説明

透過率測定方法、及び装置

【課題】
透過率測定において、凸凹様々な曲率を有するレンズを高精度に測定する方法及び装置を提供する。
【解決手段】
測定光が光検出手段に到達する光路中に、被検レンズを介在させて測定光を通過させた場合と、被検レンズを介在させない場合の光検出強度を計測し、その対比により被検レンズの透過率を算出する手段であって、被検レンズを光路中に介在させた場合と介在させない場合の、被検レンズの形状、材質、光路中の位置、測定波長による光束の収束又は発散に起因する測定誤差分を予め測定しておき、測定値を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズの測定方法及び装置に関し、特に紫外領域の光の測定評価に、その中でも従来測定が困難で精度の低かった真空紫外領域での測定精度の向上の為に有効な透過率測定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学レンズの測定は、分光エネルギー分布、分光透過率、分光反射率などの測定が行なわれ、これ等の測定は可視領域が主体で行われていた。
【0003】
図6に従来の分光透過率測定装置の一例を示す。従来の分光測定装置は、光源から発せられた光線を分光器によって単色光とし、該単色光はセクタミラーやハーフミラーにより参照光と試料光に分割する。参照光は反射ミラーによって直接受光センサに導かれ、一方、試料光は反射ミラーによって被検レンズを介し、直接又は積分球等を介して受光センサに導かれる。各々の光の光束を比較することにより光のエネルギーの測定が行なわれる。この種の分光測定装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
分光測定装置に使用される受光素子は、シリコンフォトダイオード、光電子増倍管、CCD等が用途、使用波長、必要精度等によって使い分けられてきた。
【特許文献1】特開2000−321126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の可視領域が主体で行われてきた分光測定装置に対して、紫外領域の光線を利用した装置が各方面で使用されるようになってきている。特に半導体の製造に用いられるステッパー等の光源には水銀灯のg線(λ=4358Å)からi線(λ=3650Å)、ガスレーザのKrF(λ=2486Å)レーザ、更には、真空紫外領域のArF(λ=1934Å)レーザへと移行してきている。
【0006】
ここで大きな問題となっているのがそこに使用される光学系である。レンズ、及びレンズ表面に形成する反射防止膜の特性等を評価・開発していかなければならず、これらの評価・開発検討ツールとして、真空紫外波長領域で硝材及び光学膜の特性を精度良く計測・評価できる分光透過率測定装置が必要になる。しかし、これまでの測定評価に用いていた分光透過率測定装置では、凸凹様々な曲率を有するレンズを真空紫外領域で測定するのに対応しておらず、精度良い測定評価が望めなかった。
【0007】
その理由は、本発明者の知見によると、以下のとおりである。
精度の良い測定を実現するためには、測定光が光検出手段に到達する光路中に、被検レンズを介在させて測定光を通過させた場合と、被検レンズを介在させない場合の光検出強度を計測し、その対比が正確に行われなければならない。しかしながら、受光部中の場所による受光特性が完全に均一であるということは少ない。シリコンフォトダイオードの場合であれば、光電変換を行う受光面内に、製造プロセス、或いは使用時間による劣化によって、場所による感度ムラが存在する。また、積分球の場合であれば、積分球内壁塗料の塗布ムラや劣化によって場所による反射率ムラが存在する。そのため、被検レンズが光路中に無い時の100%測定時と、被検レンズを光路中に入れた時の測定時に受光面内の同一部分で受光しないと正確な対比ができないという問題がある。
【0008】
特に、真空紫外域では、光が様々の物質に強い吸収を受け、受光面等の汚染による感度ムラへの影響も顕著であるという問題がある。さらに、凸凹様々な曲率を有する球面を測定する場合、光束の収束発散により被検レンズに照射される測定光が、被検レンズの形状や厚さにより屈折される。そのため、光路中に被検レンズを介在させない場合の光束と異なり、受光部の感度均一性は完全でないので、測定誤差を生じるという問題がある。
【0009】
ここで、図7を用いて、凸凹様々な曲率を有する球面を測定する場合を模式的に説明する。この場合、光束の収束発散により被検レンズに照射される測定光が、被検レンズの形状や厚さにより屈折され、光路中に被検レンズを介在させない場合の光束と変化する。図7(a)は、光路中に被検レンズを介在させない場合であり、検知器として光電子増倍管23を、積分球24を介して用いた受光部付近を示す。紙面左方向から、分光された単色の測定入射光33はあるNAを持った収束光であり、積分球開口部付近を焦点位置とし、積分球内に入射する。次に図7(b)は、被検レンズとして負のパワーを有するレンズ34を、測定光路中に介在させた場合である。図7(a)の、光路中に被検レンズを介在させない場合と比較して、レンズ34によって光が屈折され、焦点位置が奥側に変わり、光束が変化している事が分かる。次に図7(c)は、被検レンズとして正のパワーを有するレンズ35を、測定光路中に介在させた場合である。図7(a)の、光路中に被検レンズを介在させない場合と比較して、レンズ35によって光が屈折され、焦点位置が手前側に変わり、光束が発散している事が分かる。
【0010】
このように、凸凹様々な曲率を有する球面を測定する場合、光束の収束発散により被検レンズに照射される測定光が、被検レンズの形状や厚さにより屈折され、光路中に被検レンズを介在させない場合の光束と異なる。そのため、受光部の感度ムラと相まって、測定誤差を生じるという問題があった。
【0011】
また、受光部に積分球を用いる場合、その構造上光を取り込むためと、検知器で受光するための開口部が必用である。そして、その開口部の大きさや数、積分球自体の内径との比率、検知器の受光部の位置等によっても、入射する測定光束の収束・発散により、影響の受け方も異なる。また、被検レンズの曲率と屈折率によって決まるパワーの大小・正負によっても誤差の量が異なるという問題があった。また、測定機によっても、測定光束、受光部のムラなどがそれぞれ異なり、誤差の量も測定機毎に異なるという問題があった。
本発明は、上述の従来例における問題点を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の透過率測定方法は、測定光が光検出手段に到達する光路中に、被検レンズを介在させて測定光を通過させた場合と、被検レンズを介在させない場合の光検出強度を計測し、その対比により被検レンズの透過率を測定する透過率測定方法であって、光路中に介在させた被検レンズによる光束の収束又は発散に起因する前記透過率の測定誤差分を測定する測定誤差分測定工程と、前記被検レンズの透過率測定値を前記測定誤差分に応じて補正する補正工程とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の透過率測定装置は、測定光が光検出手段に到達する光路中に、被検レンズを介在させて測定光を通過させた場合と、被検レンズを介在させない場合の光検出強度を計測し、その対比により被検レンズの透過率を測定する透過率測定装置であって、光路中に介在させた被検レンズによる光束の収束又は発散に起因する前記透過率の測定誤差分を測定する測定誤差分測定手段と、前記被検レンズの透過率測定値を前記測定誤差分に応じて補正する補正手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、受光部の感度ムラと、被検レンズの形状、材質、光路中の位置、測定波長等による光束の収束又は発散に起因する測定誤差量を予め測定しておき、測定値を補正する事により、測定誤差を低減することができる。これにより、真空紫外域の分光透過率測定においても、凸凹様々な曲率を有するレンズを高精度に測定することができ、レンズ、及びレンズ表面に形成する反射防止膜の高精度な特性評価を可能にするという、格別の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、測定光が光検出手段に到達する光路中に、被検レンズを介在させて測定光を通過させた場合と、被検レンズを介在させない場合の光検出強度を計測し、その対比により被検レンズの透過率を算出する透過率測定方法及び装置に係る。そして、本発明の好ましい実施の形態では、被検レンズを光路中に介在させた場合と介在させない場合の、被検レンズの形状、材質、光路中の位置、測定波長による光束の収束又は発散に起因する測定誤差分を予め測定しておき、測定値を補正する。なお、本実施形態では、測定誤差分を測定する測定誤差分測定工程を予め行っておくようにしたが、本発明において、測定誤差分測定工程と被検レンズの透過率測定工程とは、いずれが先でもよい。
【0016】
測定誤差分の測定には、吸収が殆どないか又は既知で、光学特性が均一な同一材料から切り出した材料で作成した、形状の異なる複数種のレンズを使用する。これらのレンズのそれぞれについて、透過率を測定し、その測定結果から測定する条件(パラメータ)と透過率測定値誤差との関係を近似する。さらに、被検レンズの透過率測定値を測定する条件に応じた透過率測定値誤差(測定誤差分)により補正する。測定する条件とは、被検レンズのレンズパワー、形状、材質、光路中の位置、測定波長等である。
【0017】
また、本実施形態に係る透過率測定装置は、吸収が殆どないか又は既知で、光学特性が均一な同一材料から切り出した材料で作成した、形状の異なる複数種のレンズを具備する。また、以下の工程を実行する制御装置を備える。制御装置は、レンズパワー、被検レンズの位置、測定波長と透過率測定値誤差の関係を見出す工程、補正式を導く工程、被検レンズを測定する工程、測定被検レンズのパワーにより補正を行う工程を、個別又は連続に経て測定値を出力する。
【実施例1】
【0018】
以下、図1、図2を参照して本発明の実施例1について詳細を説明する。なお、図は発明を理解できる程度に各構成成分の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示してあるに過ぎず、したがってこの発明を図示例に限定するものではない。
【0019】
図2において、本実施例における分光に使用される分光器は、光分散素子として反射型の平面回折格子14と2枚の軸外し放物面ミラー13、15とからなる所謂ツェルニターナ型のモノクロメータとしている。光源11には、真空紫外域から可視域まで連続した波長の光を放射する重水素ランプを用いている。参照光と測定光の受光センサには、光電子増倍管23が積分球24を介して使用されている。本実施例においては、光量と波長分解能の関係から出口スリット16面上での単位長さあたりの波長差である逆線分散は2nm/mmとした。
【0020】
図2の分光測定装置の構成について、光源から出射する光の光路に沿ってより詳しく説明する。分光器部は、第1軸外し放物面ミラー13、反射型の平面回折格子14、第2軸外し放物面ミラー15、出口スリット16からなる。重水素ランプを用いた光源11から出射した光は第1平面ミラー12によって90°方向を変え、第1軸外し放物面ミラー13によって平行光となり、回折格子14に入射する。回折格子14によって分光された光は第2軸外し放物面ミラー15によって再び集光され、出口スリット16面上で結像し、特定波長のみが通過するようになっている。出口スリット16を通過した光は第3軸外し放物面ミラー17によって平行光となり、半円形の平面ミラー(セクタミラー)18を回転させることで参照光と測定光とに時間分割される。すなわち、セクタミラー18が光路上にある時は90°方向を変えられて第4軸外し放物面ミラー19に入射し集光されて積分球24に入射する。一方、ミラー18が光路上に無い時は、そのまま第5軸外し放物面ミラー21に入射し、集光されて積分球24に入射する。
【0021】
積分球24内面には、測定域が可視光であれば一般に硫酸バリウム等が塗布されるが、本実施例では真空紫外波長に発光する特性を有する蛍光体が塗布されている。検知器としては光電子増倍管(フォトマル)23が用いられ、積分球24の紙面手前側開口部に取り付けられている。なお、図2の分光測定装置は、図6及び図7に示す従来例と同様のものである。積分球24に入射した真空紫外光は積分球内壁に塗布された蛍光体を照射し、発光した蛍光光線は積分球の内面の蛍光体被膜の表面を拡散反射しながら検知器である光電子増倍管23に達して測定に供される。
【0022】
次に、測定値の補正の方法について説明する。本実施例においては、レンズ材料として合成石英ガラスの、波長193.4nmにおける補正値を求めることとする。まず、吸収が殆どないか又は既知で、光学特性が均一な同一材料から切り出した材料で、形状の異なる6種のレンズを用意する。各レンズの透過率は、吸収が無視できるほど小さい場合は、材料の屈折率により求まる反射ロスR%を100から減算した値、吸収率が既知の場合はその吸収率を更に減算した値を基準透過率Toとする。或いは、各レンズを球面研磨加工前に平面研磨し実測して、その値を基準透過率Toとしてもよい。
【0023】
各レンズのサイズは、直径がφ30、中心厚が10mmとし、片側の面を全て平面に研磨し、もう一方の面は曲率半径28、56、112の凹面、同じく112、56、28の凸の球面とした。これにより、レンズのパワーはそれぞれ順に−0.02、−0.01、−0.005、+0.005、+0.01、+0.02とした。レンズのパワーとは、焦点距離の逆数であり、次式で表される。
P=1/f=(n−1)(1/R1−1/R2)+t・(n−1)/(n・R1・R2)
上式において、Pはパワー、fは焦点距離、nはレンズ材の屈折率、R1は一方の面(第1面)の曲率半径、R2は他方の面(第2面)の曲率半径、tは中心厚である。
【0024】
次に、上記6種のレンズを一つずつ、通常被検物を測定するのと同様に、透過率測定を行う。その際、受光部とレンズ間の距離を27mm、32mm、42mm、52mm、に換えて透過率データを取得した。その結果を図1のグラフに示す。横軸をレンズのパワー、縦軸を透過率にとると、グラフに示すように、レンズと受光部との距離とレンズのパワーにより、測定値が異なる事が分かる。
【0025】
次に、各測定距離ごとの測定値6点について最小二乗法等により多項式近似し、関数を求める。本実施例では、6次近似し次のような形の式が求められる。
Ta=aP+bP+cP+dP+eP+fP+g
上式において、Taは近似値、Pはパワー、a〜fは係数、gは定数(切片)である。
【0026】
最後に、パワーpの被検レンズを、上記近似式を求めたのと同じ測定機、同じ距離、同じ波長で測定した測定値Tmから補正値Tcを求める補正式は次のようになる。
Tc=To/Ta・Tm=To/(ap+bp+cp+dp+ep+fp+g)・Tm
【0027】
以上の方法により測定値を補正する事により、受光部の感度ムラと、被検レンズの形状、材質、光路中の位置、測定波長による光束の収束又は発散に起因する測定誤差分を補正する事ができ、測定誤差を低減することができる。実際に、本実施例の補正を実施した場合、特に誤差の大きかったパワーの大きいレンズで、基準平面基板より透過率が5%以上も低く測定されていたものが、0.1%程度の差となり、大幅な絶対値精度向上が図れた。これにより、真空紫外域の分光透過率測定においても、凸凹様々な曲率を有するレンズを高精度に測定することができ、レンズ、及びレンズ表面に形成する反射防止膜の高精度な特性評価が可能になった。
【実施例2】
【0028】
以下、図3、図4、図5を参照して本発明の実施例2について詳細を説明する。なお、図は発明を理解できる程度に各構成成分の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示してあるに過ぎず、したがってこの発明を図示例に限定するものではない。
【0029】
本実施例における分光測定装置(図4参照)の主な構成は、実施例1と同様であるため、相違点のみ説明する。図4の透過率測定装置は、補正式を求めるための誤差量測定レンズを測定機内に具備し、測定光路中の被検レンズセット位置に自動でセットできるように構成されている。ここでは、6個の誤差量測定レンズがホルダ25に取り付けられており、誤差量測定時は、制御装置の制御の下に各レンズが択一的に(1つずつ)、測定光路中にセットされる。
【0030】
本実施例においても、レンズ材料として合成石英ガラスの、波長193.4nmにおける補正値を求めることとする。誤差量測定レンズは、吸収が殆どないか又は既知で、光学特性が均一な同一材料から切り出した材料で、形状の異なる6種のレンズを用意し、光路中に順次介在させて透過率が測定できるよう可動式のホルダにセットされている。各レンズの透過率は、吸収が無視できるほど小さい場合は、材料の屈折率により求まる反射ロスR%を100から減算した値、吸収率が既知の場合は更に減算した値を基準透過率Toとする。或いは、各レンズを球面研磨加工前に平面研磨し、基準透過率Toを実測してもよい。各レンズのサイズは、直径がφ30、中心厚が10mm、片側の面は全て平面に研磨され、もう一方の面が曲率半径28、56、112の凹面、同じく112、56、28の凸の球面とした。レンズのパワーはそれぞれ順に−0.02、−0.01、−0.005、+0.005、+0.01、+0.02とした。レンズのパワーとは、焦点距離の逆数であり、次式で表される。
P=1/f=(n−1)(1/R1−1/R2)+t・(n−1)/(n・R1・R2)
ここで、Pはパワー、fは焦点距離、nはレンズ材の屈折率、R1は一方の面(第1面)の曲率半径、R2は他方の面(第2面)の曲率半径、tは中心厚である。
【0031】
図5は、図4に不図示の制御装置の動作を示すフローである。
次に、図5に示すフローの手順に従って、連続または各段階を個別に、制御装置より補正された測定値を導く方法について説明する。
まず、第1の工程「誤差量と変化するパラメータの関係を見出す工程」について説明する。変化するパラメータは、本実施例においてはパワーのみとするが、この他、積分球と被検レンズの距離(被検レンズの光路中の位置)、測定光の波長などであってもよい。或いは、被検レンズの形状や材質であってもよい。前述の通り、パワーの異なるレンズを可動式ホルダを駆動させることで、順次光路に介在させて透過率を測定する。その際、受光部とレンズ間の距離は全て33mmとなるようにした。
【0032】
次に、第2の工程「補正式を導く工程」について説明する。第1工程で得た透過率の結果を図3のグラフに示す。横軸をレンズのパワー、縦軸を透過率にとると、グラフに示すように、レンズのパワーにより、測定値が異なる事が分かる。この結果から、計算実行プログラム等により、測定値6点について最小二乗法等により多項式近似し、関数を求める。本実施例でも、6次近似し次のような形の式が求められる。
Ta=aP+bP+cP+dP+eP+fP+g
ここで、Taは近似値、Pはパワー、a〜fは係数、gは定数(切片)である。
また、補正値Tcを求める補正式は次のようになる。
Tc=To/Ta・Tm=To/(ap+bp+cp+dp+ep+fp+g)・Tm
【0033】
次に、第3の工程「試料を測定する工程」について説明する。第1工程の誤差量測定レンズを、可動式ホルダを駆動させることで光路から退避させ、今度はパワーpが既知の被検レンズを受光部と33mmの位置にセットする。被検レンズは誤差量測定レンズとは別の可動ホルダ(不図示)にセットされており、PC等の制御装置からの命令により移動することができるように構成されている。透過率を測定し、その測定値Tmを制御PCに記憶する。
【0034】
最後に、第4の工程「補正する工程」について説明する。この工程では、第2の工程で求めた補正式に、第3の工程で求めた測定値Tmを代入し、補正値Tcを求め、それらの結果をPC等の制御装置内に記憶し、必要に応じて表示器等に表示させることができる。
【0035】
なお、本実施例では、パワーの異なる6種のレンズを用いたが、2個以上の凸凹レンズの組合せでそのレンズ間距離を変化させる事でもパワーを可変させることができ、これによりパワーと誤差量の関係を取得するようにしても良い。
【0036】
以上の方法により測定値を補正する事により、受光部の感度ムラと、被検レンズの形状、材質、光路中の位置、測定波長による光束の収束又は発散に起因する測定誤差分を補正する事ができ、測定誤差を低減することができる。実際に、本実施例の補正を実施した場合、特に誤差の大きかったパワーの大きいレンズで、基準平面基板より透過率が5%以上も低く測定されていたものが、0.1%程度の差となり、大幅な絶対値精度向上が図れた。これにより、真空紫外域の分光透過率測定においても、凸凹様々な曲率を有するレンズを高精度に測定することができ、レンズ、及びレンズ表面に形成する反射防止膜の高精度な特性評価が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1に係る補正値を求めるためのグラフである。
【図2】本発明の実施例1の一側面をしての測定装置の構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施例2に係る補正値を求めるためのグラフである。
【図4】本発明の実施例2の一側面をしての測定装置の構成を示す概略断面図である。
【図5】図4の装置において実行される工程を説明するためのフローである。
【図6】従来の測定装置の構成を示す概略断面図である。
【図7】発明が解決しようとする課題を説明するための概略断面図
【符号の説明】
【0038】
11 光源
12、13、15、17、19、21 ミラー
14 回折格子
16 スリット
18 セクタミラー
23 光電子増倍管
24 積分球
25 ホルダ
26 被検レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光が光検出手段に到達する光路中に、被検レンズを介在させて測定光を通過させた場合と、被検レンズを介在させない場合の光検出強度を計測し、その対比により被検レンズの透過率を測定する透過率測定方法であって、
光路中に介在させた被検レンズによる光束の収束又は発散に起因する前記透過率の測定誤差分を測定する測定誤差分測定工程と、
前記被検レンズの透過率測定値を前記測定誤差分に応じて補正する補正工程と
を有することを特徴とする透過率測定方法。
【請求項2】
前記測定誤差分測定工程は、光学特性が均一な同一材料から切り出した材料で作成された、形状の異なる複数種の誤差量測定レンズを使用して、それぞれの透過率を測定し、それらの測定値から被検レンズのパワーと透過率測定値誤差の関係を近似し、前記透過率測定値の補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記誤差量測定レンズを使用して、被検レンズの前記光路中の位置又は測定波長と透過率測定値誤差の関係をさらに近似し、前記透過率測定値の補正を行うことを特徴とする請求項2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記被検レンズのレンズパワーと前記測定誤差分との関係を見出す工程、見出された関係から補正式を導く工程、被検レンズの透過率を測定する工程、及び測定された透過率を被検レンズのパワーにより補正する工程を、個別又は連続に経て補正した測定値を出力することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の測定方法。
【請求項5】
測定光が光検出手段に到達する光路中に、被検レンズを介在させて測定光を通過させた場合と、被検レンズを介在させない場合の光検出強度を計測し、その対比により被検レンズの透過率を測定する透過率測定装置であって、
光路中に介在させた被検レンズによる光束の収束又は発散に起因する前記透過率の測定誤差分を測定する測定誤差分測定手段と、
前記被検レンズの透過率測定値を前記測定誤差分に応じて補正する補正手段と
を有することを特徴とする透過率測定装置。
【請求項6】
前記測定誤差分測定手段は、光学特性が均一な同一材料から切り出した材料で作成された、形状の異なる複数種の誤差量測定レンズと、これらのレンズを択一的に前記光路中に介在させて該レンズの透過率を測定させ、それらの測定値から被検レンズのパワーと透過率測定値誤差の関係を近似する手段を備え、
前記補正手段は、前記被検レンズのパワーと透過率測定値誤差の関係に基づいて前記透過率測定値の補正を行うことを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記測定誤差分測定手段は、前記誤差量測定レンズを使用して、被検レンズの前記光路中の位置又は測定波長と透過率測定値誤差の関係をさらに近似することを特徴とする請求項6に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−31043(P2009−31043A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193384(P2007−193384)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】