説明

透湿性防水布帛

【課題】
透湿性や防水性といった機能性を付与した繊維布帛であっても、風合いが柔らかく、薄く軽い商品を提供する。また、通気性が必要な場合においては、透湿性、防水性を有していながら通気性をも有する透湿性防水布帛およびその製造方法を提供することである。
【解決手段】
繊維布帛の少なくとも片面に直径が1μm以下の繊維からなる層を有する透湿性防水布帛であり、直径が1μm以下の繊維の太さが、10nm以上、700nm以下であると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透湿性防水布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合羽やスキ−ウエア−、ウインドブレ−カ−をはじめ、靴材、ハウスラップ材など湿気を通過させるが、雨などの水の進入を防止する素材として透湿性防水布帛は様々なものに使用されている。
このような透湿性防水布帛として、例えば、繊維布帛の片面に、ポリウレタン重合体の樹脂溶液をコ−テイングし、湿式凝固して得られた微多孔質被膜を有するコ−テイング加工布(特許文献1)や繊維布帛の片面にウレタン樹脂の無孔質膜を貼り合せて得られた透湿性防水布帛(特許文献2)、さらに、延伸膨張させた多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(以下、PTFE膜という)を繊維布帛の片面に貼り合わせた透湿性防水布帛も知られている。
【特許文献1】特開昭55−80583
【特許文献2】特開平7−9631
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の透湿性防水布帛は、積層された樹脂層の影響を受け風合が硬化するといった問題点があった。また、樹脂層を付与することにより得られる繊維製品が樹脂の重みで重くなるといった問題点があった。近年、消費者のファッションに対する要望がより厳しくなり、透湿性や防水性といった機能性を付与するための繊維布帛として用いたものに対しても、風合いが柔らかく、軽い商品が望まれている。
【0004】
また、性能面では、ムレ感に対する快適性をより向上させるために、透湿性、防水性を有していながら通気性をも有する布帛が望まれているが、ウレタン樹脂の無孔質膜を付与したものは通気性がほとんどなく、また、微多孔質膜を有するウレタン樹脂被膜、PTFE膜を付与したものは通気性を有しているが、わずかであり、さらなる向上が望まれていた。
【0005】
また、環境面からも、樹脂層を形成する際に用いられている有機溶剤をなるべく用いない、または、用いた場合にも回収できるものが望まれている。例えば、湿式法で製造されるウレタン樹脂による微多孔質被膜では、ウレタン樹脂の溶媒として、ジメチルホルムアミド(以下、DMFという)が用いられている。この溶媒は、ウレタン樹脂を湿式凝固させる際に、凝固浴中の水の中に溶出するのであるが、この凝固浴中のDMFの回収を行なうためには、凝固液中でのDMFの濃度が低いため、多額の回収コストが必要となっていた。また、湿式法で製造されたウレタン樹脂による微多孔質被膜には、DMFが残留するといった問題も有しており、ウレタン樹脂の無孔質膜を貼り合わせて得られた透湿性防水布帛であっても、わずかではあるが、溶媒に用いたDMF等の有機溶剤が残留するといった問題も有している。
【0006】
また、PTFE膜についても環境面で好ましくない物質が生成されるといった問題がいわれており、コスト的にも多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜自体が非常に高価であるといった問題も有していた。
【0007】
従って、本発明では、上記問題を解決し、繊維布帛の風合いを硬化させず透湿性及び防水性を有する層を繊維布帛に付与し、環境面にも配慮した優れた透湿防水布帛を提供することを目的としている。
また、より好ましくは、通気性をも有する透湿性防水布帛を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、直径が1μm以下の繊維からなる層を用いることにより、課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の透湿性防水布帛は、繊維布帛の少なくとも片面に直径が1μm以下の繊維からなる層を有することを特徴とする。
【0009】
また、直径が1μm以下の繊維の太さが、10nm以上700nm以下であるとよい。
また、直径が1μm以下の繊維からなる層の厚みが、10μm以上200μm以下であるとよい。
また、直径が1μm以下の繊維からなる層の目付けが5g/m以上85g/m以下であるとよい。
【0010】
また、直径が1μm以下の繊維からなる層を形成する繊維が、アクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコ−ル、ナイロン、アセテート、絹成分、セルロ−ス、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリウレタン及びポリエステルのうち少なくとも一つからなるとよい。
また、塩化カルシウム法による透湿度が8000g/m・24hrs以上、酢酸カリウム法による透湿度が20000g/m・24hrs以上、耐水圧が350mmHO以上、フラジ−ル法による通気度が0.05cm/cm・s以上であるとよい。
【0011】
また、繊維布帛に対し、片面に直径が1μm以下の繊維からなる層が湿気硬化型樹脂により貼り合わされているとよい。
また、直径が1μm以下の繊維からなる層にさらに樹脂層が積層されていてもよい。
【0012】
本発明の透湿性防水布帛の製造方法として、離型紙上に積層された直径が1μm以下の繊維からなる層上に接着剤を塗布した後、接着剤を介し、直径が1μm以下の繊維からなる層と繊維布帛と貼り合わせ、その後、離型紙を剥離するとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の透湿性防水布帛は、繊維布帛の風合を損なわないため、ウインドブレ−カ−、コ−ト、ジャケット、スキ−ウエア−、スノ−ボ−ドウエア−、テントなどに用いても透湿性と防水性を有しながら消費者の嗜好に合わせた風合を有し軽い衣服を提供できる。
また、湿式凝固により形成した微多孔質膜や無孔質のウレタン樹脂膜を形成したもの、また、PTFE膜を用いたものに比べ環境面での負荷も小さい。
【0014】
さらに、透湿性と防水性に加え通気性を有しているものも提供できるため、衣服内等のムレを抑え、快適な環境を提供でき、衣服やテント、寝袋、ハウスラップ材に用いた場合においても、結露を抑え、重さも軽いより快適な環境を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に有用な繊維布帛の素材は、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、アセテ−ト、レ−ヨン、ポリ乳酸などの化学繊維、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維やこれらの混繊、混紡、交織品であってもよく、特に限定されるものではない。また、それらは織物、編物、不織布等いかなる形態であってもよい。
また、繊維布帛は、染色、捺染をはじめ、制電加工、撥水加工、吸水加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮蔽加工などを施してあってもよい。
【0016】
また、本発明に有用な直径が1μm以下の繊維からなる層とは、繊維の直径が1μm以下の繊維が積層されたものであり、積層された繊維と繊維の間に細かな隙間を有しており、目視上はフィルム上にみえるものである。
繊維の直径は、1μm以下であればよいが、好ましくは10nm以上、700nm以下が好ましい。繊維の直径が10nm未満であるとその繊維の紡糸時の制御が難しく製造コストが高くなりすぎる。また、繊維径が700nmを超えると、繊維と繊維の隙間が大きくなりすぎ防水性が低下したり、得られる透湿性防水布帛の風合いが硬化する可能性がある。
【0017】
このような繊維は、エレクトロスピニング法、フラッシュ紡糸法、複合紡糸法などの紡糸方法で得ることができるが細い繊維を製造する観点からはエレクトロスピニング法が好ましい。
また、エレクトロスピニング法での紡糸は、溶液法、溶融法が用いられ、繊維を構成する成分等によって、任意に選択することができる。
溶液法の場合、ポリビニルアルコールでは溶媒として水など、ナイロンでは溶媒としてギ酸など、シルク成分では溶媒としてギ酸など、特に、野蚕を原料として用いる場合には、有機溶剤も好ましい溶媒として挙げられる、ポリウレタンでは溶媒としてDMFなど、ポリエステルでは溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールなどの各成分を溶かすことができる公知のものが溶媒として用いることができる。
また、溶融法では、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタンなどの熱可塑性を有しているものでは、それぞれの融点に応じた温度に加熱し溶融させればよい。
【0018】
また、エレクトロスピニング法での紡糸により得られる層を用い透湿性防水布帛を得た場合、溶媒に各成分を溶解した溶液法を用いた場合であっても、従来の無孔質のウレタン樹脂膜や湿式凝固により形成した微多孔質膜を用いた透湿性防水布帛に比べほとんど有機溶剤が残留せず、有機溶剤の透湿性防水布帛への残留を防ぐとの観点からも優れている。
さらにまた、製造工程中においての環境面をも考慮すれば、溶融法が好ましい。
【0019】
また、直径が1μm以下の繊維からなる層には、1μm以下の様々な太さの繊維が混在したものであってもよく、また、要求される性能に悪影響がでない範囲で、1μm以上の繊維が含まれていてもよい。
なお、糸の太さは電子顕微鏡にて観察したものである。
【0020】
また、直径が1μm以下の繊維からなる層の厚みが、10μm以上、200μm以下が好ましい。10μm以未満となると充分な防水性がえられないことがあり、200μmを超えると得られる繊維布帛の風合が硬化してしまうことがある。より好ましくは50μm以下がよい。
なお、ここでの層の厚みは、電子顕微鏡にて観察したものをいう。
【0021】
また、直径が1μm以下の繊維からなる層の目付けが5g/m以上、85g/m以下であるとよい。5g/m未満であると、充分な防水性が得られないことがあり、85g/mを超えると軽量感が失われたり、風合が硬化する可能性がある。より好ましくは25g/m以下であるとよい。
【0022】
また、直径が1μm以下の繊維からなる層を形成する繊維が、アクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコ−ル、ナイロン、アセテート、絹成分、セルロ−ス、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリウレタン及びポリエステルのうち少なくとも一つからなるとよい。
直径が1μm以下の繊維からなる層は、これらのうちの一つの同一成分から構成されてもよいし、複数の成分からなってもよい。
上記の成分のうち、透湿性、伸縮性の観点からはポリウレタンが好ましく用いられる。
また、絹成分としては、野蚕、家蚕いずれに由来するものであってもよい。特に野蚕に関しては、抗菌効果、紫外線遮蔽効果、防シワ効果など家蚕に比べ、優れた様々な効果があることが知られており、このような機能性を付与したい場合には、野蚕を用いるとよい。
また、セルロースとしては、綿、麻、竹、トウモロコシなどに由来するものなどが好ましく挙げられる。
【0023】
本発明は、上記のような直径が1μm以下の繊維からなる層が繊維布帛の少なくとも片面に有する透湿性防水布帛をいうのであるが、透湿性防水布帛の塩化カルシウム法による透湿度が8000g/m・24hrs以上、酢酸カリウム法による透湿度が20000g/m・24hrs以上、耐水圧が350mmHO以上、フラジ−ル法による通気度が0.05cm/cm・s以上であるとよい。
【0024】
ここでいう塩化カルシウム法による透湿度とは、JIS L1099−1993B法にて測定した値をいう。また、塩化カルシウム法とは、JIS L1099−1993A−1法にて測定した値をいう。なお、塩化カルシウム法、酢酸カルシウム法ともに、24時間当りの透湿量に換算したものをいう。
【0025】
また、耐水圧は、JIS L1091−1998耐水度試験(静水圧法)耐水圧が2000mmHO以下のものをA法(低水圧法)、2000mmHOを超えるものをB法(高水圧法)に準じた方法で測定した値をいう。なお、A法(低水圧法)と比較しやすいように、B法(高水圧法)においても水柱の高さmmHOに換算し記した。
【0026】
また、フラジ−ル法による通気度とは、JIS L1096−1999通気性A法(フラジ−ル形法)にて測定した値をいう。
【0027】
塩化カルシウム法による透湿度は、8000g/m・24hrs以上、20000g/m・24hrs以下であるとよい。塩化カルシウム法にて透湿度が8000g/m・24hr未満であるとムレ感がますことがある。また、20000g/m・24hrsを超えた場合には、目的とする防水性が得られないことがある。
【0028】
耐水圧は、その用途に応じ任意に設定すればよいが、350mmHO以上あればよい。用途等に応じ、必要であれば2000mmHO以上、20000mmHO以上であってもよい。
レインコートのような用途であれば耐水圧は、350mmHO以上であればよい。また、スキーウエアーのように濡れた椅子などに腰掛ける用途などの場合は、2000mmHOを下回ると濡れた椅子などに座ると水が染みてくる可能性があるので、2000mmHO以上が好ましく、より好ましくは8000mmHO以上あるとよい。また、20000mmHOを超えると通気度が低下し、ムレ感がます場合があるので通気性を重要視する場合は、20000mmHO以下が好ましい。
【0029】
また、フラジ−ル法による通気度が0.05cm/cm・s以上、0.8cm/cm・s以下であるとよい。より好ましくは0.1cm/cm・s以上がよい。0.05cm/cm・sを下まわると使用状況に応じムレ感がます可能性があり、より好ましくは0.1cm/cm・s以上がよい。0.8cm/cm・sを超えると充分な防水性や防風性をえることができないことがある。
【0030】
繊維布帛と直径が1μm以下の繊維からなる層は、接着剤を介して貼り合わされていてもよいし、繊維布帛の上に直接、1μm以下の繊維を積層させてもよい。風合、通気度の観点からは、直接、積層させたものが好ましいが、透湿性防水布帛の性能の安定性からは、離型紙上などで直径が1μm以下の繊維からなる層を形成した後、接着剤を介して、繊維布帛と貼り合せたものがよい。
【0031】
なお、このとき用いられる接着剤は、ウレタン系、エポキシ系、メラミン系、ナイロン系など、また、一液型、二液型であってもよく公知接着剤を用いることができるが、1μm以下の繊維がウレタン樹脂からなるときは、層の耐溶剤性の観点より、溶剤を用いない接着剤、湿気硬化型樹脂、特に湿気硬化型ホットメルトタイプのウレタン樹脂が好ましい。
【0032】
また、本発明の透湿性防水布帛では、繊維布帛の片面に直径が1μm以下の繊維からなる層を有するものに、さらに、直径が1μm以下の繊維からなる層の繊維布帛の積層されていない面に他の繊維布帛を積層させてもよい。
【0033】
また、通気度がほとんど必要ない透湿性防水布帛が必要な場合には、繊維布帛の片面に直径が1μm以下の繊維からなる層の上に、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂などからなる樹脂層をさらに付与してもよい。このようにすれば、耐水圧が向上した透湿性防水布帛をえることができる。
【0034】
この際付与される樹脂層の厚みは、任意の厚みのものを付与できるが、風合いや軽量感の観点からなるべく薄いものがよい。例えば、1μm以上、100μm以下が好ましい。1μm以下であると耐水圧の向上がほとんどない場合があり防水性の向上との観点からは好ましくない。また、100μmを超えると、得られる透湿性防水布帛の風合や軽量感が損なわれてしまうことがある。ただし、直径が1μm以下の繊維からなる層の空隙を少し埋める程度のもので付与できる耐水圧を望む場合は、部分的に樹脂層を付与したり、さらに1μm未満の樹脂層を付与してもよい。
【0035】
次に本発明の好ましい一製造方法に従い説明をおこなう。
まず、離型紙上に上記のような直径が1μm以下の繊維からなる層を積層させる。この際、用いられる離型紙とは、紙製、フィルム製、紙とフィルムの積層品などをいい、繊維布帛に貼り合せた後、剥離できるものであれば、特に限定されるものではないが、離型紙の剥離時に、直径が1μm以下の繊維からなる層が裂けたりしないように、離型性に優れているものが好ましい。
より具体的には、離型紙としては、一般的に透湿性防水布帛用の無孔質のウレタン樹脂膜の製造に使用されている目付50〜150g/m程度の紙にポリプロピレンフィルムを貼り合せたものやそのような紙の表面にシリコ−ン樹脂をコ−テイングしたもの、フィルムのみからなるものなどを挙げることができ、また、離型紙の光沢にはミラ−、セミダル、フルダルなどのタイプのものがあるが、任意のものが使用できる。
【0036】
ここでエレクトロスピニング法により、離型紙上に直径が1μm以下の繊維からなる層を積層させる方法を用いれば、離型紙上に層を形成する際に、離型紙にかかる張力が小さいため、目付け50g/m未満のもの、5g/m以上、50g/m未満の離型紙であっても使用することができる。このため、離型紙単価をさげることができ生産コストの削減が可能となる。また、省資源、ゴミの観点からも環境面にすぐれている。
また、樹脂溶液を離型紙上に塗布するものではないため、ミラー、セミダル、フルダルといった観点での離型紙選択の必要性も小さくなるため、単一の離型紙を用いることができ、離型紙製造の観点からもコストの低減を図ることが可能となる。
【0037】
次に、離型紙上に積層された直径が1μm以下の繊維からなる層上に接着剤を塗布する。
このとき用いられる接着剤の塗布方法は、ナイフコ−タ、バ−コ−タ、グラビアコ−タなどを使用して、全面、線状、格子状または点状に塗布し、次いで、接着剤中に溶剤を含んでいる場合には、必要に応じ、60℃〜130℃程度の温度で溶剤を除去する。
通気度の観点からは、接着剤を点状に付与することが好ましい。
また、必要に応じ、接着剤を繊維布帛に塗布してもよい。
【0038】
次に、上記繊維布帛と離型紙上に積層された直径が1μm以下の繊維からなる層を接着剤を介して貼り合わせる。
貼り合わせ方法としては、直径が1μm以下の繊維からなる層と繊維布帛とを接着剤がこれらの間に挟まれるように重ね合わせ圧着させる。この際、接着剤のタイプに応じ、80℃〜150℃程度の温度をかけながら圧着させてもよい。
【0039】
貼り合せた後、必要に応じ、0〜100時間、30℃〜90℃の温度でエ−ジングを行なった後、離型紙を剥離する。
離型紙を剥離し、得られた透湿性防水布帛は、必要に応じ、フッ素系、シリコン系などの撥水剤を用い公知の撥水加工などをおこなっても良い。
【0040】
また、直径が1μm以下の繊維からなる層上にさらに樹脂膜を付与する場合は、離型紙を剥離した後、直径が1μm以下の繊維からなる層上にグラビアコ−タ、ナイフコ−タ、ダイコ−タ、ロ−タリ−捺染機等を用いた公知の方法により、樹脂液を塗布、必要に応じ乾燥し、樹脂層を付与することができる。また、別途離型紙上に形成した樹脂フィルムに接着剤を塗布し、当樹脂フィルムと直径が1μm以下の繊維からなる層を接着剤を介し貼り合わせ、直径が1μm以下の繊維からなる層上に樹脂層を形成するなどの方法で付与することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。また、例中の「%」は質量%である。
以下の実施例における評価は次の方法によった。
A 繊維の直径の測定
電子顕微鏡による観察により測定をおこなった。
B 層の厚み
電子顕微鏡による観察により測定をおこなった。
【0042】
C 目付け
100cmの大きさに試料をカットし、質量を測定し、1平方m当りの質量に換算した。
D 透湿度
酢酸カリウム法 JIS L1099−1993B法にて測定した。
塩化カルシウム法 JIS L1099−1993A−1法にて測定した。
なお、塩化カルシウム法、酢酸カルシウム法ともに、24時間当りの透湿量に換算した。
【0043】
E 耐水圧
JIS L1091−1998耐水度試験(静水圧法)耐水圧が2000mmHO以下のものをA法(低水圧法)、2000mmHOを超えるものをB法(高水圧法)に準じた方法で測定した。
水圧をかけることにより試験片が伸びる場合には、試験片の上にナイロンタフタ(2.54cm当りの縦糸と横糸の密度の合計が210本程度のもの)を重ねて、試験機に取り付けて測定をおこなった。
なお、単位は、A法(低水圧法)と比較しやすいように、B法(高水圧法)においても水柱の高さmmHOで換算し記した。
【0044】
F 通気度
JIS L1096−1999通気性A法(フラジ−ル形法)にて測定した。
G 風合、軽量感
得られる透湿性防水布帛とその製造に用いられた繊維布帛とを比較し、風合の変化、軽量感を手でさわって判断を行なった。
【0045】
H 溶剤残留量
試験片を40cmの大きさにカットし、その試験片を短冊状にさらにカットする。
5L用テドラーバックに短冊状にカットした試料をテドラ−バックにいれる。
窒素ガスをテドラ−バックに適量、注入した後、テドラ−バックを潰して中の窒素ガスを抜く。
再度、テドラ−バックに窒素ガスを2L注入する。
40℃のオーブンの中で2時間加熱する。
2時間後、テドラ−バックをオ−ブンから取り出し、テドラ−バック中の有機溶剤の濃度をガスクロマトグラフを用い測定する。

実施例1
【0046】
ポリエステルタフタ(たて糸83デシテッス/72フィラメント、よこ糸たて糸83デシテッス/72フィラメント。密度 たて114本/2.54cm、よこ92本/2.54cm)を分散染料で青色に染色し、アサヒガ−ドAG710 5%水溶液を用い撥水加工をおこなったものを繊維布帛として用いた。
【0047】
また、離型紙(ポリプロピレンコ−テイング品。目付け55g/m)上にウレタン樹脂からなる直径100nm〜500nmの繊維(エレクトロスピニング法、溶液法、溶媒DMF)が積層された厚さ25μm、目付け11g/mの層を直径が1μm以下の繊維からなる層としてもちいた。
グラビアコ−タを用い湿気硬化型ホットメルトタイプウレタン樹脂 タイホ−スNH300(大日本インキ化学工業株式会社製)を110℃に加熱し、溶融させ、点状に、直径が1μm以下の繊維からなる層上に付与した。
【0048】
次に、この接着剤を付与した面と繊維布帛を重ね合わせニップロ−ルを用い圧着した。
圧着した後、70℃で72時間エジングした後、離型紙を剥離した。
得られた透湿性防水布帛の性能は下記の通りであった。
【0049】
透湿性 塩化カルシウム法 11650g/m・24hrs
酢酸カリウム法 36500g/m・24hrs
耐水圧 8500mmH
通気度 0.6cm/cm・s
溶剤残留量 DMF検出限界未満
風合、軽量感 用いた繊維布帛とほぼ同一の風合であり、軽量感もほとんど変化が感じられなかった。
【0050】
実施例2
ポリエステルタフタ(たて糸83デシテッス/72フィラメント、よこ糸たて糸83デシテッス/72フィラメント。密度 たて114本/2.54cm、よこ92本/2.54cm)を分散染料で青色に染色し、アサヒガ−ドAG710 5%水溶液を用い撥水加工をおこなったものを繊維布帛として用いた。
【0051】
また、離型紙(ポリプロピレンコ−テイング品、目付け25g/m)上に直径100nm〜500nmの繊維(エレクトロスピニング法、溶液法、溶媒DMF)が積層された厚さ16μm、目付け7.9g/m層を直径が1μm以下の繊維からなる層としてもちいた。
グラビアコ−タを用い湿気硬化型ホットメルトタイプウレタン樹脂 タイホ−スNH300(大日本インキ化学工業株式会社製)を110℃に加熱し、溶融させ、点状に、直径が1μm以下の繊維からなる層上に付与した。
【0052】
次に、この接着剤を付与した面と繊維布帛を重ね合わせニップロ−ルを用い圧着した。
圧着した後、70℃で72時間エ−ジングした後、離型紙を剥離した。
次に、直径が1μm以下の繊維からなる層の上に、グラビアコ−タを用い下記ウレタン樹脂溶液を全面に塗布、120℃で乾燥し、直径が1μm以下の繊維からなる層の上に、ウレタン樹脂層を形成した。
ウレタン樹脂溶液
クリスボンNYT−20(透湿性ウレタン樹脂、大日本インキ化学工業製)100部
トルエン/イソプロピルアルコール(1:1) 50部

得られた透湿性防水布帛の性能は下記の通りであった。
【0053】
透湿性 塩化カルシウム法 8690g/m・24hrs
酢酸カリウム法 34400g/m・24hrs
耐水圧 10400mmH
通気度 なし(測定不可)
溶剤残留量 DMF 検出限界未満
トルエン 検出限界未満
イソプロピルアルコール 検出限界未満
風合、軽量感 用いた繊維布帛と比べ風合がわずかに硬化した、軽量感はほとんど変化が感じられなかった。
【0054】
比較例1
実施例1の直径が1μm以下の繊維からなる層に替えて、厚さ38μm、目付け14g/mのPTFE膜(離型紙無し)を用いた以外は、実施例1と同様にし、透湿性防水布帛を得た。
得られた透湿性防水布帛の性能は下記の通りであった。
【0055】
透湿性 塩化カルシウム法 8500g/m・24hrs
酢酸カリウム法 30200g/m・24hrs
耐水圧 20000mmH
通気度 0.05cm/cm・s
溶剤残留量 DMF 検出限界未満
トルエン 検出限界未満
イソプロピルアルコール 検出限界未満。
風合、軽量感 用いた繊維布帛と比べ風合がやや硬化した、軽量感もあまり感じられなかった。
【0056】
比較例2
実施例1の直径が1μm以下の繊維からなる層に替えて、離型紙上に形成された厚さ13μm、目付け15g/mの透湿性ウレタン樹脂膜(実施例2で用いたウレタン樹脂溶液を用いて得たもの)を用いた以外は、実施例1と同様にし、ポリウレタンの無孔質膜を有する透湿性防水布帛を得た。
得られた透湿性防水布帛の性能は下記の通りであった。
【0057】
透湿性 塩化カルシウム法 3800g/m・24hrs
酢酸カリウム法 34000g/m・24hrs
耐水圧 20000mmH
通気度 なし(測定不可)
溶剤残留量 トルエン 1ppm
イソプロピルアルコール 1ppm
風合、軽量感 用いた繊維布帛と比べ風合がわずかに硬化した、軽量感はほとんど変化が感じられなかった。
【0058】
比較例3
実施例1で用いた繊維布帛に下記ウレタン樹脂溶液を塗布し、水中にて湿式凝固、湯洗い、乾燥し、ウレタン樹脂の微多孔質膜を有する透湿性防水布帛を得た。
ウレタン樹脂溶液
クリスボン8006(ウレタン樹脂、大日本インキ化学工業製) 100部
DMF 20部
レザミンNE(イソシアネ−ト系架橋剤) 5部
得られたウレタン樹脂膜の厚さは、40μm、樹脂膜の目付けは、25g/mであった。
得られた透湿性防水布帛の性能は下記の通りであった。
【0059】
透湿性 塩化カルシウム法 4300g/m・24hrs
酢酸カリウム法 4200g/m・24hrs
耐水圧 0.05mmH
通気度 0.04cm/cm・s
溶剤残留量 DMF 9ppm
風合、軽量感 用いた繊維布帛と比べ風合が硬化し、重量感が増し、重く感じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維布帛の少なくとも片面に直径が1μm以下の繊維からなる層を有する透湿性防水布帛。
【請求項2】
直径が1μm以下の繊維の太さが、10nm以上、700nm以下である、請求項1に記載の透湿性防水布帛。
【請求項3】
直径が1μm以下の繊維からなる層の厚みが、10μm以上、200μm以下である、請求項1または2に記載の透湿性防水布帛。
【請求項4】
直径が1μm以下の繊維からなる層の目付けが、5g/m以上、85g/m以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の透湿性防水布帛。
【請求項5】
直径が1μm以下の繊維からなる層を形成する繊維が、アクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコ−ル、ナイロン、アセテート、絹成分、セルロ−ス、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリウレタン及びポリエステルのうち少なくとも一つからなる、請求項1〜4のいずれかに記載の記載の透湿性防水布帛。
【請求項6】
塩化カルシウム法による透湿度が8000g/m・24hrs以上、酢酸カリウム法による透湿度が20000g/m・24hrs以上、耐水圧が350mmHO以上、フラジ−ル法による通気度が0.05cm/cm・s以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の透湿性防水布帛。
【請求項7】
繊維布帛に対し、片面に直径が1μm以下の繊維からなる層が湿気硬化型樹脂により貼り合わされている、請求項1〜6のいずれかに記載の透湿性防水布帛。
【請求項8】
直径が1μm以下の繊維からなる層にさらに樹脂層が積層されている、請求項1〜7のいずれかに記載の透湿性防水布帛。
【請求項9】
離型紙上に積層された直径が1μm以下の繊維からなる層上に接着剤を塗布した後、接着剤を介し、直径が1μm以下の繊維からなる層と繊維布帛と貼り合わせ、その後、離型紙を剥離する透湿性防水布帛の製造方法。


【公開番号】特開2007−136970(P2007−136970A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336489(P2005−336489)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】