説明

通信ネットワークにおける情報配信方法、通信ノードおよびその通信方法ならびに通信ネットワーク

【課題】通信ネットワーク、好ましくは車両アドホックネットワーク(VANET)における情報配信方法を提供する。
【解決手段】通信ネットワーク1は、自己の地理的位置を認識している複数の通信ノードNを有し、配信プロセスは、それらのノードのうちの1つである発信ノードOから、情報が配信されるべき関連エリアRA内の特定のノードである第1転送ノードF1へ、配信されるべき情報を含むユニキャストメッセージを送信することによって開始される。発信ノードOから第1転送ノードF1へ送信されたメッセージを受信した関連エリアRA内の他のノードC1,C2,C3が、それぞれ転送ノードを選出し、タイマベースのコンテンションプロセスに基づいて、選出した転送ノードへメッセージのユニキャスト再送を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワーク、好ましくは車両アドホックネットワーク(vehicular ad hoc network, VANET)における情報配信方法に関する。ここで通信ネットワークは、自己の地理的位置を認識している複数の通信ノードを有し、配信プロセスは、それらのノードのうちの1つ(発信ノード)から、情報が配信されるべき関連エリア内の特定のノード(第1転送ノード)へ、配信されるべき情報を含むユニキャストメッセージを送信することによって開始される。
【背景技術】
【0002】
移動体通信ネットワークにおける情報配信は重要な課題であり、特にVANET(vehicular ad hoc network)のような車両通信ネットワークにおいては、ある地理的エリア内に位置するすべての車両へメッセージを配送するための信頼できる戦略が必要である。このことは何よりもまず、交通事故や雨氷形成のような危険事象に関連する安全情報メッセージの場合に当てはまる。
【0003】
情報配信のための最も簡単な戦略は、いわゆるフラッディングメカニズムである。フラッディングとは、配送する情報をあるノードからブロードキャストし、その情報を受信した各ノードがそれを再びブロードキャストし、以下同様に配送することを意味する。しかし、フラッディングは、大きいオーバーヘッドと多数のパケット衝突を引き起こし、これは「ブロードキャストストーム問題」として知られている。この問題を解決する諸提案もあるが、配信されるべき情報の受ける遅延については、あまり適切に対処されていない。しかし、特にVANETにおいては、安全関連情報は重大なものである可能性があるので、短遅延が要求される。
【0004】
車両移動の場合、特に幹線道路環境に適用されるさらに高度な別の方式として、PBR(Position-Based Routing, 位置ベースルーティング)がある。PBRは、通信ノードの地理的位置を用いて、メッセージをどの方向へ転送すべきかを決定する。この目的のため、従来のPBRプロトコルは、ビーコンメッセージを用いることで、各ノードが無線ブロードキャストにより自己のアドレスおよび地理的位置をすべての隣接ノードに通知することを可能にする。ノードは、隣接ノードからこのようなビーコンメッセージを受信すると、自己の隣接ノードテーブルに、そのノードのアドレスおよび位置を記憶する。ノードは、パケットを転送すべきときには、そのテーブルを用いて、そのパケットが最終宛先へ向かうための転送先となる隣接ノードを決定する。通常、この決定は、宛先までの残余距離を最小化する隣接ノードを選択することによる幾何学的ヒューリスティックに基づく。このプロセスは、グリーディ転送(greedy forwarding)として知られている。位置ベースルーティングはかなり高速なメカニズムであるが、そのユニキャスト、ポイントツーポイントという性質により、例えばフェーディング効果やパケット衝突によるパケット損失に対するロバスト性に関して欠点がある。これまでのところ、車両環境においては伝搬条件が厳しく高チャネル負荷の可能性があることから、PBRは限られた範囲にしか適しない。
【0005】
また、ユニキャストパケット転送を実行するために、コンテンションベース転送(Contention-Based Forwarding, CBFと称する)が提案されている。PBRとは異なり、CBFは、ビーコンメッセージの送信を必要としない。代わりに、ノードは、その通信範囲内のすべてのノードによって受信されるデータパケットをブロードキャストする。受信側ノードのうちから、実際の転送ノードが、分散タイマベースのコンテンションプロセスによって選択される。このプロセスによれば、最適のノードがパケットを転送し、他のすべての受信側ノードによる転送は抑制される。ランダムウェイポイントモビリティを有する一般的な2次元の場合には、CBFはPBRよりもパフォーマンスが高いことが示されている。CBFのパフォーマンスの優位性は、モビリティの高い場合に最も明らかである。
【0006】
しかし、CBFは、タイマベースのコンテンションメカニズムにより配信プロセスに入り込む遅延のため、不利であることがわかる。特に幹線道路の場合、通信ノードは高速度で移動し、生命に関わる安全情報の配信は極めて重要であるので、CBFは適切な解決法とはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、上記のような通信ネットワークにおける情報配信方法において、実施の容易なメカニズムを使用することにより、伝搬遅延を最小化し、不確実性に対するロバスト性が顕著に向上するように改良およびさらなる展開を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記の目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。請求項1に記載の通り、この方法は、発信ノードから第1転送ノードへ送信されたメッセージを受信した関連エリア内の他のノードが、それぞれ転送ノードを選出し、タイマベースのコンテンションプロセスに基づいて、選出した転送ノードへメッセージのユニキャスト再送を実行することを特徴とする。
【0009】
本発明によって初めて認識されたこととして、情報配信のための純粋なPBRメカニズムは、例えば生命に関わる安全性アプリケーションのような特別な状況に必要とされる要件を満たさない。さらに認識されたこととして、PBRの欠点は、この手順の純粋にユニキャスト的な性質によって引き起こされる。ユニキャストとは、メッセージが、特定の宛先アドレスをヘッダに入れて、ブロードキャスト媒体を通じて送信されることを意味する。状況および構成によっては、これは過度のパケット衝突を引き起こす可能性がある。そこで、本発明によれば、発信ノードから第1転送ノードへ送信されたメッセージを受信するノードは、そのメッセージを破棄しない。実際、それらの各ノードは、それぞれ適当な転送ノードを選出し、選出した転送ノードへ、タイマベースのコンテンションプロセスに基づいて、そのメッセージを再送する。なお、これらの転送ノードは、発信ノードによって選出される第1転送ノードと同一でも異なってもよい。
【0010】
ユニキャストの位置ベースルーティングと、コンテンションベース転送との組合せにより、衝突・伝搬現象のような不確実性に対してロバスト性の高い情報配信が保証される。本発明による方法は、発信ノードから第1転送ノードへ正しく送信されなかったメッセージが失われず、適当な隣接ノードによって再送されるような冗長性を備える。
【0011】
本発明による方法は、厳しい伝搬条件および高チャネル負荷を伴うモビリティの高い状況でのアプリケーションに最適である。しかし、当業者には明らかとなるように、本発明はこのようなアプリケーションに限定されない。実際、本発明による方法は、信頼できる効率的な情報配信が重要となる上記のような通信ネットワークであれば適用可能である。
【0012】
有利な態様として、情報が配信されるべき関連エリアは、配信されるべき情報の種類に応じて発信ノードによって指定される。一般に、メッセージを配送しようとする発信ノードは、関連性のある状況を認識しており、したがって、配信される情報が重要となり得る関連エリアを指定することができる。例えば、発信ノードが、片側複数車線の幹線道路上で交通事故を検出したとする。この場合、関連エリアは、事故現場から進行方向とは逆方向に例えば500〜1000メートルの長さだけ延在するエリアとして、発信ノードによって指定されることが可能である。一車線の地方道路の場合、関連エリアは、事故現場から道路の両方向に延在するエリアとして指定することができる。
【0013】
有利な態様として、関連エリアは、発信ノードによって送信されるメッセージに含まれる。これにより、配信プロセスに関与するすべてのノードは、関連エリアについて通知を受け、この情報を考慮に入れることができる。
【0014】
別の有利な態様として、発信ノードは、関連エリアに基づいて、少なくとも1つの情報伝搬方向を指定する。交通事故に関する上記の例では、情報伝搬方向は、一方または両方の運行方向における道路の延在部分に対応するのが最適である。交差点の場合、情報伝搬方向は、分岐する経路の延在部分に対応し得る。関連エリアが基本的に円形の場合、発信ノードは、例えばそれぞれ90°ごとに分かれた合計4つの情報伝搬方向を指定することができる。
【0015】
情報伝搬方向は、発信ノードが、伝搬方向に向かって高い(好ましくは最高の)正の進度を有するノードを第1転送ノードとして選出するための基礎として用いることができる。この選出プロセスのため、発信ノードは転送エリアを指定し、この転送エリア内のノードのみを転送ノード選出プロセスに含めることができる。転送エリアは、所定のメッセージ受信確率を示す範囲に限定してもよい。転送エリアのサイズは、メッセージの関連性が高いほど小さくしてもよい。いずれの場合でも、関与するノードの特定のSINR(信号対干渉雑音比)および送信電力を考慮に入れるとよい。
【0016】
好ましい実施形態として、第1転送ノードもまた、メッセージを受信した後、転送エリアを指定し、転送エリア内で伝搬方向に向かって最高の、または少なくとも高い正の進度を有するノードを第2転送ノードとして選出する。その後、第1転送ノードは第2転送ノードへメッセージを送信し、以下同様である。このメッセージ転送プロセスは、関連エリアの終端に達するまで繰り返すことができる。なお、この転送方式は、いずれのホップにおいても、いかなる追加的遅延も含まない。有利な態様として、タイマベースのコンテンションプロセスに基づくメッセージの再送が、次の転送ノードへの各メッセージ転送プロセスの後に実行される。すなわち、メッセージがある転送ノードから次の転送ノードへ、ユニキャスト位置ベース転送方式で転送されるごとに、このメッセージを受信するノードはそれぞれ自己の適切な転送ノードを選出し、タイマベースのコンテンションプロセスに基づいて、それぞれの転送ノードへメッセージを再送する。
【0017】
ノードが自己の地理的位置を認識していることに関して、通信ノードは、好ましくは、自己の現在位置を判定する手段を有する。例えばVANETでは、エネルギー消費および小型化は重要な特徴とはならないので、ノードは例えばGPSシステムのようなナビゲーションシステムを備えてもよい。
【0018】
また、通信ノードには、隣接ノードの地理的位置に関する更新された情報が提供されることが可能である。この目的のため、他の安全メカニズムに関連して通信ノードによって周期的に送信されるビーコンメッセージを用いることができる。これにより、ワイヤレス媒体(無線ブロードキャスト)を阻害する追加的オーバーヘッドが抑制される。状態メッセージの事前送信により、各ノードは、無線ブロードキャストを通じて、自己のアドレスおよび地理的位置をそのすべての隣接ノード(すなわち、シングルホップ送信範囲内のノード)に通知する。各ノードは、例えば、この情報が更新される隣接ノードテーブルを備える。ビーコン送信頻度は、ネットワーク内のモビリティの程度に適応させてもよい。状態メッセージは、それぞれのノードの速度、移動方向等のパラメータに関する追加的情報を含んでもよい。
【0019】
有利な態様として、すべての通信ノードがプロミスキャスモードで動作する。これにより、すべてのメッセージは、ブロードキャストモードで送信されるかのように、ユニキャストメッセージも含めて、メッセージ送信ノードの通信範囲内のすべてのノードによって受信されることになる。その結果、最大限の数のノードがコンテンションプロセスに参加することが可能となる。
【0020】
好ましい実施形態として、コンテンションプロセスは以下のように実施される。
【0021】
発信ノードまたはいずれかの転送ノードによって送信されたメッセージを受信する各ノードは、タイマを起動することができる。各ノードごとに、メッセージの送信ノードに対して伝搬方向に当該ノードが前進している距離に反比例するコンテンション期間を設定する。すなわち、ノードと各転送ノードとの間の距離が大きいほど、コンテンション期間は短い。ノードのコンテンション期間の終点に達すると直ちに、ノードは、選出した次の転送ノードへブロードキャストモードでメッセージを再送することができる。このようにして、冗長化が達成されるだけでなく、同時に、伝搬方向に前進した距離が最も大きいノードが最初にメッセージを再送することになる。これにより、コンテンションプロセスによって入り込む遅延は最小限に維持される。
【0022】
コンテンションプロセスを停止するために、各ノードに最大再送回数を設定することができる。これに関連して、各ノードは、そのノードがメッセージを受信するごとに増大するカウンタを動作させることができる。コンテンションプロセスは、コンテンションプロセスに関与するノードのうちの1つのカウンタが最大再送回数に達したときに中断することができる。最大再送回数の値は、配信する情報の種類に応じて発信ノードによって指定されることが可能である。(一般の重大でない)交通アプリケーションの場合、この最大値を例えば1に設定することで、それぞれの転送ノードのほかにただ1つの追加的ノードがメッセージを再送する。アプリケーションが慎重を要するほど、最大値を高く選択することができる。例えば、安全性アプリケーションの場合、最大値は3あるいはさらに大きい値に設定してもよい。
【0023】
追加的あるいは代替的なパラメータとして、転送エリアのサイズを、最大再送回数の指定の際に考慮に入れてもよい。一般に、転送エリアのサイズが大きいほど、最大再送回数の値を高く選択するとよい。これにより、転送エリアが大きくなることによるメッセージ受信確率の低下を、コンテンションプロセスの冗長化によって補償することができる。
【0024】
関連エリア内でのネットワーク分割の場合、配信されるべき情報が関連エリアに完全に行き渡らない場合が起こり得る。しかし、例えば一時的な危険を関連エリア内のノードに通知すべきかどうかは設計的事項ともいえる。ネットワークが分割され、情報が比較的長期間「有効」である場合、伝搬方向からの再送が届かないノードは、その情報を記憶し、新たな隣接ノードが検出されたときにそれを転送すればよい。
【0025】
本発明を有利な態様で実施するにはさまざまの可能性がある。このためには、請求項1に従属する諸請求項を参照しつつ、他方で、図面により例示された、本発明の好ましい実施形態についての以下の説明を参照されたい。図面を用いて本発明の好ましい実施形態を説明する際には、本発明の教示による好ましい実施形態一般およびその変形例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による通信ネットワークにおける情報配信方法を適用した実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照してさらに詳細に説明する。図1は、通信ネットワーク1の一部を模式的に示している。図示した具体的実施形態において、通信ネットワーク1は車両アドホックネットワーク(VANET)であり、通信ネットワーク1の通信ノードNとして作用する複数の車両を含む。本明細書において、車両およびノードという用語は、本具体例との関連では同義語として用いる。ノードNはワイヤレス技術に対応しており、無線ブロードキャストによって相互に情報を交換することができる。具体的には、図1は、ガードレール4によって2つの運行方向が互いに分離された車道2、3を有する幹線道路の状況を示している。
【0028】
車両Oが道路上で危険を検出する。例えば、車両Oが事故に遭遇し、あるいは雨氷の形成を検出する。危険事象を検出した後、車両Oは直ちに、他の車両Nに通知するために、情報配信プロセスを開始する。この目的のため、車両O(以下、発信ノードOという)は、関連エリア(relevant area, RA)を指定する。関連エリアは、発信ノードOによって配信されるべき情報が他のノードNにとって関連性があるかもしれないような地理的エリアである。例えば雨氷検出の場合、反対側の運行方向の車道にも雨氷が存在する可能性が極めて高い。したがって、関連エリアは、発信ノードOから両方の運行方向に延在するものとする。図1に示した実施形態では、発信ノードOは事故に遭遇している。この情報は、(ガードレール4によって運行方向が分離されているため)後続の車両にとってのみ重要であるので、関連エリアは、発信ノードOから、進行方向とは逆方向にのみ延在する。関連エリアの長さは、通信ノードNの平均速度に応じて設定してもよい。高速幹線道路の場合、この長さは、500〜2000メートルの範囲に設定することができる。
【0029】
以下の説明では、すべてのノードNが、位置、速度、方向等を含む周期的な状態メッセージ(ビーコン)の送信により、自己の周囲のノードNの位置を認識していると仮定する。また、任意のノードNによる送信は、道路の幅全体にわたり、すべてのノードNはプロミスキャスモードに設定されていると仮定する。プロミスキャスモードとは、各ノードNが、原則として、その通信範囲内の他の任意のノードによって送信されたすべてのメッセージを受信することを意味する。
【0030】
情報が配信されるべき関連エリアを指定した後の次のステップで、発信ノードOは、配信する情報を含むメッセージを生成する。一般に、配信する情報は、検出された危険の種類、その地点、およびタイムスタンプを含む。次に、発信ノードOは、転送エリアFA(forwarding area)を指定する。転送エリアFAは、十分に高いメッセージ受信確率を有するある種のロバストな範囲であって、他のノードとの間に起こり得る干渉や、送信信号を正しく復号するのに必要なワイヤレスカードに対して規定される特定のSINR(信号対干渉雑音比)を考慮して決まる。その結果、転送エリアは、決定論的/理想的な通信範囲CR(communication range)よりも小さい。これにより、配信プロセスの信頼性および充足性が向上する。実際には、転送エリアFAのサイズは、交通量、平均速度、発信ノードOの送信電力、アプリケーションの重要性等に応じて決めてもよい。
【0031】
情報の迅速な配信は、ユニキャスト位置ベース方式によって実行される。この方式は、転送エリアFA内で、情報伝搬方向に対して最高の(あるいは少なくとも高い)正の進度を有する既知のノードを選択する。選択されるノードを第1転送ノードF1といい、このノードへは、メッセージが発信ノードNによって転送される。このメカニズムは、関連エリアが完全にカバーされるまで、完全な接続性を有するノードNが十分に存在する限り繰り返される。すなわち、第1転送ノードF1は、新たな転送エリアを指定し、そのエリア内で情報伝搬方向に対して最高の(あるいは少なくとも高い)正の進度を有する第2転送ノードF2へメッセージを転送する。明確化のため、第2転送ノードF2およびそれ以降の転送ノードFnは図1には示していない。各ホップに追加的遅延が入るコンテンション方式とは異なり、この種の転送は非常に高速である。
【0032】
車両環境に存在するフェーディング現象や衝突(コリジョン)の可能性のため、メッセージをブロードキャストで再送することで、配信方式の信頼性を向上させる。再送メカニズムは、コンテンション期間を利用して信頼性を向上させる。転送エリアFA内に位置するすべてのノードC1、C2、C3は、配信されたメッセージ(前のユニキャスト位置ベース転送方式でメッセージを転送するように指定されたメッセージだけでなく)を受信した後、タイマベースのコンテンション期間を開始させる。ノード間の協調を向上させるため、コンテンションエリアは、ノードを中心とし、転送エリアFAと同じ半径を有する円として指定することができる。ノードのコンテンション期間は、送信ノードに対して伝搬方向に前進している距離に反比例するように設定できる。すなわち、ノードがそれぞれの転送ノードF1,F2,...,Fnに近いほど、コンテンション期間は短い。図1に示した例では、ノードC1のコンテンション期間はノードC2のコンテンション期間よりも短く、ノードC2のコンテンション期間はノードC3のコンテンション期間よりも短くなる。コンテンション期間の終点に達したノードは、そのノードによって選出された転送ノードのアドレスを宛先アドレスとしてメッセージを再送する。図1に示した例では、ノードC1はノードPを転送ノードとして選出する可能性がある。というのは、このノードは、ノードC1から見て、伝搬方向に向かって最高の正の進度を有するからである。
【0033】
媒体への送信の反復や重畳を制御するため、自己のロバスト範囲内に位置するノードからメッセージを受信したノードは、自己のコンテンションプロセスを、もし実行中であれば、中止する。信頼性を向上させるため、各ノードに最大再送回数を設定してもよい。その場合、コンテンションプロセスは、所定の最大値に達するまで、それぞれの(配信されているメッセージの)受信または送信イベントの後に再開される。
【0034】
まとめると、手順の具体例は以下のようになる。
【0035】
1.車両(発信ノード)が、安全に対する脅威を検出し、配信のための関連エリアを選択する。
【0036】
2.発信ノードは、自己の隣接ノードテーブルから、「次の転送ノード」、すなわち、転送エリア内で配信方向に最高の地理的進度を有するノードを選択する。
【0037】
3.発信ノードは、以下のものを含むブロードキャストメッセージを送信する。
・配信のための関連エリア
・自己の位置
・「次の転送ノード」のID
【0038】
4.a.「次の転送ノード」は、新たな「次の転送ノード」に直ちにメッセージを転送する。
b.「転送エリア」内の他のすべてのメッセージ受信ノードは、前進している距離に反比例するコンテンション期間を開始させる。
【0039】
5.a.コンテンション期間が終了したとき、
・「次の転送ノード」のIDを有するメッセージを送信し、
・コンテンションを(特定の最大回数まで)再開する。
b.メッセージが特定の最大値に等しい回数だけ受信された場合、
・コンテンションを中止する。
【0040】
上記の説明および添付図面の記載に基づいて、当業者は本発明の多くの変形例および他の実施形態に想到し得るであろう。したがって、本発明は、開示した具体的実施形態に限定されるものではなく、変形例および他の実施形態も、添付の特許請求の範囲内に含まれるものと理解すべきである。本明細書では特定の用語を用いているが、それらは総称的・説明的意味でのみ用いられており、限定を目的としたものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークにおける情報配信方法において、前記通信ネットワーク(1)は、自己の地理的位置を認識している複数の通信ノード(N)を有し、
前記複数のノードのうちの1つである発信ノード(O)、情報が配信されるべき関連エリア(RA)内の特定のノードである第1転送ノード(F1)へ、配信されるべき情報を含むユニキャストメッセージを送信
前記発信ノード(O)から前記第1転送ノード(F1)へ送信された前記メッセージを受信した前記関連エリア(RA)内の他のノード(C1,C2,C3)が、それぞれの関連エリア内の特定のノードである転送ノードを選出し、タイマベースのコンテンションプロセスに基づいて、選出した転送ノードへ前記メッセージのユニキャスト再送を実行する、
ことを特徴とする、通信ネットワークにおける情報配信方法。
【請求項2】
前記関連エリア(RA)が、配信されるべき情報の種類に応じて前記発信ノード(O)によって指定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記関連エリア(RA)が、前記発信ノード(O)によって送信される前記メッセージに含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記発信ノード(O)が、前記関連エリア(RA)に基づいて、少なくとも1つの情報伝搬方向を指定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記発信ノード(O)が、転送エリア(FA)を指定し、該転送エリア(FA)内で、前記伝搬方向に向かって最高の、または少なくとも高い、正の進度を有するノードを第1転送ノード(F1)として選出することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1転送ノード(F1)が、前記メッセージを受信した後、転送エリアを指定し、該転送エリア内で、前記伝搬方向に向かって最高の、または少なくとも高い、正の進度を有するノードを第2転送ノードとして選出することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記メッセージ転送プロセスが、前記関連エリア(RA)の終端に達するまで繰り返されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
タイマベースのコンテンションプロセスに基づく前記メッセージの再送が、次の転送ノードへの各メッセージ転送プロセスの後に実行されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記通信ノード(N)が、自己の地理的位置を判定する手段を有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記通信ノード(N)には、隣接ノードの地理的位置に関する更新された情報が提供されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記通信ノード(N)が、周期的な状態メッセージを送信することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記状態メッセージが、それぞれの通信ノード(N)の速度、移動方向等のパラメータに関する情報を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記通信ノード(N)が、プロミスキャスモードで動作することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
コンテンション期間が、前記発信ノード(O)またはいずれかの転送ノード(F1)によって送信された前記メッセージを受信する各通信ノード(C1,C2,C3)ごとに設定され、前記コンテンション期間は、前記メッセージの送信ノード(O,F1)に対する前記伝搬方向における前記ノード(C1,C2,C3)の前進距離に反比例することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記発信ノード(O)またはいずれかの転送ノード(F1)によって送信された前記メッセージを受信する各通信ノード(C1,C2,C3)が、前記メッセージの受信後にタイマを起動することを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
各通信ノード(C1,C2,C3)が、自己のコンテンション期間の終点に達すると直ちに、ブロードキャストモードで前記メッセージを再送することを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
各通信ノード(N)は、該ノード(N)が前記メッセージを受信するごとに増大するカウンタを動作させることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記コンテンションプロセスは、前記コンテンションプロセスに関与する通信ノード(C1,C2,C3)のうちの1つのカウンタが所定の最大値に達したときに中断されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
最大再送回数の値が、配信されるべき情報の種類に応じて、および/または、前記転送エリア(FA)のサイズに応じて、前記発信ノード(O)によって指定されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
最大再送回数の値が、交通アプリケーションの場合には1に設定され、安全性アプリケーションの場合には3以上の値に設定されることを特徴とする請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記通信ネットワークは車両アドホックネットワーク(VANET)であることを特徴とする請求項1−20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
自己の地理的位置を認識している複数の通信ノード(N)からなる通信ネットワーク(1)における通信ノードであって、
発信ノード(O)であれば、情報が配信されるべき関連エリア(RA)内の特定のノードである第1転送ノード(F1)へ、配信されるべき情報を含むユニキャストメッセージを送信し、
前記発信ノード(O)から前記第1転送ノード(F1)へ送信された前記メッセージを受信すれば、関連エリア内の特定のノードである転送ノードを選出し、タイマベースのコンテンションプロセスに基づいて、選出した転送ノードへ前記メッセージのユニキャスト再送を実行する、
ことを特徴とする通信ノード。
【請求項23】
自己の地理的位置を認識している複数の通信ノード(N)からなる通信ネットワーク(1)における通信ノードの通信方法であって、
前記通信ノードが発信ノード(O)であれば、情報が配信されるべき関連エリア(RA)内の特定のノードである第1転送ノード(F1)へ、配信されるべき情報を含むユニキャストメッセージを送信し、
前記通信ノードが前記発信ノード(O)から前記第1転送ノード(F1)へ送信された前記メッセージを受信すれば、関連エリア内の特定のノードである転送ノードを選出し、タイマベースのコンテンションプロセスに基づいて、選出した転送ノードへ前記メッセージのユニキャスト再送を実行する、
ことを特徴とする通信ノードの通信方法。
【請求項24】
自己の地理的位置を認識している複数の通信ノード(N)からなる通信ネットワーク(1)であって、
前記複数のノードのうちの1つである発信ノード(O)がから、情報が配信されるべき関連エリア(RA)内の特定のノードである第1転送ノード(F1)へ、配信されるべき情報を含むユニキャストメッセージを送信し、
前記発信ノード(O)から前記第1転送ノード(F1)へ送信された前記メッセージを受信した前記関連エリア(RA)内の他のノード(C1,C2,C3)が、それぞれの関連エリア内の特定のノードである転送ノードを選出し、タイマベースのコンテンションプロセスに基づいて、選出した転送ノードへ前記メッセージのユニキャスト再送を実行する、
ことを特徴とする通信ネットワーク。

【図1】
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【公開番号】特開2013−48421(P2013−48421A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198180(P2012−198180)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2009−547534(P2009−547534)の分割
【原出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(509211066)エヌイーシー ドイチュラント ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】