説明

通信システム及び通信システム内のノード間で信号を直接伝送する方法

【課題】通信システム内でのノード間の直接的な通信を可能にする。
【解決手段】本通信システムは、1つ以上の装置との通信を行う複数のノード(102〜102)と、中央ノード(100)と、中央ノード(100)から前記複数のノードに向けた第1の光信号を分波し、前記ノードのうちの1つ以上が発した第2の光信号を合波する合波・分波装置(108)を備えた受動光ネットワーク(106)とを備えている。あるノードが他のノードのうちの少なくとも1つに信号を直接送信できるように、前記あるノードが、前記他のノード(102〜102)のうちの少なくとも1つに割り当てられている波長の光信号を生成し、当該光信号は送信すべき信号を含むものであって、前記合波・分波装置は、前記あるノードが発した光信号を前記第1の光信号と結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、通信システム、例えば、各モバイル装置にサービスを提供する複数の基地局を有するモバイル通信システムの分野に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、通信システムと、当該通信システム内の各ノード間での直接の通信、例えば、各基地局間の通信、並びに当該通信システム内のノード又は基地局及び光合波・分波装置(optical multiplexer/demultiplexer)との通信を可能にする方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
通信システムにおいては、複数のノード及び中央交換装置がバックホールアクセスネットワーク(backhaul access network)を介して接続されており、ノード間で信号が交換される。しかし、各ノード間、例えば、モバイル通信システム内の各基地局間で情報を直接的に交換しなければならない場合がある。モバイル通信システムに関しては、例えば、セル間協調(coordinated multi-point, CoMP)方式が、3GPP(third generation partnership project)において検討されている。様々なノードがユーザデータの送受信に関われるようにすることで、ユーザデータの速度が向上する可能性があるためである。このような方式の例は、非特許文献1に記載されている。CoMP方式においては、非特許文献2に記載されているように、モバイルバックホールネットワークを通じたユーザデータの交換と、セル情報、例えばチャネル状態情報(channel state information, CSI)の交換とが必要であり、そのため、達成可能な性能向上はモバイルバックホールの能力に大きく依存する。多くの場合、隣接するノードが通常、モバイルユーザの干渉及び受信信号の電力レベルに最も大きな影響を及ぼすため、CoMP伝送の信号及びデータの交換が、近隣のノード又は基地局(eNB)の間で必要となる。このような通信の場合、X2インターフェースが、2つのノード(eNB)間の論理インターフェースを定め、CoMP伝送をサポートするための交換または伝送に用いられる。3GPP規格で定められているX2インターフェースは、物理的なインターフェースではなく、実際の物理的なインターフェースの特定のハードウェア態様に依存する論理的なインターフェースである。
【0003】
図1は、モバイルバックホールアクセスネットワーク内にある物理X2インターフェース及び論理X2インターフェースの例を示している。このネットワークは、中央交換ユニット100と、各モバイルユニット、例えばモバイルユニット104にサービスを提供する複数の基地局102a及び102bとを有している。図1は、単なる概略的な表現であり、実際には、この通信システムは、複数のモバイルユニットを有しているとともに、複数の基地局、すなわち、2つ以上の基地局をも有している。中央交換ユニット100と基地局102a及び102bとは、モバイルバックホールアクセスネットワーク106を介して接続されている。ネットワーク106は、ネットワーク106を通して伝送される信号を結合または分離する光合波・分波装置108を備えた光ネットワークとすることができる。ネットワーク106は、中央交換ユニット100と、光合波・分波装置108及び複数の分岐線112〜112(例えば、光ファイバー)との間に接続110(例えば、光ファイバー)を有している。基地局102aは、接続110及び分岐線112を介して中央交換ユニット100と接続されており、基地局112bは、接続110及び分岐線112を介して中央交換ユニット100と接続されている。モバイルユニット104は、CoMP伝送を行うために設けられている。すなわち、ユニット104は、第1のチャネル114aを介して基地局102aと通信し、第2のチャネル114bを介して基地局102bと通信する。この通信では、近隣の基地局102a及び102bの間での情報の交換、例えば、信号及びデータの交換が必要である。基地局102aは、サービスを提供する基地局又はサービスを提供するeNBであるとし、基地局102bは、協調する基地局又は協調するeNBであるとする。基地局102aと102bとの間での情報の交換には、図1において符号116で概略的に示した論理的なインターフェースである上述のX2インターフェースが必要である。論理X2インターフェースは、図1において符号118a及び118bで示した物理的なインターフェースである物理X2インターフェースを通して実現される。物理X2インターフェースは、サービス提供ノード102aと中央交換ユニット100との間にある第1の構成要素118aと、中央交換ユニット100と協調するノード102bとの間の第2の構成要素118bとを有している。モバイルユニット104のCoMP伝送をサポートするために、論理X2インターフェースを用いてノード102aと102bとの間でデータを伝送する場合には、物理X2インターフェースの第1の構成要素118aを介して実際のデータをサービス提供ノード102aから中央交換ユニット100へ、そして物理X2インターフェース118bの第2の構成要素118bを介して中央交換ユニット100から協調ノード102bへと送信する必要がある。
【0004】
物理X2インターフェース118a、118bは、ネットワーク106を用いて実現され、S1トラフィック及びX2トラフィックは、ネットワーク106のリソースを共有する。これにより、ハードウェアコストを最小化又は低減することができるが、X2インターフェースの処理時間(latency)及び容量が、CoMP方式による情報交換の要件を満たすことができないという問題が生じる。図1に示したようにX2論理インターフェースを実施することは、リンク118a及び118bを介した長いファイバー伝送により、OEO変換及びパケット処理に関連する大きな遅延を伴う。加えて、追加のOEO変換により、中央ゲートウェイ(中央交換ユニット100)に対する大きな処理負荷が存在する。さらに、X2インターフェースは、物理リンクをS1−Uインターフェースと共有するため、限られた帯域幅しか利用できない。
【0005】
LTE(long-term evolution)リリース8では、図1に示した実施形態によれば問題のないように、X2インターフェースの処理時間が、通常の平均値で10ms、最大で20msの範囲内でなければならないことだけを要求していたため、これまでは、図1に示したX2インターフェースの実施態様が許容されてきた。この理由は、実際の各ノード間のX2通信の実施においては、eNB間のX2通信は、例えば、ハンドオーバーのために転送されるデータ及び無線リソース管理のための制御プレーンサポートに制限されていることにある。このような実施の態様では、CoMP伝送で要求されるようなわずか数msの範囲の短い処理時間は要求されない。しかし、CoMP伝送を実施する場合には、一般に、CoMP伝送では、数ms未満の処理時間及びeNB間通信(各基地局間の通信)に真のGbpsトラフィックが必要となるため、図1に示したように実現されるX2インターフェースは、CoMPのボトルネックを形成してしまう。正確な値は、実現される実際のCoMP手法に依存する(例えば、非特許文献3及び4を参照)。
【0006】
CoMP方式に加えて、モバイル通信ネットワーク内の他の態様も、各基地局間の直接的な通信リンクから恩恵を受ける。例えば、LTEアドバンスト(LTE−Advanced)規格によるより小さなセルサイズを有するネットワークでの増加する周波数ハンドオーバー(increased frequency handover)は、X2インターフェースを通じたより多くの情報の交換を必要とする。この大量の情報の交換のためにも、各基地局間の直接的な通信リンク、すなわち、直接的なX2物理インターフェースは興味深いものである。したがって、X2リンクへの直接通信リンクの使用は、CoMP伝送のみならず、例えば、近隣ノード又は基地局のそれぞれの間での他のデータの伝送にも興味深いものである。
【0007】
上記問題に対処するために、図1に示したようなモバイルアクセスネットワークを用いてインターフェースを実施するのではなく、eNB間に直接的な通信リンクを実装して、X2物理インターフェースを実現する手法が知られている。従来の一手法は、基地局を直接的に接続する追加の信号線を提供すること、例えば、図1に示した基地局間に追加のファイバーリンクを提供することである。しかし、X2インターフェースのために追加のファイバーリンクを配置することは、それに伴うコストにより、現実的ではない。
【0008】
図2に示している、別の従来の手法は、例えば、マイクロ波無線バックホールリンクを設けることにより、無線通信リンクを通して各基地局間に直接的な通信リンクをもたらす。基地局102a及び102bのそれぞれに、例えば、7GHz、10GHz、13GHz、28GHz、又は38GHzで動作するマイクロ波リンクを通して、基地局102a及び102b間での無線通信を可能とするマイクロ波送受信機120a、120bが設けられている。基地局102aと102bとの間の直接的な通信リンク122は、論理X2インターフェースにより情報を直接交換できるようにする物理X2インターフェースを提供する。通信リンク122は、400Mbpsを超える帯域幅及び約0.5msの処理時間を可能にする。しかし、2つの基地局間にマイクロ波またはミリメートル波のポイントツーポイントリンクを設置することによってX2物理リンクを設けることは、無線バックホールが全てのノードをカバーするために膨大な量の追加的なハードウェアを必要とするため、非常にコストの高いやり方である。また、用いる周波数帯の追加のライセンスも必要である。また、リンクは、通常、環境、例えば気候状況の影響を受けやすいため、バックホール光ファイバーリンクほどのリンク品質は得られない。
【0009】
更に別の既知の手法は、非特許文献5に記載されているような、X2物理リンクを有するTDM−PON(TDM(time division multiplex):時分割多重、PON(passive optical network):受動光ネットワーク)の使用である。スプリッタボックスを有する時分割多重・受動光ネットワーク(TDM−PON)は、各ノード間のX2物理リンクの提供のために用いられる。したがって、伝送がアクセスゲートウェイを通る図1の実施形態の欠点は回避される。しかし、信号のブロードキャストのみが可能である。すなわち、各基地局又は各ノード間の直接的な通信リンクに必要な(X2インターフェースが必要とする)ポイントツーポイント通信は可能ではない。加えて、複数のスプリッタボックスの使用により、コストが増加し、SNR(信号対雑音比)が減少し、このことは、Gbps範囲での伝送に関して問題である。加えて、スプリットの比率により、大量の信号対雑音比の損失が避けられず、それにより、X2インターフェースでのデータ速度が制限され、TDM−PONはノード毎に1Gbps以上の帯域幅もサポートできない。さらに、1つの受動光ネットワークシステム内の全ての光ネットワークユニットをカバーするために、複数のスプリッタが必要となるとともに、異なるX2通信間の衝突を回避するために入念に信号送信を行う必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M. Sawahashi, Y. Kishiyama, A. Morimoto, D. Nishikawa and M. Tanno, “Coordinated multipoint transmission/reception techniques for LTE-advanced,” IEEE wireless communications, vol. 17, issue 3, pp. 26-34, 2010
【非特許文献2】D. Samardzija and H. Huang, “Determining backhaul bandwidth requirements for networks MIMO,” EUSIPCO, Glasgow, Aug. 2009
【非特許文献3】D. Samardzija and H. Huang, “Determining backhaul bandwidth requirements for network MIMO,” EUSIPCO, Glasgow, Aug. 2009
【非特許文献4】T. Pfeiffer, “Converged heterogeneous optical metro-access networks,” ECOC 2010, Turin, September 2010
【非特許文献5】T. Pfeiffer, “Converged heterogeneous optical metro-access networks,” ECOC 2010, Turin, Sept. 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上述した従来技術の問題を回避し、十分に大きい帯域幅及び十分に短い処理時間を提供して、通信システム内でのノード間の直接的な通信を可能にする改良された手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、請求項1に記載の通信システム、請求項9に記載のノード、請求項12に記載の光合波・分波装置、請求項14に記載の方法により達成される。
【0013】
本発明のある実施形態によれば、1つ以上の装置との通信を行う複数のノードと、中央ノードと、前記中央ノードから前記複数のノードに向けた第1の光信号を分波し、前記ノードのうちの1つ以上が発した第2の光信号を合波する合波・分波装置を備えた受動光ネットワークとを備えた通信システムが提供される。各ノードには、当該ノードの光信号を生成するための波長が割り当てられている。そして、あるノードが他のノードのうちの少なくとも1つに信号を直接送信できるように、前記あるノードが、前記他のノードのうちの少なくとも1つに割り当てられている波長の光信号を生成することができる。そして、該光信号は送信すべき信号を含むものである。また、前記受動光ネットワーク内の前記合波・分波装置は、前記あるノードが発した光信号を前記第1の光信号と結合することができる。
【0014】
本発明のある実施形態によれば、受動光ネットワークを通して通信システム内の中央ノード及び複数の他のノードと接続されているノードが提供される。前記ノードには、前記他のノードに割り当てられている波長とは異なる、光信号送信のための波長が割り当てられている。そして、前記ノードは、前記他のノードに割り当てられている波長のうちの少なくとも1つの出力信号を生成する光源を備えている。前記ノードが前記他のノードのうちの少なくとも1つに信号を直接的に送信できるように、前記ノードは、必要とされる1つ以上の波長の光信号を生成する。そして、前記光信号には送信すべき信号が含まれる。
【0015】
本発明のある実施形態によれば、複数のノードと、受動光ネットワークを通して接続された中央ノードとを有する通信システムのための光合波・分波装置が提供される。本装置は、前記中央ノードと接続されている第1の入出力ポートと、各ノードと接続されている複数の第2の入出力ポートとを備えている。ここで、本装置は、前記中央ノードから前記複数のノードに向けた第1の光信号を分波し、前記ノードのうちの1つ以上が発した第2の光信号を合波する。さらに、本装置は、前記複数の第2の入出力ポートと前記第1の入出力ポートとの間に配置されており、前記複数の第2の入出力ポートにて受信した前記第2の信号のうちの1つ以上を前記第1の入出力ポートに導く受動光結合装置をも備えている。
【0016】
本発明のある実施形態によれば、1つ以上の装置との通信を提供する複数のノードと、中央ノードと、前記中央ノードから前記複数のノードに向けた第1の光信号を分波し、前記ノードのうちの1つ以上が発した第2の光信号を合波する合波・分波装置を有する受動光ネットワークとを備えた通信システム内のノード間で直接的に信号を伝送する方法が提供される。各ノードには、当該ノードの光信号を生成するための波長が割り当てられている。本方法は、あるノードが他のノードのうちの少なくとも1つに信号を直接的に送信できるように、前記あるノードが、前記他のノードのうちの少なくとも1つに割り当てられている波長の光信号を生成するステップを含み、ここで、前記光信号は送信すべき信号を含む。さらに、本方法は、前記合波・分波装置が、前記あるノードが発した光信号を前記第1の光信号と結合するステップをも含む。
【0017】
他の実施形態によれば、本発明の実施形態に基づく方法をコンピュータに実行させる、機械可読担体に記憶された命令を有するコンピュータプログラム製品が提供される。
【0018】
本発明の実施形態によれば、前記あるノードから前記他のノードのうちの1つに向けたポイントツーポイント通信の場合には、前記あるノードが、前記他のノードに割り当てられている波長を選択し、該選択された波長の光システムを生成する。このような実施形態では、前記あるノードが狭スペクトル光源を備えている。前記あるノードは、前記狭スペクトル光源を前記選択された波長に設定し、送信すべき信号を、前記狭スペクトル光源の出力信号に変調して光信号を生成し、該光信号を前記合波・分波装置に送信する。
【0019】
他の実施形態によれば、前記あるノードから複数の前記他のノードに向けたブロードキャスト通信が求められる場合があり、この場合、前記あるノードは、前記他のノードに割り当てられている波長の光信号を生成する。これらの実施形態は、ポイントツーポイント通信を可能にする実施形態とともに実施することもできるし、ポイントツーポイント通信を可能にする実施形態とは別個に実施することもできることに留意されたい。このような実施形態によれば、前記あるノードは、前記複数のノードに割り当てられている波長を含む広スペクトル光源を備えていてもよい。前記あるノードは、ブロードキャストすべき信号を前記広スペクトル光源の出力信号に変調して光信号を生成し、該光信号を前記合波・分波装置に送信する。
【0020】
本発明の実施形態によれば、ノードは、前記ノードに割り当てられている波長の光信号を検出する光検出器と、前記ノードに割り当てられている波長の信号を提供する光源であって、該信号に基づいて、前記ノードから前記中央ノードへと送信される前記第2の信号が生成される、光源とを備えていてもよい。
【0021】
実施形態によっては、前記受動光ネットワーク内の前記合波・分波装置が、前記中央ノードに接続されている第1の入出力ポートと、前記各ノードと接続されている複数の第2の入出力ポートとを備えている。また、受動光結合装置を、前記複数の第2の入出力ポートと前記第1の入出力ポートとの間に配置し、前記複数の第2の入出力ポートにて受信した前記第2の信号のうちの1つ以上を前記第1の入出力ポートに導くことができる。
【0022】
実施形態によっては、前記通信システムを無線通信システムとすることができる。前記複数のノードは、1つ以上の無線装置との無線通信を提供する。前記中央ノードは中央交換ノードであり、前記受動光ネットワークは、前記中央交換ノードと前記ノードとの間にバックホールリンクを形成する。前記ノード間で直接送信される信号は、X2用データを含む信号とすることができる。
【0023】
本発明の一つの実施形態によるノードは、前記他のノードに割り当てられている波長のうちの1つに調整されている狭スペクトル光源及び/又は前記他のノードに割り当てられている波長を含む広スペクトル光源を備えていてもよい。前記狭スペクトル光源は波長可変レーザーとすることができ、前記広スペクトル光源には発光ダイオードが含まれうる。
【0024】
光合波・分波装置は、ある実施形態によってはアレイ導波路回折格子とすることができる。
【0025】
本発明の実施形態によれば、複数の基地局との協調により、より大きなユーザスループットを提供する可能性を受けて、セル間協調(CoMP)送受信方法を、例えば、LTEアドバンストの用途に使用できるようにする手法が提供される。その性能は、モバイルバックホールアクセスネットワーク、特にX2インターフェースの容量と、処理時間と、その他の特徴とに強く依存する。X2インターフェースは論理インターフェースであるため、X2物理リンクが利用されない限り、CoMP手法を完全にサポートすることができる立場にはない。本発明の実施形態によれば、波長分割多重に基づく光ファイバーアクセスネットワーク内でのポイントツーポイント通信及びブロードキャスト通信のためのX2物理インターフェースが提供され、X2物理インターフェースは、従来のX2論理インターフェースよりも大きな容量及び短い処理時間をもたらす。したがって、本発明による手法は有利であり、CoMP手法を完全にサポートし、ユーザスループットを改善する。X2物理リンクの実施に現在用いられているマイクロ波またはミリメートル波の無線バックホールリンクと比較して、本発明による手法は、より大きな容量と、よりよいリンク品質と、環境の影響の受けにくさとをもたらす。それまでに配備されている低損失のファイバーネットワークを用いるため、追加のシステムハードウェア及び追加の周波数ライセンスを必要とする無線バックホールリンクよりも費用の点で効率的である。
【0026】
したがって、実施形態によれば、大きな容量及び短い処理時間をX2物理インターフェースに提供し、CoMP手法を十分に利用することにより、かつCoMP手法とともに、又はCoMPとは別に、X2インターフェースを用いることにより、より効率的なハンドオーバー及び制御信号交換を可能にすることで、セルのユーザスループットを増加させるため、有利である。さらに、X2物理インターフェースの実施は、従来の手法、特に無線バックホールリンクよりも費用の点で効率的であり、それにより、X2インターフェースの実施に関するコストを低減できる。
【0027】
本発明の実施形態は、CoMP用に物理X2インターフェースを有するモバイルバックホールWDM(Wavelength Division Multiplexing、波長分割多重)アクセスネットワークである。WDM−PON(波長分割多重・受動光ネットワーク)アクセスネットワークに基づく通信ネットワークバックホールの更なる発展について説明する。これは、例えば、X2インターフェースを用いて、十分なデータ速度及び十分に短い処理時間で基地局間で情報を「直接的に」交換する必要がある次世代モバイルネットワークに対して有利である。本発明の教示によれば、WDM−PONアクセスネットワークの好ましい性質を利用でき、それにより、必要とされる伝送容量及び伝送特性を提供することで、基地局間に直接の伝送路を実現するための不要なコストを回避される。WDM−PON内の各基地局又はノード及び合波・分波装置に必要な修正はごく僅かである。合波・分波装置には、複数のノードから受信した信号を、その信号をノードに再分配する合波・分波装置の入力へ再び導くことができるようにする追加の受動光結合装置が設けられる。ノード又は基地局には追加の光源が設けられ、光源は、対象となるノードが使用する所望の波長に調整可能であるか、又はシステム内のノードが用いる全ての波長をカバーする光信号を生成する広帯域光源とすることができる追加の光源が設けられる。各ノード間での情報交換が求められる場合には、ブロードキャスト通信又はポイントツーポイント通信のいずれかが開始される。
【0028】
ブロードキャスト通信の場合には、ある実施形態により、LED(発光ダイオード)を提供し、LEDの出力信号は、通信システム内のノード又はWDM−PONにより接続された通信システム内の特定の部分にあるノードが用いる全ての波長をカバーする。伝送すべき信号は、LEDの出力信号に変調され、合波・分波装置に転送され、合波・分波装置は、この信号を入力に誘導し、それにより、信号を全てのノードに分配する。信号は、全ての波長において信号部分を含むため、全てのノードがブロードキャスト通信を受信し、このブロードキャスト通信は、ノード内の各光検出器により検出することができる。ポイントツーポイント通信の場合には、本発明の実施形態は、受動光ネットワークに接続されたノードにより用いられる複数の波長のうちの1つを選択するために用いられる波長可変レーザーを提供する。波長可変レーザーは光信号を生成する。この光信号は、送信すべき情報で変調され、合波・分波装置に転送される。より具体的には、合波・分波装置とともに設けられた結合装置を通して当該合波・分波装置の入力に転送され、それにより再びネットワークに分配され、所望のノードに転送される。
【0029】
したがって、本発明の実施形態は、ポイントツーポイント通信又はリンクのみならず、モバイルWDMアクセスネットワーク内のブロードキャストリンクも可能にするX2物理インターフェースを提供する。本発明の実施の形態は、CoMP伝送に好ましいX2インターフェースの極めて短い処理時間及び高い容量を可能にする。加えて、X2インターフェースのみのために追加のファイバーリンク又はマイクロ波リンクを配置する追加的なコストが回避でき、それにより、構築のコストが最小となる。したがって、本発明の実施形態は、ポイントツーポイント通信のみならず、ノード間でのブロードキャスト通信もサポートするX2物理リンクを有する新規なWDM−PONシステムを提供する。
【0030】
本発明のある実施形態によれば、X2物理インターフェースは、WDM−PONアーキテクチャを用いて実現され、本発明による手法により用いられる全ての構成要素は、従来の既存のWDM−PONシステムに完全に準拠するため、費用の点で効率的な解決策も提供される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】モバイルバックホールアクセスネットワーク内の物理的及び論理的なX2インターフェースの例を示す説明図である。
【図2】各基地局間での直接的な通信リンクのためのマイクロ波無線バックホールリンクを示す説明図である。
【図3(a)】時分割多重・受動光ネットワーク(TDM−PON)の概略図である。
【図3(b)】波長分割多重・受動光ネットワーク(WDM−PON)の概略図である。
【図4】標準的なWDM−PONアクセスネットワークの拡大図である。
【図5】本発明の実施形態による物理X2インターフェースを有するWDM−PONアーキテクチャを示す説明図である。
【図6】X2ポイントツーポイント物理リンクを有するWDMアクセスネットワークを備えた本発明の実施形態を示す説明図である。
【図7】X2ブロードキャストの本発明による手法の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図3を参照して、TDM−PONとWDM−PONとの違いを説明する。図3(a)は、時分割多重・受動光ネットワーク(TDM−PON)の概略を示している。TDM−PONは、中央交換ユニット(OLT、optical line terminal、光回線終端装置)100と、光ファイバー接続である接続110を通してOLT100と接続されているスプリッタ108とを有している。スプリッタ108は、複数の基地局(ONU、optical network unit、光ネットワークユニット)102〜102と更に接続している。光ネットワークユニット102〜102のそれぞれは、各々光ファイバーで形成された分岐接続112〜112を通してスプリッタ108と接続している。スプリッタ108は1対32のスプリッタとすることができる。これは、32個の異なる光ネットワークユニット102〜102にサービスを提供できること、すなわち、n=32であることを意味する。TDM−PONは、アップリンク又はアップストリーム接続の場合、すなわち、データを光ネットワークユニット102〜102のうちの1つ以上から光回線終端装置100へと送信する場合には、1260nm〜1280nmの波長範囲内で動作する。ユニット100から各光ネットワークユニット102〜102に向けたダウンストリーム又はダウンリンク送信の場合には、1575nm〜1580nmの波長が用いられる。時分割多重の手法によれば、情報のパッケージは、図3(a)に示しているように、アップストリーム方向及びダウンストリーム方向に配信される。
【0034】
図3(b)は、波長分割多重・受動光ネットワーク(WDM−PON、wavelength division multiplexing passive optical network)の概略を示している。WDM−PONは、光回線終端装置100と、複数の光ネットワークユニット102〜102とを備えている。スプリッタ108は、32個の光ネットワークユニットに対してPONによりサービスを提供できるように、32個のチャネルを提供するアレイ導波路回折格子(arrayed waveguide grating)を備えている。また、光回線終端装置100と複数の光ネットワークユニット102〜102との間には、各ファイバー接続110及び112〜112が示されている。光ネットワークユニット又は基地局102〜102のそれぞれには、ダウンリンク接続のための第1の波長λD1〜λD3が割り当てられている。第1の波長はLバンド内にあり、光回線終端装置100から各光ネットワークユニット102〜102へと送信される信号は、第1の波長すなわちダウンリンク波長のうちの1つにより送信される。信号は、アレイ導波路回折格子108を通して所望の光ネットワークユニットへと自動的に方向付けがなされる。加えて、光ネットワークユニット102〜102のそれぞれは、データを各光ネットワークユニット102〜102から中央交換ユニット100へと送信するために用いられるアップリンク波長λU1〜λU3(Cバンド内)を有している。
【0035】
図4は、アレイ導波路回折格子108及び光ネットワークユニットすなわち基地局102の更なる詳細を示す、標準的なWDM−PONアクセスネットワークの拡大図である。アレイ導波路回折格子108は、複数の入力ポート130〜130と、複数の出力ポート132〜132とを有している。入力ポート130〜130のうち、入力ポート130のみがファイバー110と接続されており、アレイ導波路回折格子(AWG)108を(図4には示していない)光回線終端装置すなわち中央ノード100と接続している。残りの入力ポート130〜130は使用されない。AWG108の出力ポート132〜132は、各光ファイバー112〜112を通して各光ネットワークユニットすなわち基地局と接続されている。図4には、ユニット102のみを示している。AWG108は、入力ポート130と各出力ポート132〜132との間で伝送される各信号S〜Sを表す矢印により示しているように、受信信号の波長に応じて、入力130において受信した光信号を各出力ポート132〜132に分配する。入力ポートと出力ポートとの間では、データを中央ユニット100から各光ネットワークユニットへと送信するため、かつデータを光ネットワークユニットのうちの1つ以上から中央ユニット100へと送信するために、信号S〜Sの双方向の送信ができる。それぞれの光信号は、ダウンリンク接続及びアップリンク接続のための、各光ネットワークユニットに関連付けられている所定の波長を有している。光ネットワークユニットは、ユニット102から中央ノード100に向けてアップリンクチャネル内で送信すべき情報を有する、変調された出力信号を波長λU1で提供するレーザー134を更に備えている。ユニット102は、光ネットワークユニット102に関連付けられているダウンリンク波長λD1の光信号を検出し、ダウンリンク接続を通してOLT100からユニット102へと送信された光信号を検出する光検出器136を更に備えている。
【0036】
本発明の実施形態は、例えば、図3(b)及び図4を参照して説明した標準的なWDM−PONを基礎とするものである。この既知のアーキテクチャに基づいて、X2物理インターフェースが実現される。図5は、本発明の実施形態による物理X2インターフェースを有するWDM−PONのアーキテクチャを示している。各ノードは、レーザー134及び光検出器136に加えて、追加の光源140及び追加の光検出器142をも備えている点が変更点である。ソース140及び光検出器142は、X2データの送受信を可能とするために設けられている。追加の光源140は、波長可変レーザー140a又はLED114bのいずれかにより構成することができる。実施形態によっては、波長可変レーザー140a又はLED114bのいずれかをノード102内に設けることができる。あるいは、ポイントツーポイント通信及びブロードキャスト通信が求められる場合には、波長可変レーザー140a及びLED114bをユニット102内に設けることができる。加えて、アレイ導波路回折格子108に対して、ポート130〜130における信号を入力ポート130に導く受動光結合装置144が設けられている。つまり、本発明の実施形態によれば、X2信号を送信するための追加の波長可変レーザー140a及び/又は広スペクトル光源140bは、X2信号を再ルーティングするアレイ導波路回折格子108内の受動光結合装置144と組み合わせて設けられている。
【0037】
X2ポイントツーポイント通信の場合、発信元であるeNB102は、波長可変レーザー140aにより、対象となるeNBに割り当てられた波長を用いて信号を生成し、X2信号をその信号に変調して、ファイバー112を通してAWG108のポート132へ送信する。AWG108は、その信号を、例えばポート130に誘導する。AWG108のポート130は、受動光結合装置144を通して主入力ポート130と接続されて用いられるため、発信元ノードにて生成されたX2光信号は、対象となるノードに向けて、すなわち、入力ポート130から、その波長が関連付けられているポート、例えば、132へと自動的にルーティングされる。このルーティングは、受動AVG100にて行われるため、いかなる能動的な構成要素も追加する必要はなく、それにより、コストの増加も回避できる。このX2ポイントツーポイントリンクは、大量のデータを送信し、ブロードキャストよりも大きいSNRが得られる。波長可変レーザー140aの変調速度は通常、2.5Gbpsよりも速い。
【0038】
加えて、X2ブロードキャストを行うことができる。すなわち、X2用データをある1つのノードから、PONシステムに属する全てのノードへブロードキャストすることができる。このような場合には、波長可変レーザーソース140aに代えて、広スペクトル発光ダイオードLED140bが用いられる。上述したように、両光源をノードに設けることができ、それにより、ポイントツーポイント通信とブロードキャスト通信とを切り換えることができ、選択されたモードに応じて、波長可変レーザー又はLEDのいずれかを用いる。LEDは波長可変レーザー光源よりもはるかに安価であるため、経済的にみて、波長可変レーザー及びLEDを同じ場所に配置することができる。しかし、別の実施形態では、システムの要件に応じて一方の光源のみを用いることができる。LEDは、PONシステムに属するノードに割り当てられた全ての波長を有するため、X2用信号はAWG100を通して全てのノードへ配信される。
【0039】
物理X2インターフェースを有する新しいWDM−PONアーキテクチャによれば、CoMP性能を向上させることができ、結果として、ユーザスループットが向上する。CoMPの手法は、容量及び処理時間に関してモバイルバックホールネットワークに対していくつかの制約を課す。これらの制約は、ネットワークアーキテクチャにより、特にX2インターフェースを設けることにより解消する必要がある。さもなければ、CoMPの手法の性能利得が限られるか、又はCoMP手法を用いることが不可能になることさえあり得るからである。ノード間の直接的なX2物理リンクがなければ、X2インターフェースは、全てのCoMP手法をサポートするには十分ではないことが分かっている。その一方で、本発明による手法は、X2物理リンクを、WDMに基づく光ファイバーアクセスネットワーク内でのポイントツーポイント通信及びブロードキャスト通信の両方に対して実現可能とし、ノード間通信に従来使用されているマイクロ波無線バックホールリンクよりも大きな容量及び良好なリンク品質を提供するものである。したがって、CoMP手法は、本発明による手法により完全にサポートされ、最終的にはユーザスループットが向上する。また、無線バックホールにはできない追加の機能、すなわち、X2ブロードキャストを行うことができ、それにより、CoMP手法の信号送信を更に減らすことができる。
【0040】
更なる利点は、X2物理接続が、削減された構築コストで得られることである。上述したように、マイクロ波無線バックホールリンクは、X2物理インターフェースを構築する従来の手法であるが、光ファイバーリンクと比較すると、これらの無線バックホールリンクが低いリンク品質及び低容量に繋がるという制限に加えて、無線バックホールシステムのハードウェアの高いコスト及び追加の周波数ライセンスが必要となることが主な問題である。本発明による手法は、基地局において必要となる追加の構成要素が、1つ又は2つの光源、つまりレーザーダイオード及び/又はLED、並びに1つの追加の光検出器のみであるため、有利である。加えて、スプリッタ108において、更なる結合素子を設けなければならないが、これは、追加の能動的要素を設けずに行うことができる。本発明の手法の実現に必要な追加の要素は、低コストで得ることができるよく知られた要素であるため、システムは、無線バックホールX2リンクに必要なシステムハードウェアコストと比較して、はるかに安価に実装することができる。加えて、ファイバーリンクの恩恵をX2物理インターフェースに利用するため、無線バックホールリンクよりもはるかに良質のサービスが得られる。
【0041】
本発明による手法のさらに別の利点は、ネットワークの再構成に関する高い柔軟性である。例えば、X2リンクは、S1インターフェースに対して要求されるデータトラフィックが多すぎる場合には、S1−Uリンクに使用することもできる。この場合、波長可変レーザーは、それ自体に割り当てられた波長を生成する。S1インターフェースのように、これは光ネットワークユニットから光回線終端装置へと送信され、X2インターフェースを妨害することはない。この追加のリンクは、S1リンクとほぼ同じ容量を提供することができ、したがって、理想的には、データ容量が、このような構成を用いることにより2倍になる。これによれば、リンクの再構成の機能により、ネットワークの柔軟性が高まることになる。
【0042】
図6は、X2ポイントツーポイント物理リンクを有するWDMアクセスネットワークを備えた本発明の実施形態を示している。図6は、X2ポイントツーポイントリンクを提供するWDM−PONアーキテクチャの詳細を示すものである。アレイ導波路回折格子108は、様々な波長を有する光信号を分離又は結合することができるファイバー結合用受動装置である。これは、従来のWDM−PONシステムにおいても、光合波・分波器として一般に用いられている。ダウンリンク通信の場合には、様々な波長を有する光信号は、異なるポート132〜132に分波される。λ1,DNが、ノード102(eNB1)へのダウンリンク送信に割り当てられているとする。波長λ2,DNは、第2のノードeNB2等に割り当てられている。AWG108は波長の分離に関して周期性を示すものであるため、アップリンク送信の場合に異なる波長を用いることができる。より詳細には、ノードeNB1のアップリンクでは、図6(a)に示しているように、ダウンリンクの帯域から所定のスペクトル範囲だけ隔てられている異なった波長λ1,UPを用いることができる。ノードeNB1のアップリンク波長λ1,UPは、ダウンリンク波長λ1,DNと同じ多重特性を示す。レーザー134は、波長可変レーザーとすることができ、アップリンク波長λ1,UPを生成するためにアップリンク送信の際に用いることができる。波長可変レーザーは、所望の波長に設定されており、その出力はアップリンクデータを用いて変調され、アップリンクデータはファイバーリンク112を通して回折格子108へと送信される。波長可変レーザー134は、アップリンク波長λ1,UPを生成するように一旦設定がされると、変更の必要がないため、変更されることはない。他の実施形態によれば、波長の調節が可能ではないアップリンク送信機を用いることができる。
【0043】
本発明による手法によれば、X2物理インターフェースを提供するための追加の波長可変レーザー140が設けられ、その波長可変特性は、受動結合装置144と一体化されている改良された回折格子108と組み合わせて十分に利用できる。ダウンリンク又はアップリンクの光信号との衝突を回避するために、X2リンクは別の帯域を用い、回折格子108は同じスペクトル特性を示す。図6(a)は、X2用信号の送信、ダウンリンク送信、アップリンク送信のそれぞれ異なる帯域を示している。発信元eNB102が、X2データを対象へ、例えばeNB3へ送信したい場合には、波長可変レーザー140は、対象となるeNBに割り当てられている波長を生成するように設定されている。例えば、X2用データをノードeNB3へ送信する場合には、ノード102(eNB1)内の波長可変レーザーは、X2用の波長λ3,X2を生成する。データは、レーザーからの信号へ変調されて、出力信号S3,X2が生成される。この信号S3,X2は、アップリンク方向に光ファイバー112を通してAWG108のポート132へとルーティングされる。AWG108は、信号S3,X2をポート130に誘導する。回折格子108内の一体化された受動光結合装置144は、信号S3,X2を回折格子108の主入力ポート130に送出し、続いて、AWG108の特性に基づき、この信号S3,X2は、ポート132及びファイバー112を通してeNB3へと自動的にルーティングされる。
【0044】
本発明の実施形態によれば、全てのノードは、どの波長が、同じPONシステムに属するその他のeNBに割り当てられているかについての情報を有している。したがって、各eNBは、X2用データを別のeNBへ送信するために、どの波長を用いる必要があるかが分かる。これは全て、光学的処理により行われ、結果として、X2インターフェースを用いて達成できる極めて短い処理時間につながる。また、光リンクはアップリンクあるいはダウンリンクの容量から完全に独立しているため、これは、大容量のX2インターフェースをもたらす。
【0045】
図7は、X2ブロードキャストを行う本発明による手法の例を示している。ブロードキャストX2インターフェースを実現するために、ノード又は基地局102には、図6において用いた狭スペクトル光源ではなく、広スペクトル光源140bが設けられている。広スペクトル光源は、波長可変レーザーではなくLED又はS−LEDとすることができる。図6は、ブロードキャストリンクを有するWDM−PONアーキテクチャを示すものである。広スペクトル光源140bは、PON内の全てのeNBに割り当てられている全ての波長を含む信号を生成する。したがって、1つのノードからその他の全てのノードへのブロードキャストは、X2ブロードキャストデータを広スペクトル光源上の出力信号に変調することにより行うことができる。図7に示した例では、eNB1はブロードキャスト信号を生成し、このブロードキャスト信号は、ファイバー112を通してAWG108のポート132に向けて送信される。AWG108は、各信号成分をポート130〜130に分配する。結合装置144は、信号成分をポート130〜130から入力ポート130へとルーティングし、それにより、AWG108は信号を各eNBに配信する。LEDのような広スペクトル光源は、最高で数百Mbpsという限られた変調速度を有しているが、ブロードキャスト手法は、データ交換ではなく信号送信の制御に用いられるため、このことは一般には問題ではない。広スペクトル光源は極めて安価であるため、ポイントツーポイントとブロードキャストという2つの機能を組み合わせることもできる。
【0046】
各ノードに単一の波長のみが割り当てられる実施形態を説明してきたが、他の実施形態では2つ以上の波長を1ノードに割り当てることができることに留意されたい。また、実施形態によっては、波長が可変な元のレーザー134を用いてポイントツーポイント通信を行うこともできる。そのような実施形態では、S1トラフィック及びX2トラフィックは、同じ光源を共有する。各実施形態は、CoMP方式という文脈で説明したが、モバイル通信ネットワークの別の側面も、各基地局間の直接的な通信リンクから恩恵を受ける。例えば、LTEアドバンスト規格に基づく小さなセルサイズを有するネットワークで多い周波数間ハンドオーバーでは、X2インターフェースを通してより多くの情報を交換する必要がある。したがって、X2リンクに直接的な通信リンクを用いることは、CoMP伝送のみならず、例えば、近傍のノード又は基地局のそれぞれの間での他のデータの伝送にも興味深いものである。
【0047】
装置との関係でいくつかの態様が説明されたが、これらの態様は対応する方法の説明でもあり、ここでブロック又はデバイスは方法のステップ又は方法のステップの特徴に相当することが明らかである。同様に、方法ステップに関連して説明された態様も、対応する装置の対応するブロック若しくはアイテム又は特徴の説明にあたる。
【0048】
ある実施態様の要件に応じて、本発明の実施形態はハードウェア又はソフトウェアにおいて実施することができる。実施態様は、電子的に読取り可能な制御信号が格納されているデジタルストレージ媒体、たとえばフロッピー(登録商標)ディスク、DVD、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、又はフラッシュメモリを用いて実行することができ、それらは、それぞれの方法が実行できるようにプログラム可能なコンピュータシステムと連携する(又は連携可能である)。本発明によるいくつかの実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つが実行されるようにプログラム可能なコンピュータシステムと連携することができる電子的に読取り可能な制御信号を有するデータ担体を含む。概して、本発明の実施形態は、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品として実装することができる。このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されると、方法のうちの1つを実行するように動作することができる。プログラムコードは、たとえば機械可読の担体上に格納することができる。他の実施形態は、機械可読の担体上に格納された、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するコンピュータプログラムを含む。
【0049】
したがって、換言すれば、本発明の方法の一実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。したがって、本発明の方法の更なる実施形態は、データ担体(又はデジタルストレージ媒体若しくはコンピュータ可読媒体)であって、当該データ担体上に記録された、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するコンピュータプログラムを含む、データ担体である。したがって、本発明の方法の更なる実施形態は、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するコンピュータプログラムを表すデータストリーム又は信号シーケンスである。データストリーム又は信号シーケンスは、たとえば、データ通信接続を介して、たとえばインターネットを介して転送できるように構成することができる。更なる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するように構成又は適応化された処理手段、たとえばコンピュータ又はプログラム可能な論理デバイスを含む。更なる実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの1つを実行するコンピュータプログラムがインストールされたコンピュータを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、プログラム可能な論理デバイス(たとえばフィールドプログラマブルゲートアレイ)を用いて、本明細書に記載された方法の機能のうちのいくつか又は全てを実行することができる。いくつかの実施形態では、フィールドプログラマブルゲートアレイは、本明細書に記載された方法のうちの1つを実行するためにマイクロプロセッサと連携することができる。概して、本方法は好ましくは任意のハードウェア装置によって実行される。
【0051】
上述した実施形態は、単に本発明の原理を例示したものに過ぎない。本明細書に記載の構成及び詳細の変更及び変形は当業者には明らかであることを理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、本明細書内の実施形態の記述及び説明のために提示した特定の具体的内容によって限定されるものではないことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の装置(104)との通信を行う複数のノード(102〜102)と、
中央ノード(100)と、
前記中央ノード(100)から前記複数のノード(102〜102)に向けた第1の光信号を分波し、前記ノード(102〜102)のうちの1つ以上が発した第2の光信号を合波する合波・分波装置(108)を備えた受動光ネットワーク(106)であって、各ノード(102〜102)には、当該ノードの光信号を生成するための波長が割り当てられている、受動光ネットワーク(106)と
を備えた通信システムであって、
あるノード(102〜102)が他のノード(102〜102)のうちの少なくとも1つに信号を直接送信できるように、前記あるノード(102〜102)が、前記他のノード(102〜102)のうちの少なくとも1つに割り当てられている波長の光信号を生成し、該光信号は送信すべき信号を含むものであり、
前記受動光ネットワーク(106)内の前記合波・分波装置(108)は、前記あるノード(102〜102)が発した光信号を前記第1の光信号と結合するものである、通信システム。
【請求項2】
前記あるノード(102〜102)から前記他のノード(102〜102)のうちの1つに向けたポイントツーポイント通信の場合には、前記あるノード(102〜102)が、前記他のノード(102〜102)に割り当てられている波長を選択し、該選択された波長の光信号を生成するものである、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記あるノード(102〜102)が狭スペクトル光源(140a)を備えており、前記あるノード(102〜102)が前記狭スペクトル光源(140a)を前記選択された波長に設定し、前記送信すべき信号を前記狭スペクトル光源(140a)の出力信号に変調して光信号を生成し、該光信号を前記合波・分波装置(108)に送信するものである、請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記あるノード(102〜102)が複数の前記他のノード(102〜102)にブロードキャスト通信する場合には、前記あるノード(102〜102)は、前記他のノード(102〜102)に割り当てられている波長の光信号を生成するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記あるノード(102〜102)が、前記複数のノード(102〜102)に割り当てられている波長を有する広スペクトル光源(140b)を備えており、前記あるノード(102〜102)は、ブロードキャストすべき信号を前記広スペクトル光源(140b)の出力信号に変調して光信号を生成し、該光信号を前記合波・分波装置(108)に送信するものである、請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記ノード(102〜102)が、
前記ノード(102〜102)に割り当てられている波長の光信号を検出する光検出器(136)と、
前記ノード(102〜102)に割り当てられている波長の信号を提供する光源(134)であって、該信号に基づいて、前記ノード(102〜102)から前記中央ノード(100)へと送信される前記第2の信号が生成される、光源(134)と
を備えている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記受動光ネットワーク(106)内の前記合波・分波装置(108)が、
前記中央ノード(100)と接続されている第1の入出力ポートと、
前記各ノード(102〜102)と接続されている複数の第2の入出力ポートと、
前記複数の第2の入出力ポートと前記第1の入出力ポートとの間に配置されており、前記複数の第2の入出力ポートにて受信した前記第2の信号のうちの1つ以上を、前記第1の入出力ポートに導く受動光結合装置と
を備えている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項8】
前記通信システムが無線通信システムであり、
前記複数のノード(102〜102)が、1つ以上の無線装置(104)との無線通信を提供するものであり、
前記中央ノード(100)は中央交換ノードであり、
前記受動光ネットワーク(106)は、前記中央交換ノード(100)と前記ノード(102〜102)との間にバックホールリンクを形成し、
前記ノード(102〜102)間で直接的に送信される信号がX2用データを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項9】
受動光ネットワーク(106)を通して通信システム内の中央ノード(100)及び複数の他のノード(102〜102)と接続されているノードであって、
前記ノード(102〜102)には、前記他のノード(102〜102)に割り当てられている波長とは異なる、光信号送信のための波長が割り当てられており、
前記ノード(102〜102)は、前記他のノード(102〜102)に割り当てられている波長のうちの少なくとも1つの出力信号を生成する光源(140a、140b)を備えており、
前記ノード(102〜102)が前記他のノード(102〜102)のうちの少なくとも1つに信号を直接的に送信できるように、前記ノード(102〜102)は、必要とされる1つ以上の波長の光信号を生成し、前記光信号には送信すべき信号が含まれる、ノード。
【請求項10】
前記光源が、前記他のノード(102〜102)に割り当てられている波長のうちの1つに調整されている狭スペクトル光源(140a)と、前記他のノード(102〜102)に割り当てられている波長を有する広スペクトル光源(140b)とのうちのいずれかまたは両方を含み、
前記ノード(102〜102)が前記他のノード(102〜102)のうちの1つへポイントツーポイント通信を行う場合には、前記ノード(102〜102)は、前記他のノード(102〜102)の1つに割り当てられている波長に前記狭スペクトル光源(140a)を調整し、当該波長の光信号を生成し、
前記ノード(102〜102)が前記他のノード(102〜102)へブロードキャスト通信を行う場合には、前記ノード(102〜102)は、前記広スペクトル光源(140b)の出力信号に基づいて光信号を生成する、請求項9に記載のノード。
【請求項11】
前記狭スペクトル光源(140a)は波長可変レーザーを含み、前記広スペクトル光源(140b)は発光ダイオードを含む、請求項10に記載のノード。
【請求項12】
複数のノード(102〜102)と、受動光ネットワーク(106)を通して接続された中央ノード(100)とを有する通信システムのための光合波・分波装置(108)であって、
前記中央ノード(100)と接続されている第1の入出力ポートと、
各ノード(102〜102)と接続されている複数の第2の入出力ポートであって、前記合波・分波装置(108)は、前記中央ノード(100)から前記複数のノード(102〜102)に向けた第1の光信号を分波し、前記ノード(102〜102)のうちの1つ以上が発した第2の光信号を合波するものである、複数の第2の入出力ポートと、
前記複数の第2の入出力ポートと前記第1の入出力ポートとの間に配置されており、前記複数の第2の入出力ポートにて受信した前記第2の信号のうちの1つ以上を前記第1の入出力ポートに導く受動光結合装置と
を備えている光合波・分波装置。
【請求項13】
アレイ導波路回折格子を備えている請求項12に記載の光合波・分波装置。
【請求項14】
1つ以上の装置(104)との通信を提供する複数のノード(102〜102)と、中央ノード(100)と、前記中央ノード(100)から前記複数のノード(102〜102)に向けた第1の光信号を分波し、前記ノード(102〜102)のうちの1つ以上が発した第2の光信号を合波する合波・分波装置(108)を有する受動光ネットワーク(106)とを備えた通信システム内のノード(102〜102)間で直接的に信号を伝送する方法であって、各ノード(102〜102)には、当該ノードの光信号を生成するための波長が割り当てられており、
あるノード(102〜102)が他のノード(102〜102)のうちの少なくとも1つに信号を直接的に送信できるように、前記あるノード(102〜102)が、前記他のノード(102〜102)のうちの少なくとも1つに割り当てられている波長の光信号を生成するステップであって、前記光信号は送信すべき信号を含む、ステップと、
前記合波・分波装置(108)が、前記あるノード(102〜102)が発した光信号を前記第1の光信号と結合するステップと
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法をコンピュータに実行させる、機械可読担体に記憶された命令を有するコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−151841(P2012−151841A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−2018(P2012−2018)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】