説明

透明樹脂箔及びその製造方法、並びに該透明樹脂箔を用いた電磁波シールド材

【課題】電磁波遮蔽性、光学的透明性あるいは視認性、導電性層の耐久性を有し、薄層化が可能な電磁波シールド材とその製造方法を提供する。
【解決手段】Au、Ag、Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Zn、Al、Sn、Pd、Ti、Ta、W、Mo、In、Pt、Ruから選ばれた金属微粒子又は前記金属の二種類以上を含む合金微粒子で構成される、網目状構造物からなる導電性層を内包した透明樹脂層を積層して作製した透明樹脂箔。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波を遮蔽するとともに、視認性が要求される場所に好適に用いることが出来る透明樹脂箔及び該透明樹脂箔を用いた電磁波シールド材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁波シールド材は家電用品、携帯電話、パソコン、テレビ(プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ)などをはじめとした電子機器から発生する多種多様な電磁波を遮蔽する目的に用いられている。電磁波はそのエネルギーにもよるが人体への影響や他の電子機器の誤作動を招くことが懸念されている。
【0003】
電磁波発生源からの影響を取り除く手段を大別すると次の2つに分けられる。(1)電磁波の発生が抑制されるように電子回路を改良設計する、(2)電磁波発生源を電磁波シールド材で覆う方法がある。(1)の方法で電磁波が抑制されるのであれば、余計な部材が増えることがなくより好ましいが、電磁波の発生源を特定し、さらに回路の改良設計を行う煩雑な作業を行うよりは(2)の方法を用いる方がより効率的で好ましい場合も多い。
【0004】
昨今、市場の伸びが著しい薄膜型ディスプレイであるプラズマディスプレイでは、(2)の電磁波シールド材(電磁遮蔽フィルム)の挿入により電磁波の抑制を行なっている。プラズマディスプレイでは、主にポリエチレンテレフタレート樹脂基板(以後、PETフィルムと記載)上に、銅箔を貼り付けるか、銅を蒸着した後、フォトエッチング法により銅メッシュ構造を有する導電性フィルムを形成し、電磁波シールド材として用いられている。銅を用いているのは、導電性が高いほど一般的にシールド効果が高いためである。
【0005】
あるいは、上述した銅メッシュ構造の代わりに、銀などの金属微粒子分散溶液をフィルム上に塗布することで網目状構造を有した導電性フィルムが開示されている。本法はフォトエッチング法と比べ特別な装置が不要であり、またエッチング液やエッチングで出てくる銅などの廃棄物も少なく環境的にも好ましい手法と言える(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0006】
前述したプラズマディスプレイなどの製品では、電磁波のシールド性とともに、ディスプレイとしての機能を維持する必要があるため、当然ながら電磁波シールド材の光学的透明性が要求される。
【0007】
一方、ディスプレイ用途以外では、信号ケーブルや電線ケーブルなどから不可避的に発生する電磁波を遮蔽する電磁波シールド材や、パソコンやマイコンなどから発生する電磁波を遮蔽あるいは外部からの電磁波によるパソコンやマイコンの誤動作を防ぐための電磁波シールド材などが、すでに各種類市販されている。
【0008】
従来、こういった電磁波シールド材はアルミ箔や金属メッシュ、繊維の表面を金属めっきした導電布を組み合わせたものが用いられており、十分な電磁波シールド効果が得られている。
【0009】
近年では、前述した用途においても電磁波シールド材を施した内容物が外から確認できるよう視認性が求められてきている。
【0010】
従来、透明導電性膜を形成する方法として、特許文献1〜5の方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2005−530005号公報
【特許文献2】特開2008−078441号公報
【特許文献3】特開2006−313891号公報
【特許文献4】特開2007−294355号公報
【特許文献5】特開2007−234299号公報
【0012】
【非特許文献1】日立化成テクニカルレポートNo.42、2004−1、35−38pp
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
家電用品、携帯電話、パソコン、テレビなどをはじめとした電子機器、あるいはこれら電子機器間をつなぐ信号ケーブルや電子機器と電源とを結ぶ電源ケーブルからの電磁波、あるいは電子機器の誤動作を招く危険性のある外部からの電磁波は、今後ますます増え続けることが予想され、それに伴う電磁波シールド材は益々必要になってくる。
【0014】
さらに、電磁波遮蔽特性とともに、ディスプレイやタッチパネル以外の用途においても光学的透明性すなわち遮蔽物の視認性に対する要求も重要になっており、また装置の小型・軽量化の流れから電磁波シールド材の薄膜化も要求されている。
【0015】
しかしながら、従来の電磁波シールド材では、例えば信号ケーブルや電源ケーブルに用いられる電磁波シールド材は、金属膜や金属線のメッシュ、導電布などが用いられているが、電磁波遮蔽特性では良好なものであるが、光学的透明性あるいは視認性においてはまったく考慮されていない。
【0016】
上述したプラズマディスプレイ用途の電磁波シールド材では、PETフィルムなどの基板表面に導電性部が形成され、その導電性部を保護する役目も備えていると考えられる透明化樹脂層が施されている(非特許文献1)。
【0017】
前述の電磁波シールド材をディスプレイ用途以外の例えば電源ケーブルのシールド材などに用いるためには、前述した透明化膜などのような保護膜がないと、作業時のシールド材同士あるいはケーブルとシールド材との擦れ、あるいはシールド材の屈曲時に導電性部が破壊されることが懸念される。そのため、何かしらの保護層は必須と考えられる。
【0018】
今後ますます要求される電磁波シールド材の薄膜化には、前述した電磁波シールド材では、導電性部が形成される基板の厚みおよび保護層の厚みの2つの厚みをいかに削減するかが課題となる。
【0019】
さらに、電磁波遮蔽特性を向上させる目的で通常は電磁波シールド材を複数重ねて使用されるが、前述の2つの厚みは、このような積層構造では、なおいっそう薄膜化において課題となってくる。
【0020】
上述したように、従来の電磁波シールド材には、電磁波遮蔽性とともに、光学的透明性あるいは視認性、さらに導電性部の十分な耐久性を備え、薄層化が可能な構造の電磁波シールド材はなかった。
【0021】
本発明では、電磁波遮蔽性、光学的透明性あるいは視認性、導電性部の耐久性を有し、薄層化が可能な電磁波シールド材とその製造方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0022】
即ち、本発明は、金属微粒子で構成される網目状構造物からなる導電性層を内包した透明樹脂層を積層したことを特徴とする透明樹脂箔である(本発明1)。
【0023】
即ち、本発明は、前記金属微粒子において、Au、Ag、Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Zn、Al、Sn、Pd、Ti、Ta、W、Mo、In、Pt、Ruから選ばれた金属微粒子又は前記金属の二種類以上を含む合金微粒子である透明樹脂箔である(本発明2)。
【0024】
即ち、本発明は、前記透明樹脂箔の膜厚が5〜50μmである透明樹脂箔である。(本発明3)。
【0025】
即ち、本発明は、下記の1から3の製造工程にて製造することを特徴とする前記透明樹脂箔の製造方法である。
1、金属微粒子分散溶液を基材上に塗布し乾燥させ、網目状構造の導電性層を基材上に形成させる導電性層形成工程
2、前記導電性層表面に透明性の樹脂からなる塗液を塗布し乾燥させ、透明樹脂層を積層する透明樹脂層積層工程
3、前記、金属微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材と、1から2の方法により別に用意した金属微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材とを、該透明樹脂層が塗布された表面同士が対面するように重ね合わせ、該透明樹脂層同士を接着させた後、2つの基材を金属微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層より剥離させる工程(本発明4)。
【0026】
即ち、本発明は、前記透明樹脂箔を用いて形成することを特徴とする電磁波シールド材である(本発明5)。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る金属微粒子で構成される網目状構造物からなる導電性層を内包した透明樹脂層を積層した透明樹脂箔は、その金属微粒子による導電性部により優れた電磁波遮蔽性を有し、さらに、網目状構造により光学的透過性に優れあるいは視認性を確保でき、さらには、透明樹脂により該導電性部が保護されてかつ従来の構造の基材がないため、薄膜化が容易に達成できる。
【0028】
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る透明樹脂箔および電磁波シールド材の製造方法を示したフローチャートである。
【図2】本発明に係る電磁波シールド材の形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず図1のAに示すとおり、金属微粒子分散溶液を基材上へ塗布した後、乾燥させる。あるいは、金属微粒子分散インキを基材上に印刷した後、乾燥させる。
【0031】
用いる金属微粒子分散溶液は、基材上へ塗布・乾燥後に、金属微粒子が自己組織化現象により網目状構造を形成し、その後の加熱処理及び/又は化学処理することで、低抵抗、高透過率の透明導電性層を基材上へ形成するものであればいずれの金属微粒子分散溶液を用いても良い。
【0032】
あるいは、金属微粒子分散インキとしては、スクリーン印刷やグラビア印刷などの印刷法により基材上に網目状構造を印刷した後、加熱処理及び/又は化学処理することで、低抵抗、高透過率の透明導電性層を基材上に形成するものであればいずれの金属微粒子分散インキを用いても良い。
【0033】
金属微粒子分散溶液としては、例えば特許文献1あるいは特許文献4、特許文献5などを参考に調製して使用することが出来る。金属微粒子分散インキとしては、例えば藤倉化成株式会社製XA‐9053などの市販品を用いることが出来る。
【0034】
金属微粒子分散液に含まれる金属微粒子は、Au、Ag、Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Zn、Al、Sn、Pd、Ti、Ta、W、Mo、In、Pt、Ruなどの金属微粒子又は金属合金微粒子である。好ましくはAu、Ag、Cuを1種類以上含む金属微粒子分散溶液又は金属微粒子前駆体溶液を用いるのが良い。
【0035】
基材には、耐熱性、耐薬品性に優れる材料を用いることが好ましい。
【0036】
本発明において、金属微粒子分散溶液を基材上に塗布、乾燥あるいは、金属微粒子分散インキを基材上に印刷・乾燥させ、その後に加熱処理及び/又は化学処理を行うことで、十分な低抵抗性、高透過率性を有する導電性層を形成させるので、基材はこれら操作、処理に耐え得るものでなければならない。基材の選択が不適切で、十分な加熱処理、化学処理ができないときには、十分な低抵抗性、高透過率性を有する導電性層を得ることはできない。例えば、金属微粒子分散液あるいは金属分散インキが有機溶剤を含む場合には、耐溶剤性を有する基材とする必要がある。
【0037】
金属微粒子分散液を基材に塗布し乾燥させた後、あるいは金属微粒子分散インキを基材に塗布、乾燥させた後、塩酸水溶液に浸漬させるような場合は耐酸性を有する基材を選択する必要があり、さらにその後加熱処理する場合には、基材は耐酸性と共に耐熱性を有する基材を選択する必要がある。
【0038】
本発明に用いる基材としては、ガラス基材の他、工業的にはより安価な樹脂基材を用いることが好ましい。具体的にはガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等を用いることが出来る。また基材は柔軟性を有することが好ましい。基材は繰り返し使用することもできる。
【0039】
また、金属微粒子分散溶液を塗布あるいは金属微粒子分散インキを印刷する基材の表面は、予め金属微粒子が網目状構造を再現性良く形成するため、あるいは、良好な印刷が出来るために、プライマー処理又はコロナ処理、酸・アルカリ処理による洗浄などを行う方が好ましい。上記手法は特に限定されないが、各金属微粒子分散溶液に適した処理を行うことが好ましい。
【0040】
金属微粒子分散溶液の基材上への塗布方法は、スピンコーターやバーコーター、ダイコーター、スプレーコートなどいわゆる基材上へのコーティング処理を行う時に用いる一般的な塗布手法を用いることが出来る。
【0041】
金属微粒子分散インキを基材上に印刷する方法は、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジエット印刷、ディスペンサーでの印刷などいわゆる一般的に基材上への印刷する手法を用いることができる。
【0042】
金属微粒子分散溶液を基材に塗布・乾燥あるいは金属微粒子分散インキを基材上へ印刷・乾燥し、金属微粒子で構成される網目状構造物を形成した後、加熱処理を行なう場合の温度は、基材の種類によって異なるが十分に低抵抗な導電性層を形成するためには、100〜300℃の範囲が好ましい。より好ましくは100〜200℃である。
【0043】
金属微粒子分散溶液を基材に塗布・乾燥あるいは金属微粒子分散インキを基材上へ印刷・乾燥し、金属微粒子で構成される網目状構造物を形成した後、金属微粒子中に含まれる分散剤や樹脂などを取り除く作用及び金属微粒子同士の焼結を促進する作用のある有機溶剤及び無機酸又は有機酸中に浸漬させる。これにより低抵抗性、高透過率性、耐モアレ性を有する導電性層が積層された基材を得ることができる。
【0044】
有機溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが好ましい。無機酸としては塩酸、硝酸などが好ましく、有機酸としてはギ酸、酢酸などが好ましい。
【0045】
加熱処理および化学処理は、いずれか一方または組み合わせても良い。耐候性又は耐薬品性、酸化還元電位から来る劣化を防ぐために、導電性層の表面をめっきすることも出来る。
【0046】
上記方法により作成される金属微粒子で構成される網目状構造物が基材上に積層された導電性層が積層された基材7(図1(A))の電気特性としては、表面抵抗が100Ω/□以下である。光学的透過性としては、透過率60%以上の範囲になることが好ましい。より好ましくは、表面抵抗は30Ω/□以下、透過率70%以上である。表面抵抗が100Ω/□より大きいと電磁波シールド特性として十分とは言えず、透過率が60%未満であると、本発明の課題であった光学的透明性という優位性が小さくなり好ましくない。
【0047】
次に、図1(B)に示すように前記導電性層が積層された基材7の導電性層に、導電性層を被覆するように透明樹脂層3を形成する。
【0048】
透明樹脂層3に使用される樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピロリドン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、塩素化ポリプロピレン、ウレア、セルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂およびこれらの共重合体からなる群の少なくとも1つ、及び又はこれらいずれか混合物などが例示される。また、最終的に得られる透明樹脂箔として高い耐性を得ることを目的としてイソシアネート系、メラミン系、エポキシ系等従来公知の硬化剤を添加することも可能である。
【0049】
また、透明樹脂層3には添加剤として紫外線吸収剤、着色顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤等も適宜、必要に応じて使用することができる。
【0050】
透明樹脂層3の形成方法としては、上記の透明樹脂材料を有機溶剤又は水に溶解あるいは水に分散し粘度を調整したコーティング剤を作製し、グラビヤコーティング、スピンコーティングなど従来公知のコーティング法により塗布乾燥する方法を用いることができる。透明樹脂層3の厚みは好ましくは5〜50μmである。透明樹脂層3の厚みが5μm未満では最終的に得られる透明樹脂箔を電磁波シールド材としてしようした場合に耐久性が劣るため好ましくない。一方、透明樹脂層3の厚みが50μmよりも厚い場合は透明性が劣るため好ましくない。
【0051】
また、電磁波シールド材として使用した場合の耐久性を確保するため、透明樹脂層3の厚みは金属微粒子で構成される網目状構造物の高さよりも厚いほうが好ましいが、特にこの限りではない。
【0052】
次に、前記金属微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材と、同様の方法により別に用意した金属微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材とを、該透明樹脂層が塗布された表面同士が対面するように重ね合わせ、該透明樹脂層同士を接着させた後、2つの基材を金属微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層より剥離させることで、金属微粒子で構成される網目状構造物を2層内包した透明樹脂箔4を作製することができる(図1の(D))。
【0053】
透明樹脂層同士の接着方法としては、従来公知の接着剤や粘着剤を塗布して接着する方法が使用可能である。また、透明樹脂として熱接着性を有する熱可塑性樹脂を使用した場合は熱圧接のみで透明樹脂層同士を接着させる事も可能であり、その場合は接着剤や粘着剤は不要である。前記方法により作製された透明樹脂箔は金属微粒子で構成される網目状構造物が2枚積層された構成となるため、特に電磁波シールド性能に優れたものとなる。この透明樹脂箔を種々の被着体に貼着することにより、被着体に電磁波シールド材としての性能を得ることも可能である。
【0054】
さらに、金属微粒子で構成される網目状構造物を2層内包した透明樹脂箔4を、別に用意した金属微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材の透明樹脂層表面に重ね合わせ、透明樹脂箔4と透明樹脂層とを接着させた後、基材を剥離させることで、金属微粒子で構成される網目状構造物を3層内包した透明樹脂箔5を作製することができる(図2)。この透明樹脂箔5を電磁波シールド材として使用した場合は極めて優れた電磁波シールド性能を得ることが出来る。
【0055】
本発明の金属微粒子で構成される網目状構造物を2層内包した透明樹脂箔4や金属微粒子で構成される網目状構造物を3層内包した透明樹脂箔5を各種被着体に積層して使用する場合は、該透明樹脂箔の少なくとも一方の面に接着剤又は粘着剤を塗布して使用することが可能である。
【0056】
接着剤材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピロリドン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、塩素化ポリプロピレン、ウレア、セルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの共重合体からなる群の少なくとも1つ、及び又はこれらいずれか混合物などが例示される。
【0057】
粘着剤としてはアクリル系粘着剤をはじめ種々の粘着剤が使用可能であり、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート等の低Tgモノマーを主モノマーとし、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル等の官能基モノマーと共重合することで得られたアクリル共重合体をイソシアネート系、メラミン系、エポキシ系等公知の架橋剤にて、架橋することにより得ることができる。
【0058】
本発明に係る透明樹脂箔の電磁波遮蔽特性は、1MHz〜1GHzでの電磁波減衰率は30dB以上である。より好ましくは35dB以上である。さらに好ましくは40dB以上である。30dBより小さい場合は遮蔽特性としては特に優れた効果があるとは言いがたい。
【0059】
本発明に係る透明樹脂箔の光学的透過率は60%以上である。光学的透過率が60%未満では、十分な透明性とはいい難く視認性も劣ってしまう。
【0060】
導電性層の耐久性の評価は耐擦過性試験により評価を行った。一般的なテープテストを行っても導電性層の強度評価が可能であるが、電磁波シールド材として実際に用いる場所に適した試験法とは十分とは言いがたい。実際に電磁波シールド材として用いる場合には電磁波シールド材同士の擦れや、ケーブル先端などの引っかきが起きる頻度が高く、擦れや引っ掻きによって導電性層の構造が破壊されると、導電性が悪化し、電磁波シールド性能が悪化してしまうためである。
【0061】
前記、耐擦過性試験において、加重19.6Paにて綿布を100往復させた場合でも導電性層に損傷がない程度の耐久性が好ましい。耐擦過性が上記より低い場合は容易に電磁波シールド材同士の擦れやケーブル先端の引っ掻きにより導電性層が破壊されてしまうため好ましくない。
【実施例】
【0062】
基材上に作成した透明導電性層および金属微粒子で構成される網目状構造物を内包した透明樹脂箔の電気抵抗の測定は、JIS−K−7194に準拠した形で、ロレスタ−GP(株式会社ダイアインスツルメンツ製、型番:MCP−T610)において直列4探針プローブ(ASP)を用いて4端子4探針法で実施した。
【0063】
光学的透過率は全光線透過率として評価した。前記透明導電性層および金属微粒子で構成される網目状構造物を内包した透明樹脂箔をヘイズメーター(型番:NDH−2000、日本電飾工業株式会社製)を用いてJIS K−7105に準拠して測定した。
【0064】
基材の厚み、金属微粒子で構成される網目状構造物を内包した透明樹脂箔の厚みはマイクロメーターで測定した。
【0065】
電磁波シールド特性の測定法としてはKEC法により、1MH〜1GHzの周波数における電界成分の減衰率を測定した。
【0066】
耐久性試験としては、加重19.6Paにて綿布を100往復させる耐擦過性試験(試験機:A.A.T.C.C.クロックメータ
モデルCM−1、アトラス エレクトリック デバイス社製)を行い、導電性層の損傷度合いを評価した。
【0067】
<銀微粒子1の調製法>
金属微粒子の例として銀微粒子の液相還元調製法を説明するが、金属微粒子の種類や製造法を限定するものではない。
【0068】
硝酸銀40g、ブチルアミン37.9g、メタノール200mLを加え、1時間攪拌しA液を調製した。別にイソアスコルビン酸62.2gを取り、水400mLを加え攪拌して溶解し、続いてメタノール200mLを加えB液を調製した。B液をよく攪拌しA液をB液に1時間20分かけて滴下した。滴下終了後、3時間30分攪拌を継続した。攪拌終了後、30分間静置し固形物を沈降させた。上澄みをデカンテーションにより取り除いた後、新たに水500mLを加え、攪拌、静置、デカンテーションにより上澄み液を取り除いた。この精製操作を3回繰り返した。沈降した固形物を40℃の乾燥機中で乾燥し、水分を除去した。さらに、得られた銀微粒子20gとDISPERBYK−106(ビックケミージャパン社製)0.2gをメタノール100mLと純水5mLとの混合溶液中に混合し、1時間混合した後に、純水100mLを加えて、スラリーをろ過した後、40℃の乾燥機中で乾燥させて、銀微粒子1を得た。銀微粒子は電子顕微鏡による観察から一次粒子の平均粒子径が60nmであった。
【0069】
<銀微粒子分散溶液2の調製>
銀微粒子の分散溶液の調製は、特許文献1を参考に行った(特表2005−530005号公報を参考に調製)。
【0070】
すなわち、前記銀微粒子1を4g、トルエン30g、BYK−410(ビックケミージャパン社製)0.2gを混合し、出力180Wの超音波分散機で1.5分間分散化処理を行い、純水15gを添加し、得られた乳濁液を出力180Wの超音波分散機で30秒間分散処理を行い、銀微粒子分散溶液2を調製した。
【0071】
<導電性層の形成法>
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート基材上に前記銀微粒子分散溶液2を、バーコーターを用いてコーティングした。続いて、大気中で自然乾燥させることで、銀微粒子が自己組織化現象により網目状構造を形成した。次に、150℃で2分間加熱した後、アセトン及び1N塩酸にそれぞれ浸漬した後、150℃で5分間加熱乾燥させ、銀微粒子を含む網目状構造物を形成した。銀微粒子を含む網目状構造物からなる導電性層を基材上に形成した後の全光線透過率は85%、表面抵抗値は4.5Ω/□であった。
【0072】
実施例1
上述した方法により作製した銀微粒子を含む網目状構造物が積層されたポリエチレンテレフタレート基材上に、下記の透明樹脂層コーティング液1を乾燥後の厚みが15μmとなるよう塗布し、100℃の温度で5分乾燥させて、銀微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材Aを作製した。次いで、上記と同様の方法により別に用意した銀微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材Bを作製した。前記基材Aおよび基材Bの該透明樹脂層が形成された表面同士が対面するように重ね合わせ、ホットラミネーター(大成ラミネーター製、大成ファーストラミネーターVAII−700)を用いて170℃で圧接した後、2つのポリエチレンテレフタレート基材を剥離して、銀微粒子で構成される網目状構造物を2層内包した透明樹脂箔を作製した。得られた透明樹脂箔の全光線透過率は71%であり、表面抵抗値は4.5Ω/□であった。
【0073】
<透明樹脂層コーティング液1>
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学製、エスレックBX−1)15gをノルマルブタノール85gに溶解させ透明樹脂層コーティング液1を作製した。
【0074】
実施例2
透明樹脂層コーティング液として透明樹脂層コーティング液2を使用し、乾燥後の透明樹脂層厚みが20μmとなるよう塗布した以外は実施例1と同様に銀微粒子を含む網目状構造物を2層内包した透明樹脂箔を作製した。
【0075】
<透明樹脂層コーティング液2>
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学製、ソルバインCN)20gをメチルエチルケトン80gに溶解させ透明樹脂層コーティング液2を作製した。
【0076】
実施例3
実施例1と同様に銀微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材Aおよび同様の方法により別に用意した銀微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材Bを作製した。次いで、下記の粘着層コーティング液1を基材Aの透明樹脂層表面に乾燥膜厚が15μmとなるよう塗布し、100℃の温度で5分間乾燥させて、基材Aの透明樹脂層表面に粘着層を積層した後、該粘着層面に基材Bの透明樹脂層面が対面するように重ね合わせて、ラミネーター(大成ラミネーター製、大成ファーストラミネーターVAII−700)を用いて常温で圧接し、2つのポリエチレンテレフタレート基材を剥離して、銀微粒子で構成される網目状構造物を2層内包した透明樹脂箔を作製した。
【0077】
<粘着層コーティング液1>
ブチルアクリレートとヒドロキシブチルアクリレートの共重合体30gとトリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体の1gと酢酸エチル69gに溶解させて、粘着層コーティング液1を作製した。
【0078】
実施例4
実施例1と同様の方法により銀微粒子を含む網目状構造物を2層内包した透明樹脂箔を作製した。次いで、実施例1と同様の方法により別に用意した銀微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材Cを作製した。前記銀微粒子を含む網目状構造物を2層内包した透明樹脂箔と基材Cの該透明樹脂層が形成された表面とを重ね合わせ、ホットラミネーター(大成ラミネーター製、大成ファーストラミネーターVAII−700)を用いて170℃で圧接した後、基材Cのポリエチレンテレフタレート基材を剥離して、銀微粒子で構成される網目状構造物を3層内包した透明樹脂箔を作製した。
【0079】
比較例1
電磁波シールド材として厚み0.15μmの銅を蒸着したPETフィルム(厚み12μm)を用いて、電磁波シールド特性の測定を行なった。
【0080】
シールド特性としては1MHz〜1GHzでの減衰率は50dB以上で十分であったが、全光線透過率は0%であり視認性はまったくなかった。
【0081】
比較例2
電磁波シールド材として実施例に従ってPETフィルム(厚み100μm)上に銀微粒子を含む網目状構造物を形成し、電磁波シールド特性の測定を行なったところ、シールド特性1MHz〜1GHzでの減衰率は30dB以上で十分であった。 全光線透過率は85%であり、視認性にも優れていた。
耐擦過性試験を行ったところ導電性層の破壊が見られ、耐久性の低いものであった。
【0082】
実施例1〜4および比較例1〜2で作製したサンプルの評価結果を表1に示した。
【0083】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る透明樹脂箔は、電磁波遮蔽性及び光学的透過性に優れており、且つ従来の構造の基材を必要としないことから装置の小型化・軽量化において使用される電磁波シールド材用透明樹脂箔として好適である。
【符号の説明】
【0085】
1 金属微粒子で構成される網目状構造物(導電性層)
2 基材
3 透明樹脂層
4 金属微粒子で構成される網目状構造物を2層内包した透明樹脂箔
5 金属微粒子で構成される網目状構造物を3層内包した透明樹脂箔
6 金属微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材
7 導電性層が積層された基材
8 別に用意した金属微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属微粒子で構成される網目状構造物からなる導電性層を内包した透明樹脂層を積層したことを特徴とする透明樹脂箔。
【請求項2】
請求項1記載の金属微粒子において、Au、Ag、Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Zn、Al、Sn、Pd、Ti、Ta、W、Mo、In、Pt、Ruから選ばれた金属微粒子又は前記金属の二種類以上を含む合金微粒子である透明樹脂箔。
【請求項3】
請求項1および2記載の透明樹脂箔の膜厚が5〜50μmである透明樹脂箔。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の透明樹脂箔において、下記の1から3の製造工程にて製造することを特徴とする製造方法。
1、金属微粒子分散溶液を基材上に塗布し乾燥させ、網目状構造の導電性層を基材上に形成させる導電性層形成工程
2、前記導電性層表面に透明性の樹脂からなる塗液を塗布し乾燥させ、透明樹脂層を積層する透明樹脂層積層工程
3、前記、金属微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材と、1から2の方法により別に用意した金属微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層が形成された基材とを、該透明樹脂層が塗布された表面同士が対面するように重ね合わせ、該透明樹脂層同士を接着させた後、2つの基材を金属微粒子で構成される網目状構造物を含む透明樹脂層より剥離させる工程
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の透明樹脂箔を用いて形成することを特徴とする電磁波シールド材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−251476(P2010−251476A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98297(P2009−98297)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】