100重量部に、光重合開始剤としてヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャルティケミカルズ社製イルガキュア184)5重量部を加えて、30重量%の濃度に希釈してなるトルエン溶液を調製した。これを厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる透明基体の一方の面に塗布し、100℃で3分間乾燥した後、直ちにオゾンタイプ高圧水銀灯(エネルギー密度80W/cm、15cm集光型)で紫外線照射を行ない、厚さ5μmのハードコート層を形成した。
【0069】
(積層工程)
次いで、前記透明基体のハードコート層が形成されていない側の面に、厚さ約20μm、弾性係数10N/cmの透明なアクリル系粘着剤層を形成した。この粘着剤層の組成物としては、アクリル酸ブチルとアクリル酸と酢酸ビニルとの重量比が100:2:5のアクリル系共重合体100重量部に、イソシアネート系架橋剤を1重量部配合してなるものを用いた。そして、上記粘着剤層に、上記透明フィルム基材のITO膜が形成されていない側の面を貼り合せた。
【0070】
(第2のITO膜のエッチング)
40℃の塩酸(塩化水素の濃度:10重量%)を用いて第2のITO膜をエッチングし、幅5mm(ピッチ1mm)のストライプ状のパターン部を形成した。
【0071】
(透明導電性フィルムの形成)
25℃、3重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてSiO膜の周縁部の一部をエッチングして露出部分を形成した。そして、140℃で90分間加熱処理し、実施例1の透明導電性フィルムを得た。
【0072】
<実施例2>
SiO膜の厚みを200nmにしたこと以外は、実施例1と同様の方法で実施例2の透明導電性フィルムを得た。
【0073】
<比較例1>
第1のITO膜を形成しなかったことと、SiO膜のエッチングをしなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例1の透明導電性フィルムを得た。
【0074】
<入力精度の評価>
上述した実施例1,2及び比較例1の透明導電性フィルムのそれぞれを、タッチパネルのディスプレイ側の電極板として用いた際に、誤作動が生じなかった場合を「○」とし、誤作動が生じた場合を「×」として入力精度を評価した。なお、実施例1,2については、上記露出部分から接地させた状態で評価した。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1に示すように、実施例1,2では誤作動が生じなかったが、比較例1では誤作動が生じた。実施例1,2ではディスプレイから発せられる電磁波を遮蔽できるため、誤作動が生じなかったものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1実施形態に係る透明導電性フィルムの断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る透明導電性フィルムの断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る透明導電性フィルムの断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る透明導電性積層体の断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る透明導電性積層体を用いた静電容量方式のタッチパネルの概略断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1,211 透明フィルム基材
2 第1透明導電性薄膜
3,212 透明絶縁層
4 第2透明導電性薄膜
5,6,8,220 透明粘着剤層
7 透明基体
10,30,50,210 透明導電性フィルム
200 透明導電性積層体
21 露出部分
213 透明導電性薄膜
230 透明カバーフィルム
240 接地端子
250 ディスプレイ
S セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム基材の片面に、当該透明フィルム基材側から、第1透明導電性薄膜、透明絶縁層及び第2透明導電性薄膜がこの順に形成された透明導電性フィルムであって、
前記第1透明導電性薄膜における前記透明絶縁層側の面の一部が露出している透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記第1透明導電性薄膜の露出部分は、前記透明絶縁層側の面の周縁部の少なくとも一部に設けられている請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記第1透明導電性薄膜は、表面抵抗が1×10Ω/□以下である請求項1又は2に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記第2透明導電性薄膜は、パターン化されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記透明絶縁層は、厚みが100nm以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記透明フィルム基材は、厚みが2〜200μmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
前記透明絶縁層は、耐酸性を有し、かつアルカリでエッチングされる材料により形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
前記透明絶縁層は、無機物により形成されている請求項7に記載の透明導電性フィルム。
【請求項9】
前記無機物は、SiOである請求項8に記載の透明導電性フィルム。
【請求項10】
前記透明フィルム基材における前記第1透明導電性薄膜とは反対側の面に設けられた透明基体を更に含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の透明導電性フィルムと、少なくとも1枚の透明導電性フィルムとが、透明粘着剤層を介して積層されている透明導電性積層体であって、
前記透明導電性積層体の少なくとも一方の面に透明導電性薄膜が配置されている透明導電性積層体。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の透明導電性フィルムを備えたタッチパネル。
【請求項13】
請求項11に記載の透明導電性積層体を備えたタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−301830(P2009−301830A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154158(P2008−154158)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】