説明

透明導電膜、透明導電膜の製造方法、光電変換装置および電子機器

【課題】シート抵抗が十分に低く、可視光透過率が十分に高く、全面にわたって高い導電性を確保することができ、しかも電解液に対する耐食性に優れた透明導電膜およびその製造方法ならびにこの透明導電膜を用いた光電変換装置および電子機器を提供する。
【解決手段】透明導電膜は、金属細線ネットワーク層12と、この金属細線ネットワーク層12の少なくとも一方の面に設けられた一層または複数層のグラフェン層13とを有する。金属細線ネットワーク層12は、銅、銀、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、チタンおよび白金からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属からなる。金属細線ネットワーク層12は透明基板11上に設ける。フレキシブルな透明導電膜を得るためには、透明基板11として透明プラスチック基板を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は透明導電膜、透明導電膜の製造方法、光電変換装置および電子機器に関し、例えば、ディスプレイ、タッチパネル、色素増感太陽電池などに用いられる透明導電膜に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの大面積化、太陽電池の高効率化、タッチパネルの大型高精細化などを図るために、シート抵抗の低い透明導電膜が必要とされている。現在、低抵抗透明導電膜あるいは透明導電性シートに用いられている構造は主に3つある。
【0003】
1つ目は、インジウム−錫酸化物(ITO)に代表される透明酸化物薄膜であるが、透明酸化物薄膜はスパッタリング法による成膜が必要になるため、スパッタリング装置の導入コストが高額であるだけでなく、タクトタイムが長いという問題がある。
【0004】
2つ目は、銅や銀などの金属細線ネットワーク層である。金属細線ネットワーク層は高い光透過率を確保したまま低抵抗化が可能であるが、金属細線部以外で導電性を確保することができないという問題点と、ヨウ素などを含む電解液などに直接触れると金属細線部が容易に腐食してしまうという問題点とがある。
【0005】
3つ目は、金属細線ネットワーク層と透明導電膜との二層積層構造である(特許文献1参照)。この構造では、透明導電膜として様々な材料が検討されている。しかしながら、透明導電膜としてカーボンナノチューブ、金属ナノワイヤなどの2次元材料を用いた場合(例えば、特許文献2参照)、高い透明性を維持したまま金属細線ネットワーク層を完全に被覆することが困難となるため、電解液に対する腐食が問題となる。また、透明導電膜として導電性ポリマーを用いた場合(例えば、特許文献3参照)、導電性ポリマー自身の透明性が低いため、透過率が大幅に低下してしまう。透明導電膜として最も有望なものは、ITOなどからなる酸化物薄膜であるが、様々な問題がある。第1に、良質な透明導電膜を作製するためにはスパッタリング法による成膜が必要になるため、必然的に高コストになる。第2に、透明導電膜が酸化物からなるため、柔軟性がなく、フレキシブル基板などへの適用が困難である。第3に、例えば導電性の高いITOは熱安定性と耐食性とに劣るため、色素増感太陽電池などの透明導電膜に用いることができない。第4に、透明酸化物薄膜は、構造面からも、耐食性、透明導電性、柔軟性、製造プロセスが簡単であるなどの諸条件を満足することは困難である。
【0006】
上記の第4の問題点について詳細に説明する。
第1の従来技術では、図10Aに示すように、透明基板101上に金属細線ネットワーク層102を形成した後、この金属細線ネットワーク層102の間の部分の透明基板101の表面および金属細線ネットワーク層102の上面に薄い酸化物薄膜103を形成する。金属細線ネットワーク層102の厚さは数μm〜10μm程度である。
【0007】
第2の従来技術では、図10Bに示すように、透明基板201上に金属細線ネットワーク層202を形成した後、この金属細線ネットワーク層202を完全に覆うように厚い酸化物薄膜203を形成する。
【0008】
第3の従来技術では、図10Cに示すように、透明基板301上に金属細線ネットワーク層302を数100nm程度の厚さに薄く形成した後、この金属細線ネットワーク層302を完全に覆うように薄い酸化物薄膜303を形成する。
【0009】
第4の従来技術では、図10Dに示すように、透明基板401の一主面に溝401aを形成し、この溝401aに金属細線ネットワーク層402を埋め込んだ後、この金属細線ネットワーク層402を覆うように薄い酸化物薄膜403を形成する。
【0010】
第5の従来技術では、図10Eに示すように、透明基板501上に金属細線ネットワーク層502を形成し、この金属細線ネットワーク層502の隙間に透明ポリマー材料503を埋めた後、この金属細線ネットワーク層502および透明ポリマー材料503の上に薄い酸化物薄膜504を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−4726号公報
【特許文献2】特開2009−252493号公報
【特許文献3】特開2009−231194号公報
【特許文献4】特開2009−21342号公報
【特許文献5】特開2005−108467号公報
【特許文献6】特開2005−332705号公報
【特許文献7】特開2008−288102号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Nano Letters 2009,9,4359
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、第1の従来技術では、金属細線ネットワーク層102の側面が露出しているため、ヨウ素などを含む電解液が接触する環境で使用する場合には容易に腐食されてしまう。また、透明導電膜を曲げたりした際には、酸化物薄膜103が金属細線ネットワーク層102から容易に剥離してしまう。
【0014】
第2の従来技術では、厚い酸化物薄膜203がほとんど光を吸収してしまうため、透明導電膜として用いることは困難である。例えば、酸化物薄膜203がITO薄膜である場合、ITO薄膜は厚さがわずか200nmでも光の透過率が70〜80%と低いため、金属細線ネットワーク層202を完全に覆うように数μm以上の厚さに形成すると、ほとんど光を吸収してしまう。
【0015】
第3の従来技術では、金属細線ネットワーク層302の厚さが数100nmと薄いことから、電気抵抗が増大してしまう。
【0016】
第4の従来技術では、金属細線ネットワーク層402を透明基板401の溝401aに埋め込むため、透明基板401がプラスチック基板に限られてしまう。また、透明基板401に溝401aを形成する必要があるため、その分、透明導電膜の製造プロセスが複雑になってしまう。さらに、透明導電膜を曲げたりした際には、酸化物薄膜403が透明基板401および金属細線ネットワーク層402から容易に剥離してしまう。
【0017】
第5の従来技術では、金属細線ネットワーク層502を透明ポリマー材料503により埋め込むため、透明導電性が低下し、製造プロセスが複雑である。また、透明導電膜を曲げたりした際には、酸化物薄膜504が金属細線ネットワーク層502および透明ポリマー材料503から容易に剥離してしまう。
以上のように、従来の透明導電膜は、いずれも一長一短があった。
【0018】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、シート抵抗が十分に低く、可視光透過率が十分に高く、全面にわたって高い導電性を確保することができ、しかも電解液に対する耐食性に優れた透明導電膜を提供することである。
この発明が解決しようとする他の課題は、上記のような優れた透明導電膜を低コストで容易に製造することができる透明導電膜の製造方法を提供することである。
【0019】
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、上記のような優れた透明導電膜を有する高性能の光電変換装置および電子機器を提供することである。
上記課題および他の課題は本明細書の記述によって明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、この発明は、
金属細線ネットワーク層とこの金属細線ネットワーク層の少なくとも一方の面に設けられた一層または複数層のグラフェン層とを有する透明導電膜である。
【0021】
この透明導電膜においては、金属細線ネットワーク層の両面にグラフェン層が設けられてもよい。この透明導電膜においては、典型的には、金属細線ネットワーク層が透明基板上に設けられ、この金属細線ネットワーク層上にグラフェン層が設けられるが、金属細線ネットワーク層とグラフェン層との積層順序はこれと逆であってもよい。すなわち、この透明導電膜は、グラフェン層が透明基板上に設けられ、このグラフェン層上に金属細線ネットワーク層が設けられたものであってもよい。透明基板の材料は必要に応じて選ばれるが、透明導電膜をフレキシブルなものとするためには、好適には、透明基板として透明プラスチック基板が用いられる。
【0022】
金属細線ネットワーク層の材料は、必要に応じて選ばれるが、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)および白金(Pt)からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属からなる純金属または合金である。必要に応じて、金属細線ネットワーク層の表面による光の反射を防止するために、金属細線ネットワーク層の表面を黒色化処理してもよい(例えば、特許文献4参照)。
【0023】
透明導電膜を構成するグラフェン層のシート抵抗は500Ω/□以下であり、透明導電膜のシート抵抗は、好適には、0.01Ω/□以上10Ω/□以下であるが、これに限定されるものではない。透明導電膜は、好適には、550nmの波長での光の透過率が70%以上であるが、これに限定されるものではない。また、透明導電膜の導電性面の平滑性(凹凸)は、好適には、5μmより大きくする。透明導電膜の導電性面は、透明導電膜のグラフェン層が表面に出ている場合にはグラフェン層の表面、透明導電膜の金属細線ネットワーク 層が表面に出ている場合には金属細線ネットワーク層の表面である。透明導電膜の導電性面の平滑性(凹凸)は、3次元表面粗さ計を用いて5mm四方の領域を測定したときの凹凸部の平均振幅を示す。
この透明導電膜は、透明導電性フィルムあるいは透明導電性シートとして用いることができる。
【0024】
また、この発明は、
金属からなる第1の基板上に一層または複数層のグラフェン層を形成する工程と、
上記第1の基板の上記グラフェン層側を第2の基板と貼り合わせる工程と、
上記第1の基板を除去する工程と、
上記第2の基板の上記グラフェン層側を透明基板上に形成された金属細線ネットワーク層と貼り合わせる工程と、
上記第2の基板を除去する工程とを有する透明導電膜の製造方法である。
【0025】
ここで、透明基板上に一層または複数層のグラフェン層が形成され、このグラフェン層上に金属細線ネットワーク層が形成されている場合には、金属細線ネットワーク層の両面にグラフェン層が設けられた透明導電膜を製造することができる。
【0026】
また、この発明は、
金属からなる第1の基板上に一層または複数層のグラフェン層を形成する工程と、
上記第1の基板の上記グラフェン層側を第2の基板と貼り合わせる工程と、
上記第1の基板をパターニングすることにより金属細線ネットワーク層を形成する工程と、
上記第2の基板の上記金属細線ネットワーク層側を透明基板と貼り合わせる工程と、
上記第2の基板を除去する工程とを有する透明導電膜の製造方法である。
【0027】
また、この発明は、
金属からなる第1の基板上に一層または複数層のグラフェン層を形成する工程と、
上記第1の基板の上記グラフェン層側を透明基板上に形成された金属細線ネットワーク層と貼り合わせる工程と、
上記第1の基板を除去する工程とを有する透明導電膜の製造方法である。
【0028】
また、この発明は、
金属からなる第1の基板上に一層または複数層のグラフェン層を形成する工程と、
上記第1の基板の上記グラフェン層側を透明基板と貼り合わせる工程と、
上記第1の基板をパターニングすることにより金属細線ネットワーク層を形成する工程とを有する透明導電膜の製造方法である。
【0029】
ここで、この透明導電膜の製造方法は、金属細線ネットワーク層を形成した後、第2の基板上に形成された一層または複数層のグラフェン層を金属細線ネットワーク層と貼り合わせる工程と、第2の基板を除去する工程とをさらに有してもよい。こうすることで、金属細線ネットワーク層の両面にグラフェン層が設けられた透明導電膜を製造することができる。
【0030】
上記の発明による透明導電膜の製造方法により、この発明による透明導電膜を容易に製造することができる。金属からなる第1の基板は、例えば、アルミニウム(Al)、ケイ素(シリコン)(Si)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)およびタングステン(W)からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属からなる。第1の基板は、良質のグラフェン層を形成する観点より、好適には銅からなり、例えば銅箔である。第2の基板は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、熱剥離テープ、およびそれら自体では強度が足りない場合は、ガラス基板やポリマー基板などを支持体とする構造などからなる。フレキシブルな透明導電膜を製造する場合には、典型的には、透明基板として透明プラスチック基板が用いられる。上記以外の点については、この発明による透明導電膜と同様である。
【0031】
また、この発明は、
透明基板上に透明導電膜を介して設けられた多孔質光電極と対極との間に電解質層が充填された構造を有し、
上記透明導電膜が、金属細線ネットワーク層とこの金属細線ネットワーク層の少なくとも一方の面に設けられた一層または複数層のグラフェン層とを有する透明導電膜である光電変換装置である。
【0032】
光電変換装置は、典型的には色素増感光電変換装置であるが、これに限定されるものではなく、透明導電膜を用いるものである限り、どのようなものであってもよい。多孔質光電極は、典型的には半導体微粒子により構成され、色素増感光電変換装置ではこの半導体微粒子に光増感色素を担持させる。多孔質光電極としては、いわゆるコア−シェル構造の微粒子により構成されたものを用いてもよく、この場合には必ずしも光増感色素を結合させないでもよい。コア−シェル構造の微粒子は、具体的には、金属酸化物からなるコアとこのコアを取り巻く金属からなるシェルとからなり、あるいは、金属からなるコアとこのコアを取り巻く金属酸化物からなるシェルとからなる。金属酸化物としては、好適には、酸化チタン(TiO2 )、酸化スズ(SnO2 )、酸化ニオブ(Nb2 5 )および酸化亜鉛(ZnO)からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属酸化物が用いられる。また、金属としては、例えば、金、銀、銅などが用いられる。金属/金属酸化物微粒子の粒径は適宜選ばれるが、好適には1〜500nmである。また、金属/金属酸化物微粒子のコアの粒径も適宜選ばれるが、好適には1〜200nmである。
【0033】
また、この発明は、
金属細線ネットワーク層とこの金属細線ネットワーク層の少なくとも一方の面に設けられた一層または複数層のグラフェン層とを有する透明導電膜を有する電子機器である。
【0034】
ここで、電子機器は透明導電膜を用いる限り各種のものであってよいが、具体的には、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)や有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機ELディスプレイ)などのディスプレイ、タッチパネルなどであり、透明導電膜の用途も問わない。
【0035】
上述のように構成されたこの発明において、グラフェン層は、極めて低い体積抵抗率、高透明導電性、高強度、高バリア性、高耐食性などの優れた特性を有する。このため、金属細線ネットワーク層とこの金属細線ネットワーク層の少なくとも一方の面に設けられた一層または複数層のグラフェン層とを有することにより、シート抵抗が十分に低く、可視光透過率が十分に高い高透明導電性の透明導電膜を得ることができる。また、この透明導電膜を例えば電解液のような腐食性物質が存在する環境下で使用する場合、電解液に接触する側がこの透明導電膜のグラフェン層となるようにすることにより、電解液に対して優れた耐食性を得ることができる。また、透明導電性に優れたグラフェン層により金属細線ネットワーク層の全体が覆われるので、金属細線ネットワーク層の開口部を含めた透明導電膜の全面にわたって高い導電性を確保することができる。また、透明導電膜の製造方法においては、既存の確立された簡便な技術を用いるだけで上記のような優れた透明導電膜を製造することができる。
【発明の効果】
【0036】
この発明によれば、シート抵抗が十分に低く、可視光透過率が十分に高く、全面にわたって高い導電性を確保することができ、しかも電解液に対する耐食性に優れた透明導電膜を得ることができる。また、そのような透明導電膜を低コストで容易に製造することができる。また、この透明導電膜を例えば色素増感光電変換装置のような電解液を用いる光電変換装置の透明導電膜に用いることにより、電解液に対する透明導電膜の耐食性の向上を図ることができ、光電変換装置の寿命の向上を図ることができる。また、高性能の光電変換装置を得ることができる。さらに、この透明導電膜を電子機器の透明導電膜に用いることにより、高性能の電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1の実施の形態による透明導電膜を示す断面図および平面図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態による透明導電膜の製造方法の第1の例を説明するための断面図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態による透明導電膜の製造方法の第1の例を説明するための断面図である。
【図4】この発明の第1の実施の形態による透明導電膜の製造方法の第2の例を説明するための断面図である。
【図5】この発明の第1の実施の形態による透明導電膜の製造方法の第3の例を説明するための断面図である。
【図6】この発明の第2の実施の形態による透明導電膜の製造方法を説明するための断面図である。
【図7】この発明の第3の実施の形態による透明導電膜を示す断面図である。
【図8】この発明の第3の実施の形態による透明導電膜の製造方法を説明するための断面図である。
【図9】この発明の第4の実施の形態による色素増感光電変換装置を示す断面図である。
【図10】従来の透明導電膜を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(透明導電膜およびその製造方法)
2.第2の実施の形態(透明導電膜およびその製造方法)
3.第3の実施の形態(透明導電膜およびその製造方法)
4.第4の実施の形態(色素増感光電変換装置およびその製造方法)
【0039】
〈1.第1の実施の形態〉
[透明導電膜]
図1Aに示すように、第1の実施の形態による透明導電膜においては、透明基板11上に金属細線ネットワーク層12が設けられ、この金属細線ネットワーク層12上に一層または複数層のグラフェン層13が設けられている。この金属細線ネットワーク層12はグラフェン層13により完全に覆われている。
【0040】
透明基板11は、フレキシブルなものであってもなくてもよい。透明基板11の材料は透明導電膜の用途などに応じて適宜選ばれ、石英やガラスなどの透明無機材料や透明プラスチックなどが挙げられる。フレキシブルな透明基板11としては透明プラスチック基板が用いられる。透明プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類などが挙げられる。透明基板11の厚さは、透明導電膜の用途などに応じて適宜選ばれる。
【0041】
金属細線ネットワーク層12は、例えば、Cu、Ag、Al、Au、Fe、Ni、TiおよびPtからなる群より選ばれた少なくとも一種の金属からなる純金属または合金であるが、他の金属を用いてもよい。金属細線ネットワーク層12の厚さは必要に応じて選ばれるが、例えば、3μm以上15μm以上、典型的には5μm以上12μm以下である。金属細線ネットワーク層12は、好適には、透明導電膜全体として、シート抵抗が0.01Ω/□以上10Ω/□以下、波長550nmでの光の透過率が70%以上となるように形成される。好適には、金属細線ネットワーク層12は、透明導電膜全体として、シート抵抗が0.01Ω/□以上10Ω/□以下、可視光に対する透過率が75%以上となるように形成される。具体的には、これらの特性が得られるように、この金属細線ネットワーク層12を構成する金属の種類、金属細線部12aの幅、厚さおよびピッチ、ネットワーク形状、開口率などが決められる。この金属細線ネットワーク層12の金属細線部12aの幅は例えば5μm以上50μm、厚さは例えば3μm以上15μm以下、ピッチは例えば50μm以上1cm以下である。金属細線ネットワーク層12のネットワーク形状は必要に応じて選ばれるが、一例を挙げると、図1Bに示すような格子状である。
【0042】
グラフェン層13は一層であっても二層以上の複数層であってもよいが、一層増えるごとに可視光透過率が2.3%低下するため、グラフェン層13の層数は透明導電膜に必要とされる透過率に応じて適宜決められる。
【0043】
[透明導電膜の製造方法]
図2A〜Cおよび図3A〜Bはこの透明導電膜の製造方法の第1の例を示す。
図2Aに示すように、グラフェン層を形成するための金属からなる第1の基板14を用意する。第1の基板14は、好適には銅からなるが、これに限定されるものではない。
次に、図2Bに示すように、第1の基板14上に一層または複数層のグラフェン層13を形成する。グラフェン層13は、例えばCVD法により形成することができる。
【0044】
次に、図2Cに示すように、第1の基板14のグラフェン層13側を第2の基板15と貼り合わせる。第2の基板15は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)/ポリエチレンテレフタレート(PET)や熱剥離テープなどからなるが、これに限定されるものではない。
【0045】
次に、図3Aに示すように、第1の基板14を除去する。例えば、第1の基板14が銅からなる場合には、例えば硝酸鉄や塩化鉄水溶液でエッチングを行ったり、硫酸銅水溶液中で電解エッチングを行ったりすることにより除去することができる。
【0046】
次に、図3Bに示すように、透明基板11上に金属細線ネットワーク層12を形成したものをあらかじめ用意しておき、この金属細線ネットワーク層12上に、図3Aに示す第2の基板15のグラフェン層13側を貼り合わせる。この貼り合わせは、例えば、透明基板11上の金属細線ネットワーク層12と第2の基板15のグラフェン層13とを加熱プレスすることにより行うことができる。
【0047】
この後、第2の基板15が例えばPDMS/PETからなる場合はそのまま剥がすことで剥離させ、第2の基板15が例えば熱剥離テープからなる場合はこの熱剥離テープが剥離する温度に加熱することにより、グラフェン層13から第2の基板15を剥離する。
以上により、図1Aに示すように、目的とする透明導電膜が製造される。
【0048】
図4A〜Cはこの透明導電膜の製造方法の第2の例を示す。
第1の例による製造方法と同様にして図2Cに示す工程まで実行した後、図4Aに示すように、第1の基板14上に、形成すべき金属細線ネットワーク層12に対応したネットワーク形状を有するエッチング保護膜16を形成する。この場合、第1の基板14としては、Cu基板を用いる。エッチング保護膜16は、例えば、第1の基板14の全面にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストを所定のフォトマスクを用いて露光した後、現像を行うことにより形成することができる。また、エッチング保護膜16は、エッチング保護膜となる材料を印刷技術を用いて第1の基板14上に印刷することにより形成することもできる。
【0049】
次に、図4Bに示すように、エッチング保護膜16をマスクとして用いて第1の基板14をエッチングすることによりCuからなる金属細線ネットワーク層12を形成した後、エッチング保護膜16を除去する。
【0050】
次に、図4Cに示すように、第2の基板15の金属細線ネットワーク層12側を透明基板11と貼り合わせる。この貼り合わせは、例えば、透明基板11と第2の基板15の金属細線ネットワーク層12とを加熱プレスすることにより行うことができる。
【0051】
この後、グラフェン層13から第2の基板15を剥離する。
以上により、図1Aに示すように、目的とする透明導電膜が製造される。
【0052】
図5AおよびBはこの透明導電膜の製造方法の第3の例を示す。
図5Aに示すように、第1の実施の形態と同様にして、第1の基板14上に一層または複数層のグラフェン層13を形成する。
【0053】
次に、図5Bに示すように、透明基板11上に金属細線ネットワーク層12を形成したものをあらかじめ用意しておき、この金属細線ネットワーク層12上に、図5Aに示す第1の基板14のグラフェン層13側を貼り合わせる。
次に、第1の基板14を除去する。
以上により、図1Aに示すように、目的とする透明導電膜が製造される。
【0054】
〈実施例1〉
第1の基板14として、10cm×10cmの大きさに加工した厚さ9μmの電解銅箔(古川電工製)を用いた。
【0055】
この電解銅箔上に非特許文献1と同様な方法でグラフェン層を形成した。すなわち、この電解銅箔をCVD装置の管状炉中に設置し、水素ガスを流しながら1000℃で30分間保持した後、メタンと水素との混合ガスを流して15分間、電解銅箔上にグラフェン層を成長させる。成長後、再び水素ガスを流しながら、降温する。その後、グラフェン層を成長させた電解銅箔を管状炉から取り出す。
【0056】
次に、第2の基板15としてPDMS/PETフィルムを用い、このPDMS/PETフィルムを電解銅箔上のグラフェン層に貼り付けて支持体とした。
【0057】
次に、電解銅箔上にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストをフォトマスクを用いて露光した後、現像を行うことにより、エッチング保護膜16としてレジストパターンを形成する。
【0058】
次に、このレジストパターンをマスクとして用いて硫酸銅水溶液中で電解エッチングを行うことにより電解銅箔をパターニングした後、レジストパターンを除去する。こうして、銅からなる金属細線ネットワーク層を形成した。この金属細線ネットワーク層は正方格子状の形状を有し、金属細線部の幅は9μm、ピッチは300μm、厚さは10μmである。
【0059】
次に、透明基板11としてPET基板を用い、このPET基板とPDMS/PETフィルム上の金属細線ネットワーク層とを加熱プレスを行うことにより貼り合わせた後、金属細線ネットワーク層からPDMS/PETフィルムを剥離する。
以上のようにして、PET基板上に銅からなる金属細線ネットワーク層が形成され、その上にグラフェン層が形成された透明導電膜が製造された。
【0060】
〈実施例2〉
金属細線ネットワーク層の金属細線部のピッチを600μm、幅を9μm、厚さを10μmとしたことを除いて、実施例1と同様にして透明導電膜を製造した。
【0061】
〈実施例3〉
金属細線ネットワーク層の金属細線部のピッチを250μm、幅を20μm、厚さを12μmとしたことを除いて、実施例1と同様にして透明導電膜を製造した。
【0062】
〈比較例1〉
比較例1の透明導電膜は、特許文献5の実施例1の透明導電膜であり、銅からなる金属細線ネットワーク層上にITO層が形成された透明導電膜である。金属細線ネットワーク層の金属細線部のピッチは300μm、幅は9μm、厚さは10μmである。
【0063】
〈比較例2〉
比較例2の透明導電膜は、特許文献5の実施例2の透明導電膜であり、銅からなる金属細線ネットワーク層上にITO層が形成された透明導電膜である。金属細線ネットワーク層の金属細線部のピッチは600μm、幅は9μm、厚さは10μmである。
【0064】
〈比較例3〉
比較例3の透明導電膜は、特許文献6の実施例1の透明導電膜であり、銅からなる金属細線ネットワーク層上にITO層が形成された透明導電膜である。金属細線ネットワーク層の金属細線部のピッチは250μm、幅は20μm、厚さは12μmである。
【0065】
〈比較例4〉
比較例4の透明導電膜は、特許文献7の実施例1の透明導電膜であり、銀からなる金属細線ネットワーク層上にカーボンナノチューブ層が形成された透明導電膜である。金属細線ネットワーク層の金属細線部のピッチは300μm、幅は10μmである。
【0066】
〈比較例5〉
比較例5の透明導電膜は、銅からなる金属細線ネットワーク層のみからなる透明導電膜である。金属細線ネットワーク層の金属細線部のピッチは300μm、幅は9μm、厚さは10μmである。
【0067】
[透明導電膜の特性評価]
実施例1〜3および比較例1〜5の透明導電膜に対して、全光線透過率およびシート抵抗の測定を行った。これらの透明導電膜のシート抵抗および透過率を表1に示す。表1には、実施例1〜3についてはグラフェン層のシート抵抗、比較例1、2の透明導電膜についてはITO層のシート抵抗も載せた。
【0068】
全光線透過率およびシート抵抗の測定を行った後、これらの透明導電膜に対して電解液中での腐食性の評価を行った。電解液は、メトキシプロピオニトリル(MPM)2gにヨウ化ナトリウム(NaI)0.1mol/l、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨーダイド(DMPImI)1.4mol/l、ヨウ素(I2 )0.15mol/l、4−tert−ブチルピリジン(TBP)0.2mol/lを溶解させて調製した。
【0069】
実施例1〜3および比較例1〜5の透明導電膜を2cm×2cmの大きさに切り取って10mlの電解液中に室温で10日間浸漬した。透明導電膜を電解液から取り出した後、水洗し、乾燥後、光学顕微鏡で透明導電膜を観察し、金属細線部の腐食を評価した。その結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1より、実施例1〜3の透明導電膜は、シート抵抗が0.01Ω/□から0.06Ω/□と比較例1〜5に対して同等以下で十分に低く、可視光透過率も76%から87%と比較例1〜5に対して同等以上で十分に高い。加えて、比較例1〜5の透明導電膜は電解液により一部腐食し、あるいは溶解してしまうのに対し、実施例1〜3の透明導電膜は腐食が生じなかった。すなわち、実施例1〜3の透明導電膜は透明導電性に優れているだけでなく、電解液に対する耐食性も高い。
【0072】
以上のように、この第1の実施の形態によれば、透明導電膜が、透明基板11上に金属細線ネットワーク層12が設けられ、その上にグラフェン層13が設けられた構造を有する。このため、低シート抵抗、高透過率でしかも電解液に対する耐食性に優れた透明導電膜を得ることができる。また、この透明導電膜では、金属細線ネットワーク層12の開口率を大きく保ったまま、全面にわたって導電性を確保することができる。また、この透明導電膜は既存の確立された簡便な技術を用いて低コストで容易に製造することができ、タクトタイムも短縮することができる。また、透明基板11として透明プラスチック基板を用いることにより、フレキシブルな透明導電膜を容易に得ることができる。さらに、この透明導電膜は、バリア性に優れたグラフェン層13を用いていることにより、水分などに対するガスバリア性の向上を図ることもできる。
【0073】
〈2.第2の実施の形態〉
[透明導電膜]
第2の実施の形態による透明導電膜においては、透明基板11上に一層または複数層のグラフェン層13が設けられ、このグラフェン層13上に金属細線ネットワーク層12が設けられている。その他のことは第1の実施の形態による透明導電膜と同様である。
【0074】
[透明導電膜の製造方法]
図6A〜Cはこの透明導電膜の製造方法を示す。
図6Aに示すように、第1の実施の形態と同様にして、第1の基板14上に一層または複数層のグラフェン層13を形成する。
【0075】
次に、図6Bに示すように、第1の基板14のグラフェン層13側を透明基板11と貼り合わせる。
次に、図6Cに示すように、第2の実施の形態と同様にして第1の基板14をエッチングすることにより金属細線ネットワーク層12を形成する。
以上により、目的とする透明導電膜が製造される。
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態とほぼ同様な利点を得ることができる。
【0076】
〈3.第3の実施の形態〉
[透明導電膜]
図7に示すように、第3の実施の形態による透明導電膜においては、透明基板11上に一層または複数層のグラフェン層13が設けられ、このグラフェン層13上に金属細線ネットワーク層12が設けられ、さらにその上に一層または複数層のグラフェン層13が設けられている。すなわち、この透明導電膜においては、金属細線ネットワーク層12の両面にグラフェン層13が設けられている。その他のことは第1の実施の形態による透明導電膜と同様である。
【0077】
[透明導電膜の製造方法]
図8A〜Dはこの透明導電膜の製造方法を示す。
図8Aに示すように、第1の実施の形態と同様にして、第1の基板14上に一層または複数層のグラフェン層13を形成する。
【0078】
次に、図8Bに示すように、第1の基板14のグラフェン層13側を透明基板11と貼り合わせる。
次に、図8Cに示すように、第2の実施の形態と同様にして第1の基板14をエッチングすることにより金属細線ネットワーク層12を形成する。
【0079】
次に、第1の実施の形態と同様にして図3Aに示すように第2の基板15上にグラフェン層13を形成したもののグラフェン層13側を金属細線ネットワーク層12と貼り合わせる。
【0080】
次に、第2の基板15を除去する。
以上により、図7に示すように、目的とする透明導電膜が製造される。
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0081】
〈4.第4の実施の形態〉
[色素増感光電変換装置]
図9に示すように、この色素増感光電変換装置においては、透明基板51上に透明導電膜52が設けられ、この透明導電膜52上に多孔質光電極53が設けられている。この多孔質光電極53には一種または複数種の光増感色素(図示せず)が結合している。一方、対向基板となる透明基板54上に透明導電膜55が設けられ、この透明導電層55上に対極56が設けられている。そして、透明基板51上の多孔質光電極53と透明基板54上の対極56との間に電解質層57が充填され、これらの透明基板51および透明基板54の外周部が封止材(図示せず)で封止されている。ここで、透明基板54および透明導電膜55の代わりにそれぞれ不透明基板および不透明導電膜を用いてもよい。
【0082】
この色素増感光電変換装置においては、透明導電膜52、55の両方あるいはいずれか一方が、金属細線ネットワーク層12とグラフェン層13とを有する第1の実施の形態による透明導電膜により構成される。この場合、この透明導電膜のグラフェン層13側が電解質層57を向くようにする。透明基板51および透明導電膜52の全体、あるいは、透明基板54および透明導電膜55の全体が、透明基板11上に金属細線ネットワーク層12が設けられ、その上にグラフェン層13が設けられた構造を有する透明導電膜により構成されてもよい。
【0083】
多孔質光電極53としては、典型的には、半導体微粒子を焼結させた多孔質半導体層が用いられる。光増感色素はこの半導体微粒子の表面に吸着している。半導体微粒子の材料としては、シリコンに代表される元素半導体、化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する半導体などを用いることができる。これらの半導体は、光励起下で伝導帯電子がキャリアとなり、アノード電流を生じるn型半導体であることが好ましい。具体的には、例えば、酸化チタン(TiO2 )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3 )、酸化ニオブ(Nb2 5 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化スズ(SnO2 )などの半導体が用いられる。これらの半導体の中でも、TiO2 、取り分けアナターゼ型のTiO2 を用いることが好ましい。ただし、半導体の種類はこれらに限定されるものではなく、必要に応じて、二種類以上の半導体を混合または複合化して用いることができる。また、半導体微粒子の形態は粒状、チューブ状、棒状などのいずれであってもよい。
【0084】
上記の半導体微粒子の粒径に特に制限はないが、一次粒子の平均粒径で1〜200nmが好ましく、特に好ましくは5〜100nmである。また、半導体微粒子よりも大きいサイズの粒子を混合し、この粒子で入射光を散乱させ、量子収率を向上させることも可能である。この場合、別途混合する粒子の平均サイズは20〜500nmであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0085】
多孔質光電極53は、できるだけ多くの光増感色素を結合させることができるように、半導体微粒子からなる多孔質半導体層の内部の空孔に面する微粒子表面も含めた実表面積の大きいものが好ましい。このため、多孔質光電極53を透明導電膜52の上に形成した状態での実表面積は、多孔質光電極53の外側表面の面積(投影面積)に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。この比に特に上限はないが、通常1000倍程度である。
【0086】
一般に、多孔質光電極53の厚さが増し、単位投影面積当たりに含まれる半導体微粒子の数が増加するほど、実表面積が増加し、単位投影面積に保持することができる光増感色素の量が増加するため、光吸収率が高くなる。一方、多孔質光電極53の厚さが増加すると、光増感色素から多孔質光電極53に移行した電子が透明導電膜52に達するまでに拡散する距離が増加するため、多孔質光電極53内での電荷再結合による電子の損失も大きくなる。従って、多孔質光電極53には好ましい厚さが存在するが、この厚さは一般的には0.1〜100μmであり、1〜50μmであることがより好ましく、3〜30μmであることが特に好ましい。
【0087】
電解質層57を構成する電解液としては、酸化還元系(レドックス対)を含む溶液が挙げられる。酸化還元系としては、具体的には、例えば、ヨウ素(I2 )と金属または有機物のヨウ化物塩との組み合わせや、臭素(Br2 )と金属または有機物の臭化物塩との組み合わせなどが用いられる。金属塩を構成するカチオンは、例えば、リチウム(Li+ )、ナトリウム(Na+ )、カリウム(K+ )、セシウム(Cs+ )、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)などである。また、有機物塩を構成するカチオンとしては、テトラアルキルアンモニウムイオン類、ピリジニウムイオン類、イミダゾリウムイオン類などの第四級アンモニウムイオンが好適なものであり、これらを単独に、あるいは二種類以上を混合して用いることができる。
【0088】
電解質層57を構成する電解液としては、上記のほかに、フェロシアン酸塩とフェリシアン酸塩との組み合わせや、フェロセンとフェリシニウムイオンとの組み合わせなどの金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオールとアルキルジスルフィドとの組み合わせなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノンとキノンとの組み合わせなどを用いることもできる。
【0089】
電解質層57の電解質としては、上記の中でも特に、ヨウ素(I2 )と、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、イミダゾリウムヨーダイドなどの第四級アンモニウム化合物とを組み合わせた電解質が好ましい。電解質塩の濃度は溶媒に対して0.05〜10Mが好ましく、さらに好ましくは0.2〜3Mである。ヨウ素(I2 )または臭素(Br2 )の濃度は0.0005〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.5Mである。
【0090】
透明基板51、54は、光が透過しやすい材質と形状のものであれば特に限定されるものではなく、種々の基板材料を用いることができるが、特に可視光の透過率が高い基板材料を用いることが好ましい。また、色素増感光電変換装置に外部から侵入しようとする水分やガスを阻止する遮断性能が高く、また、耐溶剤性や耐候性に優れている材料が好ましい。具体的には、透明基板51、54の材料としては、石英やガラスなどの透明無機材料や、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類などの透明プラスチックが挙げられる。透明基板51、54の厚さは特に制限されず、光の透過率や、光電変換装置内外を遮断する性能を勘案して、適宜選択することができる。
【0091】
多孔質光電極53に結合させる光増感色素は増感作用を示すものであれば特に制限はないが、この多孔質光電極53の表面に吸着する酸官能基を有するものが好ましい。光増感色素は、一般的には、カルボキシ基、リン酸基などを有するものが好ましく、この中でも特にカルボキシ基を有するものが好ましい。光増感色素の具体例を挙げると、例えば、ローダミンB、ローズベンガル、エオシン、エリスロシンなどのキサンテン系色素、メロシアニン、キノシアニン、クリプトシアニンなどのシアニン系色素、フェノサフラニン、カブリブルー、チオシン、メチレンブルーなどの塩基性染料、クロロフィル、亜鉛ポルフィリン、マグネシウムポルフィリンなどのポルフィリン系化合物が挙げられ、その他のものとしてはアゾ色素、フタロシアニン化合物、クマリン系化合物、ビピリジン錯化合物、アントラキノン系色素、多環キノン系色素などが挙げられる。これらの中でも、リガンド(配位子)がピリジン環またはイミダゾリウム環を含み、Ru、Os、Ir、Pt、Co、FeおよびCuからなる群より選ばれた少なくとも一種類の金属の錯体の色素は量子収率が高く好ましい。特に、シス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)またはトリス(イソチオシアナート)−ルテニウム(II)−2,2' :6' ,2" −ターピリジン−4,4' ,4" −トリカルボン酸を基本骨格とする色素分子は吸収波長域が広く好ましい。ただし、光増感色素は、これらに限定されるものではない。光増感色素としては、典型的には、これらのうちの一種類のものを用いるが、二種類以上の光増感色素を混合して用いてもよい。二種類以上の光増感色素を混合して用いる場合、光増感色素は、好適には、多孔質光電極53に保持された、MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)を引き起こす性質を有する無機錯体色素と、この多孔質光電極53に保持された、分子内CT(Charge Transfer)の性質を有する有機分子色素とを有する。この場合、無機錯体色素と有機分子色素とは、多孔質光電極53に互いに異なる立体配座で吸着する。無機錯体色素は、好適には、多孔質光電極53に結合する官能基としてカルボキシ基またはホスホノ基を有する。また、有機分子色素は、好適には、同一炭素に、多孔質光電極53に結合する官能基としてカルボキシ基またはホスホノ基とシアノ基、アミノ基、チオール基またはチオン基とを有する。無機錯体色素は例えばポリピリジン錯体、有機分子色素は例えば、電子供与性の基と電子受容性の基とを併せ持ち、分子内CTの性質を有する芳香族多環共役系分子である。
【0092】
光増感色素の多孔質光電極53への吸着方法に特に制限はないが、上記の光増感色素を例えばアルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水などの溶媒に溶解させ、これに多孔質光電極53を浸漬したり、光増感色素を含む溶液を多孔質光電極53上に塗布したりすることができる。また、光増感色素の分子同士の会合を低減する目的でデオキシコール酸などを添加してもよい。必要に応じて紫外線吸収剤を併用することもできる。
【0093】
多孔質光電極53に光増感色素を吸着させた後に、過剰に吸着した光増感色素の除去を促進する目的で、アミン類を用いて多孔質光電極53の表面を処理してもよい。アミン類の例としてはピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンなどが挙げられ、これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0094】
対極56の材料としては、導電性物質であれば任意のものを用いることができるが、絶縁性材料の電解質層57に面している側に導電層が形成されていれば、これも用いることが可能である。対極56の材料としては、電気化学的に安定な材料を用いることが好ましく、具体的には、白金、金、カーボン、導電性ポリマーなどを用いることが望ましい。
【0095】
また、対極56での還元反応に対する触媒作用を向上させるために、電解質層57に接している対極56の表面は、微細構造が形成され、実表面積が増大するように形成されていることが好ましい。例えば、対極56の表面は、白金であれば白金黒の状態に、カーボンであれば多孔質カーボンの状態に形成されていることが好ましい。白金黒は、白金の陽極酸化法や塩化白金酸処理などによって、また多孔質カーボンは、カーボン微粒子の焼結や有機ポリマーの焼成などの方法によって形成することができる。
【0096】
封止材の材料としては、耐光性、絶縁性、防湿性などを備えた材料を用いることが好ましい。封止材の材料の具体例を挙げると、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、アクリル樹脂、ポリイソブチレン樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート) 、アイオノマー樹脂、セラミック、各種熱融着フィルムなどである。
【0097】
また、電解質層57を形成するために電解液を注入する場合、注入口が必要であるが、多孔質光電極53およびこれに対向する部分の対極56上でなければ注入口の場所は特に限定されない。また、電解液の注入方法に特に制限はないが、外周が予め封止され、溶液の注入口を開けられた光電変換装置の内部に減圧下で注液を行う方法が好ましい。この場合、注入口に溶液を数滴垂らし、毛細管現象により注液する方法が簡便である。また、必要に応じて減圧もしくは加熱下で注液の操作を行うこともできる。完全に溶液が注入された後、注入口に残った溶液を除去し、注入口を封止する。この封止方法にも特に制限はないが、必要であればガラス板やプラスチック基板を封止剤で貼り付けて封止することもできる。また、この方法以外にも、液晶パネルの液晶滴下注入(ODF;One Drop Filling)工程のように、電解液を基板上に滴下して減圧下で貼り合わせて封止することもできる。封止を行った後、電解液を多孔質光電極53へ十分に含漬させるため、必要に応じて加熱、加圧の操作を行うことも可能である。
【0098】
[色素増感光電変換装置の製造方法]
次に、この色素増感光電変換装置の製造方法について説明する。
まず、透明基板51上に形成された透明導電膜52上に多孔質光電極53を形成する。この多孔質光電極53の形成方法に特に制限はないが、物性、利便性、製造コストなどを考慮した場合、湿式製膜法を用いるのが好ましい。湿式製膜法では、半導体微粒子の粉末あるいはゾルを水などの溶媒に均一に分散させたペースト状の分散液を調製し、この分散液を透明基板51の透明導電膜52上に塗布または印刷する方法が好ましい。分散液の塗布方法または印刷方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などを用いることができる。また、印刷方法としては、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0099】
半導体微粒子の材料としてアナターゼ型TiO2 を用いる場合、このアナターゼ型TiO2 は、粉末状、ゾル状、またはスラリー状の市販品を用いてもよいし、酸化チタンアルコキシドを加水分解するなどの公知の方法によって所定の粒径のものを形成してもよい。市販の粉末を使用する際には粒子の二次凝集を解消することが好ましく、ペースト状分散液の調製時に、乳鉢やボールミルなどを使用して粒子の粉砕を行うことが好ましい。このとき、二次凝集が解消された粒子が再度凝集するのを防ぐために、アセチルアセトン、塩酸、硝酸、界面活性剤、キレート剤などをペースト状分散液に添加することができる。また、ペースト状分散液の粘性を増すために、ポリエチレンオキシドやポリビニルアルコールなどの高分子、あるいはセルロース系の増粘剤などの各種増粘剤をペースト状分散液に添加することもできる。
【0100】
多孔質光電極53は、半導体微粒子を透明導電膜52上に塗布または印刷した後に、半導体微粒子同士を電気的に接続し、多孔質光電極53の機械的強度を向上させ、透明導電膜52との密着性を向上させるために、焼成することが好ましい。焼成温度の範囲に特に制限はないが、温度を上げ過ぎると、透明導電膜52の電気抵抗が高くなり、さらには透明導電膜52が溶融することもあるため、通常は40〜700℃が好ましく、40〜650℃がより好ましい。また、焼成時間にも特に制限はないが、通常は10分〜10時間程度である。焼成を行う観点からは、透明導電膜52を形成する透明基板51としては、好適には、十分な耐熱性がある石英基板やガラス基板などが用いられる。
【0101】
次に、多孔質光電極53が形成された透明基板51を、光増感色素を所定の溶媒に溶解した溶液中に浸漬することにより、多孔質光電極53に光増感色素を結合させる。
【0102】
一方、透明基板54上に形成された透明導電膜55上にスパッタリング法などにより対極56を形成する。
次に、透明基板51と透明基板54とを多孔質光電極53と対極56とが所定の間隔、例えば1〜100μm、好ましくは1〜50μmの間隔をおいて互いに対向するように配置する。そして、透明基板51および透明基板54の外周部に封止材(図示せず)を形成して電解質層57が封入される空間を作り、この空間に例えば透明基板51に予め形成された注液口(図示せず)から電解液を注入し、電解質層57を形成する。その後、この注液口を塞ぐ。
以上により、目的とする色素増感光電変換装置が製造される。
【0103】
[色素増感光電変換装置の動作]
次に、この色素増感光電変換装置の動作について説明する。
この色素増感光電変換装置は、光が入射すると、対極56を正極、透明導電膜52を負極とする電池として動作する。その原理は次の通りである。なお、ここでは、多孔質光電極53の材料としてTiO2 を用い、レドックス対としてI- /I3 - の酸化還元種を用いることを想定しているが、これに限定されるものではない。また、多孔質光電極53に一種類の光増感色素が結合していることを想定する。
【0104】
透明基板51および透明導電膜52を透過し、多孔質光電極53に入射した光子を多孔質光電極53に結合した光増感色素が吸収すると、この光増感色素中の電子が基底状態(HOMO)から励起状態(LUMO)へ励起される。こうして励起された電子は、光増感色素と多孔質光電極53との間の電気的結合を介して、多孔質光電極53を構成するTiO2 の伝導帯に引き出され、多孔質光電極53を通って透明導電膜52に到達する。
【0105】
一方、電子を失った光増感色素は、電解質層57中の還元剤、例えばI- から下記の反応によって電子を受け取り、電解質層57中に酸化剤、例えばI3 - (I2 とI- との結合体)を生成する。
2I- → I2 + 2e-
2 + I- → I3 -
【0106】
こうして生成された酸化剤は拡散によって対極56に到達し、上記の反応の逆反応によって対極56から電子を受け取り、もとの還元剤に還元される。
3 - → I2 + I-
2 + 2e- → 2I-
【0107】
透明導電膜52から外部回路へ送り出された電子は、外部回路で電気的仕事をした後、対極56に戻る。このようにして、光増感色素にも電解質層57にも何の変化も残さず、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
【0108】
この第2の実施の形態によれば、透明導電膜52または透明導電膜55として第1の実施の形態による透明導電膜を用いることにより、透明導電膜52または透明導電膜55を低シート抵抗で高光透過率とすることができる。加えて、この透明導電膜を構成する金属細線ネットワーク層12およびグラフェン層13のうちグラフェン層13側が電解質層57側を向くようにすることにより、透明導電膜52または透明導電膜55の電解液に対する耐食性の向上を図ることができる。また、透明導電膜52として第1の実施の形態による透明導電膜を用いた場合においては、グラフェン層13により、金属細線ネットワーク層12の金属細線部12aから金属が多孔質光電極53にマイグレーションするのを防止することができる。以上により、高性能で長寿命の色素増感光電変換装置を低コストで実現することができる。
【0109】
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0110】
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0111】
11…透明基板、12…金属細線ネットワーク層、13…グラフェン層、14…第1の基板、15…第2の基板、16…エッチング保護膜、51…透明基板、52…透明導電膜、53…多孔質光電極、54…透明基板、55…透明導電膜、56…対極、57…電解質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属細線ネットワーク層とこの金属細線ネットワーク層の少なくとも一方の面に設けられた一層または複数層のグラフェン層とを有する透明導電膜。
【請求項2】
上記金属細線ネットワーク層が透明基板上に設けられ、上記金属細線ネットワーク層上に上記グラフェン層が設けられている請求項1記載の透明導電膜。
【請求項3】
上記金属細線ネットワーク層が銅、銀、アルミニウム、金、鉄、ニッケル、チタンおよび白金からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属からなる請求項2記載の透明導電膜。
【請求項4】
上記透明導電膜のシート抵抗が0.01Ω/□以上10Ω/□以下である請求項3記載の透明導電膜。
【請求項5】
上記透明導電膜の波長550nmでの光の透過率が70%以上である請求項4記載の透明導電膜。
【請求項6】
上記透明導電膜の導電性面の平滑性が5μmより大きい請求項5記載の透明導電膜。
【請求項7】
上記透明基板がプラスチック基板である請求項2記載の透明導電膜。
【請求項8】
上記金属細線ネットワーク層の両面に上記グラフェン層が設けられている請求項1記載の透明導電膜。
【請求項9】
上記金属細線ネットワーク層の表面が黒色化処理されている請求項1記載の透明導電膜。
【請求項10】
上記グラフェン層が透明基板上に設けられ、上記グラフェン層上に上記金属細線ネットワーク層が設けられている請求項1記載の透明導電膜。
【請求項11】
金属からなる第1の基板上に一層または複数層のグラフェン層を形成する工程と、
上記第1の基板の上記グラフェン層側を第2の基板と貼り合わせる工程と、
上記第1の基板を除去する工程と、
上記第2の基板の上記グラフェン層側を透明基板上に形成された金属細線ネットワーク層と貼り合わせる工程と、
上記第2の基板を除去する工程とを有する透明導電膜の製造方法。
【請求項12】
上記透明基板上に一層または複数層のグラフェン層が形成され、このグラフェン層上に上記金属細線ネットワーク層が形成されている請求項11記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項13】
上記第1の基板がアルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、白金、銀、金およびタングステンからなる群より選ばれた少なくとも一種の金属からなる請求項11記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項14】
金属からなる第1の基板上に一層または複数層のグラフェン層を形成する工程と、
上記第1の基板の上記グラフェン層側を第2の基板と貼り合わせる工程と、
上記第1の基板をパターニングすることにより金属細線ネットワーク層を形成する工程と、
上記第2の基板の上記金属細線ネットワーク層側を透明基板と貼り合わせる工程と、
上記第2の基板を除去する工程とを有する透明導電膜の製造方法。
【請求項15】
金属からなる第1の基板上に一層または複数層のグラフェン層を形成する工程と、
上記第1の基板の上記グラフェン層側を透明基板上に形成された金属細線ネットワーク層と貼り合わせる工程と、
上記第1の基板を除去する工程とを有する透明導電膜の製造方法。
【請求項16】
金属からなる第1の基板上に一層または複数層のグラフェン層を形成する工程と、
上記第1の基板の上記グラフェン層側を透明基板と貼り合わせる工程と、
上記第1の基板をパターニングすることにより金属細線ネットワーク層を形成する工程とを有する透明導電膜の製造方法。
【請求項17】
上記金属細線ネットワーク層を形成した後、第2の基板上に形成された一層または複数層のグラフェン層を上記金属細線ネットワーク層と貼り合わせる工程と、上記第2の基板を除去する工程とをさらに有する請求項16記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項18】
透明基板上に透明導電膜を介して設けられた多孔質光電極と対極との間に電解質層が充填された構造を有し、
上記透明導電膜が、金属細線ネットワーク層とこの金属細線ネットワーク層の少なくとも一方の面に設けられた一層または複数層のグラフェン層とを有する透明導電膜である光電変換装置。
【請求項19】
上記対極は透明基板上に透明導電膜を介して設けられ、この透明導電膜が、金属細線ネットワーク層とこの金属細線ネットワーク層の少なくとも一方の面に設けられた一層または複数層のグラフェン層とを有する透明導電膜である請求項17記載の光電変換装置。
【請求項20】
金属細線ネットワーク層とこの金属細線ネットワーク層の少なくとも一方の面に設けられた一層または複数層のグラフェン層とを有する透明導電膜を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−94254(P2012−94254A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238157(P2010−238157)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】