説明

通信装置

【課題】 非接触通信と無線通信との両方の機能を具備した装置同士で通信を行う際、データ送信完了までに要する時間を更に短縮する。
【解決手段】 通信相手と第1の接続処理を行ってから通信相手と認証処理を行う第1の無線通信部(11)と、第1の無線通信部より通信速度が速く、第1の接続処理後、認証処理が完了する前に通信相手と第2の接続処理を行い、第2の接続処理が完了したときに、認証処理が完了していない場合はデータに暗号鍵を用いて暗号化した暗号化データを送信し、認証処理が完了している場合は、暗号化していないデータを送信する第2無線通信部(13)とを備える通信装置(1)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、非接触通信と無線通信との両方の機能を備えた通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触通信と無線通信との両方の機能を具備した装置同士で通信を行う際、非接触通信では認証を行い、無線通信ではデータ送信を行う方法が知られている。この方法では、非接触通信のスループットよりも無線通信のスループットが早い場合に、非接触通信だけを使ってデータを送信するよりも短時間でデータを送信できるという効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−218845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、データ送信時間を短縮化することは上述の技術分野において常に追及すべき事柄である。従って、非接触通信と無線通信との両方の機能を具備した装置同士で通信を行う際、データ送信完了までに要する時間を更に短縮したいとのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための実施形態によれば、通信相手と第1の接続処理を行ってから前記通信相手と認証処理を行う第1の無線通信部と、前記第1の無線通信部より通信速度が速く、前記第1の接続処理後、前記認証処理が完了する前に前記通信相手と第2の接続処理を行い、前記第2の接続処理が完了したときに、前記認証処理が完了していない場合はデータに暗号鍵を用いて暗号化した暗号化データを送信し、前記認証処理が完了している場合は、暗号化していない前記データを送信する第2無線通信部とを備える通信装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態にかかわる通信装置の構成を示す図。
【図2】第1の実施形態にかかわる通信装置と通信する通信相手装置の構成を示す図。
【図3】第1の実施形態の通信装置の概略の動作手順を示すフロー図。
【図4】第1の実施形態にかかわる通信装置と通信する通信相手装置の概略の動作手順を示すフロー図。
【図5】非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも長い場合における、従来例での処理時間を示す図。
【図6】非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも長い場合における、第1の実施形態での処理時間を示す図。
【図7】非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも短い場合における、従来例での処理時間を示す図。
【図8】非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも短い場合における、第1の実施形態での処理時間を示す図。
【図9】第2の実施形態にかかわる通信装置の構成を示す図。
【図10】第2の実施形態にかかわる通信装置と通信する通信相手装置の構成を示す図。
【図11】第2の実施形態の通信装置の概略の動作手順を示すフロー図。
【図12】通信相手装置の概略の動作手順を示すフロー図。
【図13】非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも長い場合における、第2の実施形態での処理時間を示す図。
【図14】非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも短い場合における、第2の実施形態での処理時間を示す図。
【図15】実施形態での通信装置のアンテナの第1の配置を示す模式図。
【図16】実施形態での通信装置のアンテナの第2の配置を示す模式図。
【図17】実施形態での通信装置のアンテナの第3の配置を示す模式図。
【図18】実施形態での通信装置のアンテナの第4の配置を示す模式図。
【図19】第1の実施の形態の通信装置が複数の無線通信部を有する場合の構成を示す図。
【図20】第2の実施の形態の通信装置が複数の無線通信部を有する場合の構成を示す図。
【図21】実施形態での通信品質が良好な無線通信部を選択する第1の処理手順を示す図。
【図22】実施形態での通信品質が良好な無線通信部を選択する第2の処理手順を示す図。
【図23】第1の実施の形態の通信装置が複数の無線通信機能を有する場合のバリエーションの構成を示す図。
【図24】第2の実施の形態の通信装置が複数の無線通信機能を有する場合のバリエーションの構成を示す図。
【図25】第1の実施の形態の通信装置が複数の無線通信機能を有する場合の他のバリエーションの構成を示す図。
【図26】第2の実施の形態の通信装置が複数の無線通信機能を有する場合の他のバリエーションの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施形態にかかわる通信装置1の構成を示す図である。
通信装置1は、非接触通信部11、非接触通信用アンテナ12、無線通信部13、無線通信用アンテナ14、無線起動部15、データ出力部16、鍵出力部17、暗号化部18及び制御部19を備えている。
【0008】
非接触通信部11は、非接触通信で通信相手装置と接続して通信を実行する。無線通信部13は、無線通信で通信相手装置と接続して通信を実行する。無線起動部15は、非接触通信部11が通信相手装置と接続を完了した後に無線通信部13の動作を開始させる。
データ出力部16は、送信するデータを暗号化部18に出力する。鍵出力部17は、暗号化するための鍵を生成し、または取得して暗号化部18及び非接触通信部11に出力する。暗号化部18は、暗号化する指示が入力された場合には前記送信するデータを前記鍵で暗号化して出力し、暗号化しない指示が入力された場合には前記送信するデータを暗号化せずに出力する。制御部19は、通信装置1を構成する各ブロックを統括して制御する。また、制御部19は、非接触通信部11、無線通信部13と情報授受を行って暗号化するか否かを判定して暗号化部18に指示する。
【0009】
ここで、通信装置1に設けられている非接触通信機能と無線通信機能とは、共に無線で通信する点は同じである。両機能を比較すると、非接触通信は、データレート(通信速度)が小さく、通信可能距離が短い。一方、無線通信は、データレート(通信速度)が大きく、通信可能距離が長い。これらの結果として一般的には、非接触通信機能の方が無線通信機能と比べて消費電力が小さい場合が多い。
【0010】
図2は、第1の実施形態にかかわる通信装置1と通信する通信相手装置2の構成を示す図である。
通信相手装置2は、非接触通信部21、非接触通信用アンテナ22、無線通信部23、無線通信用アンテナ24、認証部25、鍵出力部26、復号化部27及び制御部28を備えている。
【0011】
非接触通信部21は、非接触通信で通信装置1と接続して通信を実行する。非接触通信部21は、通信装置1から送信される認証要求、鍵を受信する。無線通信部23は、無線通信で通信装置1と接続して通信を実行する。認証部25は、通信装置1を認証する。鍵出力部26は、非接触通信部21から鍵を取得し保存すると共に当該鍵を復号化部27に出力する。復号化部27は、鍵出力部26から鍵が与えられた場合には無線通信部23で受信した信号を復号化して出力し、鍵出力部26から鍵が与えられない場合には無線通信部23で受信した信号を復号化せずに出力する。なお、復号化部27から出力された信号は不図示の処理部によって処理される。制御部28は、通信相手装置2を構成する各ブロックを統括して制御する。
【0012】
図3は、第1の実施形態の通信装置1の概略の動作手順を示すフロー図である。
図3のフローチャートにおいて、2重線301と2重線302はそれぞれ並列処理の開始と終了を表している。すなわち2重線301と2重線302の間の2つのフローは並列して実行される。
【0013】
通信装置1に通信相手装置2が接近すると、ステップS01において、非接触通信部11は、非接触通信で通信相手装置2との接続を開始する。接続動作では、所定の規約に基づいて信号を授受し、通信接続を確立する。ステップS02において、通信装置1と通信相手装置2との間で非接触通信の接続が完了すると、次の処理に移行する。
【0014】
以降の処理では、非接触通信による認証処理と無線通信による通信相手装置21との接続処理とが並行して実行される。なお、図3の並列化されたフローでは、左の列は無線通信に関わる処理を、右の列は非接触通信に関わる処理を表している。
【0015】
ステップS03において、非接触通信部11は通信相手装置2に対して認証要求を送信し、応答を待機する。認証要求がなされた後、無線起動部15が無線通信部13を起動する。ステップS11において、無線通信部13は、無線通信で通信相手装置2との接続を開始する。接続動作では、所定の規約に基づいて信号を授受し、通信接続を確立する。ステップS12において、通信装置1と通信相手装置2との間で無線通信の接続が完了すると、ステップS13において、制御部19は認証が完了したかどうかを調べる。認証が完了した場合は、その情報は非接触通信部11から制御部19に入力される。
【0016】
認証が完了していた場合(ステップS13 Yes)は、制御部19は、暗号化部18に暗号化しない指示を出力する。暗号化部18は、データ出力部16から取得した送信するデータを暗号化せずに無線通信部13に出力する。そして、ステップS16の処理を実行する。
【0017】
認証が完了していなかった場合(ステップS13 No)は、制御部19は、暗号化部18に暗号化する指示を出力する。ステップS14において、暗号化部18は鍵出力部17から鍵を取得する。ステップS15において、暗号化部18はデータ出力部16から取得した送信するデータを鍵を使用して暗号化して無線通信部13に出力する。
【0018】
ステップS16において、無線通信部13は暗号化部18から取得したデータを無線通信により通信相手装置2に送信する。そしてステップS17において、送信完了後、制御部19は、無線通信を終了する。
【0019】
一方、ステップS04において、非接触通信によって通信相手装置2から認証完了が送信されたときは、ステップS05において、制御部19は暗号化部18が鍵を取得したかどうかを調べる。
【0020】
鍵の取得があった場合(ステップS05 Yes)は、暗号化されたデータが通信相手装置2に送信されている。そこでステップS06において、非接触通信部11が鍵を鍵出力部17から取得し、通信相手装置2に送信する。そして、制御部19は、非接触通信を終了する。
鍵の取得がなかった場合(ステップS05 No)は、暗号化されないデータが通信相手装置2に送信される。そして制御部19は、非接触通信を終了する。
【0021】
図4は、通信相手装置2の概略の動作手順を示すフロー図である。
図4のフローチャートにおいて、2重線301と2重線302はそれぞれ並列処理の開始と終了を表している。すなわち2重線301と2重線302の間の2つのフローは並列して実行される。
【0022】
通信装置1に通信相手装置2が接近すると、ステップT01において、非接触通信部21は、非接触通信で通信装置1との接続を開始する。接続動作では、所定の規約に基づいて信号を授受し、通信接続を確立する。ステップT02において、通信装置1と通信相手装置2との間で非接触通信の接続が完了すると、次の処理に移行する。
【0023】
以降の通信相手装置2の処理では、通信装置1と同様に非接触通信による認証処理と無線通信による通信相手装置21との接続処理とが並行して実行される。なお、図4の並列化されたフローでは、左の列は無線通信に関わる処理を、右の列は非接触通信に関わる処理を表している。
【0024】
ステップT03において、非接触通信部21が通信装置1が送信した認証要求を受信すると、制御部28は、認証部25に通信装置1の認証を実行させる。この動作と並行してステップT11において、無線通信部23は、無線通信で通信装置1との接続を開始する。接続動作では、所定の規約に基づいて信号を授受し、通信接続を確立する。ステップT12において、通信装置1と通信相手装置2との間で無線通信の接続が完了すると、ステップT13において、無線通信部23は無線通信によって通信装置1からデータを受信する。ステップT14において、データの受信を完了すると、制御部28は、無線通信を完了する。ステップT15において、制御部28は、非接触通信が完了するまで待機する。
【0025】
一方、ステップT04において、認証部25が認証を完了すると、ステップT05において、制御部28は通信装置1から鍵が送信されるのを待機する。
非接触通信部21が送信された鍵を受信すると(ステップT05 Yes)、ステップT06において、鍵出力部26は、受信した鍵を保存する。そして、ステップT07において、制御部28は、非接触通信を完了する。
所定時間待機しても非接触通信部21が鍵を受信しなかったとき(ステップT05 No)は、ステップT07において、制御部28は、非接触通信を完了する。
ステップT15において、制御部28は、非接触通信の完了を検知すると、ステップT16において、制御部28は鍵を受信したかどうかを調べる。
鍵を受信している場合(ステップT16 Yes)は、ステップT17において、復号化部27は、受信したデータを鍵出力部26が出力する鍵を使用して復号する。復号されたデータは、不図示の処理部で使用される。
鍵を受信していない場合(ステップT16 No)は、復号化部27は、受信したデータを不図示の処理に提供する。
【0026】
次に、第1の実施形態によってデータ送信完了までに要する時間を短縮化する態様を、図5乃至8を参照しつつ詳細に説明する。
なお、図5乃至8において横軸は時間を、縦軸は各処理を、バーは各処理の占有時間を表している。また斜線のバーは非接触通信に関わる処理を、横線のバーは無線通信にかかわる処理をそれぞれ表している。
【0027】
図5は、非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも長い場合における、従来例での処理時間を示す図である。図6は、非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも長い場合における、第1の実施形態での処理時間を示す図である。
【0028】
図5に示す従来例では、全ての処理が逐次的に実施され、データ完了までに時間701を要する。一方、図6に示す第1の実施形態の例では、非接触通信による認証と無線通信の接続を並列に実施することによりデータ送信を早く開始することができ、データ完了までにかかる時間を時間801にまで短くすることができる。なお、図6では図5にない処理として鍵の送信が追加されているが、認証処理がデータ送信よりも十分早く完了する場合においては、鍵の送信によってデータ送信完了までの時間801が時間701よりも長くなることはない。
【0029】
図7は、非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも短い場合における、従来例での処理時間を示す図である。図8は、非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも短い場合における、第1の実施形態での処理時間を示す図である。
【0030】
図7に示す従来例では、全ての処理が逐次的に実施され、データ完了までに時間1001を要する。一方、図8に示す第1の実施形態の例では、非接触通信による認証と無線通信の接続を並列に実施することによりデータ送信を早く開始することができ、データ完了までにかかる時間を時間1101にまで短くすることができる。
【0031】
図5乃至8から分かるように、第1の実施形態によれば、データ送信完了までに要する時間を、従来と比べて、認証にかかる時間に相当する時間だけ短くすることが可能となる。このことから、データ転送までにかかる時間に対して、認証にかかる時間の割合が高いほど、第1の実施形態による効果が高くなるといえる。
【0032】
以上説明した第1の実施の形態の通信装置では、認証処理とデータ送信処理とを並列処理させる。これによって認証が完了する前にデータ転送を開始することが可能となるので、データ転送完了までにかかる時間を短くすることができる。また認証前にデータ転送を開始する場合にはデータを暗号化するので、認証が済んでから転送を開始した場合と同等のセキュリティを実現できる。
【0033】
また、通信装置は、データを暗号化して送信した場合は、暗号化の際に用いた鍵を通信相手装置に送信する。通信相手装置では、送信された鍵を使って信号を復号化することができるため、データが暗号化されて送信されていた場合においてもデータを取得することが可能となる。
【0034】
また、通信装置は、データレートが小さいが、消費電力の少ない非接触通信を用いてまず通信の接続を行い、通信の接続が完了した後にデータレートの大きい無線通信を起動してデータの通信を実行させる。従って、必要なときにのみ無線通信を起動するため消費電力を抑えることができる。
【0035】
[第1の実施の形態のバリエーション]
第1の実施の形態は、以下に述べる種々のバリエーションで構成することができる。
【0036】
図3の通信装置1の動作フローにおいて、ステップS03で非接触通信での認証を開始したのち、認証に失敗した場合には、その時点で並列している処理をすべて停止してもよい。例えばデータ転送中であれば、転送を中断してもよい。
また通信相手装置2においては、図4のステップT03で認証に失敗した場合には、その時点で並列している処理をすべて停止してもよい。データが部分的に受信されている場合にはそれを破棄してもよい。
【0037】
図3の通信装置1の動作フローにおいて、ステップS16でデータを暗号化して送信している途中で認証が完了した場合には、それ以降のデータを暗号化せずに送信してもよい。その際には、送信するデータが暗号化しているか否かを表す情報をパケットに搭載しても良い。
【0038】
通信装置1において、送信するデータの暗号化をあらかじめ実施しておき、暗号化されたデータを記憶領域に保持していてもよい。その場合、暗号化部18は、暗号化をするかしないかの指示に従って、前記記憶領域より、暗号化されたデータと暗号化されていないデータを選択して読み出せばよい。なお、暗号化されたデータを記憶領域に保持する場合には、一定の周期で鍵を更新して暗号化をしなおしてもよい。鍵を更新することによってセキュリティを高めることができる。
【0039】
通信装置1を設計する際には、通信装置1が用いられる状況に応じて、通信装置1を構成してもよい。例えば、図3に示す通信装置1の並列化されたフローで、無線通信の接続が完了するタイミングが、非接触通信での認証完了と比べて早い可能性が高い場合には、認証完了の判定をせずに常に鍵を取得する動作をしてもよい。あるいは、あらかじめ暗号化したデータを記憶領域に保持し、暗号化部を具備しなくてもよい。
【0040】
また、図3の通信装置1の動作フローにおいて、ステップS02で非接触通信での接続が完了したあと、並列処理のフローを実行する前に、無線通信の接続にかかわる情報を非接触通信で通知してもよい。無線通信の接続に関わる情報とは、たとえば無線通信部の固有情報や、後述するように無線通信部が複数あった場合のその個数の情報などがあげられる。
【0041】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、無線通信を用いて暗号化の鍵を送信する点が第1の実施の形態と異なっている。第1の実施の形態と同一の部位には同一の符号を付してその詳細の説明は省略する。
【0042】
図9は、第2の実施形態にかかわる通信装置1の構成を示す図である。
通信装置1の構成は、第1の実施の形態の構成に比べ、鍵出力部17の接続先が異なっている。
【0043】
鍵出力部17は、暗号化するための鍵を生成し、または取得して暗号化部18及び無線通信部13に出力する。無線通信部13は、無線通信によって鍵を通信相手装置2に送信する。即ち、無線通信部13は、暗号化部18から暗号化する指示があった場合には認証が完了したあとで鍵を通信相手装置2に送信する。
【0044】
図10は、第2の実施形態にかかわる通信装置1と通信する通信相手装置2の構成を示す図である。
通信相手装置2の構成は、第1の実施の形態の構成に比べ、鍵出力部17の接続元が異なっている。
【0045】
無線通信部23は、通信装置1から送信される鍵を受信する。鍵出力部26は、無線通信部23から鍵を取得し保存すると共に当該鍵を復号化部27に出力する。復号化部27は、鍵出力部26から鍵が与えられた場合には無線通信部23で受信した信号を復号化して出力し、鍵出力部26から鍵が与えられない場合には無線通信部23で受信した信号を復号化せずに出力する。
【0046】
図11は、第2の実施形態の通信装置1の概略の動作手順を示すフロー図である。
図11のフローチャートにおいて、2重線301と2重線302はそれぞれ並列処理の開始と終了を表している。すなわち2重線301と2重線302の間の2つのフローは並列して実行される。
【0047】
通信装置1に通信相手装置2が接近すると、ステップS21において、非接触通信部11は、非接触通信で通信相手装置2との接続を開始する。接続動作では、所定の規約に基づいて信号を授受し、通信接続を確立する。ステップS22において、通信装置1と通信相手装置2との間で非接触通信の接続が完了すると、次の処理に移行する。
【0048】
以降の処理では、上述の通り、非接触通信による認証処理と無線通信による通信相手装置21との接続処理が並行して実行される。なお、図11の並列化されたフローでは、左の列は無線通信に関わる処理を、右の列は非接触通信に関わる処理を表している。
【0049】
ステップS23において、非接触通信部11は通信相手装置2に対して認証要求を送信し、応答を待機する。そして、ステップS24において、非接触通信によって通信相手装置2から認証完了が送信されたときは、制御部19は、非接触通信を終了する。
【0050】
認証要求がなされた後、無線起動部15が無線通信部13を起動する。ステップS31において、無線通信部13は、無線通信で通信相手装置2との接続を開始する。接続動作では、所定の規約に基づいて信号を授受し、通信接続を確立する。ステップS32において、通信装置1と通信相手装置2との間で無線通信の接続が完了すると、ステップS33において、制御部19は認証が完了したかどうかを調べる。認証が完了した場合は、その情報は非接触通信部11から制御部19に入力される。
【0051】
認証が完了していた場合(ステップS33 Yes)は、制御部19は、暗号化部18に暗号化しない指示を出力する。暗号化部18は、データ出力部16から取得した送信するデータを暗号化せずに無線通信部13に出力する。そして、ステップS36の処理を実行する。
【0052】
認証が完了していなかった場合(ステップS33 No)は、制御部19は、暗号化部18に暗号化する指示を出力する。ステップS34において、暗号化部18は鍵出力部17から鍵を取得する。ステップS35において、暗号化部18はデータ出力部16から取得した送信するデータを鍵を使用して暗号化して無線通信部13に出力する。
【0053】
ステップS36において、無線通信部13は暗号化部18から取得したデータを無線通信により通信相手装置2に送信する。そしてステップS37において、データの送信を完了する。
【0054】
ステップS38において、制御部19は、データ送信後、鍵の取得があったか否かを確認する。鍵の取得がなかった場合(ステップS38 No)には、制御部19は無線通信を終了する。
鍵の取得があった場合(ステップS38 Yes)には、ステップS39において制御部19は認証の完了を待機する。認証の完了後に、ステップS40において、無線通信部13は、鍵を無線通信で伝送する。そして制御部19は、無線通信を終了する。
【0055】
図12は、通信相手装置2の概略の動作手順を示すフロー図である。
図12のフローチャートにおいて、2重線301と2重線302はそれぞれ並列処理の開始と終了を表している。すなわち2重線301と2重線302の間の2つのフローは並列して実行される。
【0056】
通信装置1に通信相手装置2が接近すると、ステップT21において、非接触通信部21は、非接触通信で通信装置1との接続を開始する。接続動作では、所定の規約に基づいて信号を授受し、通信接続を確立する。ステップT22において、通信装置1と通信相手装置2との間で非接触通信の接続が完了すると、次の処理に移行する。
【0057】
以降の通信相手装置2の処理では、通信装置1と同様に非接触通信による認証処理と無線通信による通信相手装置21との接続処理とが並行して実行される。なお、図12の並列化されたフローでは、左の列は無線通信に関わる処理を、右の列は非接触通信に関わる処理を表している。
【0058】
ステップT23において、非接触通信部21が通信装置1が送信した認証要求を受信すると、制御部28は、認証部25に通信装置1の認証を実行させる。そして、ステップT24において、認証部25が認証を完了すると、制御部28は非接触通信を完了する。
【0059】
この動作と並行してステップT31において、無線通信部23は、無線通信で通信装置1との接続を開始する。接続動作では、所定の規約に基づいて信号を授受し、通信接続を確立する。ステップT32において、通信装置1と通信相手装置2との間で無線通信の接続が完了すると、ステップT33において、無線通信部23は無線通信によって通信装置1からデータを受信する。ステップT34において、データの受信を完了すると、ステップT35において、鍵の送信を待機する。
【0060】
無線通信部23が送信された鍵を受信すると(ステップT35 Yes)、ステップT36において、鍵出力部26は、受信した鍵を復号化部27に出力する。ステップT37において、復号化部27は、受信したデータを鍵出力部26が出力する鍵を使用して復号する。復号されたデータは、不図示の処理で使用される。そして、制御部28は、非接触通信を完了する。
所定時間待機しても非接触通信部21が鍵を受信しなかったとき(ステップT35 No)は、復号化部27は受信したデータを不図示の処理部に提供する。そして、制御部28は、無線通信を終了する。
次に、第2の実施形態によってデータ送信完了までに要する時間を短縮化する態様を、図5、7、13、14を参照しつつ詳細に説明する。
なお、図5、7、13、14において横軸は時間を、縦軸は各処理を、バーは各処理の占有時間を表している。また斜線のバーは非接触通信に関わる処理を、横線のバーは無線通信にかかわる処理をそれぞれ表している。
【0061】
図5は、非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも長い場合における、従来例での処理時間を示す図である。図5は第1の実施の形態において説明しているため、再度の説明は省略する。図13は、非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも長い場合における、第2の実施形態での処理時間を示す図である。
【0062】
図5に示す従来例では、全ての処理が逐次的に実施され、データ完了までに時間701を要する。一方、図13に示す第2の実施形態の例では、非接触通信による認証と無線通信の接続を並列に実施することによりデータ送信を早く開始することができ、データ完了までにかかる時間を時間901にまで短くすることができる。なお、図13では図5にない処理として鍵の送信が追加されており、これがデータ送信と逐次処理されているため、鍵の送信の分だけ処理完了までにかかる時間が長くなっている。しかしながら一般的には、認証にかかる時間とくらべて鍵の送信にかかる時間は十分に短いため、時間901が時間701よりも長くなることはない。
【0063】
図7は、非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも短い場合における、従来例での処理時間を示す図である。図7は第1の実施の形態において説明しているため、再度の説明は省略する。図14は、非接触通信による認証にかかる時間が、無線通信の接続にかかる時間よりも短い場合における、第2の実施形態での処理時間を示す図である。
【0064】
図7に示す従来例では、全ての処理が逐次的に実施され、データ完了までに時間1001を要する。一方、図14に示す第2の実施形態の例では、非接触通信による認証と無線通信の接続を並列に実施することによりデータ送信を早く開始することができ、データ完了までにかかる時間を時間1101にまで短くすることができる。
【0065】
図5、7、13、14から分かるように、第2の実施形態によれば、データ送信完了までにかかる時間を、従来と比べて、認証にかかる時間から鍵送信にかかる時間を減じた分に相当する時間だけ短くすることが可能となる。このことから、鍵送信にかかる時間が認証にかかる時間よりも短い場合には、第2の実施形態によりデータ送信完了までにかかる時間を短くすることができる。
【0066】
以上説明した第2の実施の形態の通信装置では、第1の実施の形態の通信装置の効果に加え、鍵に関わる処理をすべて無線通信で実施することができるので、非接触通信部を簡易にできるという効果が得られる。
【0067】
[第2の実施の形態のバリエーション]
第2の実施の形態は、以下に述べる種々のバリエーションで構成することができる。
【0068】
図11の通信装置1の動作フローにおいて、ステップS23で非接触通信での認証を開始したのち、認証に失敗した場合には、その時点で並列している処理をすべて停止してもよい。例えばデータ転送中であれば、転送を中断してもよい。
また通信相手装置2においては、図12のステップT23で認証に失敗した場合には、その時点で並列している処理をすべて停止してもよい。データが部分的に受信されている場合にはそれを破棄してもよい。
【0069】
図11の通信装置1の動作フローにおいて、ステップS16でデータを暗号化して送信している途中で認証が完了した場合には、それ以降のデータを暗号化せずに送信してもよい。その際には、送信するデータが暗号化しているか否かを表す情報をパケットに搭載しても良い。
【0070】
通信装置1において、送信するデータの暗号化をあらかじめ実施しておき、暗号化されたデータを記憶領域に保持していてもよい。その場合、暗号化部18は、暗号化をするかしないかの指示に従って、記憶領域より、暗号化されたデータと暗号化されていないデータを選択して読み出せばよい。なお、暗号化されたデータを記憶領域に保持する場合には、一定の周期で鍵を更新して暗号化をしなおしてもよい。鍵を更新することによってセキュリティを高めることができる。
【0071】
通信装置1の設計においては、通信装置1が用いられる状況に応じて、通信装置1を構成してもよい。例えば、図11に示す通信装置1の並列化されたフローで、無線通信の接続が完了するタイミングが、非接触通信での認証完了と比べて早い可能性が高い場合には、認証完了の判定をせずに常に鍵を取得する動作をしてもよい。あるいは、あらかじめ暗号化したデータを記憶領域に保持し、暗号化部を具備しなくてもよい。
【0072】
また、図11の通信装置1の動作フローにおいて、ステップS22で非接触通信での接続が完了したあと、並列処理のフローを実行する前に、無線通信の接続にかかわる情報を非接触通信で通知してもよい。無線通信の接続に関わる情報とは、たとえば無線通信部の固有情報や、後述するように無線通信部が複数あった場合のその個数の情報などがあげられる。
【0073】
次に、上述の各実施の形態の通信装置1及び通信相手装置2、すなわち非接触通信と無線通信の両方を具備する通信装置1及び通信相手装置2におけるそれぞれのアンテナの配置について説明する。
【0074】
第1の実施形態及び第2の実施形態のように、非接触通信と無線通信の両方を具備する2つの装置間で、非接触通信と無線通信を同時に行うことを考えた場合、2つの装置で非接触通信と無線通信のアンテナがそれぞれ向き合うように設置された場合に、非接触通信と無線通信の両方の通信品質を同時に良好にしやすくなる。しかしながらアンテナが装置に固定された場合には、2つの装置を対向させる向きによっては、必ずしも2つの通信品質が同時に良好になるとは限らない。
【0075】
第1の実施形態および第2の実施形態の動作手順で説明したように、いずれの実施形態においても非接触通信の接続開始により処理が開始する。従って、処理開始の段階では非接触通信の通信品質はよい状態にあると考えられる。
【0076】
図15は、通信装置1のアンテナの第1の配置を示す模式図である。図15(1)は、通信装置1の平面図を表し、図15(2)は通信装置1の断面図を表している。
図15(1)に示すように、非接触通信のアンテナ003はコイル状の形状である。無線通信のアンテナ004は非接触通信のアンテナ003の内部に設けられている。非接触通信の通信可能領域は、図15(2)の領域005で表される領域の近傍となる。
【0077】
そうすると、処理開始の段階では、通信相手装置2はこの領域005に接近していると考えられる。即ち、通信相手装置2の無線通信のアンテナも領域005付近にある可能性が高い。そのため、通信装置1の無線通信のアンテナ004の指向性を、領域005の付近に向けることが望ましい。従って、図15(1)に示すように、非接触通信のアンテナ003と無線通信のアンテナ004を互いに近くに設置し、無線通信のアンテナ指向性を指向性1901のように領域005に向けて設定すれば、非接触通信と無線通信の通信品質を同時に向上させることができる。
【0078】
図16は、通信装置1のアンテナの第2の配置を示す模式図である。図16(1)は、通信装置1の平面図を表し、図16(2)は通信装置1の断面図を表している。
【0079】
図15を用いて説明したアンテナ配置では、無線通信の通信品質を向上させることができる。その一方で、非接触通信のアンテナ003は、そのコイル状をなすアンテナの内部に導体が存在すると、アンテナとしての性能が劣化するという性質がある。そのため図15のアンテナの配置では非接触通信の性能が劣化する場合もあり得る。
【0080】
そこで、図16(1)に示すように非接触通信のアンテナ003のコイルの外部でコイルの近くに無線通信のアンテナ004を配置し、無線通信のアンテナ指向性を指向性2001のように領域005に向けて設定する。この第2の配置によれば、非接触通信への影響を低減しつつ、無線通信の性能も向上させやすくなる。
【0081】
図17は、通信装置1のアンテナの第3の配置を示す模式図である。図17(1)は、通信装置1の平面図を表し、図17(2)は通信装置1の断面図を表している。
【0082】
第3の配置では、図17(1)に示すように、非接触通信のアンテナ003の周囲に無線通信のアンテナ004を2つ以上配置する。そして図17(2)に示すように、無線通信の各アンテナ004のアンテナ指向性を、指向性2001、2102のようにそれぞれ領域005に向けて設定する。この第3の配置によれば、無線通信の性能をさらに向上させることができる。
【0083】
なお、複数のアンテナ004は、アンテナの指向性が領域005をカバーするように配置することが望ましいが、これに限られるものではない。
【0084】
図18は、通信装置1のアンテナの第4の配置を示す模式図である。図18(1)は、通信装置1の平面図を表し、図18(2)は通信装置1の断面図を表している。
【0085】
無線通信のキャリア周波数がミリ波帯のように高い場合、無線通信のアンテナ指向性を筺体面や基板面に近づけることが難しいという物理的性質がある。そのため図16(2)、図17(2)に示すように設置したミリ波帯による無線通信を用いると、領域005のうち筺体面に近い領域では無線通信の品質が低下する可能性がある。
【0086】
そこで図18に示すように、無線通信のアンテナ004の実装面と非接触通信のアンテナ003の実装面とが180度よりも小さい角度をなすように通信装置1を構成する。これによって、無線通信のアンテナ004のアンテナ指向性を非接触通信のアンテナ003の実装面により近付けて設定できる。この第4の配置によれば、基板面付近での無線通信の性能をさらに向上させることができる。
【0087】
続いて、図17、図18に示すように、無線通信のアンテナ004を複数設けた場合の通信装置の構成を通信装置の各実施の形態に適用して詳細に説明する。
【0088】
図19は、第1の実施の形態の通信装置1が複数の無線通信部を有する場合の構成を示す図である。この通信装置1は図1に示す構成において、複数の無線通信部13−1〜13−N、複数の無線通信用アンテナ14−1〜14−N、及びセレクタ20を備えた点が異なっている。
【0089】
図20は、第2の実施の形態の通信装置1が複数の無線通信部を有する場合の構成を示す図である。この通信装置1は図9に示す構成において、複数の無線通信部13−1〜13−N、複数の無線通信用アンテナ14−1〜14−N、及びセレクタ20を備えた点が異なっている。
【0090】
通信装置1に複数の無線通信部13−1〜13−Nを具備させた場合、通信可能な無線通信部13−1〜13−Nのうちもっとも通信品質が良好な無線通信部13−1〜13−Nを使って通信をすることが望ましい。そうすることで、無線通信のスループットを高くすることができ、データ転送完了までにかかる時間を短縮できる。
【0091】
通信可能な無線通信部13−1〜13−Nのうち、最も通信品質が良好な無線通信部13−1〜13−Nを選択するにあたっては、たとえば通信装置1あるいは通信相手装置2のどちらか一方から送信した信号を他方で観測し、その信号の強度(通信電力)が大きい無線通信部13−1〜13−Nを使うとよい。
【0092】
この選択動作を行う際、あらかじめ無線通信部の数Nを非接触通信を使って送信してもよい。両方の装置が無線通信部の数Nを用いることによって、通信品質が良好な無線通信部13−1〜13−Nを選択する処理を効率的に実施することができ、選択に要する時間を短縮することができる。その結果として、データ転送完了までに要する時間を短縮できるという効果が得られる。
またこの際、無線通信部の数Nとあわせて無線通信部13−1〜13−Nの接続にかかわる情報、たとえば固有のIDなどを送信してもよい。
【0093】
図21は、通信品質が良好な無線通信部13−1〜13−Nを選択する第1の処理手順を示す図である。図21では通信装置1と通信相手装置2が非接触通信により接続が完了した後の処理を記述している。また図21は、通信装置1が複数の無線通信部13−1〜13−Nを具備し、通信相手装置2は無線通信部23を1つ具備した場合の例である。
【0094】
非接触通信の接続が完了すると、ステップS50において、通信装置1は、非接触通信で無線通信部の数Nを通知する。そのあと、ステップS51において、通信装置1はそれぞれの無線通信部13−1〜13−Nを介して無線接続要求を通信相手装置2に送信する。
【0095】
図21では便宜上、1、2・・・Nという順で送信しているが、送信する順番はこの順でなくてもよい。また、各無線通信部が1度だけ送信していなくてもよい。たとえば送信が、1、3、2、1、5、4・・・というように一部の無線通信部が複数回送信してもよい。ただしこの場合、全ての無線通信部が要求を送信するまでに要する時間が長くなってしまう場合がある。これを避けるためには、たとえば通信装置内に、複数の無線通信部13−1〜13−Nの動作を制御する通信制御部(不図示)をさらに具備してもよい。
【0096】
通信相手装置2では、ステップT50において、無線通信部の数Nを受信すると、ステップT51において、無線通信部の数Nだけ順次送信される接続要求を受信する。そして、送信される接続要求の電力が所定の電力よりも高い接続要求を受信したとき、ステップT52において、その接続要求を選択する。ステップT53において選択した接続要求に応答する送信を返す。
ステップS52において、制御部19は、接続応答を受信した無線通信部を選択する。
【0097】
この処理手順によって、効率的に通信品質がよい無線通信部を選択することができる。
【0098】
図22は、通信品質が良好な無線通信部13−1〜13−Nを選択する第2の処理手順を示す図である。図22では通信装置1と通信相手装置2が非接触通信により接続が完了した後の処理を記述している。また図22は、通信装置1が複数の無線通信部13−1〜13−Nを具備し、通信相手装置2は無線通信部23を1つ具備した場合の例である。
【0099】
非接触通信の接続が完了すると、ステップS60において、通信装置1は、非接触通信で無線通信部の数Nを通知する。
【0100】
ステップT60において、通信相手装置2は、数Nを受信する。そして、ステップT61において、通信相手装置2の無線通信部23は無線接続要求を通信装置側に送信する。
【0101】
ステップS61において、無線装置側の複数の無線通信部13−1〜13−Nの一部または全てがこの無線接続要求を受信する。ステップS62において、要求を受信した無線通信部13−1〜13−Nは、通信相手装置2に対して応答を送信する。
【0102】
図22では便宜上、1、2・・・Nという順で送信しているが、送信する順番はこの順でなくてもよい。また、各無線通信部が1度だけ送信していなくてもよい。
【0103】
通信相手装置2では、ステップT62において、事前に通知された無線通信部の数Nだけ接続要求を受信する。ステップT63において、通信相手装置2では、事前に通知された無線通信部の数Nだけ接続応答が受信されるのを待って、これらの中で最も電力が高い応答を選択する。ステップT64において選択した無線通信部に関する情報(例えば、ID)を送信する。
ステップS63において、制御部19は、受信した選択結果に基づいて無線通信部を選択する。
【0104】
この処理手順によって、効率的に通信品質がよい無線通信部を選択することができる。
【0105】
次に、無線通信のアンテナ004を複数設けた場合の通信装置のバリエーションの構成を説明する。
【0106】
図23は、第1の実施の形態の通信装置1が複数の無線通信機能を有する場合のバリエーションの構成を示す図である。この通信装置1は図1に示す構成において、複数の無線通信用アンテナ14−1〜14−N、及びセレクタ20を備えた点が異なっている。
図24は、第2の実施の形態の通信装置1が複数の無線通信機能を有する場合のバリエーションの構成を示す図である。この通信装置1は図9に示す構成において、複数の無線通信用アンテナ14−1〜14−N、及びセレクタ20を備えた点が異なっている。
【0107】
図23、図24に示す構成では、無線通信部13は1つであり、それに選択的に接続できる複数のアンテナを具備している。この構成において、各無線通信部に識別番号をつけるのと同様に、各アンテナに識別番号を付ければ、図21および図22と同様の手順で動作させることができる。その場合にも同様の効果を得ることができる。
【0108】
図19、図20の構成と比べて、図23、図24に示す構成では、無線通信部の数を減らせるため、装置を簡易にできるという効果が得られる。その一方で、アンテナ14と無線通信部13までの距離が長くなったり、セレクタ20を設けることによる減衰があるために、図19、図20の方が送信電力を高くしやすい。
【0109】
図25は、第1の実施の形態の通信装置1が複数の無線通信機能を有する場合の他のバリエーションの構成を示す図である。この通信装置1は図1に示す構成において、複数の無線通信用アンテナ14−1〜14−Nを備えた点が異なっている。
図26は、第2の実施の形態の通信装置1が複数の無線通信機能を有する場合の他のバリエーションの構成を示す図である。この通信装置1は図9に示す構成において、複数の無線通信用アンテナ14−1〜14−Nを備えた点が異なっている。
【0110】
図25、図26に示すように、通信装置1は、無線通信部13を1つとし、アンテナ14を複数とした場合、複数のアンテナを選択的に用いるのではなくすべて同時に用いる構成である。ただしこの構成では、複数のアンテナから同時に信号が送信されることによる新たな指向性が形成され、領域005の中で無線通信品質が劣化する領域が生成される場合がある。このような状況を避けるためには、複数のアンテナから同時に送信された信号のビームをランダム化する技術であるCyclic Delay DiversityやGroup−Wise Scramblingを適用することが望ましい。
【0111】
なお、上述の通信装置1の各アンテナの配置は、通信相手装置2においても同様に適用することができる。
【0112】
また、上述の実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラムに基づいて実行されることが可能である。汎用の計算機システムが、このプログラムを予め記憶しておき、このプログラムを読み込むことにより、上述した実施形態の通信装置、通信相手装置による効果と同様な効果を得ることも可能である。上述の実施形態で記述された指示は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、またはこれに類する記録媒体に記録される。コンピュータまたは組み込みシステムが読み取り可能な記録媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。コンピュータは、この記録媒体からプログラムを読み込み、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば、上述した実施形態の通信装置、通信相手装置と同様な動作を実現することができる。もちろん、コンピュータがプログラムを取得する場合または読み込む場合はネットワークを通じて取得または読み込んでもよい。
また、記録媒体からコンピュータや組み込みシステムにインストールされたプログラムの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)や、データベース管理ソフト、ネットワーク等のMW(ミドルウェア)等が本実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。
さらに、本願発明における記録媒体は、コンピュータあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LANやインターネット等により伝達されたプログラムをダウンロードして記憶または一時記憶した記録媒体も含まれる。
また、記録媒体は1つに限られず、複数の媒体から本実施形態における処理が実行される場合も、本発明における記録媒体に含まれ、媒体の構成は何れの構成であってもよい。
【0113】
なお、本願発明におけるコンピュータまたは組み込みシステムは、記録媒体に記憶されたプログラムに基づき、本実施形態における各処理を実行するためのものであって、パソコン、マイコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であってもよい。
また、本願発明の実施形態におけるコンピュータとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって本発明の実施形態における機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1…通信装置、2…通信相手装置、003…アンテナ、004…アンテナ、005…領域、11…非接触通信部、12…非接触通信用アンテナ、13…無線通信部、14…無線通信用アンテナ、15…無線起動部、16…データ出力部、17…鍵出力部、18…暗号化部、19…制御部、20…セレクタ、21…非接触通信部、22…非接触通信用アンテナ、23…無線通信部、24…無線通信用アンテナ、25…認証部、26…鍵出力部、27…復号化部、28…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信相手と第1の接続処理を行ってから前記通信相手と認証処理を行う第1の無線通信部と、
前記第1の無線通信部より通信速度が速く、前記第1の接続処理後、前記認証処理が完了する前に前記通信相手と第2の接続処理を行い、前記第2の接続処理が完了したときに、前記認証処理が完了していない場合はデータに暗号鍵を用いて暗号化した暗号化データを送信し、前記認証処理が完了している場合は、暗号化していない前記データを送信する第2無線通信部と、を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記第1の無線通信部は、前記第2の無線通信部が前記暗号鍵を用いて前記暗号化したデータを送信している場合に、前記暗号鍵を前記通信相手に送信することを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信装置であって
前記データを、前記暗号鍵を用いて暗号化し、前記暗号化データを生成する暗号化部と、
前記第1の接続処理が完了した後に、前記第2の無線通信部に前記第2の接続処理を開始させる無線起動部と、
前記第2の接続処理が完了したときに前記認証処理が完了していないに前記暗号化部に前記暗号化データを生成させるように制御する制御部とを有し、
前記第2の無線通信部は、前記暗号化データまたは前記データを送信することを特徴とする通信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記第2の無線通信部は、前記暗号鍵を用いて前記暗号化したデータを送信している場合に、前記暗号鍵を前記通信相手に送信することを特徴とする通信装置。
【請求項5】
請求項1に記載の通信装置であって、
複数の前記第2の無線通信部を有し、
前記第1の無線通信部は、前記第2の接続処理を開始する前に前記第2の無線通信部の数を前記通信相手に通知することを特徴とする通信装置。
【請求項6】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記第2の無線通信部は、指向性が、前記第1の無線通信部の通信可能領域に向けて設定されるアンテナを有することを特徴とする通信装置。
【請求項7】
請求項7に記載の通信装置であって、
前記第1の無線通信部が有するアンテナが実装される面と、前記第2の無線通信部が有する前記アンテナが実装される面とのなす角度が180度よりも小さいことを特徴とする通信装置。
【請求項8】
通信相手と第1の接続処理を行ってから前記通信相手と認証処理を行う第1の無線通信部と、
前記第1の無線通信部より通信速度が速く、前記第1の接続処理後、前記認証処理が完了する前に前記通信相手と第2の接続処理を行い、暗号鍵を用いて暗号化された暗号化データまたは暗号化していないデータを受信する第2無線通信部と、
受信した前記暗号化データを前記暗号鍵を用いて復号する復号部と、
前記第1の無線通信部が前記暗号鍵を受信したときは前記復号部に前記暗号鍵を用いて前記暗号化データを復号させ、前記第1の無線通信部が前記暗号鍵を受信しないときは前記復号部に前記暗号化データを復号させないように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−65201(P2012−65201A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208544(P2010−208544)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】