説明

通信装置

【課題】一つのDSPを有するTDMA方式の通信装置において、折り返し試験を実施することが可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】通信装置は、DSP1と、スイッチ10と、送信回路41と、受信回路42と、受信検波部43と、判定部44とを備える。受信検波部43は、送信回路41からスイッチ10を介して受信回路42に入力され当該受信回路42から出力される信号を検波し、当該信号のレベルを検出する。判定部44は、受信検波部43での検出レベルと所定の基準値との比較結果に基づいて異常を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TDMA(Time Division Multiple Access)方式により無線通信を行う通信装置であって、特に折り返し試験機能を有する通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信を行う通信装置において、送信回路から受信回路に入力された信号を復調することにより、送信回路及び受信回路の基本特性に異常がないかを調べる折り返し試験を行うものがある。特許文献1には、折り返し試験を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−152461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような折り返し試験を、送信期間と受信期間とが繰返し現れるTDMA方式の無線通信を行う通信装置においても適用することが提案されている。このTDMA方式の無線通信においては送信スロットと受信スロットとが時間的に分かれていること、そして、特に移動局等の受信端末では端末の小型化・コスト低減が求められていることから、一つの通信装置に一つのDSP(Digital Signal Processor)が用いられることが多い。しかし、一つのDSPでは変調と復調とを同時に行うことができないため、一つのDSPを有するTDMA方式の通信装置においては、折り返し試験を実施することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、一つのDSPなどの変復調部を有するTDMA方式の通信装置において、折り返し試験を実施することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る通信装置は、送信期間と受信期間とが繰返し現れるTDMA(Time Division Multiple Access)方式により無線通信を行う通信装置であって、送信のための所定の信号処理を行う送信部と、受信のための所定の信号処理を行う受信部と、送信部及び受信部に接続されこれらに共用される変復調部とを備える。そして、送信部の出力と受信部の入力とを接続可能なスイッチと、送信部からスイッチを介して受信部に入力され当該受信部から出力される信号を検波し、当該信号のレベルを検出する第1検波部とを備える。そして、第1検波部での検出レベルと所定の基準値との第1比較結果に基づいて異常を判定する判定部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、折り返し試験の際に、変復調部が信号を復調しなくても、判定部において異常を検出することができる。したがって、変復調部、例えば、DSPの数が一つであっても、折り返し試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】対比対象通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る通信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る通信装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態2に係る通信装置の構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態2に係る通信装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態2に係る通信装置の動作結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施の形態1>
まず、本発明に係る通信装置について説明する前に、それと対比される通信装置(以下、「対比対象通信装置」と呼ぶ)について説明する。図1は、対比対象通信装置の構成を示すブロック図である。対比対象通信装置は、D/A変換器2と、アンテナスイッチ8と、アンテナ9と、スイッチ10と、A/D変換器16と、減衰器18(アッテネータ)と、破線で示される送信回路41と、破線で示される受信回路42と、変調部81と、復調部82とを備える。
【0010】
この対比対象通信装置は、通信相手装置に対して送信信号を送信する期間(送信スロット)と、通信相手装置からの受信信号を受信する期間(受信スロット)とが繰り返されるTDMA(Time Division Multiple Access)方式の無線通信を行う。そして、この対比対象通信装置は、変調部81から送信回路41を通過させてアンテナ9の手前で折り返した信号を、受信回路42を通過させて復調部82において復調することにより、送信回路41及び受信回路42の異常を検出する折り返し試験を行うことが可能となっている。以下、このような対比対象通信装置の構成について簡単に説明する。
【0011】
変調部81は、送信しようとするデータに基づいて搬送波(キャリア)を変調することによりデジタル信号を生成し、生成したデジタル信号をD/A変換器2に出力する。本実施の形態では、I成分及びQ成分のそれぞれについてデジタル信号が生成される。D/A変換器2は、変調部81からのデジタル信号をアナログ信号に変換し、送信回路41に出力する。
【0012】
送信回路41は、送信のための所定の信号処理を行う送信部であり、直交変調器3と、送信IF増幅器4と、混合器5と、送信局部発振器6と、送信RF増幅器7とを備える。本実施の形態に係る送信回路41は、送信のための所定の信号処理を、D/A変換器2からのアナログ信号に行い、それによって得られたアナログ信号をアンテナスイッチ8及び減衰器18に出力する。
【0013】
受信回路42は、受信のための所定の信号処理を行う受信部であり、受信RF増幅器11と、混合器12と、受信局部発振器13と、受信IF増幅器14と、バンドパスフィルタ15とを備える。本実施の形態に係る受信回路42は、受信のための所定の信号処理を、自身に入力されたアナログ信号に行い、それによって得られたアナログ信号をA/D変換器16に出力する。
【0014】
A/D変換器16は、受信回路42からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、復調部82に出力する。復調部82は、A/D変換器16からのデジタル信号を復調することにより、当該デジタル信号に含まれるデータを取得する。
【0015】
アンテナスイッチ8は、アンテナ9に対して、送信回路41及びスイッチ10のいずれか一方を選択的に接続する。スイッチ10は、受信RF増幅器11に対して、アンテナスイッチ8及び減衰器18のいずれか一方を選択的に接続する。減衰器18は、送信回路41の送信RF増幅器7と接続されているため、スイッチ10は、実質的に、送信回路41の出力と受信回路42の入力とを接続可能となっている。
【0016】
次に、以上の構成からなる対比対象通信装置が、通信相手装置とTDMA方式の無線通信を行う際の動作について説明する。この場合には、スイッチ10により、アンテナスイッチ8と受信RF増幅器11との間が継続的に接続される。そして、アンテナスイッチ8により、アンテナ9と送信回路41との間の接続、及び、アンテナ9とスイッチ10との間の接続が交互に行われる。以上のようなアンテナスイッチ8及びスイッチ10の接続により、アンテナ9と送信回路41との間の接続、及び、アンテナ9と受信回路42との間の接続が繰り返して行われることになる。
【0017】
送信回路41とアンテナ9との間が接続された場合には、送信回路41はアンテナ9を介して送信信号を通信相手装置に送信する。一方、受信回路42とアンテナ9との間が接続された場合には、受信回路42はアンテナ9を介して通信相手装置からの受信信号を受信する。アンテナ9と送信回路41との間が接続されない期間、及び、アンテナ9と受信回路42との間が接続されない期間はいずれも非常に短いことから、対比対象通信装置と通信相手装置との間では、双方向の同時通信を擬似的に行うことができる。
【0018】
次に、対比対象通信装置が、折り返し試験を行う際の動作について説明する。この場合には、スイッチ10により、減衰器18と受信RF増幅器11との間が継続的に接続される。そして、送信回路41の出力信号が、受信回路42内で使用可能な中間周波信号に変換されるように、受信局部発振器13の周波数が切替えられる。
【0019】
以上の動作が行われると、送信回路41の出力信号は、減衰器18によりその振幅が減衰された状態で、スイッチ10を介して受信回路42に入力される。これにより、変調部81からD/A変換器2を介して送信回路41に入力され当該送信回路から出力される信号が、折り返されて、減衰器18、スイッチ10、受信回路42及びA/D変換器16を介して復調部82に入力されることになる。この場合に復調部82で復調される折り返しの信号は、送信回路41及び受信回路42の異常の有無に応じて変化することから、対比対象通信装置では、復調部82で復調される折り返しの信号に基づいて、送信回路41及び受信回路42の異常を検出することができる。
【0020】
さて、対比対象通信装置において折り返し試験を行うためには、変調及び復調が同時に行われる必要がある。しかし、一つのDSP(Digital Signal Processor)では変調及び復調を同時に行うことができないことから、対比対象通信装置においては、変調及び復調のそれぞれに対してDSPを設ける必要があった。その結果、対比対象通信装置では、小型化及びコスト低減が困難なものとなっていた。
【0021】
そこで、本実施の形態では、一つのDSPを有する通信装置であり、そのような通信装置であっても折り返し試験を行うことが可能となっている。以下、本実施の形態に係る通信装置の構成について詳細に説明する。
【0022】
図2は、本実施の形態に係る通信装置の構成を示すブロック図である。なお、以下の本実施の形態に係る通信装置の説明において、対比対象通信装置と共通する部分については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。本実施の形態に係る通信装置の構成は、対比通信装置の構成において、変調部81及び復調部82をDSP1に置き換え、受信検波部43と、判定部44と、周波数変更部51とを加えたものとなっている。
【0023】
DSP1は、送信回路41及び受信回路42に接続されこれらに共用される変復調部であり、データに基づいて搬送波を変調することによりデジタル信号を生成する変調部21を機能的に有するとともに、自身に入力されたデジタル信号を復調することによりそれに含まれるデータを取得する復調部22を機能的に有する。つまり、DSP1は、機能ブロックとして、上述の変調部81及び復調部82とそれぞれ同じ変調部21及び復調部22を有している。ただし、変調部21及び復調部22は同時に動作できないものとなっている。本実施の形態に係る通信装置では、このような変調部21及び復調部22を有するDSP1が一つ設けられている。
【0024】
D/A変換器2は、DSP1の変調部21からのデジタル信号をアナログ信号に変換して直交変調器3に出力する。A/D変換器16は、バンドパスフィルタ15からのアナログ信号をデジタル信号に変換してDSP1の復調部22に出力する。
【0025】
本実施の形態に係る送信回路41は、対比対象通信装置の送信回路41と同様に、直交変調器3から送信RF増幅器7までの各構成要素を備えており、D/A変換器2からの出力信号に送信のための所定の信号処理を行い、それによって得られた信号をアンテナスイッチ8及び減衰器18に出力する。以下、このような送信回路41の各構成要素について説明する。
【0026】
直交変調器3は、D/A変換器2から出力されたI成分及びQ成分のアナログ信号を直交変調して中間周波信号を生成し、当該中間周波信号を送信IF増幅器4に出力する。送信IF増幅器4は、直交変調器3からの中間周波信号を増幅して混合器5に出力する。
【0027】
混合器5及び送信局部発振器6は、送信IF増幅器4から出力される中間周波信号の周波数を、より高い周波数帯域(搬送帯域)に変換する周波数変換部として機能する。具体的には、混合器5は、送信IF増幅器4からの中間周波信号と、送信局部発振器6からの信号(以下、「送信局部発振信号」と呼ぶ)とを乗算し、それによって得られた信号を出力する。そして、バンドパスフィルタ(図示しない)が、混合器5からの出力信号に対して所定のフィルタリング処理を行うことによって、当該出力信号から不要な信号を除去し、搬送帯域を有する信号を取り出す。そして、バンドパスフィルタは、取り出した当該信号を送信RF増幅器7に出力する。送信RF増幅器7は、バンドパスフィルタからの出力信号を増幅し、増幅された当該出力信号を送信回路41の出力信号として、アンテナスイッチ8及び減衰器18に出力する。
【0028】
本実施の形態に係る受信回路42は、対比対象通信装置の受信回路42と同様に、受信RF増幅器11からバンドパスフィルタ15までの各構成要素を備えており、入力信号に受信のための所定の信号処理を行い、それによって得られた信号をA/D変換器16に出力する。以下、このような受信回路42の各構成要素について説明する。
【0029】
受信RF増幅器11は、受信回路42の入力信号として入力される信号を増幅し、増幅された当該信号を混合器12に出力する。混合器12及び受信局部発振器13は、受信RF増幅器11から出力される信号の周波数を、より低い周波数帯域(中間周波帯域)に変換する周波数変換部として機能する。具体的には、混合器12は、受信RF増幅器11からの出力信号と、受信局部発振器13からの信号(以下、「受信局部発振信号」と呼ぶ)とを乗算し、それによって得られた信号を受信IF増幅器14に出力する。
【0030】
受信IF増幅器14は、混合器12からの出力信号を増幅し、増幅された当該出力信号をバンドパスフィルタ15に出力する。バンドパスフィルタ15は、受信IF増幅器14からの出力信号に対して所定のフィルタリング処理を行うことによって、当該出力信号から不要な信号を除去し、中間周波信号を取り出す。つまり、バンドパスフィルタ15は、混合器12での乗算により得られた信号から、中間周波信号とすべき所望の信号を取り出す。そして、バンドパスフィルタ15は、取り出した当該中間周波信号をA/D変換器16及び検波回路23に出力する。
【0031】
次に、受信検波部43について説明する。この受信検波部43は、DSP1とは別に設けられており、送信回路41からスイッチ10を介して受信回路42に入力され当該受信回路42から出力される信号を検波し、当該信号のレベルを検出する。本実施の形態に係る受信検波部43は、検波回路23とレベル検出部24とを備える。
【0032】
検波回路23は、受信回路42のバンドパスフィルタ15からの信号に基づいて直流電圧を生成し、当該直流電圧をレベル検出部24に出力する。レベル検出部24は、検波回路23から出力された直流電圧から当該信号のレベルを検出し、そのレベルを判定部44に出力する。
【0033】
判定部44は、DSP1とは別に設けられており、レベル検出部24での検出レベル、つまり、受信検波部43での検出レベルと所定の基準値とを比較し、その比較結果(以下、「受信側比較結果」と呼ぶ)に基づいて異常を判定する。
【0034】
周波数変更部51は、折り返し試験が行われる際に起動され、送信局部発振器6からの送信局部発振信号、及び、受信局部発振器13からの受信局部発振信号の少なくともいずれか一方の周波数を変更する。本実施の形態では、周波数変更部51は、受信局部発振信号の周波数を変更するものとして説明するが、受信局部発振信号の周波数を変更する代わりに送信局部発振信号の周波数を変更してもよいし、受信局部発振信号及び送信局部発振信号の両方の周波数を変更してもよい。
【0035】
次に、以上の構成からなる本実施の形態に係る通信装置の動作について説明する。なお、本実施の形態に係る通信装置が、通信相手装置とTDMA方式の無線通信を行う際の動作は、対比対象通信装置と同様であるため、その動作の説明は省略する。
【0036】
図3は、本実施の形態に係る通信装置において、折り返し試験を行う動作を示すフローチャートである。以下、本実施の形態に係る通信装置が折り返し試験を行う動作を、図3を用いて説明する。まず、ステップs1にて、アンテナスイッチ8と受信RF増幅器11との間の接続が遮断され、かつ、減衰器18と受信RF増幅器11との間の遮断が接続されるように、スイッチ10が切替えられる。ステップs2にて、送信回路41の出力信号が受信回路42内で使用可能な中間周波信号に変換されるように、周波数変更部51は、受信局部発振器13を制御して受信局部発振信号の周波数を変更する。本実施の形態では、周波数変更部51は、送信局部発振器6の送信局部発振信号の周波数と、受信局部発振器13の受信局部発振信号の周波数とが一致するように、受信局部発振信号の周波数を変更する。
【0037】
ステップs3にて、受信検波部43は、送信回路41からスイッチ10を介して受信回路42に入力され当該受信回路42から出力される信号を検波し、検波した信号のレベルを検出する。そして、判定部44は、受信検波部43での検出レベルと所定の基準値とを比較し、その比較結果たる受信側比較結果に基づいて異常を判定する。例えば、受信検波部43での検出レベルが基準の範囲内にない場合には、判定部44は、ステップs4に進み、送信回路41及び受信回路42の少なくとも一方が異常であると判定し、その旨を外部に通知する。一方、受信検波部43での検出レベルが基準の範囲内にある場合には、判定部44は、ステップs5に進み、送信回路41及び受信回路42が正常であると判定する。
【0038】
ステップs5にて、周波数変更部51は、送信局部発振信号の周波数と、受信局部発振信号の周波数とが互いに一致していた状態から、それら周波数が互いに近接する状態となるように、受信局部発振信号の周波数を少しだけ変更する。本実施の形態では、このステップ5にて、周波数変更部51は、受信局部発振信号の周波数が送信局部発振信号の周波数から1チャネルだけずれるように、受信局部発振信号の周波数を変更する。
【0039】
ステップs6にて、判定部44は、送信回路41からスイッチ10を介して受信回路42に入力され当該受信回路42から出力される信号を検波し、当該信号のレベルを検出する。そして、判定部44は、隣接チャネルの減衰量として、送信局部発振信号の周波数及び受信局部発振信号の周波数が互いに一致された際の受信検波部43での検出レベルと、送信局部発振信号の周波数及び受信局部発振信号の周波数が互いに近接された際の受信検波部43での受信レベルの比を求める。つまり、判定部44は、隣接チャネルの減衰量として、ステップs3での検波レベルと、本ステップs6での検波レベルとの比を求める。そして、判定部44は、当該減衰量と所定の基準値との比較結果に基づいてバンドパスフィルタ15の異常を判定する。
【0040】
例えば、バンドパスフィルタ15の減衰特性が良好であり、減衰量が基準の範囲内にある場合には、判定部44は、ステップs7に進み、バンドパスフィルタ15が正常であると判定する。一方、バンドパスフィルタ15の減衰特性が悪化し、減衰量が基準の範囲内にない場合には、判定部44は、ステップs8に進み、バンドパスフィルタ15が異常であると判定し、その旨を外部に通知する。
【0041】
以上のような本実施の形態に係る通信装置によれば、折り返し試験の際に、DSP1が信号を復調しなくても、判定部44において異常を検出することができる。したがって、通信装置に設けられたDSP1の数が一つであっても、折り返し試験を行うことができる。よって、通信装置を小型化することができる。
【0042】
また、本実施の形態に係る通信装置によれば、折り返し試験とほぼ同じ動作をすることにより、バンドパスフィルタ15の異常についても検出することができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、変復調部がDSP1であるものとして説明したが、これに限ったものではなく、DSP1以外の変調及び復調を同時に行うことができない装置を一つ用いる場合でも、同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態では、送信部(送信回路41)は、直交変調器3から送信RF増幅器7までの構成要素を備えるものとし、受信部(受信回路42)は、受信RF増幅器11からバンドパスフィルタ15までの構成要素を備えるものとした。しかしこれに限ったものではなく、送信部にD/A変換器2を含めてもよいし、受信部にA/D変換器16を含めてもよい。この場合、受信検波部43は、バンドパスフィルタ15からの出力信号ではなく、A/D変換器16からの出力信号を検波するようにすればよい。
【0044】
<実施の形態2>
図4は、本実施の形態に係る通信装置の構成を示すブロック図である。実施の形態1に係る通信装置では、折り返し試験において異常があった場合に、送信回路41と受信回路42のいずれに異常があるかを特定することができなかったが、本実施の形態に係る通信装置では、その特定が可能となっている。以下、このような本実施の形態に係る通信装置について説明する。なお、以下の本実施の形態に係る通信装置の説明において、実施の形態1に係る通信装置と共通する部分については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。
【0045】
本実施の形態に係る通信装置においては、実施の形態1の通信装置に、検波回路26とレベル検出部27とを備える送信検波部45が加わったものとなっている。検波回路26は、送信回路41からスイッチ10に入力される信号に基づいて直流電圧を生成し、当該直流電圧をレベル検出部27に出力する。レベル検出部27は、検波回路26から出力された直流電圧から当該信号のレベルを検出し、そのレベルを判定部44に出力する。したがって、送信検波部45は、送信回路41からスイッチ10に入力される信号を検波し、当該信号のレベルを検出する。
【0046】
判定部44は、レベル検出部27での検出レベル、つまり、送信検波部45での検出レベルと所定の基準値とを比較し、その比較結果(以下、「送信側比較結果」と呼ぶ)と、実施の形態1で説明された受信側比較結果とに基づいて送信回路41及び受信回路42のいずれに異常があるかを判定する。
【0047】
次に、以上の構成からなる本実施の形態に係る通信装置の動作について説明する。なお、本実施の形態に係る通信装置が、通信相手装置とTDMA方式の無線通信を行う際の動作は、対比対象通信装置と同様であるため、その動作の説明は省略する。
【0048】
図5は、本実施の形態に係る通信装置において、折り返し試験を行う動作を示すフローチャートである。以下、本実施の形態に係る通信装置が折り返し試験を行う動作を、図5を用いて説明する。なお、図5に示されるフローチャートは、図3に示されるフローチャートにおいて、ステップs4をステップs11〜s13に置き換えたものであり、それ以外において両者は互いに同一である。そこで、以下の説明では、ステップs11〜s13についてのみ説明する。
【0049】
ステップs3の受信側比較結果において、受信検波部43での検出レベルが基準の範囲内にない場合、判定部44は、ステップs11に進み、送信検波部45での検出レベルと所定の基準値とを比較し、その比較結果たる送信側比較結果に基づいて送信回路41及び受信回路42のいずれに異常があるかを判定する。例えば、送信検波部45での検出レベルが基準の範囲内にある場合には、判定部44は、ステップs12に進み、受信回路42が異常であると判定し、その旨を表示部に表示する。一方、送信検波部45での検出レベルが基準の範囲内にない場合には、判定部44は、ステップs13に進み、送信回路41が異常であると判定し、その旨を表示部に表示する。
【0050】
図6に、本実施の形態に係る通信装置が図5に示されるフローチャートに沿って動作したときの動作結果をまとめた表を示す。
【0051】
以上のような本実施の形態に係る通信装置によれば、送信回路41及び受信回路42のいずれに異常があるかを検出することができるため、例えば、通信装置を修理する際に、異常部位の特定が容易になる。
【0052】
なお、図5に示されるフローは、送信回路41及び受信回路42の両方に異常がある場合に、ステップs13にて送信回路41の異常は検出されるが、同ステップs13においては受信回路42の異常が検出されないものとなっている。したがって、ステップs13の動作が行われた場合には、判定部44は、再度ステップs3を行って、受信回路42に異常があるかを検出することが望ましい。
【符号の説明】
【0053】
1 DSP、5,12 混合器、10 スイッチ、15 バンドパスフィルタ、41 送信回路、42 受信回路、43 受信検波部、44 判定部、45 送信検波部、51 周波数変更部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信期間と受信期間とが繰返し現れるTDMA(Time Division Multiple Access)方式により無線通信を行う通信装置であって、
送信のための所定の信号処理を行う送信部と、
受信のための所定の信号処理を行う受信部と、
前記送信部及び前記受信部に接続されこれらに共用される変復調部と、
前記送信部の出力と前記受信部の入力とを接続可能なスイッチと、
前記送信部から前記スイッチを介して前記受信部に入力され当該受信部から出力される信号を検波し、当該信号のレベルを検出する第1検波部と、
前記第1検波部での検出レベルと所定の基準値との第1比較結果に基づいて異常を判定する判定部と
を備える通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記送信部から前記スイッチに入力される信号を検波し、当該信号のレベルを検出する第2検波部をさらに備え、
前記判定部は、
前記第2検波部での検出レベルと所定の基準値との第2比較結果と、前記第1比較結果とに基づいて、前記送信部及び前記受信部のいずれに異常があるかを判定する、通信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の通信装置であって、
前記送信部は、
前記送信部に入力された信号に第1信号を乗算する第1混合器を備え、
前記受信部は、
前記受信部に入力された信号に第2信号を乗算する第2混合器と、
前記第2混合器で乗算された信号から所望の信号を取り出すフィルタとを備え、
前記第1信号の周波数と前記第2信号の周波数とが互いに近接するように、前記第1及び第2信号の少なくともいずれか一方の周波数を変更する周波数変更部をさらに備え、
前記判定部は、
前記第1信号の周波数及び前記第2信号の周波数が互いに一致された際の前記第1検波部での検出レベルと、前記第1信号の周波数及び前記第2信号の周波数が互いに近接された際の前記第1検波部での検出レベルとの比と、所定の基準値との比較結果に基づいて前記フィルタの異常を検出する、通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−229042(P2011−229042A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98455(P2010−98455)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】