説明

透明導電膜及びその製造方法

【課題】現状のLCD製造プロセスにおけるITO透明電極形成技術をZnO系に適用した場合の膜厚が200nm程度より薄くなるに伴って、電気的特性が膜厚に大きく依存する(膜厚の減少に伴って抵抗率が大幅に増加する)こと解決する酸化亜鉛系透明導電膜製造技術並びに成膜に使用する焼結体ターゲットを提供することを課題とする。
【解決手段】酸化亜鉛系透明導電膜の直流マグネトロンスパッタ成膜プロセスにおいて、成膜の開始(初期)段階は、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜プロセスとは異なる条件下で成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が大幅に改善できることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ITO(Indium Tin Oxide)薄膜は、低抵抗率で可視光に対して高い透過率を示すことから、液晶ディスプレイを中心としたフラットパネルディスプレイやタッチパネル、太陽電池などの透明電極として幅広く用いられている。しかし、近年、ITOの原材料であるインジウム価格の高騰、資源問題等による安定供給不安からインジウムを使用しない透明導電膜(ITO代替材料)への関心が高まっている。ITO代替材料としては、酸化亜鉛、酸化スズを母材とした材料が知られているが、特に、酸化亜鉛にアルミニウムを添加した膜(以下AZOと略記する)では、1.9×10−4ΩcmというITOに匹敵する値が報告されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
酸化亜鉛を母材とする膜の形成方法としては、高周波(rf)マグネトロンスパッタリング法、直流(dc)マグネトロンスパッタリング法、パルスレーザー蒸着法、真空アークプラズマ蒸着法、イオンプレーティング法などをあげることができる。上記、1.9×10−4Ωcmという値は、rfマグネトロンスパッタリング法により得られている。しかし、フラットパネルディスプレイの製造工程では、大面積均一成膜および高速成膜が必要とされ、液晶ディスプレイ(LCD)を始め多くのフラットパネルディスプレイ用の透明電極製造にはdcマグネトロンスパッタリング法が採用されている。そのため既存の製造工程への対応を考えた場合には、このdcマグネトロンスパッタリング法で実用的特性を示す膜を形成する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、現状のLCD製造プロセスにおけるITO透明電極形成技術をZnO系に適用した場合、ZnO系透明導電膜が解決しなければならない以下のような技術的課題(問題点)が存在する。問題点:dcマグネトロンスパッタリング装置を用いて作製したZnO系透明導電膜では、膜厚が200nm程度より薄くなるに伴って、電気的特性が膜厚に大きく依存する(膜厚の減少に伴って抵抗率が大幅に増加する)。換言すると、アクティブマトリックス型LCDにおいては、膜厚20nm程度の極薄い低抵抗率ITO膜が使用されており、LCDにおいて使用される透明電極の材料を全面的にITOからZnO系に置き換えるためには、上記の問題点を解決しなければならない。このような事情に鑑み、抵抗率特性の膜厚依存性を改善する新規な酸化亜鉛系透明導電膜製造方法、並びに成膜に使用する焼結体ターゲットを提供することにより、膜厚が200nm未満のZnO系透明導電膜の最低抵抗率特性の改善を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題を解決するため、低抵抗率を示すことでよく知られるアルミニウム添加酸化亜鉛(以下AZOと記載)、ガリウム添加酸化亜鉛(以下GZOと記載)及び不純物共添加酸化亜鉛(以下AZO:X及びGZO:Xと記載)に酸化亜鉛系透明導電膜の製造方法として、マグネトロンスパッタ成膜プロセスにおいて、成膜の第一段階とその後に続く第二段階とを異なる条件下で行うことによる膜の最低抵抗率特性の改善および本発明適合する焼結体ターゲット材料とその製造方法について鋭意検討を行った。
【0006】
その結果、マグネトロンスパッタ成膜プロセスにおいて、成膜の第一段階とその後に続く第二段階とを異なる条件下で行うことにより、特に膜厚約200nm未満の極めて薄い膜において膜の最低抵抗率特性が大幅に改善すること見い出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の第1の態様は、酸化亜鉛系透明導電膜の直流マグネトロンスパッタ成膜プロセスにおいて、成膜の開始(初期)段階は、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜プロセスとは異なる条件下で成膜を開始することにより、最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法にある。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の様態に記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なるそれぞれ専用の焼結体ターゲットを使用して成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法にある。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1及び2の様態に記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なるそれぞれ専用の焼結体ターゲットを使用する場合の初期段階の成膜に使用する焼結体ターゲットが、故意に不純物材料を含まず、実質的に亜鉛及び酸素からなる焼結体ターゲットを使用して成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法にある。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1の様態に記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜と同一の焼結体ターゲットを使用して異なる成膜条件下で成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法にある。
【0011】
本発明の第5の態様は、第1〜4の様態に記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なる高周波マグネトロンスパッタ成膜を使用して成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法にある。
【0012】
本発明の第6の態様は、第1〜4の様態に記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なる高周波重畳直流マグネトロンスパッタ成膜を使用して成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法。
【0013】
本発明の第7の態様は、第1〜4の様態に記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なる焼結体ターゲットに対して基体を垂直に配置して成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法にある。
【0014】
本発明の第8の態様は、第1〜4の様態に記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なるガス雰囲気中で成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法にある。
【0015】
本発明の第9の態様は、第1〜4の様態に記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なる大気開放した直後の焼結体ターゲットを使用すして成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法にある。
【0016】
本発明の第10の態様は、第1〜9の様態に記載の直流マグネトロンスパッタ成膜プロセスにおいて、成膜の初期段階として形成する酸化亜鉛系透明導電膜の厚さを1から30nm、好ましくは5から20nmとすることにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法にある。
【0017】
本発明の第11の態様は、第1〜10の様態に記載の酸化亜鉛系透明導電膜製造方法を使用して作製する液晶ディスプレイ、タッチパネル、太陽電池及び機器、並びにその製造方法にある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を実施例により説明するがあくまで例示であり本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
亜鉛(Zn)に対してアルミニウム(Al)を約2原子%添加した低酸素含有高密度不純物添加酸化亜鉛焼結体ターゲットをそれぞれ用いたカソード(A)及びカソード(B)の2台のスパッタリングカソードを有するスパッタ成膜装置を用い、スパッタリングガスとして純アルゴン(Ar)を用いて、成膜の第一段階として、カソード(A)上に基体を平行に配置し、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、引き続き、成膜の第二段階としてカソード(B)上に平行に基体を配置し、直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、厚さの100nmのAl添加酸化亜鉛(AZO)膜を基板温度を約200℃に保持した無アルカリガラス基体上に形成した。成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で高周波電力を用いてスパッタリングを行い、引き続き、成膜の第二段階として直流電力を用いて形成したAZO膜においては、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して膜の最低抵抗率を大幅に低減できた。また、該AZO膜の平均化可視光透過率は90%以上であり、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して遜色ないものであった。
【実施例2】
【0020】
亜鉛(Zn)に対してアルミニウム(Al)を約2原子%添加した低酸素含有高密度不純物添加酸化亜鉛焼結体ターゲットをそれぞれ用いたカソード(A)及びカソード(B)の2台のスパッタリングカソードを有するスパッタ成膜装置を用い、スパッタリングガスとして純アルゴン(Ar)を用いて、成膜の第一段階として、カソード(A)上に基体を平行に配置し、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、その後、高周波電力200Wで基体上にAl添加酸化亜鉛(AZO)薄膜を厚さ約10nm程度形成する。引き続き、成膜の第二段階としてカソード(B)上に平行に基体を配置し、直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、厚さの100nmのAl添加酸化亜鉛(AZO)膜を基板温度を約200℃に保持した無アルカリガラス基体上に形成した。成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で高周波電力を用いてスパッタリングを行い、引き続き、成膜の第二段階として直流電力を用いて形成したAZO膜においては、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して膜の最低抵抗率を大幅に低減できた。また、該AZO膜の平均化可視光透過率は90%以上であり、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して遜色ないものであった。
【実施例3】
【0021】
亜鉛(Zn)に対してアルミニウム(Al)を約2原子%添加した低酸素含有高密度不純物添加酸化亜鉛焼結体ターゲットを用いた1台のスパッタリングカソードを有するスパッタ成膜装置を用い、スパッタリングガスとして純アルゴン(Ar)を用いて、成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、引き続き、成膜の第二段階として直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、厚さの100nmのAl添加酸化亜鉛(AZO)膜をターゲットに対して平行に配置し、基板温度を約200℃に保持した無アルカリガラス基体上に形成した。図1に作製した該AZO膜の基体上での抵抗率分布を示す。また、比較のために、同様の焼結体ターゲットを使用し、スパッタリングガスとして純アルゴン、直流のみを用いて投入電力200W、基板温度200℃、厚さ100nmに形成したAZO膜の基体上での抵抗率分布も図1に示す。同図に示すように、成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で高周波電力を用いてスパッタリングを行い、引き続き、成膜の第二段階として直流電力を用いて形成したAZO膜においては、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して膜の最低抵抗率を大幅に低減できた。また、該AZO膜の平均化可視光透過率は90%以上であり、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して遜色ないものであった。
【実施例4】
【0022】
亜鉛(Zn)に対してアルミニウム(Al)を約2原子%添加した低酸素含有高密度不純物添加酸化亜鉛焼結体ターゲットを用いた1台のスパッタリングカソードを有するスパッタ成膜装置を用い、スパッタリングガスとして純アルゴン(Ar)を用いて、成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、引き続き、高周波電力200Wで基体上にAl添加酸化亜鉛(AZO)薄膜を厚さ約10nm程度形成する。その後、成膜の第二段階として直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、最終的に厚さの100nmのAZO膜をターゲットに対して平行に配置した、基板温度を約200℃に保持した無アルカリガラス基体上に形成した。図2に作製した該AZO膜の基体上での抵抗率分布を示す。また、比較のために、同様の焼結体ターゲットを使用し、スパッタリングガスとして純アルゴン、直流のみを用いて投入電力200W、基板温度200℃、厚さ100nmに形成したAZO膜の基体上での抵抗率分布も図2に示す。同図に示すように、該成膜方法を用いて形成したAZO膜においては、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して膜の最低抵抗率を大幅に低減できた。また、該AZO膜の平均化可視光透過率は90%以上であり、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して遜色ないものであった。
【実施例5】
【0023】
亜鉛(Zn)に対してアルミニウム(Al)を約2原子%添加した低酸素含有高密度不純物添加酸化亜鉛焼結体ターゲットを用い、スパッタリングガスとして純アルゴン(Ar)を用いて、成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、引き続き、直流電力200Wで基体上にAl添加酸化亜鉛(AZO)薄膜を厚さ約10nm程度形成する。その後、成膜の第二段階として直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、最終的に厚さの100nmのAZO膜をターゲットに対して並行に配置した、基板温度を約200℃に保持した無アルカリガラス基体上に形成した。該成膜方法を用いて形成したAZO膜においては、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して膜の最低抵抗率を大幅に低減できた。また、該AZO膜の平均化可視光透過率は90%以上であり、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して遜色ないものであった。
【実施例6】
【0024】
亜鉛(Zn)に対してアルミニウム(Al)を約2原子%添加した低酸素含有高密度不純物添加酸化亜鉛焼結体ターゲットを用い用いた1台のスパッタリングカソードを有するスパッタ成膜装置を用い、スパッタリングガスとして純アルゴン(Ar)を用いて、成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、引き続き、高周波重畳直流電力200Wで基体上にAl添加酸化亜鉛(AZO)薄膜を厚さ約10nm程度形成する。その後、成膜の第二段階として高周波重畳直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、最終的に厚さの100nmのAZO膜をターゲットに対して平行に配置した、基板温度を約200℃に保持した無アルカリガラス基体上に形成した。該成膜方法を用いて形成したAZO膜においては、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して膜の最低抵抗率を大幅に低減できた。また、該AZO膜の平均化可視光透過率は90%以上であり、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して遜色ないものであった。
【実施例7】
【0025】
亜鉛(Zn)に対してアルミニウム(Al)を約2原子%添加した低酸素含有高密度不純物添加酸化亜鉛焼結体ターゲットを用いた1台のスパッタリングカソードを有するスパッタ成膜装置を用い、スパッタリングガスとして純アルゴン(Ar)を用いて、成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、引き続き、高周波重畳直流電力200Wで基体上にAl添加酸化亜鉛(AZO)薄膜を厚さ約10nm程度形成する。その後、成膜の第二段階として高周波重畳直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、最終的に厚さの100nmのAZO膜をターゲットに対して平行に配置した、基板温度を約200℃に保持した無アルカリガラス基体上に形成した。該成膜方法を用いて形成したAZO膜においては、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して膜の最低抵抗率を大幅に低減できた。また、該AZO膜の平均化可視光透過率は90%以上であり、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して遜色ないものであった。
【実施例8】
【0026】
亜鉛(Zn)に対してガリウム(Ga)を約3原子%添加した低酸素含有高密度不純物添加酸化亜鉛焼結体ターゲットを用いた1台のスパッタリングカソードを有するスパッタ成膜装置を用い、スパッタリングガスとして純アルゴン(Ar)を用いて、成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、引き続き、高周波重畳直流電力200Wで基体上にGa添加酸化亜鉛(GZO)薄膜を厚さ約10nm程度形成する。その後、成膜の第二段階として高周波重畳直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、最終的に厚さの100nmのGZO膜をターゲットに対して平行に配置した、基板温度を約200℃に保持した無アルカリガラス基体上に形成した。該成膜方法を用いて形成したGZO膜においては、通常の直流電力のみを使用して形成したGZO膜と比較して膜の最低抵抗率を大幅に低減できた。また、該GZO膜の平均化可視光透過率は90%以上であり、通常の直流電力のみを使用して形成したGZO膜と比較して遜色ないものであった。
【実施例9】
【0027】
亜鉛(Zn)に対してアルミニウム(Al)を約2原子%、バナジウム(V)を約0.1原子%添加した低酸素含有高密度不純物共添加酸化亜鉛焼結体ターゲットを用いた1台のスパッタリングカソードを有するスパッタ成膜装置を用い、スパッタリングガスとして純アルゴン(Ar)を用いて、成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、引き続き、高周波電力200Wで基体上にAl、V共添加酸化亜鉛(AZO:V)薄膜を厚さ約10nm程度形成する。その後、成膜の第二段階として直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、最終的に厚さの100nmのAZO:V膜をターゲットに対して平行に配置した、基板温度を約200℃に保持した無アルカリガラス基体上に形成した。該成膜方法を用いて形成したAZO:V膜においては、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO:V膜と比較して膜の最低抵抗率を大幅に低減できた。また、該AZO:V膜の耐湿特性は、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO:V膜と比較して遜色ないものであった。加えて、該AZO:V膜の平均化可視光透過率は90%以上であり、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO:V膜と比較して遜色ないものであった。
【実施例10】
【0028】
亜鉛(Zn)に対してアルミニウム(Al)を約2原子%添加した低酸素含有高密度不純物添加酸化亜鉛焼結体ターゲットを用いた1台のスパッタリングカソードを有するスパッタ成膜装置を用い、スパッタリングガスとしてアルゴン(Ar)に酸素(O)を約10%混合したガスを用いて、成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、引き続き、高周波電力200Wで基体上にAl添加酸化亜鉛(AZO)薄膜を厚さ約10nm程度形成する。その後、成膜の第二段階として直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、最終的に厚さの100nmのAZO膜をターゲットに対して平行に配置した、基板温度を約200℃に保持した無アルカリガラス基体上に形成した。該成膜方法を用いて形成したAZO膜においては、通常の純Arガスを用いて、直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して膜の最低抵抗率を大幅に低減できた。また、該AZO膜の平均化可視光透過率は90%以上であり、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して遜色ないものであった。
【実施例11】
【0029】
不純物を添加していない低酸素含有高密度酸化亜鉛焼結体ターゲット用いたカソード(A)及び亜鉛(Zn)に対してアルミニウム(Al)を約2原子%添加した低酸素含有高密度不純物添加酸化亜鉛焼結体ターゲットを用いたカソード(B)の2台のスパッタリングカソードを有するスパッタ成膜装置を用い、スパッタリングガスとして純アルゴン(Ar)を用いて、成膜の第一段階として、カソード(A)上に基体を平行に配置し、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、引き続き、成膜の第二段階としてカソード(B)上に平行に基体を配置し、直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、厚さの100nmのAl添加酸化亜鉛(AZO)膜を基板温度を約200℃に保持した無アルカリガラス基体上に形成した。成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で高周波電力を用いてスパッタリングを行い、引き続き、成膜の第二段階として直流電力を用いて形成したAZO膜においては、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して膜の最低抵抗率を大幅に低減できた。また、該AZO膜の平均化可視光透過率は90%以上であり、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して遜色ないものであった。
【実施例12】
【0030】
不純物を添加していない低酸素含有高密度酸化亜鉛焼結体ターゲット用いたカソード(A)及び亜鉛(Zn)に対してアルミニウム(Al)を約2原子%添加した低酸素含有高密度不純物添加酸化亜鉛焼結体ターゲットを用いたカソード(B)の2台のスパッタリングカソードを有するスパッタ成膜装置を用い、スパッタリングガスとして純アルゴン(Ar)を用いて、成膜の第一段階として、カソード(A)上に基体を平行に配置し、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、その後、高周波電力200Wで基体上にノンドープ酸化亜鉛薄膜を厚さ約10nm程度形成する。引き続き、成膜の第二段階としてカソード(B)上に平行に基体を配置し、直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、厚さの100nmのAl添加酸化亜鉛(AZO)膜を基板温度を約200℃に保持した無アルカリガラス基体上に形成した。成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で高周波電力を用いてスパッタリングを行い、引き続き、成膜の第二段階として直流電力を用いて形成したAZO膜においては、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して膜の最低抵抗率を大幅に低減できた。また、該AZO膜の平均化可視光透過率は90%以上であり、通常の直流電力のみを使用して形成したAZO膜と比較して遜色ないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】 Znに対してAlを約2原子%添加した酸化亜鉛焼結体ターゲットを用い、スパッタリングガスとして純Arを用いて、成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、引き続き、成膜の第二段階として直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、厚さの100nmのAZO膜をターゲットに対して並行に配置した、基板温度を約200℃のガラス基体上に形成した場合の膜の抵抗率分布を示すグラフである。また、比較のために、同様の焼結体ターゲットを使用し、直流のみを用いて投入電力200W、基板温度200℃、厚さ100nmに形成したAZO膜の基体上での抵抗率分布も示している。
【記号の簡単な説明】
【0032】
▲1▼・・・当該成膜法により作製したAZO膜の基体上での抵抗率分布。
▲2▼・・・直流電力のみを用いて作製したAZO膜の基体上での抵抗率分布。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図2】 Znに対してAlを約2原子%添加した酸化亜鉛焼結体ターゲットを用い、スパッタリングガスとして純Arを用いて、成膜の第一段階として、シャッターを使用することにより基体上に膜が形成されない状態で、ガス圧約0.4Paにおいて、周波数13.56MHzの高周波を用いて投入電力200Wで約60分間スパッタリングを行い、引き続き、高周波電力200Wで基体上にAZO薄膜を厚さ約10nm程度形成し、その後、成膜の第二段階として直流を用いて投入電力200Wでスパッタリングを行うことにより、最終的に厚さの100nmのAZO膜をターゲットに対して並行に配置した、基板温度を約200℃に保持ガラス基体上に形成した場合のAZO膜の基体上での抵抗率分布を示すグラフである。また、比較のために、同様の焼結体ターゲットを使用し、直流のみを用いて投入電力200W、基板温度200℃、厚さ100nmに形成したAZO膜の基体上での抵抗率分布も示している。
【記号の簡単な説明】
【0034】
▲1▼・・・当該成膜法により作製したAZO膜の基体上での抵抗率分布。
▲2▼・・・直流電力のみを用いて作製したAZO膜の基体上での抵抗率分布。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛系透明導電膜の直流マグネトロンスパッタ成膜プロセスにおいて、成膜の開始(初期)段階は、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜プロセスとは異なる条件下で成膜を開始することにより、最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なるそれぞれ専用の焼結体ターゲットを使用して成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法。
【請求項3】
請求項1及び2記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なるそれぞれ専用の焼結体ターゲットを使用する場合の初期段階の成膜に使用する焼結体ターゲットが、故意に不純物材料を含まず、実質的に亜鉛及び酸素からなる焼結体ターゲットを使用して成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜と同一の焼結体ターゲットを使用して異なる成膜条件下で成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なる高周波マグネトロンスパッタ成膜を使用して成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なる高周波重畳直流マグネトロンスパッタ成膜を使用して成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なる焼結体ターゲットに対して基体を垂直に配置して成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なるガス雰囲気中で成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4記載の成膜の初期段階では、その後に続く通常の直流マグネトロンスパッタ成膜とは異なる大気開放した直後の焼結体ターゲットを使用すして成膜を開始することにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9記載の直流マグネトロンスパッタ成膜プロセスにおいて、成膜の初期段階として形成する酸化亜鉛系透明導電膜の厚さを1から30nm、好ましくは5から20nmとすることにより、膜の最低抵抗率特性が改善することを特徴とする酸化亜鉛系透明導電膜製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10記載の酸化亜鉛系透明導電膜製造方法を使用して作製する液晶ディスプレイ、タッチパネル、太陽電池及び機器、並びにその製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−58088(P2011−58088A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230977(P2009−230977)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000225670)
【出願人】(396018265)
【Fターム(参考)】