説明

通信装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体

【課題】 メーカ間の通信の汎用性を損なわないために標準手順を用いて、誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルを用いる場合、ECM手順を省略して効率よく通信を行う通信装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体を提供する。
【解決手段】 受信側の通信装置は、誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであるTCPを用いてファクシミリ通信を実行する場合には、ECM機能を有していないことを示すDIS信号を送出する。一方、送信側の通信装置は、受信側がECM機能を有していることを示すDISを受信したとしても、誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルを用いる場合、ECM機能を用いずにファクシミリ通信を実行することを示すDCS信号を送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPネットワークを含むネットワークを介してファクシミリ通信を実行する通信装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ADSL(Asynchronous Digital Subscruber Line)やFTTH(Fiber To The Home)などのブロードバンド回線の普及が著しい。このブロードバンド回線の高速伝送性を活かして、音声をIPパケット化して伝送するIP電話サービスも急速に普及している。
【0003】
IP電話においては、通話音声データの送受信はIPアドレスを有する端末間で、TCPあるいはUDP/IPレイヤ上で行われる。プロトコルは、VoIP(Voice over IP:たとえばITU−T勧告H.323:下記の非特許文献1)プロトコルなどである。したがって、電話番号からIPアドレスへの変換処理が必要である。現在ではこの電話番号からIPアドレスへの変換は、SIP(Session Initiate Protocol:RFC2543:下記の非特許文献2)プロキシサーバにより行なうのが一般的である。
【0004】
SIPを用いたIP電話通信においては、発呼端末で電話番号を入力すると、SIPプロキシサーバ(以下SIPプロキシと記す)宛てに送信先電話番号を含むセッション要求メッセージが送信される。セッション要求メッセージを受信したSIPプロキシは、DNS(Domain Name System:RFC1035)サーバを検索するなどの必要な処理を行なって相手の着呼端末のIPアドレスを取得する。このように、発呼端末および着呼端末の間で初期の接続処理を代理する。上記のセッション要求メッセージに対して、着呼端末から応答メッセージが送信されるが、これらのメッセージはいずれもテキスト(文字コード)で表現されたテキストストリームである。
【0005】
SIPメッセージの主要部分は、「属性:値」のような電子メールなどのヘッダ記述形式に類似した書式で記述される。そして、端末同士の相互の機能を識別するため、SDP(Session Description Protocol:RFC2327:下記の非特許文献3)に準拠したフォーマットで自機のメディアストリームに関する処理機能(通信機能)を記述することができる。以下は、RFC2543の付録「B.1 Configuring Media Streams」に記載されたSDPによる発呼端末の宣言(提案)の例である。
v=0
o=alice 2890844526 2890844526 IN IP4 host.anywhere.com
c=IN IP4 host.anywhere.com
m=audio 49170 RTP/AVP 0
a=rtpmap:0 PCMU/8000
m=video 51372 RTP/AVP 31
a=rtpmap:31 H261/90000
m=video 53000 RTP/AVP 32
a=rtpmap:32 MPV/90000
上記のように、SDPは1文字のニーモニック(v,o,c,m...)の後に「=」を配置し、その後に空白、スラッシュで区切ったテキスト表現の値を配置することにより構成される。特に上記のうち、ニーモニック「m」により、音声(audio)や画像(video)など、端末が処理可能なメディアストリームの種類を表現することができる。また、ニーモニック「v」はプロトコルバージョンの識別に、「o」は当該セッション(ないしメッセージ)の開始者ないし所有者の識別に、「c」は種々の接続情報の記述に用いられる。
【0006】
一方、インターネットのようなIPネットワークが普及する以前より、手軽に画像データを送受信できる装置として、ファクシミリ装置が用いられてきた。ファクシミリ装置は電話番号を指定するだけで極めて容易に画像データを相手局に送信することができ、PCや携帯電話などの端末から電子メールで画像を送信できる現在においても依然として広く用いられている。
【0007】
現在では、ファクシミリ手順をIPネットワーク上の通信に用いるための手順として、ITU−T勧告T.38に記載された、いわゆるリアルタイム型インターネットファクシミリ手順が知られている。この勧告T.38は、公衆回線網上での使用を前提に定義されたファクシミリ通信プロトコルであるところのITU−T勧告T.30で定義された手順を、ほぼそのままIPネットワーク上で実装するように定義されている。
【0008】
上記ITU−T勧告T.30の中で決められたデータエラーの発生を回避するための手順として、エラーコレクションモード(ECM:Error Correction Mode)による通信がある。このECMは、データエラーが発生する通信網を前提として作られたものであり、アナログ公衆回線網上では有効である。しかし、IPネットワークを使用したインターネットファクシミリ、特に誤り訂正機能を有するTCP/IPプロトコルを選択した場合は、二重のデータエラー保証を行うことになり冗長である。このためデータ伝送の効率が落ちると言う問題があった。
【0009】
このような問題に対して、独自の通信モードを定義してECM手順を省いてファクシミリ通信を行う方法も考えられる。
【0010】
例えば、特許文献1では、呼制御チャネルと同じチャネルでデータ通信を行う非標準手順の通信の中で、相手先装置との呼制御チャネルを介した呼制御メッセージによる能力交換を行なう。この能力交換において、自装置がECM手順を省略したデータ転送に対応している旨を相手先装置に通知している。
【非特許文献1】ITU−T勧告H.323
【非特許文献2】RFC2543:http://www.faqs.org/rfcs/rfc2543.html
【非特許文献3】RFC2327:http://www.faqs.org/rfcs/rfc2327.html
【特許文献1】特開2001−292267
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1の場合には、ECM手順の要否の通知は非標準手順の通信で行われるため、異なるメーカの通信装置間で実行される通信における汎用性がなくなってしまうという大きな問題が生じる。
【0012】
本発明の課題は、上記の問題に鑑み、メーカ間の通信の汎用性を損なわないために標準手順を用いて、誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルを用いる場合、ECM手順を省略して効率よく通信を行う通信装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するために、本発明の通信装置は、IPネットワークを介して接続された通信相手と、ファクシミリ手順に基づくECM機能を用いてファクシミリ通信を実行することが可能な通信装置であって、前記通信相手から、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルを示すプロトコル情報を含む通信開始要求を受信する受信手段と、前記受信手段が前記通信開始要求を受信すると、標準ファクシミリ手順に準拠して、前記通信相手に前記通信装置の能力を通知する通知手段と、前記プロトコル情報に基づいて、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであるか否かを判定する判定手段とを有し、前記判定手段により前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルでないと判定された場合は、前記通知手段は前記通信装置がECM機能を有していることを通知し、前記判定手段により前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであると判定された場合は、前記通知手段は前記通信装置がECM機能を有していないことを通知することを特徴とする。
【0014】
又、IPネットワークを介して接続された通信相手と、ファクシミリ手順に基づくECM機能を用いたファクシミリ通信を実行することが可能な通信装置であって、前記通信相手に対して、前記ファクシミリ通信の開始を要求する通信開始要求を送信する送信手段と、標準ファクシミリ手順に準拠して、前記通信相手から当該通信相手の能力を示す情報を含む、前記通信開始要求に対する応答を受信する受信手段と、前記受信手段が前記応答を受信すると、標準ファクシミリ手順に準拠して、前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いて前記ファクシミリ通信を実行するか否かを前記通信相手に指示する指示手段と、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであるか否かを判定する判定手段とを有し、前記判定手段により前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルでないと判定された場合は、前記指示手段は前記通信相手がECM機能を有しているか否かに応じて前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いて前記ファクシミリ通信を実行するか否かを指示し、前記判定手段により前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであると判定された場合は、前記指示手段は前記通信相手におけるECM機能の有無にかかわらず前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いずに前記ファクシミリ通信を実行することを指示することを特徴とする。
【0015】
又、IPネットワークを介して接続された通信相手と、ファクシミリ手順に基づくECM機能を用いてファクシミリ通信を実行することが可能な通信装置の制御方法であって、前記通信相手から、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルを示すプロトコル情報を含む通信開始要求を受信する受信工程と、前記受信工程で前記通信開始要求を受信すると、標準ファクシミリ手順に準拠して、前記通信相手に前記通信装置の能力を通知する通知工程と、前記プロトコル情報に基づいて、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであるか否かを判定する判定工程とを有し、前記判定工程において前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルでないと判定された場合は、前記通知工程において前記通信装置がECM機能を有していることを通知し、前記判定工程において前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであると判定された場合は、前記通知工程において前記通信装置がECM機能を有していないこと通知することを特徴とする。
【0016】
又、IPネットワークを介して接続された通信相手と、ファクシミリ手順に基づくECM機能を用いたファクシミリ通信を実行することが可能な通信装置の制御方法であって、前記通信相手に対して、前記ファクシミリ通信の開始を要求する通信開始要求を送信する送信工程と、標準ファクシミリ手順に準拠して、前記通信相手から当該通信相手の能力を示す情報を含む、前記通信開始要求に対する応答を受信する受信工程と、前記受信工程で前記応答を受信すると、標準ファクシミリ手順に準拠して、前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いて前記ファクシミリ通信を実行するか否かを前記通信相手に指示する指示工程と、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであるか否かを判定する判定工程とを有し、前記判定工程において前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルでないと判定された場合は、前記指示工程において前記通信相手がECM機能を有しているか否かに応じて前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いて前記ファクシミリ通信を実行するか否かを指示し、前記判定工程において前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであると判定された場合は、前記指示工程において前記通信相手におけるECM機能の有無にかかわらず前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いずに前記ファクシミリ通信を実行することを指示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ネットワークを介する通信装置間の通信において、メーカ間の通信の汎用性を損なわずに誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルを用いる場合にはECM手順を省略した効率の良い通信が行える、という優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に示した実施形態に基づき本発明を詳細に説明する。以下では、IPネットワークを介して画像通信を行なう画像通信装置、特にスキャナ機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能、インターネット通信機能を有する複合機、その制御方法、ないしその制御プログラムに関する実施形態を示す。しかしながら、本発明の技術思想は、この実施形態に限定されず、一般的な通信装置間の通信制御にも適用でき、これらも本発明に含まれる。
【0019】
<本実施形態の画像通信装置の構成例>
図1Aは、本実施形態の画像通信装置のコントローラの構成例を示すブロック図である。ここで、100はシステムコントロール用チップである。システムコントロール用チップ100は、その内部構成として例えば本実施形態では以下の構成要素を有している。
【0020】
プログラムを格納するためのROM400を有する。また、ファクシミリ通信用のモデムや網制御装置(モデム&NCU410)を接続するための外部ISAバスの制御を行うブロックROMISA10を有する。また、DMAの制御を行うDMAC20を有する。また、スキャナ部での原稿搬送用のモータ制御などを行うメカトロモータ制御30を有する。また、割り込みとタイマの制御を行う割り込み&タイマ制御40を有する。また、操作パネル420の制御を行うLCD制御50を有する。また、コンピュータと接続するための、USB(ユニバーサルシリアルバス)I/F430の制御を行うUSBDevice制御部60を有する。また、LAN(ローカルエリアネットワーク)I/F440の制御を行うためのLAN制御70を有する。
【0021】
また、本発明の通信動作を含む装置全体を制御するプログラムを実行するCPU80を有する。また、外部メモリである例えばDRAM470を制御するためのDRAMController90を有する。また、プリンタ装置450を制御するためのLBPIF15を有する。また、印刷するための画像処理を行うプリンタ画像処理25を有する、また、原稿を読み取るためのスキャナ装置460を制御するためのスキャナIF35を有する。また、読み取った画像の処理を行うスキャナ画像処理45を有する。また、画像データの符号化復号化を行うCODEC55を有する。
【0022】
<本実施形態の画像通信装置のリアルタイム型インターネットファクシミリ通信動作例>
次に、上記構成を用いた、本実施形態の画像通信装置による一般的なインターネットファクシミリ通信動作について説明する。
【0023】
(送信機側の動作例)
リアルタイム型インターネットファクシミリ送信を行う利用者は、原稿をスキャナ装置460にセットし、操作パネル420を操作して送信経路や解像度の選択、送信宛先の設定及びジョブ開始の指示を行う。スキャナIF35は、メカトロモータ制御30とスキャナ装置460を使用して原稿を画像データとして読み取る。次に、スキャナ画像処理45でシェーディング補正等の必要な処理を行い、CODEC55によって圧縮し、DRAM470に格納する。
【0024】
一方、LAN制御70は、LANI/F440を通じてIP網への接続手順を行う。受信機との接続手順が完了し、ITU-T勧告T.38に従った動作を開始する。その後は、CPU80によって実行されるファクシミリ通信プログラムにより、DRAM470に格納された画像データは、CODEC55によって復号されて受信機の能力に応じた符号に再度符号化され、送信される。
【0025】
(受信機側の動作例)
受信機側では、ファクシミリ通信プログラムに従って、LAN制御部70によりLANI/F440経由で受信した画像データは、CODEC55によって復号及び再符号化が行われ、DRAM470に格納される。その後、プリンタ画像処理25とLBPIF15により、印字出力される。
【0026】
(メモリ-ROM,DRAM-の構成例)
図1Bは、図1AのROM400やDRAM470を含むメモリの記憶内容の構成例を示す図である。なお、図1Bには、本実施形態に関連が深いプログラム及びデータを示し、一般的なあるいは関連の薄いものは図示されていない。
【0027】
201は、本実施形態の画像通信装置の全体を制御するための画像処理プログラムである。202は、スキャナ装置460を制御するためのスキャナ制御プログラムである。203は、プリンタ装置450を制御するためのプリンタ制御プログラムである。
【0028】
204は、画像通信を制御するための標準プロトコルを含む画像通信制御プログラムである。画像通信制御プログラム204には、SIPプロトコル204a、ITU-T勧告T.38手順204b、送信メッセージ作成モジュール204c、受信メッセージ解析モジュール204d、通信経路・通信プロトコル判断モジュール204eなどが含まれる。
【0029】
また、205は、操作パネル420などを介してユーザとインタフェースするためのユーザンタフェース・プログラムである。
【0030】
211は、送信メッセージ作成モジュール204cにより作成される送信メッセージの記憶領域である。212は、受信メッセージ解析モジュール204dにより解析される受信メッセージの記憶領域である。213は、画像データの記憶領域である。かかる画像データは、記述言語情報であっても、中間データであっても、ビットマップであっても、圧縮データであってもよい。
【0031】
214は、自装置の機能情報の記憶領域、215は、通信相手の機能情報の記憶領域である。216は、通信経路・通信プロトコル判断モジュール204eにより判断された通信経路情報の記憶領域、217は、通信プロトコル情報の記憶領域である。218は、通信経路や通信プロトコル情報に基づいてECM機能有り/無しの宣言を記憶するためのフラグである。
【0032】
221は、上記プログラムがディスクなどの外部記憶に記憶されている場合に、CPU80が実行するためにそれらのプログラムをロードするプログラムロード領域である。
【0033】
<本実施形態の画像通信装置のECM機能通知の動作手順例>
図4を用いて、リアルタイム型インターネットファックスでの本実施形態に係わる通信手順例の概略を説明する。
【0034】
40は、インターネット網での標準のセッション制御プロトコルであるSIPプロトコルで、送信装置から受信装置にSIPメッセージが送られる。SIPメッセージには、相手機に対して通信開始要求を行うためのINVITEメッセージが含まれている。さらにこのINVITEメッセージには、通信に用いられるトランスポートプロトコルを示す情報を含む、SDPメディアストリーム記述が含まれている。
【0035】
以下、41から48は、メディアセッション移行後のITU-T勧告T.38に規定された標準ファクシミリ手順の信号の例である。41は、受信能力を示す情報を含むDIS信号である。42は、通信能力を決定するDCS信号である。43は、トレーニングチェックのためのTCF信号である。44は、受信準備完了を示すCFR信号である。45は、画像信号(PIX)である。46は、画像信号の送信の終了を示すEOP信号である。47は、EOP信号に応答する受信完了信号のMCF信号である。48は、回線切断を示すDCN信号である。50は、上記メディアセッション中のTU-T勧告T.38に規定された標準のファクシミリ手順の信号に対応して、インターネット網上で情報交換を行なうインターネットファクシミリ通信を示す。
【0036】
49は、セッション終了プロトコルを示し、例えば送信装置から受信装置へのBYE信号とそれに応答するOK信号等から成る。
【0037】
(受信機側のECM機能通知の動作手順例)
図2を用いて、CPU80が実行するプログラムで、本実施形態の特徴である受信機側のT.38手順内のDIS信号の選択方法について説明する。
【0038】
IP網からのSIPプロトコル経由での着信があると(S21)、INVITEメッセージを受信する(S22)。INVITEメッセージ内に含まれているSDP(Session Description Protocol)を解析し、通信に用いられるトランスポートプロトコルがTCP(Transmission Control Protocol)経由か、UDP(User Datagram Protocol)経由かを判断して記憶する(S23)。
【0039】
その後、SIPの標準プロトコルに応じた応答を行い(S24)、T.38のインターネットファクシミリ手順を開始する(S25)。ここで、記憶していたトランスポートプロトコルの判断結果に従い(S26)、TCPであればECM機能を有しているにもかかわらず、ECM機能が有していないことを示すDIS信号を送出する(S27)。UDPであれば、従来のファクシミリと同じようにECM機能ありを示すのDIS信号を送出する(S28)。
【0040】
その後は、T.38に従ったリアルタイム型インターネットファクシミリ手順を進める(S29、S30)。
【0041】
(送信機側のECM機能通知の動作手順例)
図3を用いて、CPU80が実行するプログラムで、本実施形態の特徴である送信機側のT.38手順内のDCS信号の選択方法について説明する。
【0042】
発信時(S31)に、ユーザにより又は装置の設定により、通信に用いるトランスポートプロトコルを選択し(S32)、選択されたトランスポートプロトコルを示すSDPを記述したINVITEメッセージを含むSIPプロトコル手順を開始する(S33)。
【0043】
受信側とのSIPプロトコルが完了し呼が確立すると、T.38の通信手順を開始し(S34)、受信機側からDIS信号を受信する(S35)。そして、S32で選択されたトランスポートプロトコルがTCPであるか否かを判定する(S36)。選択されたトランスポートプロトコルがTCPであれば、受信機側におけるECM機能の有無にかかわらず、ECM機能を用いずにファクシミリ通信を実行することを指示するDCSを受信機側に送出する(S39)。
【0044】
S36における判定で、S32で選択されたトランスポートプロトコルがTCPでなければ(即ち、UDPであれば)、受信機側がECM機能を有しているか否かを判定する(S37)。その結果、受信機側がECM機能を有している場合には、ECM機能を用いてファクシミリ通信を実行することを指示するDCSを受信機側に送出する(S38)。一方、受信機側がECM機能を有していない場合には、ECM機能を用いずにファクシミリ通信を実行することを指示するDCSを受信機側に送出する(S39)。
【0045】
その後は、T.38に従ったリアルタイム型インターネットファクシミリ手順を進める(S40、S41)。
【0046】
尚、本発明は、IPネットワークを経由して音声通信および画像通信を行なう通信装置に適用できるものである。このような通信装置は、専用機として構成できる他、スキャナやカメラインターフェースなどの画像入出力部と、ネットワークインターフェースを有するPC(パーソナルコンピュータ)などのハードウェアを利用して実施することもできる。特に、本発明の方法ないしプログラムはこのようなPCハードウェアを利用する場合に、適当な記憶媒体経由、あるいはネットワーク経由でPCハードウェアに導入することができる。
【0047】
また、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェース機器、プリンタなど)から構成されるシステムあるいは統合装置に適用しても、ひとつの機器からなる装置に適用してもよい。
【0048】
また、本発明の目的が、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体(または記録媒体)を、システムあるいは装置に供給することによって、達成されることは言うまでもない。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、コンピュータが読み出したプログラムコードの指示に基づき、オペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0049】
更に、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0050】
本発明を上記記憶媒体に適用する場合、その記憶媒体には、先に説明したフローチャートに対応するプログラムコードが格納されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1A】本実施形態の画像通信装置の構成例を示すブロック図である。
【図1B】図1AのROMやDRAMの記憶構成例を示す図である。
【図2】受信側の画像通信装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】送信側の画像通信装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】インターネットファクシミリ間での通信手順の概略を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPネットワークを介して接続された通信相手と、ファクシミリ手順に基づくECM機能を用いてファクシミリ通信を実行することが可能な通信装置であって、
前記通信相手から、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルを示すプロトコル情報を含む通信開始要求を受信する受信手段と、
前記受信手段が前記通信開始要求を受信すると、標準ファクシミリ手順に準拠して、前記通信相手に前記通信装置の能力を通知する通知手段と、
前記プロトコル情報に基づいて、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであるか否かを判定する判定手段とを有し、
前記判定手段により前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルでないと判定された場合は、前記通知手段は前記通信装置がECM機能を有していることを通知し、前記判定手段により前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであると判定された場合は、前記通知手段は前記通信装置がECM機能を有していないことを通知することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記プロトコル情報がTCP/IPを示している場合には、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであると判定し、前記プロトコル情報がUDP/IPを示している場合には、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルでないと判定することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通知手段は、DIS信号を送信することにより、前記通信装置の能力を通知することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記ファクシミリ通信とは、ITU-T勧告T.38に従ったファクシミリ通信であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
IPネットワークを介して接続された通信相手と、ファクシミリ手順に基づくECM機能を用いたファクシミリ通信を実行することが可能な通信装置であって、
前記通信相手に対して、前記ファクシミリ通信の開始を要求する通信開始要求を送信する送信手段と、
標準ファクシミリ手順に準拠して、前記通信相手から当該通信相手の能力を示す情報を含む、前記通信開始要求に対する応答を受信する受信手段と、
前記受信手段が前記応答を受信すると、標準ファクシミリ手順に準拠して、前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いて前記ファクシミリ通信を実行するか否かを前記通信相手に指示する指示手段と、
前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであるか否かを判定する判定手段とを有し、
前記判定手段により前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルでないと判定された場合は、前記指示手段は前記通信相手がECM機能を有しているか否かに応じて前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いて前記ファクシミリ通信を実行するか否かを指示し、前記判定手段により前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであると判定された場合は、前記指示手段は前記通信相手におけるECM機能の有無にかかわらず前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いずに前記ファクシミリ通信を実行することを指示することを特徴とする通信装置。
【請求項6】
前記指示手段は、DCS信号を送信することにより、前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いて前記ファクシミリ通信を実行するか否かを指示することを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記ファクシミリ通信とは、ITU-T勧告T.38に従ったファクシミリ通信であることを特徴とする請求項5または6に記載の通信装置。
【請求項8】
IPネットワークを介して接続された通信相手と、ファクシミリ手順に基づくECM機能を用いてファクシミリ通信を実行することが可能な通信装置の制御方法であって、
前記通信相手から、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルを示すプロトコル情報を含む通信開始要求を受信する受信工程と、
前記受信工程で前記通信開始要求を受信すると、標準ファクシミリ手順に準拠して、前記通信相手に前記通信装置の能力を通知する通知工程と、
前記プロトコル情報に基づいて、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであるか否かを判定する判定工程とを有し、
前記判定工程において前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルでないと判定された場合は、前記通知工程において前記通信装置がECM機能を有していることを通知し、前記判定工程において前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであると判定された場合は、前記通知工程において前記通信装置がECM機能を有していないこと通知することを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項9】
前記判定工程では、前記プロトコル情報がTCP/IPを示している場合には、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであると判定され、前記プロトコル情報がUDP/IPを示している場合には、前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するランスポートプロトコルでないと判定されることを特徴とする請求項8に記載の通信装置の制御方法。
【請求項10】
前記通知工程では、DIS信号を送信することにより、前記通信装置の能力を通知することを特徴とする請求項8または9に記載の通信装置の制御方法。
【請求項11】
前記ファクシミリ通信とは、ITU-T勧告T.38に従ったファクシミリ通信であることを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の通信装置の制御方法。
【請求項12】
IPネットワークを介して接続された通信相手と、ファクシミリ手順に基づくECM機能を用いたファクシミリ通信を実行することが可能な通信装置の制御方法であって、
前記通信相手に対して、前記ファクシミリ通信の開始を要求する通信開始要求を送信する送信工程と、
標準ファクシミリ手順に準拠して、前記通信相手から当該通信相手の能力を示す情報を含む、前記通信開始要求に対する応答を受信する受信工程と、
前記受信工程で前記応答を受信すると、標準ファクシミリ手順に準拠して、前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いて前記ファクシミリ通信を実行するか否かを前記通信相手に指示する指示工程と、
前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであるか否かを判定する判定工程とを有し、
前記判定工程において前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルでないと判定された場合は、前記指示工程において前記通信相手がECM機能を有しているか否かに応じて前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いて前記ファクシミリ通信を実行するか否かを指示し、前記判定工程において前記ファクシミリ通信に用いられるトランスポートプロトコルが誤り訂正機能を有するトランスポートプロトコルであると判定された場合は、前記指示工程において前記通信相手におけるECM機能の有無にかかわらず前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いずに前記ファクシミリ通信を実行することを指示することを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項13】
前記指示工程では、DCS信号を送信することにより、前記通信装置が前記通信相手とECM機能を用いて前記ファクシミリ通信を実行するか否かを指示することを特徴とする請求項12に記載の通信装置の制御方法。
【請求項14】
前記ファクシミリ通信とは、ITU-T勧告T.38に従ったファクシミリ通信であることを特徴とする請求項12または13に記載の通信装置の制御方法。
【請求項15】
請求項8乃至14のいずれか1項に記載の通信装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムを記憶したコンピュータで読み取り可能な記憶媒体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−109638(P2008−109638A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229458(P2007−229458)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】