説明

透明導電性積層体の製造方法

【課題】本発明は、作製工程と作製時間の短縮化を図ったうえで、パターンの位置合わせを容易に実現することにある。
【解決手段】第一の透明基板層1aの片面に少なくとも透明導電層2aを形成する工程と、第二の透明基板層1bの片面に少なくとも透明導電層2bを形成する工程と、透明導電層3a,3bを外側にして、第一の透明基板層1aと第二の透明基板層1bとを粘着剤6で貼り合わせる工程と、第一の透明基板層1aの透明導電層2a及び第二の透明基板層1bの透明導電層2bを加熱処理する工程とを備えて構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子記に用いられる透明導電性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器には、ディスプレイ上に入力デバイスとして、透明なタッチパネルが取り付けられているものがある。このタッチパネルの方式としては、抵抗膜式、静電容量式などが知られている。
【0003】
このうち静電容量式のタッチパネルには、パターンを形成した透明導電性膜を形成してなる透明導電性積層体が用いられ、異なるパターンの透明導電積層体を貼り合わせる必要がある。
【0004】
この透明導電層にパターンを形成する方法には、例えばレジストを用いてパターンを形成するようなフォトリソグラフィによる方法が知られている(特許文献1〜3)。また、他の方法としては、導電膜形成用組成物として、光に反応する官能基或いは部位を有するインジウム化合物及び同様な官能基或いは部位を有する錫化合物を用い、パターン露光を行う方法(引用文献4)、レーザー光によるパターン形成を行う方法(引用文献5)などが知られている。
【0005】
ところで、これらの透明導電性積層体は液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイとタッチパネルが光学部品であるため、透明導電膜には低い電気抵抗、可視光に対する高い透過率と高い耐久性などが要求される。そのため、フィルムを加熱することで透明導電膜を結晶化させる手段が取られている。このようにして製膜された透明導電膜は高い導電性(低い電気抵抗率)と可視光領域での高い光透過性や、機械的強度を持つ。
【0006】
上記透明導電膜を結晶化には、透明導電膜を成膜した後、熱処理を施して結晶化する方法(引用文献6)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−197911号公報
【特許文献2】特開平2−109205号公報
【特許文献3】特開平2−309510号公報
【特許文献4】特開平9−142884号公報
【特許文献5】特開2008−140130号公報
【特許文献6】特開平2−194943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献6に記載される結晶化方法では、電極の積層体が高分子フィルムであるため、熱処理温度に限界があり、150℃という比較的低い温度で比較的長時間の熱処理が必要となることで、生産性、コストの面が劣るという問題を有する。
【0009】
また、異なるパターンの透明導電性積層体の貼り合わせにあっては、2次元の位置情報を正確に読み取るために、可能な限り微細なパターンを形成し、かつ、透明基板層の両面に設けたパターンについて正確に位置合わせを行うことが必要である。しかし、透明導電性積層体が高分子フィルムであるため、熱処理により収縮してカールなどのフィルムの変形が生じ、貼り合わせの際にパターンの高精度な位置合わせが困難となり、その製造が非常に面倒であるという問題を有する。
【0010】
本発明は係る従来技術の課題に鑑みてなされたもので、透明導電性積層体を貼り合せた後に熱処理することで、貼り合わせ後の積層体の両面に形成した透明導電層について同時に結晶化させることで必要な工程と時間を短縮し、熱処理後に生じるフィルムの変形の前に貼り合わせを行うことで、パターンの位置合わせを容易に行うことができる透明導電性積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、第一の透明基板層の片面に少なくとも透明導電層を形成する工程と、第二の透明基板層の片面に少なくとも透明導電層を形成する工程と、前記透明導電層を外側にして、前記第一の透明基板層と前記第二の透明基板層とを粘着剤で貼り合わせる工程と、前記第一の透明基板層の透明導電層及び第二の透明基板層の透明導電層を加熱処理する工程とを備えることを特徴とする透明導電性積層体の製造方法である。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の透明導電性積層体の製造方法において、加熱処理により前記第一の透明基板層の透明導電層及び第二の透明基板層の透明導電層を結晶化させて作製したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の透明導電性積層体の製造方法において、前記加熱処理が大気中で行われる処理であり、加熱温度が130℃以上150℃以下であり、加熱時間が30分以上90分以下で行われることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の透明導電性積層体の製造方法において、前記加熱処理が真空中(大気圧〜0.01Pa)で行われる処理であり、加熱温度が80℃以上150℃以下であり、加熱時間が1分以上90分以下で行われることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4に記載の透明導電性積層体の製造方法において、前記加熱処理がロールトゥロール方式により行われることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5に記載の透明導電性積層体の製造方法において、加熱処理した前記第一の透明基板層の透明導電層と前記第二の透明基板層の透明導電層とに導電性パターン領域および非導電性パターン領域を形成する工程を備えて構成したことを特徴する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、透明導電性積層体を貼り合せたあとに熱処理することで、貼りあわせ後の積層体の両面に形成した透明導電層について同時に結晶化させ、必要な工程と時間を短縮する透明導電性積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る透明導電性積層体の製造方法により作製された透明導電性積層体を示した断面図である。
【図2】図5の作製手順を説明するために示した断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る透明導電性積層体の構成を説明するために示した断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る透明導電性積層体の構成を説明するために示した断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る透明導電性積層体の構成を説明するために示した断面図である。
【図6】図5の第一の透明導電層と第二の透明導電層にそれぞれ導電性パターン領域及び非導電性パターンを形成する工程を説明するために示した断面図である。
【図7】図5の透明導電層に加熱処理する工程を説明するために示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る透明導電性積層体の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に記載する実施の形態に限定されうるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれるものである。
【0020】
図1は、本発明の透明導電性積層体の製造方法による透明導電性積層体8を示すもので、例えば第一及び第二の透明基板層1a,1bが粘着層を介在されて貼り合わせ形成される。この第一及び第二の透明基板層1a,1bには、その片面に図2に示すように透明導電層3a,3bがそれぞれ積層され、この透明導電層3a,3b上には、光学調整層2a,2bがそれぞれ積層される。そして、この第一及び第二の透明基板層1a,1bは、その透明導電層3a,3bを外側にして粘着層が介在されて積重されて貼り合わされて後述するように加熱処理等が施されてされて透明導電性積層体8が形成される。
【0021】
ここで、第一及び第二の透明基板層1a,1bは、例えば第一の透明基板層1aの透明導電層3a側と第二の透明基板層1bの透明導電層3bの形成されていない面とを粘着層6で貼り合わせるように構成してもよい。また、第一及び第二の透明基板層1a,1bの一方のみに光学調整層2a,2b、樹脂層5a,5bの双方を配置したり、一方に光学調整層2a,2bを設けて他方に樹脂層5a,5bを設けて構成するようにしてもよい。
【0022】
また、上記透明導電性積層体8としては、その他、例えば図3に示すように粘着層6を介して貼り合わされる第一及び第二の透明基板層1a,1bの片面に直接的に透明導電層3a,3bを配したり、あるいは図4に示すように第一及び第二の透明基板層1a,1bと透明導電層3a,3bとの間に光学調整層2a,2bのみを介在させたり、あるいは図5に示すように第一及び第二の透明基板層1a,1bと透明導電層3a,3bとの間に樹脂層5a,5bのみ配したりしたものを、その他方の面側を粘着層6を用いて貼り合せて構成するようにしてもよい。
【0023】
さらに、上記第一及び第二の透明基板層1a,1bには、その一方の透明導電層3a,3bとの間にのみに図4に示すように光学調整層2a,2bを積層配置したり、あるいは図5に示すように樹脂層5a,5bを積層配置して、相互間を同様に粘着層6を介して貼り合せるように構成してもよい。
【0024】
即ち、第一及び第二の透明基板層1a,1bには、その片面に少なくとも透明導電層3a,3bが積層配置され、この透明導電層3a,3bとの間には、例えば光学調整層2a,2b、樹脂層5a,5bが選択的に積層配置される。
【0025】
また、上記透明導電性積層体8の第一の透明基板層1aの透明導電層3aと第二の透明基板層1bの透明導電層3bには、図6に示すように導電性パターン領域4a及び非導電性パターン領域4bが選択的にパターン形成される。ここで、導電性パターン領域4aとは、透明導電層3a,3bのうち、導電性を有する部分のことをいい、非導電性パターン領域4bとは、透明導電層3a,3bのうち、導電性を有する部分を除いた導電性を有しない部分のことをいう。
【0026】
上記第一及び第二の透明基板層1a,1bは、ガラスの他に、樹脂からなるプラスチックフィルムが用いられる。プラスチックフィルムとしては、成膜工程および後工程において十分な強度があり、表面の平滑性が良好であれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリアリレートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。その厚さは部材の薄型化と積層体の可撓性とを考慮し、10μm以上200μm以下程度のものが用いられる。
【0027】
第一及び第二の透明基板層1a及び1bに含有される材料としては、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、易接着剤などが使用されてもよい。各層との密着性を改善するため、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理などを施してもよい。
【0028】
上記樹脂層5a、5bは、透明導電性積層体8に機械的強度を持たせるために設けられる。用いられる樹脂としては、特に限定はしないが、透明性と適度な硬度と機械的強度を持つ樹脂が好ましい。具体的には3次元架橋の期待できる3官能以上のアクリレートを主成分とするモノマー又は架橋性オリゴマーのような光硬化性樹脂が好ましい。
【0029】
3官能以上のアクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエステルアクリレートなどが好ましい。特に好ましいのは、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレートおよびポリエステルアクリレートである。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても構わない。また、これら3官能以上のアクリレートの他にエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリオールアクリレートなどのいわゆるアクリル系樹脂を併用することが可能である。
【0030】
架橋性オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどのアクリルオリゴマーが好ましい。具体的にはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ポリウレタンのジアクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなどがある。
【0031】
また、樹脂層5a、5bは、その他に粒子、光重合開始剤などの添加剤を含有してもよい。添加する粒子としては、有機又は無機の粒子が挙げられるが、透明性を考慮すれば、有機粒子を用いることが好ましい。有機粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂などからなる粒子が挙げられる。
【0032】
粒子の平均粒径は、樹脂層5a、5bの厚みによって異なるが、ヘイズ等の外観上の理由により、下限として2μm以上、より好ましくは5μm以上、上限としては30μm以下、好ましくは15μm以下のものを使用する。また、粒子の含有量も同様の理由で、樹脂に対し、0.5重量%以上5重量%以下であることが好ましい。
【0033】
光重合開始剤を添加する場合、ラジカル発生型の光重合開始剤として、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類、アセトフェノン、2、2、−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、などのアセトフェノン類、メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類、チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類、ベンゾフェノン、4、4−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類及びアゾ化合物などがある。これらは単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体などの光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。
【0034】
上記光重合開始剤の添加量は、主成分の樹脂に対して0.1重量%以上5重量%以下であり好ましくは0.5重量%以上3重量%以下である。下限値未満ではハードコート層の硬化が不十分となり好ましくない。また、上限値を超える場合は、ハードコート層の黄変を生じたり、耐候性が低下したりするため好ましくない。光硬化型樹脂を硬化させるのに用いる光は紫外線、電子線、あるいはガンマ線などであり、電子線あるいはガンマ線の場合、必ずしも光重合開始剤や光開始助剤を含有する必要はない。これらの線源としては高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプや加速電子などが使用できる。
【0035】
また、上記樹脂層5a、5bの厚みは、特に限定されないが、0.5μm以上15μm以下の範囲が好ましい。また、第一及び第二の透明基板層1a,1bと屈折率が同じかもしくは近似していることがより好ましく、1.45以上1.75以下程度が好ましい。
【0036】
樹脂層5a、5bの形成方法は、主成分である樹脂等を溶剤に溶解させ、ダイコーター、カーテンフローコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、スピンコーター、マイクログラビアコーターなどの公知の塗布方法で形成する。
【0037】
溶剤については、上記の主成分の樹脂等を溶解するものであれば特に限定しない。具体的には、溶剤として、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、などが挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0038】
上記粘着層6は、第一の透明基板層1aと第二の透明基板層1bとを接着するための層である。粘着層6に用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられ、クッション性や透明性に優れた樹脂を用いることが好ましい。
【0039】
広い波長領域で不要な光を吸収することができる。
【0040】
上記光学調整層2a,2bは、透明導電層2a及び透明導電層2bに形成されたパターンを目立たなくする機能を有し、視認性を向上させるための層である。そして、光学調整層2a,2bとして無機化合物を用いる場合、酸化物、硫化物、フッ化物、窒化物などの材料が使用可能である。上記無機化合物からなる薄膜は、その材料により屈折率が異なり、その屈折率の異なる薄膜を特定の膜厚で形成することにより、光学特性を調整することが可能となる。なお、光学機能層の層数としては、目的とする光学特性に応じて、複数層あってもよい。
【0041】
屈折率の低い材料としては、酸化マグネシウム(1.6)、二酸化珪素(1.5)、フッ化マグネシウム(1.4)、フッ化カルシウム(1.3〜1.4)、フッ化セリウム(1.6)、フッ化アルミニウム(1.3)などが挙げられる。また、屈折率の高い材料としては、酸化チタン(2.4)、酸化ジルコニウム(2.4)、硫化亜鉛(2.3)、酸化タンタル(2.1)、酸化亜鉛(2.1)、酸化インジウム(2.0)、酸化ニオブ(2.3)、酸化タンタル(2.2)が挙げられる。但し、上記括弧内の数値は屈折率を表す。
【0042】
上記透明導電層3a,3bは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズのいずれか、または、それらの2種類もしくは3種類の混合酸化物、さらには、その他添加物が加えられた物などが挙げられるが、目的・用途により種々の材料が使用でき、特に限定されるものではない。現在のところ、最も信頼性が高く、多くの実績のある材料は酸化インジウムスズ(ITO)である。
【0043】
最も一般的な透明導電膜である酸化インジウムスズ(ITO)を透明導電層3a,3bとして用いる場合、酸化インジウムにドープされる酸化スズの含有比はデバイスに求められる仕様に応じて、任意の割合を選択する。例えば、透明基板がプラスチックフィルムの場合、機械強度を高める目的で薄膜を結晶化させるために用いるスパッタリングターゲット材料は、酸化スズの含有比が10重量%未満であることが好ましく、薄膜をアモルファス化しフレキシブル性を持たせるためには、酸化スズの含有比は10重量%以上が好ましい。また、薄膜に低抵抗が求められる場合は、酸化スズの含有比は3重量%から20重量%の範囲が好ましい。
【0044】
上記光学調整層2a,2b、透明導電層3a,3bの製造方法としては、膜厚の制御が可能であればいかなる成膜方法でも良く、なかでも薄膜の形成乾式法が優れている。これには真空蒸着法、スパッタリングなどの物理的気相析出法やCVD法のような化学的気相析出法を用いることができる。特に大面積に均一な膜質の薄膜を形成するために、プロセスが安定し、薄膜が緻密化するスパッタリング法が好ましい。
【0045】
上記透明導電性積層体8の熱処理工程では、例えば図7に示すように第一の透明基板層1aの透明導電層3aを熱処理するための熱源7aと、第二の透明基板層1bの透明導電層3bを熱処理するための熱源7bとを有した加熱機構を用いて行われる。そして、加熱処理は、この熱源7a、7bを用いて、透明導電性積層体8の両面から実行される。
【0046】
この加熱処理においては、第一の透明基板層1aの透明導電層3a及び第二の透明基板層1bの透明導電層3bを結晶化させることが可能であれば、加熱条件を調整し、透明導電性積層体8の片面から行うように構成してもよい。
【0047】
熱処理工程は大気中で行われる処理であり、加熱温度が130℃以上150℃以下であり、加熱時間が30分以上90分以下であることが好ましい。上記条件によれば、透明導電層3a,3bを十分に結晶化させることができる。
【0048】
また、上記加熱処理工程は真空中で行うようにしてもよい。この真空中で行う処理の場合、加熱温度が80℃以上150℃以下であり、加熱時間が1分以上90分以下であることが好ましい。上記条件によれば、大気中よりもさらに短時間で、透明導電層3a,3bを十分に結晶化させることができる。
【0049】
大気中または真空中で行われる加熱処理に用いられる熱源は、大気中または真空中で加熱処理を行うことができる加熱手段であれば、特に限定されないが、例えば、IRヒーターなどが使用可能である。
【0050】
また、上記透明導電性積層体8の加熱処理工程は、第一及び第二の透明基板層1a,1bの透明導電層3a,3bを同時に熱処理することができるため、貼りあわせ後の透明導電性積層体8の両面に形成された透明導電層3a,3bについて同時に結晶化させる必要な工程と時間が短縮され、且つ、熱処理後に生じるフィルムの変形の前に貼り合わせを行うことで、パターンの位置合わせを容易に行うことができる透明導電性積層体の製造方法を提供できる。
【0051】
透明導電層3a,3bのパターン形成方法としては、先ず、透明導電層3a,3b上にレジストを塗布し、パターンを露光・現像により形成した後に透明導電層を化学的に溶解させるフォトリソグラフィによる方法、真空中で化学反応により気化させる方法、レーザーにより透明導電層を昇華させる方法などが挙げられる。パターン形成方法は、パターンの形状、精度などにより適宜選択できるが、透明導電層3a,3bについて互いに異なるパターンを同時に形成するために、フォトリソグラフィによる方法を用いることが好ましい。
【0052】
また、上記透明導電性積層体8は、第一及び第二の透明基板層1a,1bに透明導電層3a,3bを形成する工程からこの透明導電層3a,3bを熱処理する工程までをロールトゥロール方式により行うことが好ましい。これにより、製造時間を大幅に短縮することができる。
【実施例】
【0053】
次に実施例及び比較例について説明する。
【0054】
<実施例>
透明基板としてPET(188μm)を用い、一方の面にスパッタリング法により光学調整層として酸化珪素及び酸化チタンを、透明導電膜層としてITOを成膜した二つの透明導電性積層体を作製した。粘着層により二つの透明導電性積層体を貼り合わせた後、加熱処理が可能なオーブンで両面の透明導電膜層を同時に150℃60分の条件で、大気中において熱処理を行った後、フォトリソグラフィによる方法を用いて両面の透明導電膜層をパターニングした。また、両面のパターニングした透明導電膜層について、表面抵抗値を測定した。
【0055】
<比較例>
透明基板としてPET(188μm)を用い、一方の面にスパッタリング法により光学調整層として酸化珪素及び酸化チタンを、透明導電膜層としてITOを成膜した二つの透明導電性積層体を作製した。二つの透明導電層を、加熱処理が可能なオーブンでそれぞれ150℃60分の条件で、大気中において熱処理を行った後、二つの透明導電層を、それぞれパターニングした。その後、粘着層により二つの透明導電性積層体を貼り合わせた。また、両面のパターニングした透明導電膜層について、表面抵抗値を測定した。
【0056】
この実施例と比較例についての評価結果を述べる。
【0057】
実施例で作製した透明導電性積層体の表面抵抗値を測定したところ一方の面が210Ω/□で、もう一方が230Ω/□であった。それに対し、比較例で作製した透明導電性積層体の表面抵抗値は一方の面が210Ω/□で、もう一方の面が215Ω/□であった。実施例、比較例で得られた透明導電積層体は、ともに両面の透明導電膜層が結晶化し低抵抗化していることが確認できた。
【0058】
しかしながら、実施例で作製した両面の透明導電層のパターンの位置は、精度よく制御することができたのに対し、比較例で作製した両面の透明導電層のパターンの位置は、両面の透明導電膜層を別々に熱処理したことによって、二つの透明導電性積層体の寸法が相違し、精度よく制御することができなかった。
【0059】
また、実施例の作製方法は、比較例の作製方法に比べて、必要な工程と時間を大幅に短縮することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、電子機器のディスプレイ上に入力デバイスとして取り付けられる透明なタッチパネルに用いられる。特に、マルチタッチが可能なモバイル機器などに用いられる。
【符号の説明】
【0061】
1a…第一の透明基板層
1b…第二の透明基板層
2a、2b…光学調整層
3a、3b…透明導電層
4a…導電性パターン領域
4b…非導電性パターン領域
5a、5b…樹脂層
6…粘着層
7a、7b・・・熱源
8・・・透明導電性積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の透明基板層の片面に少なくとも透明導電層を形成する工程と、
第二の透明基板層の片面に少なくとも透明導電層を形成する工程と、
前記透明導電層を外側にして、前記第一の透明基板層と前記第二の透明基板層とを粘着剤で貼り合わせる工程と、
前記第一の透明基板層の透明導電層及び第二の透明基板層の透明導電層を加熱処理する工程と、
を具備することを特徴とする透明導電性積層体の製造方法。
【請求項2】
前記加熱処理が前記第一の透明基板層の透明導電層及び第二の透明基板層の透明導電層を結晶化させるための処理であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電性積層体の製造方法。
【請求項3】
前記加熱処理が大気中で行われる処理であり、加熱温度が130℃以上150℃以下であり、加熱時間が30分以上90分以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電性積層体の製造方法。
【請求項4】
前記加熱処理が真空中で行われる処理であり、加熱温度が80℃以上150℃以下であり、加熱時間が1分以上90分以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電性積層体の製造方法。
【請求項5】
前記加熱処理がロールトゥロール方式により行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の透明導電性積層体の製造方法。
【請求項6】
加熱処理した前記第一の透明基板層の透明導電層と前記第二の透明基板層の透明導電層とに導電性パターン領域および非導電性パターン領域を形成する工程を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の透明導電性積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−61766(P2012−61766A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208551(P2010−208551)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】