説明

通信装置および受信電力測定方法

【課題】受信電力を精度良く測定することが可能な技術を提供する。
【解決手段】通信装置100Aは、ベースバンドOFDM信号を直交検波して、複素OFDM信号を生成する直交検波部13と、複素OFDM信号にフーリエ変換処理を施し、サブキャリアごとの複素シンボルを出力するFFT部15と、FFT部15から出力されるサブキャリアの複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和に基づいて、受信信号の受信電力を取得する受信電力算出部16とを備えている。そして、受信電力算出部16は、複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和と受信電力との関係を表したテーブルを有し、当該テーブルを用いて受信信号の受信電力を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信電力の測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から無線通信に関して様々な技術が提案されている。例えば非特許文献1には、次世代PHS(Personal Handyphone System)と呼ばれる通信システムについての規格が記載されている。次世代PHSでは、各基地局は、TDMA/TDD(Time Division Duplexing)を用いた通信方式で複数の通信端末と通信を行う。次世代PHSで採用されているTDMA/TDDでは、4つのスロットで構成された送信期間と4つのスロットで構成された受信期間とが交互に現れる。また、次世代PHSでの通信方式では、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)も用いられている。OFDMAでは、互いに直交する複数のサブキャリアが合成されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号が使用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“OFDMA/TDMA TDD Broadband Wireless Access System(Next Generation PHS) ARIB STANDARD”、ARIB STD-T95 Version1.3、平成21年12月16日、社団法人電波産業会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなOFDM方式の無線通信では、通信相手から送信された信号の受信信号強度を示す受信電力は、例えば、受信信号を入力とした専用デバイスの出力を用いて測定することができる。しかし、当該専用デバイスの動作保障範囲には制限があるため、受信される信号の強さ(電界強度)によっては、専用デバイスの出力に測定誤差が含まれ、受信電力の測定精度が低下する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、受信電力を精度良く測定することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る通信装置は、OFDM信号である受信信号を直交検波して、複素OFDM信号を生成する直交検波手段と、前記複素OFDM信号にフーリエ変換処理を施し、サブキャリアごとの複素シンボルを出力するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段から出力される前記サブキャリアの複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和に基づいて、前記受信信号の受信電力を取得する受信電力取得手段とを備え、前記受信電力取得手段は、複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和と受信電力との対応関係を記憶した記憶部を有し、前記対応関係を用いて前記受信信号の受信電力を取得する。
【0007】
また、本発明に係る通信装置の一態様では、前記受信電力取得手段は、前記フーリエ変換手段から出力される前記サブキャリアの複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和に基づいて、前記受信信号におけるスロット単位の第1スロット受信電力を取得し、前記通信装置は、時間領域の前記受信信号に基づいて当該受信信号の信号レベルを検出する検出手段と、前記受信信号の信号レベルに基づいて、前記受信信号におけるスロット単位の第2スロット受信電力を取得するスロット受信電力取得手段と、前記第1スロット受信電力および前記第2スロット受信電力のいずれかを前記受信信号のスロット受信電力として択一的に選択する選択手段とをさらに備える。
【0008】
また、本発明に係る通信装置の一態様では、前記対応関係は、既知の受信電力を有する信号を前記通信装置に入力させたときに、前記フーリエ変換手段から出力されるサブキャリアの同相信号および直交信号の2乗和を測定することによって、予め取得される。
【0009】
また、本発明に係る通信装置の一態様では、前記対応関係は、テーブル形式で前記記憶部に記憶される。
【0010】
また、本発明に係る通信装置の一態様では、通信装置は、アナログ形式の信号をデジタル形式の信号に変換するA/D変換手段をさらに備え、前記フーリエ変換手段に入力される前記複素OFDM信号は、前記デジタル形式の信号であり、前記選択手段は、前記第2スロット受信電力と所定値との比較結果に応じて、前記第1スロット受信電力および前記第2スロット受信電力のいずれかを前記受信信号のスロット受信電力として択一的に選択し、前記所定値は、前記A/D変換手段の出力信号が飽和しない範囲のスロット受信電力である。
【0011】
また、本発明に係る通信装置の一態様では、前記選択手段は、前記第2スロット受信電力が前記所定値より大きい場合、前記第2スロット受信電力を前記受信信号のスロット受信電力として選択する。
【0012】
また、本発明に係る通信装置の一態様では、前記選択手段は、前記第2スロット受信電力が前記所定値以下の場合、前記第1スロット受信電力を前記受信信号のスロット受信電力として選択する。
【0013】
また、本発明に係る通信装置の一態様では、前記受信電力取得手段は、前記フーリエ変換手段から出力される前記サブキャリアの複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和に基づいて、当該サブキャリアを含むサブチャネルの受信電力を取得する。
【0014】
また、本発明に係る受信電力測定方法は、a)OFDM信号である受信信号を直交検波して、複素OFDM信号を生成する工程と、b)前記複素OFDM信号にフーリエ変換処理を施し、サブキャリアごとの複素シンボルを出力する工程と、c)前記サブキャリアの複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和に基づいて、前記受信信号の受信電力を取得する工程とを備え、前記c)工程は、予め記憶された、複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和と受信電力との対応関係を用いて、前記受信信号の受信電力を取得する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、受信電力を精度良く測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】TDMA/TDDフレームの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る通信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】無線部の詳細構成を示す図である。
【図5】IQ2乗和と受信電力との関係を表す変換テーブルを示す図である。
【図6】受信レベルと受信電力との関係を表す変換テーブルを示す図である。
【図7】受信電力の種類を示す図である。
【図8】第1方式および第2方式で特定されるスロット受信電力を示す図である。
【図9】第1方式および第2方式で特定されるスロット受信電力を示す図である。
【図10】第1方式および第2方式で特定されるスロット受信電力を示す図である。
【図11】第1方式および第2方式で特定されるスロット受信電力を示す図である。
【図12】第1方式および第2方式で特定されるスロット受信電力を示す図である。
【図13】第1方式および第2方式で特定されるスロット受信電力を示す図である。
【図14】第1方式および第2方式で特定されるスロット受信電力を示す図である。
【図15】第1方式および第2方式で特定されるスロット受信電力を示す図である。
【図16】A/D変換部に入力されるアナログ信号を示す図である。
【図17】A/D変換部に入力されるアナログ信号を示す図である。
【図18】スロット受信電力の選択手法を示すフローチャートである。
【図19】スロット受信電力の選択手法を示すフローチャートである。
【図20】変形例に係る通信装置の構成を示すブロック図である。
【図21】変形例に係るスロット受信電力の選択手法を示すフローチャートである。
【図22】変形例に係るスロット受信電力の選択手法を示すフローチャートである。
【図23】ダウンコンバートされた信号を示す図である。
【図24】変形例に係るスロット受信電力の選択手法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
[概要]
図1は、本発明の実施形態に係る通信システム1の構成を示す図である。通信システム1は、次世代PHSの標準規格としてのXGPに準拠した通信システムであって、複数の基地局10で構成されている。
【0018】
各基地局10は、TDMA/TDD(Time Division Multiple Access/Time Division Duplexing)方式で通信端末50と通信を行うとともに、各基地局10は、バックボーンネットワークとしてのネットワークNTを介して互いに接続されている。このような構成を有する通信システム1では、遠く離れた通信端末50同士の情報伝送が実現される。
【0019】
また、通信システム1では、多元接続方式としてOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式も採用されている。OFDMA方式では、互いに直交する複数のサブキャリアが合成されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号が使用される。
【0020】
基地局10と通信端末50との通信は、無線の電波資源(「無線リソース」とも称する)の中から特定の無線リソースを用いて行われる。無線リソースは、周波数軸と時間軸とからなる2次元で特定され、複数のフレーム(「TDMA/TDDフレーム」とも称する)200で構成されている。図2は、TDMA/TDDフレーム200の構成を示す図である。
【0021】
図2に示されるように、TDMA/TDDフレーム200は、横軸および縦軸に時間および周波数をそれぞれ示す時間−周波数平面上で特定される。
【0022】
1つのTDMA/TDDフレーム200(単位TDMA/TDDフレーム)は、通信端末50から基地局10への上り信号を伝送するための上りフレーム200Uと、基地局10から通信端末50への下り信号を伝送するための下りフレーム200Dとで構成される。上りフレーム200Uおよび下りフレーム200Dのそれぞれは、時間方向に4分割されていて、第1スロットSL1〜第4スロットSL4を含んでいる。TDMA/TDDフレーム200では、1つのスロット(単位スロット)の時間幅は625μsに設定されていて、上りフレーム200Uおよび下りフレーム200Dの時間長はそれぞれ2.5msとなり、単位TDMA/TDDフレームの時間長は5msとなっている。
【0023】
なお、上りフレーム200Uに含まれる各スロットSL1〜SL4は、「上りタイムスロット」とも称され、下りフレーム200Dに含まれる各スロットSL1〜SL4は、「下りタイムスロット」とも称される。
【0024】
また、TDMA/TDDフレーム200は、周波数方向に第1サブチャネルSCH1〜第jサブチャネルSCHj(j>1)を含み、図2では、第1サブチャネルSCH1〜第9サブチャネルSCH9を含んだ態様が示されている。1つのサブチャネル(単位サブチャネル)の帯域幅は900kHzであって、1つのサブチャネルは24本のサブキャリアで構成されている。
【0025】
TDMA/TDDフレーム200では、1つのスロットと1つのサブチャネルとで、1つのPRU(Physical Resource Unit)210が構成されている。基地局10と通信端末50との通信は、このPRU210単位で行われる。すなわち、基地局10では、通信端末50に対する無線リソースの割り当てはPRU210単位で行われ、通信端末50に送信データを送信する際に使用する変調方式はPRU210ごとに決定される。
【0026】
上りフレーム200Uおよび下りフレーム200Dのそれぞれには、時間方向に沿って4つのPRU210が並び、単位TDMA/TDDフレームでは、時間方向に沿って8つのPRU210が並んでいる。またTDMA/TDDフレーム200では、周波数方向には、サブチャネルの数と同数の9個のPRU210が並んでいる。
【0027】
例えば、図2では、上りフレーム200Uにおいて、第1スロットSL1の第1サブチャネルSCH1から第4スロットSL4の第9サブチャネルSCH9まで順番にユニット番号が割り当てられる。すなわち、上りフレーム200Uは、PRU1〜PRU36まで36個のPRUで構成されている。なお、下りフレーム200Dを構成する各PRU210について同様にユニット番号が割り当てられるが、図2では図示を省略している。
【0028】
[通信装置の構成]
ここで、基地局10として構成される通信装置100Aの構成について説明する。図3は、通信装置100Aの構成を示すブロック図である。図4は、無線部RFの詳細構成を示す図である。図5は、変換テーブルTB1を示す図であり、図6は、変換テーブルTB2を示す図である。なお、図3においては、受信部のみが示されており、送信部については省略されている。
【0029】
図3に示されるように、通信装置100Aは、アレイアンテナATと、無線部RFと、A/D変換部11,12と、直交検波部13と、デジタルフィルタ14と、FFT部15と、受信電力算出部16と、相対電力比算出部17と、スロット受信電力取得部18と、受信電力特定部19とを備えている。このような構成を有する通信装置100Aは、アレイアンテナATで受信された信号の受信電力を取得する機能を有している。
【0030】
具体的には、通信装置100Aにおいて、アレイアンテナATで受信した受信信号は無線部RFに入力される。無線部RFは、入力された受信信号に基づいて、ベースバンドのOFDM信号(「ベースバンドOFDM信号」とも称する)BOSを出力するとともに、受信信号の信号レベルRLを出力する。
【0031】
より詳細には、図4に示されるように、無線部RFは、増幅器(アンプ)21,24と、ミキサ22,26,29と、信号分離器23と、バンドパスフィルタ25,27,28,30と、受信レベル検出部31とを有している。
【0032】
アレイアンテナATで受信された受信信号は、アンプ21によって増幅された後に、ミキサ22に入力される。ミキサ22は、不図示の局部発振器とともに、信号の周波数帯域をより低い周波数帯域(中間帯域)に変換する周波数帯域変換部として機能する。
【0033】
ミキサ22からの出力信号は、信号分離器23に入力される。当該出力信号は、信号分離器23によって2つの経路に分離され、アンプ24とバンドパスフィルタ28とに入力される。
【0034】
アンプ24で増幅された信号は、バンドパスフィルタ25に入力される。バンドパスフィルタ25で所定のフィルタ処理が施された信号は、ミキサ26に入力される。ミキサ26は、不図示の局部発振器とともに、信号の周波数帯域をより低い周波数帯域(基底帯域)に変換する周波数帯域変換部として機能する。ミキサ26からの出力信号は、バンドパスフィルタ27に入力される。バンドパスフィルタ27は、当該出力信号から基底帯域以外の不要な信号を除去し、基底帯域の信号(ベースバンドOFDM信号)BOSを出力する。
【0035】
一方、信号分離器23からバンドパスフィルタ28に直接入力された信号は、バンドパスフィルタ28、ミキサ29、およびバンドパスフィルタ30を経て基底帯域の信号に変換された後に、受信レベル検出部31に入力される。
【0036】
受信レベル検出部31は、アレイアンテナATで受信された受信信号の信号レベルRLを検出する。具体的には、受信レベル検出部31は、アレイアンテナATで受信された時間領域の受信信号に基づいて、スロットSL1〜SL4ごとに受信信号の電圧値を検出し、当該電圧値を受信信号の信号レベルRLとして出力する。
【0037】
このように、無線部RFは、受信信号に基づいて、ベースバンドOFDM信号BOSと受信信号の信号レベルRLとを出力する。なお、無線部RF内のアンプ21,24としては、一定の増幅率(利得)を有する固定アンプが用いられる。
【0038】
通信装置100Aの説明に戻って(図3参照)、無線部RFから出力されたベースバンドOFDM信号BOS、および受信信号の信号レベルRLそれぞれは、A/D変換部11,12に入力される。A/D変換部11,12は、アナログ形式の信号をデジタル形式の信号に変換して出力する。
【0039】
A/D変換部11から出力されたデジタル形式のベースバンドOFDM信号は、直交検波部13に入力される。直交検波部13は、デジタル形式のベースバンドOFDM信号に対して直交検波を行い、ベースバンドOFDM信号のI(Inphase)成分(同相成分)およびQ(Quadrature)成分(直交成分)を生成する。直交検波部13で生成されるI成分の信号は、同相信号とも称され、Q成分の信号は、直交信号とも称される。また、同相信号および直交信号は、複素OFDM信号とも称される。
【0040】
ベースバンドOFDM信号の同相信号および直交信号は、デジタルフィルタ14においてフィルタ処理が施された後、FFT部15に入力される。
【0041】
FFT部15は、入力された同相信号および直交信号に対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を施す。これにより、FFT部15からは、ベースバンドOFDM信号に含まれる複数のサブキャリアごとに複素シンボルの同相信号および直交信号が出力される。FFT部15から出力されたサブキャリアごとの複素シンボルの同相信号および直交信号は、受信電力算出部16と相対電力比算出部17とに入力される。
【0042】
受信電力算出部16では、サブキャリアごとの複素シンボルの同相信号および直交信号に基づいて、サブチャネルごとの受信電力(「サブチャネル受信電力」とも称する)が取得される。例えば、1スロットにおける或るサブチャネルの受信電力が取得される場合は、受信電力算出部16は、当該サブチャネルに含まれる、いくつかのサブキャリアそれぞれについて同相信号および直交信号の2乗和(「IQ2乗和」とも称する)を算出する。そして、受信電力算出部16は、算出された各IQ2乗和の平均値を当該サブチャネルのIQ2乗和(サブチャネルIQ2乗和)として用い、当該サブチャネルの受信電力を取得する。サブチャネル受信電力の取得は、図5に示される変換テーブルTB1を参照してサブチャネルIQ2乗和に対応したサブチャネル受信電力を特定することによって実現される。なお、IQ2乗和は、サブキャリアの同相信号および直交信号の各々を2乗して加算した結果を表している。
【0043】
また、受信電力算出部16では、1スロットを構成する各サブチャネルのサブチャネルIQ2乗和の総和を算出し、算出された総和に基づいて当該1スロットの受信電力(「スロット受信電力」とも称する)を取得する。当該総和に基づいたスロット受信電力の取得は、図5に示される変換テーブルTB1を参照することによって行われる。
【0044】
このように、受信電力算出部16では、サブチャネル受信電力がサブチャネルごとに取得され、各サブチャネル受信電力は受信電力特定部19に出力される。また、受信電力算出部16では、スロット受信電力がスロットごとに取得され、各スロット受信電力は受信電力特定部19に出力される。
【0045】
なお、変換テーブルTB1に示されるIQ2乗和と受信電力との関係は、既知の受信電力を有する信号を生成し、当該信号を通信装置100Aに入力させたときに、当該通信装置100Aから得られるIQ2乗和を所定の測定器で測定することによって、特定できる。すなわち、変換テーブルTB1を作成する際には、10.0dBμVの受信電力を有する信号を通信装置100Aに入力させたとき、通信装置100AからはIQ2乗和として「1928」が得られたことになる。このようにして特定されたIQ2乗和と受信電力との対応関係は、変換テーブルTB1として、受信電力算出部16の記憶部(不図示)に予め格納されている。なお、受信電力は、受信信号強度(RSSI:Receive Signal Strength Indication)とも称される。
【0046】
相対電力比算出部17では、サブキャリアごとの複素シンボルの同相信号および直交信号に基づいて、サブチャネルごとに受信電力の相対比(「受信電力相対比」または「相対電力比」とも称する)が算出される。具体的には、相対電力比算出部17は、受信電力算出部16と同様の手法にて、1スロットを構成する各サブチャネルについてサブチャネルIQ2乗和をそれぞれ算出する。そして、相対電力比算出部17は、各サブチャネルIQ2乗和を加算することによって全サブチャネルのIQ2乗和の総和を算出する。そしてさらに、相対電力比算出部17は、或るサブチャネルのサブチャネルIQ2乗和を、全サブチャネルのIQ2乗和の総和で割ることで、1スロット内の全サブチャネルに対する当該或るサブチャネルの相対電力比を取得する。すなわち、特定のスロットにおけるn番目のサブチャネルに関する相対電力比「Re(n)」は、j番目のサブチャネルのサブチャネルIQ2乗和を「IQsum(j)」とすると、式(1)のように表される。
【0047】
【数1】

【0048】
このような相対電力比の算出は、各スロットに含まれるサブチャネルそれぞれについて行われ、算出された各相対電力比は、受信電力特定部19に出力される。
【0049】
一方、A/D変換部12から出力されたデジタル形式の受信信号の信号レベルは、スロット受信電力取得部18に入力される。スロット受信電力取得部18は、図6に示される変換テーブルTB2を参照することによって、スロットSL1〜SL4ごとの受信信号の信号レベル(電圧値)に対応したスロットSL1〜SL4ごとのスロット受信電力を取得する。スロット受信電力取得部18で取得された各スロット受信電力は、受信電力特定部19に出力される。なお、変換テーブルTB2は、電圧値で表された受信レベルを、デシベル換算された受信信号強度(RSSI)に変換するものであり、スロット受信電力取得部18で取得されるスロット受信電力は、デシベル換算された値で表されることになる。
【0050】
受信電力特定部19は、受信電力算出部16、相対電力比算出部17、およびスロット受信電力取得部18からの各入力値に基づいて、種々の受信電力を特定する。特定される受信電力の種類としては、サブチャネル単位のサブチャネル受信電力とスロット単位のスロット受信電力とがあり、これら各受信電力は2通りの方式で特定される。図7は、受信電力の種類を示す図である。
【0051】
具体的には、図7に示されるように、受信電力特定部19は、受信電力算出部16から入力されるサブチャネル受信電力を第1方式(IQ2乗和方式)で取得されたサブチャネル受信電力として特定する。また、受信電力特定部19は、受信電力算出部16から入力されるスロット受信電力を、IQ2乗和方式で取得されたスロット受信電力として特定する。
【0052】
また、受信電力特定部19は、スロット受信電力取得部18から入力されるスロット受信電力を、第2方式(相対比方式)で取得されたスロット受信電力として特定する。また、受信電力特定部19は、相対電力比算出部17から入力される相対電力比およびスロット受信電力取得部18から入力されるスロット受信電力に基づいて、サブチャネル受信電力を特定する。
【0053】
第2方式によるサブチャネル受信電力の特定は、下記の式(2)を用いた演算によって実現される。すなわち、1スロット内のn番目のサブチャネルに関するサブチャネル受信電力「RSSIsub(n)」は、スロット受信電力取得部18から入力されるスロット受信電力を「RSSIslot」とし、相対電力比算出部17から入力されるn番目のサブチャネルに関する相対電力比を「Re(n)」とすると、式(2)のように表される。
【0054】
【数2】

【0055】
このように、受信電力特定部19は、第1方式を用いてスロット受信電力およびサブチャネル受信電力を特定することができるとともに、第2方式を用いてスロット受信電力およびサブチャネル受信電力を特定することができる。なお、第2方式でスロット受信電力を特定するための装置は、専用デバイスとも称され、受信レベル検出部31およびスロット受信電力取得部18で構成される。
【0056】
[第1方式と第2方式との比較]
次に、受信電力の特定に用いる第1方式と第2方式との差異について説明する。図8〜図15は、既知の受信信号強度を有する信号を通信装置100Aに入力させたときに第1方式および第2方式で特定されるスロット受信電力「RSSIslot」を示す図である。
【0057】
図8に示されるように、0dBμVのスロット受信電力を有する信号を通信装置100Aに入力させたときは、第2方式よりも第1方式の方が、スロット受信電力の特定精度が良い。また、10dBμV〜60dBμVでは、図9〜図14に示されるように、第1方式で特定されたスロット受信電力と、第2方式で特定されたスロット受信電力とはほぼ同じであり、第1方式と第2方式との間でスロット受信電力の特定精度に差はない。
【0058】
0dBμVで第2方式によるスロット受信電力の特定精度が低下するのは、専用デバイスの特性に起因するものである。具体的には、専用デバイスの動作保障範囲には制限があるため、受信信号の強さによっては、専用デバイスの出力に測定誤差が含まれることになる。このため、専用デバイスの出力を用いて受信電力を取得する第2方式では、電界強度の比較的小さい信号に関する受信電力の特定精度は低下する。
【0059】
一方、図15に示されるように、70dBμVのスロット受信電力を有する信号を通信装置100Aに入力させたときは、第1方式でのスロット受信電力の特定が困難となる。
【0060】
このように、70dBμVで第1方式によるスロット受信電力の特定が困難になるのは、無線部RFから出力されるベースバンドOFDM信号BOSが大きくなり過ぎたため、A/D変換部11によって適切なデジタル形式の信号値が取得できなくなることに起因する。図16および図17は、A/D変換部11に入力されるアナログ信号を示す図である。
【0061】
具体的には、A/D変換部11では、入力されたアナログ信号に対して表現可能なデジタル信号の幅が制限される。このため、デジタル信号値として表現可能な値以上のアナログ信号が入力されると、A/D変換部11では当該アナログ信号を正確に表現できなくなり、出力されるデジタル信号は飽和することになる。本実施形態の無線部RFでは、増幅器21,24として固定アンプが用いられているため、A/D変換部11からの出力値が飽和するか否かは、受信される信号の強さ(受信信号の電界強度)に比例する。
【0062】
例えば、電界強度の小さい信号(例えば、スロット受信電力=40dBμV)を受信した場合は、図16に示されるように、A/D変換部11に入力されるアナログ信号「Rb(t)」は、A/D変換部11においてデジタル信号値として表現可能な範囲RGに収まる信号となる。これに対して、電界強度の大きい信号(例えば、スロット受信電力=70dBμV)を受信した場合は、図17に示されるように、A/D変換部11に入力されるアナログ信号「Rb(t)」は、A/D変換部11においてデジタル信号値として表現可能な範囲RGから一部はみ出た信号となる。この場合、A/D変換部11から出力されるデジタル信号には、飽和した信号が含まれることになるので、後段の受信電力算出部16では、正確なIQ2乗和を取得することが不可能になり、ひいては第1方式でのスロット受信電力の特定が困難になる。
【0063】
このように、第1方式によるスロット受信電力の特定精度および第2方式によるスロット受信電力の特定精度は、受信信号の強さに応じて変化するため、特定精度の高い方式で特定されたスロット受信電力を現在のスロット受信電力として用いることが好ましい。
【0064】
本実施形態の受信電力特定部19は、第1方式で特定されたスロット受信電力および第2方式で特定されたスロット受信電力のうち、どちらの方式で特定されたスロット受信電力を現在のスロット受信電力として用いるかを択一的に選択する選択手段としての機能も有している。図18および図19は、第1方式で特定されたスロット受信電力および第2方式で特定されたスロット受信電力のうち、どちらの方式で特定されたスロット受信電力を現在のスロット受信電力として採用するかを選択する際のフローチャートである。
【0065】
例えば、図18のフローチャートでは、ステップSP11において、第2方式で特定されたスロット受信電力が所定値より大きいか否かが判定される。当該所定値は、A/D変換部11によるA/D変換後の出力信号が飽和しない範囲の特定のスロット受信電力を示し、当該特定のスロット受信電力を有する信号が受信信号として通信装置100Aに入力されたときに、A/D変換後の出力信号が飽和するか否かに基づいて決定される。所定値としては、信号が飽和する直前の値を採用することが好ましく、ここでは、所定値として60dBμVが採用されている。
【0066】
ステップSP11において、第2方式で得られたスロット受信電力が所定値より大きいと判定された場合は、動作工程は、ステップSP12に移行され、第2方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。一方、第2方式で得られたスロット受信電力が所定値以下の場合は、動作工程は、ステップSP13に移行され、第1方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。
【0067】
また、例えば、図19のフローチャートでは、第2方式で特定されたスロット受信電力を現在のスロット受信電力として主に用いる態様が示されている。具体的には、ステップSP21では、第1方式で特定されたスロット受信電力と第2方式で特定されたスロット受信電力との差分が第1の閾値以下であるか否かが判定される。当該第1の閾値としては、例えば、5dBμVを採用すればよい。
【0068】
ステップSP21において、両方式間の差分値が第1の閾値以下であった場合は、動作工程はステップSP22に移行され、第2方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。一方、両方式間の差分値が第1の閾値より大きい場合は、動作工程はステップSP23に移行される。
【0069】
ステップSP23では、第2方式で特定されたスロット受信電力が第2の閾値より大きいか否かが判定される。当該第2の閾値としては、デジタル信号が飽和する直前の限度値を採用することが好ましく、ここでは、第2の閾値として60dBμVが採用されている。
【0070】
ステップSP23において、第2方式で得られたスロット受信電力が第2の閾値より大きいと判定された場合は、動作工程は、ステップSP22に移行され、第2方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。一方、第2方式で得られたスロット受信電力が第2の閾値以下の場合は、動作工程は、ステップSP24に移行され、第1方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。
【0071】
このように、両方式のうち、どちらの方式で特定されたスロット受信電力を現在のスロット受信電力として採用するかをデジタル信号が飽和する直前の限度値を基準にして決定することによれば、受信信号の強さに応じた最適な方式で特定されたスロット受信電力を現在のスロット受信電力として用いることが可能になる。なお、図18および図19で示されるフローチャートは一例であり、他のフローチャートに従って現在のスロット受信電力を決定してもよい。
【0072】
以上のように、通信装置100Aは、ベースバンドOFDM信号を直交検波して、複素OFDM信号を生成する直交検波部13と、複素OFDM信号にフーリエ変換処理を施し、サブキャリアごとの複素シンボルを出力するFFT部15と、FFT部15から出力されるサブキャリアの複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和に基づいて、受信信号の受信電力を取得する受信電力算出部16とを備えている。そして、当該受信電力算出部16は、複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和と受信電力との対応関係を記憶する記憶部を有し、受信電力算出部16は、当該対応関係を用いて受信信号の受信電力を取得する。このような構成を有する通信装置100Aによれば、受信電力を精度良く測定することが可能になる。
【0073】
<変形例>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されない。
【0074】
例えば、上記実施形態では、第1方式と第2方式とでスロット受信電力を特定可能な構成としていたが、これに限定されない。図20は、変形例に係る通信装置100Bの構成を示すブロック図である。なお、通信装置100Bにおいて、通信装置100Aと共通する部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0075】
具体的には、図20に示されるように、通信装置100Bは、第1方式でスロット受信電力を特定可能な構成のみを有する態様であってもよい。これによれば、電界強度の小さい信号を受信する場合において、当該受信信号のスロット受信電力を精度良く特定することが可能になる。また、通信装置100Bは、第2方式でスロット受信電力を特定するための構成を有していないため、コストの削減を図ることが可能になる。
【0076】
また、上記実施形態では、通信相手の信号が弱い場合、すなわち電界強度の小さい信号を受信する場合は、第1方式で特定されたスロット受信電力を現在のスロット受信電力として用い、通信相手の信号が強い場合、すなわち電界強度の大きい信号を受信する場合は、第2方式で特定されたスロット受信電力を現在のスロット受信電力として用いていたが、これに限定されない。
【0077】
具体的には、第2方式でスロット受信電力を特定するための専用デバイスが、電界強度の小さい信号に対してはスロット受信電力を精度良く特定可能である一方で、電界強度の大きい信号に対してはスロット受信電力を精度良く特定できない特性を有していた場合を想定する。この場合、電界強度の大きい信号を受信しても、A/D変換部11からの出力値が飽和しないように、固定アンプの増幅率を設計したときは、電界強度の小さい信号を受信する場合は、第2方式で特定されたスロット受信電力を現在のスロット受信電力として用い、電界強度の大きい信号を受信する場合は、第1方式で特定されたスロット受信電力を現在のスロット受信電力として用いることが好ましい。
【0078】
本変形例においては、図18および図19のフローチャートはそれぞれ図21および図22のように変形される。すなわち、図21のフローチャートでは、ステップSP31において、第2方式で特定されたスロット受信電力が所定値(例えば、60dBμV)より大きいか否かが判定される。
【0079】
ステップSP31において、第2方式で得られたスロット受信電力が所定値より大きいと判定された場合は、動作工程は、ステップSP32に移行され、第1方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。一方、第2方式で得られたスロット受信電力が所定値以下の場合は、動作工程は、ステップSP33に移行され、第2方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。
【0080】
また、例えば、図22のフローチャートでは、ステップSP41において、第1方式で特定されたスロット受信電力と第2方式で特定されたスロット受信電力との差分が第1の閾値(例えば、5dBμV)以下であるか否かが判定される。
【0081】
ステップSP41において、両方式間の差分値が第1の閾値以下であった場合は、動作工程はステップSP42に移行され、第2方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。一方、両方式間の差分値が第1の閾値より大きい場合は、動作工程はステップSP43に移行される。
【0082】
ステップSP43では、第2方式で特定されたスロット受信電力が第2の閾値(例えば、60dBμV)より大きいか否かが判定される。
【0083】
ステップSP43において、第2方式で得られたスロット受信電力が第2の閾値より大きいと判定された場合は、動作工程は、ステップSP44に移行され、第1方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。一方、第2方式で得られたスロット受信電力が第2の閾値以下の場合は、動作工程は、ステップSP42に移行され、第2方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。
【0084】
また、上記実施形態では、通信に用いられる特定の1の周波数帯域を考慮して受信電力を測定していたが、これに限定されず、通信に用いられる複数の異なる周波数帯域を考慮して受信電力を測定してもよい。図23は、バンドパスフィルタ30通過後のダウンコンバートされた信号Rdを示す図である。図24は、受信電力の選択手法を示すフローチャートである。
【0085】
具体的には、通信システム1においては、複数の異なる周波数帯域を通信に用いてもよく、この場合、基地局ごとに用いる周波数帯域が割り当てられることになる。例えば、或る基地局において、周波数帯域「fN」が用いられている場合、他の基地局では、当該周波数帯域「fN」に隣接した周波数帯域「fN-1」、または周波数帯域「fN+1」が用いられる。
【0086】
各基地局(通信装置)においては、ダウンコンバートの際に不要な周波数帯域の信号を除去するために、バンドパスフィルタ28,30が設けられているが、当該バンドパスフィルタ28,29では、その特性上、急峻には不要な周波数を除去することができない。
【0087】
このため、基地局ごとに異なる周波数帯域が割り当てられ、かつ異なる周波数帯域で通信を行う周辺基地局が通信状態である状況では、基地局にとって不要な周波数帯域の信号を、当該基地局にとって有効な周波数帯域の信号として用いる可能性がある。例えば、周波数帯域「fN」を用いる或る基地局周辺の周辺基地局において、周波数帯域「fN-1」、および周波数帯域「fN+1」が用いられていた場合、バンドパスフィルタ30通過後の信号「Rd」には、図23に示されるように、破線HL1で囲まれる範囲の周波数帯域fN-1の信号および破線HL2で囲まれる範囲の周波数帯域fN+1の信号が含まれることになる。
【0088】
ここで、基地局に設けられた専用デバイスでは、バンドパスフィルタ30を通過した後の信号「Rd」に基づいてスロット受信電力が特定される。このため、バンドパスフィルタ30通過後の信号「Rd」に、破線HL1,HL2で囲まれた範囲の不要な周波数帯域fN-1,fN+1の信号が含まれている場合は、専用デバイスは、破線HL1,HL2で囲まれた範囲の有効帯域外の不要な周波数帯域の信号を取り込んだ状態でスロット受信電力を測定することになる。これにより、専用デバイスを用いた第2方式によるスロット受信電力の測定精度が劣化することになる。
【0089】
これに対して、第1方式では、有効帯域外の不要な周波数帯域の信号を取り込んで、スロット受信電力を特定することがないため、複数帯域の周波数を通信に用いる場合でも、第1方式によるスロット受信電力の測定精度は劣化しない。
【0090】
このように、通信システム1において複数帯域の周波数を通信に用いる場合は、第2方式よりも第1方式の方が精度良くスロット受信電力を特定できる可能性が高く、第2方式よりも第1方式を用いて受信電力を特定することが好ましいと言える。
【0091】
本変形例においては、図19のフローチャートは、例えば図24のフローチャートのように変形することができる。
【0092】
具体的には、ステップSP51では、自局が通信中か否かが判定される。自局が通信中でない場合は、測定される受信電力は、全て隣接した周波数帯域(隣接帯域)の電力であると考えられ、このとき、専用デバイスを用いた第2方式でスロット受信電力を特定すると、隣接帯域の受信電力を取り込むことになる。よって、自局が通信中でない場合は、動作工程は、ステップSP55に移行され、第1方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。
【0093】
一方、自局が通信中であった場合は、自局と自局の通信相手との距離が近いため、自局における周波数帯域の信号の受信電力が、隣接帯域の信号の受信電力よりも相対的に大きくなり、隣接帯域の信号の影響は小さくなる。このため、動作工程は、ステップSP52に移行され、受信電力特定方式の選択が引き続き継続される。
【0094】
ステップSP52では、第1方式で特定されたスロット受信電力と第2方式で特定されたスロット受信電力との差分が第1の閾値以下であるか否かが判定される。当該第1の閾値としては、例えば、5dBμVを採用すればよい。
【0095】
ステップSP52において、両方式間の差分値が第1の閾値以下であった場合は、動作工程はステップSP53に移行され、第2方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。一方、両方式間の差分値が第1の閾値より大きい場合は、動作工程はステップSP54に移行される。
【0096】
ステップSP54では、第2方式で特定されたスロット受信電力が第2の閾値より大きいか否かが判定される。当該第2の閾値としては、デジタル信号が飽和する直前の限度値を採用することが好ましく、ここでは、第2の閾値として60dBμVが採用されている。
【0097】
ステップSP54において、第2方式で得られたスロット受信電力が第2の閾値より大きいと判定された場合は、動作工程は、ステップSP53に移行され、第2方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。一方、第2方式で得られたスロット受信電力が第2の閾値以下の場合は、動作工程は、ステップSP55に移行され、第1方式で特定されたスロット受信電力が現在のスロット受信電力として採用される。
【0098】
このように、通信システム1において、複数の異なる周波数帯域が通信に用いられる場合において、第1方式および第2方式のうち、どちらの方式で特定されたスロット受信電力を現在のスロット受信電力として採用するかを、自局が通信中であるか否かをも基準にして決定することによれば、最適な方式で特定されたスロット受信電力を現在のスロット受信電力として用いることが可能になる。
【0099】
また、上記実施形態および変形例では、通信装置100A,100Bが基地局10である場合を説明していたが、これに限定されず、通信装置100A,100Bは通信端末50であってもよい。
【0100】
また、上述の実施形態および変形例では、本発明を次世代PHSに適用する場合について説明したが、本発明は他の通信システムにも適用することができる。例えば、本発明は、LTE(Long Term Evolution)やWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 通信システム
100A,100B 通信装置
11,12 A/D変換部
13 直交検波部
15 FFT部
16 受信電力算出部
17 相対電力比算出部
18 スロット受信電力取得部
19 受信電力特定部
RF 無線部
BOS ベースバンドOFDM信号
RL 受信信号の信号レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFDM信号である受信信号を直交検波して、複素OFDM信号を生成する直交検波手段と、
前記複素OFDM信号にフーリエ変換処理を施し、サブキャリアごとの複素シンボルを出力するフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段から出力される前記サブキャリアの複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和に基づいて、前記受信信号の受信電力を取得する受信電力取得手段と、
を備え、
前記受信電力取得手段は、複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和と受信電力との対応関係を記憶する記憶部を有し、
前記受信電力取得手段は、前記対応関係を用いて前記受信信号の受信電力を取得する通信装置。
【請求項2】
前記受信電力取得手段は、
前記フーリエ変換手段から出力される前記サブキャリアの複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和に基づいて、前記受信信号におけるスロット単位の第1スロット受信電力を取得し、
前記通信装置は、
時間領域の前記受信信号に基づいて当該受信信号の信号レベルを検出する検出手段と、
前記受信信号の信号レベルに基づいて、前記受信信号におけるスロット単位の第2スロット受信電力を取得するスロット受信電力取得手段と、
前記第1スロット受信電力および前記第2スロット受信電力のいずれかを前記受信信号のスロット受信電力として択一的に選択する選択手段と、
をさらに備える請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記対応関係は、既知の受信電力を有する信号を前記通信装置に入力させたときに、前記フーリエ変換手段から出力されるサブキャリアの同相信号および直交信号の2乗和を測定することによって、予め取得される請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記対応関係は、テーブル形式で前記記憶部に記憶される請求項1から請求項3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
アナログ形式の信号をデジタル形式の信号に変換するA/D変換手段、
をさらに備え、
前記フーリエ変換手段に入力される前記複素OFDM信号は、前記デジタル形式の信号であり、
前記選択手段は、前記第2スロット受信電力と所定値との比較結果に応じて、前記第1スロット受信電力および前記第2スロット受信電力のいずれかを前記受信信号のスロット受信電力として択一的に選択し、
前記所定値は、前記A/D変換手段の出力信号が飽和しない範囲のスロット受信電力である請求項2から請求項4のいずれかに記載の通信装置。
【請求項6】
前記選択手段は、
前記第2スロット受信電力が前記所定値より大きい場合、前記第2スロット受信電力を前記受信信号のスロット受信電力として選択する請求項2から請求項5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項7】
前記選択手段は、
前記第2スロット受信電力が前記所定値以下の場合、前記第1スロット受信電力を前記受信信号のスロット受信電力として選択する請求項2から請求項6のいずれかに記載の通信装置。
【請求項8】
前記受信電力取得手段は、前記フーリエ変換手段から出力される前記サブキャリアの複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和に基づいて、当該サブキャリアを含むサブチャネルの受信電力を取得する請求項1から請求項7のいずれかに記載の通信装置。
【請求項9】
a)OFDM信号である受信信号を直交検波して、複素OFDM信号を生成する工程と、
b)前記複素OFDM信号にフーリエ変換処理を施し、サブキャリアごとの複素シンボルを出力する工程と、
c)前記サブキャリアの複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和に基づいて、前記受信信号の受信電力を取得する工程と、
を備え、
前記c)工程は、予め記憶された、複素シンボルの同相信号および直交信号の2乗和と受信電力との対応関係を用いて、前記受信信号の受信電力を取得する受信電力測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−199421(P2011−199421A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61581(P2010−61581)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】