説明

透明液状組成物及び重合体

【課題】ホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレート(PCMA)を含み、耐結晶析出性、操作作業性に優れ、無溶剤において透明液状性を示す透明液状組成物、該組成物を含み、熱又は光をエネルギー源として容易に重合できる重合性透明液状組成物及び該組成物を重合した透明重合体を提供すること。
【解決手段】本発明の透明液状組成物は、特定のPCMA100重量部と、特定の水酸基及びケイ素原子含有(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種又は2種以上の混合物500〜1000重量部と、必要により疎水性単量体50〜1000重量部を更に含み、本発明の重合性透明液状組成物は、本発明の透明液状組成物100重量部と、ラジカル重合開始剤0.01〜10重量部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートと、水酸基及びケイ素原子含有(メタ)アクリレートとを含む、作業操作性に優れ、医療材料をはじめとする広範の分野への応用が期待できる、無溶剤において透明液状性を示す組成物及び該組成物を重合させた重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、ポリマーにタンパク質や脂質の吸着を抑制する性能を付与したり、親水性を向上させる目的でホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートである2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、MPCと略す)を重合成分とする材料が提案されている。MPCは、ホスホリルコリン基を有するので、タンパク或いは脂質に対する吸着抑制能を発揮し、抗血栓性材料や体液に対する防汚性材料に応用され、また、保水性を高めることができるので、酸素透過性材料等に利用されている。
しかしながら、ホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートは固体で、経時、熱、光等によって重合し変性し易い問題があるため、低温保管や使用時に溶解作業が不可欠である。具体的には、水やエチルアルコール等の低級アルコールに溶解させることが必要であるが、経時によって加水分解やエステル交換等の変質が起こり易い。その変質を抑制するために低温で保管すると、徐々にホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートの結晶が析出するという問題、更には、それを回避するために大量の溶剤を使用すると、実使用時に溶剤を除く必要があり、作業が煩雑化するという問題がある。
【0003】
また、ホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートは、単量体同士の溶解性が悪く、これを共重合成分とする塊状重合の際には、水酸基、カルボキシル基を有する親水性単量体に溶解させることが必要である。このような親水性単量体としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを代表とする水酸基含有(メタ)アクリレートと、メタクリル酸を代表とするカルボンキシル基含有(メタ)アクリレート等が知られている。親水性単量体として2−ヒドロキシエチルメタクリレートを用いる場合には、更に加える疎水性単量体に対する溶解性が制限されたり、低温で結晶が析出してしまい、透明で液状の組成物を得ることができない。そのため、取扱いや使用方法が著しく制限され、汎用性に欠けるという課題がある。また親水性単量体としてメタクリル酸を用いる場合には、ホスホリルコリン基のタンパク質或いは脂質に対する吸着抑制能を低下させる傾向がある。
更に、ホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートを用いたポリマーの合成方法に関しては、エチルアルコール等の溶剤を用いる溶液重合法や沈殿重合法に限られ、塊状重合法の採用は困難であった。特に、重合成分として疎水性の強いケイ素原子含有(メタ)アクリレートが混在するような場合は、結晶析出が加速し、ろ過分離や加熱による溶解の必要が生じ、重合法としては溶液重合法に頼らざるを得ないといった作業性の問題と、重合性組成物を構成する単量体の安定性にも問題がある。
そこで、ホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートを用いた透明重合体の原料として、作業が容易で保存時の安定性があり、透明で、必要に応じて重合することができる液状組成物の開発が熱望されている。
【特許文献1】特表平6−502200号公報
【特許文献2】特開平5−107511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートを含み、耐結晶析出性、操作作業性に優れ、無溶剤において透明液状性を示す透明液状組成物を提供することにある。
本発明の別の課題は、ホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートを含み、熱又は光をエネルギー源として容易に重合することができる重合性透明液状組成物及び該組成物を重合した透明重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートに対し、特定の水酸基及びケイ素原子含有(メタ)アクリレートを配合してなる透明液状組成物が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明によれば、式(1)で表わされるホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレート(以下、PCMAと略す)100重量部と、
【化4】

(式中、R1、R2及びR3は水素原子又はメチル基を示し、mは1〜8の整数を示し、nは2〜4の整数を示す。)
式(2)及び式(3)で示される水酸基及びケイ素原子含有(メタ)アクリレート(以下、SiHMAと略す)からなる群より選択される1種又は2種以上の混合物500〜1000重量部とを含む、また必要により疎水性単量体50〜1000重量部を更に含む透明液状組成物が提供される。
【0007】
【化5】

(式中、R4及びR6は水素原子又はメチル基を示し、R5及びR7は-CH2CH(OH)CH2-又は-CH(CH2OH)CH2-を示し、R8は炭素数4〜10の直鎖或いは分岐アルキル基を示す。sは1〜10の整数を示し、qは0又は1、rは2又は3であってr+q=3を満たし、tは2〜20の整数を示す。)
【0008】
また本発明によれば、上記透明液状組成物100重量部と、ラジカル重合開始剤0.01〜10重量部とを含む重合性透明液状組成物が提供される。
更に本発明によれば、上記重合性透明液状組成物を重合した透明重合体が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の透明液状組成物は、PCMAとSiHMAとを特定割合で含有するので、PCMAを含む組成物の物性を改善し、耐結晶析出性、操作作業性に優れ、無溶剤において透明液状性を示し、抗血栓性材料や体液に対する防汚性のある材料や酸素透過性に優れた材料等、PCMAの性能を十分発揮した材料を製造する際の原料として有用である。また、安定性にも優れ、低温で保存した状態で透明性を保ったまま、トラックによる輸送や貨物船舶による海上輸送等の長時間の輸送も可能である。
本発明の重合性透明液状組成物は、本発明の透明液状組成物を含むので、保水性の高い材料を合成する場合に、結晶性成分の析出による重合の不均一化の抑制を達成し、低温保管を可能にし、溶液重合だけではなく塊状重合にも対応できる。
本発明の透明重合体は、本発明の重合性透明液状組成物の重合体であるので、透明性を示し、PCMA等に起因する各種性能を充分に発揮しうる広範に及ぶ分野への材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明をさらに詳細に説明する。
本発明に用いるPCMAは、上記式(1)で示されるホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレートである。
式(1)において、R1、R2、及びR3は水素原子又はメチル基を示し、mは1〜8の整数を、nは2〜4の整数を示す。ただしmが2以上の場合mは平均値を示す。
PCMAとしては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3'−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート等を挙げることができる。入手性より2−メタクリロイルオキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC)が好ましく挙げられる。また、PCMAは単独で使用してもよいし、2種以上を配合して用いてもよい。
【0011】
本発明に用いるSiHMAは、上記式(2)及び/又は式(3)で示される水酸基及びケイ素原子含有(メタ)アクリレートであり、使用に際してはこれらの1種で用いることも、2種以上の混合物として用いることもできる。
式(2)及び(3)において、R4及びR6は水素原子又はメチル基を示し、R5及びR7は-CH2CH(OH)CH2-又は-CH(CH2OH)CH2-を示し、R8は炭素数4〜10の直鎖或いは分岐アルキル基を示す。sは1〜10の整数を示し、qは0又は1、rは2又は3であってr+q=3を満たし、tは2〜20の整数を示す。ここで、好ましいtは5〜13である。tが20を超えると分子内水酸基の効果、即ち組成物中のPCMAの溶解性が低下する。
【0012】
上記式(2)で示されるSiHMAとしては、例えば、1−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルオキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1−メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルオキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1−ジメチル(トリメチルシロキシ)シリルプロピルオキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンが挙げられる。
【0013】
上記式(3)で示されるSiHMAとしては、例えば、下記式で示される化合物又は混合物が挙げられる。ここで、tは上記と同様である。
【化6】

【0014】
本発明の透明液状組成物において、SiHMAの含有割合は、前記PCMA100重量部に対して500〜1000重量部である。500重量部未満では、PCMAの溶解が不十分、あるいは一旦溶解したPCMAの結晶が析出する恐れがある。
【0015】
本発明の透明液状組成物は、上記PCMA及びSiHMAの他に、必要に応じて疎水性単量体を更に含有させることができる。
疎水性単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソブチレン、スチレン、α−メチルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルフマレート、ジtert−ブチルフマレート、ジシクロヘキシルフマレート、ジメチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ピバリン酸ビニルエステル、安息香酸アリルエステル、tert-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルが挙げられ、好ましくはスチレン、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
疎水性単量体としては、上記具体例の他に、例えば、式(4)で示されるケイ素原子含有(メタ)アクリレート(以下、SiMAと略す)を用いることもできる。
【化7】

式(4)において、R9は水素原子又はメチル基を示し、uは1〜10の整数を示し、vは0又は1、wは2又は3であってv+w=3を満たす。
【0017】
SiMAとしては、例えば、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、1−メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、1−ジメチル(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いても良く、更には上述の他の疎水性単量体と組合せて用いても良い。
【0018】
本発明の透明性液状組成物において、上記疎水性単量体を含有させる場合の含有割合は、通常、PCMA100重量部に対して、50〜1000重量部、好ましくは100〜500重量部である。50重量部未満では疎水性単量体の効果が十分でない恐れがあり、1000重量部を超えると組成物中のPCMAの溶解が不十分、或いは一旦溶解したPCMAの結晶が析出する恐れがある。
【0019】
本発明の透明性液状組成物は、PCMAの溶解性、透明液状状態、耐タンパク質汚染性を損なわない程度に上記以外のその他の化合物を適宜その目的等に応じて含有量を決定して含有させることもできる。
その他の化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、トルエン、キシレン、エチルアセテート、ブチルアセテート、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、塩化メチレン、酢酸、オクタン酸、オレイン酸等の化合物;水;エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルカノール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオール;グリセリン、ポリグリセリン、イソプロピリデングリセロール、イソブチリデングリセロール、ブチリデングリセロール、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリル等のグリセリン誘導体;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;モノステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリオキシエチレンモノエーテル;ポリオキシエチレンステアリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド等のポリオキシエチレンアルキルアミド等の界面活性剤;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;N−ヒドロキメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;ヒドロキシエチルアリルエーテル等のアリルエーテル;4−ヒドロキシメチルスチレン;(メタ)アクリル酸等が挙げることができる他、更に、色素、染料、顔料等の着色料;紫外線吸収剤;BHT、酢酸トコフェノール等の酸化防止剤;シリコーンオイル等の油剤;スクワラン等の保湿剤;メチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤;EDTA・4Na等のキレート剤等も挙げられる。
【0020】
本発明の重合性透明液状組成物は、上記本発明の透明性液状組成物にラジカル重合開始剤を配合した組成物である。
該重合開始剤の配合割合は、本発明の透明液状組成物100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。
【0021】
本発明の重合体は、上記本発明の重合性透明液状組成物を重合させた重合体である。
本発明の重合体の製造は、本発明の重合性透明液状組成物を、熱又は光をエネルギー源としたラジカル重合法によって実施される。例えば、塊状重合、溶液重合、沈殿重合等の公知の技術によって行うことができるが、特に、耐結晶析出性、操作作業性に優れる点で、塊状重合が好ましい。
重合条件は、目的とする重合体に応じて、公知の条件から適宜選択して決定することができるが、通常、温度20〜150℃、重合時間1分間〜48時間の条件等が挙げられる。
本発明の重合体は、透明性を有する透明重合体であって、例えば、公知の方法により成型することにより、透明フィルム、コンタクトレンズ等として利用できる。ここで、透明とは、好ましくは可視光透過率が90%以上であることを言う。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
尚、実施例及び比較例、表に用いた略号は次の通りである。
<PCMA>
MPC;2−メタクリロイルオキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート
<SiHMA>
MSMP;1−メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルオキシ−3−メタアクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン
PDSM;
【化8】

平均分子量1000、t=5〜13
<疎水性単量体>
MMA;メチルメタアクリレート、BMA;ブチルメタアクリレート
<SiMA>
TRIS;トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート
<その他>
DMA;N,N−ジメチルアクリルアミド、HEMA;2−ヒドロキシメタクリレート
<重合開始剤>
AIBN;アゾビスイソブチロニトリル
【0023】
実施例及び比較例において行った、液状組成物の透明性試験、保存安定性試験、及び硬化状態試験は以下の通りである。
<液状組成物の透明性試験及び評価記号>
得られた組成物を目視で観察し、透明な組成物を○、PCMAが溶けきれずに残存するか、分散状態で白濁するか、或いは二層以上に分離した状態のものを×とした。
<液状組成物の保存安定性試験及び評価記号>
得られた組成物を0℃の冷蔵庫にて1ヶ月間保管後、目視で観察し、PCMAの結晶の析出が認められず、透明で一液であったものを○、結晶析出或いは二層以上に分離した状態のものを×とした。
<液状組成物の硬化状態試験及び評価記号>
得られた液状組成物を重合し、フィルム状のポリマーが得られたものを○、フィルムは得られず液体であったものを×とした。
【0024】
実施例1
MPC 100重量部をMSMP 500重量部に混合溶解した。得られた混合物100重量部を測り取り、これに更にAIBN 0.5重量部を溶解したところ光学的に透明で均一な配合物が得られた。また、0℃の冷蔵庫にて1ヶ月間の保管後でも透明性は維持されていた。この液状組成物を、厚さ0.1mmのテフロン(登録商標)シートをスペーサーとしてガラス板とポリエステルフィルムの間に挟みこんだセル内に流し込み、120℃で3時間加熱した。加熱終了後、ポリエステルフィルムを剥したところフィルム状のポリマーが得られた。
得られた液状組成物の透明性試験、保存安定性試験、及び硬化状態試験の結果を表1に示す。
【0025】
比較例1
MPC 100重量部をTRIS 500重量部に混合溶解したが、MPCは全く溶けず残存した。
【0026】
実施例2〜9、比較例2〜5
表1の組成物を用いて、実施例1と同様に液状組成物を調製し、更に重合によりポリマーを製造した。得られた液状組成物の透明性試験、保存安定性試験、及び硬化状態試験の結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

以上の結果から、本発明の液状組成物は、均一透明であることがわかる。また冷蔵保管のような低温で且つ長期に渡る保管でもPCMAの析出や液体の分離が認められず、無溶剤の状態で長期保存が出来ることがわかった。更に、塊状重合によって重合体が得られることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表わされるホスホリルコリン類似基含有(メタ)アクリレート100重量部と、
【化1】

(式中、R1、R2及びR3は水素原子又はメチル基を示し、mは1〜8の整数を示し、nは2〜4の整数を示す。)
式(2)及び式(3)で示される水酸基及びケイ素原子含有(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種又は2種以上の混合物500〜1000重量部とを含む透明液状組成物。
【化2】

(式中、R4及びR6は水素原子又はメチル基を示し、R5及びR7は-CH2CH(OH)CH2-又は-CH(CH2OH)CH2-を示し、R8は炭素数4〜10の直鎖或いは分岐アルキル基を示す。sは1〜10の整数を示し、qは0又は1、rは2又は3であってr+q=3を満たし、tは2〜20の整数を示す。)
【請求項2】
疎水性単量体50〜1000重量部を更に含む請求項1記載の透明液状組成物。
【請求項3】
疎水性単量体が、式(4)で示されるケイ素原子含有(メタ)アクリレートである請求項2記載の透明液状組成物。
【化3】

(式中、R9は水素原子又はメチル基を示し、uは1〜10の整数を示し、vは0又は1、wは2又は3であってv+w=3を満たす。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の透明液状組成物100重量部と、ラジカル重合開始剤0.01〜10重量部とを含む重合性透明液状組成物。
【請求項5】
請求項4記載の重合性透明液状組成物を重合した透明重合体。

【公開番号】特開2007−197513(P2007−197513A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15140(P2006−15140)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】