説明

透明粘着シート

【課題】段差追従性とリワーク性とを両立できる透明粘着シートを提供する。
【解決手段】鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の未架橋体又は架橋体で形成した芯材フィルムの両面に粘着剤層を形成する。前記芯材フィルムの60℃での貯蔵弾性率は1×10〜1×10Paであり、かつ60℃での貯蔵弾性率1に対して25℃での貯蔵弾性率が50〜5×10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段差追従性(段差吸収性)及びリワーク性(剥離性)に優れた透明粘着シート(例えば、各種光学部材の貼合せに利用できる透明粘着シート)に関する。
【背景技術】
【0002】
各種光学部材の貼合せには、透明粘着シートが用いられる。例えば、タッチパネルを備えた表示装置では、外部からの衝撃が表示パネルやタッチパネルに伝わらないように、これらのパネルを保護するために、アクリル板やガラス板などの保護パネルが所定の間隙をおいて配置されている。しかし、この間隙は空気層であるため、保護パネルを構成する材料と空気層との屈折率差に起因して光の反射損失が大きく、良好な視認性が得られない。そのため、透明粘着シートにより空隙を埋めて、視認性を向上させると共に、保護パネルの強度を高め、衝撃で破損し破片が飛散するのを防止している。
【0003】
透明粘着シートは、芯材なしのタイプと芯材ありのタイプに分類できる。芯材のない粘着シートとして、例えば、特開2010−72471号公報(特許文献1)には、貯蔵弾性率が、1Hz、80℃において、1.0×10〜1.0×10Paであり、脂環式炭化水素樹脂、非結晶性飽和ポリオレフィン樹脂、アクリル基を有する樹脂、及び前記樹脂の反応を引き起こす開始剤を所定の割合で含有する透明粘着シートが開示されている。この文献の実施例では、脂環式炭化水素樹脂として、水素添加ジシクロペンタンジエン系樹脂が使用されている。しかし、この粘着シートは、芯材を有しないため、リワーク性が十分でなく、粘着シートを剥がす際、粘着シートが千切れて糊残りが生じる。また、大きな空隙を埋めることが困難であり、打ち抜き加工性も十分でない。
【0004】
芯材を有する粘着シートとして、例えば、特開平6−346032号公報(特許文献2)には、伸度が300〜600%、厚みが30〜200μmであるポリウレタンフィルムを基材とし、この基材の両面に粘着剤層が設けられている両面粘着テープが開示されている。また、特開2010−264748号公報(特許文献3)には、キャスティング法により製膜された応力緩和性樹脂層(A)と、その両面に設けられた応力緩和性樹脂層(B)とを有する積層部材が開示されている。この文献には、樹脂層(A)を形成する樹脂としては、ポリエステル樹脂(特に、ポリエステルウレタン樹脂)が好ましいと記載され、樹脂層(A)の温度23℃における貯蔵弾性率は、通常0.1〜20MPa程度であると記載されている。
【0005】
しかし、これらの粘着シートは、芯材をポリウレタン系樹脂又はポリエステル樹脂で構成するため、表面に凸部を有する被着体に対して、段差追従性が十分でない。特に、最近では、保護パネルのフラット化が進み、保護パネルの外周縁部には黒色印刷層が設けられており、このような印刷層の厚みによる段差に対して十分に追従できない。従って、粘着シートの貼合せが非常に難しく、外観不良が生じ易い。また、芯材をポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート)で構成すると、位相差が大きいため、表示装置の表示不良の原因ともなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−72471号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開平6−346032号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2010−264748号公報(特許請求の範囲、段落[0010]、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、段差追従性とリワーク性(貼付後の剥離性)とを両立できる透明粘着シート及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、貼り合わせ加工時に適度な柔軟性を有し、被着体同士の間隙が大きくても両被着体を隙間なく接着できる透明粘着シート及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、耐久性に優れ、高温多湿下でも被着体との界面に気泡が生成するのを防止できる透明粘着シート及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、打ち抜き加工性に優れた透明粘着シート及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、光学等方性に優れ、表示装置を構成する光学部材の貼合せに用いても、視認性を阻害しない透明粘着シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
透明粘着シートの芯材について、芯材を弾性率が高く、かつ伸度が大きい樹脂で構成すると、引き剥がし時に大きな応力を掛けても伸びがよく、リワーク性を有するものの、このような樹脂は弾性率が高いため変形性に乏しく、段差追従性が低い。一方、芯材を弾性率の低い樹脂で構成すると、柔軟性を高め、ある程度の段差追従性を有するものの、引張応力が低下するため、引き剥がし時の応力により芯材が破断し易く、リワーク性が低い。このように、段差追従性とリワーク性はトレードオフの関係にあり、両立させるのが極めて困難である。
【0013】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、芯材フィルムを特定の鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の未架橋体又は架橋体で形成すると、室温での弾性率を高め、かつ伸度を高くすることができ、更には貼り合わせ加工温度での弾性率を低減でき、段差追従性を確保することができ、透明粘着シートの段差追従性とリワーク性とを両立できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、室温で高弾性かつ高い引張伸度を有しながら、温度が高い領域では弾性率が低くなる樹脂を用いることが重要であることを見出した。そして、このような性能を鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の未架橋体又は架橋体で形成された芯材フィルムにより獲得できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の透明粘着シートは、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の未架橋体又は架橋体で形成された芯材フィルムの少なくとも一方の面(特に、両面)に粘着剤層(例えば、アクリル系粘着剤層)が形成されている。この芯材フィルムにおいて、透明粘着シートの加工(貼付)温度近傍(例えば、60℃)での貯蔵弾性率は1×10〜1×10Pa(例えば、1×10〜5×10Pa程度)であり、上記加工温度近傍(例えば、60℃)での貯蔵弾性率1に対して室温(例えば、25℃)での貯蔵弾性率は50〜5×10(例えば、70〜1000程度)である。
【0015】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体のガラス転移温度は10〜50℃(例えば、30℃を超えて50℃以下)程度であってもよい。また、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体において、環状オレフィンの割合は、鎖状オレフィンと環状オレフィンとの合計に対して15〜50モル%(例えば、15モル%を超えて40モル%以下)程度であってもよい。
【0016】
芯材フィルムは、さらに下記(1)〜(4)の少なくとも1つの特性を有していてもよい。
【0017】
(1)室温での100%伸度時の引張応力が15〜100MPa程度である
(2)波長590nmにおける面内レタデーションが、厚み100μm換算で、10nm以下である
(3)厚みが20〜400μm程度である
(4)表面張力が40〜70mN/m程度である。
【0018】
芯材フィルムは、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の放射線架橋体又は電子線架橋体で形成されていてもよい。また、芯材フィルムの表面はコロナ処理又はプラズマ処理されていてもよい。さらに、芯材フィルムは、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体(未架橋体)を押出成形することにより成膜されていてもよい。
【0019】
本発明の透明粘着シートは、光学部材の貼合せに適しており、例えば、タッチパネル、液晶表示パネル及び保護パネルから選択された2つのパネルを貼合せるために用いてもよい。
【0020】
本発明は、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体(未架橋体)で形成された芯材フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を積層することにより、透明粘着シートを製造する方法を包含する。また、本発明は、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体(未架橋体)を押出成形して得られたフィルムに、活性エネルギー線(放射線、電子線など)を照射して架橋することにより芯材フィルムを形成し、この芯材フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を積層することにより、透明粘着シートを製造する方法も包含する。
【0021】
なお、本明細書中、「鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体」は、特に断りのない限り、未架橋体を意味する。また、本明細書中、数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、室温での弾性率が高いため、延性に優れ、リワーク性を向上できると共に、貼合せ時の工程条件で弾性率が低下するため、被着体の表面に段差があっても追従できる。また、本発明では、貼り合わせ加工時に適度な柔軟性を有しており、透明粘着シートの厚みが大きくても段差追従性に優れる。そのため、被着体同士の間隙が大きくても、両被着体を隙間なく接着できる。上記のように、本発明では、被着体との密着性に優れ、さらに耐久性にも優れる。例えば、過酷な条件下(高温多湿下など)にあっても、被着体との界面に気泡が生成するのを有効に防止できる。本発明では、特定の芯材を有するため、打ち抜き加工性にも優れている。また、本発明では、光学等方性に優れており、表示装置を構成する光学部材の貼合せに用いても、表示装置の表示性を阻害しない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の透明粘着シート(又は段差追従性粘着シート)は、芯材フィルムと、この芯材フィルムの少なくとも一方の面(特に、両面)に形成された粘着剤層とを備えている。
【0024】
(芯材フィルム)
芯材フィルムは、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体(環状オレフィン系樹脂又は環状オレフィン系エラストマー)の未架橋体又は架橋体で形成(又は構成)されている。
【0025】
鎖状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどの鎖状C2−10オレフィン類などが挙げられる。これらの鎖状オレフィンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの鎖状オレフィンのうち、好ましくはα−鎖状C2−8オレフィン類であり、さらに好ましくはα−鎖状C2−4オレフィン類(特に、エチレン)である。
【0026】
環状オレフィンは、環内にエチレン性二重結合を有する重合性の環状オレフィンであればよく、単環式オレフィン(例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの環状C4−12シクロオレフィン類など)であってもよいが、多環式オレフィンが好ましい。
【0027】
代表的な多環式オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン(2−ノルボルネン)、置換基を有するノルボルネン、シクロペンタジエンの多量体、置換基を有するシクロペンタジエンの多量体などが例示できる。前記置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、シアノ基、アミド基、ハロゲン原子などが例示できる。これらの置換基は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0028】
具体的に、多環式オレフィンとしては、例えば、2−ノルボルネン;5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネンなどのアルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデン−2−ノルボルネンなどのアルケニル基を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネンなどのアルコキシカルボニル基を有するノルボルネン類;5−シアノ−2−ノルボルネンなどのシアノ基を有するノルボルネン類;5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネンなどのアリール基を有するノルボルネン類;ジシクロペンタジエン;2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン、メタノオクタヒドロフルオレン、ジメタノオクタヒドロナフタレン、ジメタノシクロペンタジエノナフタレン、メタノオクタヒドロシクロペンタジエノナフタレンなどの誘導体;6−エチル−オクタヒドロナフタレンなどの置換基を有する誘導体;シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物、シクロペンタジエンの3〜4量体などが例示できる。
【0029】
これらの環状オレフィンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの環状オレフィンのうち、ノルボルネン類などの多環式オレフィンが好ましい。
【0030】
環状オレフィンの割合は、鎖状オレフィンと環状オレフィンとの合計に対して、例えば、15〜50モル%、好ましくは16〜45モル%、さらに好ましくは17〜40モル%程度であり、通常、15〜40モル%程度である。環状オレフィンの割合が小さすぎると、結晶性が高くなり、透明性が低下し、環状オレフィンの割合が大きすぎるとガラス転移点が高くなる。上記割合は、架橋性を向上させる点(加温することなく活性エネルギー線架橋できる点など)から、例えば、15モル%を超えて40モル%以下、好ましくは16〜30モル%、さらに好ましくは17〜25モル%(例えば、18〜22モル%)程度であってもよい。
【0031】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体は、他の共重合単位を含んでいてもよい。他の共重合単位を形成する共重合体性単量体としては、例えば、ビニルエステル系単量体(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど);ジエン系単量体(例えば、ブタジエン、イソプレンなど);(メタ)アクリル系単量体[例えば、(メタ)アクリル酸、又はこれらの誘導体((メタ)アクリル酸エステルなど)など]などが例示できる。これらの共重合性単量体は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの共重合性単量体の含有量は、共重合体に対して、例えば、5モル%以下、好ましくは1モル%以下である。
【0032】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体は、付加重合により得られた樹脂であってもよく、開環重合(開環メタセシス重合など)により得られた樹脂であってもよい。また、開環メタセシス重合により得られた重合体は、水素添加された水添樹脂であってもよい。鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の重合方法は、慣用の方法、例えば、メタセシス重合触媒を用いた開環メタセシス重合、チーグラー型触媒を用いた付加重合、メタロセン系触媒を用いた付加重合(通常、メタセシス重合触媒を用いた開環メタセシス重合)などを利用できる。
【0033】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の結晶化度は、10%以下程度の範囲から選択でき、例えば、0〜10%、好ましくは0.01〜5%、さらに好ましくは0.05〜3%(例えば、0.1〜1%)程度である。本発明では、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体は非晶性であり、透明性(導光性)に優れている。
【0034】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体のガラス転移温度(Tg)は、10〜100℃程度の範囲から選択でき、例えば、15〜90℃、好ましくは20〜80℃、さらに好ましくは25〜75℃程度である。また、上記のガラス転移温度は、柔軟性と耐熱性とを高度に両立する点から、例えば、15〜50℃、好ましくは20〜40℃、さらに好ましくは25〜35℃程度であってもよい。さらに、上記のガラス転移温度は、透明性の点から、30℃を超える範囲であってもよく、例えば、31〜50℃、好ましくは32〜45℃、さらに好ましくは33〜40℃程度であってもよい。なお、ガラス転移温度は、単量体の割合、単量体の置換基、重合体の分子量などを調整して制御することができる。ガラス転移温度は、慣用の方法、例えば、示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0035】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の屈折率は、23℃、波長589nmにおいて、1.48〜1.58、好ましくは1.50〜1.56、さらに好ましくは1.51〜1.55程度である。本発明では、ポリエステル樹脂などと比べて、光学部材(ガラス板など)との屈折率差を低減できるため、表示装置を構成する光学部材の貼合せに利用しても、光学部材との界面での光の反射を有効に防止でき、表示装置の表示性を阻害しない。
【0036】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、例えば、1000〜150000、好ましくは5000〜120000、さらに好ましくは10000〜100000(特に、20000〜90000)程度である。
【0037】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体は、本発明の効果を阻害しない限り、他の樹脂成分と組み合わせてもよい。他の樹脂成分は、通常、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体に相溶又は架橋する樹脂又はエラストマーであり、鎖状オレフィン系樹脂、例えば、前記例示の鎖状オレフィン[例えば、エチレンやプロピレンなどのα−鎖状C2−4オレフィン(特にエチレン)など]と必要により共重合性単量体[例えば、前記例示のビニルエステル系単量体、ジエン系単量体、(メタ)アクリル系単量体など]とを重合成分とする重合体などが例示できる。代表的な鎖状オレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などである。これらの鎖状オレフィン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの鎖状オレフィン系樹脂のうち、低、中又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0038】
鎖状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は、特に制限されず、−150℃〜10℃程度の範囲から選択でき、例えば、−110〜0℃、好ましくは−80〜−5℃、さらに好ましくは−50〜−10℃程度であってもよい。本発明では、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体と鎖状オレフィン系樹脂とを組み合わせることにより、ガラス転移温度を調整することもできる。
【0039】
鎖状オレフィン系樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、例えば、5000〜300000、好ましくは10000〜200000、さらに好ましくは15000〜150000程度であってもよい。
【0040】
他の樹脂成分(鎖状オレフィン系樹脂など)の割合は、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体100重量部に対して、0.01〜100重量部程度の範囲から選択でき、例えば、0.05〜50重量部、好ましくは0.1〜30重量部程度であってもよく、25重量部以下(例えば、0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部程度)であってもよい。なお、他の樹脂成分が鎖状オレフィン系樹脂であるとき、含有量が多すぎると透明性が低下する。
【0041】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体は、慣用の方法により架橋してもよい。なお、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の成形体に対して架橋処理を行ってもよい。架橋方法としては、熱処理する方法、活性エネルギー線[例えば、紫外線、放射線(γ線、X線など)、電子線など]を照射する方法などが例示できる。これらの架橋方法のうち、架橋剤や架橋促進剤(助剤)が不要であり、安定性の高い架橋体を効率よく製造できる点から、活性エネルギー線(特に、電子線)を照射する方法が好ましい。本発明では、環状オレフィン系樹脂のTgが低いため、活性エネルギー線の照射において、加熱することなく、常温(例えば、10〜30℃程度の温度)で環状オレフィン系樹脂を架橋でき、架橋密度も向上できる。
【0042】
活性エネルギー線の照射量(線量)は、例えば、100〜500kGy(グレイ)(例えば、150〜400kGy)程度の範囲から選択でき、架橋密度を高めて耐熱性や耐久性を向上させる点から、200kGy以上であってもよく、例えば、200〜500kGy、好ましくは220〜450kGy、さらに好ましくは230〜430kGy(特に250〜400kGy)程度であってもよい。
【0043】
活性エネルギー線の加速電圧は、例えば、100〜5000kV(例えば、150〜400kV)程度の範囲から選択でき、耐熱性や耐久性を向上させる点から、150kV以上であってもよく、例えば、160〜3500kV、好ましくは170〜3000kV、さらに好ましくは180〜1000kV程度であってもよい。
【0044】
なお、活性エネルギー線の照射は、空気中で行ってもよく、必要であれば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなど)雰囲気中で行ってもよい。
【0045】
このように、芯材フィルムは、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の未架橋体又は架橋体で形成されていてもよい。後述の粘着剤層との親和性を向上する点、熱による膨張収縮を制御できる点、高温多湿下であっても被着体との界面(特に、凸部を有する被着体の場合、段差近傍)での浮き剥がれを防止し、気泡の生成を抑制できる点などから、芯材フィルムは、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の架橋体(例えば、放射線架橋体又は電子線架橋体、特に電子線架橋体)で形成されているのが好ましい。
【0046】
架橋体のガラス転移温度は、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体(未架橋体)と同様の範囲から選択できる。このように、架橋後もガラス転移温度の上昇が少なく、架橋前のガラス転移温度との温度差は50℃以下であってもよく、例えば、0〜40℃、好ましくは0〜30℃、さらに好ましくは0〜20℃(特に0〜10℃)程度であり、架橋後も高い柔軟性を保持している。
【0047】
架橋体における架橋の度合いは、トルエンを用いて3時間還流させる方法で測定したゲル分率で示すことができる。架橋体のゲル分率は、例えば、5重量%以上であってもよく、例えば、10〜99重量%(例えば、30〜98重量%)、好ましくは50〜97重量%、さらに好ましくは80〜95重量%(特に85〜93重量%)程度であってもよい。詳細には、ゲル分率は、実施例で記載の測定方法で測定できる。なお、架橋密度は、活性エネルギー線の照射条件などで制御できるが、環状オレフィンの割合を特定の範囲に調整することにより、ゲル分率を80重量%以上(特に85重量%以上)にも調整できる。その結果、架橋体の架橋密度は高くなり、耐熱性や耐久性を向上できる。
【0048】
芯材フィルムは、環状オレフィン系樹脂を慣用のフィルム成膜法、例えば、流延法、押出成形法、ブロー成形法などにより成膜して製造できる。本発明では、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体を含有するため、押出成形法により成膜しても、高い光学等方性が得られる。また、芯材フィルムは、後述の粘着剤層との接着性を向上するため、コロナ処理やプラズマ処理などの表面処理を施してもよい。なお、芯材フィルムは、必要であれば、一軸又は二軸延伸機を用いて所定の倍率で延伸してもよい。
【0049】
芯材フィルムの室温(例えば、25℃)での貯蔵弾性率は、例えば、5×10〜5×10Pa、好ましくは8×10〜4×10Pa、さらに好ましくは1×10〜3×10Pa程度である。本発明では、室温での弾性率が比較的大きいため、リワーク性に優れる。
【0050】
芯材フィルムの加工(貼付)温度近傍(例えば、60℃)での貯蔵弾性率は、例えば、1×10〜1×10Pa、好ましくは1×10〜5×10Pa、さらに好ましくは1×10〜1×10Pa程度である。このように、芯材フィルムは、透明粘着シートの加工温度での弾性率が小さいため、段差追従性に優れる。なお、加工温度は、透明粘着シートを被着体に貼合せる時の温度を意味する。また、加工温度近傍とは、加工温度をTとするとき、例えば、T℃〜(T+20)℃、好ましくは(T+5)℃〜(T+15)℃程度を意味する。
【0051】
本発明では、段差追従性とリワーク性とを両立させるため、芯材フィルムの加工温度近傍での貯蔵弾性率に対する室温での貯蔵弾性率の比を特定範囲に調整することを特徴としている。すなわち、加工温度近傍(例えば、60℃)での貯蔵弾性率1に対して、室温(例えば、25℃)での貯蔵弾性率が、50〜5×10(例えば、60〜1×10)、好ましくは70〜1000(例えば、80〜500)、さらに好ましくは90〜300(例えば、100〜280)程度である。上記の貯蔵弾性率比が、小さすぎると段差追従性、リワーク性が低下する。
【0052】
芯材フィルムの室温での100%伸長時の引張応力は、例えば、15〜100MPa、好ましくは17〜80MPa、さらに好ましくは20〜60MPa程度であってもよい。引張応力が小さすぎると、リワーク性が低下する。
【0053】
芯材フィルムは、光学等方性に優れ、波長590nmにおけるフィルム面内のレタデーションは、厚み100μm換算で、例えば、10nm以下(例えば、0.1〜5nm)、好ましくは0.5〜3.5nm(例えば、1〜3nm)、さらに好ましくは1.5〜2.5nm程度である。
【0054】
芯材フィルムは、透明性に優れ、全光線透過率は、JIS K7105に準拠した方法(厚み100μm)で、例えば、80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、90〜99%)であってもよい。また、芯材フィルムのヘーズ(曇価)は、JIS K7105に準拠した方法(厚み100μm)で、例えば、50%以下であってもよく、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0〜3%(特に0〜1%)程度である。
【0055】
芯材フィルムの表面エネルギー(又は表面張力)は、JIS K6768に準拠して、例えば、30〜80mN/m、好ましくは35〜75mN/m、さらに好ましくは40〜70mN/m(例えば、45〜65mN/m)程度であってもよい。芯材フィルムの表面エネルギーが小さすぎると、粘着剤層との接着性が低下する。
【0056】
芯材フィルムの厚みは、例えば、20〜400μm、好ましくは30〜350μm、さらに好ましくは40〜300μm程度であってもよく、100μm以上(例えば、100〜400μm)、好ましくは150μm以上(例えば、200〜350μm)程度であってもよい。本発明では、芯材フィルムの厚みが大きくても貼り合わせ加工温度では適度な柔軟性を有するため、十分に段差追従できる。
【0057】
なお、光学部材を貼合せるために用いられる透明粘着シート(両面粘着シート)では、芯材フィルムは、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)テープ基材に相当する。
【0058】
(粘着剤層)
粘着剤層は、被着体(光学部材など)に対して粘着性を有し、かつ透明である限り、特に制限されない。粘着剤層は、慣用の粘着剤、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤などで構成される。これらの粘着剤は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの粘着剤のうち、アクリル系粘着剤が汎用される。
【0059】
アクリル系粘着剤は、通常、(メタ)アクリル系共重合体(未架橋体又は架橋体)を含んでいる。(メタ)アクリル系共重合体を形成する(メタ)アクリル系単量体[架橋性基を有しない(メタ)アクリル系単量体]は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレートなどの直鎖状又は分岐鎖状C1−20アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのC5−10シクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレートなどの橋架け環式(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレートなどのC6−10アリール(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0060】
(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル系共重合体を架橋可能な官能基(架橋性基)を有していてもよい。架橋性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、アミド基などが例示できる。(メタ)アクリル系単量体は、上記の架橋性基を単独で又は二種以上組み合わせて有していてもよい。
【0061】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−4アルキル(メタ)アクリレート;(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)C2−4アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ乃至ペンタ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0062】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸;β−カルボキシエチル(メタ)アクリレートなどのカルボキシC2−6アルキル(メタ)アクリレート;ジカルボン酸とヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体とのモノエステルなどが例示できる。
【0063】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示でき、アミド基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリルアミド;N,N−ジC1−4アルキル(メタ)アクリルアミドなどのN−置換(メタ)アクリルアミドなどが例示できる。
【0064】
これらの(メタ)アクリル系単量体は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの(メタ)アクリル系単量体のうち、少なくともC1−10アルキルアクリレート(例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのC2−8アルキルアクリレート)が好ましい。また、C1−10アルキルアクリレートと架橋性基を有する(メタ)アクリル系単量体[例えば、ヒドロキシル基を有するアクリル系単量体及び/又はカルボキシル基を有するアクリル系単量体、特に、ヒドロキシルC2−6アルキルアクリレート]との組み合わせも好ましい。
【0065】
粘着剤は、慣用の添加剤、例えば、架橋剤、安定化剤、難燃剤、粘着付与剤(タッキファイヤー)などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0066】
上記添加剤のうち、架橋剤としては、架橋性基に応じて適宜選択でき、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤などが例示できる。これらの架橋剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの架橋剤のうち、ヒドロキシル基などの架橋性基に対して、イソシアネート系架橋剤が汎用される。
【0067】
イソシアネート系架橋剤としては、複数のイソシアネート基を有していれば特に制限されず、例えば、脂肪族ポリイソシアネート[例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどのジイソシアネート;1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートなどのトリイソシアネートなど]、脂環族ポリイソシアネート[例えば、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ビス(イソシアナトフェニル)メタンなどのジイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネートなどのトリイソシアネートなど]、芳香族ポリイソシアネート[例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)メタン、トルイジンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトフェニル)プロパンなどのジイソシアネート;トリフェニルメタントリイソシアネートなどのトリイソシアネートなど]、これらのポリイソシアネートの二量体、三量体、アダクト体、ビウレット体などが例示できる。
【0068】
これらのイソシアネート系架橋剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのイソシアネート系架橋剤のうち、芳香族ポリイソシアネート系架橋剤[例えば、キシリレンジイソシアネート系架橋剤(例えば、キシリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンなどのアルカンポリオールで変性されたキシリレンジイソシアネートなど)など]が好ましい。
【0069】
架橋剤の割合は、粘着剤中の架橋成分の架橋性基の割合に応じて適宜選択でき、例えば、架橋成分[(メタ)アクリル系共重合体など]100重量部に対して、0.001〜10重量部、好ましくは0.005〜5重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部程度であってもよい。
【0070】
粘着剤層の厚み(両面に粘着剤層を形成する場合、各層の厚み)は、例えば、5〜100μm、好ましくは10〜90μm、さらに好ましくは20〜80μm(例えば、30〜70μm)程度であってもよい。
【0071】
芯材フィルムと粘着剤層(両面に粘着剤層を形成する場合、各層の厚み)との厚み比は、段差追従性及びリワーク性を両立する点から、芯材フィルム/粘着剤層=1/10〜10/1、好ましくは1/2〜8/1、さらに好ましくは1/1〜5/1程度であってもよい。
【0072】
粘着剤層は、市販品[例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)テープなど]を利用してもよく、慣用の方法により調製してもよい。例えば、粘着剤層は、粘着剤と必要により溶媒とを含む粘着剤組成物を剥離性基材又は前記芯材フィルムに塗布することにより形成できる。塗布方法としては、スピンコート、スプレーコート、バーコート、ナイフコート、ロールコート、ブレードコート、ダイコート、グラビアコート法、パートコート法などが例示できる。なお、塗布後は、必要に応じて乾燥し、粘着剤が架橋剤を含む場合、慣用の方法により架橋される。
【0073】
透明粘着シートは、芯材フィルムと粘着剤層とを備えていればよく、他の任意の層(機能層)を積層してもよい。例えば、透明粘着シートは、被着体以外の部材への接着を防止するため、粘着剤層の上に剥離シート[例えば、離型剤(シリコーン樹脂など)で表面処理されていてもよい紙又はプラスチックシートなど]を積層してもよい。
【0074】
また、透明粘着シートは、粘着剤層の上に、保護層[例えば、ガラス板、透明プラスチックフィルム(アクリル系樹脂フィルムなど)など]、光学的機能層[例えば、ハードコートフィルム、防眩性フィルム(AGフィルム)、反射防止フィルム(ARフィルム)、偏光フィルム、位相差フィルム、光学等方性フィルム、透明導電性フィルム(ITOフィルム)、電磁防止フィルム(EMIフィルム)、視野角制御フィルムなど]などが積層されていてもよい。さらに、透明粘着シートは、粘着剤層と保護層又は光学的機能層とで構成された積層単位(繰り返し単位)を複数有していてもよい。
【0075】
本発明の透明粘着シートの全光線透過率及びヘーズは、芯材フィルムと同様の範囲から選択でき、透明性に優れている。また、本発明の透明粘着シートは、透明性に加えて、粘着性、リワーク性に優れるため、例えば、光学部材の貼合せに好適に利用できる。例えば、タッチパネルを備えた表示装置の場合、タッチパネル、表示パネル、及び保護パネルから選択された2つのパネルの貼合せに好適に利用できる。
【0076】
また、本発明の粘着シートは、段差追従性にも優れるため、表面に凸部(フラットな表面から略直角に立ち上がる側面を有する凸部など)を有する部材の貼合せにも好適に利用できる。このような部材としては、例えば、印刷層(黒色印刷層など)が形成された光学部材(保護パネルなど)が挙げられる。表面に凸部を有する部材において、凸部の平面形状(厚み方向における断面形状)は、特に制限されず、例えば、半円形(山形)、多角形(三角形、四角形など)などであってもよい。凸部の高さは、1〜20μm(例えば、3〜18μm)、好ましくは5〜15μm(例えば、6〜14μm)、さらに好ましくは7〜13μm(例えば、8〜12μm)程度であってもよい。本発明では、凸部の高さが高くても追従でき、被着体との密着性を向上できる。
【0077】
本発明の透明粘着シートは、慣用の方法、例えば、環状オレフィン系樹脂を成膜して芯材フィルム(又はその前駆体)を形成する工程と、必要により芯材フィルム前駆体を架橋して芯材フィルムを形成する工程と、
必要により芯材フィルムを表面処理(コロナ処理、プラズマ処理など)する工程と、芯材フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を積層する工程とを経て製造できる。
【0078】
なお、芯材フィルムと粘着剤層は、慣用の方法、例えば、芯材フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層を形成する方法(ウェットラミネート法)、芯材フィルムと粘着シートとを貼合せる方法(ドライラミネート法)などが例示できる。
【0079】
本発明は、透明粘着シート(両面粘着シート)で光学部材を貼合せた電子デバイス、例えば、タッチパネル(抵抗膜式、静電容量式など)を備えた表示装置も含まれる。
【0080】
抵抗膜式のタッチパネルを備えた表示装置は、通常、透明粘着シートの一方の面にハードコート層が積層され、他方の面にハードコート層又は透明樹脂層が積層された積層単位を有している。代表的な形態としては、ハードコート層/透明粘着シート/ハードコート層/透明導電層を順次積層した第1の積層単位と、透明導電層/ハードコート層/透明粘着シート/透明樹脂層/透明粘着シート/表示層[液晶表示素子(LCD)モジュール]を順次積層した第2の積層単位とを、各々の透明導電層を互いに対向させて積層した積層体などが例示できる。
【0081】
静電容量式のタッチパネルを備えた表示装置は、通常、透明粘着シートの一方の面にガラス板が積層され、他方の面に透明導電層(透明導電層が形成されたガラス板)が積層された積層単位を有している。代表的な形態としては、ガラス板/透明粘着シート/透明導電層/ガラス板/透明粘着シート/透明導電層/ガラス板/透明粘着シート/表示層(LCDモジュール)をこの順序で積層した積層体などが例示できる。
【0082】
なお、被着体との貼合せにおいて、貼合せ温度は、粘着剤層が粘着力を発現できる温度であれば特に制限されず、例えば、40〜60℃、好ましくは45〜55℃程度である。また、貼合せは、常圧又は加圧下(例えば、1.5〜5MPa、好ましくは2〜4MPa程度)で行ってもよい。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例の各物性における評価方法は以下の通りである。
【0084】
[粘弾性測定]
実施例及び比較例の芯材について、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、RSA−III)を用い、昇温速度5℃/分及び角周波数1Hzの条件で、貯蔵弾性率(E′)及び損失弾性率(E”)を測定した。
【0085】
[引張試験]
実施例及び比較例の芯材について、流れ(MD)方向にJIS2号ダンベル片(幅6mm)を打ち抜き、23℃、50%RH、引張速度500mm/分で引張試験を行った。
【0086】
[ガラス転移温度及び融点]
実施例及び比較例の芯材について、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製「DSC6200」)を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分で測定を行った。
【0087】
[ゲル分率]
実施例及び比較例の芯材を500mg秤り取って冷却管を備えた100mlのナス型フラスコに入れ、さらにトルエン50mlを加えて、還流温度にて3時間攪拌した。その後、混合液を濾過し、濾過残渣を減圧乾燥後、計量してゲル分率を求めた。
【0088】
[濡れ張力試験]
実施例及び比較例の芯材について、JIS K6768に準拠して、濡れ張力(表面エネルギー)を評価した。
【0089】
[面内レタデーション]
実施例及び比較例の芯材の面内レタデーションを、位相差測定装置(王子計測器社製、KOBRA−WPR)を用いて波長590nmにおいて測定した。
【0090】
[段差吸収性]
平坦なガラス板に長さ50mm、幅5mm、厚さ10μmの直線状の黒色印刷を行い、段差を形成した。この段差つきガラス板の全面に対して、実施例及び比較例で得た積層粘着シートを空気が入らないように2kgローラーで一往復圧着し、オートクレーブ処理(50℃、3Mpa、30分)を行い、黒色印刷部の空気溜りの有無を目視にて観察した。評価は全く空気がなく貼合できていれば合格(○)とし、少しでも空気層が確認でき、浮きが見られていれば不合格(×)とした。
【0091】
[耐発泡性]
長さ50mm、幅50mmの平坦なガラス板と長さ50mm、幅50mmの平坦なPETフィルムの間に実施例及び比較例で得た積層粘着シートを空気が入らないように2kgローラーで一往復圧着し、オートクレーブ処理(50℃、3Mpa、30分)を行い、気泡が抜けたことを確認した。上記一体型のサンプルを85℃、85%湿度の恒温恒湿下の環境で150時間放置し、目視にてサンプルを観察した。評価はPETフィルム側からサンプルを目視にて観察した際に、1mmφ以上の気泡がない状態を良好(○)、1mmφ以上の気泡(4個未満)が存在する状態を可(△)、1mmφ以上の気泡(4個以上)が存在する場合を不可(×)とした。
【0092】
[加工性]
実施例及び比較例の積層粘着シートを5枚重ねてNTカッターでA4サイズに裁断する。その際、目視により端部からの糊染み出しがなく、端部変形がなければ合格(○)、糊染み出し、端部変形があれば不合格(×)とした。
【0093】
[リワーク性]
長さ50mm、幅50mmの平坦なガラス板に実施例及び比較例で得た積層粘着シートを空気が入らないように2kgローラーで一往復圧着し、オートクレーブ処理(50℃、3Mpa、30分)を行いサンプルを作製した。積層粘着シートをガラス板から150度方向に500mm/分の速度で剥がした際に、糊残りがなく、芯材が破断しなければ合格(○)、糊残りがあり、芯材が破断すれば不合格(×)とした。
【0094】
[全光線透過率]
実施例及び比較例の積層粘着シートについて、JIS K7105に準拠して、全光線透過率を測定した。
【0095】
[ヘーズ]
実施例及び比較例の積層粘着シートについて、JIS K7136に準拠して、ヘーズメーター(日本電色工業(株)製、NDH−500)を用いて、ヘーズを測定した。
【0096】
調製例1 粘着層(A)の調製
アクリル酸n−ブチル79重量部、アクリル酸メチル20重量部、アクリル酸ヒドロキシエチル1重量部を共重合して得たアクリル酸エステル共重合体(分子量:100万)100重量部に、トルエン及びキシリレンジイソシアネート系3官能性アダクト体(綜研化学社製、製品名「TD−75」濃度75重量%)を0.1重量部添加し、混合して、固形分25重量%の粘着層(A)形成用塗工液を調製した。剥離フィルムにダイコーターを用いて乾燥後の膜厚が50μmになるように前記塗工液を塗布し、120℃で1分乾燥後、剥離フィルムを貼合して粘着層(A)を得た。
【0097】
実施例1
環状オレフィン系樹脂(Topas Advanced Polymers GmbH社製、商品名「TOPAS9903」、数平均分子量69000、ガラス転移温度33℃、ノルボルネン含量20モル%)を小型押出機((株)プラスチック工学研究所製、20mmφ、L/D=25)に巾150mmのTダイを取り付け、引取速度を調整し、厚み100μmのフィルム状試験片を作製した。得られたフィルムを芯材として、その両面に一方の剥離フィルムを剥離した粘着層(A)を貼り合わせて積層粘着シートを作製した。得られた試験片の特性を評価した結果を表1に示す。
【0098】
実施例2
実施例1で得られた芯材を窒素雰囲気中、常温で、EB照射装置(岩崎電気(株)製「TYPE;CB250/15/180L」)を用いて、加速電圧200kV、線量350kGyで電子線を照射して架橋した。得られたフィルムを芯材としてその両面に一方の剥離フィルムを剥離した粘着層(A)を貼り合わせて積層粘着シートを作製した。得られた試験片の特性を評価した結果を表1に示す。
【0099】
実施例3
実施例2で得られた芯材フィルムの両面に、電極がセラミックに覆われたコロナ処理装置(春日電機(株)製)を用い、出力300W、搬送速度5m/分の条件で2回放電処理を実施した。さらに得られたフィルムを芯材としてその両面に一方の剥離フィルムを剥離した粘着層(A)を貼り合わせて積層粘着シートを作製した。得られた試験片の特性を評価した結果を表1に示す。
【0100】
実施例4
フィルムの厚みを200μmとした以外、実施例3と同様の手順で、積層粘着シートを作製した。
【0101】
比較例1
PETフィルム(東洋紡績(株)社製、コスモシャインA4300、厚み100μm)を芯材としてその両面に一方の剥離フィルムを剥離した粘着層(A)を貼り合わせて積層粘着シートを作製した。得られた試験片の特性を評価した結果を表1に示す。
【0102】
比較例2
無黄変ポリウレタンフィルム(ATT(株)社製、RP95UN−XP、厚み100μm)を芯材としてその両面に一方の剥離フィルムを剥離した粘着層(A)を貼り合わせて積層粘着シートを作製した。得られた試験片の特性を評価した結果を表1に示す。
【0103】
比較例3
芯材を用いることなく、粘着層(A)を二枚貼合して積層粘着シートを作製した。得られた試験片の特性を評価した結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例では貯蔵弾性率比が大きく、段差吸収性とリワーク性とを両立できる。特に、実施例3及び4では、高温多湿下でも浮き剥がれを防止でき、気泡の生成が著しく抑制されている。また、実施例では、適度な応力を有し、面内レタデーションが小さく、光学等方性に優れる。さらに、実施例では、適度な表面エネルギーを有し、粘着剤層との接着性にも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の透明粘着シートは、段差追従性及びリワーク性に優れるため、各種部材(特に、表面に凸部を有する部材)の貼合せに適している。また、透明粘着シートは、光学的特性にも優れるため、各種光学部材の貼合せに利用できる。光学部材としては、例えば、光学ガラス、光学レンズ、光学フィルム(例えば、ハードコートフィルム、防眩性フィルム、反射防止フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、光学等方性フィルム、透明導電性フィルム、電磁防止フィルム、視野角制御フィルムなど)などが例示できる。本発明の透明粘着シートは、上記光学部材のうち、同種又は異種の光学部材を接着するために利用できる。また、本発明の透明粘着シートは、上記光学部材を備えた電子デバイス、例えば、表示装置[例えば、フラットパネルディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL)を有する表示装置、タッチパネル(光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式など)を備えた上記表示装置など]、これらの表示装置を備えた電子デバイス[例えば、携帯電話(スマートフォンなど)、電子ペーパー、PDA(Portable Device Assistance)など]の構成部材として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の未架橋体又は架橋体で形成された芯材フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層が形成された透明粘着シートであって、
前記芯材フィルムの60℃での貯蔵弾性率が1×10〜1×10Paであり、かつ60℃での貯蔵弾性率1に対して25℃での貯蔵弾性率が50〜5×10である透明粘着シート。
【請求項2】
芯材フィルムが、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の放射線架橋体又は電子線架橋体で形成されている請求項1記載の透明粘着シート。
【請求項3】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体のガラス転移温度が10〜50℃である請求項1又は2記載の透明粘着シート。
【請求項4】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体において、環状オレフィンの割合が、鎖状オレフィンと環状オレフィンとの合計に対して15〜50モル%である請求項1〜3のいずれかに記載の透明粘着シート。
【請求項5】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体の電子線架橋体で形成された芯材フィルムと、この芯材フィルムの少なくとも一方の面にアクリル系粘着剤層とを備えた透明粘着シートであって、
前記鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体のガラス転移温度が30℃を超え、かつ50℃以下であり、
前記鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体において、環状オレフィンの割合が、鎖状オレフィンと環状オレフィンとの合計に対して15モル%を超え、かつ40モル%以下であり、
前記芯材フィルムの60℃での貯蔵弾性率が1×10〜5×10Paであり、かつ60℃での貯蔵弾性率1に対して25℃での貯蔵弾性率が70〜1000である透明粘着シート。
【請求項6】
芯材フィルムの室温での100%伸度時の引張応力が、15〜100MPaである請求項1〜5のいずれかに記載の透明粘着シート。
【請求項7】
波長590nmにおける芯材フィルムの面内レタデーションが、厚み100μm換算で、10nm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の透明粘着シート。
【請求項8】
芯材フィルムの厚みが20〜400μmである請求項1〜7のいずれかに記載の透明粘着シート。
【請求項9】
芯材フィルムの表面張力が40〜70mN/mである請求項1〜8のいずれかに記載の透明粘着シート。
【請求項10】
芯材フィルムの表面がコロナ処理又はプラズマ処理されている請求項1〜9のいずれかに記載の透明粘着シート。
【請求項11】
芯材フィルムが、鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体を押出成形することにより成膜されている請求項1〜10のいずれかに記載の透明粘着シート。
【請求項12】
タッチパネル、液晶表示パネル及び保護パネルから選択された2つのパネルを貼合せるために用いられる請求項1〜11のいずれかに記載の透明粘着シート。
【請求項13】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体で形成された芯材フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を積層することにより、請求項1記載の透明粘着シートを製造する方法。
【請求項14】
鎖状オレフィン−環状オレフィン共重合体で形成されたフィルムに、放射線又は電子線を照射して架橋することにより芯材フィルムを形成し、この芯材フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を積層することにより、請求項2〜12のいずれかに記載の透明粘着シートを製造する方法。

【公開番号】特開2013−67737(P2013−67737A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207941(P2011−207941)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】