説明

透過型電子顕微鏡の試料作製方法及び試料保持体

【課題】本発明は透過型電子顕微鏡の試料作製方法及び試料保持体に関し、試料片への通電を容易に行なうことができる透過型電子顕微鏡の試料作製方法及び試料保持体を提供することを目的としている。
【解決手段】真空外で、半月状の導電性部材1の弦の部分に電気的絶縁膜3を形成し、該電気的絶縁膜3の上に金線4を接着し、アクチュエータを用いて、予め作製されていた試料片を前記半月状の導電性部材1の弦の部分に取り付けて固定し、真空内で、前記試料片部分に電気的導通のためのデポジションを行ない、前記金線4と試料片2aとの間に導電性プローブを固定のためのデポジションにより取り付け、前記導電性プローブを切断することにより透過型電子顕微鏡の試料を作製するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透過型電子顕微鏡の試料作製方法及び試料保持体に関し、更に詳しくは透過型電子顕微鏡で試料に電流を通ずることができるようにした透過型電子顕微鏡の試料作製方法及び試料保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より集束イオンビーム装置(FIB)で試料を薄くし、薄くした試料(試料片)を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することが行われている。TEMは高い空間分解能で観察や分析を行なうことが可能なため、極微小領域の材料評価に不可欠な装置となっている。TEMは単に高い空間分解能で像観察を行なうだけでなく、試料片の加熱、冷却、引っ張り、電圧印加などを行ないながら試料片の変化を観察することにより、試料に関するより多くの知見を得ることができるので、多くの材料分野で使われている。
【0003】
例えば、半導体分野などの試料においては、試料に通電しながら又はその前後に試料から電気信号を取り出すことにより、試料の抵抗値を測定して試料の材料特性に関する知見を得ることが行なわれる。
【0004】
従来のこの種の装置としては、2つの電流測定用のプローブを搭載したレバーが支点となる球体にV溝で接しており、マイクロメータヘッドでレバーを押すとプローブはX方向に移動し、引くとバネにより押し戻されて−X方向に移動する装置が知られている。マイクロメータヘッドでレバーを押すと、プローブは前記球体を支点とする回転運動によりY方向に移動し、引くとバネにより押し戻されて−Y方向に移動するようになっている。プローブのZ軸方向の移動も、マイクロメータヘッドを操作して行なうことができるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−331979号公報(段落0029〜0037、図1,図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
試料ホルダ中に配置された試料に電流を流すようにする構成は非常に微細なものであり、通常の手作業では困難である。従って、予め作製された試料片にTEM内で端子を接触させ通電する。例えば幅10μm程度の試料片に光学顕微鏡下などで配線作業をするのは非常に困難であり、半導体デバイスなどへのポンディング技術など高価な設備が必要となる。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、試料片への通電を容易に行なうことができる透過型電子顕微鏡の試料作製方法及び試料保持体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題点を解決するために、本発明は以下のような構成をとっている。
(1)請求項1記載の発明は、導電性部材の一部分に電気的絶縁膜を形成し、該電気的絶縁膜の上に導電線を接着し、予め作製されていた試料片を前記導電性部材に固定し、前記導電線と試料片との間に導電性プローブを固定する、ことにより透過型電子顕微鏡の試料を作製することを特徴とする。
【0009】
(2)請求項2記載の発明は、真空外で、半月状の導電性部材の弦の部分に電気的絶縁膜を形成し、該電気的絶縁膜の上に導電線を接着し、予め作製されていた試料片を前記半月状の導電性部材の弦の部分に取り付けて固定し、集束イオンビーム装置内で、前記導電線の先端部に集束イオンビームで切り込み加工を行ない、前記試料部分に電気的導通のためのデポジションを行ない、前記導電線と試料片との間に導電性プローブを固定のためのデポジションにより取り付け、前記導電性プローブを集束イオンビームで切断する、ことにより透過型電子顕微鏡の試料を作製することを特徴とする。
【0010】
(3)請求項3記載の発明は、真空外で、半月状の導電性部材の弦の部分に電気的絶縁膜を形成し、該電気的絶縁膜の上にその一端を持ち上げるようにして導電線を接着し、予め作製されていた試料片を前記半月状の導電性部材の弦の部分に取り付けて固定し、集束イオンビーム装置内で、前記試料片部分に電気的導通のためのデポジションを行ない、前記導電線の端部を導電線プローブにより押し下げて、導電線の端部を前記試料片に接着し、前記導電性プローブを集束イオンビームで切断する、ことにより透過型電子顕微鏡の試料を作製することを特徴とする。
【0011】
(4)請求項4記載の発明は、試料片が固定された導電性部材と、前記導電性部材の一部分に形成された電気的絶縁膜と、前記電気的絶縁膜に固定された導電線と、一端が前記導電線に固定され、他端が前記試料片に固定された導電性プローブと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
(5)請求項5記載の発明は、試料片が固定された導電性部材と、前記導電性部材の一部分に形成された電気的絶縁膜と、一端が前記試料片に固定され、その中間部分が前記電気的絶縁膜に固定された導電線と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下のような効果を奏する。
(1)請求項1及び請求項4記載の発明によれば、導電線と試料片との間に導電性のプローブを渡すことにより、試料片への通電を行なうための導体接続を行なうことができ、試料片への通電を容易に行なうことができる。
【0014】
(2)請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、導電線の端部を切り込み加工することで、試料片の膨張/収縮による張力を導電線の変形で緩和することができる。
【0015】
(3)請求項3記載の発明によれば、電気的絶縁膜の上にその一端を持ち上げるようにして導電線を接着し、マニピュレータでこの持ち上がった導電線を下に押して試料片端部に押しつけるようにすることで、試料片への通電を行なうための導体接続を行なうことができ、試料片への通電を容易に行なうことができる。
【0016】
(4)請求項5記載の発明によれば、導電性部材に試料片を固定すると共に電気的絶縁膜を形成し、その電気的絶縁膜に固定された導電線の一端を試料片に固定することにより、試料片への通電を行なうための導体接続を行なうことができ、試料片への通電を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】試料近辺の立体形状を示す図である。
【図3】試料作製手順を示す図である。
【図4】試料作製手順を示す図である。
【図5】試料作製の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施例を示す構成図である。
【図7】図6に示す試料の試料作製手順を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施例を示す構成図である。
【図9】試料作製手順を示す図である。
【図10】試料作製手順を示す図である。
【図11】TEM用試料ホルダの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施例1)
図1は本発明の第1の実施例を示す構成図である。この図は、透過型電子顕微鏡(TEM)用の完成した試料の図である。図において、8はTEMの真空チャンバである。1は半月状の導電性部材である。該導電性部材1の厚さは、例えば30μm〜100μm程度である。該導電性部材1の材料としては、例えばモリブデン(Mo),銅(Cu)が用いられる。2aは該導電性部材1の弦の部分に接着した状態で取り付けられた試料片である。該試料片2aとしては、ここでは例えば半導体試料等が好適に用いられる。この試料片は、集束イオンビーム装置(FIB)で作製される。
【0019】
3は導電性部材1の弦の部分に接着された電気的絶縁膜である。該電気的絶縁膜3の材料としては、例えばエポキシ樹脂が用いられる。4は導電線である金線であり、その端部は電気的絶縁膜3の上面に接着されている。金線4の他端と導電性部材1との間には電流を流すための電源Eが接続されている。5は金線4の一端と試料片2aとの間を接続するプローブ先端部である。図中、破線で囲まれた領域が真空内を示す。具体的には、導電性部材1は、透過型電子顕微鏡(TEM)の試料装着位置に取り付けられる。そして、試料片2aに電流を流した状態で、試料片2aの透過像を観察することができる。TEMについては示されていないが、通常のTEMが用いられる。
【0020】
図2は試料片近辺の立体形状を示す図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、1aは半月状の導電性部材1の弦の部分に形成された端面である。該端面1aには電気的絶縁膜3が接着されており、その上に金線4が接着している。また、端面1aには、試料片2が接着されている。
【0021】
次に、図1に示すような試料片を作製するための試料片作製方法について説明する。図3、図4は図1に示す試料片の作製手順を示す図である。図3は真空外(大気中)における手順を、図4は真空内における手順を示している。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。先ず、真空外における手順について説明する。
(a)厚さ30〜100μmのモリブデン(Mo)、銅(Cu)などの導電性材料で作製された半月状の導電性部材1を準備する。
(b)導電性部材1の弦の部分(導電性部材1の一部分)に電気的絶縁を目的とする電気的絶縁膜3を塗布する。該電気的絶縁膜3としては、例えばエポキシ樹脂が用いられる。
(c)電気的絶縁膜3上に金線4を直線状に接着して固定する。この場合において、導電性部材1と金線4は電気的に絶縁されている。
(d)FIBで切り出された幅約10μm、厚み約3μm、高さ約5μm程度の試料片2aを真空外のマニピュレータにより半月状導電性部材1の弦の部分の絶縁していない部分に固定する。
【0022】
上述した真空外の処理が終わったら、次に真空内の処理に移る。
(e)金線4、試料片2aの固定された導電性部材1をFIBのチャンバ9内の試料ステージ(図示せず)に装着し、試料片2aと導電性部材1を電気的に接続するためにデポジション装置(後述)を用いて導電性材料、例えばタングステン(W)のデポジションを行なう。
(f)真空内マニピュレータプローブ10の先端部5を試料片2aのタングステンデポジション部分に、更にプローブの中間部分5bを金線4に接触させ、双方の接触部分を上記デポジション装置を用いてタングステンなどの導電性材料のデポジションで固定する。
(g)導電性マニピュレータプローブ10の固定が確認されたら、マニピュレータプローブ10の中間部分5bより後方の部分5c、即ち中間部分5bよりも先端部5から遠ざかった部分5cを集束イオンビーム(FIB)により切断して試料を完成させる。図に示すように、金線4と試料片2aとの間にプローブ先端部5が接続され、試料片2aに通電させるためのパスが完成する。なお、この実施例1における試料保持体は、導電性部材1と金線4と導電性プローブ10と電気的絶縁膜3とを備えて形成されている。
【0023】
このようにして試料が完成したら、この試料を透過型電子顕微鏡(TEM)に取り付け、試料片に電源Eから電流を流しながら、TEM像を観察する。
実施例1によれば、金線と試料片との間に導電性のプローブを渡すことにより、試料片への通電を行なうための導体接続を行なうことができ、試料片への通電を容易に行なうことができる。
【0024】
図5は試料作製の説明図であり、上記(e)〜(g)の処理が行なわれるFIBの説明図である。FIBチャンバ9には、集束イオンビーム装置(FIB)の鏡筒11と、走査型電子顕微鏡(SEM)の鏡筒12と、上記デポジション装置13と、上記マニピュレータプローブ10を保持したマニピュレータ14とが取り付けられている。試料ステージ7の上には、試料片2aと金線4とを保持した導電性部材1が装着されている。
【0025】
SEM鏡筒12は試料片2aの状態を観察するために用いられる。金線4と試料片2aとをつなぐプローブ10を接着させる時には、デポジション装置13からガスW46が試料片2aに向かって噴射され、そこにFIB鏡筒11からイオンビームを照射することにより、導電性の膜が形成され、金線4と試料片2a間に渡されたプローブ10が金線4と試料片2aに接着される。SEM鏡筒12と図示していない2次電子検出器と表示装置によって、試料片2aの画像を観測することができる。
(実施例2)
図6は本発明の第2の実施例を示す構成図である。この図は、透過型電子顕微鏡(TEM)用の完成した試料の図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、8はTEMの真空チャンバである。1は半月状の導電性部材である。2aは該導電性部材1の弦の部分に接着した状態で取り付けられた試料片である。
【0026】
3は導電性部材1の弦の部分に接着された電気的絶縁膜である。4は金線であり、その端部は電気的絶縁膜3の上面に接着されている。4aは金線4の先端部に形成された切り込み部である。金線4の他端と導電性部材1との間には電流を流すための電源Eが接続されている。5は金線4の一端と試料片2aとの間を接続するプローブ先端部である。図中、破線で囲まれた領域が真空内を示す。具体的には、導電性部材1は透過型電子顕微鏡(TEM)の試料装着位置に取り付けられる。そして、試料片2aに電流を流した状態で、試料片2aの透過像を観察することができる。TEMについては示されていないが、通常のTEMが用いられる。
【0027】
次に、図6に示すような試料を作製するための試料作製方法について説明する。
試料に加熱/冷却など温度変化を与えると、全体の膨張/収縮により変形が起こり、試料片2aが破損される可能性がある。これを防ぐために、金線4とマニピュレータプローブ10の接合部分の金線を集束イオンビームにより更に細線加工(切り込み)を行なう。これによって試料片の膨張/収縮による張力を金線の変形で緩和することができる。
【0028】
図7は図6に示す試料の試料作製手順を示す図である。図6と同一のものは、同一の符号を付して示す。真空外の処理は図1に示す実施例1と同じであるので、省略する。以下、図5のFIB装置を用いた真空内の処理について説明する。実施例2は、金線の先端部分を予め細線加工して、その後、マニピュレータプローブにより導通のための接合を行なうようにしたものである。
(a)導電性部材1の弦の部分に電気的絶縁膜3が形成され、該電気的絶縁膜3の上に金線4が接着され、導電性部材1の絶縁されていない弦の部分に試料片2aが接着されている。つまり、真空外での処理が終了した状態を示している。
(b)FIB(図示せず)を用いて金線4の先端部に切り込み加工を行なう。この結果、切り込み部4aが形成される。
(c)試料片2aと導電性部材1を電気的に接続するためにデポジション装置13(図5参照)を用いて導電性材料、例えばタングステン(W)のデポジションを行なう。
(d)真空内マニピュレータプローブ10の先端部5を試料片2aのタングステンデポジション部分に、更にプローブの中間部分を金線4に接触させ、双方の接触部分をタングステンなどの導電性材料のデポジションで固定する。
(e)マニピュレータプローブ10の固定が確認されたら、マニピュレータプローブ10を集束イオンビーム(FIB)により切断する。
(f)この結果、図に示すように、金線4と試料片2aとの間にプローブ先端部5が接続され、試料片2aに通電させるためのパスが完成する。
【0029】
このようにして試料が完成したら、この試料を透過型電子顕微鏡(TEM)に取り付け、試料片に電源Eから電流を流しながら、TEM像を観察する。
試料片に加熱/冷却など温度変化を与えると、全体の膨張/収縮により変形が起こり、試料片2aが破損される可能性がある。これを防ぐために、金線4とマニピュレータプローブ10の接合部分の金線を集束イオンビームにより更に細線加工(切り込み部の形成)を行なうことにより、試料片の膨張/収縮による張力を金線の変形で緩和することができる。
(実施例3)
図8は本発明の第3の実施例を示す構成図である。この図は、透過型電子顕微鏡(TEM)用の完成した試料の図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、8はTEMの真空チャンバである。1は半月状の導電性部材である。2aは該導電性部材1の弦の部分に接着した状態で取り付けられた試料片である。
【0030】
3は導電性部材1の弦の部分に接着された電気的絶縁膜である。4は金線であり、その先端部は試料片2aと接着され、中間部は電気的絶縁膜3の上面に接着されている。金線4の他端と導電性部材1との間には電流を流すための電源Eが接続されている。図中、破線で囲まれた領域が真空内を示す。具体的には、透過型電子顕微鏡(TEM)の試料装着位置に取り付けられる。そして、試料片2aに電流を流した状態で、試料片2aの透過像を観察することができる。TEMについては示されていないが、通常のTEMが用いられる。
【0031】
次に、図8に示すような試料を作製するための試料作製方法について説明する。図9、図10は図8に示す試料の作製手順を示す図である。図9は真空外における手順を、図10は真空内における手順を示している。図8と同一のものは、同一の符号を付して示す。先ず真空外における手順について説明する。
(a)厚さ30〜100μmのモリブデン(Mo)、銅(Cu)などの導電性材料で作製された半月状の導電性部材1を準備する。該導電性部材1の弦の部分には電気的絶縁膜3が接着されている。
(b)電圧印加のための金線4の所定の位置(金線4の一端4bと他端4cの間に位置する中間部分4d)を、半月状導電性部材1と電気的絶縁を保ちながら電気的絶縁膜3に接着固定する。ここで、金線4の端部4bは持ち上げるようにされる。
(c)FIBで切り出された幅約10μm、厚み約3μm、高さ約5μm程度の試料片2aを真空外マニピュレータによりガラスプローブ6の先端に接着した状態で半月状導電性部材1の弦の部分の絶縁していない部分に接着剤で固定する。
【0032】
以上で真空外での処理が終了したので、次に真空内での処理について説明する。図10において、9は図5に示したFIBチャンバである。
(d)金線4、試料片2aの固定された導電性部材1をFIBのチャンバ9内の試料ステージ7に装着し、試料片2aと導電性部材1を電気的に接続するために導電性材料(例えばタングステン)のデポジションを行なう。また、金線4の先端には、FIBにより切り込み部4aが形成される。
(e)次に、真空内マニピュレータ14を操作してマニピュレータプローブ10の先端と金線とをデポジション装置13によるデポジションにより接続する。
(f)真空内マニピュレータ14を操作して金線4の先端をマニピュレータプローブ10で押し、試料片2aの上端のデポジションを行なった部分に金線4の先端を接着させる。更に、試料片2aと金線4の先端部を導電性デポジションにより接続する。
(g)接続が確認されたら、プローブ10をFIBで切断する。
(h)これでTEMに装着するための試料が完成されたことになる。なお、この実施例3における試料保持体は、導電性部材1と金線4と電気的絶縁膜3を備えて形成されている。
【0033】
第3の実施例によれば、電気的絶縁膜の上にその一端を持ち上げるようにして金線を接着し、マニピュレータプローブ10でこの持ち上がった金線を下に押して試料片端部に押しつけるようにすることで、試料片への通電を行なうための導体接続を行なうことができ、試料片への通電を容易に行なうことができる。
【0034】
図11はTEM用ホルダの構成例を示す図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図は試料ホルダを真上(電子線照射側)から見た図である。本発明により作製した試料を試料ホルダの先端部に取り付けている。図において、1は半月状の導電性部材、15は該導電性部材1を押さえる部材押さえである。2aは試料片、3は電気的絶縁膜、4は金線である。金線4と試料片2aはプローブ先端部5により導通がとれている。
【0035】
金線4は配線16と接続され、該配線16は電源Eの負側と接続されている。一方、導電性部材1は電源Eの正側と接続されている。ここでは、電源Eの正側は接地されている。このような試料ホルダは図の矢印で示す方向に移動することができるようになっており、TEMの鏡筒側面からTEMの内部に挿抜できる。このような試料ホルダをTEMに挿入し、試料片2aに電源Eから電流が流れている状態で透過像を得ることができる。
【0036】
上述の実施例では、導電性部材として半月状の部材を用いた場合を例にとったが、本発明はこれに限るものではない。TEMの試料ホルダの形状に合わせて、矩形状のものを用いることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 導電性部材
2a 試料片
3 電気的絶縁膜
4 金線
5 プローブ先端部
8 真空チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性部材の一部分に電気的絶縁膜を形成し、
該電気的絶縁膜の上に導電線を接着し、
予め作製されていた試料片を前記導電性部材に固定し、
前記導電線と試料片との間に導電性プローブを固定する、
ことにより透過型電子顕微鏡の試料を作製することを特徴とする透過型電子顕微鏡の試料作製方法。
【請求項2】
真空外で、
半月状の導電性部材の弦の部分に電気的絶縁膜を形成し、
該電気的絶縁膜の上に導電線を接着し、
予め作製されていた試料片を前記半月状の導電性部材の弦の部分に取り付けて固定し、
集束イオンビーム装置内で、
前記導電線の先端部に集束イオンビームで切り込み加工を行ない、
前記試料部分に電気的導通のためのデポジションを行ない、
前記導電線と試料片との間に導電性プローブを固定のためのデポジションにより取り付け、
前記導電性プローブを集束イオンビームで切断する、
ことにより透過型電子顕微鏡の試料を作製することを特徴とする透過型電子顕微鏡の試料作製方法。
【請求項3】
真空外で、
半月状の導電性部材の弦の部分に電気的絶縁膜を形成し、
該電気的絶縁膜の上にその一端を持ち上げるようにして導電線を接着し、
予め作製されていた試料片を前記半月状の導電性部材の弦の部分に取り付けて固定し、
集束イオンビーム装置内で、
前記試料片部分に電気的導通のためのデポジションを行ない、
前記導電線の端部を導電線プローブにより押し下げて、導電線の端部を前記試料片に接着し、
前記導電性プローブを集束イオンビームで切断する、
ことにより透過型電子顕微鏡の試料を作製することを特徴とする透過型電子顕微鏡の試料作製方法。
【請求項4】
試料片が固定された導電性部材と、
前記導電性部材の一部分に形成された電気的絶縁膜と、
前記電気的絶縁膜に固定された導電線と、
一端が前記導電線に固定され、他端が前記試料片に固定された導電性プローブと、
を備えたことを特徴とする試料保持体。
【請求項5】
試料片が固定された導電性部材と、
前記導電性部材の一部分に形成された電気的絶縁膜と、
一端が前記試料片に固定され、その中間部分が前記電気的絶縁膜に固定された導電線と、
を備えたことを特徴とする試料保持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−286276(P2010−286276A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138367(P2009−138367)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】