透明導電膜及びこれを用いた光学装置
【課題】高い導電性、光透過率をもつ透明導電膜及びこれを用いた光学装置を提供すること。
【解決手段】透明導電膜は、透明基板(PET)上に積層された導電性高分子層(PEDOT)と、この導電性高分子層上に積層されたCNT層を有し、CNT層、導電性高分子層は、塗布法、ディップ法、スピンコート法の何れかによって形成されている。透明導電膜は、CNT層が2つの導電性高分子層に挟まれ積層されたサンドイッチ構造からなる層を有しており、サンドイッチ構造からなる層は複数有していてもよく、CNT層が最も上層に積層されている。透明導電膜は、優れた導電特性及び光学特性を有し、この透明電極が形成された透明基板は、タッチパネル、エレクトロルミネッセンス装置、エレクトロクロミック装置、太陽電池等の光学装置における基板として、好適に使用できる。
【解決手段】透明導電膜は、透明基板(PET)上に積層された導電性高分子層(PEDOT)と、この導電性高分子層上に積層されたCNT層を有し、CNT層、導電性高分子層は、塗布法、ディップ法、スピンコート法の何れかによって形成されている。透明導電膜は、CNT層が2つの導電性高分子層に挟まれ積層されたサンドイッチ構造からなる層を有しており、サンドイッチ構造からなる層は複数有していてもよく、CNT層が最も上層に積層されている。透明導電膜は、優れた導電特性及び光学特性を有し、この透明電極が形成された透明基板は、タッチパネル、エレクトロルミネッセンス装置、エレクトロクロミック装置、太陽電池等の光学装置における基板として、好適に使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜及びこれを用いた光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電膜材料としてはインジウム錫酸化物(ITO)が主に用いられているが、機械的特性が悪く、曲げ等に弱く、屈曲可能なプラスチック基板を用いたディスプレイ、太陽電池等柔軟な用途には適していない、また、資源が少なくインジウムが高価であるという問題がある。
【0003】
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube、以下、CNTと略記する)は、優れた電気的、機械的特性を有し、ナノテクノロジーの有力な材料として広範囲の分野での応用が期待され、基礎研究、応用研究が盛んに行われている。その一つとして、CNT等を含む溶液を基板上に塗布する等の方法による透明導電膜の作成が検討されている。
【0004】
「カーボンナノチューブ含有フィルムの製造方法及びカーボンナノチューブ含有コーティング」と題する特許文献1には、以下の記載がある。
【0005】
CNT含有コーティングフィルムの製造方法において、前記CNT含有コーティングフィルムの製造方法は、少なくともCNTと溶媒とを含有する第1の分散体を基材の表面に塗布し、第1の分散体の溶媒を除去して、CNTを三次元網目構造にし、更に、この上に少なくとも樹脂と溶媒とを含有する第2の分散体を塗布して、第2の分散体をCNTの三次元網目構造の中に浸透させたことを特徴とするCNT含有コーティングフィルムの製造方法。
【0006】
特許文献1の発明のフィルムは、少ないCNT含有量で優れた導電性及び透明性が得られる。好ましい実施形態では、フィルム中にCNTは、約0.001から約1重量%存在する。好ましくは、前記フィルム中にCNTは約0.01から約0.1%存在し、このため優れた透明性が得られ低ヘイズとなる。
【0007】
「カーボンナノチューブ分散溶液及びカーボンナノチューブ分散体」と題する特許文献2には、以下の記載がある。
【0008】
従来の技術では、CNTの溶液に対する分散性向上をはかるため、CNTの表面を改質すると本来のCNTの特性、例えば、高導電性や半導体特性が損なわれるという問題が生じていた。そこで本発明は上記問題点を解決すべく、CNTの高導電性や半導体特性を維持しながら、溶剤への分散性に優れたCNT、そのCNTを有するCNT分散溶液、及び該溶液によって得られるCNT分散体を提供する。
【0009】
上記課題を達成するために、特許文献2の発明は下記の構成からなる。
(1)カーボンナノチューブと溶媒を有するカーボンナノチューブ分散溶液であって、カーボンナノチューブの少なくとも一部に共役系重合体が付着し、カーボンナノチューブが溶媒中に分散しているカーボンナノチューブ分散溶液。
(2)カーボンナノチューブの少なくとも一部に共役系重合体を付着させる工程と、共役系重合体が付着したカーボンナノチューブを該共役系重合体が可溶な溶媒で洗浄する工程と、上記工程によって得られたカーボンナノチューブを溶媒に溶解させる工程とを有する(1)記載のカーボンナノチューブ分散溶液の製造方法。
(3)上記(1)のカーボンナノチューブ分散溶液を塗布することによって形成されるCNT分散体である。
【0010】
特許文献2の発明によれば、CNTを溶液に均一に分散させることができ、そこで得られたCNT分散溶液を用いることによって、CNT自身が本来有する高導電性と優れた半導体特性を持つ分散体を、高温を必要とせず室温で形成することができる。また、特許文献2の発明によれば、CNT分散体の膜厚を均一に形成できることから、CNT分散体膜を電子放出源とした電子放出素子を得ることができ、またCNT分散体の膜厚を薄くすることで、透明導電体を得ることができる。
【0011】
特許文献2の発明は、共役系重合体が少なくとも一部に付着したCNTを溶媒に分散することによって均一なCNT分散溶液ができること、更には該溶液を基板上に塗布することによって均一なCNT分散体が得られるものである。なお、特許文献2の発明では、分散という言葉を用いるが、これはCNTが溶媒中に溶解している現象も含むものである。
【0012】
以下、特許文献2の発明について詳述する。特許文献2の発明においてCNTに付着する重合体は、共役系重合体であることが必要で、更に好ましくは直鎖状共役系重合体である。ここで直鎖状とは、重合体の骨格構造が安定状態(外力が加わっていない状態)において螺旋構造を取らず、まっすぐ延びているものを意味し、また、共役系重合体とは重合体の骨格の炭素−炭素の結合が1重結合と2重結合が交互に連なっている重合体を意味する。共役系重合体は共役系構造が伸びた構造からなるのでCNTと重合体とでの電荷の移動がスムーズであり、またCNTに付着した重合体以外の重合体が介在しないため、CNTの高い導電性や半導体特性を効率的に利用できるという特徴がある。特許文献2の発明のCNT分散溶液においてCNTの濃度を変えることによって該溶液を塗布した基板の電導性や半導体特性を制御することができる。
【0013】
共役系重合体としては、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ−p−フェニレン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体等が挙げられる。
【0014】
「カーボンナノチューブ含有組成体、これからなる塗膜を有する複合体、及びそれらの製造方法」と題する特許文献3には、以下の記載がある。
【0015】
特許文献3の発明の第1は、スルホン酸基のアンモニウム塩及び/又はカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマ(a)、溶媒(b)、及びCNT(c)を含有することを特徴とするCNT含有組成物である。特許文献3のCNT含有組成物は、更に高分子化合物(d)、塩基性化合物(e)、界面活性剤(f)、シランカップリング剤(g)及び/又はコロイダルシリカ(h)を含有することで、その性能の向上をはかることができる。
【0016】
特許文献3の発明の第2は、スルホン酸基のアンモニウム塩及び/又はカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマ(a)、溶媒(b)、及びCNT(c)を混合し、超音波を照射することを特徴とするCNT含有組成物の製造方法である。
【0017】
特許文献3の発明の第3は、基材の少なくとも一つの面上に、特許文献3の発明のCNT含有組成物からなる塗膜を有することを特徴とする複合体である。特許文献3の発明の第4は、基材の少なくとも一つの面上に、特許文献3のCNT含有組成物を塗工し、常温で放置或いは加熱処理を行って塗膜を形成することを特徴とする複合体の製造方法である。
【0018】
また、特許文献3の第5は、基材の少なくとも一つの面上に、特許文献3のCNT含有組成物を塗工し、常温で放置或いは加熱処理を行って塗膜を形成し、該塗膜の物性を評価することを特徴とするCNTの物性評価方法である。また、特許文献3の第6は、発明のCNT含有組成物を脱溶媒してなるCNT含有高分子材料である。また、特許文献3の第7は、特許文献3のCNT含有高分子材料を焼成してなるCNT含有炭素材料である。
【0019】
「突出した導電層を有する成形体」と題する特許文献4には、以下の記載がある。
【0020】
特許文献4の発明の実施形態の1つは、基材と該基材の表面に形成された導電層とからなる導電性成形体であって、該導電層はその内部で細かい導電繊維は分散されて、少なくとも繊維のある部分が基材に固定され、少なくとも前記繊維のある部分が導電層の最表面から突出して、前記繊維がお互いに電気的に接触して配列しているものである。好ましくは、繊維が最表面から突出した部分で、或は基材に固定された部分でお互いに電気的に接触していることである。
【0021】
基材は基材本体と表面層とからなり、この基材に固定される繊維の部分は表面層に固定されているか、或は基材に固定された繊維の部分が繊維の端部或は繊維の中間部である。好ましくは、繊維は他の繊維から分離していることであり、多数の繊維が束を形成していれば、該繊維の束が他から分離していることである。好ましい繊維は炭素繊維であるが、これに限定されるものではない。そして、炭素繊維はCNTであることが好ましい。導電層の厚さは5〜500nmであることが好ましい。表面層は硬化性樹脂で形成されていることが好ましく、またそのような表面層は熱可塑性樹脂から形成されていることも好ましい。導電層は、表面抵抗率が約100〜約1011Ω/□であることが好ましく、550nmの光線透過率が50%以上で、表面抵抗率が100〜1011Ω/□であることが好ましい。
【0022】
「タッチパネル」と題する特許文献5には、以下の記載がある。
ガラス基板の上面の透明導電膜は、透明性の液状の紫外線硬化型のアクリル樹脂にマット材(酸化シリコン)と共にCNTを10%未満練り込んだCNT混合アクリル樹脂を用意し、ロールを使用してCNT混合アクリル樹脂をガラス基板の上面に塗布して、塗布膜を形成し、最後に紫外線を照射し、アクリル樹脂を硬化させて形成される。透明導電膜内では、CNTは不規則に並んでいる。
【0023】
また、非特許文献1には、SWNT間の抵抗に関する記載がある。
【0024】
また、非特許文献2には、ろ過法によるSWNT透明フィルムの形成についての記載がある。
【0025】
また、非特許文献2には、SWNTフィルムをPEDOT:PSSでコーティングして表面粗度を小さくする記載がある。
【0026】
【特許文献1】特許第3665969号公報(特許請求の範囲(請求項1)、段落0013)
【特許文献2】特開2005−89738号公報(段落0005〜0010)
【特許文献3】特開2005−281672号公報(段落0009〜0013)
【特許文献4】特表2006−519712号公報(段落0008〜0009)
【特許文献5】特開2007-11997号公報(段落0012、図3)
【非特許文献1】M.S.Fuhrer et al, “Crossed Nanotube Junctions”, Science, Vol.288(2000)494 - 497(第494頁)
【非特許文献2】Z. Wu et al, “Transparent, conductive Carbon Nanotube Films”, Science, Vol.305(2004)1273 - 1276(第1273頁)
【非特許文献3】M.W.Rowell et al, “Organic solar cells with carbon nanotube network electrodes”, Appl. phys. lett., 88, 233506(2006)(233506-2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
従来、CNT等を含む溶液を基板上に塗布する等の方法により透明導電膜の成膜が検討されているが、CNTは、溶媒中に混合した場合に、溶液中に安定に分散させることが非常に困難で、容易に凝集をしてしまうため、塗布等により、均一な導電膜を作成することが困難という問題がある。このため、分散剤等を用いて安定な分散溶液を作成する方法や、分散させた後に均一に成膜する方法等が検討されている。
【0028】
均一に成膜する方法として、例えば、溶液中のCNTをフィルタ上に均一に堆積させ、透明基板上にCNTを転写して生成するフィルタ法等があるが、成膜プロセスが非常に煩雑であり、不純物を多く含んでしまうという問題がある。
【0029】
また、CNTと基板との親和性を利用して、CNTを自発的に基板に付着させる方法があるが、この方法では導電膜の成膜が、比較的に表面エネルギーが大きいシリコン基板上などに限られてしまうという問題がある。また、その他の方法として、電着法、CVDを用いた方法等があるが、いずれもスケールアップが非常に困難であるという問題がある。
【0030】
透明電極等に使用されるITO透明導電膜に換えて、CNTを用いた透明導電膜を実用化するためには、透明性、導電性を高める必要がある。
【0031】
図3は、CNT透明導電膜を実用化する上での問題点を説明する概念図であり、図3(A)はCNTがポリマ中に分散された複合体、図3(B)は理想的な3次元ネットワークをもった複合体、図3(C)は図3(A)、図3(B)におけるCNT間の抵抗を説明する図である。
【0032】
従来、CNTを含む複合体は、多くの場合、図3(A)に示すように、機械的な強度を保持するために熱可塑性又は熱硬化性ポリマ(樹脂)20a、例えば、アクリル樹脂中にCNT10aを混ぜて複合化した形態のものであり、ポリマ20aの海の中にCNT10aがポリマ20aを介してランダムに存在する構造となっており、CNTのネットワーク構造が乱れ、図3(C)の左側図に示すように、CNT10a同士が近接する部分ではその間隙がポリマ20aで満たされた空間となっているため、CNT10a同士の直接的な接触が悪いため抵抗が高いものとなってしまい、高い導電性を出すことが困難となる。高い導電性を実現するためには、複合体は十分な濃度でCNT10aを含んでいる必要があるが、この場合、複合体はかなり強い黒色を呈してしまい、光透過率が低下したものとなってしまうという問題がある。
【0033】
この問題を解決するには、図3(B)に示すように、CNT10bが相互に接触した理想的な3次元ネットワーク構造が保持され、図3(C)の右側図に示すように、CNT10bの間隙が導電性材料20bによって満たされていることが望ましいが、実際に、理想的な3次元ネットワーク構造が形成されず、CNT10b同士が近接し相互に接触した部分、及び、CNT10b同士が近接し相互に接触していな部分を含んで、全体として3次元ネットワーク構造を有している場合でも、CNT10bの間隙(複数個所に存在する可能性がある。)の少なくとも一部箇所が導電性材料20bによって満たされていれば、複合体の導電性は高いものとなることが期待される。
【0034】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、高い導電性と高い光透過率を有する透明導電膜及びこれを用いた光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0035】
即ち、本発明は、基板(例えば、後述の実施の形態におけるPET基板)に接触させて積層された導電性高分子層(例えば、後述の実施の形態におけるPEDOT膜)と、この導電性高分子層に接触させて積層されたカーボンナノチューブ層(例えば、後述の実施の形態におけるCNT膜)とを有する透明導電膜に係るものである。
【0036】
また、本発明は、基板に積層されたカーボンナノチューブ層及び導電性高分子層を具備し、前記導電性高分子層が2つの前記カーボンナノチューブ層と接触させて積層されたサンドイッチ構造からなる層を有し、一方の前記カーボンナノチューブ層が前記基板に接触させて積層された透明導電膜に係るものである。
【0037】
また、本発明は、上記の透明導電膜が形成された第1の基板と、間隙をおいて前記第1の基板に対向して設けられ電極を具備する第2の基板とを有する光学装置(例えば、後述の実施の形態におけるタッチパネル)に係るものである。
【発明の効果】
【0038】
本発明の透明導電膜によれば、基板に接触させて積層された導電性高分子層と、この導電性高分子層に接触させて積層されたカーボンナノチューブ層とを有するので、前記基板に前記カーボンナノチューブ層を直接接触させて積層されてなる透明電導膜よりも小さな表面抵抗(シート抵抗)を有する透明電導膜を実現することができる。
【0039】
また、本発明の透明導電膜によれば、基板に積層されたカーボンナノチューブ層及び導電性高分子層を具備し、前記導電性高分子層が2つの前記カーボンナノチューブ層と接触させて積層されたサンドイッチ構造からなる層を有し、一方の前記カーボンナノチューブ層が前記基板に接触させて積層された構成を有しているので、前記基板に前記カーボンナノチューブ層を直接接触させて積層されてなる透明電導膜よりも小さな表面抵抗を有する透明電導膜を実現することができる。
【0040】
また、本発明の光学装置によれば、上記の透明導電膜が形成された第1の基板と、間隙をおいて前記第1の基板に対向して設けられ電極を具備する第2の基板とを有するので、表面抵抗が小さく、光透過率が大きく、電気的特性、光学的特性に優れた、タッチパネル、エレクトロルミネッセンス装置、エレクトロクロミック装置、太陽電池等の光学装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の透明導電膜では、前記カーボンナノチューブ層が2つの前記導電性高分子層と接触させて積層されたサンドイッチ構造からなる層を有する構成とするのがよい。この構成によれば、より小さな表面抵抗を有する透明電導膜を実現することができる。
【0042】
また、前記カーボンナノチューブ層が最も上層に積層された構成とするのがよい。この構成によれば、より小さな表面抵抗を有する透明電導膜を実現することができる。
【0043】
また、前記導電性高分子層が最も上層に積層された構成とするのがよい。この構成によれば、より小さな表面抵抗を有する透明電導膜を実現することができる。
【0044】
また、シート抵抗が1Ω/□以上、10,000Ω/□以下である構成とするのがよい。この構成によれば、表面抵抗が小さく電気的特性に優れた光学装置を提供することができる。
【0045】
また、可視光の光透過率が70%以上である構成とするのがよい。この構成によれば、光透過率が大きく光学的特性に優れた光学装置を提供することができる。なお、可視光の光透過率が70%以上であるとは、可視光の全領域における光透過率を示し、基板に形成された透明導電膜における基板を含まない透明導電膜のみに関する光透過率が70%以上であることを意味するものとする。
【0046】
また、前記導電性高分子層及び前記カーボンナノチューブ層の厚さが、数nm以上、100nm以下である構成とするのがよい。この構成によれば、表面抵抗が小さく、光透過率が大きく、電気的特性、光学的特性に優れた透明電導膜を実現することができる。
【0047】
また、前記カーボンナノチューブ層が、溶媒中にカーボンナノチューブを分散させた溶液を塗布することによって形成された構成とするのがよい。この構成によれば、透明電導膜を複雑な装置を必要とせずに提供することができる。
【0048】
また、前記導電性高分子層が、導電性高分子を溶媒中に希釈させた溶液を塗布することによって形成された構成とするのがよい。この構成によれば、透明電導膜を複雑な装置を必要とせずに提供することができる。
【0049】
また、前記カーボンナノチューブ層において、1つのカーボンナノチューブ分子が複数個のカーボンナノチューブ分子と接触している構成とするのがよい。この構成によれば、前記カーボンナノチューブ層が相互に接触したカーボンナノチューブ分子による3次元ネットワークを形成しているので、高い導電性を有する透明導電膜を実現することができる。
【0050】
また、前記基板が透明な基板、望ましくはポリマ基板である構成とするのがよい。この構成によれば、フレキシブルな変形可能であり、所望の形状を有する透明導電膜を実現することができる。
【0051】
本発明の光学装置では、前記透明導電膜を使用する構成とするのがよい。この構成によれば、電気的特性、光学的特性に優れた光学装置を提供することができる。
【0052】
また、タッチパネルとして構成されたものがよい。この構成によれば、電気的特性、光学的特性に優れたタッチパネルを実現することができる。
【0053】
また、前記第1の基板と前記第2の基板との間に電圧を印加することによって発光する発光層が設けられエレクトロルミネッセンス装置として構成されたものがよい。この構成によれば、電気的特性、光学的特性に優れたエレクトロルミネッセンス装置を実現すことができる。
【0054】
また、前記第1の基板にエレクトロクロミック化合物が担持され、エレクトロクロミック装置として構成されたものがよい。この構成によれば、電気的特性、光学的特性に優れたエレクトロクロミック装置を実現すことができる。
【0055】
また、前記第1の基板と前記第2の基板との間に有機色素を吸着させた二酸化チタン層と電解質を挟み込んだ構造を有する太陽電池として構成されたものがよい。この構成によれば、電気的特性、光学的特性に優れた太陽電池を実現すことができる。
【0056】
本発明は、(1)基板に接触させて導電性高分子層を積層する第1の工程と、前記導電性高分子層に接触させてカーボンナノチューブ層を形成する第2の工程とを有する、透明導電膜の製造方法に係るものである。
【0057】
また、本発明は(2)基板に接触させてカーボンナノチューブ層を形成する工程と、前記カーボンナノチューブ層に接触させて導電性高分子層を形成し次いでこの導電性高分子層に接触させて前記カーボンナノチューブ層を形成し、サンドイッチ構造からなる層を形成する工程とを有する、透明導電膜の製造方法に係るものである。
【0058】
また、(3)(1)において、前記カーボンナノチューブ層に接触させて前記導電性高分子層を積層する第3の工程を有する構成とするのがよい。
【0059】
また、(4)(3)において、前記導電性高分子層に接触させて前記カーボンナノチューブ層を積層する第4の工程を有する構成とするのがよい。
【0060】
また、(5)(1)において、前記カーボンナノチューブ層に接触させて前記導電性高分子層を積層する第3の工程を有し、前記第2の工程と前記第3の工程を繰り返す構成とするのがよい。
【0061】
また、(6)(5)において、前記導電性高分子層に接触させて前記カーボンナノチューブ層を積層する第4の工程を有する構成とするのがよい。
【0062】
また、(7)(2)において、前記カーボンナノチューブ層に接触させて前記導電性高分子層を積層する第3の工程を有する構成とするのがよい。
【0063】
また、(8)(1)又は(2)において、シート抵抗が1Ω/□以上、10,000Ω/□以下である構成とするのがよい。
【0064】
また、(9)(1)又は(2)において、可視光の光透過率が70%以上である構成とするのがよい。
【0065】
また、(10)(1)又は(2)において、前記導電性高分子層及び前記カーボンナノチューブ層の厚さが、数nm以上、100nm以下である構成とするのがよい。
【0066】
また、(11)(1)又は(2)において、前記カーボンナノチューブ層が、溶媒中にカーボンナノチューブを分散させた溶液を塗布することによって形成する構成とするのがよい。
【0067】
また、(12)(1)又は(2)において、前記導電性高分子層が、導電性高分子を溶媒中に希釈させた溶液を塗布することによって形成する構成とするのがよい。
【0068】
また、(13)(1)又は(2)において、前記カーボンナノチューブ層において、1つのカーボンナノチューブ分子が複数個のカーボンナノチューブ分子と接触している構成とするのがよい。
【0069】
以下、図面を参照しながら本発明による実施の形態について詳細に説明する。
【0070】
透明導電膜は、透明基板上に積層された数nm以上、100nm以下の厚さの導電性高分子層と、この導電性高分子層上に積層された数nm以上、100nm以下の厚さのカーボンナノチューブ(CNT)層を有している。CNT層は、溶媒中にCNTを分散させた溶液を用いてディップ法、スピンコート法等の塗布法によって形成され、CNT分子が相互に接触した3次元ネットワーク構造を有している。導電性高分子層は、導電性高分子を溶媒中に希釈させた溶液を用いてディップ法、スピンコート法等の塗布法によって形成されている。CNT層、導電性高分子層は、印刷法によって形成することもできる。
【0071】
透明導電膜は、CNT層が2つの導電性高分子層に挟まれ積層されたサンドイッチ構造からなる層を有しており、サンドイッチ構造からなる層は複数有していてもよく、CNT層が最も上層に積層されている。
【0072】
また、透明導電膜は、透明基板に積層されたCNT層及び導電性高分子層を具備し、導電性高分子層が2つのCNT層に挟まれ積層されたサンドイッチ構造からなる層を有しており、一方のCNT層は透明基板上に積層されており、サンドイッチ構造からなる層は複数有していてもよく、導電性高分子層が最も上層に積層されている。
【0073】
透明導電膜が形成される基板として、ガラス基板、各種のポリマ基板(高分子基板)を用いることができ、ポリマ基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PAN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステルフィルムをはじめとして、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PS)等の透明性を有する基板を使用することができる。
【0074】
導電性高分子層は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビ二レン等のポリマを主成分とする有機導電性材料(導電性ポリマ)を使用して形成することができる。
【0075】
例えば、導電性ポリマとして、スタルクヴィテック社製(購入先:純正化学)のポリチオフェン系導電性ポリマ、Baytron(登録商標)PEDOT(3,4−エチレンジオキシチオフェンを高分子量スチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマである。)を用いることができる。Baytronは青みを帯びた高分子で、高透明性であり、数百〜108Ω/□の表面抵抗が可能とされている。
【0076】
PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))は本来不溶性であるがポリスチレンスルホン酸(PSS)の存在下、水溶液中でコロイド分散液として得られ、このPEDOT/PSS水性分散液は、ロール、スピン、スプレイコーティング等によって塗布可能である。
【0077】
本発明では、CNTを溶媒に分散させた分散液を用いて基体(ガラス又は高分子板、或いは、フィルタ)上で溶媒を蒸発させてCNTだけを残し、3次元ネットワーク構造をもったCNT層を形成し、CNT層と導電性ポリマ層を積層することによって、CNT層と導電性ポリマ層が積層された接合部分で、導電性ポリマがCNT層におけるCNTの隙間に浸透して、2つの層の電気的接触が良好に保持されると共に2つの層の接合強度が保持され、高い導電性と高い光透過率を有し優れた電気的特性と光学的特性を有する、CNT層と導電性ポリマ層が積層されてなる複合体として透明導電膜を形成することができる。
【0078】
本発明による透明導電膜は透明性、導電性、機械的強度が高く、シート抵抗が1Ω/□以上、10,000Ω/□以下であり、可視光に対する光透過率が70%以上であり、優れた導電特性及び光学特性を有している。光学装置、例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)装置、エレクトロクロミック(EC)装置、液晶装置(LCD)、発光ダイオード素子(LED)、プラズマディスプレィパネル(PDP)等では、10Ω/□〜100Ω/□のシート抵抗、70%以上の透過率(透明電極が形成される基板を除く)の特性、太陽電池では、1Ω/□〜20Ω/□のシート抵抗、70%以上の透過率(透明電極が形成される基板を除く)の特性、タッチパネルでは、100Ω/□〜10kΩ/□のシート抵抗、92%以上の透過率(透明電極が形成される基板を除く)の特性を有する透明電極の使用が望ましいとされ、透明導電電極には高透明性と低抵抗性が要求されている。本発明による透明導電膜は、タッチパネル、EL装置、EC装置、LCD、LED、PDP、通常のシリコン系の太陽電池、色素増感太陽電池等の光学装置における透明電極として、好適に使用することができる。
【0079】
実施の形態
図1は、本発明の実施の形態における、PET膜に、(A)PEDOT膜、CNT膜を、(B)CNT膜、PEDOT膜を、順次積層した透明導電膜の構造を説明する図である。
【0080】
図1に示すように、透明導電膜は、透明基板としてPETを使用しこの上に形成され、ネットワーク状に形成された3次元ネットワーク構造をもったCNT層(図1では単にCNTと記す。)と、上述したPEDOT/PSS水性分散液(製品名Baytron P HCV4を使用。)を使用して形成された導電性高分子層(図1では単にPEDOTと記す。)が交互に積層された構造を有している。
【0081】
図1(A)において、
(A1)は、PET膜上に、PEDOT膜、CNT膜を積層したCNT/PEDOT透明電導膜を示す斜視図及び断面図を示し、
(A2)は、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を有し、PET膜上に、PEDOT膜、CNT膜、PEDOT膜を順次積層したPEDOT/CNT/PEDOT透明電導膜を示す斜視図であり、
(A3)は、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を有し、PET膜上に、PEDOT膜、CNT膜、PEDOT膜、CNT膜を順次積層したCNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明電導膜を示す斜視図であり、
(A4)は、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を有し、PET膜上に、PEDOT膜、CNT膜、PEDOT膜、CNT膜、PEDOT膜を順次積層したPEDOT/CNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明電導膜を示す斜視図である。
【0082】
図1(B)において、
(B1)は、PET膜上に、CNT膜、PEDOT膜を順次積層したPEDOT/CNT透明電導膜を示す斜視図及び断面図を示し、
(B2)は、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を有し、PET膜上に、CNT膜、PEDOT膜、CNT膜を順次積層したCNT/PEDOT/CNT透明電導膜を示す斜視図であり、
(B3)は、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を有し、PET膜上に、PET膜上に、CNT膜、PEDOT膜、CNT膜、PEDOT膜を順次積層したPEDOT/CNT/PEDOT/CNT透明電導膜を示す斜視図であり、
(B4)は、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を有し、PET膜上に、CNT膜、PEDOT膜、CNT膜、PEDOT膜、CNT膜を順次積層したCNT/PEDOT/CNT/PEDOT/CNT透明電導膜を示す斜視図である。
【0083】
図1(A)に示す透明電導膜では、PET膜上に先ずPEDOT膜を形成するため、相性のよいポリマ同士の接合となり、PET基板とPEDOT層との間の接合(付着)強度は大きくなり、また、図1(A)、図1(B)に示す透明電導膜では、積層毎に形成されるCNT層の3次元ネットワーク構造の表面、積層毎に形成されるPEDOT層の表面にはそれぞれ、凹凸が存在するため、CNT層上にPEDOT層を形成、及び、PEDOT層上にCNT層を形成する際の接合面積が大きく、両層の間の接合(付着)強度が大きくなり、機械的強度が大きな透明電導膜がPET基板に形成される。
【0084】
図1に示す透明電導膜の形成過程では、CNT層の3次元ネットワーク構造を保持したままの状態で、CNT層上にPEDOT層を形成するので、CNT層の3次元ネットワーク構造を乱すことがなく、PEDOT層によるCNT層間の電気伝導のサポートにより、透明電導膜の導電性を高いものとすることができる。なお、積層するCNT層及びPEDOT層の厚さを薄くすることによって、積層されたCNT層の積層面方向、積層方向の全体において、導電性高分子(PEDOT)とCNT分子との接触頻度を高くし、透明電導膜の導電性をより高いものとすることができる。
【0085】
CNT層は、例えば、CNTを溶媒に分散させた溶液に透明基板を含浸させ、CNTを基板上に保持することによって、膜厚2nm〜10nmで成膜する。また、PEDOT層は、例えば、スピンコート法によって膜厚2nm〜10nmで成膜する。
【0086】
後述するように、CNT層の光透過率は、若干ではあるが短波長側で小さく、長波長側で大きく、一方、PEDOT層の光透過率は短波長側で大きく、長波長側で小さいが、光透過特性が異なるCNT層とPEDOT層を交互に積層することによって、光透過率が波長によって大きく変化せず、偏色性の少ない透明電導膜を形成することができる。
【0087】
なお、CNT層の形成に使用するCNTは、アーク放電法、レーザアブレーション法、CVD法、気相成長法等の何れか方法により製造されたものであり、例えば、Carbon Nanotechnologies Inc.製のHiPco(登録商標)単層CNTを使用することができる。CNTは、酸化、洗浄、ろ過、遠心分離等の精製によって、高純度化されたものを使用するのが好ましく、導電性のより高い透明電導膜を形成するためには、金属的CNTと半導体的CNTを分離して金属的CNTを使用するのが好ましい。また、CNTとして、単層CNT、多層CNTや、それらの中空部にフラーレン、金属等を内包した、内包チューブ等を用いることもできる。
【0088】
本発明では、図3(C)の右側図に示すように、CNTと導電性ポリマ材料との複合化による複合体の特性改善を図るため、CNTを溶媒に分散させた分散液を用いて基体(ガラス又は高分子基板、或いは、フィルタ)上で溶媒を蒸発させてCNTだけを残し3次元ネットワーク構造を形成し、ネットワーク構造を維持しているCNT層に、導電性ポリマ層としてPEDOT層を積層するが、このPEDOT層の形成の際に導電性ポリマ20b(PEDOT)がCNT層におけるCNT10bの隙間に浸透して、CN10b同士が導電性ポリマ20bを介して接触した状態となっているので、CNT層とPEDOT層の電気的接触が良好に保持されると共に、CNT層とPEDOT層の接合(付着)強度が保持され、高い導電性と高い光透過率を有する複合体として透明導電層を形成することができる。
【0089】
本発明による透明導電膜は、電極を具備し対向する基板を有する各種の光学装置に使用することができ、少なくとも一方の基板に、図1に示す何れかの透明導電膜を電極として有している。以下、光学装置の例について簡単に説明する。
【0090】
図2は、本発明の実施の形態における、透明導電膜を使用したタッチパネルを説明する図であり、図2(A)は断面図、図2(B)は透明電導膜の平面図を示す図である。
【0091】
通常、タッチパネルはLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)に重ねて配置されるため、80%(550nm)以上の透過率が必要であり、抵抗膜式タッチパネルのアナログ方式では、電極を構成する膜の抵抗の均一性が要求される。
【0092】
図2(A)の(A1)に示すように、透明タッチパネルは、透明導電膜1aが上部電極として形成された変形可能なPET基板(上部基板)2aと、表面に電気絶縁性のドットスペーサ3が形成された透明導電膜1bが下部電極として形成されたガラス基板(下部基板)2bから構成され、上部基板2aと下部基板2bは、僅かな隙間(空間)5を保ち両電極を対向させて電気絶縁層4を介して接合されている。
【0093】
上部基板2aと下部基板2bとの間隔5は、例えば、100μm〜300μmであり、この間隔5に対してドットスペーサ3の高さは、上部電極と下部電極が常時接触してON状態となることを防止し、パネルに表示される画像に影響を与えないように、例えば、5μm〜50μm程度である。両電極がタッチしていない状態では、微小なドットスペーサ3によって両電極は接触していないために電流は流れない。なお、下部電極はITO膜によって形成されてもよい。
【0094】
図2(A)の(A2)に示すように、指又は専用ペンでPET基板2a側に触れ押圧するとPET基板2aのタッチされた部分が変形たわみ、透明導電膜1a、1b同士が接触して電気が流れスイッチ動作が生じ、入力が検知される。
【0095】
図2(B)の(B1)〜(B4)に示すように、上部電極、下部電極をそれぞれ構成する透明電導膜1a、1bは、連続した平面状の透明電導膜、2次元マトリクス上に配置された不連続な微小電極からなる透明電導膜とすることができる。
【0096】
図2(B)の(B1)、(B3)、(B4)に示す例では、押圧によりPET基板2aが変形して生じた上部電極、下部電極の接触点(上部電極と下部電極が閉回路を形成する上記の微小電極の位置)、即ち、押圧された位置(座標)を、微小電極が接続された読み取り回路で検出する。
【0097】
図2(B)の(B2)に示す例は、アナログ方式の抵抗膜式タッチパネルであり、上部電極、下部電極をそれぞれ構成する透明電導膜1a、1bの抵抗による分圧比を測定することによって押圧された位置(座標)を検出する。
【0098】
図2に図示しないが、図2(B)の(B4)に示す例において、横方向に1行に並ぶ微小電極1aを各行毎に連接させた短冊状電極とし、横方向に1列に並ぶ微小電極1bを各列毎に連接させた短冊状電極とし、上部電極、下部電極を構成する短冊状電極を互いに直交するように配置し、上部電極、下部電極の短冊状電極を読み取り回路に接続させたマトリクス構造とすることもでき、押圧によって生じる上部、下部電極の接触点(上部電極と下部電極の短冊状電極が接触し閉回路を形成する位置)を、読み取り回路で検出する構成とすることもできる。
【0099】
また、本発明の透明電導膜は、図示しないエレクトロクロミック装置における透明電極として使用することができる。エレクトロクロミック装置は、有機又は無機化合物からなるエレクトロクロミック化合物が担持された透明電極とこれに対向する電極との間に電圧を印加することによって生じる、エレクトロクロミック化合物の電気化学的な酸化還元反応に伴う吸収スペクトルの変化(エレクトロクロミック現象)を利用するものであり、表示装置等に適用される。
【0100】
また、本発明の透明電導膜は、図示しないエレクトロルミネッセンス装置における透明電極として使用することができる。エレクトロルミネッセンス装置は、2つの電極の間に、硫化亜鉛等の無機物又はジアミン類等の有機物からなる発光体が配置され、2つの電極の間に電圧を印加することによって発生する発光を利用するものであり、表示装置、照明装置等に適用される。
【0101】
更に、本発明の透明電導膜は、図示しない太陽電池における透明電極として使用することができ、2枚の透明電極の間に微量の色素を吸着させた二酸化チタン層と電解質を挟み込んだ単純な構造を有する色素増感太陽電池における、光が入射される側の電極(アノード電極)を形成する透明電導膜として使用することができる。
【0102】
実施例
先ず、PEDOT膜の成膜方法を検討し、透過率、導電率、厚み、表面形状等の膜特性の評価を行ない、その特性をCNT膜と比較した。以下では、PEDOT/PSS水性分散液(製品名Baytron P HCV4)を使用した。
【0103】
PEDOT膜の成膜方法としては、浸漬法(引き上げ法)、スピンコート法を検討したが、均一性等からスピンコート法を選択した。
【0104】
スピンコート法に使用するスピンコート用溶液の調整であるが、市販のPEDOT/PSS水性分散液そのままの状態ではアセトンやIPA(イソプロピルアルコール)で希釈することができなかった。そこで、はじめに市販のPEDOT/PSS水性分散液をH2Oと混合した後に、IPAを加えて希釈した結果、均一なスピンコート用溶液を作成することができた。PEDOT(市販のPEDOT/PSS水性分散液)、H2O、IPAの混合比率に関して検討した結果、スピンコート用溶液として、PEDOT:H2O:IPA=1:1:5〜10程度の混合比率が適当であることが分かった。このスピンコート用溶液を使用してスピンコート法によって、透過率99%以上のPEDOT膜を作成することができた。
【0105】
回転数を2000rpm〜8000rpm程度、スピンコート時間を1分間程度とするスピンコート条件によって、均一なPEDOT膜が得られた。スピンコート後はホットプレート上にて、100度(摂氏温度)で1分間程度ポストベークを行った。なお、自然乾燥によっても導電性の良好なPEDOT膜が得られた。
【0106】
単純にスピンコートするだけでは厚いPEDOT膜を作成することができないため、後述する図4に示す成膜方法のように、スピンコート用溶液におけるIPAとPEDOT(市販のPEDOT/PSS水性分散液)の濃度比(IPA/PEDOT)、スピンコート条件を様々に変化させて、PEDOT膜をガラス基板上にスピンコート法によって成膜して、PEDOT膜の成膜方法による膜厚と特性(シート抵抗、透過率等)との関係を評価した。
【0107】
なお、以下で説明する透過率は、U4000型日立分光光度計を使用して
400nm〜800nmの波長領域で測定したものである。
【0108】
図4は、本発明の実施例における、PEDOT膜の成膜方法とシート抵抗、550nmにおける透過率(PEDOT膜が形成されたガラス基板を含まない透過率である。)、膜厚さの関係を説明する図である。
【0109】
図4に示す成膜方法(1)のスピンコート条件では、スピンコート用溶液におけるIPAとPEDOT(市販のPEDOT/PSS水性分散液)の濃度比(IPA/PEDOT)=5、回転数を6000rpm、スピンコート時間を1分間とした。この条件によって成膜されたPEDOT膜の厚さは2.4nm、シート抵抗>2MΩ/□であった。
【0110】
成膜方法(2)のスピンコート条件では、濃度比(IPA/PEDOT)=2、回転数を3000rpm、スピンコート時間=1分間とした。この条件によって成膜されたPEDOT膜の厚さは14nm、シート抵抗は108kΩ/□、透過率は98.7%であった。
【0111】
成膜方法(3)のスピンコート条件では、濃度比(IPA/PEDOT)=2、スピンコート時間=一瞬間とした。この条件によって成膜されたPEDOT膜の厚さは19nm、シート抵抗は22.5kΩ/□、透過率は97.0%であった。
【0112】
成膜方法(4)のスピンコート条件では、成膜方法(3)のスピンコート条件を2回繰り返す条件とした。この条件によって成膜されたPEDOT膜の厚さは69nm、シート抵抗は11.7kΩ/□、透過率は96.2%であった。
【0113】
成膜方法(5)のスピンコート条件では、濃度比(IPA/PEDOT)=1、スピンコート時間=一瞬間とした。この条件によって成膜されたPEDOT膜の厚さは109nm、シート抵抗は2.69kΩ/□、透過率は90.1%であった。
【0114】
成膜方法(6)のスピンコート条件では、成膜方法(5)のスピンコート条件を3回繰り返す条件とした。この条件によって成膜されたPEDOT膜の厚さは153nm、シート抵抗は1.38Ωk/□、透過率は81.5%であった。
【0115】
成膜方法(1)〜(4)のように、スピンコート用溶液における濃度比(IPA/PEDOT)、スピンコート時間を変化させても、PEDOT付着量(即ち、膜厚)が制御できるだけで、膜厚の増加と共にシート抵抗が減少するものの、PEDOT膜の透過率特性にはほとんど変化が見られなかった。
【0116】
図5は、本発明の実施例における、PEDOT膜及びCNT膜の透過率を説明する図であり、図5(A)は、上述したスピンコート法によって成膜されたPEDOT膜の透過率、図5(B)は、レーザアブレーション法で合成されたCNTを使用してフィルタ法によってガラス基板上に成膜されたCNT膜の透過率を示す図である。
【0117】
PEDOT膜はそれ自体もITOの代替材料として検討されているが、濃青色を有していることがデメリットとなっており、図5(A)の曲線(2)〜(6)は、図4に示す成膜法(2)〜(6)による膜厚14nm、19nm、69nm、109nm、153nmのPEDOT膜の透過率を示しており、膜厚の増加と共に、長波長側の吸収が大きくなっている。
【0118】
図5(B)の曲線(1)〜(5)はこの順に膜厚が、3nm、8nm、13nm、51nm、65nmであるCNT膜の透過率(CNT膜が形成されたガラス基板を含まない透過率である。)を示しており、膜厚の増加と共に吸収が大きくなっている。図5(A)に示すPEDOT膜と比較して、CNT膜では偏色性が少ないが、やや短波長側での吸収が大きい。この結果から考えると、導電膜の色味という点では、CNT膜とPEDOT膜は相補的であり、この両膜を積層して複合化をすることによって、より偏色性のない導電膜を得ることができる。
【0119】
図6は、本発明の実施例における、PEDOT膜及びCNT膜の両膜の膜厚を変化させ場合のシート導電率と吸光度の関係の例を説明する図であり、横軸は吸光度、縦軸はシート導電率(S/sq)を示し、図6(B)は、図6(A)における吸光度の小さい領域の拡大図である。なお、図6(B)中で矢印及び枠内に示すデータは図4に示す成膜方法(2)のスピンコート条件によるPEDOT膜の特性を示す。
【0120】
図6では、レーザアブレーション法で合成されたCNT(図6(A)では(1)Laser CNTと記す。)を使用しフィルタ法によってガラス基板上に成膜されたCNT膜の透過率(図5(B)に示す。)から変換された吸光度とシート導電率との関係を示すプロット、及び、図5(A)に示すPEDOT膜の透過率を吸光度に変換し、シート抵抗をシート導電率に変換した関係を示すプロットである。図6の(1)は、CNT膜の550nmにおける吸光度とシート導電率の関係、図6の(2)、(3)はそれぞれ、PEDOT膜の800nm、550nmにおける吸光度とシート導電率の関係を示すプロットである。
【0121】
図6に示すCNT膜とPEDOT膜の特性を比較すると、CNT膜の特性が優れているのが分かる。PEDOT膜は図5に示す結果を反映して、800nmにおける吸収が550nmの2倍近くあるのが分かる。また、図6(B)にはPEDOT膜の低吸収領域のデータを示しているが、2MΩ/□以下(測定器の上限による)のシート抵抗を得るためには、透過率99%程度となるまでPEDOTを塗布する必要がある。この結果の中で、透過率約99%のPEDOT膜のシート抵抗が100kΩ/□以上であるという知見は非常に重要である。
【0122】
図7は、本発明の実施例における、図4に示す成膜方法(4)のスピンコート条件によるPEDOT膜のAFM像とその3次元表示を説明する図であり、図7(A)はAFM像、図7(B)はAFM像の3次元表示を示す図(3方向に示す数値の単位はnmである。)である。
【0123】
図7(A)から、PEDOT膜は数nm〜数10nmの粒子で形成されているのが分かる。先述したようにPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))は本来不溶性であり、PSSをドーパントとしこの存在下で水分散性を得ることと引き換えに、PEDOTは短いセグメントに分かれて、水溶液中でコロイド分散液となっており、AFM像もこのようなセグメントサイズになっていると考えられる。
【0124】
図7(B)から、PEDOT膜の表面が数nmのラフネス(粗度、凹凸)を持ってことが分かる。また、図4に示す他の成膜方法で作成したPEDOT膜の表面のラフネス(粗度、凹凸)は、7(B)と同様であった。図4に示す成膜方法(1)、(2)は、本発明におけるPEDOT膜作成の標準的な条件であるが、その膜厚はそれぞれ2.4nm、14nmであり、これら成膜方法によってCNT膜上に形成されるPEDOT膜は数nmの膜厚であり、そのラフネス(粗度、凹凸)も数nmであると考えられる。
【0125】
一方、溶媒にCNTを分散させた分散液中に基板を浸漬させ基板にCNTを付着させるディップ法(Dip法、浸漬法)によって作成したCNT膜は、CNTが数層程度に積層されるため、CNTが重なる厚い部分でも、数nm程度になっている。また、現在までの技術では全面を隙間なくCNTで埋め尽くすことはできないため、当然ラフネス(粗度、凹凸)も数nmと考えることができる。
【0126】
以上説明したように、CNT膜、PEDOT膜の構造単位はそれぞれ、CNT粒子と短いセグメントの1次細線であり、両膜で異なるが、形成された両膜のそれぞれの外表面は数nm程度のラフネス(粗度、凹凸)をもつ類似の表面形状であると考えられ、CNT膜、PEDOT膜の界面における接合は良好なものとなると考えられる。
【0127】
次に、CNT膜(Dip法、フィルタ法によって形成されたCNT膜を使用した。)上へのPEDOTのコーティングによる効果を調べるために、CNT導電膜上にPEDOTをコーティングして2層膜を作成し、そのシート抵抗を評価した結果、PEDOT塗布による、接触角等の基板の表面状態の変化を調べた結果について説明する。
【0128】
図8は、本発明の実施例における、CNT膜上へのPEDOT膜の形成による透過率、シート抵抗の変化を説明する図である。
【0129】
図8は、HiPco単層CNTを使用して、Dip法、フィルタ法によって形成されたCNT膜(ガラス基板上に形成されている。)上へのPEDOT膜の形成前後における550nmでの透過率(CNT膜、PEDOT膜が形成されたガラス基板を含まない透過率である。)、シート抵抗を示している。なお、PEDOT膜は、先述のスピンコート用溶液における濃度比(IPA/PEDOT)=5、回転数を6000rpm、スピンコート時間を1分間とした条件で、スピンコート法により成膜した。
【0130】
図8に示すように、Dip法によって形成されたCNT膜(膜厚5nm)の透過率は95.48%、このCNT膜上へPEDOT膜(推定膜厚3nm)が形成されたPEDOT/CNT透明導電膜の透過率は95.32%であり、PEDOT膜の形成前後では、透過率が僅か0.16%しか低下していない。図4に示す成膜方法(1)によって形成されたPEDOT膜(膜厚2.4nm)のシート抵抗は2MΩ/□であったから、このシート抵抗と殆ど変化しない値をPEDOT/CNT透明導電膜は示すであろうと想定されたが、実際には図8に示すように、CNT膜のシート抵抗は14kΩ/□であったが、PEDOT/CNT透明導電膜のシート抵抗は8kΩ/□であり、PEDOT膜の形成前後でシート抵抗は43%も減少した。
【0131】
また、図8に示すように、フィルタ法によって形成されたCNT膜(膜厚67nm)の透過率は65.79%、このCNT膜上へPEDOT膜(推定膜厚3nm)が形成されたPEDOT/CNT透明導電膜の透過率は65.37%であり、PEDOT膜の形成前後では、透過率が僅か0.42%しか低下していない。図4に示す成膜方法(1)によって形成されたPEDOT膜(膜厚2.4nm)のシート抵抗は2MΩ/□であったから、このシート抵抗と殆ど変化しない値をPEDOT/CNT透明導電膜は示すであろうと想定されたが、実際には図8に示すように、CNT膜のシート抵抗は885Ω/□であったが、PEDOT/CNT透明導電膜のシート抵抗は537Ω/□であり、PEDOT膜の形成前後でシート抵抗は39%も減少した。
【0132】
以上のように、Dip法、フィルタ法の何れによって形成されたCNT膜上へのPEDOT膜の形成前後において、透過率の変化は殆どないのにかかわらず、シート抵抗は40%前後低下しており、CNT膜上へのPEDOT膜の形成によって、透明電導膜の透過率を殆ど変化させることなく、シート抵抗を40%程度低減させることができることが分かった。PEDOT膜の形成前後におけるシート抵抗の低減は、CNT膜上へのPEDOT膜の形成の際に、CNT膜の表面近傍部分でのCNT3次元ネットワーク構造の内部まで、導電性高分子(PEDOT)が浸透していき、導電性高分子(PEDOT)がCNT分子の間付近に存在することで、CNT分子の間の抵抗を低減しているためと考えられる。
【0133】
次に、CNT膜の膜厚の違いによる効果を調べるために、フィルタ法によって作成されたシート抵抗の異なる3つのCNT膜に対して、図8で説明したと同様の方法によって、CNT膜上にPEDOT膜を形成して、PEDOT膜の形成前後における透過率、シート抵抗の変化を調べた。
【0134】
図9は、本発明の実施例における、CNT膜上に形成されている。)上へのPEDOT膜の形成による透過率、シート抵抗の変化を説明する図であり、横軸は透過率(%)、縦軸はシート抵抗(Ω/sq)を示す図である。
【0135】
図9は、HiPco単層CNTを使用して、フィルタ法によって形成されたCNT膜(ガラス基板上に形成されている。)上へのPEDOT膜の形成前後における550nmでの透過率(CNT膜、PEDOT膜が形成されたガラス基板を含まない透過率である。)、シート抵抗を示している。
【0136】
図9に示すように、CNT膜の膜厚が、8nm、67nm、150nmと増加するに従って、CNT膜の透過率及びシート抵抗は小さくなっている。また、これらCNT膜上にそれぞれ3nm、3nm、4nmの推定膜厚のPEDOT膜が形成されたPEDOT/CNT透明電導膜では、PEDOT膜の形成前後において、透過率は僅かに減少するものの、シート抵抗は、80%、39%、27%と大きく低減している。このシート抵抗の低減は、CNT膜の膜厚が薄く、シート抵抗が大きくなるに従って顕著であり、シート抵抗は最大でPEDOT膜の形成前の値の1/10に近いものとなる。
【0137】
図9に示すように、CNT膜の膜厚が厚くなるに従って、PEDOT膜の形成前後でのシート抵抗の減少が小さくなっているのは、CNT膜の膜厚が厚い場合は、CNT膜上へのPEDOT膜の形成の際に、CNT膜のCNT3次元ネットワーク構造の深い内部まで、導電性高分子(PEDOT)が浸透していかず、導電性高分子(PEDOT)の浸透が、3次元ネットワーク構造の表面付近にしか至らないために、PEDOT膜の形成によってシート抵抗が大きく低減しないためと考えられる。
【0138】
従って、CNT膜上にPEDOT膜が形成されたPEDOT/CNT透明導電膜がより小さなシート抵抗をもつためには、CNT膜の膜厚は薄いほど望ましい。
【0139】
図10は、本発明の実施例における、CNT膜上へのPEDOT膜の形成後のSEM像(倍率10,000)を説明する図である。
【0140】
図10は、HiPco単層CNTを使用して、フィルタ法によって形成された膜厚50nmのCNT膜(ガラス基板上に形成されている。)上に、先述のスピンコート用溶液における濃度比(IPA/PEDOT)=5、回転数を5000rpm、スピンコート時間を1分間とした条件でスピンコート法によってPEDOT膜を成膜し、この結果得られたPEDOT/CNT透明導電膜のSEM像であり、電子線が過剰に照射されPEDOT膜が消失した結果外部に露出されたCNT層の3次元ネットワーク構造が、SEM像の中央右方部に見られる。このように、CNT層の3次元ネットワーク構造が観察されたことは、CNT層上にPEDOT層を形成する際に、CNT層の3次元ネットワーク構造が乱されずに保いることを示している。
【0141】
以上説明したように、CNT層上にPEDOT膜を成膜したPEDOT/CNT透明導電膜では、CNT層のみによる透明導電膜よりも、導電性が向上することが分かった。
【0142】
次に、CNTが付着しやすいように親水処理を施したPETフィルム上に、PEDOT膜、CNT膜を形成し、CNT膜、PEDOT膜のH2Oに対する接触角を測定し、CNT膜、PEDOT膜の各面の表面状態を調べた。
【0143】
図11は、本発明の実施例における、PET膜、親水処理を施したPET膜、CNT膜、PEDOT膜を積層した積層膜の水に対する接触角を説明する図であり、縦軸は接触角(度)を示す。
【0144】
図11に示すように、親水処理がなされていないPET基板面の接触角は約85度と大きな値を示すが、PET基板に、シランカップリング材による親水処理を施すことによって接触角が大きく低減し、CNTの付着性が向上する。
【0145】
この親水処理を施したPET基板上にスピンコート法によって形成されたPEDOT膜面の接触角は約30度とPET基板の85度と比較し低い値であり、同PET基板上にDip法によって形成されたCNT膜面の接触角は、PEDOT膜面のそれよりも大きな約60度であった。これはCNT自体の疎水性が高いためと考えられる。
【0146】
Dip法によって大量のCNTを基板に付着させようと試みたが、基板に形成されたCNT膜に対して、Dip法を複数回繰り返して更にCNTを付着させようと試みても、一定量以上のCNTを、一旦形成されたCNT膜上に付着させることができなかった。このことは、CNT膜面の接触角が大きいという図11に示す実験事実を支持するものである。
【0147】
上述の親水処理を施したPET基板上に形成された上述のCNT膜上に、更に、スピンコート法によって形成されたPEDOT膜面の接触角は、親水処理を施したPET基板上に形成された上述のPEDOT膜面の接触角と同じ値まで低下した。
【0148】
以上説明した実験事実から、PEDOT膜の親水性は比較的高く、CNTとの親和性は比較的良好であると考えられ、CNT膜上にPEDOT膜を成膜することによって、先述したように導電性を向上させるだけではなく、PEDOT膜がCNT膜の間の接着層として作用する層となることが期待できる。
【0149】
次に、以上の結果に基づいて、CNT膜及びPEDOT膜によって構成され、多層化されたCNT膜を有する透明導電膜を作成しその光学的及び電気的特性を調べた。
【0150】
PEDOT膜を使用することによって多層化されたCNT膜によって、透明導電膜を構成とすることは、透明導電膜の導電性を向上させることにつながる。
【0151】
従来、Dip法を繰り返して、基板へのCNTの付着量を増加させ光透過率の大きな低下を招くことなく透明導電膜の導電性を向上させようとしても、CNTの付着量を増加させることは困難であり、1%程度の光吸収分程度しか付着させることができなかった。シート抵抗が数kΩ/□であり、基板を除く透過率がほぼ100%というような、例えば、タッチパネルのような用途には、1%程度の光吸収分程度のCNTの付着量で十分であるが、より高い透明性と、数Ω〜数10Ω/□のような低シート抵抗が要求される太陽電池などの透明電極として、透明導電膜を使用するには、大量のCNTを基板に付着させる必要がある。
【0152】
以下、薄い膜厚のCNT層及びPEDOT膜を密接させて、多層化されたCNT膜によって構成され、光透過率の大きな低下を招くことなく低シート抵抗を有する透明導電膜について説明する。
【0153】
図12は、本発明の実施例における、PET膜にPEDOT膜、CNT膜を順次積層した透明導電膜の構造と特性の関係を説明する図であり、図12(A)は吸光度とシート導電率の関係を示し、横軸は吸光度、縦軸はシート電導率(S/sq)であり、図12(B)は透過率とシート抵抗の関係を示し、横軸はシート抵抗(kΩ/sq)、縦軸は透過率(%)である。図12において、吸光度、透過率は550nmにおける値を示し、PET基板の寄与は含んでいない値である。
【0154】
先ず、上述の親水処理を施したPET基板上にスピンコート法によってPEDOT膜を形成した後、(1)先に形成されているPEDOT膜上にDip法によってCNT膜を形成し、次に、更に、(2)先に形成されているCNT膜上にPEDOT膜を形成し、(3)(1)及び(2)を複数回繰り返すよってPEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を有する透明導電膜を形成する。このようにして形成された、CNT/PEDOT、PEDOT/CNT/PEDOT、CNT/PEDOT/CNT/PEDOT、PEDOT/CNT/PEDOT/CNT/PEDOT等の透明導電膜について、透過率及びシート抵抗を測定した。
【0155】
図12(A)には、測定された透過率を吸光度に変換し、シート抵抗をシート導電率に変換してプロット、図12(B)には、測定された透過率、シート抵抗をプロットしている。また、参考のためにPEDOT膜に関するデータもプロットしている。
【0156】
図12に示すCNT/PEDOT、PEDOT/CNT/PEDOT、CNT/PEDOT/CNT/PEDOT、PEDOT/CNT/PEDOT/CNT/PEDOTの各透明導電膜に関する550nmにおける透過率(%)=T、シート抵抗(kΩ/sq)=Rsを、(T,Rs)によって表わすと、(98.5,9.1)、(97.8,5.0)、(97.0,3.2)、(96.2,2.3)である。
【0157】
なお、先に形成されているPEDOT膜上にCNT膜(膜厚2nm〜10nm)を、HiPco単層CNTを使用してDip法によって形成し、先に形成されているCNT膜上にPEDOT膜(膜厚2nm〜10nm)を、スピンコート法によって形成した。Dip条件は、CNTを分散させる溶媒として1,2−ジクロロエタン溶液を用い、CNTの濃度は0.1g/Lとし、浸漬時間は60secとした。スピンコート条件は、先述のスピンコート用溶液における濃度比(IPA/PEDOT)=5、回転数を5000rpm、スピンコート時間を1分間とした。
【0158】
図12(A)では、吸収のプロットがほぼ等間隔に並んでいること等から、CNT膜とPEDOT膜の吸光度は同程度になっていること分かる。CNT膜へのPEDOTの付着量はもっと減らしても、図12と略同様の結果となるものと考えられる。
【0159】
図12に示す結果から、PET膜に密接して形成されたPEDOT膜を除いて、CNT膜上にPEDOT膜を形成する毎に、透過率が1%程度低下している。ここで、CNT膜、PEDOT膜それぞれの単層において、1%の光吸収を示す膜厚でのシート導電率を調べると、CNT膜について30μS/□(@1%の吸収)、PEDOT膜について5μS/□(@1%の吸収)程度となっていた。
【0160】
この結果から、CNTの方が、6倍近く導電率が高いことが分かる。また、図12に、CNT膜のみ、PEDOT膜のみのシート導電率を破線で示すが、CNT膜、PEDOT膜が積層された複合化膜の導電性は、破線で示されるCNT膜のみ、PEDOT膜のみのシート導電性よりも遥かに高いことが分かる。
【0161】
図12に示すように、下層にPEDOT膜を有するPEDOT/CNT透明導電膜のシート導電率は、下層に形成されているPEDOT膜によって十分に向上しているものと想定され、PEDOT/CNT透明導電膜のCNT膜上にPEDOT膜を成膜したPEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のシート導電率は、PEDOT/CNT透明導電膜のシート導電率より僅かに上昇するだけと想定される。
【0162】
しかし、実際には、PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のシート導電率は、PEDOT/CNT透明導電膜のシート導電率は2倍までに向上しており、PEDOT/CNT透明導電膜のCNT膜上に成膜したPEDOT膜の、透明導電膜のシート導電率の向上に対する寄与は非常に顕著である。
【0163】
図12中に、PEDOT/CNT透明導電膜のシート導電率を単純に2倍したグラフを破線によって示すが、実際に測定されたシート導電率の値は、破線で示される値よりも2倍程度大きくなっている。
【0164】
以上のことから、CNT膜が数nm程度の膜厚であっても、CNT膜の片側(一方の面)だけに形成されたPEDOT膜によるシート導電率を十分に向上させるには不十分であり、CNT膜の両側(両方の面)からPEDOT膜で挟み込むことによって、更に、シート導電率が向上していることが明らかである。
【0165】
このように、CNT膜の両方の面からPEDOT膜で挟んだPEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造をもたせることによって、大きなシート導電率を有する透明導電膜を作成することができる。
【0166】
図12に示すように、PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のPEDO膜上にCNT膜を成膜したCNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のシート導電率は更に向上し、この透明導電膜のCNT膜上にPEDOT膜を成膜したPEDOT/CNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のシート導電率は更に向上している。
【0167】
PEDOT/CNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のシート抵抗は2.3kΩ/□、透過率(PET基板を除く。)は96.2%であり、優れた導電性と高透明性を有する透明導電膜を作成することができた。PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を繰り返し形成することによって、図12(B)に示すように、外挿によって推定すると、550nmにおける透過率が約95%であり、シート抵抗が約500Ω/□である透明導電膜が作成可能であると考えられる。
【0168】
従来、Dip法では10kΩ/□程度の導電膜しか得られなかったが、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を繰り返し形成による、CNT膜の多層化によって、従来よりも導電性を向上することができた。
【0169】
以上、PET基板に密着してPEDOT膜が形成され、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を有する透明導電膜について説明したが、次に、PET基板に密着してCNT膜が形成され、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を有する透明導電膜について説明する。
【0170】
図13は、本発明の実施例における、PET膜に、(a)PEDOT膜、CNT膜を、(b)CNT膜、PEDO膜を順次積層した透明導電膜の構造と吸光度及びシート導電率の関係を説明する図であり、横軸は吸光度、縦軸はシート電導率(S/sq)を示す。
【0171】
図13に示す(a)は、図12(A)に示す実線のグラフであり、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を含む透明導電膜の吸光度とシート導電率の関係を示し、図13に示す(b)は、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を含む透明導電膜の吸光度とシート導電率の関係を示している。
【0172】
図12に示す透明導電膜と同様にして、PET基板上に、先ず、上述の親水処理を施したPET基板上にDip法によってCNT膜を形成した後、(1)先に形成されているCNT膜上にPEDOT膜を形成し、次に、更に、(2)先に形成されているPEDOT膜上にCNT膜を形成し、(3)(1)及び(2)を複数回繰り返すよってCNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を有する透明導電膜を形成する。
【0173】
このようにして形成された、PEDOT/CNT、CNT/PEDOT/CNT、PEDOT/CNT/PEDOT/CNT、CNT/PEDOT/CNT/PEDOT/CNT等の透明導電膜について、透過率及びシート抵抗を測定した。
【0174】
図13の(b)には、測定された透過率を吸光度に変換し、シート抵抗をシート導電率に変換してプロットしている。また、参考のためにCNT膜に関するデータもプロットしている。
【0175】
なお、先に形成されているCNT膜上にPEDOT膜(膜厚2nm〜10nm)を、スピンコート法によって形成し、先に形成されているPEDOT膜上にCNT膜(膜厚2nm〜10nm)を、HiPco単層CNTを使用してDip法によって形成した。
【0176】
Dip条件は、CNTを分散させる溶媒として1,2−ジクロロエタン溶液を用い、CNTの濃度は0.1g/Lとし、浸漬時間は60secとした。スピンコート条件は、先述のスピンコート用溶液における濃度比(IPA/PEDOT)=5、回転数を5000rpm、スピンコート時間を1分間とした。
【0177】
図12と図13の比較から明らかなように、PET基板に密接して形成されたCNT膜に対する、このCNT膜上にPEDOT膜を成膜したPEDOT/CNT透明導電膜のシート導電率(図13の(b)に示す。)の向上、及び、CNT/PEDOT/CNT透明導電膜に対するこの透明導電膜のCNT膜上にPEDOT膜を成膜したPEDOT/CNT/PEDOT/CNT透明導電膜のシート導電率(図13の(b)に示す。)の向上はそれぞれ、顕著であり、PEDOT/CNT透明導電膜に対する、この透明導電膜のCNT膜上にPEDOT膜を成膜したPEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のシート導電率(図13の(a)、図12に示す。)の向上と、同程度である。
【0178】
以上のことから、最外層にPEDOT膜を有する透明導電膜のシート導電率は、最外層にCNT膜を有する透明導電膜のシート導電率の約2倍であり、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を有する透明導電膜においても、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を有する透明導電膜と同様に、最外層にPEDOT膜を設ける構成とするのが、大きなシート導電率を有する透明導電膜を作成する点で好ましい。
【0179】
図13の(b)に示すように、最外層にPEDOT膜を有する透明導電膜の最外層のPEDOT膜上にCNT膜を成膜することによっても、シート導電率を約2倍向上させることができる。
【0180】
図13における(a)と(b)との比較から、(1)CNT/PEDOT透明導電膜とPEDOT/CNT透明導電膜、(2)PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜とCNT/PEDOT/CNT透明導電膜、(3)CNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜とPEDOT/CNT/PEDOT/CNT透明導電膜、(4)PEDOT/CNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜とCNT/PEDOT/CNT/PEDOT/CNT透明導電膜はそれぞれ、同程度の透過率及びシート導電率を有しており、透明導電膜が透明電極として使用される光学装置に要求される導電性、透明性に応じて、CNT膜、PEDOT膜の基板に対する積層順を選択することによって、最も好適な光学的及び電気的特性をもった透明導電膜を作成することができる。
【0181】
従来、Dip法では10kΩ/□程度の導電膜しか得られなかったが、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を繰り返し形成による、CNT膜の多層化によっても、従来よりも導電性を向上することができた。
【0182】
以上説明したように、本発明では、CNT透明導電膜の特性を向上させるために、CNTと導電性高分子PEDOTとの複合化を検討した結果、両者を単純に混合して複合化するのではなく、CNT膜の3次元ネットワーク構造を保ちつつ、CNT膜とPEDOT膜による層状構造を形成することによって両者を一体化して、CNT膜の3次元ネットワーク構造中に存在する導電パスを保持したままの複合化することによって、PEDOT膜の表面状態及び親水性等によって、CNT膜に接して形成されたPEDOT膜が導電性の向上のみならず、CNT膜の間における接着層として有効に作用しており、このPEDOT膜の接着層としての作用によって、CNT膜とPEDOT膜の積層によって多層膜を作成することができ、CNT膜上にPEDOT膜を形成することによって、シート導電率を約2倍向上させることができ、CNT膜の膜厚が数nmであっても、PEDOT膜によってCNT膜を上下から挟み込んだサンドイッチ構造、或いは、CNT膜によってPEDOT膜を上下から挟み込んだサンドイッチ構造を形成することによって、導電性をより向上させることができた。
【0183】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、透明導電膜において、これを構成するCNT膜及びPEDOT膜の厚さ、積層されるCNT膜及びPEDOT膜の層数並びに積層順、更に、透明導電膜が形成される基板の材質等は、透明導電膜が使用される光学装置等が必要とする性能を満たすよう必要に応じて任意に適切に設定することができる。また、本発明による透明導電膜は、透明電極の他に、透明帯電防止膜としても利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
以上説明したように、本発明によれば、高い導電性と高い光透過率を有する透明導電膜及びこれを用いた光学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】本発明の実施の形態における、PET膜に、(A)PEDOT膜、CNT膜、(B)CNT膜、PEDOT膜を順次積層した透明導電膜の構造を説明する図である。
【図2】同上、透明導電膜を使用したタッチパネルを説明する図である。
【図3】同上、CNT透明導電膜の問題点を説明する概念図である。
【図4】本発明の実施例における、同上、PEDOT膜の成膜方法とシート抵抗、透過率、膜厚さの関係を説明する図である。
【図5】同上、PEDOT膜及びCNT膜の透過率を説明する図である。
【図6】同上、PEDOT膜及びCNT膜のシート導電率と吸光度の関係の例を説明する図である。
【図7】同上、PEDOT膜のAFM像とその3次元表示を説明する図である。
【図8】同上、CNT膜上へのPEDOT膜の形成による透過率、シート抵抗の変化を説明する図である。
【図9】同上、CNT膜上へのPEDOT膜の形成による透過率、シート抵抗の変化を説明する図である。
【図10】同上、CNT膜上へのPEDOT膜の形成後のSEM像を説明する図である。
【図11】同上、PET膜、親水処理を施したPET膜、CNT膜、PEDOT膜を積層した積層膜の水に対する接触角を説明する図である。
【図12】同上、PET膜にPEDO膜、CNT膜を順次積層した透明導電膜の構造と特性の関係を説明する図である。
【図13】同上、PET膜に、(a)PEDO膜、CNT膜、(b)CNT膜、PEDO膜を順次積層した透明導電膜の構造と吸光度及びシート導電率の関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0186】
1a、1b…透明電導膜、2a…PET基板、2b…ガラス基板、3ドットスペーサ、
4…絶縁層、5…空間、10a、10b…CNT、20a…ポリマ、20b…導電性材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜及びこれを用いた光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明導電膜材料としてはインジウム錫酸化物(ITO)が主に用いられているが、機械的特性が悪く、曲げ等に弱く、屈曲可能なプラスチック基板を用いたディスプレイ、太陽電池等柔軟な用途には適していない、また、資源が少なくインジウムが高価であるという問題がある。
【0003】
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube、以下、CNTと略記する)は、優れた電気的、機械的特性を有し、ナノテクノロジーの有力な材料として広範囲の分野での応用が期待され、基礎研究、応用研究が盛んに行われている。その一つとして、CNT等を含む溶液を基板上に塗布する等の方法による透明導電膜の作成が検討されている。
【0004】
「カーボンナノチューブ含有フィルムの製造方法及びカーボンナノチューブ含有コーティング」と題する特許文献1には、以下の記載がある。
【0005】
CNT含有コーティングフィルムの製造方法において、前記CNT含有コーティングフィルムの製造方法は、少なくともCNTと溶媒とを含有する第1の分散体を基材の表面に塗布し、第1の分散体の溶媒を除去して、CNTを三次元網目構造にし、更に、この上に少なくとも樹脂と溶媒とを含有する第2の分散体を塗布して、第2の分散体をCNTの三次元網目構造の中に浸透させたことを特徴とするCNT含有コーティングフィルムの製造方法。
【0006】
特許文献1の発明のフィルムは、少ないCNT含有量で優れた導電性及び透明性が得られる。好ましい実施形態では、フィルム中にCNTは、約0.001から約1重量%存在する。好ましくは、前記フィルム中にCNTは約0.01から約0.1%存在し、このため優れた透明性が得られ低ヘイズとなる。
【0007】
「カーボンナノチューブ分散溶液及びカーボンナノチューブ分散体」と題する特許文献2には、以下の記載がある。
【0008】
従来の技術では、CNTの溶液に対する分散性向上をはかるため、CNTの表面を改質すると本来のCNTの特性、例えば、高導電性や半導体特性が損なわれるという問題が生じていた。そこで本発明は上記問題点を解決すべく、CNTの高導電性や半導体特性を維持しながら、溶剤への分散性に優れたCNT、そのCNTを有するCNT分散溶液、及び該溶液によって得られるCNT分散体を提供する。
【0009】
上記課題を達成するために、特許文献2の発明は下記の構成からなる。
(1)カーボンナノチューブと溶媒を有するカーボンナノチューブ分散溶液であって、カーボンナノチューブの少なくとも一部に共役系重合体が付着し、カーボンナノチューブが溶媒中に分散しているカーボンナノチューブ分散溶液。
(2)カーボンナノチューブの少なくとも一部に共役系重合体を付着させる工程と、共役系重合体が付着したカーボンナノチューブを該共役系重合体が可溶な溶媒で洗浄する工程と、上記工程によって得られたカーボンナノチューブを溶媒に溶解させる工程とを有する(1)記載のカーボンナノチューブ分散溶液の製造方法。
(3)上記(1)のカーボンナノチューブ分散溶液を塗布することによって形成されるCNT分散体である。
【0010】
特許文献2の発明によれば、CNTを溶液に均一に分散させることができ、そこで得られたCNT分散溶液を用いることによって、CNT自身が本来有する高導電性と優れた半導体特性を持つ分散体を、高温を必要とせず室温で形成することができる。また、特許文献2の発明によれば、CNT分散体の膜厚を均一に形成できることから、CNT分散体膜を電子放出源とした電子放出素子を得ることができ、またCNT分散体の膜厚を薄くすることで、透明導電体を得ることができる。
【0011】
特許文献2の発明は、共役系重合体が少なくとも一部に付着したCNTを溶媒に分散することによって均一なCNT分散溶液ができること、更には該溶液を基板上に塗布することによって均一なCNT分散体が得られるものである。なお、特許文献2の発明では、分散という言葉を用いるが、これはCNTが溶媒中に溶解している現象も含むものである。
【0012】
以下、特許文献2の発明について詳述する。特許文献2の発明においてCNTに付着する重合体は、共役系重合体であることが必要で、更に好ましくは直鎖状共役系重合体である。ここで直鎖状とは、重合体の骨格構造が安定状態(外力が加わっていない状態)において螺旋構造を取らず、まっすぐ延びているものを意味し、また、共役系重合体とは重合体の骨格の炭素−炭素の結合が1重結合と2重結合が交互に連なっている重合体を意味する。共役系重合体は共役系構造が伸びた構造からなるのでCNTと重合体とでの電荷の移動がスムーズであり、またCNTに付着した重合体以外の重合体が介在しないため、CNTの高い導電性や半導体特性を効率的に利用できるという特徴がある。特許文献2の発明のCNT分散溶液においてCNTの濃度を変えることによって該溶液を塗布した基板の電導性や半導体特性を制御することができる。
【0013】
共役系重合体としては、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ−p−フェニレン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体等が挙げられる。
【0014】
「カーボンナノチューブ含有組成体、これからなる塗膜を有する複合体、及びそれらの製造方法」と題する特許文献3には、以下の記載がある。
【0015】
特許文献3の発明の第1は、スルホン酸基のアンモニウム塩及び/又はカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマ(a)、溶媒(b)、及びCNT(c)を含有することを特徴とするCNT含有組成物である。特許文献3のCNT含有組成物は、更に高分子化合物(d)、塩基性化合物(e)、界面活性剤(f)、シランカップリング剤(g)及び/又はコロイダルシリカ(h)を含有することで、その性能の向上をはかることができる。
【0016】
特許文献3の発明の第2は、スルホン酸基のアンモニウム塩及び/又はカルボン酸基のアンモニウム塩を有する導電性ポリマ(a)、溶媒(b)、及びCNT(c)を混合し、超音波を照射することを特徴とするCNT含有組成物の製造方法である。
【0017】
特許文献3の発明の第3は、基材の少なくとも一つの面上に、特許文献3の発明のCNT含有組成物からなる塗膜を有することを特徴とする複合体である。特許文献3の発明の第4は、基材の少なくとも一つの面上に、特許文献3のCNT含有組成物を塗工し、常温で放置或いは加熱処理を行って塗膜を形成することを特徴とする複合体の製造方法である。
【0018】
また、特許文献3の第5は、基材の少なくとも一つの面上に、特許文献3のCNT含有組成物を塗工し、常温で放置或いは加熱処理を行って塗膜を形成し、該塗膜の物性を評価することを特徴とするCNTの物性評価方法である。また、特許文献3の第6は、発明のCNT含有組成物を脱溶媒してなるCNT含有高分子材料である。また、特許文献3の第7は、特許文献3のCNT含有高分子材料を焼成してなるCNT含有炭素材料である。
【0019】
「突出した導電層を有する成形体」と題する特許文献4には、以下の記載がある。
【0020】
特許文献4の発明の実施形態の1つは、基材と該基材の表面に形成された導電層とからなる導電性成形体であって、該導電層はその内部で細かい導電繊維は分散されて、少なくとも繊維のある部分が基材に固定され、少なくとも前記繊維のある部分が導電層の最表面から突出して、前記繊維がお互いに電気的に接触して配列しているものである。好ましくは、繊維が最表面から突出した部分で、或は基材に固定された部分でお互いに電気的に接触していることである。
【0021】
基材は基材本体と表面層とからなり、この基材に固定される繊維の部分は表面層に固定されているか、或は基材に固定された繊維の部分が繊維の端部或は繊維の中間部である。好ましくは、繊維は他の繊維から分離していることであり、多数の繊維が束を形成していれば、該繊維の束が他から分離していることである。好ましい繊維は炭素繊維であるが、これに限定されるものではない。そして、炭素繊維はCNTであることが好ましい。導電層の厚さは5〜500nmであることが好ましい。表面層は硬化性樹脂で形成されていることが好ましく、またそのような表面層は熱可塑性樹脂から形成されていることも好ましい。導電層は、表面抵抗率が約100〜約1011Ω/□であることが好ましく、550nmの光線透過率が50%以上で、表面抵抗率が100〜1011Ω/□であることが好ましい。
【0022】
「タッチパネル」と題する特許文献5には、以下の記載がある。
ガラス基板の上面の透明導電膜は、透明性の液状の紫外線硬化型のアクリル樹脂にマット材(酸化シリコン)と共にCNTを10%未満練り込んだCNT混合アクリル樹脂を用意し、ロールを使用してCNT混合アクリル樹脂をガラス基板の上面に塗布して、塗布膜を形成し、最後に紫外線を照射し、アクリル樹脂を硬化させて形成される。透明導電膜内では、CNTは不規則に並んでいる。
【0023】
また、非特許文献1には、SWNT間の抵抗に関する記載がある。
【0024】
また、非特許文献2には、ろ過法によるSWNT透明フィルムの形成についての記載がある。
【0025】
また、非特許文献2には、SWNTフィルムをPEDOT:PSSでコーティングして表面粗度を小さくする記載がある。
【0026】
【特許文献1】特許第3665969号公報(特許請求の範囲(請求項1)、段落0013)
【特許文献2】特開2005−89738号公報(段落0005〜0010)
【特許文献3】特開2005−281672号公報(段落0009〜0013)
【特許文献4】特表2006−519712号公報(段落0008〜0009)
【特許文献5】特開2007-11997号公報(段落0012、図3)
【非特許文献1】M.S.Fuhrer et al, “Crossed Nanotube Junctions”, Science, Vol.288(2000)494 - 497(第494頁)
【非特許文献2】Z. Wu et al, “Transparent, conductive Carbon Nanotube Films”, Science, Vol.305(2004)1273 - 1276(第1273頁)
【非特許文献3】M.W.Rowell et al, “Organic solar cells with carbon nanotube network electrodes”, Appl. phys. lett., 88, 233506(2006)(233506-2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
従来、CNT等を含む溶液を基板上に塗布する等の方法により透明導電膜の成膜が検討されているが、CNTは、溶媒中に混合した場合に、溶液中に安定に分散させることが非常に困難で、容易に凝集をしてしまうため、塗布等により、均一な導電膜を作成することが困難という問題がある。このため、分散剤等を用いて安定な分散溶液を作成する方法や、分散させた後に均一に成膜する方法等が検討されている。
【0028】
均一に成膜する方法として、例えば、溶液中のCNTをフィルタ上に均一に堆積させ、透明基板上にCNTを転写して生成するフィルタ法等があるが、成膜プロセスが非常に煩雑であり、不純物を多く含んでしまうという問題がある。
【0029】
また、CNTと基板との親和性を利用して、CNTを自発的に基板に付着させる方法があるが、この方法では導電膜の成膜が、比較的に表面エネルギーが大きいシリコン基板上などに限られてしまうという問題がある。また、その他の方法として、電着法、CVDを用いた方法等があるが、いずれもスケールアップが非常に困難であるという問題がある。
【0030】
透明電極等に使用されるITO透明導電膜に換えて、CNTを用いた透明導電膜を実用化するためには、透明性、導電性を高める必要がある。
【0031】
図3は、CNT透明導電膜を実用化する上での問題点を説明する概念図であり、図3(A)はCNTがポリマ中に分散された複合体、図3(B)は理想的な3次元ネットワークをもった複合体、図3(C)は図3(A)、図3(B)におけるCNT間の抵抗を説明する図である。
【0032】
従来、CNTを含む複合体は、多くの場合、図3(A)に示すように、機械的な強度を保持するために熱可塑性又は熱硬化性ポリマ(樹脂)20a、例えば、アクリル樹脂中にCNT10aを混ぜて複合化した形態のものであり、ポリマ20aの海の中にCNT10aがポリマ20aを介してランダムに存在する構造となっており、CNTのネットワーク構造が乱れ、図3(C)の左側図に示すように、CNT10a同士が近接する部分ではその間隙がポリマ20aで満たされた空間となっているため、CNT10a同士の直接的な接触が悪いため抵抗が高いものとなってしまい、高い導電性を出すことが困難となる。高い導電性を実現するためには、複合体は十分な濃度でCNT10aを含んでいる必要があるが、この場合、複合体はかなり強い黒色を呈してしまい、光透過率が低下したものとなってしまうという問題がある。
【0033】
この問題を解決するには、図3(B)に示すように、CNT10bが相互に接触した理想的な3次元ネットワーク構造が保持され、図3(C)の右側図に示すように、CNT10bの間隙が導電性材料20bによって満たされていることが望ましいが、実際に、理想的な3次元ネットワーク構造が形成されず、CNT10b同士が近接し相互に接触した部分、及び、CNT10b同士が近接し相互に接触していな部分を含んで、全体として3次元ネットワーク構造を有している場合でも、CNT10bの間隙(複数個所に存在する可能性がある。)の少なくとも一部箇所が導電性材料20bによって満たされていれば、複合体の導電性は高いものとなることが期待される。
【0034】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、高い導電性と高い光透過率を有する透明導電膜及びこれを用いた光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0035】
即ち、本発明は、基板(例えば、後述の実施の形態におけるPET基板)に接触させて積層された導電性高分子層(例えば、後述の実施の形態におけるPEDOT膜)と、この導電性高分子層に接触させて積層されたカーボンナノチューブ層(例えば、後述の実施の形態におけるCNT膜)とを有する透明導電膜に係るものである。
【0036】
また、本発明は、基板に積層されたカーボンナノチューブ層及び導電性高分子層を具備し、前記導電性高分子層が2つの前記カーボンナノチューブ層と接触させて積層されたサンドイッチ構造からなる層を有し、一方の前記カーボンナノチューブ層が前記基板に接触させて積層された透明導電膜に係るものである。
【0037】
また、本発明は、上記の透明導電膜が形成された第1の基板と、間隙をおいて前記第1の基板に対向して設けられ電極を具備する第2の基板とを有する光学装置(例えば、後述の実施の形態におけるタッチパネル)に係るものである。
【発明の効果】
【0038】
本発明の透明導電膜によれば、基板に接触させて積層された導電性高分子層と、この導電性高分子層に接触させて積層されたカーボンナノチューブ層とを有するので、前記基板に前記カーボンナノチューブ層を直接接触させて積層されてなる透明電導膜よりも小さな表面抵抗(シート抵抗)を有する透明電導膜を実現することができる。
【0039】
また、本発明の透明導電膜によれば、基板に積層されたカーボンナノチューブ層及び導電性高分子層を具備し、前記導電性高分子層が2つの前記カーボンナノチューブ層と接触させて積層されたサンドイッチ構造からなる層を有し、一方の前記カーボンナノチューブ層が前記基板に接触させて積層された構成を有しているので、前記基板に前記カーボンナノチューブ層を直接接触させて積層されてなる透明電導膜よりも小さな表面抵抗を有する透明電導膜を実現することができる。
【0040】
また、本発明の光学装置によれば、上記の透明導電膜が形成された第1の基板と、間隙をおいて前記第1の基板に対向して設けられ電極を具備する第2の基板とを有するので、表面抵抗が小さく、光透過率が大きく、電気的特性、光学的特性に優れた、タッチパネル、エレクトロルミネッセンス装置、エレクトロクロミック装置、太陽電池等の光学装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の透明導電膜では、前記カーボンナノチューブ層が2つの前記導電性高分子層と接触させて積層されたサンドイッチ構造からなる層を有する構成とするのがよい。この構成によれば、より小さな表面抵抗を有する透明電導膜を実現することができる。
【0042】
また、前記カーボンナノチューブ層が最も上層に積層された構成とするのがよい。この構成によれば、より小さな表面抵抗を有する透明電導膜を実現することができる。
【0043】
また、前記導電性高分子層が最も上層に積層された構成とするのがよい。この構成によれば、より小さな表面抵抗を有する透明電導膜を実現することができる。
【0044】
また、シート抵抗が1Ω/□以上、10,000Ω/□以下である構成とするのがよい。この構成によれば、表面抵抗が小さく電気的特性に優れた光学装置を提供することができる。
【0045】
また、可視光の光透過率が70%以上である構成とするのがよい。この構成によれば、光透過率が大きく光学的特性に優れた光学装置を提供することができる。なお、可視光の光透過率が70%以上であるとは、可視光の全領域における光透過率を示し、基板に形成された透明導電膜における基板を含まない透明導電膜のみに関する光透過率が70%以上であることを意味するものとする。
【0046】
また、前記導電性高分子層及び前記カーボンナノチューブ層の厚さが、数nm以上、100nm以下である構成とするのがよい。この構成によれば、表面抵抗が小さく、光透過率が大きく、電気的特性、光学的特性に優れた透明電導膜を実現することができる。
【0047】
また、前記カーボンナノチューブ層が、溶媒中にカーボンナノチューブを分散させた溶液を塗布することによって形成された構成とするのがよい。この構成によれば、透明電導膜を複雑な装置を必要とせずに提供することができる。
【0048】
また、前記導電性高分子層が、導電性高分子を溶媒中に希釈させた溶液を塗布することによって形成された構成とするのがよい。この構成によれば、透明電導膜を複雑な装置を必要とせずに提供することができる。
【0049】
また、前記カーボンナノチューブ層において、1つのカーボンナノチューブ分子が複数個のカーボンナノチューブ分子と接触している構成とするのがよい。この構成によれば、前記カーボンナノチューブ層が相互に接触したカーボンナノチューブ分子による3次元ネットワークを形成しているので、高い導電性を有する透明導電膜を実現することができる。
【0050】
また、前記基板が透明な基板、望ましくはポリマ基板である構成とするのがよい。この構成によれば、フレキシブルな変形可能であり、所望の形状を有する透明導電膜を実現することができる。
【0051】
本発明の光学装置では、前記透明導電膜を使用する構成とするのがよい。この構成によれば、電気的特性、光学的特性に優れた光学装置を提供することができる。
【0052】
また、タッチパネルとして構成されたものがよい。この構成によれば、電気的特性、光学的特性に優れたタッチパネルを実現することができる。
【0053】
また、前記第1の基板と前記第2の基板との間に電圧を印加することによって発光する発光層が設けられエレクトロルミネッセンス装置として構成されたものがよい。この構成によれば、電気的特性、光学的特性に優れたエレクトロルミネッセンス装置を実現すことができる。
【0054】
また、前記第1の基板にエレクトロクロミック化合物が担持され、エレクトロクロミック装置として構成されたものがよい。この構成によれば、電気的特性、光学的特性に優れたエレクトロクロミック装置を実現すことができる。
【0055】
また、前記第1の基板と前記第2の基板との間に有機色素を吸着させた二酸化チタン層と電解質を挟み込んだ構造を有する太陽電池として構成されたものがよい。この構成によれば、電気的特性、光学的特性に優れた太陽電池を実現すことができる。
【0056】
本発明は、(1)基板に接触させて導電性高分子層を積層する第1の工程と、前記導電性高分子層に接触させてカーボンナノチューブ層を形成する第2の工程とを有する、透明導電膜の製造方法に係るものである。
【0057】
また、本発明は(2)基板に接触させてカーボンナノチューブ層を形成する工程と、前記カーボンナノチューブ層に接触させて導電性高分子層を形成し次いでこの導電性高分子層に接触させて前記カーボンナノチューブ層を形成し、サンドイッチ構造からなる層を形成する工程とを有する、透明導電膜の製造方法に係るものである。
【0058】
また、(3)(1)において、前記カーボンナノチューブ層に接触させて前記導電性高分子層を積層する第3の工程を有する構成とするのがよい。
【0059】
また、(4)(3)において、前記導電性高分子層に接触させて前記カーボンナノチューブ層を積層する第4の工程を有する構成とするのがよい。
【0060】
また、(5)(1)において、前記カーボンナノチューブ層に接触させて前記導電性高分子層を積層する第3の工程を有し、前記第2の工程と前記第3の工程を繰り返す構成とするのがよい。
【0061】
また、(6)(5)において、前記導電性高分子層に接触させて前記カーボンナノチューブ層を積層する第4の工程を有する構成とするのがよい。
【0062】
また、(7)(2)において、前記カーボンナノチューブ層に接触させて前記導電性高分子層を積層する第3の工程を有する構成とするのがよい。
【0063】
また、(8)(1)又は(2)において、シート抵抗が1Ω/□以上、10,000Ω/□以下である構成とするのがよい。
【0064】
また、(9)(1)又は(2)において、可視光の光透過率が70%以上である構成とするのがよい。
【0065】
また、(10)(1)又は(2)において、前記導電性高分子層及び前記カーボンナノチューブ層の厚さが、数nm以上、100nm以下である構成とするのがよい。
【0066】
また、(11)(1)又は(2)において、前記カーボンナノチューブ層が、溶媒中にカーボンナノチューブを分散させた溶液を塗布することによって形成する構成とするのがよい。
【0067】
また、(12)(1)又は(2)において、前記導電性高分子層が、導電性高分子を溶媒中に希釈させた溶液を塗布することによって形成する構成とするのがよい。
【0068】
また、(13)(1)又は(2)において、前記カーボンナノチューブ層において、1つのカーボンナノチューブ分子が複数個のカーボンナノチューブ分子と接触している構成とするのがよい。
【0069】
以下、図面を参照しながら本発明による実施の形態について詳細に説明する。
【0070】
透明導電膜は、透明基板上に積層された数nm以上、100nm以下の厚さの導電性高分子層と、この導電性高分子層上に積層された数nm以上、100nm以下の厚さのカーボンナノチューブ(CNT)層を有している。CNT層は、溶媒中にCNTを分散させた溶液を用いてディップ法、スピンコート法等の塗布法によって形成され、CNT分子が相互に接触した3次元ネットワーク構造を有している。導電性高分子層は、導電性高分子を溶媒中に希釈させた溶液を用いてディップ法、スピンコート法等の塗布法によって形成されている。CNT層、導電性高分子層は、印刷法によって形成することもできる。
【0071】
透明導電膜は、CNT層が2つの導電性高分子層に挟まれ積層されたサンドイッチ構造からなる層を有しており、サンドイッチ構造からなる層は複数有していてもよく、CNT層が最も上層に積層されている。
【0072】
また、透明導電膜は、透明基板に積層されたCNT層及び導電性高分子層を具備し、導電性高分子層が2つのCNT層に挟まれ積層されたサンドイッチ構造からなる層を有しており、一方のCNT層は透明基板上に積層されており、サンドイッチ構造からなる層は複数有していてもよく、導電性高分子層が最も上層に積層されている。
【0073】
透明導電膜が形成される基板として、ガラス基板、各種のポリマ基板(高分子基板)を用いることができ、ポリマ基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PAN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステルフィルムをはじめとして、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PS)等の透明性を有する基板を使用することができる。
【0074】
導電性高分子層は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビ二レン等のポリマを主成分とする有機導電性材料(導電性ポリマ)を使用して形成することができる。
【0075】
例えば、導電性ポリマとして、スタルクヴィテック社製(購入先:純正化学)のポリチオフェン系導電性ポリマ、Baytron(登録商標)PEDOT(3,4−エチレンジオキシチオフェンを高分子量スチレンスルホン酸中で重合してなる導電性ポリマである。)を用いることができる。Baytronは青みを帯びた高分子で、高透明性であり、数百〜108Ω/□の表面抵抗が可能とされている。
【0076】
PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))は本来不溶性であるがポリスチレンスルホン酸(PSS)の存在下、水溶液中でコロイド分散液として得られ、このPEDOT/PSS水性分散液は、ロール、スピン、スプレイコーティング等によって塗布可能である。
【0077】
本発明では、CNTを溶媒に分散させた分散液を用いて基体(ガラス又は高分子板、或いは、フィルタ)上で溶媒を蒸発させてCNTだけを残し、3次元ネットワーク構造をもったCNT層を形成し、CNT層と導電性ポリマ層を積層することによって、CNT層と導電性ポリマ層が積層された接合部分で、導電性ポリマがCNT層におけるCNTの隙間に浸透して、2つの層の電気的接触が良好に保持されると共に2つの層の接合強度が保持され、高い導電性と高い光透過率を有し優れた電気的特性と光学的特性を有する、CNT層と導電性ポリマ層が積層されてなる複合体として透明導電膜を形成することができる。
【0078】
本発明による透明導電膜は透明性、導電性、機械的強度が高く、シート抵抗が1Ω/□以上、10,000Ω/□以下であり、可視光に対する光透過率が70%以上であり、優れた導電特性及び光学特性を有している。光学装置、例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)装置、エレクトロクロミック(EC)装置、液晶装置(LCD)、発光ダイオード素子(LED)、プラズマディスプレィパネル(PDP)等では、10Ω/□〜100Ω/□のシート抵抗、70%以上の透過率(透明電極が形成される基板を除く)の特性、太陽電池では、1Ω/□〜20Ω/□のシート抵抗、70%以上の透過率(透明電極が形成される基板を除く)の特性、タッチパネルでは、100Ω/□〜10kΩ/□のシート抵抗、92%以上の透過率(透明電極が形成される基板を除く)の特性を有する透明電極の使用が望ましいとされ、透明導電電極には高透明性と低抵抗性が要求されている。本発明による透明導電膜は、タッチパネル、EL装置、EC装置、LCD、LED、PDP、通常のシリコン系の太陽電池、色素増感太陽電池等の光学装置における透明電極として、好適に使用することができる。
【0079】
実施の形態
図1は、本発明の実施の形態における、PET膜に、(A)PEDOT膜、CNT膜を、(B)CNT膜、PEDOT膜を、順次積層した透明導電膜の構造を説明する図である。
【0080】
図1に示すように、透明導電膜は、透明基板としてPETを使用しこの上に形成され、ネットワーク状に形成された3次元ネットワーク構造をもったCNT層(図1では単にCNTと記す。)と、上述したPEDOT/PSS水性分散液(製品名Baytron P HCV4を使用。)を使用して形成された導電性高分子層(図1では単にPEDOTと記す。)が交互に積層された構造を有している。
【0081】
図1(A)において、
(A1)は、PET膜上に、PEDOT膜、CNT膜を積層したCNT/PEDOT透明電導膜を示す斜視図及び断面図を示し、
(A2)は、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を有し、PET膜上に、PEDOT膜、CNT膜、PEDOT膜を順次積層したPEDOT/CNT/PEDOT透明電導膜を示す斜視図であり、
(A3)は、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を有し、PET膜上に、PEDOT膜、CNT膜、PEDOT膜、CNT膜を順次積層したCNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明電導膜を示す斜視図であり、
(A4)は、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を有し、PET膜上に、PEDOT膜、CNT膜、PEDOT膜、CNT膜、PEDOT膜を順次積層したPEDOT/CNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明電導膜を示す斜視図である。
【0082】
図1(B)において、
(B1)は、PET膜上に、CNT膜、PEDOT膜を順次積層したPEDOT/CNT透明電導膜を示す斜視図及び断面図を示し、
(B2)は、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を有し、PET膜上に、CNT膜、PEDOT膜、CNT膜を順次積層したCNT/PEDOT/CNT透明電導膜を示す斜視図であり、
(B3)は、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を有し、PET膜上に、PET膜上に、CNT膜、PEDOT膜、CNT膜、PEDOT膜を順次積層したPEDOT/CNT/PEDOT/CNT透明電導膜を示す斜視図であり、
(B4)は、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を有し、PET膜上に、CNT膜、PEDOT膜、CNT膜、PEDOT膜、CNT膜を順次積層したCNT/PEDOT/CNT/PEDOT/CNT透明電導膜を示す斜視図である。
【0083】
図1(A)に示す透明電導膜では、PET膜上に先ずPEDOT膜を形成するため、相性のよいポリマ同士の接合となり、PET基板とPEDOT層との間の接合(付着)強度は大きくなり、また、図1(A)、図1(B)に示す透明電導膜では、積層毎に形成されるCNT層の3次元ネットワーク構造の表面、積層毎に形成されるPEDOT層の表面にはそれぞれ、凹凸が存在するため、CNT層上にPEDOT層を形成、及び、PEDOT層上にCNT層を形成する際の接合面積が大きく、両層の間の接合(付着)強度が大きくなり、機械的強度が大きな透明電導膜がPET基板に形成される。
【0084】
図1に示す透明電導膜の形成過程では、CNT層の3次元ネットワーク構造を保持したままの状態で、CNT層上にPEDOT層を形成するので、CNT層の3次元ネットワーク構造を乱すことがなく、PEDOT層によるCNT層間の電気伝導のサポートにより、透明電導膜の導電性を高いものとすることができる。なお、積層するCNT層及びPEDOT層の厚さを薄くすることによって、積層されたCNT層の積層面方向、積層方向の全体において、導電性高分子(PEDOT)とCNT分子との接触頻度を高くし、透明電導膜の導電性をより高いものとすることができる。
【0085】
CNT層は、例えば、CNTを溶媒に分散させた溶液に透明基板を含浸させ、CNTを基板上に保持することによって、膜厚2nm〜10nmで成膜する。また、PEDOT層は、例えば、スピンコート法によって膜厚2nm〜10nmで成膜する。
【0086】
後述するように、CNT層の光透過率は、若干ではあるが短波長側で小さく、長波長側で大きく、一方、PEDOT層の光透過率は短波長側で大きく、長波長側で小さいが、光透過特性が異なるCNT層とPEDOT層を交互に積層することによって、光透過率が波長によって大きく変化せず、偏色性の少ない透明電導膜を形成することができる。
【0087】
なお、CNT層の形成に使用するCNTは、アーク放電法、レーザアブレーション法、CVD法、気相成長法等の何れか方法により製造されたものであり、例えば、Carbon Nanotechnologies Inc.製のHiPco(登録商標)単層CNTを使用することができる。CNTは、酸化、洗浄、ろ過、遠心分離等の精製によって、高純度化されたものを使用するのが好ましく、導電性のより高い透明電導膜を形成するためには、金属的CNTと半導体的CNTを分離して金属的CNTを使用するのが好ましい。また、CNTとして、単層CNT、多層CNTや、それらの中空部にフラーレン、金属等を内包した、内包チューブ等を用いることもできる。
【0088】
本発明では、図3(C)の右側図に示すように、CNTと導電性ポリマ材料との複合化による複合体の特性改善を図るため、CNTを溶媒に分散させた分散液を用いて基体(ガラス又は高分子基板、或いは、フィルタ)上で溶媒を蒸発させてCNTだけを残し3次元ネットワーク構造を形成し、ネットワーク構造を維持しているCNT層に、導電性ポリマ層としてPEDOT層を積層するが、このPEDOT層の形成の際に導電性ポリマ20b(PEDOT)がCNT層におけるCNT10bの隙間に浸透して、CN10b同士が導電性ポリマ20bを介して接触した状態となっているので、CNT層とPEDOT層の電気的接触が良好に保持されると共に、CNT層とPEDOT層の接合(付着)強度が保持され、高い導電性と高い光透過率を有する複合体として透明導電層を形成することができる。
【0089】
本発明による透明導電膜は、電極を具備し対向する基板を有する各種の光学装置に使用することができ、少なくとも一方の基板に、図1に示す何れかの透明導電膜を電極として有している。以下、光学装置の例について簡単に説明する。
【0090】
図2は、本発明の実施の形態における、透明導電膜を使用したタッチパネルを説明する図であり、図2(A)は断面図、図2(B)は透明電導膜の平面図を示す図である。
【0091】
通常、タッチパネルはLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)に重ねて配置されるため、80%(550nm)以上の透過率が必要であり、抵抗膜式タッチパネルのアナログ方式では、電極を構成する膜の抵抗の均一性が要求される。
【0092】
図2(A)の(A1)に示すように、透明タッチパネルは、透明導電膜1aが上部電極として形成された変形可能なPET基板(上部基板)2aと、表面に電気絶縁性のドットスペーサ3が形成された透明導電膜1bが下部電極として形成されたガラス基板(下部基板)2bから構成され、上部基板2aと下部基板2bは、僅かな隙間(空間)5を保ち両電極を対向させて電気絶縁層4を介して接合されている。
【0093】
上部基板2aと下部基板2bとの間隔5は、例えば、100μm〜300μmであり、この間隔5に対してドットスペーサ3の高さは、上部電極と下部電極が常時接触してON状態となることを防止し、パネルに表示される画像に影響を与えないように、例えば、5μm〜50μm程度である。両電極がタッチしていない状態では、微小なドットスペーサ3によって両電極は接触していないために電流は流れない。なお、下部電極はITO膜によって形成されてもよい。
【0094】
図2(A)の(A2)に示すように、指又は専用ペンでPET基板2a側に触れ押圧するとPET基板2aのタッチされた部分が変形たわみ、透明導電膜1a、1b同士が接触して電気が流れスイッチ動作が生じ、入力が検知される。
【0095】
図2(B)の(B1)〜(B4)に示すように、上部電極、下部電極をそれぞれ構成する透明電導膜1a、1bは、連続した平面状の透明電導膜、2次元マトリクス上に配置された不連続な微小電極からなる透明電導膜とすることができる。
【0096】
図2(B)の(B1)、(B3)、(B4)に示す例では、押圧によりPET基板2aが変形して生じた上部電極、下部電極の接触点(上部電極と下部電極が閉回路を形成する上記の微小電極の位置)、即ち、押圧された位置(座標)を、微小電極が接続された読み取り回路で検出する。
【0097】
図2(B)の(B2)に示す例は、アナログ方式の抵抗膜式タッチパネルであり、上部電極、下部電極をそれぞれ構成する透明電導膜1a、1bの抵抗による分圧比を測定することによって押圧された位置(座標)を検出する。
【0098】
図2に図示しないが、図2(B)の(B4)に示す例において、横方向に1行に並ぶ微小電極1aを各行毎に連接させた短冊状電極とし、横方向に1列に並ぶ微小電極1bを各列毎に連接させた短冊状電極とし、上部電極、下部電極を構成する短冊状電極を互いに直交するように配置し、上部電極、下部電極の短冊状電極を読み取り回路に接続させたマトリクス構造とすることもでき、押圧によって生じる上部、下部電極の接触点(上部電極と下部電極の短冊状電極が接触し閉回路を形成する位置)を、読み取り回路で検出する構成とすることもできる。
【0099】
また、本発明の透明電導膜は、図示しないエレクトロクロミック装置における透明電極として使用することができる。エレクトロクロミック装置は、有機又は無機化合物からなるエレクトロクロミック化合物が担持された透明電極とこれに対向する電極との間に電圧を印加することによって生じる、エレクトロクロミック化合物の電気化学的な酸化還元反応に伴う吸収スペクトルの変化(エレクトロクロミック現象)を利用するものであり、表示装置等に適用される。
【0100】
また、本発明の透明電導膜は、図示しないエレクトロルミネッセンス装置における透明電極として使用することができる。エレクトロルミネッセンス装置は、2つの電極の間に、硫化亜鉛等の無機物又はジアミン類等の有機物からなる発光体が配置され、2つの電極の間に電圧を印加することによって発生する発光を利用するものであり、表示装置、照明装置等に適用される。
【0101】
更に、本発明の透明電導膜は、図示しない太陽電池における透明電極として使用することができ、2枚の透明電極の間に微量の色素を吸着させた二酸化チタン層と電解質を挟み込んだ単純な構造を有する色素増感太陽電池における、光が入射される側の電極(アノード電極)を形成する透明電導膜として使用することができる。
【0102】
実施例
先ず、PEDOT膜の成膜方法を検討し、透過率、導電率、厚み、表面形状等の膜特性の評価を行ない、その特性をCNT膜と比較した。以下では、PEDOT/PSS水性分散液(製品名Baytron P HCV4)を使用した。
【0103】
PEDOT膜の成膜方法としては、浸漬法(引き上げ法)、スピンコート法を検討したが、均一性等からスピンコート法を選択した。
【0104】
スピンコート法に使用するスピンコート用溶液の調整であるが、市販のPEDOT/PSS水性分散液そのままの状態ではアセトンやIPA(イソプロピルアルコール)で希釈することができなかった。そこで、はじめに市販のPEDOT/PSS水性分散液をH2Oと混合した後に、IPAを加えて希釈した結果、均一なスピンコート用溶液を作成することができた。PEDOT(市販のPEDOT/PSS水性分散液)、H2O、IPAの混合比率に関して検討した結果、スピンコート用溶液として、PEDOT:H2O:IPA=1:1:5〜10程度の混合比率が適当であることが分かった。このスピンコート用溶液を使用してスピンコート法によって、透過率99%以上のPEDOT膜を作成することができた。
【0105】
回転数を2000rpm〜8000rpm程度、スピンコート時間を1分間程度とするスピンコート条件によって、均一なPEDOT膜が得られた。スピンコート後はホットプレート上にて、100度(摂氏温度)で1分間程度ポストベークを行った。なお、自然乾燥によっても導電性の良好なPEDOT膜が得られた。
【0106】
単純にスピンコートするだけでは厚いPEDOT膜を作成することができないため、後述する図4に示す成膜方法のように、スピンコート用溶液におけるIPAとPEDOT(市販のPEDOT/PSS水性分散液)の濃度比(IPA/PEDOT)、スピンコート条件を様々に変化させて、PEDOT膜をガラス基板上にスピンコート法によって成膜して、PEDOT膜の成膜方法による膜厚と特性(シート抵抗、透過率等)との関係を評価した。
【0107】
なお、以下で説明する透過率は、U4000型日立分光光度計を使用して
400nm〜800nmの波長領域で測定したものである。
【0108】
図4は、本発明の実施例における、PEDOT膜の成膜方法とシート抵抗、550nmにおける透過率(PEDOT膜が形成されたガラス基板を含まない透過率である。)、膜厚さの関係を説明する図である。
【0109】
図4に示す成膜方法(1)のスピンコート条件では、スピンコート用溶液におけるIPAとPEDOT(市販のPEDOT/PSS水性分散液)の濃度比(IPA/PEDOT)=5、回転数を6000rpm、スピンコート時間を1分間とした。この条件によって成膜されたPEDOT膜の厚さは2.4nm、シート抵抗>2MΩ/□であった。
【0110】
成膜方法(2)のスピンコート条件では、濃度比(IPA/PEDOT)=2、回転数を3000rpm、スピンコート時間=1分間とした。この条件によって成膜されたPEDOT膜の厚さは14nm、シート抵抗は108kΩ/□、透過率は98.7%であった。
【0111】
成膜方法(3)のスピンコート条件では、濃度比(IPA/PEDOT)=2、スピンコート時間=一瞬間とした。この条件によって成膜されたPEDOT膜の厚さは19nm、シート抵抗は22.5kΩ/□、透過率は97.0%であった。
【0112】
成膜方法(4)のスピンコート条件では、成膜方法(3)のスピンコート条件を2回繰り返す条件とした。この条件によって成膜されたPEDOT膜の厚さは69nm、シート抵抗は11.7kΩ/□、透過率は96.2%であった。
【0113】
成膜方法(5)のスピンコート条件では、濃度比(IPA/PEDOT)=1、スピンコート時間=一瞬間とした。この条件によって成膜されたPEDOT膜の厚さは109nm、シート抵抗は2.69kΩ/□、透過率は90.1%であった。
【0114】
成膜方法(6)のスピンコート条件では、成膜方法(5)のスピンコート条件を3回繰り返す条件とした。この条件によって成膜されたPEDOT膜の厚さは153nm、シート抵抗は1.38Ωk/□、透過率は81.5%であった。
【0115】
成膜方法(1)〜(4)のように、スピンコート用溶液における濃度比(IPA/PEDOT)、スピンコート時間を変化させても、PEDOT付着量(即ち、膜厚)が制御できるだけで、膜厚の増加と共にシート抵抗が減少するものの、PEDOT膜の透過率特性にはほとんど変化が見られなかった。
【0116】
図5は、本発明の実施例における、PEDOT膜及びCNT膜の透過率を説明する図であり、図5(A)は、上述したスピンコート法によって成膜されたPEDOT膜の透過率、図5(B)は、レーザアブレーション法で合成されたCNTを使用してフィルタ法によってガラス基板上に成膜されたCNT膜の透過率を示す図である。
【0117】
PEDOT膜はそれ自体もITOの代替材料として検討されているが、濃青色を有していることがデメリットとなっており、図5(A)の曲線(2)〜(6)は、図4に示す成膜法(2)〜(6)による膜厚14nm、19nm、69nm、109nm、153nmのPEDOT膜の透過率を示しており、膜厚の増加と共に、長波長側の吸収が大きくなっている。
【0118】
図5(B)の曲線(1)〜(5)はこの順に膜厚が、3nm、8nm、13nm、51nm、65nmであるCNT膜の透過率(CNT膜が形成されたガラス基板を含まない透過率である。)を示しており、膜厚の増加と共に吸収が大きくなっている。図5(A)に示すPEDOT膜と比較して、CNT膜では偏色性が少ないが、やや短波長側での吸収が大きい。この結果から考えると、導電膜の色味という点では、CNT膜とPEDOT膜は相補的であり、この両膜を積層して複合化をすることによって、より偏色性のない導電膜を得ることができる。
【0119】
図6は、本発明の実施例における、PEDOT膜及びCNT膜の両膜の膜厚を変化させ場合のシート導電率と吸光度の関係の例を説明する図であり、横軸は吸光度、縦軸はシート導電率(S/sq)を示し、図6(B)は、図6(A)における吸光度の小さい領域の拡大図である。なお、図6(B)中で矢印及び枠内に示すデータは図4に示す成膜方法(2)のスピンコート条件によるPEDOT膜の特性を示す。
【0120】
図6では、レーザアブレーション法で合成されたCNT(図6(A)では(1)Laser CNTと記す。)を使用しフィルタ法によってガラス基板上に成膜されたCNT膜の透過率(図5(B)に示す。)から変換された吸光度とシート導電率との関係を示すプロット、及び、図5(A)に示すPEDOT膜の透過率を吸光度に変換し、シート抵抗をシート導電率に変換した関係を示すプロットである。図6の(1)は、CNT膜の550nmにおける吸光度とシート導電率の関係、図6の(2)、(3)はそれぞれ、PEDOT膜の800nm、550nmにおける吸光度とシート導電率の関係を示すプロットである。
【0121】
図6に示すCNT膜とPEDOT膜の特性を比較すると、CNT膜の特性が優れているのが分かる。PEDOT膜は図5に示す結果を反映して、800nmにおける吸収が550nmの2倍近くあるのが分かる。また、図6(B)にはPEDOT膜の低吸収領域のデータを示しているが、2MΩ/□以下(測定器の上限による)のシート抵抗を得るためには、透過率99%程度となるまでPEDOTを塗布する必要がある。この結果の中で、透過率約99%のPEDOT膜のシート抵抗が100kΩ/□以上であるという知見は非常に重要である。
【0122】
図7は、本発明の実施例における、図4に示す成膜方法(4)のスピンコート条件によるPEDOT膜のAFM像とその3次元表示を説明する図であり、図7(A)はAFM像、図7(B)はAFM像の3次元表示を示す図(3方向に示す数値の単位はnmである。)である。
【0123】
図7(A)から、PEDOT膜は数nm〜数10nmの粒子で形成されているのが分かる。先述したようにPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))は本来不溶性であり、PSSをドーパントとしこの存在下で水分散性を得ることと引き換えに、PEDOTは短いセグメントに分かれて、水溶液中でコロイド分散液となっており、AFM像もこのようなセグメントサイズになっていると考えられる。
【0124】
図7(B)から、PEDOT膜の表面が数nmのラフネス(粗度、凹凸)を持ってことが分かる。また、図4に示す他の成膜方法で作成したPEDOT膜の表面のラフネス(粗度、凹凸)は、7(B)と同様であった。図4に示す成膜方法(1)、(2)は、本発明におけるPEDOT膜作成の標準的な条件であるが、その膜厚はそれぞれ2.4nm、14nmであり、これら成膜方法によってCNT膜上に形成されるPEDOT膜は数nmの膜厚であり、そのラフネス(粗度、凹凸)も数nmであると考えられる。
【0125】
一方、溶媒にCNTを分散させた分散液中に基板を浸漬させ基板にCNTを付着させるディップ法(Dip法、浸漬法)によって作成したCNT膜は、CNTが数層程度に積層されるため、CNTが重なる厚い部分でも、数nm程度になっている。また、現在までの技術では全面を隙間なくCNTで埋め尽くすことはできないため、当然ラフネス(粗度、凹凸)も数nmと考えることができる。
【0126】
以上説明したように、CNT膜、PEDOT膜の構造単位はそれぞれ、CNT粒子と短いセグメントの1次細線であり、両膜で異なるが、形成された両膜のそれぞれの外表面は数nm程度のラフネス(粗度、凹凸)をもつ類似の表面形状であると考えられ、CNT膜、PEDOT膜の界面における接合は良好なものとなると考えられる。
【0127】
次に、CNT膜(Dip法、フィルタ法によって形成されたCNT膜を使用した。)上へのPEDOTのコーティングによる効果を調べるために、CNT導電膜上にPEDOTをコーティングして2層膜を作成し、そのシート抵抗を評価した結果、PEDOT塗布による、接触角等の基板の表面状態の変化を調べた結果について説明する。
【0128】
図8は、本発明の実施例における、CNT膜上へのPEDOT膜の形成による透過率、シート抵抗の変化を説明する図である。
【0129】
図8は、HiPco単層CNTを使用して、Dip法、フィルタ法によって形成されたCNT膜(ガラス基板上に形成されている。)上へのPEDOT膜の形成前後における550nmでの透過率(CNT膜、PEDOT膜が形成されたガラス基板を含まない透過率である。)、シート抵抗を示している。なお、PEDOT膜は、先述のスピンコート用溶液における濃度比(IPA/PEDOT)=5、回転数を6000rpm、スピンコート時間を1分間とした条件で、スピンコート法により成膜した。
【0130】
図8に示すように、Dip法によって形成されたCNT膜(膜厚5nm)の透過率は95.48%、このCNT膜上へPEDOT膜(推定膜厚3nm)が形成されたPEDOT/CNT透明導電膜の透過率は95.32%であり、PEDOT膜の形成前後では、透過率が僅か0.16%しか低下していない。図4に示す成膜方法(1)によって形成されたPEDOT膜(膜厚2.4nm)のシート抵抗は2MΩ/□であったから、このシート抵抗と殆ど変化しない値をPEDOT/CNT透明導電膜は示すであろうと想定されたが、実際には図8に示すように、CNT膜のシート抵抗は14kΩ/□であったが、PEDOT/CNT透明導電膜のシート抵抗は8kΩ/□であり、PEDOT膜の形成前後でシート抵抗は43%も減少した。
【0131】
また、図8に示すように、フィルタ法によって形成されたCNT膜(膜厚67nm)の透過率は65.79%、このCNT膜上へPEDOT膜(推定膜厚3nm)が形成されたPEDOT/CNT透明導電膜の透過率は65.37%であり、PEDOT膜の形成前後では、透過率が僅か0.42%しか低下していない。図4に示す成膜方法(1)によって形成されたPEDOT膜(膜厚2.4nm)のシート抵抗は2MΩ/□であったから、このシート抵抗と殆ど変化しない値をPEDOT/CNT透明導電膜は示すであろうと想定されたが、実際には図8に示すように、CNT膜のシート抵抗は885Ω/□であったが、PEDOT/CNT透明導電膜のシート抵抗は537Ω/□であり、PEDOT膜の形成前後でシート抵抗は39%も減少した。
【0132】
以上のように、Dip法、フィルタ法の何れによって形成されたCNT膜上へのPEDOT膜の形成前後において、透過率の変化は殆どないのにかかわらず、シート抵抗は40%前後低下しており、CNT膜上へのPEDOT膜の形成によって、透明電導膜の透過率を殆ど変化させることなく、シート抵抗を40%程度低減させることができることが分かった。PEDOT膜の形成前後におけるシート抵抗の低減は、CNT膜上へのPEDOT膜の形成の際に、CNT膜の表面近傍部分でのCNT3次元ネットワーク構造の内部まで、導電性高分子(PEDOT)が浸透していき、導電性高分子(PEDOT)がCNT分子の間付近に存在することで、CNT分子の間の抵抗を低減しているためと考えられる。
【0133】
次に、CNT膜の膜厚の違いによる効果を調べるために、フィルタ法によって作成されたシート抵抗の異なる3つのCNT膜に対して、図8で説明したと同様の方法によって、CNT膜上にPEDOT膜を形成して、PEDOT膜の形成前後における透過率、シート抵抗の変化を調べた。
【0134】
図9は、本発明の実施例における、CNT膜上に形成されている。)上へのPEDOT膜の形成による透過率、シート抵抗の変化を説明する図であり、横軸は透過率(%)、縦軸はシート抵抗(Ω/sq)を示す図である。
【0135】
図9は、HiPco単層CNTを使用して、フィルタ法によって形成されたCNT膜(ガラス基板上に形成されている。)上へのPEDOT膜の形成前後における550nmでの透過率(CNT膜、PEDOT膜が形成されたガラス基板を含まない透過率である。)、シート抵抗を示している。
【0136】
図9に示すように、CNT膜の膜厚が、8nm、67nm、150nmと増加するに従って、CNT膜の透過率及びシート抵抗は小さくなっている。また、これらCNT膜上にそれぞれ3nm、3nm、4nmの推定膜厚のPEDOT膜が形成されたPEDOT/CNT透明電導膜では、PEDOT膜の形成前後において、透過率は僅かに減少するものの、シート抵抗は、80%、39%、27%と大きく低減している。このシート抵抗の低減は、CNT膜の膜厚が薄く、シート抵抗が大きくなるに従って顕著であり、シート抵抗は最大でPEDOT膜の形成前の値の1/10に近いものとなる。
【0137】
図9に示すように、CNT膜の膜厚が厚くなるに従って、PEDOT膜の形成前後でのシート抵抗の減少が小さくなっているのは、CNT膜の膜厚が厚い場合は、CNT膜上へのPEDOT膜の形成の際に、CNT膜のCNT3次元ネットワーク構造の深い内部まで、導電性高分子(PEDOT)が浸透していかず、導電性高分子(PEDOT)の浸透が、3次元ネットワーク構造の表面付近にしか至らないために、PEDOT膜の形成によってシート抵抗が大きく低減しないためと考えられる。
【0138】
従って、CNT膜上にPEDOT膜が形成されたPEDOT/CNT透明導電膜がより小さなシート抵抗をもつためには、CNT膜の膜厚は薄いほど望ましい。
【0139】
図10は、本発明の実施例における、CNT膜上へのPEDOT膜の形成後のSEM像(倍率10,000)を説明する図である。
【0140】
図10は、HiPco単層CNTを使用して、フィルタ法によって形成された膜厚50nmのCNT膜(ガラス基板上に形成されている。)上に、先述のスピンコート用溶液における濃度比(IPA/PEDOT)=5、回転数を5000rpm、スピンコート時間を1分間とした条件でスピンコート法によってPEDOT膜を成膜し、この結果得られたPEDOT/CNT透明導電膜のSEM像であり、電子線が過剰に照射されPEDOT膜が消失した結果外部に露出されたCNT層の3次元ネットワーク構造が、SEM像の中央右方部に見られる。このように、CNT層の3次元ネットワーク構造が観察されたことは、CNT層上にPEDOT層を形成する際に、CNT層の3次元ネットワーク構造が乱されずに保いることを示している。
【0141】
以上説明したように、CNT層上にPEDOT膜を成膜したPEDOT/CNT透明導電膜では、CNT層のみによる透明導電膜よりも、導電性が向上することが分かった。
【0142】
次に、CNTが付着しやすいように親水処理を施したPETフィルム上に、PEDOT膜、CNT膜を形成し、CNT膜、PEDOT膜のH2Oに対する接触角を測定し、CNT膜、PEDOT膜の各面の表面状態を調べた。
【0143】
図11は、本発明の実施例における、PET膜、親水処理を施したPET膜、CNT膜、PEDOT膜を積層した積層膜の水に対する接触角を説明する図であり、縦軸は接触角(度)を示す。
【0144】
図11に示すように、親水処理がなされていないPET基板面の接触角は約85度と大きな値を示すが、PET基板に、シランカップリング材による親水処理を施すことによって接触角が大きく低減し、CNTの付着性が向上する。
【0145】
この親水処理を施したPET基板上にスピンコート法によって形成されたPEDOT膜面の接触角は約30度とPET基板の85度と比較し低い値であり、同PET基板上にDip法によって形成されたCNT膜面の接触角は、PEDOT膜面のそれよりも大きな約60度であった。これはCNT自体の疎水性が高いためと考えられる。
【0146】
Dip法によって大量のCNTを基板に付着させようと試みたが、基板に形成されたCNT膜に対して、Dip法を複数回繰り返して更にCNTを付着させようと試みても、一定量以上のCNTを、一旦形成されたCNT膜上に付着させることができなかった。このことは、CNT膜面の接触角が大きいという図11に示す実験事実を支持するものである。
【0147】
上述の親水処理を施したPET基板上に形成された上述のCNT膜上に、更に、スピンコート法によって形成されたPEDOT膜面の接触角は、親水処理を施したPET基板上に形成された上述のPEDOT膜面の接触角と同じ値まで低下した。
【0148】
以上説明した実験事実から、PEDOT膜の親水性は比較的高く、CNTとの親和性は比較的良好であると考えられ、CNT膜上にPEDOT膜を成膜することによって、先述したように導電性を向上させるだけではなく、PEDOT膜がCNT膜の間の接着層として作用する層となることが期待できる。
【0149】
次に、以上の結果に基づいて、CNT膜及びPEDOT膜によって構成され、多層化されたCNT膜を有する透明導電膜を作成しその光学的及び電気的特性を調べた。
【0150】
PEDOT膜を使用することによって多層化されたCNT膜によって、透明導電膜を構成とすることは、透明導電膜の導電性を向上させることにつながる。
【0151】
従来、Dip法を繰り返して、基板へのCNTの付着量を増加させ光透過率の大きな低下を招くことなく透明導電膜の導電性を向上させようとしても、CNTの付着量を増加させることは困難であり、1%程度の光吸収分程度しか付着させることができなかった。シート抵抗が数kΩ/□であり、基板を除く透過率がほぼ100%というような、例えば、タッチパネルのような用途には、1%程度の光吸収分程度のCNTの付着量で十分であるが、より高い透明性と、数Ω〜数10Ω/□のような低シート抵抗が要求される太陽電池などの透明電極として、透明導電膜を使用するには、大量のCNTを基板に付着させる必要がある。
【0152】
以下、薄い膜厚のCNT層及びPEDOT膜を密接させて、多層化されたCNT膜によって構成され、光透過率の大きな低下を招くことなく低シート抵抗を有する透明導電膜について説明する。
【0153】
図12は、本発明の実施例における、PET膜にPEDOT膜、CNT膜を順次積層した透明導電膜の構造と特性の関係を説明する図であり、図12(A)は吸光度とシート導電率の関係を示し、横軸は吸光度、縦軸はシート電導率(S/sq)であり、図12(B)は透過率とシート抵抗の関係を示し、横軸はシート抵抗(kΩ/sq)、縦軸は透過率(%)である。図12において、吸光度、透過率は550nmにおける値を示し、PET基板の寄与は含んでいない値である。
【0154】
先ず、上述の親水処理を施したPET基板上にスピンコート法によってPEDOT膜を形成した後、(1)先に形成されているPEDOT膜上にDip法によってCNT膜を形成し、次に、更に、(2)先に形成されているCNT膜上にPEDOT膜を形成し、(3)(1)及び(2)を複数回繰り返すよってPEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を有する透明導電膜を形成する。このようにして形成された、CNT/PEDOT、PEDOT/CNT/PEDOT、CNT/PEDOT/CNT/PEDOT、PEDOT/CNT/PEDOT/CNT/PEDOT等の透明導電膜について、透過率及びシート抵抗を測定した。
【0155】
図12(A)には、測定された透過率を吸光度に変換し、シート抵抗をシート導電率に変換してプロット、図12(B)には、測定された透過率、シート抵抗をプロットしている。また、参考のためにPEDOT膜に関するデータもプロットしている。
【0156】
図12に示すCNT/PEDOT、PEDOT/CNT/PEDOT、CNT/PEDOT/CNT/PEDOT、PEDOT/CNT/PEDOT/CNT/PEDOTの各透明導電膜に関する550nmにおける透過率(%)=T、シート抵抗(kΩ/sq)=Rsを、(T,Rs)によって表わすと、(98.5,9.1)、(97.8,5.0)、(97.0,3.2)、(96.2,2.3)である。
【0157】
なお、先に形成されているPEDOT膜上にCNT膜(膜厚2nm〜10nm)を、HiPco単層CNTを使用してDip法によって形成し、先に形成されているCNT膜上にPEDOT膜(膜厚2nm〜10nm)を、スピンコート法によって形成した。Dip条件は、CNTを分散させる溶媒として1,2−ジクロロエタン溶液を用い、CNTの濃度は0.1g/Lとし、浸漬時間は60secとした。スピンコート条件は、先述のスピンコート用溶液における濃度比(IPA/PEDOT)=5、回転数を5000rpm、スピンコート時間を1分間とした。
【0158】
図12(A)では、吸収のプロットがほぼ等間隔に並んでいること等から、CNT膜とPEDOT膜の吸光度は同程度になっていること分かる。CNT膜へのPEDOTの付着量はもっと減らしても、図12と略同様の結果となるものと考えられる。
【0159】
図12に示す結果から、PET膜に密接して形成されたPEDOT膜を除いて、CNT膜上にPEDOT膜を形成する毎に、透過率が1%程度低下している。ここで、CNT膜、PEDOT膜それぞれの単層において、1%の光吸収を示す膜厚でのシート導電率を調べると、CNT膜について30μS/□(@1%の吸収)、PEDOT膜について5μS/□(@1%の吸収)程度となっていた。
【0160】
この結果から、CNTの方が、6倍近く導電率が高いことが分かる。また、図12に、CNT膜のみ、PEDOT膜のみのシート導電率を破線で示すが、CNT膜、PEDOT膜が積層された複合化膜の導電性は、破線で示されるCNT膜のみ、PEDOT膜のみのシート導電性よりも遥かに高いことが分かる。
【0161】
図12に示すように、下層にPEDOT膜を有するPEDOT/CNT透明導電膜のシート導電率は、下層に形成されているPEDOT膜によって十分に向上しているものと想定され、PEDOT/CNT透明導電膜のCNT膜上にPEDOT膜を成膜したPEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のシート導電率は、PEDOT/CNT透明導電膜のシート導電率より僅かに上昇するだけと想定される。
【0162】
しかし、実際には、PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のシート導電率は、PEDOT/CNT透明導電膜のシート導電率は2倍までに向上しており、PEDOT/CNT透明導電膜のCNT膜上に成膜したPEDOT膜の、透明導電膜のシート導電率の向上に対する寄与は非常に顕著である。
【0163】
図12中に、PEDOT/CNT透明導電膜のシート導電率を単純に2倍したグラフを破線によって示すが、実際に測定されたシート導電率の値は、破線で示される値よりも2倍程度大きくなっている。
【0164】
以上のことから、CNT膜が数nm程度の膜厚であっても、CNT膜の片側(一方の面)だけに形成されたPEDOT膜によるシート導電率を十分に向上させるには不十分であり、CNT膜の両側(両方の面)からPEDOT膜で挟み込むことによって、更に、シート導電率が向上していることが明らかである。
【0165】
このように、CNT膜の両方の面からPEDOT膜で挟んだPEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造をもたせることによって、大きなシート導電率を有する透明導電膜を作成することができる。
【0166】
図12に示すように、PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のPEDO膜上にCNT膜を成膜したCNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のシート導電率は更に向上し、この透明導電膜のCNT膜上にPEDOT膜を成膜したPEDOT/CNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のシート導電率は更に向上している。
【0167】
PEDOT/CNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のシート抵抗は2.3kΩ/□、透過率(PET基板を除く。)は96.2%であり、優れた導電性と高透明性を有する透明導電膜を作成することができた。PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を繰り返し形成することによって、図12(B)に示すように、外挿によって推定すると、550nmにおける透過率が約95%であり、シート抵抗が約500Ω/□である透明導電膜が作成可能であると考えられる。
【0168】
従来、Dip法では10kΩ/□程度の導電膜しか得られなかったが、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を繰り返し形成による、CNT膜の多層化によって、従来よりも導電性を向上することができた。
【0169】
以上、PET基板に密着してPEDOT膜が形成され、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を有する透明導電膜について説明したが、次に、PET基板に密着してCNT膜が形成され、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を有する透明導電膜について説明する。
【0170】
図13は、本発明の実施例における、PET膜に、(a)PEDOT膜、CNT膜を、(b)CNT膜、PEDO膜を順次積層した透明導電膜の構造と吸光度及びシート導電率の関係を説明する図であり、横軸は吸光度、縦軸はシート電導率(S/sq)を示す。
【0171】
図13に示す(a)は、図12(A)に示す実線のグラフであり、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を含む透明導電膜の吸光度とシート導電率の関係を示し、図13に示す(b)は、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を含む透明導電膜の吸光度とシート導電率の関係を示している。
【0172】
図12に示す透明導電膜と同様にして、PET基板上に、先ず、上述の親水処理を施したPET基板上にDip法によってCNT膜を形成した後、(1)先に形成されているCNT膜上にPEDOT膜を形成し、次に、更に、(2)先に形成されているPEDOT膜上にCNT膜を形成し、(3)(1)及び(2)を複数回繰り返すよってCNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を有する透明導電膜を形成する。
【0173】
このようにして形成された、PEDOT/CNT、CNT/PEDOT/CNT、PEDOT/CNT/PEDOT/CNT、CNT/PEDOT/CNT/PEDOT/CNT等の透明導電膜について、透過率及びシート抵抗を測定した。
【0174】
図13の(b)には、測定された透過率を吸光度に変換し、シート抵抗をシート導電率に変換してプロットしている。また、参考のためにCNT膜に関するデータもプロットしている。
【0175】
なお、先に形成されているCNT膜上にPEDOT膜(膜厚2nm〜10nm)を、スピンコート法によって形成し、先に形成されているPEDOT膜上にCNT膜(膜厚2nm〜10nm)を、HiPco単層CNTを使用してDip法によって形成した。
【0176】
Dip条件は、CNTを分散させる溶媒として1,2−ジクロロエタン溶液を用い、CNTの濃度は0.1g/Lとし、浸漬時間は60secとした。スピンコート条件は、先述のスピンコート用溶液における濃度比(IPA/PEDOT)=5、回転数を5000rpm、スピンコート時間を1分間とした。
【0177】
図12と図13の比較から明らかなように、PET基板に密接して形成されたCNT膜に対する、このCNT膜上にPEDOT膜を成膜したPEDOT/CNT透明導電膜のシート導電率(図13の(b)に示す。)の向上、及び、CNT/PEDOT/CNT透明導電膜に対するこの透明導電膜のCNT膜上にPEDOT膜を成膜したPEDOT/CNT/PEDOT/CNT透明導電膜のシート導電率(図13の(b)に示す。)の向上はそれぞれ、顕著であり、PEDOT/CNT透明導電膜に対する、この透明導電膜のCNT膜上にPEDOT膜を成膜したPEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜のシート導電率(図13の(a)、図12に示す。)の向上と、同程度である。
【0178】
以上のことから、最外層にPEDOT膜を有する透明導電膜のシート導電率は、最外層にCNT膜を有する透明導電膜のシート導電率の約2倍であり、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を有する透明導電膜においても、PEDOT/CNT/PEDOTサンドイッチ構造を有する透明導電膜と同様に、最外層にPEDOT膜を設ける構成とするのが、大きなシート導電率を有する透明導電膜を作成する点で好ましい。
【0179】
図13の(b)に示すように、最外層にPEDOT膜を有する透明導電膜の最外層のPEDOT膜上にCNT膜を成膜することによっても、シート導電率を約2倍向上させることができる。
【0180】
図13における(a)と(b)との比較から、(1)CNT/PEDOT透明導電膜とPEDOT/CNT透明導電膜、(2)PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜とCNT/PEDOT/CNT透明導電膜、(3)CNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜とPEDOT/CNT/PEDOT/CNT透明導電膜、(4)PEDOT/CNT/PEDOT/CNT/PEDOT透明導電膜とCNT/PEDOT/CNT/PEDOT/CNT透明導電膜はそれぞれ、同程度の透過率及びシート導電率を有しており、透明導電膜が透明電極として使用される光学装置に要求される導電性、透明性に応じて、CNT膜、PEDOT膜の基板に対する積層順を選択することによって、最も好適な光学的及び電気的特性をもった透明導電膜を作成することができる。
【0181】
従来、Dip法では10kΩ/□程度の導電膜しか得られなかったが、CNT/PEDOT/CNTサンドイッチ構造を繰り返し形成による、CNT膜の多層化によっても、従来よりも導電性を向上することができた。
【0182】
以上説明したように、本発明では、CNT透明導電膜の特性を向上させるために、CNTと導電性高分子PEDOTとの複合化を検討した結果、両者を単純に混合して複合化するのではなく、CNT膜の3次元ネットワーク構造を保ちつつ、CNT膜とPEDOT膜による層状構造を形成することによって両者を一体化して、CNT膜の3次元ネットワーク構造中に存在する導電パスを保持したままの複合化することによって、PEDOT膜の表面状態及び親水性等によって、CNT膜に接して形成されたPEDOT膜が導電性の向上のみならず、CNT膜の間における接着層として有効に作用しており、このPEDOT膜の接着層としての作用によって、CNT膜とPEDOT膜の積層によって多層膜を作成することができ、CNT膜上にPEDOT膜を形成することによって、シート導電率を約2倍向上させることができ、CNT膜の膜厚が数nmであっても、PEDOT膜によってCNT膜を上下から挟み込んだサンドイッチ構造、或いは、CNT膜によってPEDOT膜を上下から挟み込んだサンドイッチ構造を形成することによって、導電性をより向上させることができた。
【0183】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、透明導電膜において、これを構成するCNT膜及びPEDOT膜の厚さ、積層されるCNT膜及びPEDOT膜の層数並びに積層順、更に、透明導電膜が形成される基板の材質等は、透明導電膜が使用される光学装置等が必要とする性能を満たすよう必要に応じて任意に適切に設定することができる。また、本発明による透明導電膜は、透明電極の他に、透明帯電防止膜としても利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0184】
以上説明したように、本発明によれば、高い導電性と高い光透過率を有する透明導電膜及びこれを用いた光学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】本発明の実施の形態における、PET膜に、(A)PEDOT膜、CNT膜、(B)CNT膜、PEDOT膜を順次積層した透明導電膜の構造を説明する図である。
【図2】同上、透明導電膜を使用したタッチパネルを説明する図である。
【図3】同上、CNT透明導電膜の問題点を説明する概念図である。
【図4】本発明の実施例における、同上、PEDOT膜の成膜方法とシート抵抗、透過率、膜厚さの関係を説明する図である。
【図5】同上、PEDOT膜及びCNT膜の透過率を説明する図である。
【図6】同上、PEDOT膜及びCNT膜のシート導電率と吸光度の関係の例を説明する図である。
【図7】同上、PEDOT膜のAFM像とその3次元表示を説明する図である。
【図8】同上、CNT膜上へのPEDOT膜の形成による透過率、シート抵抗の変化を説明する図である。
【図9】同上、CNT膜上へのPEDOT膜の形成による透過率、シート抵抗の変化を説明する図である。
【図10】同上、CNT膜上へのPEDOT膜の形成後のSEM像を説明する図である。
【図11】同上、PET膜、親水処理を施したPET膜、CNT膜、PEDOT膜を積層した積層膜の水に対する接触角を説明する図である。
【図12】同上、PET膜にPEDO膜、CNT膜を順次積層した透明導電膜の構造と特性の関係を説明する図である。
【図13】同上、PET膜に、(a)PEDO膜、CNT膜、(b)CNT膜、PEDO膜を順次積層した透明導電膜の構造と吸光度及びシート導電率の関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0186】
1a、1b…透明電導膜、2a…PET基板、2b…ガラス基板、3ドットスペーサ、
4…絶縁層、5…空間、10a、10b…CNT、20a…ポリマ、20b…導電性材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に接触させて積層された導電性高分子層と、
この導電性高分子層に接触させて積層されたカーボンナノチューブ層と
を有する、透明導電膜。
【請求項2】
基板に積層されたカーボンナノチューブ層及び導電性高分子層を具備し、前記導電性高分子層が2つの前記カーボンナノチューブ層と接触させて積層されたサンドイッチ構造からなる層を有し、一方の前記カーボンナノチューブ層が前記基板に接触させて積層された、透明導電膜。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ層が2つの前記導電性高分子層と接触させて積層されたサンドイッチ構造からなる層を有する、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブ層が最も上層に積層された、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項5】
前記導電性高分子層が最も上層に積層された、請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項6】
シート抵抗が1Ω/□以上、10,000Ω/□以下である、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項7】
可視光の光透過率が70%以上である、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項8】
前記導電性高分子層及び前記カーボンナノチューブ層の厚さが、数nm以上、100nm以下である、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブ層が、溶媒中にカーボンナノチューブを分散させた溶液を塗布することよって形成された、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項10】
前記導電性高分子層が、導電性高分子を溶媒中に希釈させた溶液を塗布することよって形成された、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブ層において、1つのカーボンナノチューブ分子が複数個のカーボンナノチューブ分子と接触している、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項12】
前記基板が透明なポリマ基板である、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項13】
請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜が形成された第1の基板と、
間隙をおいて前記第1の基板に対向して設けられ電極を具備する第2の基板と
を有する、光学装置。
【請求項14】
前記透明導電膜が請求項3から請求項11の何れか1項に記載の透明導電膜である、請求項13に記載の光学装置。
【請求項15】
タッチパネルとして構成された、請求項13に記載の光学装置。
【請求項16】
前記第1の基板と前記第2の基板との間に電圧を印加することによって発光する発光層が設けられエレクトロルミネッセンス装置として構成された、請求項13に記載の光学装置。
【請求項17】
前記第1の基板にエレクトロクロミック化合物が担持され、エレクトロクロミック装置として構成された、請求項13に記載の光学装置。
【請求項18】
前記第1の基板と前記第2の基板との間に有機色素を吸着させた二酸化チタン層と電解質を挟み込んだ構造を有する太陽電池として構成された、請求項13に記載の光学装置。
【請求項1】
基板に接触させて積層された導電性高分子層と、
この導電性高分子層に接触させて積層されたカーボンナノチューブ層と
を有する、透明導電膜。
【請求項2】
基板に積層されたカーボンナノチューブ層及び導電性高分子層を具備し、前記導電性高分子層が2つの前記カーボンナノチューブ層と接触させて積層されたサンドイッチ構造からなる層を有し、一方の前記カーボンナノチューブ層が前記基板に接触させて積層された、透明導電膜。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ層が2つの前記導電性高分子層と接触させて積層されたサンドイッチ構造からなる層を有する、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブ層が最も上層に積層された、請求項1に記載の透明導電膜。
【請求項5】
前記導電性高分子層が最も上層に積層された、請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項6】
シート抵抗が1Ω/□以上、10,000Ω/□以下である、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項7】
可視光の光透過率が70%以上である、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項8】
前記導電性高分子層及び前記カーボンナノチューブ層の厚さが、数nm以上、100nm以下である、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブ層が、溶媒中にカーボンナノチューブを分散させた溶液を塗布することよって形成された、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項10】
前記導電性高分子層が、導電性高分子を溶媒中に希釈させた溶液を塗布することよって形成された、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブ層において、1つのカーボンナノチューブ分子が複数個のカーボンナノチューブ分子と接触している、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項12】
前記基板が透明なポリマ基板である、請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜。
【請求項13】
請求項1又は請求項2に記載の透明導電膜が形成された第1の基板と、
間隙をおいて前記第1の基板に対向して設けられ電極を具備する第2の基板と
を有する、光学装置。
【請求項14】
前記透明導電膜が請求項3から請求項11の何れか1項に記載の透明導電膜である、請求項13に記載の光学装置。
【請求項15】
タッチパネルとして構成された、請求項13に記載の光学装置。
【請求項16】
前記第1の基板と前記第2の基板との間に電圧を印加することによって発光する発光層が設けられエレクトロルミネッセンス装置として構成された、請求項13に記載の光学装置。
【請求項17】
前記第1の基板にエレクトロクロミック化合物が担持され、エレクトロクロミック装置として構成された、請求項13に記載の光学装置。
【請求項18】
前記第1の基板と前記第2の基板との間に有機色素を吸着させた二酸化チタン層と電解質を挟み込んだ構造を有する太陽電池として構成された、請求項13に記載の光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図7】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図7】
【図10】
【公開番号】特開2009−211978(P2009−211978A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54550(P2008−54550)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]