説明

通信システム

【課題】送信側から受信側へ信号を通信する通信システムで、周波数利用効率を改善し、更に受信特性を改善する。
【解決手段】送信側では、STBC符号化手段1、2つの送信ベースバンド処理手段2a、2b、2つの無線送信処理手段4a、4b、送信側スイッチ手段3a、3bを備え、送信制御手段6が送信側の状態の監視結果に基づいて送信側スイッチ手段による切り替え及び無線送信処理手段からの出力の状態を制御する。受信側では、2つの無線受信処理手段12a、12b、2つのSTBC復号化手段14a、14b、合成処理手段16、受信側スイッチ手段13a、13bを備え、受信制御手段15が受信側の状態の監視結果に基づいて受信側スイッチ手段による切り替え及びSTBC復号化手段からの出力の状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、デジタル無線通信を行う通信システムに関し、特に、第1の系(例えば、現用系)及び第2の系(例えば、機器が故障した場合に切り替えられる予備系)を備える構成に対して、周波数利用効率を改善し、更に受信特性を改善する通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図3には、背景技術に係る現用系と予備系の送受信機(通信システム)の構成例を示してある。
本例の送受信機では、現用系と予備系の搬送波周波数をそれぞれ異なる周波数fとfとし、受信機側でいずれの系の信号を選択するかをスイッチで切り替える構成例を示してある。
本例の送受信機では、送信機は、現用系送信ベースバンド部101、現用系無線送信部102、現用系送信アンテナ103、予備系送信ベースバンド部104、予備系無線送信部105、予備系送信アンテナ106を備えて構成されており、受信機は、現用系受信アンテナ111、現用系無線受信部112、現用系受信ベースバンド部113、予備系受信アンテナ114、予備系無線受信部115、予備系受信ベースバンド部116、受信制御部117、スイッチ118を備えて構成されている。
【0003】
送信機側の動作例を示す。
送信側では、伝送データを現用系送信ベースバンド部101と予備系送信ベースバンド部104に入力し、それぞれのベースバンド部101、104で変調等の処理が施された信号が、それぞれ、現用系無線送信部102と予備系無線送信部105を介して現用系送信アンテナ103と予備系送信アンテナ106から無線により送信される。このとき、現用系送信アンテナ103からは搬送波周波数fで送信され、予備系送信アンテナ106からは搬送波周波数fで送信される。
【0004】
受信機側の動作例を示す。
受信側では、現用系受信アンテナ111で受信された信号が現用系無線受信部112に入力され、現用系無線受信部112において、現用系で使用する周波数f以外の成分がフィルタ処理により除去された後に、ベースバンド信号へ周波数変換される。また、現用系無線受信部112は、入出力される信号を受信制御部117へ通知する。
同様に、予備系受信アンテナ114で受信された信号が予備系無線受信部115に入力され、予備系無線受信部115において、予備系で使用する周波数f以外の成分がフィルタ処理により除去された後に、ベースバンド信号へ周波数変換される。
【0005】
それぞれの無線受信部112、115において周波数fの成分のみとなった信号と周波数fの成分のみとなった信号が、それぞれ、現用系受信ベースバンド部113と予備系受信ベースバンド部116に入力され、そして、等化や復調されたそれぞれの信号がスイッチ118に入力される。また、現用系受信ベースバンド部113は、装置の状態の監視用として周期的なパルス信号を受信制御部117に入力する。
【0006】
受信制御部117は、現用系無線受信部112と現用系受信ベースバンド部113から入力される信号に基づいて、それぞれの状態を判定して、スイッチ118の制御を行う。
スイッチ118は、受信制御部117からの制御信号を基に、現用系と予備系との切り替え動作を行う。
【0007】
ここで、まず、現用系無線受信部112に関する判定方法について説明する。
受信制御部117では、現用系無線受信部112から入力された信号の強度を算出し、受信信号強度がゼロ(受信信号なし)であると判定した場合には、スイッチ118を制御して現用系から予備系へ切り替える。ここで、受信信号なしと判定される原因としては、装置の故障や伝搬路に何らかの障害が発生したということが考えられる。
【0008】
次に、現用系受信ベースバンド部113に関する判定方法について説明する。
一例として、受信制御部117は、ウォッチドッグタイマに使用されるようなリセット付きカウンタを持ち、現用系受信ベースバンド部113から定期的に入力されるパルス信号をリセット信号として扱い、カウンタをリセットする。この場合、現用系受信ベースバンド部113から定期的に信号が入力されないとカウンタが上限値に到達することになり、それにより現用系受信ベースバンド部113に何らかの問題が生じていることを検出することができる。また、ここではカウンタを用いた監視方法(検出方法)について説明したが、他の一例として、現用系無線受信部112の場合と同様に、現用系受信ベースバンド部113の入出力の信号の強度を監視する方法を用いて検出(判定)することも可能である。
従来の技術では、機器の故障が発生した場合には、以上のような方法でそれを検出して、現用系から予備系へ切り替える制御(ここでは、スイッチ118の制御)が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−131651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のような送受信機のように、現用系及び予備系を備えるシステムでは、それぞれの系で干渉が無いように異なる周波数を使用するため、1つのシステムに2つの周波数の割り当てが必要となり、周波数利用効率が低くなってしまうといった問題があった。
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、第1の系及び第2の系(例えば、現用系及び予備系)を備える構成に対して、周波数利用効率を改善することができ、更に受信特性を改善することができる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明では、送信側から受信側へ信号を通信する通信システムにおいて、次のような構成とした。
すなわち、前記送信側では、STBC符号化手段が、送信対象のデータについてSTBC方式で符号化する。2つの送信ベースバンド処理手段が、前記STBC符号化手段による符号化結果を処理する。2つの無線送信処理手段が、前記送信ベースバンド処理手段による処理結果を無線送信処理する。送信側スイッチ手段が、前記2つの送信ベースバンド処理手段と前記2つの無線送信処理手段との接続状態を切り替える。送信制御手段が、当該送信側の状態を監視して、当該監視結果に基づいて、前記送信側スイッチ手段による切り替え及び前記無線送信処理手段からの出力の状態を制御する。
また、前記受信側では、2つの無線受信処理手段が、前記送信側から送信された無線信号を受信処理する。2つのSTBC復号化手段が、前記無線受信処理手段による処理結果についてSTBC方式で復号する。合成処理手段が、前記2つのSTBC復号化手段による復号結果について合成処理する。受信側スイッチ手段が、前記2つの無線受信処理手段と前記2つのSTBC復号化手段との接続状態を切り替える。受信制御手段が、当該受信側の状態を監視して、当該監視結果に基づいて、前記受信側スイッチ手段による切り替え及び前記STBC復号化手段からの出力の状態を制御する。
【0012】
従って、第1の系及び第2の系(例えば、現用系及び予備系)を備える構成に対して、周波数利用効率を改善することができ、更に受信特性を改善することができる。具体的には、2つの系を同一の周波数で実現して周波数利用効率を改善することができ、また、STBC方式を使用することによりダイバーシティと同様な効果(例えば、受信特性の改善)を得ることができ、また、送信側や受信側で故障などが生じた場合においても、故障などの程度が許容範囲であれば、良好な通信特性を確保することができる。
【0013】
ここで、送信ベースバンド処理手段や、無線送信処理手段や、無線受信処理手段としては、それぞれ、種々な処理が行われるものに適用されてもよい。
また、合成処理としては、例えば、最大比合成処理を用いることができる。
また、送信側の状態の監視としては、例えば、送信ベースバンド処理手段や無線送信処理手段の監視を行うことができる。
また、受信側の状態の監視としては、例えば、無線受信処理手段やSTBC復号化手段の監視を行うことができる。
また、送信制御手段や受信制御手段は、それぞれ、例えば、送信側や受信側における一部の処理手段に故障などの不具合が発生した場合には、正常な処理手段が通信に使用されるように、送信側や受信側の制御を行う。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る通信システムによると、第1の系及び第2の系(例えば、現用系及び予備系)を備える構成に対して、周波数利用効率を改善することができ、更に受信特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る送受信機の構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係るSTBCの原理を説明するための模式的な送受信機のブロック構成例を示す図である。
【図3】現用系と予備系の送受信機の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施例に係る送受信機(通信システム)の構成例を示してある。
ここで、本例では、送信機の側から受信機の側へ信号を無線送信する構成例を示してあるが、送信機の機能と受信機の機能の両方を有する送受信機が構成される。
また、本例では、送信機側と受信機側のそれぞれにおいて、2つの処理系(第1の系であるa系、第2の系であるb系)を有しており、これら2つの処理系で使用する搬送波周波数を共にfとしている。
【0017】
本例の送受信機では、送信機は、STBC(Space Time Block Coding)符号化部1、第1の送信ベースバンド部2a、第1のスイッチ3a、第1の無線送信部4a、第1の送信アンテナ5a、第2の送信ベースバンド部2b、第2のスイッチ3b、第2の無線送信部4b、第2の送信アンテナ5b、送信制御部6を備えて構成されており、受信機は、第1の受信アンテナ11a、第1の無線受信部12a、第1のスイッチ13a、第1のSTBC復号化部14a、第2の受信アンテナ11b、第2のスイッチ13b、第2のSTBC復号化部14b、受信制御部15、最大比合成部16を備えて構成されている。
【0018】
送信機において、第1のスイッチ3aでは、1側に設定されると第1の送信ベースバンド部2aと第1の無線送信部4aが接続され、2側に設定されると第2の送信ベースバンド部2bと第1の無線送信部4aが接続され、また、第2のスイッチ3bでは、1側に設定されると第1の送信ベースバンド部2aと第2の無線送信部4bが接続され、2側に設定されると第2の送信ベースバンド部2bと第2の無線送信部4bが接続される。
受信機において、第1のスイッチ13aでは、1側に設定されると第1の無線受信部12aと第1のSTBC復号化部14aが接続され、2側に設定されると第1の無線受信部12aと第2のSTBC復号化部14bが接続され、また、第2のスイッチ13bでは、1側に設定されると第2の無線受信部12bと第1のSTBC復号化部14aが接続され、2側に設定されると第2の無線受信部12bと第2のSTBC復号化部14bが接続される。
【0019】
まず、STBCの原理について説明する。
図2には、STBCの原理を説明するための模式的な送受信機のブロック構成例を示してある。
図2に示されるブロック構成例では、送信機側に、STBC符号化部21、第1の送信アンテナ22a、第2の送信アンテナ22bを示してあり、受信機側に、第1の受信アンテナ31a、雑音成分を加算する第1の雑音加算部32a、第1のSTBC復号化部33a、第1の受信アンテナ31b、雑音成分を加算する第2の雑音加算部32b、第2のSTBC復号化部33b、最大比合成部34を示してある。
【0020】
本例のシステム(送受信機)で採用するSTBCについて説明する。
送信側では、データx、xをSTBC符号化部21に入力し、第1の送信アンテナ22aからは時刻1にx、時刻2に−x*(*は複素共役を表す)を送信し、第2の送信アンテナ22bからは時刻1にx、時刻2にx*を送信するように、符号化を行う。
送信された信号は伝搬路h11、h21、h12、h22を介して受信側に入力される。h11は第1の送信アンテナ22aと第1の受信アンテナ31aとの間の特性を表し、h21は第1の送信アンテナ22aと第2の受信アンテナ31bとの間の特性を表し、h12は第2の送信アンテナ22bと第1の受信アンテナ31aとの間の特性を表し、h22は第2の送信アンテナ22bと第2の受信アンテナ31bとの間の特性を表す。
【0021】
ここで、第1の受信アンテナ31aのみに着目して説明する。
時刻1の受信信号と雑音成分をそれぞれr11、n11とし、時刻2の受信信号と雑音成分をそれぞれr12、n12とすると、(式1)及び(式2)が成り立つ。
【0022】
【数1】

【0023】
【数2】

【0024】
第1のSTBC復号化部33aの出力をx^(1)、x^(1)とし、(式3)、(式4)のようにおくと、(式5)、(式6)のように表すことができ、これは2ブランチの受信ダイバーシティと同じ結果となる。つまり、STBC符号化/復号化を行うことで、送信側で伝搬路の情報を知ることなく、受信アンテナが1本でも2ブランチの受信ダイバーシティ効果を得ることができる。
なお、本例では、p、qをそれぞれ任意の整数値として、x^(q)は(式3)に示されるように定義した。
【0025】
【数3】

【0026】
【数4】

【0027】
【数5】

【0028】
【数6】

【0029】
ここでは、第1の受信アンテナ31aにのみ着目して説明したが、第2の受信アンテナ31bについても処理は同様であり、第2のSTBC復号化部33bの出力をx^(2)、x^(2)とすると、(式7)、(式8)のように表すことができる。
なお、時刻1の受信信号と雑音成分をそれぞれr21、n21とし、時刻2の受信信号と雑音成分をそれぞれr22、n22とする。
【0030】
【数7】

【0031】
【数8】

【0032】
最後に、第1のSTBC復号化部33a、第2のSTBC復号化部33bで得られた結果について最大比合成部34により最大比合成を行うと、復調信号x^、x^は(式9)、(式10)のようになる。
なお、本例では、pを任意の整数値として、x^は(式9)に示されるように定義した。
(式9)、(式10)は、4ブランチの受信ダイバーシティと同じ結果であり、送信アンテナ2本、受信アンテナ2本の構成でも、STBCを採用することで、4ブランチの受信ダイバーシティと同様な受信の性能を得ることができる。
【0033】
【数9】

【0034】
【数10】

【0035】
次に、図1を参照して、本例の送受信機の動作の一例について説明する。
送信側では、伝送データx、xをSTBC符号化部1に入力し、STBC符号化を行ったデータを第1の送信ベースバンド部2aと第2の送信ベースバンド部2bに入力し、それぞれのベースバンド部2a、2bで変調等の処理を行う。また、第1の送信ベースバンド部2aと第2の送信ベースバンド部2bは、それぞれ、状態の監視用として周期的なパルス信号を送信制御部6に入力する。
【0036】
送信制御部6は、それぞれのベースバンド部2a、2bの故障状況を監視し、その結果に応じて2つのスイッチ3a、3bを制御する。
それぞれのベースバンド部2a、2bにより変調等が施された信号は第1のスイッチ3aと第2のスイッチ3bに入力され、第1のスイッチ3aと第2のスイッチ3bでは送信制御部6からの制御信号に基づいて信号選択を行う。
【0037】
一例として、送信制御部6は、ウォッチドッグタイマに使用されるようなリセット付きカウンタを持ち、第1の送信ベースバンド部2aと第2の送信ベースバンド部2bから定期的に入力されるパルス信号をリセット信号として扱い、カウンタをリセットする。この場合、いずれかのベースバンド部2a、2bから定期的に信号が入力されないとカウンタが上限値に到達することになり、それにより該当するベースバンド部2a、2bに何らかの問題が生じていることを検出することができる。また、ここではカウンタを用いた監視方法(検出方法)について説明したが、他の一例として、第1のベースバンド部2aや第2のベースバンド部2bに入出力される信号の強度を監視する方法を用いて検出(判定)することも可能である。
【0038】
本例では、故障がない場合には、第1のスイッチ3aは1側に設定することで第1の送信ベースバンド部2aの出力を選択し、第2のスイッチ3bは2側に設定することで第2の送信ベースバンド部2bの出力を選択する。そして、それぞれ、選択された信号を第1の無線送信部4aと第2の無線送信部4bに入力し、無線送信部4a、4bにおいて、搬送波周波数fの信号へ周波数変換する。
【0039】
また、第1の無線送信部4aと第2の無線送信部4bは、入出力される信号を送信制御部6に入力する。そして、送信制御部6は、第1の無線送信部4aと第2の無線送信部4bの故障状況を監視し、その結果に応じて無線部出力のオン/オフ(ON/OFF)を切り替える制御を行う。
一例として、送信制御部6は、入出力される信号の強度を監視し、故障と判定された場合には、第1の無線送信部4aや第2の無線送信部4bの出力を遮断し(電力をゼロとし)、対応するアンテナ5a、5bから信号を送信しないようにする。
一方、このような故障がない場合には、第1の無線送信部4aや第2の無線送信部4bを介して、それぞれ、第1の送信アンテナ5aや第2の送信アンテナ5bから周波数fの信号が無線により送信される。
【0040】
受信側では、第1の受信アンテナ11aで受信した信号を第1の無線受信部12aに入力し、第1の無線受信部12aにおいてフィルタ処理により使用する周波数f以外の成分を除去した後にベースバンド信号へ周波数変換する。また、第1の無線受信部12aは、入出力される信号を受信制御部15に通知する。
同様に、第2の受信アンテナ11bで受信した信号を第2の無線受信部12bに入力し、第2の無線受信部12bにおいてフィルタ処理により使用する周波数f以外の成分を除去した後にベースバンド信号へ周波数変換する。また、第2の無線受信部12bは、入出力される信号を受信制御部15に通知する。
【0041】
次に、周波数fの成分のみとなったそれぞれの無線受信部12a、12bからの信号を、それぞれ、第1のスイッチ13a、第2のスイッチ13bに入力する。
受信制御部15は、それぞれの無線受信部12a、12bから入力される信号の強度を監視し、その監視結果に応じてスイッチ13a、13bを切り替える。
【0042】
本例では、故障がない場合には、第1のスイッチ13aを1側に設定することで第1の無線受信部12aからの出力を第1のSTBC復号化部14aに入力するとともに、第2のスイッチ13bを2側に設定することで第2の無線受信部12bからの出力を第2のSTBC復号化部14bに入力し、これらのSTBC復号化部14a、14bにおいて、(式1)〜(式8)に示されるようなSTBC復号を行う。
そして、それぞれのSTBC復号化部14a、14bはSTBC復号された2つの信号を最大比合成部16に入力し、最大比合成部16において最大比合成処理を行い、最終的に、(式9)及び(式10)に示される結果を得る。
以上のように、故障がなければ、4ブランチの受信ダイバーシティと同等の性能を得ることができる。
【0043】
なお、第1のSTBC復号化部14aと第2のSTBC復号化部14bは、監視用の信号(例えば、入出力される信号)を受信制御部15に入力する。そして、受信制御部15は、第1のSTBC復号化部14aと第2のSTBC復号化部14bの故障状況を監視し、その結果に応じてSTBC復号化部出力のオン/オフ(ON/OFF)を切り替える制御を行う。
【0044】
次に、送受信側に故障が発生した場合について説明する。
送信側で、第1の送信ベースバンド部2aと第1の無線送信部4aの一方でも故障した際には、送信制御部6がそれを検出し、第1のスイッチ3aを1側に設定し、第2のスイッチ3bを2側に設定した上で、第1の無線送信部4aの出力を遮断する。これにより、送信側は1つの系のみで送信を行うことになる。この時、送信を行う一方の系の送信電力を2倍にし、2つの系で送信を行う場合の全送信電力と等しくなるように、電力調整を行う。同様に、第2の送信ベースバンド部2bと第2の無線送信部4bの一方でも故障した際には、2つのスイッチ3a、3bの設定は前記と同じとして、第2の無線送信部4bの出力を遮断し、送信を行う系の電力を2倍にする。
【0045】
また、第1の送信ベースバンド部2aと第2の無線送信部4bの両方が故障した際には、第1のスイッチ3aを2側に設定し、第2の無線送信部4bの出力を遮断し、送信を行う系の電力を2倍にする。これにより、送信側は1つの系のみで送信することになる。同様に、第2の送信ベースバンド部2bと第1の無線送信部4aの両方が故障した際には、第2のスイッチ3bを1側に設定し、第1の無線送信部4aの出力を遮断し、送信を行う系の電力を2倍にする。
【0046】
このように、送信側が電力2倍となった1つの系で送信する場合であって、受信側に故障がないという条件である場合には、受信側では、送信側に故障があることを知らない上で、片方の系から送信される信号を受信できないため、その結果、受信できなかった系に関連する伝送路は信号電力をつぶして受信側に信号を到達させることができない特性であると推定される。
つまり、(式1)〜(式10)における|h11、|h21(若しくは、|h12、|h22)の値をゼロ(0)とみなすことになり、これは送信アンテナ1本、受信アンテナ2本の2ブランチの受信ダイバーシティと同等の性能を得ることができる。
【0047】
次いで、送信側では故障がなく、受信側に故障が発生した場合について説明する。
第1の無線受信部12aと第1のSTBC復号化部14aの一方でも故障した際には、受信制御部15がそれを検出し、第1のスイッチ13aを1側に設定し、第2のスイッチ13bを2側に設定し、第1のSTBC復号化部14aの出力をゼロにする。これにより、受信側は1つの系のみで受信を行うことになる。同様に、第2の無線受信部12bと第2のSTBC復号化部14bの一方でも故障した際には、2つのスイッチ13a、13bの設定は前記と同じとして、第2のSTBC復号化部14bの出力をゼロにする。
【0048】
また、第1の無線受信部12aと第2のSTBC復号化部14bの両方が故障した際には、第2のスイッチ13bを1側に設定し、第2のSTBC復号化部14bの出力をゼロにする。これにより、受信側は1つの系のみで受信することになる。同様に、第2の無線受信部12bと第1のSTBC復号化部14aの両方が故障した際には、第1のスイッチ13aを2側に設定し、第1のSTBC復号化部14aの出力をゼロにする。
【0049】
以上のように、受信側が1つの系で受信する場合であって、送信側に故障がないという条件である場合には、受信側では、片方の系では信号を受信できないため、その系に関連する伝送路は信号電力をつぶして受信側に信号を到達させることができない特性であるとみなす。つまり、(式1)〜(式10)における|h11、|h12(若しくは、|h21、|h22)の値をゼロとみなし、これは送信アンテナ2本、受信アンテナ1本の送信ダイバーシティと同等の性能を得ることができる。
【0050】
次いで、送信側と受信側の両方に故障が発生した場合について説明する。
上記のように、送信側と受信側でそれぞれ上記のような2箇所以内の故障であれば、1つの系は確保することができ、例えば、従来通りの1対1の通信は確保することができる。例えば、送信側で第1の送信ベースバンド部2aと第1の無線送信部4aが故障し、受信側で第1の無線受信部12aと第1のSTBC復号化部14aが故障した場合には、送信側では第2の送信ベースバンド部2bと第2の無線送信部4bの系で2倍の送信電力で送信を行い、受信側では第2の無線受信部12bと第2のSTBC復号化部14bの系で受信を行う。
【0051】
この時、受信側では、第1の送信アンテナ5aに関連する伝送路と第1の受信アンテナ11aに関連する伝送路は信号電力をつぶして受信側に信号を到達させることができない特性であると判断する。つまり、(式1)〜(式10)における|h11、|h21、|h12の値をゼロとみなすことになる。これにより、例えば、従来のシステムと同様である1対1と同じ特性が得られる。
【0052】
以上のように、本例の通信システムでは、第1の系(例えば、現用系)及び第2の系(例えば、機器が故障した場合に切り替えられる予備系)を備えるシステムに対して、STBC方式を採用した上で、送信ベースバンド部2a、2bや無線送信部4a、4bの状態を監視して監視結果に基づいて送信側を制御する送信制御部6と、送信制御部6からの制御信号により切り替え動作を行う送信側のスイッチ3a、3bと、無線受信部12a、12bやSTBC復号化部14a、14bの状態を監視して監視結果に基づいて受信側を制御する受信制御部15と、受信制御部15からの制御信号により切り替え動作を行う受信側のスイッチ13a、13bを備えた。
【0053】
このように、本例の通信システムでは、STBC方式を採用し、更に、送受信側のそれぞれで故障を検出し、その検出結果に応じて通信に用いるベースバンド部や無線部などを切り替える。
そして、本例の通信システムでは、同一の周波数で2つの系(例えば、現用系/予備系のようなもの)を構成することができ、更に、ダイバーシティ効果により受信特性が改善し、また、送受信側で故障が発生しても、送受信側のそれぞれで上記したような2箇所以内の故障であれば、例えば、従来と同等(又は、それ以上)の特性を確保することができる。
【0054】
なお、本例の通信システムにおける送信側の送信機では、STBC符号化部1の機能によりSTBC符号化手段が構成されており、2つの送信ベースバンド部2a、2bの機能により2つの送信ベースバンド処理手段が構成されており、2つの無線送信部4a、4b(及び、2つの送信アンテナ4a、4bが含まれてもよい)の機能により2つの無線送信処理手段が構成されており、2つのスイッチ3a、3bの機能により送信側スイッチ手段が構成されており、送信制御部6の機能により送信制御手段が構成されている。
また、本例の通信システムにおける受信側の受信機では、2つの無線受信部12a、12b(及び、2つの受信アンテナ11a、11bが含まれてもよい)の機能により2つの無線受信処理手段が構成されており、2つのSTBC復号化部14a、14bの機能により2つのSTBC復号化手段が構成されており、最大比合成部16の機能により合成処理手段が構成されており、2つのスイッチ13a、13bの機能により受信側スイッチ手段が構成されており、受信制御部15の機能により受信制御手段が構成されている。
【0055】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0056】
1・・STBC符号化部、 2a、2b・・送信ベースバンド部、 3a、3b・・スイッチ(送信部スイッチ)、 4a、4b・・無線送信部、 5a、5b・・送信アンテナ、 6・・送信制御部、 11a、11b・・受信アンテナ、 12a、12b・・無線受信部、 13a、13b・・スイッチ(受信部スイッチ)、 14a、14b・・STBC復号化部、 15・・受信制御部、 16・・最大比合成部、
21・・STBC符号化部、 22a、22b・・送信アンテナ、 31a、31b・・受信アンテナ、 32a、32b・・雑音加算部、 33a、33b・・STBC復号化部、 34・・最大比合成部、
101・・現用系送信ベースバンド部、 102・・現用系無線送信部、 103・・現用系送信アンテナ、 104・・予備系送信ベースバンド部、 105・・予備系無線送信部、 106・・予備系送信アンテナ、 111・・現用系受信アンテナ、 112・・現用系無線受信部、 113・・現用系受信ベースバンド部、 114・・予備系受信アンテナ、 115・・予備系無線受信部、 116・・予備系受信ベースバンド部、 117・・受信制御部、 118・・スイッチ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側から受信側へ信号を通信する通信システムにおいて、
前記送信側は、送信対象のデータについてSTBC方式で符号化するSTBC符号化手段と、前記STBC符号化手段による符号化結果を処理する2つの送信ベースバンド処理手段と、前記送信ベースバンド処理手段による処理結果を無線送信処理する2つの無線送信処理手段と、前記2つの送信ベースバンド処理手段と前記2つの無線送信処理手段との接続状態を切り替える送信側スイッチ手段と、当該送信側の状態を監視して当該監視結果に基づいて前記送信側スイッチ手段による切り替え及び前記無線送信処理手段からの出力の状態を制御する送信制御手段と、を備え、
前記受信側は、前記送信側から送信された無線信号を受信処理する2つの無線受信処理手段と、前記無線受信処理手段による処理結果についてSTBC方式で復号する2つのSTBC復号化手段と、前記2つのSTBC復号化手段による復号結果について合成処理する合成処理手段と、前記2つの無線受信処理手段と前記2つのSTBC復号化手段との接続状態を切り替える受信側スイッチ手段と、当該受信側の状態を監視して当該監視結果に基づいて前記受信側スイッチ手段による切り替え及び前記STBC復号化手段からの出力の状態を制御する受信制御手段と、を備えた、
ことを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−278847(P2010−278847A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130219(P2009−130219)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】