透過型テラヘルツ波検査装置
【課題】共鳴トンネルダイオードを利用し、テラヘルツ波の透過を利用することで紙類による減衰の大きさを基にして、枚数の判定が可能な透過型テラヘルツ波検査装置を提供する。
【解決手段】テラヘルツ発振素子を備える発振器100と、テラヘルツ検出素子を備える検出器200と、発振器100と検出器200との間に配置された紙類300とを備え、テラヘルツ発振素子より放射されたテラヘルツ波が紙類を透過して得られる透過テラヘルツ波をテラヘルツ検出素子によって検出し、紙類300による減衰の大きさを基にして、紙類300の枚数を判定する透過型テラヘルツ波検査装置。
【解決手段】テラヘルツ発振素子を備える発振器100と、テラヘルツ検出素子を備える検出器200と、発振器100と検出器200との間に配置された紙類300とを備え、テラヘルツ発振素子より放射されたテラヘルツ波が紙類を透過して得られる透過テラヘルツ波をテラヘルツ検出素子によって検出し、紙類300による減衰の大きさを基にして、紙類300の枚数を判定する透過型テラヘルツ波検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型テラヘルツ波検査装置に関し、特に、共鳴トンネルダイオードを利用した透過型テラヘルツ波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トランジスタなどの電子デバイスの微細化が進み、その大きさがナノサイズになってきたため、量子効果と呼ばれる新しい現象が観測されるようになっている。そして、この量子効果を利用した超高速デバイスや新機能デバイスの実現を目指した開発が進められている。
【0003】
一方、そのような環境の中で、特に、テラヘルツ帯と呼ばれる、周波数が0.1THz(1011Hz)〜10THzの周波数領域を利用して大容量通信や情報処理、あるいはイメージングや計測などを行う試みが行われている。この周波数領域は、光と電波の中間の未開拓領域であり、この周波数帯で動作するデバイスが実現されれば、上述したイメージング、大容量通信・情報処理のほか、物性、天文、生物などのさまざまな分野における計測など、多くの用途に利用されることが期待されている。
【0004】
一方、テラヘルツ波を用いた紙類の検査装置として、反射・干渉を用いる例は、開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−300279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、紙類によるテラヘルツ波の反射率は高くはなく、紙幣や紙類が理想的にきちんと重ねられている状態でなければ、干渉を観測することは難しい。また、干渉は、紙類の厚さによって、周期的に起こるため、枚数の特定をすることが難しい。また、テラヘルツ波は、紙類を透過し易いため、反射を利用すると、測定の精度が低下する。
【0007】
本発明の目的は、共鳴トンネルダイオードを利用し、テラヘルツ波の透過を利用することで紙類による減衰の大きさを基にして、枚数の判定が可能な透過型テラヘルツ波検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一態様によれば、テラヘルツ発振素子を備える発振器と、テラヘルツ検出素子を備える検出器と、前記発振器と前記検出器との間に配置された紙類とを備え、前記テラヘルツ発振素子より放射されたテラヘルツ波が前記紙類を透過して得られる透過テラヘルツ波を前記テラヘルツ検出素子によって検出し、前記紙類による減衰の大きさを基にして、前記紙類の枚数を判定する透過型テラヘルツ波検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、共鳴トンネルダイオードを利用し、テラヘルツ波の透過を利用することで紙類による減衰の大きさを基にして、枚数の判定が可能な透過型テラヘルツ波検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置の模式的ブロック構成図。
【図2】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置の反射波の影響を説明する模式的ブロック構成図。
【図3】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、発振器と検出器の距離D=2mmのときの検出強度と微小距離Δdとの関係を示す図。
【図4】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、発振器と検出器の距離D=3cmのときの検出強度と微小距離Δdとの関係を示す図。
【図5】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、発振器と検出器の距離D=5cmのときの検出強度と微小距離Δdとの関係を示す図。
【図6】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、検出強度と、発振器と検出器の距離Dとの関係を示す図。
【図7】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、(a)発振器と検出器の距離Dが相対的に近い場合のテラヘルツ波の広がりの様子を説明する図、(b)発振器と検出器の距離Dが相対的に遠い場合のテラヘルツ波の広がりの様子を説明する図。
【図8】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置の測定系の模式的鳥瞰構造図。
【図9】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、検出強度と紙幣枚数nとの関係を示す図。
【図10】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、透過率と紙幣枚数nとの関係を示す図。
【図11】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、紙幣中での減衰、干渉の影響を考慮したモデルを説明する模式的ブロック構成図。
【図12】紙幣中でのテラヘルツ波の干渉の影響を考慮したモデルを説明する模式的ブロック構成図。
【図13】図12のテラヘルツ波の干渉の影響を考慮したモデルより、透過率の理論式によって得られた透過率と紙幣枚数nとの関係を示す図。
【図14】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の模式的鳥瞰図。
【図15】(a)図14のI−I線に沿う模式的断面構造図、(b)図14のII−II線に沿う模式的断面構造図。
【図16】(a)実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD)の模式的断面構造図、(b)図16(a)の変形例の模式的断面構造図。
【図17】同一工程で製造されたテラヘルツ発振素子RTD(O)とテラヘルツ検出素子RTD(D)の模式的断面構造であって、集積化されたテラヘルツ発振検出素子(RTD―RTD)の模式的断面構造図。
【図18】(a)テラヘルツ発振素子の模式的回路構成図、(b)テラヘルツ発振素子の簡易等価回路構成図。
【図19】(a)テラヘルツ検出素子の模式的回路構成図、(b)テラヘルツ検出素子の簡易等価回路構成図。
【図20】(a)テラヘルツ発振素子のアンテナ系も含めた模式的等価回路構成図、(b)図20(a)のRTDの等価回路構成図。
【図21】テラヘルツ検出素子のアンテナ系も含めた模式的等価回路構成図。
【図22】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子の電流−電圧特性例。
【図23】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子において、共振器長L1をパラメータとする発振周波数fとピーク電流Ipの関係を示す図。
【図24】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子において、発振強度と発振周波数fの関係を示す図。
【図25】テラヘルツ発振検出素子に適用可能なショットキーバリアダイオードの電流−電圧特性の模式図。
【図26】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD)の電流−電圧特性の模式図。
【図27】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD)の電流−電圧特性例であって、室温動作時、テラヘルツ波の照射時(A)と、テラヘルツ波の非照射時(B)の特性例。
【図28】(a)実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の回路構成図、(b)RTDに逆バイアス、SBDに順バイアス印加時の動作特性例。
【図29】(a)実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の回路構成図、(b)RTDに順バイアス、SBDに逆バイアス印加時の動作特性例。
【図30】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例1のテラヘルツ発振検出素子(RTD)の模式的鳥瞰図。
【図31】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例2のテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の模式的鳥瞰図。
【図32】図31に対応した第1の電極4、第2の電極2aおよび半導体層91aのパターン構造の模式的平面図。
【図33】(a)図31のIII−III線に沿う模式的断面構造図、(b)図31のIV−IV線に沿う模式的断面構造図。
【図34】変形例2のテラヘルツ検出素子において、絶縁体基板をサンプル表面に貼付け、半導体基板を除去した様子を示す模式的鳥瞰図。
【図35】図34の裏面から見た様子を示す模式的鳥瞰図。
【図36】変形例2のテラヘルツ発振検出素子の電磁界シミュレーション結果。
【図37】(a)実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例3のテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造の模式的平面図、(b)実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例4に係るテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造の模式的平面図。
【図38】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例5のテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の模式的平面図。
【図39】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例6のテラヘルツ発振検出素子の模式的平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下において、同じブロックまたは要素には同じ符号を付して説明の重複を避け、説明を簡略にする。図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、各構成部品の配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
[実施の形態]
(透過型テラヘルツ波検査装置)
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置の模式的ブロック構成は、図1に示すように、テラヘルツ発振素子を備える発振器100と、テラヘルツ検出素子を備える検出器200と、発振器100と検出器200との間に配置された紙類300とを備える。ここで、テラヘルツ発振素子より放射されたテラヘルツ波が紙類300を透過して得られる透過テラヘルツ波をテラヘルツ検出素子によって検出し、紙類300による減衰の大きさを基にして、紙類300の枚数を判定することができる。
【0014】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、反射波の影響を検討する模式的ブロック構成は、図2に示すように表される。発振器100と検出器200との間の距離Dとすると、発振器100からの放射テラヘルツ波hνiに対して、検出器200などからの反射テラヘルツ波hνrの強度を測定することで、反射波の影響を把握することができる。
【0015】
反射率Rは、exp(−iδ)の関数で表される。ここで、δ=2π/λ・n1・dで表される。n1は、紙幣などの紙類300における屈折率を表し、dは、紙幣などの紙類300の膜厚を表し、λはテラヘルツ波の波長を表す。反射率Rは、紙類300の枚数に応じて周期的に変化するため、反射率の変化によって、紙類300の枚数を検出しようとすると、枚数が、例えば、1枚か、3枚かを見分けることができない。また、紙類300に対するテラヘルツ波の反射率は、低く、約20%以下である。例えば、図2の構成において、紙類300が無い場合の検出器200における検出強度の測定例では、約75.3mVであるのに対して、紙類300が1枚存在すると、約61.5mVであり、約80%以上透過し、反射率は約20%以下である。
【0016】
―発振器と検出器の距離Dと検出強度の関係―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、発振器100と検出器200の距離D=2mmのときの検出強度と微小距離Δdとの関係は、図3に示すように表され、発振器100と検出器200の距離D=3cmのときの検出強度と微小距離Δdとの関係は、図4に示すように表され、発振器100と検出器200の距離D=5cmのときの検出強度と微小距離Δdとの関係は、図5に示すように表される。図3〜図5において、測定条件は、発振器100と検出器200との距離Dを一定間隔とした後、発振器100を微小距離Δdだけ変化させている。
【0017】
図3〜図5から明らかなように、Δd=λ/2=0.5mmの周期で検出強度が変化しており、反射波の存在が認められる。また、発振器100と検出器200との距離Dが大きくなるほど、検出強度変化の振幅が小さくなることがわかる。このように、反射波の影響の有無を干渉の存在により確認することができる。検出器200などからの反射波の影響で、発振器100からの発振特性にも変化が生ずる。
【0018】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、検出強度と、発振器と検出器の距離Dとの関係は、図6に示すように表される。図6において、測定条件は、発振器100から300GHzのテラヘルツ波を発振させた状態で、発振器100と検出器200との距離Dを変化させている。
【0019】
図6に示すように、検出強度は、発振器100と検出器200との距離Dの増加とともに、指数関数的に減少している。ここで、例えば、検出強度f(x)は、距離をxとすると、exp(−αx)に比例している。ここで、αは定数である。
【0020】
300GHzのテラヘルツ波の大気中における減衰量は、0.001%/cm程度であることから、大気による減衰の影響は小さい。
【0021】
一方、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、発振器100と検出器200の距離Dが相対的に近い場合のテラヘルツ波のビーム400の広がりの様子は、図7(a)に示すように表され、発振器100と検出器200の距離Dが相対的に遠い場合のテラヘルツ波のビーム400の広がりの様子は、図7(b)に示すように表される。図7(a)および図7(b)から明らかなように、テラヘルツ波ビーム400のに広がりの影響により、発振器100と検出器200の距離Dが大きくなると、検出される電磁波量が減少している。
【0022】
―紙幣の枚数と検出強度の関係―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置の測定系の模式的鳥瞰構造は、図8に示すように表される。紙幣からなる紙類300が支持台500上に固定され、発振器100と検出器200との間に配置されている。
【0023】
図8に示すように、発振器100と検出器200の間に紙幣を入れていき、検出器200において、透過テラヘルツ波の強度変化(透過率変化)を測定した結果は、図9〜図10に示すように表される。すなわち、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、検出強度と紙幣枚数nとの関係の測定結果は、図9に示すように表され、透過率と紙幣枚数nとの関係は、図10に示すように表される。
【0024】
図9から明らかなように、反射率測定型の検査装置とは異なり、紙幣枚数nの増加に伴い、検出強度が減少する。図9の例では、検出強度の値が約30mVが検出限界DLであり、紙幣枚数n=5まで検出可能であることがわかる。
【0025】
また、図10から明らかなように、紙幣枚数nの増加に伴い、透過率も減少する。
【0026】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、紙幣中での減衰・干渉、紙幣間での干渉の影響を考慮したモデルを説明する模式的ブロック構成は、図11に示すように表される。図11において、紙幣中での干渉をPI、紙幣間での干渉をPDで表している。紙幣での減衰・干渉と、紙幣間での干渉を考慮して、透過率を計算した結果を計算値として、図10中に示す。ここで、紙幣での減衰は、図6において説明した検出強度f(x)∝exp(−αx)に基づいている。
【0027】
図10の計算値と実験値の比較より、紙幣中で伝播するテラヘルツ波も指数関数的に減衰することが確認された。
【0028】
―紙幣中でのテラヘルツ波の干渉―
ここで、参考までに、紙幣中でのテラヘルツ波の干渉について説明する。
【0029】
紙幣中でのテラヘルツ波の干渉の影響を考慮したモデルは、図12に示すように表される。発振器100から放射されたテラヘルツ波I1は、紙類300中でI2に減衰され、さらに検出器200において、I3として検出される。一方、紙類300中では、干渉効果によって、強度変調されてI4として伝播され、さらに検出器200において、I5として検出される。
【0030】
図12に基づいて、紙幣中でのテラヘルツ波の干渉効果を考慮した透過率Tは、次式で表される。即ち、
T=1/[1+4Rsin2(χn1L)/(1−R)2]
ここで、n1は屈折率、χ=2π/λ、反射率R=|(1−n1)/(1+n1|2で求めている。
【0031】
図12のテラヘルツ波の干渉の影響を考慮したモデルより、上記の透過率の理論式によって得られた透過率と紙幣枚数nとの関係は、図13に示すように表される。図13の結果では、紙幣枚数nに応じて、透過率が周期的に変化している。
【0032】
図12および図13より明らかなように、紙幣中でのテラヘルツ波の干渉のみを考慮したモデルでは、透過率が指数関数的に減少するという実験結果を説明することができない。
【0033】
以上の結果から、紙幣での減衰は、図6において説明した検出強度f(x)∝exp(−αx)に基づき、かつ図10および図11に示すように、紙幣中での減衰・干渉、紙幣間での干渉の影響を考慮したモデルに基づき、実験結果を説明することができる。
【0034】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置によれば、共鳴トンネルダイオードを利用し、テラヘルツ波の透過を利用することで紙類による減衰の大きさを基にして、枚数の判定が可能である。
【0035】
尚、発振器100を構成するテラヘルツ発振素子と、検出器200を構成するテラヘルツ検出素子は、いずれもRTD(Resonant Tunneling Diode:共鳴トンネルダイオード)を用いて構成することができる。基本的な構造は、RTDと、RTDと集積化されたスロットアンテナ構造からなる。
【0036】
また、発振器100を構成するテラヘルツ発振素子と、検出器200を構成するテラヘルツ検出素子には、1つの素子で発振素子と検出素子を実現可能なテラヘルツ発振検出素子を適用することもできる。基本的な構造は、RTDと、RTDと集積化されたスロットアンテナ構造からなり、この基本的な構造によって、テラヘルツ発振検出素子を実現可能である。以下の説明では、主として、テラヘルツ発振検出素子について詳述する。
【0037】
(テラヘルツ発振検出素子)
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子の模式的鳥瞰構造は、図14に示すように表され、図14のI−I線に沿う模式的断面構造は、図15(a)に示すように表され、図14のII−II線に沿う模式的断面構造は、図15(b)に示すように表される。
【0038】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子の模式的鳥瞰構造は、図14〜図15に示すように、半導体基板1と、半導体基板1上に配置された第2の電極2,2aと、第2の電極2上に配置された絶縁層3と、第2の電極2に対して絶縁層3を介して配置され、かつ半導体基板1上に第2の電極2に対向して配置された第1の電極4(4a,4b,4c)と、絶縁層3を挟み第1の電極4aと第2の電極2間に形成されたMIMリフレクタ50と、MIMリフレクタ50に隣接して、半導体基板1上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された共振器60と、共振器60の略中央部に配置された能動素子90と、共振器60に隣接して、半導体基板1上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された導波路70と、導波路70に隣接して、半導体基板1上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置されたホーン開口部80と、第1の電極4と第2の電極2間に接続されたSBD30とを備える。
【0039】
能動素子90としてはRTDが代表的なものであるが、これ以外のダイオードやトランジスタでも構成可能なものである。その他の能動素子としては、例えば、タンネット(TUNNETT:Tunnel Transit Time)ダイオード、インパット(IMPATT:Impact Ionization Avalanche Transit Time)ダイオード、GaAs系電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、GaN系FET、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)などを適用することもできる。
【0040】
ホーン開口部80は、開口ホーンアンテナから構成される。ホーン開口部の開口角θは、例えば、10度程度以下に設定することが、電磁波(hν)の検出方向に指向特性を持たせる上で望ましい。ホーン開口部80の長さL3は、例えば、約700μm程度以下である。ホーン開口部80の先端部における開口幅は、例えば、約160μm程度である。
【0041】
導波路70は、共振器60の開口部に配置されている。導波路70の長さL2は、例えば、約700μm程度以下である。また、導波路70における第1の電極4と第2の電極2間の間隔は、例えば、約24μm程度である。
【0042】
なお、ホーン開口部80のホーン形状は、電磁波を空気中から有効に検出するために必要な構造である。ホーン形状によって、インピーダンス整合性良く電磁波を空気中から効率よく検出することができる。尚、ホーンの形状は、直線性形状に限らず、非直線性形状、曲線形状、2次曲線形状、放物線形状、階段状形状などであっても良い。
【0043】
共振器60には、2箇所の凹部5、6が形成されており、この2つの凹部5、6に挟まれて、凸部7が形成されている。そして、第1の電極4の凸部7の略中央部には突起部8が形成され、この突起部8の下側に第2の電極2と挟まれるように、能動素子90が配置される。
【0044】
共振器60の長さL1は、例えば、約30μm程度以下である。突起部8の長さは、例えば、約6μm程度以下である。また、凹部5、6の幅(第1の電極4と第2の電極2との間隔)は、例えば、約4μm程度である。能動素子90の寸法は、例えば、約1.4μm2程度である。但し、能動素子90のサイズは、この値に限定されず、例えば、約5.3μm2程度以下であってもよい。能動素子90の詳細構造については後述する。共振器60の各部のサイズは、上記寸法に限定されるものではなく、受信するテラヘルツ電磁波の周波数に応じて設計上適宜設定されるものである。
【0045】
また、図14に示すように、導波路70における第1の電極4と第2の電極2間の間隔に比べて、共振器60が形成されている部分の第1の電極4と第2の電極2間の間隔は、狭い。
【0046】
MIMリフレクタ50は共振器60の開口部と反対側の閉口部に配置されている。金属/絶縁体/金属からなるMIMリフレクタ50の積層構造により、第1の電極4と第2の電極2は高周波的に短絡される。また、MIMリフレクタ50は、直流的には開放(オープン)でありながら、高周波を反射させることが可能となるという効果を有する。
【0047】
第1の電極4(4a,4b,4c)および第2の電極2,2aは、いずれも例えば、Au/Pd/Tiのメタル積層構造からなり、Ti層は、後述する半絶縁性のInP基板からなる半導体基板1との接触状態を良好にするためのバッファ層である。第1の電極4a,4b,4cおよび第2の電極2,2aの各部の厚さは、例えば、約数100nm程度であり、全体として、図15(a)および図15(b)に示すような平坦化された積層構造が得られている。なお、第1の電極4、第2の電極2は、いずれも真空蒸着法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0048】
さらに詳細には、第1の電極4aおよび第1の電極4cは、例えば、Au/Pd/Tiからなり、第1の電極4bは、例えば、Au/Tiからなる。第2の電極2は、例えば、Au/Pd/Tiからなり、第2の電極2aは、例えば、Au/Tiからなる。
【0049】
尚、第1の電極4bの表面層を形成するTi層は、ボンディングワイヤ(図示省略)によって取り出し電極を形成する際、接触抵抗を低減するために除去することが望ましい。同様に、第2の電極2aの表面層を形成するTi層は、ボンディングワイヤ(図示省略)によって取り出し電極を形成する際、接触抵抗を低減するために除去することが望ましい。
【0050】
絶縁層3は、例えば、SiO2膜で形成することができる。その他、Si3N4膜、SiON膜、HfO2膜、Al2O3膜などを適用することもできる。なお、絶縁層3の厚さは、MIMリフレクタ50の幾何学的な平面寸法と、回路特性上の要求されるキャパシタ値を考慮して決めることができ、例えば、数10nm〜数100nm程度である。絶縁層3は、化学的気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0051】
―共鳴トンネルダイオード―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な共鳴トンネルダイオード(RTD)の模式的断面構造は、図16(a)に示すように表され、その変形例の模式的断面構造は、図16(b)に示すように表される。
【0052】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な能動素子90としてRTDの構成例は、図16(a)に示すように、半絶縁性のInP基板からなる半導体基板1上に配置され,n型不純物を高濃度にドープされたGaInAs層91aと、GaInAs層91a上に配置され,n型不純物をドープされたGaInAs層92aと、GaInAs層92a上に配置されたアンドープのGaInAs層93bと、GaInAs層93b上に配置されたAlAs層94a/GaInAs層95/AlAs層94bから構成されたRTD部と、AlAs層94b上に配置されたアンドープのGaInAs層93bと、GaInAs層93a上に配置され,n型不純物をドープされたGaInAs層92bと、GaInAs層92b上に配置され,n型不純物を高濃度にドープされたGaInAs層91bと、GaInAs層91b上に配置された第1の電極4aと、GaInAs層91a上に配置された第2の電極2とを備える。
【0053】
変形例では、図16(b)に示すように、n型不純物を高濃度にドープされたGaInAs層91b上に更にn型不純物を高濃度にドープされたGaInAs層91cを配置し、第1の電極4aとのコンタクトを良好にしている。
【0054】
図16(a)および図16(b)に示すように、RTD部は、GaInAs層95をAlAs層94a、94bで挟んで形成されている。このように積層されたRTD部は、スペーサとして用いられるアンドープGaInAs層93a、93bを介在させてn型のGaInAs層92a、92b、及びn+型のGaInAs層91a、91b、若しくは91cを介して、第2の電極2と第1の電極4にオーミックに接続される構造となっている。
【0055】
ここで、各層の厚さは、例えば以下の通りである。
【0056】
n+型のGaInAs層91a、91b・91cの厚さは、それぞれ例えば、約400nm、15nm・8nm程度である。n型のGaInAs層92aおよび92bの厚さは、略等しく、例えば、約25nm程度である。アンドープGaInAs層93a・93bの厚さは、例えば、約2nm・20nm程度である。AlAs層94aおよび94bの厚さは、等しく、例えば、約1.1nm程度である。GaInAs層95の厚さは、例えば、約4.5nm程度である。
【0057】
なお、図16(a)および図16(b)に示す積層構造の側壁部には、SiO2膜、Si3N4膜、SiON膜、HfO2膜、Al2O3膜など、若しくはこれらの多層膜からなる絶縁膜を堆積することもできる。絶縁層は、CVD法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0058】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子は、テラヘルツ発振素子とテラヘルツ検出素子を同一の製造工程で形成することも可能である。この場合、SBDの代わりにRTD(D)を検出素子として用いる。同一工程で製造されたテラヘルツ発振素子RTD(O)とテラヘルツ検出素子RTD(D)の模式的断面構造であって、集積化されたテラヘルツ発振検出素子(RTD―RTD)の模式的断面構造は、図17に示すように表される。各層の構成は、図16(b)と同様であるため、重複説明は省略する。
【0059】
例えば、同一工程で製造されたテラヘルツ発振検出素子において、室温で観測した発振周波数は、約300GHz程度である。また、例えば、発振時におけるテラヘルツ発振検出素子の電流密度Jpは、約7mA/μm2程度である。
【0060】
尚、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子においては、テラヘルツ発振素子に比べ、バリア層となるAlAs層94aおよび94bの厚さを厚く形成して、検出時におけるテラヘルツ検出素子の電流密度Jpを低く設定して、低雑音化を図っても良い。同様に、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子においては、テラヘルツ発振素子に比べ、n型のGaInAs層92aおよび92bのドーピングレベルを低く形成して、検出時におけるテラヘルツ検出素子の電流密度Jpを低く設定して、低雑音化を図っても良い。発振素子の場合は、RTDの電流密度が大きい方が望ましいが、検出素子として用いる場合に、発振が雑音となる可能性があるので、RTDの電流密度は、相対的に低い方が望ましい。このため、発振が雑音となる可能性がある場合には、このように電流密度を敢えて低下させて低雑音化のための構造を備えていても良い。
【0061】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子においては、寄生発振抑制用のビスマス(Bi)配線も不要である。
【0062】
―回路構成―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−RTD)の発振素子(RTD)の模式的回路構成は、図18(a)に示すように、能動素子90を構成するダイオードと、MIMリフレクタ50を構成するキャパシタCMの並列回路によって表される。第1の電極4にはダイオードのアノードが接続され、第2の電極2には、ダイオードのカソードが接続され、第1の電極4にはマイナスの電圧、第2の電極2にはプラスの電圧が印加される。発振状態においては、ホーン開口部の開口方向であるY軸方向からの電磁波(hν)が指向性良く検出される。
【0063】
図19(a)に対応する簡易等価回路構成は、図19(b)に示すように、能動素子90を構成するRTDは、キャパシタC01とインダクタL01の並列回路で表わすことができ、MIMリフレクタ50のキャパシタCMがさらに並列に接続される。
【0064】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−RTD)の検出素子(RTD)の模式的回路構成は、図19(a)に示すように、能動素子90を構成するダイオードと、MIMリフレクタ50を構成するキャパシタCMの並列回路によって表される。第1の電極4にはダイオードのアノードが接続され、第2の電極2には、ダイオードのカソードが接続され、第1の電極4にはマイナスの電圧、第2の電極2にはプラスの電圧が印加される。検出状態においては、ホーン開口部の開口方向であるY軸方向からの電磁波(hν)が指向性良く検出される。
【0065】
図19(a)に対応する簡易等価回路構成は、図19(b)に示すように、能動素子90を構成するRTDは、キャパシタC01とインダクタL01の並列回路で表わすことができ、MIMリフレクタ50のキャパシタCMがさらに並列に接続される。
【0066】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−RTD)の発振素子(RTD)のアンテナ系も含めた模式的等価回路構成は、図20(a)に示すように、ダイオード(RTD)系を表す能動素子90・キャパシタCMの並列回路に対して、アンテナ(ANT)系を表すアンテナインダクタL・アンテナキャパシタCA・アンテナ放射抵抗GANTの並列回路が並列に接続される。
【0067】
図20(a)の能動素子90を構成するダイオードの等価回路構成は、図20(b)に示すように、コンタクト抵抗Rc・コンタクトキャパシタCcからなるコンタクト部分の並列回路と、外部ダイオードキャパシタCD・内部ダイオードキャパシタCd・ダイオード負性抵抗(−Gd)からなるダイオード部分の並列回路と、インダクタLM・抵抗RMからなるメサ部分の直列回路が直列接続された構成を備える。
【0068】
ここで、等価回路全体のアドミッタンスYは、
Y=Yd+Yc・Ya・Ym/(Yc・Ya+Ya・Ym+Yc・Ym)
で表される。ここで、Yd=−Gd+jωCd、Yc=1/Rc+jωCc、Ym=1/(Rm+jωLm)であり、Yaはアンテナ系のアドミッタンス、ωは発振角周波数を表す。各パラメータは、能動素子90を構成するダイオード(RTD)の物性値から求めることができる。
【0069】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−RTD)の検出素子(RTD)のアンテナ系も含めた模式的等価回路構成は、図21に示すように、ダイオード(RTD)系を表す能動素子90・キャパシタCMの並列回路に対して、アンテナ(ANT)系を表すアンテナインダクタL・アンテナキャパシタCA・アンテナ放射抵抗GANTの並列回路が並列に接続される。
【0070】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子の電流−電圧特性例は、図22に示すように表され、約0.75Vにおいて、ピーク電流Ipの値は、約12mAが得られている。また、0.7V〜1.0Vの範囲において、負性微分抵抗(NDR:Negative Differential resistance)得られている。峰谷比(peak-to-valley ratio)は、約3である。
【0071】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子において、共振器長L1をパラメータとする発振周波数fとピーク電流Ipの関係は、図23に示すように表される。共振器長L1=80μmでは、約250〜300GHz、L1=60μmでは、約300〜320GHz、L1=40μmでは、約350〜370GHz、L1=20μmでは、約380〜400GHzの発振周波数fが得られている。ピーク電流Ipの値は、約4〜10mAである。共振器長L1が短くなると、発振周波数fは増加する傾向にある。
【0072】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子において、発振強度と発振周波数fの関係は、図24に示すように表される。室温で、約300GHzの発振周波数fが得られている。この発振周波数fの値は、図16に示される各層の構造、メサ領域の寸法、アンテナ構造などを調整することによって、変更可能である。
【0073】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子に適用可能なショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)の電流−電圧特性は、模式的に図25に示すように表される。
【0074】
一方、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD)の電流−電圧特性は、模式的に図26に示すように、順方向および逆方向には、負性抵抗を有するため、SBDに比べて非線形性の大きい領域が存在し、RTDを検出素子として適用する場合、感度が高くなる。
【0075】
SBDにおいては、ショットキーバリアを越えて流れる電子の数は、温度と共に上昇するため、検出感度を上げるために温度を上げると、熱雑音が増大し、S/N比が低下する。一方、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD)においては、トンネル電流に寄与する電子は、フェルミエネルギーレベルよりも低い電子である。このため、トンネル電流の温度依存性は小さい。したがって、実施の形態に係るテラヘルツ発振検出素子(RTD)においては、負性抵抗の前後では、非線形性が大きいので、S/N比が向上する。
【0076】
図26に示すように、電流−電圧特性上の動作点QではNDR領域である。実施の形態に係るテラヘルツ発振検出素子において検出感度を増大するためには、電流−電圧特性上の動作点を非発振状態とするとともに、微分抵抗の変化率を最大化することが望ましい。このような動作点は、実施の形態に係るテラヘルツ発振検出素子の電流−電圧特性上の動作点Pおよび動作点Qに相当する。すなわち、電流−電圧特性上の動作点Pおよび動作点Rでは、NDR領域にあり、しかも検出感度が極大値を取る。
【0077】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD)の電流−電圧特性例であって、室温動作において、テラヘルツ波の照射時(A)と、テラヘルツ波の非照射時(B)の特性変化は、図27に示すように表される。図27に示すように、バイアス電圧を例えば、0.5Vと設定することによって、テラヘルツ電磁波を良好な感度で、室温動作で検出可能である。
【0078】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の回路構成は、図28(a)に示すように表され、RTDに逆バイアス、SBDに順バイアス印加時の動作特性例は、図28(b)に示すように表される。図28(b)において、PRは、RTDに逆バイアス印加時の発振時のバイアス点に相当する。
【0079】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の回路構成は、図29(a)に示すように表され、RTDに順バイアス、SBDに逆バイアス印加時の動作特性例は、図29(b)に示すように表される。図29(b)において、PDは、RTDに順バイアス印加時の検出時のバイアス点に相当する。
【0080】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)においては、RTDとSBDを並列に接続している。このとき、RTDが発振素子として機能する方向に電流を流すときに、SBDの順方向に電流が流れるようにすることで、SBDが寄生発振の抑制素子となる。
【0081】
これとは逆の向きに電流を流すと、SBDは絶縁体として機能し、RTDは、検出素子として機能する。
【0082】
RTDとSBDは、いずれも非対称な電流―電圧特性を示すので、これらをうまく組み合わせることで、実施の形態に係るテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)が、発振素子としても検出素子としても機能することができる。
【0083】
ここで、RTDと並列に接続しているSBDはあくまでも整流のためであり、検出素子として用いるものではない。SBDの理想としては、順方向バイアスでは、RTDが負性抵抗を示す電圧までは電流が流れなくて、負性抵抗の領域で寄生発振を抑制するような抵抗体として働くことである。一方、逆方向バイアスでは、電流が流れないような絶縁体として働くことである。これにより発振とは関係のない電圧では回路全体に流れる電流が少なくて済むという利点がある。
【0084】
―変形例1―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例1のテラヘルツ発振検出素子の模式的鳥瞰構造は、図30に示すように表される。
【0085】
変形例1においては、図30に示すように、半導体基板1は、共振器60,導波路70,およびホーン開口部80を形成する第1の電極4および第2の電極2の配置される領域において薄層化されている。また、半導体基板1上には、第1の電極4と第2の電極2間に接続されたSBD30とを備える。さらに、図30に示すように、第1の電極4と第2の電極2間の導波路70,およびホーン開口部80の半導体基板1aは、完全に除去されていても良い。その他の構成は、図14の構成と同様であるため、各部の説明は省略する。
【0086】
図30において、薄層化された半導体基板1aの厚さは、例えば、約20μm程度である。また、導波路70の長さは、例えば、約700μm程度以下であり、ホーン開口部80の長さも例えば、約700μm程度以下である。MIMリフレクタ50を含む変形例1に係るテラヘルツ検出素子の全体の長さは、例えば、約1600μm程度以下でる。
【0087】
変形例1のテラヘルツ発振検出素子の電磁界シミュレーション結果によれば、薄層化された半導体基板1a上のY軸方向に延伸する電極パターンに沿って、Y軸方向に一定の間隔で電界パターンが発生し、半導体基板1aに垂直方向(−Z軸方向)の電界の漏れはほとんどない。また、XYZ軸方向における3次元の電磁界シミュレーション結果によれば、Y軸方向の指向性が顕著に良好となる。また、Y軸方向放射強度と発振周波数との関係からは高調波成分が抑制され、指向性が向上する結果も得られている。薄層化された半導体基板1aを形成する技術としては、メムス(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)素子の形成技術を適用することができる。
【0088】
変形例1のテラヘルツ発振検出素子によれば、半導体基板を薄層化することによって、基板の影響を抑制することが可能となり、指向性を向上させ、高効率に、基板に対して横方向の電波を発振検出することができ、しかも集積化が容易である。
【0089】
変形例1のテラヘルツ発振検出素子によれば、半導体基板を薄層化することによって、基板の影響を抑制することが可能となり、基板に水平な方向に指向性を向上させ、効率良く、テラヘルツ電磁波を発振検出することが可能となる。
【0090】
―変形例2―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例2のテラヘルツ発振検出素子の模式的鳥瞰構造は、図31に示すように表され、また、図31に対応した第1の電極4、第2の電極2aおよび半導体層91aのパターン構造の模式的平面図は、図32に示すように表される。また、図31のIII−III線に沿う模式的断面構造は、図33(a)に示すように表され、図31のIV−IV線に沿う模式的断面構造は、図31(b)に示すように表される。
【0091】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子は、図31〜図33に示すように、絶縁体基板10と、絶縁体基板10上に配置された第1の電極4(4a,4b,4c)と、第1の電極4a上に配置された絶縁層3と、絶縁体基板10上に配置された層間絶縁膜9と、層間絶縁膜9上に配置され、かつ第1の電極4aに対して絶縁層3を介して第1の電極4に対向して配置された第2の電極2,2aと、第2の電極2上に配置された半導体層91aと、絶縁層3を挟み第1の電極4aと第2の電極2間に形成されたMIMリフレクタ50と、MIMリフレクタ50に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された共振器60と、共振器60の略中央部に配置された能動素子90と、共振器60に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された導波路70と、導波路70に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置されたホーン開口部80と、第1の電極4と第2の電極2間に接続されたSBD30とを備える。
【0092】
ホーン開口部80は、開口ホーンアンテナから構成される。ホーン開口部の開口角θは、例えば、10度程度以下に設定することが、テラヘルツ電磁波(hν)の検出方向に指向特性を持たせる上で望ましい。ホーン開口部80の長さL3は、例えば、約700μm程度以下である。ホーン開口部80の先端部における開口幅は、例えば、約160μm程度である。
【0093】
導波路70は、共振器60の開口部に配置されている。導波路70の長さL2は、例えば、約700μm程度以下である。また、導波路70における第1の電極4と第2の電極2間の間隔は、例えば、約24μm程度である。
【0094】
なお、ホーン開口部80のホーン形状は、テラヘルツ電磁波を空気中から有効に検出するために必要な構造である。ホーン形状によって、インピーダンス整合性良くテラヘルツ電磁波を空気中から効率よく検出することができる。尚、ホーンの形状は、直線性形状に限らず、非直線性形状、曲線形状、2次曲線形状、放物線形状、階段状形状などであっても良い。
【0095】
共振器60には、2箇所の凹部5、6が形成されており、この2つの凹部5、6に挟まれて、凸部7が形成されている。そして、半導体層91aの凸部7の略中央部には突起部8が形成され、この突起部8の下側に第1の電極4aと挟まれるように、能動素子90が配置される。
【0096】
共振器60の長さL1は、例えば、約30μm程度以下である。突起部8の長さは、例えば、約6μm程度以下である。また、凹部5、6の幅(第1の電極4と第2の電極2との間隔)は、例えば、約4μm程度である。能動素子90の寸法は、例えば、約1.4μm2程度である。但し、能動素子90のサイズは、この値に限定されず、例えば、約5.3μm2程度以下であってもよい。共振器60の各部のサイズは、上記寸法に限定されるものではなく、受信するテラヘルツ電磁波の周波数に応じて設計上適宜設定されるものである。
【0097】
また、図31に示すように、導波路70における第1の電極4と第2の電極2間の間隔に比べて、共振器60が形成されている部分の第1の電極4と第2の電極2間の間隔は、狭い。
【0098】
MIMリフレクタ50は共振器60の開口部と反対側の閉口部に配置されている。金属/絶縁体/金属からなるMIMリフレクタ50の積層構造により、第1の電極4と第2の電極2は高周波的に短絡される。また、MIMリフレクタ50は、直流的には開放(オープン)でありながら、高周波を反射させることが可能となるという効果を有する。
【0099】
第1の電極4(4a,4b,4c)および第2の電極2,2aは、いずれも例えば、Au/Pd/Tiのメタル積層構造からなり、Ti層は、絶縁体基板10との接触状態を良好にするためのバッファ層である。第1の電極4a,4b,4cおよび第2の電極2,2aの各部の厚さは、例えば、約数100nm程度であり、全体として、図33(a)および図33(b)に示すような平坦化された積層構造が得られている。なお、第1の電極4、第2の電極2は、いずれも真空蒸着法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0100】
さらに詳細には、第1の電極4aおよび第1の電極4cは、例えば、Au/Pd/Tiからなり、第1の電極4bは、例えば、Au/Tiからなる。第2の電極2は、例えば、Au/Pd/Tiからなり、第2の電極2aは、例えば、Au/Tiからなる。
【0101】
尚、第1の電極4bの表面層を形成するTi層は、ボンディングワイヤ12bによって取り出し電極を形成する際、接触抵抗を低減するために除去することが望ましい。同様に、第2の電極2aの表面層を形成するTi層は、ボンディングワイヤ12aによって取り出し電極を形成する際、接触抵抗を低減するために除去することが望ましい。
【0102】
絶縁層3は、例えば、SiO2膜で形成することができる。その他、Si3N4膜、SiON膜、HfO2膜、Al2O3膜などを適用することもできる。なお、絶縁層3の厚さは、MIMリフレクタ50の幾何学的な平面寸法と、回路特性上の要求されるキャパシタ値を考慮して決めることができ、例えば、数10nm〜数100nm程度である。絶縁層3は、CVD法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0103】
同様に、層間絶縁膜9は、例えば、SiO2膜で形成することができる。その他、Si3N4膜、SiON膜、HfO2膜、Al2O3膜などを適用することもできる。層間絶縁膜9の厚さは、図33(a)に示すように、第2の電極2aと層間絶縁膜9の全体の厚さが、第1の電極4の厚さと略同程度となるように設定されている。層間絶縁膜9は、CVD法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0104】
また、絶縁体基板10は、半導体層91aよりも低誘電率材料の基板からなることが、電波を効率良く検出する上で望ましい。低誘電率材料の絶縁体基板10としては、例えば、ポリイミド樹脂基板、テフロン(登録商標)基板などを適用することができる。絶縁体基板10の厚さは、例えば、200μm程度である。
【0105】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子において、上方は空気であるため、比誘電率εair=1である。絶縁体基板10として、ポリイミド樹脂基板を使用すると、ポリイミド樹脂の比誘電率εpoly=3.5であるため、全体の放射電波に対する絶縁体基板10の下方への放射電波の割合は、εpoly3/2/(εair3/2+εpoly3/2)=0.87で表される。すなわち、全体の放射電波の内、約87%は、絶縁体基板10側から放射され、ホーン開口部80を介して横方向へ放射される電波は、相対的に増大する。
【0106】
さらに、絶縁体基板10として、テフロン(登録商標)樹脂基板を使用すると、テフロン(登録商標)の比誘電率εtef=2.1であるため、全体の放射電波に対する絶縁体基板10の下方への放射電波の割合は、εtef3/2/(εair3/2+εtef3/2)=0.75で表される。すなわち、全体の放射電波の内、約75%は、絶縁体基板10側へ放出され、ホーン開口部80を介して横方向へ放射される電波は、相対的に増大する。
【0107】
MIMリフレクタ50は、図33(a)に示すように、第1の電極4aと第2の電極2間に絶縁層3を介在させた構造から形成されている。また、図33(b)から明らかなように、RTDからなる能動素子90は、絶縁体基板10上に第1の電極4aを介して、配置されている。第1の電極4aは、RTDのn+GaInAs層91bに接触して配置されている。第2の電極2は、RTDのn+GaInAs層91aに接触して配置されている。さらに、第1の電極4(4b,4c)は、絶縁体基板10上に延在して配置されている。
【0108】
このように、第1の電極4が、絶縁体基板10上に延在して配置されていることから、第1の電極4と第2の電極2は、互いに短絡されることがなく、RTDのn+GaInAs層91aとn+GaInAs層91b間に所定の直流バイアス電圧を印加することができる。
【0109】
なお、第1の電極4には、ボンディングワイヤ12bが接続され、第2の電極2aには、ボンディングワイヤ12aが接続されて、第1の電極4と第2の電極2a間には、直流電源15が接続されている。また、第1の電極4と第2の電極2a間には、寄生発振を防止するための抵抗(図示省略)が接続されている。
【0110】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子の構造において、第1の電極4上に直接、また第2の電極2上に層間絶縁膜9を介して絶縁体基板10を貼付け、半導体基板1をエッチングで除去した後の上下反転した構造は、図33(a)および図33(b)に示すように表される。図33(a)および図33(b)に示すように、変形例2に係るテラヘルツ発振検出素子においては、第2の電極2上には半導体層91aが配置されが、第2の電極2aも露出するため、第2の電極2aに対して、ワイヤボンディングなどの電極取り出し工程を容易に行うことができる。
【0111】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子の製造方法においては、図15(a)および図15(b)に示すように、半導体基板1上に半導体層91aを形成後、パターニングによって、半導体層91aの幅を狭く形成し、半導体層91a上に形成される第2の電極2のパターン幅を狭く形成する。残りの部分には、第2の電極2に接続し、所定の幅を有し、相対的に厚い第2の電極2aを形成する。結果として、図15(a)および図15(b)に示すように、第2の電極2aが、半導体基板1に接触する構造を得る。
【0112】
次に、図33(a)および図33(b)に示すように、第1の電極4上に直接、また第2の電極2上に層間絶縁膜9を介して絶縁体基板10を貼付け、半導体基板1をエッチングで除去した後の上下反転した構造を得る。
【0113】
次に、図31に示すように、第1の電極4にボンディングワイヤ12bを接続し、第2の電極2aに、ボンディングワイヤ12aを接続することで電極取り出しを実施する。
【0114】
半導体基板1は、例えば、半絶縁性のInP基板によって形成され、厚さは、例えば、約600μm程度である。InP基板のエッチング液としては、例えば、塩酸系のエッチング液を適用することができる。
【0115】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子において、厚さdを有する絶縁体基板10をサンプル表面に貼付け、半導体基板をエッチングにより除去する工程後の模式的鳥瞰構造は、図34に示すように表され、図34の裏面から見た模式的鳥瞰構造は、図35に示すように表される。図34から明らかなように、第1の電極4は、直接絶縁体基板10に貼り付けられている。また、第2の電極2,2aは、図34では図示を省略しているが、図33(a)および図33(b)に示すように、層間絶縁膜9を介して絶縁体基板10に貼り付けられている。図34の詳細構造は、図31に対応している。
【0116】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子として、能動素子90に適用可能な共鳴トンネルダイオード(RTD)の模式的断面構造は、図16(a)と同様に表される。また、その変形例の模式的断面構造は、図16(b)と同様に表される。また、同一の製造工程で形成されたテラヘルツ検出素子RTD(D)とテラヘルツ発振素子RTD(O)の集積化構造は、図17と同様に表される。
【0117】
図16および図17は、半導体基板1上に配置された構造例であるが、その後の工程によって、第1の電極4aに絶縁体基板10を貼り付けた後、半導体基板1は、エッチングによって除去される。したがって、図16および図17は、絶縁体基板10を貼り付ける程前における能動素子90近傍の模式的断面構造に相当している。
【0118】
前述と同様に、能動素子90としてはRTDが代表的なものであるが、これ以外のダイオードやトランジスタでも構成可能なものである。その他の能動素子としては、例えば、TUNNETTダイオード、IMPATTダイオード、GaAsFET、GaN系FET、HEMT、HBTなどを適用することもできる。
【0119】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子のXYZ軸方向における3次元の電磁界シミュレーション結果の一例は、図36に示すように表される。Y軸方向が、電波の出力方向であり、極めて良好な指向性が得られていることがわかる。図36の例は、図34および図35に示す変形例2のテラヘルツ発振素子において、絶縁体基板10を、厚さd=200nmのポリイミド基板によって形成し、発振周波数f=0.5THzとした結果である。
【0120】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、高効率に、基板に対して横方向に指向性高く発振することができ、しかも集積化が容易となる。
【0121】
―変形例3・変形例4
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例3のテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造は、図37(a)に示すように表され、変形例4のテラヘルツ検出素子の電極パターン構造は、図37(b)に示すように表される。尚、図37(a)および(b)においては、第1の電極4と第2の電極2間に接続されたSBD30は図示を省略しているが、図31と同様に配置されている。
【0122】
変形例3のテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造は、MIMリフレクタ50を構成する第2の電極2にスタブ構造を備える例であり、変形例4のテラヘルツ検出素子の電極パターン構造は、MIMリフレクタ50を構成する第1の電極4にスタブ構造を備える例である。図33(a)から明らかなように、第2の電極2上には、半導体層91aが配置されているため、図37(a)および図37(b)では、半導体層91aが表示されているが、半導体層91aの下には、第2の電極2のパターンが同一のパターン形状で配置されている。
【0123】
すなわち、図37(a)に示すように、MIMリフレクタ50を構成する部分において、第2の電極2は、複数のスタブ13Aを備える。
【0124】
また、図37(b)に示すように、MIMリフレクタ50を構成する部分において、第1の電極4は、複数のスタブ13Bを備える。
【0125】
複数のスタブ13Aまたは13Bは、共振器60に面して等間隔に配置されていてもよく、或いは、その間隔が変化するように配置されていてもよい。
【0126】
上記の変形例3・変形例4を組み合わせて、第2の電極2と第1の電極4の両方に複数のスタブを備えていてもよい。
【0127】
電磁波の伝送線路の一部に電磁波の波長の4分の1の長さのスタブを設けて、その中に電磁波を引き込み、それを反射させて伝送線路に戻すことにより共振回路が形成されることが分かっている。これは、伝送線路に入射した電磁波のうち、スタブの長さの4倍の波長を持つ電磁波のみが、スタブの位置で等価的に短絡され、これによって当該電磁波が反射されるため、その電磁波の伝送線路からの漏れが少なくなるという現象である。この方法によれば、入力される電磁波の波長に対してスタブの長さが4分の1波長と決まっているために、電磁波の波長がスタブの長さの4倍になる電磁波に対しては強く共振して反射させることができるが、帯域幅の広い電磁波についてはその反射効果は少ない。
【0128】
変形例3のスタブ13Aの長さは、帯域を持った入射電磁波の中心部分の電磁波の4分の1波長としないで、4分の1からずれた長さにする。例えば、反射させたい周波数幅があったときその周波数幅の中央値の周波数を持つ電磁波を一部反射させるための2波長〜3波長以上の長さのスタブ13Aを多く設けることにより、反射させたい周波数幅の電磁波を幅広い範囲で反射させることが可能である。
【0129】
当然のことながら、電磁波の反射率は4分の1波長のときと比べると小さくなるのであるが、それでもスタブがない場合と比較するとかなりの反射が起こる。そして、共振条件がゆるい分だけ、ある帯域を持った周波数(ある波長の幅を持った電磁波)に対して、満遍なく反射する効果がある。また、多段スタブの間隔は、反射させたい電磁波の周波数幅の中央値の周波数を持つ電磁波に対して、波長の半分程度の長さとすることにより各スタブからの反射の間に強め合う干渉(ブラッグ反射)が起こり、反射波が重ねあわされて、反射率がほぼ100%の大きな値になる。スタブの長さ、数、間隔によって、反射する周波数幅、中心周波数は総合的に決定される。
【0130】
所定の帯域幅を有する電磁波の中心波長をλ0として、スタブの間隔をλ0/2とすると、反射率が100%に近い電磁波の波長範囲Δλを得ることができる。このとき、スタブの長さは、2〜3λ0以上に設計するのがよい。また、スタブの幅がスタブの間隔の半分のとき、スタブ数5〜10個程度の少ない数で100%に近い大きな反射率となる。スタブ幅がそれ以外のときは大きな反射率を得るためにはスタブ数を増やす必要があり、また、周波数幅も狭くなる。しかしながら、これらの長さは限定されるものではなく反射する帯域幅との関係で設計的に規定されるものである。
【0131】
なお、変形例3では、スタブ13AおよびMIMリフレクタにより、漏れ電磁波が反射され、共振器60側に戻される。そして、反射された電磁波が放射電波として放出されるために、能動素子90において放射される電磁波は高出力となる。
【0132】
変形例4においてもスタブ13Bの動作は、スタブ13Aと同様であるため、重複する説明は省略する。
【0133】
なお、第2の電極2と第1の電極4の両方に多段のスタブを設けることにより、片方だけの場合に比べ約半分のスタブ数で同等の大きな反射率を得ることができる。また、周波数幅や中心周波数を決める際の設計の自由度を上げることができるので、設計上極めて有効である。なお、第2の電極2と第1の電極4の双方に付けるスタブの長さ、数、間隔は必ずしも等しい必要はなく、設計上自由に変更することができる。
【0134】
変形例3および変形例4のテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、高効率かつ高出力に、基板に対して横方向に指向性高く放射することができ、しかも集積化が容易となる。
【0135】
変形例3および変形例4のテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、MIMレフレクタを構成する電極にスタブ構造を組み合わせることによって、基板に水平な方向にさらに効率良く、指向性高く電磁波を放射することが可能となる。
【0136】
―変形例5―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例5のテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造の模式的平面構成は、図38に示すように表される。
【0137】
変形例5に係るテラヘルツ発振検出素子においても第1の電極4(4a,4b,4c)、第2の電極2,2a、MIMリフレクタ50、共振器60、能動素子90の構成は、変形例2と同様であるため、以下において、重複説明は省略する。
【0138】
変形例5のテラヘルツ発振検出素子は、図38に示すように、絶縁体基板10と、絶縁体基板10上に配置された第1の電極4(4a,4b,4c)と、第1の電極4a(図31)上に配置された絶縁層3(図31)と、絶縁体基板10上に配置された層間絶縁膜9(図31)と、層間絶縁膜9上に配置され、かつ第1の電極4aに対して絶縁層3を介して第1の電極4に対向して配置された第2の電極2,2aと、第2の電極2上に配置された半導体層91aと、絶縁体基板10上に第1の電極4に隣接し、かつ第2の電極2aとは反対側に第1の電極4に対向して配置された第1スロットライン電極41と、絶縁体基板10上に第2の電極2aに隣接し、かつ第1の電極4とは反対側に第2の電極2aに対向して配置された第2スロットライン電極21と、絶縁層3を挟み第1の電極4aと第2の電極2間に形成されたMIMリフレクタ50と、MIMリフレクタ50に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された共振器60と、共振器60の略中央部に配置された能動素子90と、共振器60に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された第1導波路70と、第1導波路70に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された第1ホーン開口部80と、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第1スロットライン電極41間に配置された第2導波路71と、第2導波路71に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第1スロットライン電極41間に配置された第2ホーン開口部81と、絶縁体基板10上に対向する第2の電極2aと第2スロットライン電極21間に配置された第3導波路72と、第3導波路72に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第2の電極2aと第2スロットライン電極21間に配置された第3ホーン開口部82と、第1の電極4と第2の電極2間に接続されたSBD30とを備える。
【0139】
変形例2と同様に、能動素子90としてはRTDが代表的なものであるが、これ以外のダイオードやトランジスタでも構成可能なものである。その他の能動素子としては、例えば、TUNNETTダイオード、IMPATTダイオード、GaAsFET、GaN系FET、HEMT、HBTなどを適用することもできる。
【0140】
ホーン開口部80〜82は、開口ホーンアンテナを構成する。
【0141】
変形例5のテラヘルツ発振検出素子においては、図38に示すように、出力端におけるスロットライン電極21および41の幅W4は、例えば、160μm程度である。また、図38に示すように、出力端におけるホーン開口部80の幅D20およびホーン開口部81および82の幅D10、および、スロットライン電極21および41の幅W4は、適宜変更可能である。
【0142】
導波路70は、共振器60の開口部に配置される。
【0143】
MIMリフレクタ50は共振器60の開口部と反対側の閉口部に配置される。
【0144】
MIMリフレクタ50を構成する部分において、第2の電極2は、図37(a)に示された変形例3と同様の複数のスタブを備えていても良い。同様に、MIMリフレクタ50を構成する部分において、第2の電極2は、図37(b)に示された変形例4と同様の複数のスタブを備えていても良い。
【0145】
また、上記において、複数のスタブは、共振器60に面して等間隔に配置されていても良く、また、間隔が変化するように配置されていても良い。
【0146】
また、絶縁体基板10は、半導体層91aよりも低誘電率材料の基板からなることが、横方向に電波を効率良く、指向性高く検出する上で望ましい。低誘電率材料の絶縁体基板10としては、第1の実施の形態と同様に、例えば、ポリイミド樹脂基板、テフロン(登録商標)基板などを適用することができる。
【0147】
絶縁体基板10として、ポリイミド樹脂基板を使用すると、全体の受信電波の内、約87%は、絶縁体基板10側から検出され、ホーン開口部80を介して横方向から検出される受信電波は、相対的に増大する点は、変形例2と同様である。
【0148】
また、絶縁体基板10として、テフロン(登録商標)樹脂基板を使用すると、変形例2と同様に、全体の放射電波の内、約75%は、絶縁体基板10側へ放出され、ホーン開口部80を介して横方向から放射される電波は、相対的に増大する点も、変形例2と同様である。
【0149】
変形例5に係るテラヘルツ発振検出素子においては、能動素子90に接続された第1の電極4および第2の電極2からなるテーパスロットアンテナの両サイドに、同じ形状をしたテーパ形状の1対のスロットライン電極41、21を配置することで、変形例2に比べ、検出電波の指向性がさらに向上する。
【0150】
変形例5のテラヘルツ発振検出素子によれば、第1の電極4および第2の電極2からなるテーパスロットアンテナの両サイドに、テーパ形状の1対のスロットライン電極41、21を並列化配置することで、絶縁体基板10上にテーパスロットアンテナを集積化しても、絶縁体基板10の影響を抑制し、充分な放射電波の指向性を得ることができる。
【0151】
中央部の第1の電極4および第2の電極2からなるテーパスロットアンテナから広がった電界が、両サイドに設けた1対のスロットライン電極41、21に引き込まれて、スロットライン電極41、21の端面で反射され、中央部の第1の電極4および第2の電極2に戻ってくる。このとき、中央部の第1の電極4および第2の電極2およびスロットライン電極41、21内には、定在波が形成され、反射してきた電界によって、内部に電磁波が受信される。中央部の第1の電極4および第2の電極2および1対のスロットライン電極41、21からの放射電磁界が、干渉し合うことによって、放射電磁波の指向性が向上する。
【0152】
変形例5のテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、かつスロットライン電極を並列化配置して定在波を有効に発生させることによって、さらに高効率かつ高出力に、基板に対して横方向に指向性高く放射することができ、しかも集積化が容易である。
【0153】
―変形例6―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例6のテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造の模式的平面構成は、図39に示すように表される。
【0154】
変形例6のテラヘルツ発振検出素子においても第1の電極4、第2の電極2、MIMリフレクタ50、共振器60、能動素子90、第1のスロットライン電極41、第2のスロットライン電極21の構成は、第2の実施の形態と同様であるため、以下において、重複説明は省略する。
【0155】
変形例6のテラヘルツ検出素子は、図36に示すように、図35に示した変形例5の電極パターン構成に対して、さらに、1対のスロットライン電極22,42を並列化配置している。すなわち、絶縁体基板10上に第1スロットライン電極41に隣接し、かつ第1の電極4とは反対側に第1スロットライン電極41に対向して配置された第3スロットライン電極42と、絶縁体基板10上に第2スロットライン電極21に隣接し、かつ第2の電極2aとは反対側に第2スロットライン電極21に対向して配置された第4スロットライン電極22と、絶縁体基板10上に対向する第1スロットライン電極41と第3スロットライン電極42間に配置された第4導波路74と、第4導波路74に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1スロットライン電極41と第3スロットライン電極42間に配置された第4ホーン開口部84と、絶縁体基板10上に対向する第2スロットライン電極21と第4スロットライン電極22間に配置された第5導波路73と、第5導波路73に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第2スロットライン電極21と第4スロットライン電極22間に配置された第5ホーン開口部83とを備える。図39において、第1の電極4と第2の電極2間に接続されたSBD30は、図示を省略している。
【0156】
また、絶縁体基板10は、半導体層91aよりも低誘電率材料の基板からなることが、横方向に電波を効率良く、指向性高く放射する上で望ましい。低誘電率材料の絶縁体基板10としては、第1の実施の形態と同様に、例えば、ポリイミド樹脂基板、テフロン(登録商標)基板などを適用することができる。
【0157】
図39の構成において、スロットライン電極21,41の外側に1対のスロットライン電極22,42をさらに並列化配置することによって、指向性がさらに向上する。
【0158】
変形例6のテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、かつ2対のスロットライン電極を並列化配置して定在波を有効に発生させることによって、さらに高効率かつ高出力に、基板に対して横方向に指向性高く放射することができ、しかも集積化が容易である。
【0159】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子によれば、共鳴トンネルダイオードとSBDの並列構成からなる電子デバイス単体でテラヘルツ電磁波を発振検出するので、発振器および検出器が、従来技術よりも飛躍的に小さくなり、高感度、低雑音でテラヘルツ電磁波を発振検出可能である。
【0160】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子によれば、同一工程で製造可能なテラヘルツ検出素子と組み合わせることによって、送信器および検出器が、従来技術よりも飛躍的に小さくなり、高感度、低雑音でテラヘルツ電磁波の無線送受信方式を提供することも可能である。
【0161】
また、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振素子(RTD)においては、テラヘルツ検出素子としても利用可能であるため、同一の素子で発振素子としても検出素子としても機能するデバイスの構成が可能である。
【0162】
本発明によれば、RTDを利用し、テラヘルツ波の透過を利用することで紙類による減衰の大きさを基にして、枚数の判定が可能な透過型テラヘルツ波検査装置を提供することができる。
【0163】
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置について記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0164】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の透過型テラヘルツ波検査装置は、紙類の検査、金券の検査、偽札の検査など、幅広い分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0166】
1…半導体基板
2、2a…第2の電極
3…絶縁層
4、4a、4b、4c…第1の電極
5,6…凹部
7…凸部
8…突起部
9…層間絶縁膜
10…絶縁体基板
13A,13B…スタブ
15…直流電源
21,22,41,42…スロットライン電極
30…ショットキーバリアダイオード(SBD)
50…MIMリフレクタ
60…共振器
70,71,72,73,74…導波路
80,81,82,83,84…ホーン開口部
90…能動素子
91a…半導体層
100…発振器
200…検出器
300…紙類
400…ビーム
500…支持台
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型テラヘルツ波検査装置に関し、特に、共鳴トンネルダイオードを利用した透過型テラヘルツ波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トランジスタなどの電子デバイスの微細化が進み、その大きさがナノサイズになってきたため、量子効果と呼ばれる新しい現象が観測されるようになっている。そして、この量子効果を利用した超高速デバイスや新機能デバイスの実現を目指した開発が進められている。
【0003】
一方、そのような環境の中で、特に、テラヘルツ帯と呼ばれる、周波数が0.1THz(1011Hz)〜10THzの周波数領域を利用して大容量通信や情報処理、あるいはイメージングや計測などを行う試みが行われている。この周波数領域は、光と電波の中間の未開拓領域であり、この周波数帯で動作するデバイスが実現されれば、上述したイメージング、大容量通信・情報処理のほか、物性、天文、生物などのさまざまな分野における計測など、多くの用途に利用されることが期待されている。
【0004】
一方、テラヘルツ波を用いた紙類の検査装置として、反射・干渉を用いる例は、開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−300279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、紙類によるテラヘルツ波の反射率は高くはなく、紙幣や紙類が理想的にきちんと重ねられている状態でなければ、干渉を観測することは難しい。また、干渉は、紙類の厚さによって、周期的に起こるため、枚数の特定をすることが難しい。また、テラヘルツ波は、紙類を透過し易いため、反射を利用すると、測定の精度が低下する。
【0007】
本発明の目的は、共鳴トンネルダイオードを利用し、テラヘルツ波の透過を利用することで紙類による減衰の大きさを基にして、枚数の判定が可能な透過型テラヘルツ波検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一態様によれば、テラヘルツ発振素子を備える発振器と、テラヘルツ検出素子を備える検出器と、前記発振器と前記検出器との間に配置された紙類とを備え、前記テラヘルツ発振素子より放射されたテラヘルツ波が前記紙類を透過して得られる透過テラヘルツ波を前記テラヘルツ検出素子によって検出し、前記紙類による減衰の大きさを基にして、前記紙類の枚数を判定する透過型テラヘルツ波検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、共鳴トンネルダイオードを利用し、テラヘルツ波の透過を利用することで紙類による減衰の大きさを基にして、枚数の判定が可能な透過型テラヘルツ波検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置の模式的ブロック構成図。
【図2】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置の反射波の影響を説明する模式的ブロック構成図。
【図3】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、発振器と検出器の距離D=2mmのときの検出強度と微小距離Δdとの関係を示す図。
【図4】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、発振器と検出器の距離D=3cmのときの検出強度と微小距離Δdとの関係を示す図。
【図5】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、発振器と検出器の距離D=5cmのときの検出強度と微小距離Δdとの関係を示す図。
【図6】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、検出強度と、発振器と検出器の距離Dとの関係を示す図。
【図7】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、(a)発振器と検出器の距離Dが相対的に近い場合のテラヘルツ波の広がりの様子を説明する図、(b)発振器と検出器の距離Dが相対的に遠い場合のテラヘルツ波の広がりの様子を説明する図。
【図8】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置の測定系の模式的鳥瞰構造図。
【図9】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、検出強度と紙幣枚数nとの関係を示す図。
【図10】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、透過率と紙幣枚数nとの関係を示す図。
【図11】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、紙幣中での減衰、干渉の影響を考慮したモデルを説明する模式的ブロック構成図。
【図12】紙幣中でのテラヘルツ波の干渉の影響を考慮したモデルを説明する模式的ブロック構成図。
【図13】図12のテラヘルツ波の干渉の影響を考慮したモデルより、透過率の理論式によって得られた透過率と紙幣枚数nとの関係を示す図。
【図14】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の模式的鳥瞰図。
【図15】(a)図14のI−I線に沿う模式的断面構造図、(b)図14のII−II線に沿う模式的断面構造図。
【図16】(a)実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD)の模式的断面構造図、(b)図16(a)の変形例の模式的断面構造図。
【図17】同一工程で製造されたテラヘルツ発振素子RTD(O)とテラヘルツ検出素子RTD(D)の模式的断面構造であって、集積化されたテラヘルツ発振検出素子(RTD―RTD)の模式的断面構造図。
【図18】(a)テラヘルツ発振素子の模式的回路構成図、(b)テラヘルツ発振素子の簡易等価回路構成図。
【図19】(a)テラヘルツ検出素子の模式的回路構成図、(b)テラヘルツ検出素子の簡易等価回路構成図。
【図20】(a)テラヘルツ発振素子のアンテナ系も含めた模式的等価回路構成図、(b)図20(a)のRTDの等価回路構成図。
【図21】テラヘルツ検出素子のアンテナ系も含めた模式的等価回路構成図。
【図22】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子の電流−電圧特性例。
【図23】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子において、共振器長L1をパラメータとする発振周波数fとピーク電流Ipの関係を示す図。
【図24】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子において、発振強度と発振周波数fの関係を示す図。
【図25】テラヘルツ発振検出素子に適用可能なショットキーバリアダイオードの電流−電圧特性の模式図。
【図26】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD)の電流−電圧特性の模式図。
【図27】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD)の電流−電圧特性例であって、室温動作時、テラヘルツ波の照射時(A)と、テラヘルツ波の非照射時(B)の特性例。
【図28】(a)実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の回路構成図、(b)RTDに逆バイアス、SBDに順バイアス印加時の動作特性例。
【図29】(a)実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の回路構成図、(b)RTDに順バイアス、SBDに逆バイアス印加時の動作特性例。
【図30】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例1のテラヘルツ発振検出素子(RTD)の模式的鳥瞰図。
【図31】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例2のテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の模式的鳥瞰図。
【図32】図31に対応した第1の電極4、第2の電極2aおよび半導体層91aのパターン構造の模式的平面図。
【図33】(a)図31のIII−III線に沿う模式的断面構造図、(b)図31のIV−IV線に沿う模式的断面構造図。
【図34】変形例2のテラヘルツ検出素子において、絶縁体基板をサンプル表面に貼付け、半導体基板を除去した様子を示す模式的鳥瞰図。
【図35】図34の裏面から見た様子を示す模式的鳥瞰図。
【図36】変形例2のテラヘルツ発振検出素子の電磁界シミュレーション結果。
【図37】(a)実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例3のテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造の模式的平面図、(b)実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例4に係るテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造の模式的平面図。
【図38】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例5のテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の模式的平面図。
【図39】実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例6のテラヘルツ発振検出素子の模式的平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下において、同じブロックまたは要素には同じ符号を付して説明の重複を避け、説明を簡略にする。図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、各構成部品の配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
[実施の形態]
(透過型テラヘルツ波検査装置)
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置の模式的ブロック構成は、図1に示すように、テラヘルツ発振素子を備える発振器100と、テラヘルツ検出素子を備える検出器200と、発振器100と検出器200との間に配置された紙類300とを備える。ここで、テラヘルツ発振素子より放射されたテラヘルツ波が紙類300を透過して得られる透過テラヘルツ波をテラヘルツ検出素子によって検出し、紙類300による減衰の大きさを基にして、紙類300の枚数を判定することができる。
【0014】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、反射波の影響を検討する模式的ブロック構成は、図2に示すように表される。発振器100と検出器200との間の距離Dとすると、発振器100からの放射テラヘルツ波hνiに対して、検出器200などからの反射テラヘルツ波hνrの強度を測定することで、反射波の影響を把握することができる。
【0015】
反射率Rは、exp(−iδ)の関数で表される。ここで、δ=2π/λ・n1・dで表される。n1は、紙幣などの紙類300における屈折率を表し、dは、紙幣などの紙類300の膜厚を表し、λはテラヘルツ波の波長を表す。反射率Rは、紙類300の枚数に応じて周期的に変化するため、反射率の変化によって、紙類300の枚数を検出しようとすると、枚数が、例えば、1枚か、3枚かを見分けることができない。また、紙類300に対するテラヘルツ波の反射率は、低く、約20%以下である。例えば、図2の構成において、紙類300が無い場合の検出器200における検出強度の測定例では、約75.3mVであるのに対して、紙類300が1枚存在すると、約61.5mVであり、約80%以上透過し、反射率は約20%以下である。
【0016】
―発振器と検出器の距離Dと検出強度の関係―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、発振器100と検出器200の距離D=2mmのときの検出強度と微小距離Δdとの関係は、図3に示すように表され、発振器100と検出器200の距離D=3cmのときの検出強度と微小距離Δdとの関係は、図4に示すように表され、発振器100と検出器200の距離D=5cmのときの検出強度と微小距離Δdとの関係は、図5に示すように表される。図3〜図5において、測定条件は、発振器100と検出器200との距離Dを一定間隔とした後、発振器100を微小距離Δdだけ変化させている。
【0017】
図3〜図5から明らかなように、Δd=λ/2=0.5mmの周期で検出強度が変化しており、反射波の存在が認められる。また、発振器100と検出器200との距離Dが大きくなるほど、検出強度変化の振幅が小さくなることがわかる。このように、反射波の影響の有無を干渉の存在により確認することができる。検出器200などからの反射波の影響で、発振器100からの発振特性にも変化が生ずる。
【0018】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、検出強度と、発振器と検出器の距離Dとの関係は、図6に示すように表される。図6において、測定条件は、発振器100から300GHzのテラヘルツ波を発振させた状態で、発振器100と検出器200との距離Dを変化させている。
【0019】
図6に示すように、検出強度は、発振器100と検出器200との距離Dの増加とともに、指数関数的に減少している。ここで、例えば、検出強度f(x)は、距離をxとすると、exp(−αx)に比例している。ここで、αは定数である。
【0020】
300GHzのテラヘルツ波の大気中における減衰量は、0.001%/cm程度であることから、大気による減衰の影響は小さい。
【0021】
一方、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、発振器100と検出器200の距離Dが相対的に近い場合のテラヘルツ波のビーム400の広がりの様子は、図7(a)に示すように表され、発振器100と検出器200の距離Dが相対的に遠い場合のテラヘルツ波のビーム400の広がりの様子は、図7(b)に示すように表される。図7(a)および図7(b)から明らかなように、テラヘルツ波ビーム400のに広がりの影響により、発振器100と検出器200の距離Dが大きくなると、検出される電磁波量が減少している。
【0022】
―紙幣の枚数と検出強度の関係―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置の測定系の模式的鳥瞰構造は、図8に示すように表される。紙幣からなる紙類300が支持台500上に固定され、発振器100と検出器200との間に配置されている。
【0023】
図8に示すように、発振器100と検出器200の間に紙幣を入れていき、検出器200において、透過テラヘルツ波の強度変化(透過率変化)を測定した結果は、図9〜図10に示すように表される。すなわち、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、検出強度と紙幣枚数nとの関係の測定結果は、図9に示すように表され、透過率と紙幣枚数nとの関係は、図10に示すように表される。
【0024】
図9から明らかなように、反射率測定型の検査装置とは異なり、紙幣枚数nの増加に伴い、検出強度が減少する。図9の例では、検出強度の値が約30mVが検出限界DLであり、紙幣枚数n=5まで検出可能であることがわかる。
【0025】
また、図10から明らかなように、紙幣枚数nの増加に伴い、透過率も減少する。
【0026】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置において、紙幣中での減衰・干渉、紙幣間での干渉の影響を考慮したモデルを説明する模式的ブロック構成は、図11に示すように表される。図11において、紙幣中での干渉をPI、紙幣間での干渉をPDで表している。紙幣での減衰・干渉と、紙幣間での干渉を考慮して、透過率を計算した結果を計算値として、図10中に示す。ここで、紙幣での減衰は、図6において説明した検出強度f(x)∝exp(−αx)に基づいている。
【0027】
図10の計算値と実験値の比較より、紙幣中で伝播するテラヘルツ波も指数関数的に減衰することが確認された。
【0028】
―紙幣中でのテラヘルツ波の干渉―
ここで、参考までに、紙幣中でのテラヘルツ波の干渉について説明する。
【0029】
紙幣中でのテラヘルツ波の干渉の影響を考慮したモデルは、図12に示すように表される。発振器100から放射されたテラヘルツ波I1は、紙類300中でI2に減衰され、さらに検出器200において、I3として検出される。一方、紙類300中では、干渉効果によって、強度変調されてI4として伝播され、さらに検出器200において、I5として検出される。
【0030】
図12に基づいて、紙幣中でのテラヘルツ波の干渉効果を考慮した透過率Tは、次式で表される。即ち、
T=1/[1+4Rsin2(χn1L)/(1−R)2]
ここで、n1は屈折率、χ=2π/λ、反射率R=|(1−n1)/(1+n1|2で求めている。
【0031】
図12のテラヘルツ波の干渉の影響を考慮したモデルより、上記の透過率の理論式によって得られた透過率と紙幣枚数nとの関係は、図13に示すように表される。図13の結果では、紙幣枚数nに応じて、透過率が周期的に変化している。
【0032】
図12および図13より明らかなように、紙幣中でのテラヘルツ波の干渉のみを考慮したモデルでは、透過率が指数関数的に減少するという実験結果を説明することができない。
【0033】
以上の結果から、紙幣での減衰は、図6において説明した検出強度f(x)∝exp(−αx)に基づき、かつ図10および図11に示すように、紙幣中での減衰・干渉、紙幣間での干渉の影響を考慮したモデルに基づき、実験結果を説明することができる。
【0034】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置によれば、共鳴トンネルダイオードを利用し、テラヘルツ波の透過を利用することで紙類による減衰の大きさを基にして、枚数の判定が可能である。
【0035】
尚、発振器100を構成するテラヘルツ発振素子と、検出器200を構成するテラヘルツ検出素子は、いずれもRTD(Resonant Tunneling Diode:共鳴トンネルダイオード)を用いて構成することができる。基本的な構造は、RTDと、RTDと集積化されたスロットアンテナ構造からなる。
【0036】
また、発振器100を構成するテラヘルツ発振素子と、検出器200を構成するテラヘルツ検出素子には、1つの素子で発振素子と検出素子を実現可能なテラヘルツ発振検出素子を適用することもできる。基本的な構造は、RTDと、RTDと集積化されたスロットアンテナ構造からなり、この基本的な構造によって、テラヘルツ発振検出素子を実現可能である。以下の説明では、主として、テラヘルツ発振検出素子について詳述する。
【0037】
(テラヘルツ発振検出素子)
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子の模式的鳥瞰構造は、図14に示すように表され、図14のI−I線に沿う模式的断面構造は、図15(a)に示すように表され、図14のII−II線に沿う模式的断面構造は、図15(b)に示すように表される。
【0038】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子の模式的鳥瞰構造は、図14〜図15に示すように、半導体基板1と、半導体基板1上に配置された第2の電極2,2aと、第2の電極2上に配置された絶縁層3と、第2の電極2に対して絶縁層3を介して配置され、かつ半導体基板1上に第2の電極2に対向して配置された第1の電極4(4a,4b,4c)と、絶縁層3を挟み第1の電極4aと第2の電極2間に形成されたMIMリフレクタ50と、MIMリフレクタ50に隣接して、半導体基板1上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された共振器60と、共振器60の略中央部に配置された能動素子90と、共振器60に隣接して、半導体基板1上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された導波路70と、導波路70に隣接して、半導体基板1上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置されたホーン開口部80と、第1の電極4と第2の電極2間に接続されたSBD30とを備える。
【0039】
能動素子90としてはRTDが代表的なものであるが、これ以外のダイオードやトランジスタでも構成可能なものである。その他の能動素子としては、例えば、タンネット(TUNNETT:Tunnel Transit Time)ダイオード、インパット(IMPATT:Impact Ionization Avalanche Transit Time)ダイオード、GaAs系電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、GaN系FET、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)などを適用することもできる。
【0040】
ホーン開口部80は、開口ホーンアンテナから構成される。ホーン開口部の開口角θは、例えば、10度程度以下に設定することが、電磁波(hν)の検出方向に指向特性を持たせる上で望ましい。ホーン開口部80の長さL3は、例えば、約700μm程度以下である。ホーン開口部80の先端部における開口幅は、例えば、約160μm程度である。
【0041】
導波路70は、共振器60の開口部に配置されている。導波路70の長さL2は、例えば、約700μm程度以下である。また、導波路70における第1の電極4と第2の電極2間の間隔は、例えば、約24μm程度である。
【0042】
なお、ホーン開口部80のホーン形状は、電磁波を空気中から有効に検出するために必要な構造である。ホーン形状によって、インピーダンス整合性良く電磁波を空気中から効率よく検出することができる。尚、ホーンの形状は、直線性形状に限らず、非直線性形状、曲線形状、2次曲線形状、放物線形状、階段状形状などであっても良い。
【0043】
共振器60には、2箇所の凹部5、6が形成されており、この2つの凹部5、6に挟まれて、凸部7が形成されている。そして、第1の電極4の凸部7の略中央部には突起部8が形成され、この突起部8の下側に第2の電極2と挟まれるように、能動素子90が配置される。
【0044】
共振器60の長さL1は、例えば、約30μm程度以下である。突起部8の長さは、例えば、約6μm程度以下である。また、凹部5、6の幅(第1の電極4と第2の電極2との間隔)は、例えば、約4μm程度である。能動素子90の寸法は、例えば、約1.4μm2程度である。但し、能動素子90のサイズは、この値に限定されず、例えば、約5.3μm2程度以下であってもよい。能動素子90の詳細構造については後述する。共振器60の各部のサイズは、上記寸法に限定されるものではなく、受信するテラヘルツ電磁波の周波数に応じて設計上適宜設定されるものである。
【0045】
また、図14に示すように、導波路70における第1の電極4と第2の電極2間の間隔に比べて、共振器60が形成されている部分の第1の電極4と第2の電極2間の間隔は、狭い。
【0046】
MIMリフレクタ50は共振器60の開口部と反対側の閉口部に配置されている。金属/絶縁体/金属からなるMIMリフレクタ50の積層構造により、第1の電極4と第2の電極2は高周波的に短絡される。また、MIMリフレクタ50は、直流的には開放(オープン)でありながら、高周波を反射させることが可能となるという効果を有する。
【0047】
第1の電極4(4a,4b,4c)および第2の電極2,2aは、いずれも例えば、Au/Pd/Tiのメタル積層構造からなり、Ti層は、後述する半絶縁性のInP基板からなる半導体基板1との接触状態を良好にするためのバッファ層である。第1の電極4a,4b,4cおよび第2の電極2,2aの各部の厚さは、例えば、約数100nm程度であり、全体として、図15(a)および図15(b)に示すような平坦化された積層構造が得られている。なお、第1の電極4、第2の電極2は、いずれも真空蒸着法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0048】
さらに詳細には、第1の電極4aおよび第1の電極4cは、例えば、Au/Pd/Tiからなり、第1の電極4bは、例えば、Au/Tiからなる。第2の電極2は、例えば、Au/Pd/Tiからなり、第2の電極2aは、例えば、Au/Tiからなる。
【0049】
尚、第1の電極4bの表面層を形成するTi層は、ボンディングワイヤ(図示省略)によって取り出し電極を形成する際、接触抵抗を低減するために除去することが望ましい。同様に、第2の電極2aの表面層を形成するTi層は、ボンディングワイヤ(図示省略)によって取り出し電極を形成する際、接触抵抗を低減するために除去することが望ましい。
【0050】
絶縁層3は、例えば、SiO2膜で形成することができる。その他、Si3N4膜、SiON膜、HfO2膜、Al2O3膜などを適用することもできる。なお、絶縁層3の厚さは、MIMリフレクタ50の幾何学的な平面寸法と、回路特性上の要求されるキャパシタ値を考慮して決めることができ、例えば、数10nm〜数100nm程度である。絶縁層3は、化学的気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0051】
―共鳴トンネルダイオード―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な共鳴トンネルダイオード(RTD)の模式的断面構造は、図16(a)に示すように表され、その変形例の模式的断面構造は、図16(b)に示すように表される。
【0052】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な能動素子90としてRTDの構成例は、図16(a)に示すように、半絶縁性のInP基板からなる半導体基板1上に配置され,n型不純物を高濃度にドープされたGaInAs層91aと、GaInAs層91a上に配置され,n型不純物をドープされたGaInAs層92aと、GaInAs層92a上に配置されたアンドープのGaInAs層93bと、GaInAs層93b上に配置されたAlAs層94a/GaInAs層95/AlAs層94bから構成されたRTD部と、AlAs層94b上に配置されたアンドープのGaInAs層93bと、GaInAs層93a上に配置され,n型不純物をドープされたGaInAs層92bと、GaInAs層92b上に配置され,n型不純物を高濃度にドープされたGaInAs層91bと、GaInAs層91b上に配置された第1の電極4aと、GaInAs層91a上に配置された第2の電極2とを備える。
【0053】
変形例では、図16(b)に示すように、n型不純物を高濃度にドープされたGaInAs層91b上に更にn型不純物を高濃度にドープされたGaInAs層91cを配置し、第1の電極4aとのコンタクトを良好にしている。
【0054】
図16(a)および図16(b)に示すように、RTD部は、GaInAs層95をAlAs層94a、94bで挟んで形成されている。このように積層されたRTD部は、スペーサとして用いられるアンドープGaInAs層93a、93bを介在させてn型のGaInAs層92a、92b、及びn+型のGaInAs層91a、91b、若しくは91cを介して、第2の電極2と第1の電極4にオーミックに接続される構造となっている。
【0055】
ここで、各層の厚さは、例えば以下の通りである。
【0056】
n+型のGaInAs層91a、91b・91cの厚さは、それぞれ例えば、約400nm、15nm・8nm程度である。n型のGaInAs層92aおよび92bの厚さは、略等しく、例えば、約25nm程度である。アンドープGaInAs層93a・93bの厚さは、例えば、約2nm・20nm程度である。AlAs層94aおよび94bの厚さは、等しく、例えば、約1.1nm程度である。GaInAs層95の厚さは、例えば、約4.5nm程度である。
【0057】
なお、図16(a)および図16(b)に示す積層構造の側壁部には、SiO2膜、Si3N4膜、SiON膜、HfO2膜、Al2O3膜など、若しくはこれらの多層膜からなる絶縁膜を堆積することもできる。絶縁層は、CVD法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0058】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子は、テラヘルツ発振素子とテラヘルツ検出素子を同一の製造工程で形成することも可能である。この場合、SBDの代わりにRTD(D)を検出素子として用いる。同一工程で製造されたテラヘルツ発振素子RTD(O)とテラヘルツ検出素子RTD(D)の模式的断面構造であって、集積化されたテラヘルツ発振検出素子(RTD―RTD)の模式的断面構造は、図17に示すように表される。各層の構成は、図16(b)と同様であるため、重複説明は省略する。
【0059】
例えば、同一工程で製造されたテラヘルツ発振検出素子において、室温で観測した発振周波数は、約300GHz程度である。また、例えば、発振時におけるテラヘルツ発振検出素子の電流密度Jpは、約7mA/μm2程度である。
【0060】
尚、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子においては、テラヘルツ発振素子に比べ、バリア層となるAlAs層94aおよび94bの厚さを厚く形成して、検出時におけるテラヘルツ検出素子の電流密度Jpを低く設定して、低雑音化を図っても良い。同様に、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子においては、テラヘルツ発振素子に比べ、n型のGaInAs層92aおよび92bのドーピングレベルを低く形成して、検出時におけるテラヘルツ検出素子の電流密度Jpを低く設定して、低雑音化を図っても良い。発振素子の場合は、RTDの電流密度が大きい方が望ましいが、検出素子として用いる場合に、発振が雑音となる可能性があるので、RTDの電流密度は、相対的に低い方が望ましい。このため、発振が雑音となる可能性がある場合には、このように電流密度を敢えて低下させて低雑音化のための構造を備えていても良い。
【0061】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子においては、寄生発振抑制用のビスマス(Bi)配線も不要である。
【0062】
―回路構成―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−RTD)の発振素子(RTD)の模式的回路構成は、図18(a)に示すように、能動素子90を構成するダイオードと、MIMリフレクタ50を構成するキャパシタCMの並列回路によって表される。第1の電極4にはダイオードのアノードが接続され、第2の電極2には、ダイオードのカソードが接続され、第1の電極4にはマイナスの電圧、第2の電極2にはプラスの電圧が印加される。発振状態においては、ホーン開口部の開口方向であるY軸方向からの電磁波(hν)が指向性良く検出される。
【0063】
図19(a)に対応する簡易等価回路構成は、図19(b)に示すように、能動素子90を構成するRTDは、キャパシタC01とインダクタL01の並列回路で表わすことができ、MIMリフレクタ50のキャパシタCMがさらに並列に接続される。
【0064】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−RTD)の検出素子(RTD)の模式的回路構成は、図19(a)に示すように、能動素子90を構成するダイオードと、MIMリフレクタ50を構成するキャパシタCMの並列回路によって表される。第1の電極4にはダイオードのアノードが接続され、第2の電極2には、ダイオードのカソードが接続され、第1の電極4にはマイナスの電圧、第2の電極2にはプラスの電圧が印加される。検出状態においては、ホーン開口部の開口方向であるY軸方向からの電磁波(hν)が指向性良く検出される。
【0065】
図19(a)に対応する簡易等価回路構成は、図19(b)に示すように、能動素子90を構成するRTDは、キャパシタC01とインダクタL01の並列回路で表わすことができ、MIMリフレクタ50のキャパシタCMがさらに並列に接続される。
【0066】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−RTD)の発振素子(RTD)のアンテナ系も含めた模式的等価回路構成は、図20(a)に示すように、ダイオード(RTD)系を表す能動素子90・キャパシタCMの並列回路に対して、アンテナ(ANT)系を表すアンテナインダクタL・アンテナキャパシタCA・アンテナ放射抵抗GANTの並列回路が並列に接続される。
【0067】
図20(a)の能動素子90を構成するダイオードの等価回路構成は、図20(b)に示すように、コンタクト抵抗Rc・コンタクトキャパシタCcからなるコンタクト部分の並列回路と、外部ダイオードキャパシタCD・内部ダイオードキャパシタCd・ダイオード負性抵抗(−Gd)からなるダイオード部分の並列回路と、インダクタLM・抵抗RMからなるメサ部分の直列回路が直列接続された構成を備える。
【0068】
ここで、等価回路全体のアドミッタンスYは、
Y=Yd+Yc・Ya・Ym/(Yc・Ya+Ya・Ym+Yc・Ym)
で表される。ここで、Yd=−Gd+jωCd、Yc=1/Rc+jωCc、Ym=1/(Rm+jωLm)であり、Yaはアンテナ系のアドミッタンス、ωは発振角周波数を表す。各パラメータは、能動素子90を構成するダイオード(RTD)の物性値から求めることができる。
【0069】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−RTD)の検出素子(RTD)のアンテナ系も含めた模式的等価回路構成は、図21に示すように、ダイオード(RTD)系を表す能動素子90・キャパシタCMの並列回路に対して、アンテナ(ANT)系を表すアンテナインダクタL・アンテナキャパシタCA・アンテナ放射抵抗GANTの並列回路が並列に接続される。
【0070】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子の電流−電圧特性例は、図22に示すように表され、約0.75Vにおいて、ピーク電流Ipの値は、約12mAが得られている。また、0.7V〜1.0Vの範囲において、負性微分抵抗(NDR:Negative Differential resistance)得られている。峰谷比(peak-to-valley ratio)は、約3である。
【0071】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子において、共振器長L1をパラメータとする発振周波数fとピーク電流Ipの関係は、図23に示すように表される。共振器長L1=80μmでは、約250〜300GHz、L1=60μmでは、約300〜320GHz、L1=40μmでは、約350〜370GHz、L1=20μmでは、約380〜400GHzの発振周波数fが得られている。ピーク電流Ipの値は、約4〜10mAである。共振器長L1が短くなると、発振周波数fは増加する傾向にある。
【0072】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子において、発振強度と発振周波数fの関係は、図24に示すように表される。室温で、約300GHzの発振周波数fが得られている。この発振周波数fの値は、図16に示される各層の構造、メサ領域の寸法、アンテナ構造などを調整することによって、変更可能である。
【0073】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子に適用可能なショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)の電流−電圧特性は、模式的に図25に示すように表される。
【0074】
一方、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD)の電流−電圧特性は、模式的に図26に示すように、順方向および逆方向には、負性抵抗を有するため、SBDに比べて非線形性の大きい領域が存在し、RTDを検出素子として適用する場合、感度が高くなる。
【0075】
SBDにおいては、ショットキーバリアを越えて流れる電子の数は、温度と共に上昇するため、検出感度を上げるために温度を上げると、熱雑音が増大し、S/N比が低下する。一方、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD)においては、トンネル電流に寄与する電子は、フェルミエネルギーレベルよりも低い電子である。このため、トンネル電流の温度依存性は小さい。したがって、実施の形態に係るテラヘルツ発振検出素子(RTD)においては、負性抵抗の前後では、非線形性が大きいので、S/N比が向上する。
【0076】
図26に示すように、電流−電圧特性上の動作点QではNDR領域である。実施の形態に係るテラヘルツ発振検出素子において検出感度を増大するためには、電流−電圧特性上の動作点を非発振状態とするとともに、微分抵抗の変化率を最大化することが望ましい。このような動作点は、実施の形態に係るテラヘルツ発振検出素子の電流−電圧特性上の動作点Pおよび動作点Qに相当する。すなわち、電流−電圧特性上の動作点Pおよび動作点Rでは、NDR領域にあり、しかも検出感度が極大値を取る。
【0077】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD)の電流−電圧特性例であって、室温動作において、テラヘルツ波の照射時(A)と、テラヘルツ波の非照射時(B)の特性変化は、図27に示すように表される。図27に示すように、バイアス電圧を例えば、0.5Vと設定することによって、テラヘルツ電磁波を良好な感度で、室温動作で検出可能である。
【0078】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の回路構成は、図28(a)に示すように表され、RTDに逆バイアス、SBDに順バイアス印加時の動作特性例は、図28(b)に示すように表される。図28(b)において、PRは、RTDに逆バイアス印加時の発振時のバイアス点に相当する。
【0079】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)の回路構成は、図29(a)に示すように表され、RTDに順バイアス、SBDに逆バイアス印加時の動作特性例は、図29(b)に示すように表される。図29(b)において、PDは、RTDに順バイアス印加時の検出時のバイアス点に相当する。
【0080】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)においては、RTDとSBDを並列に接続している。このとき、RTDが発振素子として機能する方向に電流を流すときに、SBDの順方向に電流が流れるようにすることで、SBDが寄生発振の抑制素子となる。
【0081】
これとは逆の向きに電流を流すと、SBDは絶縁体として機能し、RTDは、検出素子として機能する。
【0082】
RTDとSBDは、いずれも非対称な電流―電圧特性を示すので、これらをうまく組み合わせることで、実施の形態に係るテラヘルツ発振検出素子(RTD−SBD)が、発振素子としても検出素子としても機能することができる。
【0083】
ここで、RTDと並列に接続しているSBDはあくまでも整流のためであり、検出素子として用いるものではない。SBDの理想としては、順方向バイアスでは、RTDが負性抵抗を示す電圧までは電流が流れなくて、負性抵抗の領域で寄生発振を抑制するような抵抗体として働くことである。一方、逆方向バイアスでは、電流が流れないような絶縁体として働くことである。これにより発振とは関係のない電圧では回路全体に流れる電流が少なくて済むという利点がある。
【0084】
―変形例1―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例1のテラヘルツ発振検出素子の模式的鳥瞰構造は、図30に示すように表される。
【0085】
変形例1においては、図30に示すように、半導体基板1は、共振器60,導波路70,およびホーン開口部80を形成する第1の電極4および第2の電極2の配置される領域において薄層化されている。また、半導体基板1上には、第1の電極4と第2の電極2間に接続されたSBD30とを備える。さらに、図30に示すように、第1の電極4と第2の電極2間の導波路70,およびホーン開口部80の半導体基板1aは、完全に除去されていても良い。その他の構成は、図14の構成と同様であるため、各部の説明は省略する。
【0086】
図30において、薄層化された半導体基板1aの厚さは、例えば、約20μm程度である。また、導波路70の長さは、例えば、約700μm程度以下であり、ホーン開口部80の長さも例えば、約700μm程度以下である。MIMリフレクタ50を含む変形例1に係るテラヘルツ検出素子の全体の長さは、例えば、約1600μm程度以下でる。
【0087】
変形例1のテラヘルツ発振検出素子の電磁界シミュレーション結果によれば、薄層化された半導体基板1a上のY軸方向に延伸する電極パターンに沿って、Y軸方向に一定の間隔で電界パターンが発生し、半導体基板1aに垂直方向(−Z軸方向)の電界の漏れはほとんどない。また、XYZ軸方向における3次元の電磁界シミュレーション結果によれば、Y軸方向の指向性が顕著に良好となる。また、Y軸方向放射強度と発振周波数との関係からは高調波成分が抑制され、指向性が向上する結果も得られている。薄層化された半導体基板1aを形成する技術としては、メムス(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)素子の形成技術を適用することができる。
【0088】
変形例1のテラヘルツ発振検出素子によれば、半導体基板を薄層化することによって、基板の影響を抑制することが可能となり、指向性を向上させ、高効率に、基板に対して横方向の電波を発振検出することができ、しかも集積化が容易である。
【0089】
変形例1のテラヘルツ発振検出素子によれば、半導体基板を薄層化することによって、基板の影響を抑制することが可能となり、基板に水平な方向に指向性を向上させ、効率良く、テラヘルツ電磁波を発振検出することが可能となる。
【0090】
―変形例2―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例2のテラヘルツ発振検出素子の模式的鳥瞰構造は、図31に示すように表され、また、図31に対応した第1の電極4、第2の電極2aおよび半導体層91aのパターン構造の模式的平面図は、図32に示すように表される。また、図31のIII−III線に沿う模式的断面構造は、図33(a)に示すように表され、図31のIV−IV線に沿う模式的断面構造は、図31(b)に示すように表される。
【0091】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子は、図31〜図33に示すように、絶縁体基板10と、絶縁体基板10上に配置された第1の電極4(4a,4b,4c)と、第1の電極4a上に配置された絶縁層3と、絶縁体基板10上に配置された層間絶縁膜9と、層間絶縁膜9上に配置され、かつ第1の電極4aに対して絶縁層3を介して第1の電極4に対向して配置された第2の電極2,2aと、第2の電極2上に配置された半導体層91aと、絶縁層3を挟み第1の電極4aと第2の電極2間に形成されたMIMリフレクタ50と、MIMリフレクタ50に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された共振器60と、共振器60の略中央部に配置された能動素子90と、共振器60に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された導波路70と、導波路70に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置されたホーン開口部80と、第1の電極4と第2の電極2間に接続されたSBD30とを備える。
【0092】
ホーン開口部80は、開口ホーンアンテナから構成される。ホーン開口部の開口角θは、例えば、10度程度以下に設定することが、テラヘルツ電磁波(hν)の検出方向に指向特性を持たせる上で望ましい。ホーン開口部80の長さL3は、例えば、約700μm程度以下である。ホーン開口部80の先端部における開口幅は、例えば、約160μm程度である。
【0093】
導波路70は、共振器60の開口部に配置されている。導波路70の長さL2は、例えば、約700μm程度以下である。また、導波路70における第1の電極4と第2の電極2間の間隔は、例えば、約24μm程度である。
【0094】
なお、ホーン開口部80のホーン形状は、テラヘルツ電磁波を空気中から有効に検出するために必要な構造である。ホーン形状によって、インピーダンス整合性良くテラヘルツ電磁波を空気中から効率よく検出することができる。尚、ホーンの形状は、直線性形状に限らず、非直線性形状、曲線形状、2次曲線形状、放物線形状、階段状形状などであっても良い。
【0095】
共振器60には、2箇所の凹部5、6が形成されており、この2つの凹部5、6に挟まれて、凸部7が形成されている。そして、半導体層91aの凸部7の略中央部には突起部8が形成され、この突起部8の下側に第1の電極4aと挟まれるように、能動素子90が配置される。
【0096】
共振器60の長さL1は、例えば、約30μm程度以下である。突起部8の長さは、例えば、約6μm程度以下である。また、凹部5、6の幅(第1の電極4と第2の電極2との間隔)は、例えば、約4μm程度である。能動素子90の寸法は、例えば、約1.4μm2程度である。但し、能動素子90のサイズは、この値に限定されず、例えば、約5.3μm2程度以下であってもよい。共振器60の各部のサイズは、上記寸法に限定されるものではなく、受信するテラヘルツ電磁波の周波数に応じて設計上適宜設定されるものである。
【0097】
また、図31に示すように、導波路70における第1の電極4と第2の電極2間の間隔に比べて、共振器60が形成されている部分の第1の電極4と第2の電極2間の間隔は、狭い。
【0098】
MIMリフレクタ50は共振器60の開口部と反対側の閉口部に配置されている。金属/絶縁体/金属からなるMIMリフレクタ50の積層構造により、第1の電極4と第2の電極2は高周波的に短絡される。また、MIMリフレクタ50は、直流的には開放(オープン)でありながら、高周波を反射させることが可能となるという効果を有する。
【0099】
第1の電極4(4a,4b,4c)および第2の電極2,2aは、いずれも例えば、Au/Pd/Tiのメタル積層構造からなり、Ti層は、絶縁体基板10との接触状態を良好にするためのバッファ層である。第1の電極4a,4b,4cおよび第2の電極2,2aの各部の厚さは、例えば、約数100nm程度であり、全体として、図33(a)および図33(b)に示すような平坦化された積層構造が得られている。なお、第1の電極4、第2の電極2は、いずれも真空蒸着法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0100】
さらに詳細には、第1の電極4aおよび第1の電極4cは、例えば、Au/Pd/Tiからなり、第1の電極4bは、例えば、Au/Tiからなる。第2の電極2は、例えば、Au/Pd/Tiからなり、第2の電極2aは、例えば、Au/Tiからなる。
【0101】
尚、第1の電極4bの表面層を形成するTi層は、ボンディングワイヤ12bによって取り出し電極を形成する際、接触抵抗を低減するために除去することが望ましい。同様に、第2の電極2aの表面層を形成するTi層は、ボンディングワイヤ12aによって取り出し電極を形成する際、接触抵抗を低減するために除去することが望ましい。
【0102】
絶縁層3は、例えば、SiO2膜で形成することができる。その他、Si3N4膜、SiON膜、HfO2膜、Al2O3膜などを適用することもできる。なお、絶縁層3の厚さは、MIMリフレクタ50の幾何学的な平面寸法と、回路特性上の要求されるキャパシタ値を考慮して決めることができ、例えば、数10nm〜数100nm程度である。絶縁層3は、CVD法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0103】
同様に、層間絶縁膜9は、例えば、SiO2膜で形成することができる。その他、Si3N4膜、SiON膜、HfO2膜、Al2O3膜などを適用することもできる。層間絶縁膜9の厚さは、図33(a)に示すように、第2の電極2aと層間絶縁膜9の全体の厚さが、第1の電極4の厚さと略同程度となるように設定されている。層間絶縁膜9は、CVD法、或いはスパッタリング法などによって形成することができる。
【0104】
また、絶縁体基板10は、半導体層91aよりも低誘電率材料の基板からなることが、電波を効率良く検出する上で望ましい。低誘電率材料の絶縁体基板10としては、例えば、ポリイミド樹脂基板、テフロン(登録商標)基板などを適用することができる。絶縁体基板10の厚さは、例えば、200μm程度である。
【0105】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子において、上方は空気であるため、比誘電率εair=1である。絶縁体基板10として、ポリイミド樹脂基板を使用すると、ポリイミド樹脂の比誘電率εpoly=3.5であるため、全体の放射電波に対する絶縁体基板10の下方への放射電波の割合は、εpoly3/2/(εair3/2+εpoly3/2)=0.87で表される。すなわち、全体の放射電波の内、約87%は、絶縁体基板10側から放射され、ホーン開口部80を介して横方向へ放射される電波は、相対的に増大する。
【0106】
さらに、絶縁体基板10として、テフロン(登録商標)樹脂基板を使用すると、テフロン(登録商標)の比誘電率εtef=2.1であるため、全体の放射電波に対する絶縁体基板10の下方への放射電波の割合は、εtef3/2/(εair3/2+εtef3/2)=0.75で表される。すなわち、全体の放射電波の内、約75%は、絶縁体基板10側へ放出され、ホーン開口部80を介して横方向へ放射される電波は、相対的に増大する。
【0107】
MIMリフレクタ50は、図33(a)に示すように、第1の電極4aと第2の電極2間に絶縁層3を介在させた構造から形成されている。また、図33(b)から明らかなように、RTDからなる能動素子90は、絶縁体基板10上に第1の電極4aを介して、配置されている。第1の電極4aは、RTDのn+GaInAs層91bに接触して配置されている。第2の電極2は、RTDのn+GaInAs層91aに接触して配置されている。さらに、第1の電極4(4b,4c)は、絶縁体基板10上に延在して配置されている。
【0108】
このように、第1の電極4が、絶縁体基板10上に延在して配置されていることから、第1の電極4と第2の電極2は、互いに短絡されることがなく、RTDのn+GaInAs層91aとn+GaInAs層91b間に所定の直流バイアス電圧を印加することができる。
【0109】
なお、第1の電極4には、ボンディングワイヤ12bが接続され、第2の電極2aには、ボンディングワイヤ12aが接続されて、第1の電極4と第2の電極2a間には、直流電源15が接続されている。また、第1の電極4と第2の電極2a間には、寄生発振を防止するための抵抗(図示省略)が接続されている。
【0110】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子の構造において、第1の電極4上に直接、また第2の電極2上に層間絶縁膜9を介して絶縁体基板10を貼付け、半導体基板1をエッチングで除去した後の上下反転した構造は、図33(a)および図33(b)に示すように表される。図33(a)および図33(b)に示すように、変形例2に係るテラヘルツ発振検出素子においては、第2の電極2上には半導体層91aが配置されが、第2の電極2aも露出するため、第2の電極2aに対して、ワイヤボンディングなどの電極取り出し工程を容易に行うことができる。
【0111】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子の製造方法においては、図15(a)および図15(b)に示すように、半導体基板1上に半導体層91aを形成後、パターニングによって、半導体層91aの幅を狭く形成し、半導体層91a上に形成される第2の電極2のパターン幅を狭く形成する。残りの部分には、第2の電極2に接続し、所定の幅を有し、相対的に厚い第2の電極2aを形成する。結果として、図15(a)および図15(b)に示すように、第2の電極2aが、半導体基板1に接触する構造を得る。
【0112】
次に、図33(a)および図33(b)に示すように、第1の電極4上に直接、また第2の電極2上に層間絶縁膜9を介して絶縁体基板10を貼付け、半導体基板1をエッチングで除去した後の上下反転した構造を得る。
【0113】
次に、図31に示すように、第1の電極4にボンディングワイヤ12bを接続し、第2の電極2aに、ボンディングワイヤ12aを接続することで電極取り出しを実施する。
【0114】
半導体基板1は、例えば、半絶縁性のInP基板によって形成され、厚さは、例えば、約600μm程度である。InP基板のエッチング液としては、例えば、塩酸系のエッチング液を適用することができる。
【0115】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子において、厚さdを有する絶縁体基板10をサンプル表面に貼付け、半導体基板をエッチングにより除去する工程後の模式的鳥瞰構造は、図34に示すように表され、図34の裏面から見た模式的鳥瞰構造は、図35に示すように表される。図34から明らかなように、第1の電極4は、直接絶縁体基板10に貼り付けられている。また、第2の電極2,2aは、図34では図示を省略しているが、図33(a)および図33(b)に示すように、層間絶縁膜9を介して絶縁体基板10に貼り付けられている。図34の詳細構造は、図31に対応している。
【0116】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子として、能動素子90に適用可能な共鳴トンネルダイオード(RTD)の模式的断面構造は、図16(a)と同様に表される。また、その変形例の模式的断面構造は、図16(b)と同様に表される。また、同一の製造工程で形成されたテラヘルツ検出素子RTD(D)とテラヘルツ発振素子RTD(O)の集積化構造は、図17と同様に表される。
【0117】
図16および図17は、半導体基板1上に配置された構造例であるが、その後の工程によって、第1の電極4aに絶縁体基板10を貼り付けた後、半導体基板1は、エッチングによって除去される。したがって、図16および図17は、絶縁体基板10を貼り付ける程前における能動素子90近傍の模式的断面構造に相当している。
【0118】
前述と同様に、能動素子90としてはRTDが代表的なものであるが、これ以外のダイオードやトランジスタでも構成可能なものである。その他の能動素子としては、例えば、TUNNETTダイオード、IMPATTダイオード、GaAsFET、GaN系FET、HEMT、HBTなどを適用することもできる。
【0119】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子のXYZ軸方向における3次元の電磁界シミュレーション結果の一例は、図36に示すように表される。Y軸方向が、電波の出力方向であり、極めて良好な指向性が得られていることがわかる。図36の例は、図34および図35に示す変形例2のテラヘルツ発振素子において、絶縁体基板10を、厚さd=200nmのポリイミド基板によって形成し、発振周波数f=0.5THzとした結果である。
【0120】
変形例2のテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、高効率に、基板に対して横方向に指向性高く発振することができ、しかも集積化が容易となる。
【0121】
―変形例3・変形例4
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例3のテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造は、図37(a)に示すように表され、変形例4のテラヘルツ検出素子の電極パターン構造は、図37(b)に示すように表される。尚、図37(a)および(b)においては、第1の電極4と第2の電極2間に接続されたSBD30は図示を省略しているが、図31と同様に配置されている。
【0122】
変形例3のテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造は、MIMリフレクタ50を構成する第2の電極2にスタブ構造を備える例であり、変形例4のテラヘルツ検出素子の電極パターン構造は、MIMリフレクタ50を構成する第1の電極4にスタブ構造を備える例である。図33(a)から明らかなように、第2の電極2上には、半導体層91aが配置されているため、図37(a)および図37(b)では、半導体層91aが表示されているが、半導体層91aの下には、第2の電極2のパターンが同一のパターン形状で配置されている。
【0123】
すなわち、図37(a)に示すように、MIMリフレクタ50を構成する部分において、第2の電極2は、複数のスタブ13Aを備える。
【0124】
また、図37(b)に示すように、MIMリフレクタ50を構成する部分において、第1の電極4は、複数のスタブ13Bを備える。
【0125】
複数のスタブ13Aまたは13Bは、共振器60に面して等間隔に配置されていてもよく、或いは、その間隔が変化するように配置されていてもよい。
【0126】
上記の変形例3・変形例4を組み合わせて、第2の電極2と第1の電極4の両方に複数のスタブを備えていてもよい。
【0127】
電磁波の伝送線路の一部に電磁波の波長の4分の1の長さのスタブを設けて、その中に電磁波を引き込み、それを反射させて伝送線路に戻すことにより共振回路が形成されることが分かっている。これは、伝送線路に入射した電磁波のうち、スタブの長さの4倍の波長を持つ電磁波のみが、スタブの位置で等価的に短絡され、これによって当該電磁波が反射されるため、その電磁波の伝送線路からの漏れが少なくなるという現象である。この方法によれば、入力される電磁波の波長に対してスタブの長さが4分の1波長と決まっているために、電磁波の波長がスタブの長さの4倍になる電磁波に対しては強く共振して反射させることができるが、帯域幅の広い電磁波についてはその反射効果は少ない。
【0128】
変形例3のスタブ13Aの長さは、帯域を持った入射電磁波の中心部分の電磁波の4分の1波長としないで、4分の1からずれた長さにする。例えば、反射させたい周波数幅があったときその周波数幅の中央値の周波数を持つ電磁波を一部反射させるための2波長〜3波長以上の長さのスタブ13Aを多く設けることにより、反射させたい周波数幅の電磁波を幅広い範囲で反射させることが可能である。
【0129】
当然のことながら、電磁波の反射率は4分の1波長のときと比べると小さくなるのであるが、それでもスタブがない場合と比較するとかなりの反射が起こる。そして、共振条件がゆるい分だけ、ある帯域を持った周波数(ある波長の幅を持った電磁波)に対して、満遍なく反射する効果がある。また、多段スタブの間隔は、反射させたい電磁波の周波数幅の中央値の周波数を持つ電磁波に対して、波長の半分程度の長さとすることにより各スタブからの反射の間に強め合う干渉(ブラッグ反射)が起こり、反射波が重ねあわされて、反射率がほぼ100%の大きな値になる。スタブの長さ、数、間隔によって、反射する周波数幅、中心周波数は総合的に決定される。
【0130】
所定の帯域幅を有する電磁波の中心波長をλ0として、スタブの間隔をλ0/2とすると、反射率が100%に近い電磁波の波長範囲Δλを得ることができる。このとき、スタブの長さは、2〜3λ0以上に設計するのがよい。また、スタブの幅がスタブの間隔の半分のとき、スタブ数5〜10個程度の少ない数で100%に近い大きな反射率となる。スタブ幅がそれ以外のときは大きな反射率を得るためにはスタブ数を増やす必要があり、また、周波数幅も狭くなる。しかしながら、これらの長さは限定されるものではなく反射する帯域幅との関係で設計的に規定されるものである。
【0131】
なお、変形例3では、スタブ13AおよびMIMリフレクタにより、漏れ電磁波が反射され、共振器60側に戻される。そして、反射された電磁波が放射電波として放出されるために、能動素子90において放射される電磁波は高出力となる。
【0132】
変形例4においてもスタブ13Bの動作は、スタブ13Aと同様であるため、重複する説明は省略する。
【0133】
なお、第2の電極2と第1の電極4の両方に多段のスタブを設けることにより、片方だけの場合に比べ約半分のスタブ数で同等の大きな反射率を得ることができる。また、周波数幅や中心周波数を決める際の設計の自由度を上げることができるので、設計上極めて有効である。なお、第2の電極2と第1の電極4の双方に付けるスタブの長さ、数、間隔は必ずしも等しい必要はなく、設計上自由に変更することができる。
【0134】
変形例3および変形例4のテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、高効率かつ高出力に、基板に対して横方向に指向性高く放射することができ、しかも集積化が容易となる。
【0135】
変形例3および変形例4のテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、MIMレフレクタを構成する電極にスタブ構造を組み合わせることによって、基板に水平な方向にさらに効率良く、指向性高く電磁波を放射することが可能となる。
【0136】
―変形例5―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例5のテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造の模式的平面構成は、図38に示すように表される。
【0137】
変形例5に係るテラヘルツ発振検出素子においても第1の電極4(4a,4b,4c)、第2の電極2,2a、MIMリフレクタ50、共振器60、能動素子90の構成は、変形例2と同様であるため、以下において、重複説明は省略する。
【0138】
変形例5のテラヘルツ発振検出素子は、図38に示すように、絶縁体基板10と、絶縁体基板10上に配置された第1の電極4(4a,4b,4c)と、第1の電極4a(図31)上に配置された絶縁層3(図31)と、絶縁体基板10上に配置された層間絶縁膜9(図31)と、層間絶縁膜9上に配置され、かつ第1の電極4aに対して絶縁層3を介して第1の電極4に対向して配置された第2の電極2,2aと、第2の電極2上に配置された半導体層91aと、絶縁体基板10上に第1の電極4に隣接し、かつ第2の電極2aとは反対側に第1の電極4に対向して配置された第1スロットライン電極41と、絶縁体基板10上に第2の電極2aに隣接し、かつ第1の電極4とは反対側に第2の電極2aに対向して配置された第2スロットライン電極21と、絶縁層3を挟み第1の電極4aと第2の電極2間に形成されたMIMリフレクタ50と、MIMリフレクタ50に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された共振器60と、共振器60の略中央部に配置された能動素子90と、共振器60に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された第1導波路70と、第1導波路70に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第2の電極2間に配置された第1ホーン開口部80と、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第1スロットライン電極41間に配置された第2導波路71と、第2導波路71に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1の電極4と第1スロットライン電極41間に配置された第2ホーン開口部81と、絶縁体基板10上に対向する第2の電極2aと第2スロットライン電極21間に配置された第3導波路72と、第3導波路72に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第2の電極2aと第2スロットライン電極21間に配置された第3ホーン開口部82と、第1の電極4と第2の電極2間に接続されたSBD30とを備える。
【0139】
変形例2と同様に、能動素子90としてはRTDが代表的なものであるが、これ以外のダイオードやトランジスタでも構成可能なものである。その他の能動素子としては、例えば、TUNNETTダイオード、IMPATTダイオード、GaAsFET、GaN系FET、HEMT、HBTなどを適用することもできる。
【0140】
ホーン開口部80〜82は、開口ホーンアンテナを構成する。
【0141】
変形例5のテラヘルツ発振検出素子においては、図38に示すように、出力端におけるスロットライン電極21および41の幅W4は、例えば、160μm程度である。また、図38に示すように、出力端におけるホーン開口部80の幅D20およびホーン開口部81および82の幅D10、および、スロットライン電極21および41の幅W4は、適宜変更可能である。
【0142】
導波路70は、共振器60の開口部に配置される。
【0143】
MIMリフレクタ50は共振器60の開口部と反対側の閉口部に配置される。
【0144】
MIMリフレクタ50を構成する部分において、第2の電極2は、図37(a)に示された変形例3と同様の複数のスタブを備えていても良い。同様に、MIMリフレクタ50を構成する部分において、第2の電極2は、図37(b)に示された変形例4と同様の複数のスタブを備えていても良い。
【0145】
また、上記において、複数のスタブは、共振器60に面して等間隔に配置されていても良く、また、間隔が変化するように配置されていても良い。
【0146】
また、絶縁体基板10は、半導体層91aよりも低誘電率材料の基板からなることが、横方向に電波を効率良く、指向性高く検出する上で望ましい。低誘電率材料の絶縁体基板10としては、第1の実施の形態と同様に、例えば、ポリイミド樹脂基板、テフロン(登録商標)基板などを適用することができる。
【0147】
絶縁体基板10として、ポリイミド樹脂基板を使用すると、全体の受信電波の内、約87%は、絶縁体基板10側から検出され、ホーン開口部80を介して横方向から検出される受信電波は、相対的に増大する点は、変形例2と同様である。
【0148】
また、絶縁体基板10として、テフロン(登録商標)樹脂基板を使用すると、変形例2と同様に、全体の放射電波の内、約75%は、絶縁体基板10側へ放出され、ホーン開口部80を介して横方向から放射される電波は、相対的に増大する点も、変形例2と同様である。
【0149】
変形例5に係るテラヘルツ発振検出素子においては、能動素子90に接続された第1の電極4および第2の電極2からなるテーパスロットアンテナの両サイドに、同じ形状をしたテーパ形状の1対のスロットライン電極41、21を配置することで、変形例2に比べ、検出電波の指向性がさらに向上する。
【0150】
変形例5のテラヘルツ発振検出素子によれば、第1の電極4および第2の電極2からなるテーパスロットアンテナの両サイドに、テーパ形状の1対のスロットライン電極41、21を並列化配置することで、絶縁体基板10上にテーパスロットアンテナを集積化しても、絶縁体基板10の影響を抑制し、充分な放射電波の指向性を得ることができる。
【0151】
中央部の第1の電極4および第2の電極2からなるテーパスロットアンテナから広がった電界が、両サイドに設けた1対のスロットライン電極41、21に引き込まれて、スロットライン電極41、21の端面で反射され、中央部の第1の電極4および第2の電極2に戻ってくる。このとき、中央部の第1の電極4および第2の電極2およびスロットライン電極41、21内には、定在波が形成され、反射してきた電界によって、内部に電磁波が受信される。中央部の第1の電極4および第2の電極2および1対のスロットライン電極41、21からの放射電磁界が、干渉し合うことによって、放射電磁波の指向性が向上する。
【0152】
変形例5のテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、かつスロットライン電極を並列化配置して定在波を有効に発生させることによって、さらに高効率かつ高出力に、基板に対して横方向に指向性高く放射することができ、しかも集積化が容易である。
【0153】
―変形例6―
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能な変形例6のテラヘルツ発振検出素子の電極パターン構造の模式的平面構成は、図39に示すように表される。
【0154】
変形例6のテラヘルツ発振検出素子においても第1の電極4、第2の電極2、MIMリフレクタ50、共振器60、能動素子90、第1のスロットライン電極41、第2のスロットライン電極21の構成は、第2の実施の形態と同様であるため、以下において、重複説明は省略する。
【0155】
変形例6のテラヘルツ検出素子は、図36に示すように、図35に示した変形例5の電極パターン構成に対して、さらに、1対のスロットライン電極22,42を並列化配置している。すなわち、絶縁体基板10上に第1スロットライン電極41に隣接し、かつ第1の電極4とは反対側に第1スロットライン電極41に対向して配置された第3スロットライン電極42と、絶縁体基板10上に第2スロットライン電極21に隣接し、かつ第2の電極2aとは反対側に第2スロットライン電極21に対向して配置された第4スロットライン電極22と、絶縁体基板10上に対向する第1スロットライン電極41と第3スロットライン電極42間に配置された第4導波路74と、第4導波路74に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第1スロットライン電極41と第3スロットライン電極42間に配置された第4ホーン開口部84と、絶縁体基板10上に対向する第2スロットライン電極21と第4スロットライン電極22間に配置された第5導波路73と、第5導波路73に隣接して、絶縁体基板10上に対向する第2スロットライン電極21と第4スロットライン電極22間に配置された第5ホーン開口部83とを備える。図39において、第1の電極4と第2の電極2間に接続されたSBD30は、図示を省略している。
【0156】
また、絶縁体基板10は、半導体層91aよりも低誘電率材料の基板からなることが、横方向に電波を効率良く、指向性高く放射する上で望ましい。低誘電率材料の絶縁体基板10としては、第1の実施の形態と同様に、例えば、ポリイミド樹脂基板、テフロン(登録商標)基板などを適用することができる。
【0157】
図39の構成において、スロットライン電極21,41の外側に1対のスロットライン電極22,42をさらに並列化配置することによって、指向性がさらに向上する。
【0158】
変形例6のテラヘルツ発振検出素子によれば、低誘電率の絶縁体基板を用いることで横方向の指向性を改善し、かつ2対のスロットライン電極を並列化配置して定在波を有効に発生させることによって、さらに高効率かつ高出力に、基板に対して横方向に指向性高く放射することができ、しかも集積化が容易である。
【0159】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子によれば、共鳴トンネルダイオードとSBDの並列構成からなる電子デバイス単体でテラヘルツ電磁波を発振検出するので、発振器および検出器が、従来技術よりも飛躍的に小さくなり、高感度、低雑音でテラヘルツ電磁波を発振検出可能である。
【0160】
実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振検出素子によれば、同一工程で製造可能なテラヘルツ検出素子と組み合わせることによって、送信器および検出器が、従来技術よりも飛躍的に小さくなり、高感度、低雑音でテラヘルツ電磁波の無線送受信方式を提供することも可能である。
【0161】
また、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置に適用可能なテラヘルツ発振素子(RTD)においては、テラヘルツ検出素子としても利用可能であるため、同一の素子で発振素子としても検出素子としても機能するデバイスの構成が可能である。
【0162】
本発明によれば、RTDを利用し、テラヘルツ波の透過を利用することで紙類による減衰の大きさを基にして、枚数の判定が可能な透過型テラヘルツ波検査装置を提供することができる。
【0163】
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態に係る透過型テラヘルツ波検査装置について記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0164】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の透過型テラヘルツ波検査装置は、紙類の検査、金券の検査、偽札の検査など、幅広い分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0166】
1…半導体基板
2、2a…第2の電極
3…絶縁層
4、4a、4b、4c…第1の電極
5,6…凹部
7…凸部
8…突起部
9…層間絶縁膜
10…絶縁体基板
13A,13B…スタブ
15…直流電源
21,22,41,42…スロットライン電極
30…ショットキーバリアダイオード(SBD)
50…MIMリフレクタ
60…共振器
70,71,72,73,74…導波路
80,81,82,83,84…ホーン開口部
90…能動素子
91a…半導体層
100…発振器
200…検出器
300…紙類
400…ビーム
500…支持台
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツ発振素子を備える発振器と、
テラヘルツ検出素子を備える検出器と、
前記発振器と前記検出器との間に配置された紙類と
を備え、前記テラヘルツ発振素子より放射されたテラヘルツ波が前記紙類を透過して得られる透過テラヘルツ波を前記テラヘルツ検出素子によって検出し、前記紙類による減衰の大きさを基にして、前記紙類の枚数を判定することを特徴とする透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項2】
前記テラヘルツ発振素子および前記テラヘルツ検出素子は、
半導体基板と、
前記半導体基板上に配置された第2の電極と、
前記第2の電極上に配置された絶縁層と、
前記第2の電極に対して前記絶縁層を介して配置され、かつ前記半導体基板上に前記第1の電極に対向して配置された第1の電極と、
前記絶縁層を挟み前記第1の電極と前記第2の電極間に形成されたMIMリフレクタと、
前記MIMリフレクタに隣接して、前記半導体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された共振器と、
前記共振器の略中央部に配置された能動素子と、
前記共振器に隣接して、前記半導体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された導波路と、
前記導波路に隣接して、前記半導体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置されたホーン開口部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項3】
前記第1の電極と前記第2の電極間に接続されたショットキーバリアダイオードを備えることを特徴とする請求項2に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項4】
前記テラヘルツ発振素子および前記テラヘルツ検出素子は、
絶縁体基板と、
前記絶縁体基板上に配置された第1の電極と、
前記第1の電極上に配置された絶縁層と、
前記絶縁体基板上に配置された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に配置され、かつ前記第1の電極に対して前記絶縁層を介して前記第1の電極に対向して配置された第2の電極と、
前記第2の電極上に配置された半導体層と、
前記絶縁層を挟み前記第1の電極と前記第2の電極間に形成されたMIMリフレクタと、
前記MIMリフレクタに隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された共振器と、
前記共振器の略中央部に配置された能動素子と、
前記共振器に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された導波路と、
前記導波路に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置されたホーン開口部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項5】
前記第1の電極と前記第2の電極間に接続されたショットキーバリアダイオードを備えることを特徴とする請求項4に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項6】
前記テラヘルツ発振素子および前記テラヘルツ検出素子は、
絶縁体基板と、
前記絶縁体基板上に配置された第1の電極と、
前記第1の電極上に配置された絶縁層と、
前記絶縁体基板上に配置された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に配置され、かつ前記第1の電極に対して前記絶縁層を介して前記第1の電極に対向して配置された第2の電極と、
前記第2の電極上に配置された半導体層と、
前記絶縁体基板上に前記第1の電極に隣接し、かつ前記第2の電極とは反対側に前記第1の電極に対向して配置された第1スロットライン電極と、
前記絶縁体基板上に前記第2の電極に隣接し、かつ前記第1の電極とは反対側に前記第2の電極に対向して配置された第2スロットライン電極と、
前記絶縁層を挟み前記第1の電極と前記第2の電極間に形成されたMIMリフレクタと、
前記MIMリフレクタに隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された共振器と、
前記共振器の略中央部に配置された能動素子と、
前記共振器に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された第1導波路と、
前記第1導波路に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された第1ホーン開口部と、
前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第1スロットライン電極間に配置された第2導波路と、
前記第2導波路に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第1スロットライン電極間に配置された第2ホーン開口部と、
前記絶縁体基板上に対向する前記第2の電極と前記第2スロットライン電極間に配置された第3導波路と、
前記第3導波路に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第2の電極と前記第2スロットライン電極間に配置された第3ホーン開口部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項7】
前記第1の電極と前記第2の電極間に接続されたショットキーバリアダイオードを備えることを特徴とする請求項6に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項8】
前記テラヘルツ発振素子および前記テラヘルツ検出素子は、
前記絶縁体基板上に第1スロットライン電極に隣接し、かつ前記第1の電極とは反対側に前記第1スロットライン電極に対向して配置された第3スロットライン電極と、
前記絶縁体基板上に第2スロットライン電極に隣接し、かつ前記第2の電極とは反対側に前記第2スロットライン電極に対向して配置された第4スロットライン電極と、
前記絶縁体基板上に対向する前記第1スロットライン電極と前記第3スロットライン電極間に配置された第4導波路と、
前記第4導波路に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1スロットライン電極と前記第3スロットライン電極間に配置された第4ホーン開口部と、
前記絶縁体基板上に対向する前記第2スロットライン電極と前記第4スロットライン電極間に配置された第5導波路と、
前記第5導波路に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第2スロットライン電極と前記第4スロットライン電極間に配置された第5ホーン開口部と
を備えることを特徴とする請求項6または7に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項9】
前記半導体基板は、前記共振器,前記導波路,および前記ホーン開口部を形成する前記第1の電極および前記第2の電極の配置される領域において、薄層化されていることを特徴とする請求項2に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項10】
前記能動素子は、共鳴トンネルダイオード、タンネットダイオード、インパットダイオード、GaAs系電界効果トランジスタ、GaN系FET、高電子移動度トランジスタ、ヘテロ接合バイポーラトランジスタのいずれかであることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項11】
前記ホーン開口部は、開口ホーンアンテナを構成することを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項12】
前記絶縁体基板は、前記半導体層よりも低誘電率材料の基板からなることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項13】
前記導波路は、前記共振器の開口部に配置されたことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項14】
前記MIMリフレクタは前記共振器の開口部と反対側の閉口部に配置されたことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項15】
前記MIMリフレクタを構成する部分において、前記第2の電極は、複数のスタブを備えたことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項16】
前記MIMリフレクタを構成する部分において、前記第1の電極は、複数のスタブを備えたことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項17】
前記複数のスタブは、前記共振器に面して等間隔に配置されていることを特徴とする請求項15または16に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項18】
前記複数のスタブは、前記共振器に面してその間隔が変化するように配置されていることを特徴とする請求項15または16に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項1】
テラヘルツ発振素子を備える発振器と、
テラヘルツ検出素子を備える検出器と、
前記発振器と前記検出器との間に配置された紙類と
を備え、前記テラヘルツ発振素子より放射されたテラヘルツ波が前記紙類を透過して得られる透過テラヘルツ波を前記テラヘルツ検出素子によって検出し、前記紙類による減衰の大きさを基にして、前記紙類の枚数を判定することを特徴とする透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項2】
前記テラヘルツ発振素子および前記テラヘルツ検出素子は、
半導体基板と、
前記半導体基板上に配置された第2の電極と、
前記第2の電極上に配置された絶縁層と、
前記第2の電極に対して前記絶縁層を介して配置され、かつ前記半導体基板上に前記第1の電極に対向して配置された第1の電極と、
前記絶縁層を挟み前記第1の電極と前記第2の電極間に形成されたMIMリフレクタと、
前記MIMリフレクタに隣接して、前記半導体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された共振器と、
前記共振器の略中央部に配置された能動素子と、
前記共振器に隣接して、前記半導体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された導波路と、
前記導波路に隣接して、前記半導体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置されたホーン開口部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項3】
前記第1の電極と前記第2の電極間に接続されたショットキーバリアダイオードを備えることを特徴とする請求項2に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項4】
前記テラヘルツ発振素子および前記テラヘルツ検出素子は、
絶縁体基板と、
前記絶縁体基板上に配置された第1の電極と、
前記第1の電極上に配置された絶縁層と、
前記絶縁体基板上に配置された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に配置され、かつ前記第1の電極に対して前記絶縁層を介して前記第1の電極に対向して配置された第2の電極と、
前記第2の電極上に配置された半導体層と、
前記絶縁層を挟み前記第1の電極と前記第2の電極間に形成されたMIMリフレクタと、
前記MIMリフレクタに隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された共振器と、
前記共振器の略中央部に配置された能動素子と、
前記共振器に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された導波路と、
前記導波路に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置されたホーン開口部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項5】
前記第1の電極と前記第2の電極間に接続されたショットキーバリアダイオードを備えることを特徴とする請求項4に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項6】
前記テラヘルツ発振素子および前記テラヘルツ検出素子は、
絶縁体基板と、
前記絶縁体基板上に配置された第1の電極と、
前記第1の電極上に配置された絶縁層と、
前記絶縁体基板上に配置された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に配置され、かつ前記第1の電極に対して前記絶縁層を介して前記第1の電極に対向して配置された第2の電極と、
前記第2の電極上に配置された半導体層と、
前記絶縁体基板上に前記第1の電極に隣接し、かつ前記第2の電極とは反対側に前記第1の電極に対向して配置された第1スロットライン電極と、
前記絶縁体基板上に前記第2の電極に隣接し、かつ前記第1の電極とは反対側に前記第2の電極に対向して配置された第2スロットライン電極と、
前記絶縁層を挟み前記第1の電極と前記第2の電極間に形成されたMIMリフレクタと、
前記MIMリフレクタに隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された共振器と、
前記共振器の略中央部に配置された能動素子と、
前記共振器に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された第1導波路と、
前記第1導波路に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第2の電極間に配置された第1ホーン開口部と、
前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第1スロットライン電極間に配置された第2導波路と、
前記第2導波路に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1の電極と前記第1スロットライン電極間に配置された第2ホーン開口部と、
前記絶縁体基板上に対向する前記第2の電極と前記第2スロットライン電極間に配置された第3導波路と、
前記第3導波路に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第2の電極と前記第2スロットライン電極間に配置された第3ホーン開口部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項7】
前記第1の電極と前記第2の電極間に接続されたショットキーバリアダイオードを備えることを特徴とする請求項6に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項8】
前記テラヘルツ発振素子および前記テラヘルツ検出素子は、
前記絶縁体基板上に第1スロットライン電極に隣接し、かつ前記第1の電極とは反対側に前記第1スロットライン電極に対向して配置された第3スロットライン電極と、
前記絶縁体基板上に第2スロットライン電極に隣接し、かつ前記第2の電極とは反対側に前記第2スロットライン電極に対向して配置された第4スロットライン電極と、
前記絶縁体基板上に対向する前記第1スロットライン電極と前記第3スロットライン電極間に配置された第4導波路と、
前記第4導波路に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第1スロットライン電極と前記第3スロットライン電極間に配置された第4ホーン開口部と、
前記絶縁体基板上に対向する前記第2スロットライン電極と前記第4スロットライン電極間に配置された第5導波路と、
前記第5導波路に隣接して、前記絶縁体基板上に対向する前記第2スロットライン電極と前記第4スロットライン電極間に配置された第5ホーン開口部と
を備えることを特徴とする請求項6または7に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項9】
前記半導体基板は、前記共振器,前記導波路,および前記ホーン開口部を形成する前記第1の電極および前記第2の電極の配置される領域において、薄層化されていることを特徴とする請求項2に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項10】
前記能動素子は、共鳴トンネルダイオード、タンネットダイオード、インパットダイオード、GaAs系電界効果トランジスタ、GaN系FET、高電子移動度トランジスタ、ヘテロ接合バイポーラトランジスタのいずれかであることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項11】
前記ホーン開口部は、開口ホーンアンテナを構成することを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項12】
前記絶縁体基板は、前記半導体層よりも低誘電率材料の基板からなることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項13】
前記導波路は、前記共振器の開口部に配置されたことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項14】
前記MIMリフレクタは前記共振器の開口部と反対側の閉口部に配置されたことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項15】
前記MIMリフレクタを構成する部分において、前記第2の電極は、複数のスタブを備えたことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項16】
前記MIMリフレクタを構成する部分において、前記第1の電極は、複数のスタブを備えたことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項17】
前記複数のスタブは、前記共振器に面して等間隔に配置されていることを特徴とする請求項15または16に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【請求項18】
前記複数のスタブは、前記共振器に面してその間隔が変化するように配置されていることを特徴とする請求項15または16に記載の透過型テラヘルツ波検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図37】
【図38】
【図39】
【図36】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図37】
【図38】
【図39】
【図36】
【公開番号】特開2012−215530(P2012−215530A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82220(P2011−82220)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
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