説明

通行管理システム、及び通行管理方法

【課題】グループで利用する場合にも、同伴者の事前登録の手間を要せず、個人認証による待ち行列の発生を抑制して、効率的な利用を可能にするとともに、グループ利用時にも不正な割り込み人物の通行を阻止し、安全性を確保できる通行管理システム、及び通行管理方法を提供する。
【解決手段】グループで利用する場合、代表者のID情報の記録媒体をグループ内で使い回し、また各人の通過間隔を所定時間内に行うようにすることで、同伴者も効率的に利用でき、かつ、不正な割り込み阻止など、安全性も確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ID情報と生体情報に基づいて通行しようとする個人の認証を行うとともに、その同伴者の認定を行い、その結果により通行の可否を決定する通行管理システム、及び通行管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定の施設のセキュリティを確保するため、安全性の高い入退室管理を行うべく、IDカードなどを用いた個人認証技術が広く用いられている。入退室の許可を得ていない人物を排除して、ID情報により認証された、すなわち予め登録された人物にのみ通行を許可するものである。
【0003】
ID情報を用いた個人認証の一般的な手順は、利用者が事前に取得したIDカードを通行管理ゲートに付設されているIDカードリーダに挿入することにより、そのIDカードに記録されている情報が登録されている個人情報と照合される。そして一致が確認されると通行管理ゲートが開くように制御されるものである。
【0004】
一方、入退室の許可を得ていない、すなわち登録されていない人物の場合は、適切なIDカードを提示することができず、通行管理ゲートを通過することができない。これは、暗証番号やパスワードを単独で用いる場合と比べて、セキュリティが高く、より安全性確保することが可能である。
【0005】
しかし、IDカードの偽造や改ざん、不正に入手した他人のIDカードが使用される危険性もある。そのため、IDカードなどの記録媒体だけでなく、合わせて利用者の生体情報を取得し、予め登録された生体情報と照合して個人認証する技術も開発されている。これは、暗証番号やパスワード以上に個人と切り離せず、盗用される危険も少ない。
【0006】
生体情報としては、利用者の顔画像を撮影などにより取得し、特徴量などを解析して照合判定する方法が、利用者にも身体的な負担を生じず、社会的にも受容されやすいという点から、一般に利用されている。
【0007】
このように、様々な方法で個人を認証することにより、許可を得ていない人物の通行を阻止することは可能であるが、一方、通行管理ゲートを通過しようとする人物は、予めIDカードを所持し、個人情報を登録しておくことが必要であり、そのため不便であったり、非効率が生じたりすることもある。
【0008】
例えば、複数人数のグループが利用者である場合、IDカード所有者が身分を保証しても、他の同伴者がIDカードを所持していなければ、通行管理ゲートを通過することができない。従って、同伴者にも登録、IDカード発行が必要であり、グループで利用されることが頻繁に起こる施設などの場合、時間が掛かりすぎるという問題がある。また、利用時にもすべての同伴者に対して個人認証を行うことになるため、順番待ち行列が発生したりという利便性の低下が考えられる。
【0009】
そういった課題に対して、例えば特許文献1では、事前の登録を必要とせず、同伴者の通行を可能にするための技術として、代表者のみが通常の認証動作を行い、他の同伴者は代表者の指定により、通行を可能にする方法が提案されている。
【0010】
同伴者を通行可能にするため、代表者は自己の保持するIDカードを提示し、また生体情報などの照合を受けて通行許可を得る。その後代表者は、設置されている人数入力ボタンにより同伴者人数を入力すると、通行を遮断するゲートを人数分回転させることができ、指定した同伴者の通行を可能にすることができる。
【特許文献1】特開2003−288625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
例えば、特許文献1に記載の技術によれば、同伴者に対する事前の登録も必要なく、また利用時に個人認証しないので、待ち行列の発生といった利便性の低下も抑止できる。
【0012】
しかしながら、人数で管理するため、人数管理の可能なゲート装置が要求される。装置の形態や設置場所も限定される恐れがある。また、グループでない人物による割り込みを許容し、通行可能にしてしまう危険も大きい。
【0013】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、グループで利用する場合にも、同伴者の事前登録の手間を要せず、個人認証による待ち行列の発生を抑制して、効率的な利用を可能にするとともに、グループ利用時にも不正な割り込み人物の通行を阻止し、安全性を確保できる通行管理システム、及び通行管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0015】
1. 個人を特定するID情報の記録された記録媒体の提示を受けて、前記ID情報を含む第1のアクセス情報を取得する第1のアクセス情報取得手段と、前記第1のアクセス情報取得手段により取得されたアクセス情報を記憶するアクセス情報記憶手段と、前記アクセス情報記憶手段から最新のアクセス情報を第2のアクセス情報として取得する第2のアクセス情報取得手段と、前記記録媒体の提示者である個人から、その生体情報を第1の生体情報として取得する第1の生体情報取得手段と、前記ID情報と対応づけて生体情報を記憶する生体情報記憶手段と、前記生体情報記憶手段、または前記ID情報を取得する記録媒体から、前記ID情報に基づき、対応する生体情報を第2の生体情報として取得する第2の生体情報取得手段と、前記第1のアクセス情報取得手段により取得された第1のアクセス情報と、前記第2のアクセス情報取得手段により取得された第2のアクセス情報とに基づき、前記記録媒体の提示者である個人が同伴者であるかどうかを判定する同伴者判定手段と、前記第1の生体情報取得手段により取得された第1の生体情報と、前記第2の生体情報取得手段により取得された第2の生体情報とを比較照合し、合致するかどうかを判定する照合処理手段と、前記同伴者判定手段による判定結果、または前記照合処理手段による照合結果に基づいて、前記個人の通行の可否を決定する判定出力手段と、前記判定出力手段の結果に基づいて、前記アクセス情報記憶手段の最新のアクセス情報を更新するかどうかを決定するアクセス情報更新手段と、を有する、ことを特徴とする通行管理システム。
【0016】
2. 前記同伴者判定手段は、前記第1のアクセス情報及び前記第2のアクセス情報におけるID情報が一致するかどうかに基づいて、アクセスした個人が同伴者であるかどうかを判定する、ことを特徴とする1に記載の通行管理システム。
【0017】
3. 前記第1のアクセス情報及び前記第2のアクセス情報は、それぞれアクセスした時刻情報を含み、前記同伴者判定手段は、前記第2のアクセス情報における時刻情報から前記第1のアクセス情報における時刻情報への経過時間に基づいて、アクセスした個人が同伴者であるかどうかを判定する、ことを特徴とする1または2に記載の通行管理システム。
【0018】
4. 前記判定出力手段は、前記同伴者判定手段により同伴者でないと判定され、かつ前記照合処理手段による照合結果が合致しない場合に、通行否と決定し、前記同伴者判定手段により同伴者であると判定される、もしくは前記照合処理手段による照合結果が合致する場合に、通行可と決定する、ことを特徴とする1乃至3の何れか1項に記載の通行管理システム。
【0019】
5. 前記アクセス情報更新手段は、前記判定出力手段の結果が通行可である場合に、前記第1のアクセス情報を、前記アクセス情報記憶手段の最新のアクセス情報として、更新記憶し、前記判定出力手段の結果が通行否である場合に、前記第1のアクセス情報を、前記アクセス情報記憶手段の最新のアクセス情報として更新記憶しない、ことを特徴とする1乃至4の何れか1項に記載の通行管理システム。
【0020】
6. 前記生体情報記憶手段は、前記第1の生体情報取得手段により取得された第1の生体情報を記憶する、ことを特徴とする1乃至5の何れか1項に記載の通行管理システム。
【0021】
7. 前記第1の生体情報及び前記第2の生体情報は、顔画像情報である、ことを特徴とする1乃至6の何れか1項に記載の通行管理システム。
【0022】
8. 個人を特定するID情報の記録された記録媒体の提示を受けて、前記ID情報を含む第1のアクセス情報を取得する第1のアクセス情報取得工程と、アクセス情報を記憶するアクセス情報記憶手段から最新のアクセス情報を第2のアクセス情報として取得する第2のアクセス情報取得工程と、前記記録媒体の提示者である個人から、その生体情報を第1の生体情報として取得する第1の生体情報取得工程と、前記ID情報と対応づけて生体情報を記憶する生体情報記憶手段から、または前記ID情報を取得する記録媒体から、前記ID情報に基づき、対応する生体情報を第2の生体情報として取得する第2の生体情報取得工程と、前記第1のアクセス情報取得工程において取得された第1のアクセス情報と、前記第2のアクセス情報取得工程において取得された第2のアクセス情報とに基づき、前記記録媒体の提示者である個人が同伴者であるかどうかを判定する同伴者判定工程と、前記第1の生体情報取得工程において取得された第1の生体情報と、前記第2の生体情報取得工程において取得された第2の生体情報とを比較照合し、合致するかどうかを判定する照合処理工程と、前記同伴者判定工程における判定結果、または前記照合処理工程における照合結果に基づいて、前記個人の通行の可否を決定する判定出力工程と、前記判定出力工程の結果に基づいて、前記アクセス情報記憶手段の最新のアクセス情報を更新するかどうかを決定するアクセス情報更新工程と、を有する、ことを特徴とする通行管理方法。
【0023】
9. 前記同伴者判定工程は、前記第1のアクセス情報及び前記第2のアクセス情報におけるID情報が一致するかどうかに基づいて、アクセスした個人が同伴者であるかどうかを判定する、ことを特徴とする8に記載の通行管理方法。
【0024】
10. 前記第1のアクセス情報及び前記第2のアクセス情報は、それぞれアクセスした時刻情報を含み、前記同伴者判定工程は、前記第2のアクセス情報における時刻情報から前記第1のアクセス情報における時刻情報への経過時間に基づいて、アクセスした個人が同伴者であるかどうかを判定する、ことを特徴とする8または9に記載の通行管理方法。
【0025】
11. 前記判定出力工程は、前記同伴者判定工程において同伴者でないと判定され、かつ前記照合処理工程において照合結果が合致しない場合に、通行否と決定し、前記同伴者判定工程において同伴者であると判定される、もしくは前記照合処理工程において照合結果が合致する場合に、通行可と決定する、ことを特徴とする8乃至10の何れか1項に記載の通行管理方法。
【0026】
12. 前記アクセス情報更新工程は、前記判定出力工程の結果が通行可である場合に、前記第1のアクセス情報を、前記アクセス情報記憶手段の最新のアクセス情報として、更新記憶し、前記判定出力工程の結果が通行否である場合に、前記第1のアクセス情報を、前記アクセス情報記憶手段の最新のアクセス情報として更新記憶しない、ことを特徴とする8乃至11の何れか1項に記載の通行管理方法。
【0027】
13.前記生体情報記憶手段は、前記第1の生体情報取得手段により取得された第1の生体情報を記憶する、ことを特徴とする8乃至12の何れか1項に記載の通行管理方法。
【0028】
14. 前記第1の生体情報及び前記第2の生体情報は、顔画像情報である、ことを特徴とする8乃至13の何れか1項に記載の通行管理方法。
【発明の効果】
【0029】
グループで利用する場合には、代表者のID情報をグループ内で使い回し、また各人の通行を所定のルールに従って行うようにすることで、同伴者の認定を行い、グループ利用時にも不正な割り込み人物の通行を阻止し、安全性を確保しながら、さらに同伴者の事前登録の手間を要せず、個人認証による待ち行列の発生を抑制して、効率的な利用を可能にすることができる通行管理システム、及び通行管理方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0031】
(通行管理システムの機能構成)
図1は、本発明に係る通行管理システムの一実施形態について、その機能構成を示すブロック図である。図1を用いて通行管理システムの一実施形態を説明する。
【0032】
本発明に係る通行管理システムは、一般的にコンピュータなどによる情報処理機能を利用して機能構成される。
【0033】
図1において、1は通行管理システムであり、通行許可を求めるアクセスに対して、その可否を判定するためのさまざまな情報処理機能を有しており、具体的にはコンピュータが各処理プログラムを実行することにより、その機能が実現される。
【0034】
2のID読み取り装置、3の生体情報入力装置、そして4の通行ゲート開閉装置は、通行管理システム1の機能を動作させるためのインタフェイス装置に相当する。これらの装置は、通行管理システムに接続される形態にしているが、通行管理システムに包含されるものであってもよい。
【0035】
ID読み取り装置2は、通行許可を求める人物が所持するIDカードを提示すれば、そこから記録されたID情報などを読み取る機能を有する装置である。IDカードは、ID情報を記録できる記録媒体であれば、磁気記録カードやICカード、その他どのような媒体であってもよい。記録されたID情報によって、所持する人物を特定し、通行許可を出してよいかどうかを判定するためにデータを読み取る。読み取りの方式は、IDカードの種類に応じてさまざまである。読み取ったデータは、アクセス情報として、通行管理システム1に送られ、処理される。
【0036】
生体情報入力装置3は、通行許可を求める人物が、IDカードにより特定の人物であることを提示したのに対して、確かに本人であるかどうかを確認するため、生体情報を入手する装置である。生体情報は、指紋、掌紋、虹彩、顔など、個人を特定可能なものであれば何でもよいが、本実施形態では、撮影するだけで負担もなく、一般によく用いられる顔画像情報を例に取り、以下の説明を進める。顔画像情報は、通行管理システム1内で処理され、個人特定のために利用される。
【0037】
通行ゲート開閉装置4は、通行許可を求める人物に対して、通行管理システムが下した通行可否の決定に応じて開閉するゲートを有する装置である。これにより通行の可否を通行許可を求める人物に通知するとともに、物理的に通行可能、あるいは不可能な状態を実現する。基本的には個人が通行することを想定しており、単独の個人に対して通行可否を決定する。従って、ゲートも単独の個人が通行するような構成を有する。
【0038】
本実施形態では、特定の個人が同伴者を伴い、通行するようなケースに対しても、合理的に通行できるように、すなわち、IDカードを所持しない同伴者も通行許可を得ることができ、かつセキュリティを緩めすぎないような判定処理を、通行管理システム1で行い、通行ゲートの開閉を制御するものである。
【0039】
通行管理システム1には、入力処理部10、制御部20、出力処理部30、その他記憶部などがある。
【0040】
入力処理部10は、ID読み取り装置2や生体情報入力装置3などから、それぞれの情報(ID情報などの記録された情報、直接採取した生体情報など)を取得し、判定処理に利用する。
【0041】
制御部20は、取得した情報を用いて通行の可否を判定する機能を実行する。またそのために、各処理部間の情報のやり取りや、全体の処理のシーケンスを制御する。
【0042】
出力処理部30は、決定された通行の可否に基づいて、出力し、通行ゲート開閉装置4を操作する。また、次のアクセスに備えて、必要な後処理(アクセス情報の更新や生体情報の記憶など)を行う。
【0043】
通行管理システム1のさらに詳細な機能要素について、以下に説明する。
【0044】
11は第1のアクセス情報取得部であり、ID読み取り装置2が提示されたIDカードから読み取った情報などを、第1のアクセス情報として取得する。すなわち、第1のアクセス情報取得手段として機能する。
【0045】
第1のアクセス情報は、IDカードに記録されたID情報が主体となる。また、IDに該当する個人の生体情報(顔画像)が記録されている場合には、それもアクセス情報として取得する。また記録された情報だけでなく、通行許可を求めてIDカードが提示された時刻などのアクセス状況に関わる情報も取得する。
【0046】
12は第1の生体情報取得部であり、生体情報入力装置3がアクセスしている個人から撮影などの手段によって得た生体情報(顔画像情報など)を、第1の生体情報として取得する。すなわち、第1の生体情報取得手段として機能する。
【0047】
21はアクセス情報記憶部であり、前回のアクセス情報(つまり、最も新しく通行許可の出たときに第1のアクセス情報取得部11が取得した第1のアクセス情報)を参照用に記憶する。すなわち、アクセス情報記憶手段として機能する。
【0048】
22は生体情報記憶部であり、第1の生体情報取得部12で取得した生体情報としての顔画像をログ画像として記憶する。すなわち、生体情報記憶手段として機能する。ログ画像は、不正があったときの調査参照用として有効である。また、通行を許可される特定の個人について、その顔画像情報が、登録生体情報としてID情報と関連付けて記憶されていてもよい。
【0049】
15は第2のアクセス情報取得部であり、アクセス情報記憶手段21に記憶されている前回のアクセス情報を第2のアクセス情報として取得する。すなわち、第2のアクセス情報取得手段として機能する。これと第1のアクセス情報とに基づき同伴者か否かの判定を行う。
【0050】
16は第2の生体情報取得部であり、第1のアクセス情報として取得したID情報に対応する生体情報を第2の生体情報として取得する。すなわち、第2の生体情報取得手段として機能する。これと第1の生体情報とで照合処理を行う。
【0051】
第2の生体情報は、IDカードに記録されているものを、第1のアクセス情報取得部11が第1のアクセス情報として取得していれば、そこから抽出して取得する。また、生体情報記憶部22にID情報と関連付けて登録されているのであれば、そこから読み出して取得する。
【0052】
13は同伴者判定部であり、第1のアクセス情報取得部11により取得された第1のアクセス情報と、第2のアクセス情報取得部15により取得された第2のアクセス情報とに基づき、アクセスしている個人が先行して通行した者の同伴者であるか否かを判定する。すなわち、同伴者判定手段として機能する。同伴者判定の機能については、図3を参照して後述する。
【0053】
14は照合処理部であり、同伴者判定部13で同伴者でないと判定された場合に、第1の生体情報取得部12で取得された第1の生体情報(顔画像)と、第2の生体情報取得部16で取得された第2の生体情報(顔画像)とを照合処理し、そのID情報に相当する人物であるか否かを判定する。すなわち、照合処理手段として機能する。照合処理の機能については、図4を参照して後述する。
【0054】
18は判定出力部であり、同伴者判定部13で同伴者と判定された場合、あるいは照合処理部14で、取得したID情報に相当する人物であると判定された場合には、通行許可を提出し、そうでない場合には、通行不許可とする。すなわち、判定出力手段として機能する。
【0055】
また、通行の可否に応じて通行ゲート開閉装置4を操作すべく出力する。また、通行の可否と合わせて、取得した第1の生体情報(顔画像)を生体情報記憶部22にログ画像として記憶する。また、通行許可を出した場合には、後述する情報更新部17に情報更新の指示を提出する。
【0056】
17は情報更新部であり、判定出力部18で通行許可が出た場合に、アクセス情報記憶部21に記憶されている前回アクセス情報を、第1のアクセス情報取得部11で取得した第1のアクセス情報に置き換え、更新する。すなわち、情報更新手段として機能する。判定出力部18で通行不許可の場合には、情報更新は行わない。
【0057】
以下に上記通行管理システムを用いての通行管理の動作について説明する。
【0058】
(通行管理の動作フロー)
図2は、本実施形態の通行管理システムによる通行管理の全体動作フローを示すフローチャートである。図1を用いて通行管理システムを用いた通行管理方法を説明する。
【0059】
通行管理は、一般的にコンピュータなどによる情報処理により実現され、以下に説明する各工程は、通行管理システム1において、具体的にはコンピュータが各処理手段に相当する処理プログラムを実行することにより、その機能が実現される。
【0060】
このフローでは、アクセス情報に基づく同伴者判定を組み込むことにより、同伴者の通行を簡便で効率化するとともに、同伴者判定の適切なルール設定により不正通行しようとする者を阻止する機能も損なわないようにしている。
【0061】
すなわち、グループで利用する場合は、まず代表者が自己の保持するIDカードで認証を受け、通過する。同伴者は、順次そのIDカードを使い回し、所定時間内にアクセスすることで、同伴者としての通行許可を受けて、簡便に通行できる。途中で他の利用者(他のIDカード)が挟まったり、また時間間隔があきすぎても、それ以後は同伴者を装って不正通行することはできない。こういったフローである。
【0062】
まずステップS11において、通行しようとする個人が、通行管理システム1にIDカードなどの記録媒体を提示して、通行の許可を求めるところから通行管理の処理は始まる。ID読み取り装置2により、IDカード読み取りが行われ、生体情報入力装置3により、例えば、撮影による顔画像情報の入力が行われる。
【0063】
次に第1のアクセス情報取得工程であるステップS12では、第1のアクセス情報取得部11が、ID読み取り装置2から、第1のアクセス情報として、IDカードに記録されたID情報を取得する。また、当該IDに該当する個人の顔画像が記録されている場合には、それも合わせて取得する。また記録された情報だけでなく、IDカードが提示された時刻などの時刻情報も取得する。
【0064】
第1の生体情報取得工程であるステップS13では、第1の生体情報取得部12が、生体情報入力装置3から、撮影などの手段によって得た生体情報(顔画像情報など)を第1の生体情報として取得する。本ステップS13は、先のステップS12と実行順序が逆であってもよい。
【0065】
次の第2のアクセス情報取得工程であるステップS14では、第2のアクセス情報取得部15が、アクセス情報記憶部21から、記憶されている前回のアクセス情報(つまり、最も新しく通行許可の出たときに第1のアクセス情報取得部11が取得した前回の第1のアクセス情報)を、第2のアクセス情報として取得する。
【0066】
次に同伴者判定工程であるステップS15では、同伴者判定部13が、ステップS12で第1のアクセス情報取得部11により取得された第1のアクセス情報と、ステップS14で第2のアクセス情報取得部15により取得された第2のアクセス情報とに基づき、アクセスしている個人が、先行して通行した者の同伴者であるか否かを判定する。
【0067】
同伴者の判定は、ID情報と時刻情報を用いる。すなわち、直前に通行した個人の提示したID情報と、IDが同じで、そのときからの時間間隔が所定の閾値内の場合に同伴者と判定する。同じIDカードを使い回し、すぐに追随する場合を同伴者と見なすのである。詳細判定方法は後述する。
【0068】
同伴者であるという判定の場合(ステップS15:YES)は、ステップS18へ進む。同伴者でないという判定の場合(ステップS15:NO)は、次のステップS16を実行する。
【0069】
第2の生体情報取得工程であるステップS16では、第2の生体情報取得部16が、第1のアクセス情報として取得したID情報に対応する顔画像情報を第2の生体情報として取得する。第2の生体情報は、照合用に登録された顔画像情報であり、通行しようとする個人から直接取得した第1の生体情報と比較照合するためのものである。
【0070】
第2の生体情報は、IDカードに記録されているものを、第1のアクセス情報取得部11が、ステップS12で第1のアクセス情報として取得するようにし、そこから抽出して取得してもよい。また、予め生体情報記憶部22にID情報と関連付けて登録されるようにしておき、そこから読み出して取得してもよい。
【0071】
次に照合処理工程であるステップS17では、照合処理部14が、ステップS13で第1の生体情報取得部12により取得された第1の生体情報としての顔画像と、ステップS16で第2の生体情報取得部16により取得された第2の生体情報としての顔画像とを照合処理し、アクセスしている個人の顔が、そのIDで登録されている顔画像と一致するか否かを判定する。
【0072】
第1、及び第2の生体情報としての顔画像の照合処理は、それぞれの顔画像に対して特徴量分析処理を行い、両者の類似度を算出し、閾値と比較判定することによって、ID情報の示す特定の個人の顔と一致するかどうかを判定処理する。詳細な照合処理方法は後述する。
【0073】
照合処理結果が一致するという判定の場合(ステップS17:YES)は、ステップS18を実行する。一致しないという判定の場合(ステップS17:NO)は、ステップS20を実行する。
【0074】
ここからは、通行を許可する場合と許可しない場合に処理フローが分かれる。判定出力工程であるステップS18とステップS20では、それぞれステップS15及びステップS17の判定に従い、通行許可または通行不許可の出力を行う。
【0075】
なお、ステップS14、ステップS15の同伴者判定処理は、ステップS16、ステップS17の照合処理と順序を入れ替えてもよい。いずれの場合も、判定による分岐は、両者でNOの判定の場合だけステップS20へ進み、どちらかがYESならば即ステップS18へ進むようにすれば、処理結果は同じである。
【0076】
従って、ステップS18では、判定出力部18が通行ゲート開閉装置4に通行許可の出力を送り、ステップS20では、同じく通行不許可の出力を送る。
【0077】
次のステップS19、そしてステップS21では、それぞれステップS18またはステップS20における判定出力部18の出力を受けて、通行ゲート開閉装置4がゲートの開閉を操作する。すなわち、ステップS19では、ステップS18での通行許可を受けて、通行を許可するため通行ゲートを開く。またステップS21では、ステップS20で通行不許可であり、通行させないために通行ゲートを閉じたままにしておく
次にアクセス情報更新工程であるステップS22では、情報更新部17が、判定出力部18の通行許可を受けて、アクセス情報記憶部21に記憶されている前回のアクセス情報を、ステップS12で第1のアクセス情報取得部11が取得した今回の第1のアクセス情報に置き換え、更新する。判定出力部18で通行不許可の場合には、情報更新は行わない。
【0078】
アクセス情報記憶部21の前回のアクセス情報を更新することで、次のアクセスがあったときの同伴者判定に備える。すなわち、次のアクセス時には、第2のアクセス情報として参照されることになる。
【0079】
最後に生体情報記憶工程であるステップS23において、判定出力部18の出力と合わせて、ステップS13で取得した第1の生体情報(顔画像情報)をログ画像として生体情報記憶部22に記憶する。これは不正通行などがあった場合、調査参照することを意図しており、ステップS12で取得した第1のアクセス情報、そしてステップS15及びステップS17での判定結果などと合わせて記憶されることが望ましい。
【0080】
以上で通行許可を求めるアクセスに対する通行管理の処理は終了する。次の通行者がアクセスしてくると、同じフローが繰り返される。
【0081】
<同伴者判定のフロー>
図2のステップS15、すなわち同伴者判定工程の詳細フローについて、図3を用いて説明する。図3は同伴者判定工程を示すフローチャートである。
【0082】
図3の同伴者判定は、第1のアクセス情報取得部11により取得された第1のアクセス情報と、第2のアクセス情報取得部15により取得された第2のアクセス情報とに基づき、同伴者判定部13で実行される。
【0083】
まずステップS31で、上記第1及び第2のアクセス情報に含まれるID情報の比較照合が行われる。ステップS32でIDが同一であるかどうかの判定を行う。
【0084】
同じIDである場合(ステップS32:YES)は、ステップS33を実行する。異なるIDである場合(ステップS32:NO)は、ステップS36へ進み、即同伴者判定結果はNOとなる。
【0085】
次にステップS33では、上記第1及び第2のアクセス情報に含まれる時刻情報の差が算出される。これは先行して通過した通行者に対して、次の通行者がどのくらい遅れて通行しようとしているか、すなわち前回アクセスからの経過時間を示すものである。
【0086】
ステップS34では、上記した時刻情報の差が所定の閾値以内であるかどうかの判定を行う。これは、同伴者であればすぐに追随して通行しようとするものという了解事項に基づくものである。
【0087】
時刻情報の差が所定の閾値以内である場合(ステップS34:YES)は、ステップS35を実行する。ステップS35では同伴者判定結果としてYESが提出される。時刻情報の差が所定の閾値以内でない場合(ステップS34:NO)は、ステップS36を実行する。ステップS36では同伴者判定結果としてNOが提出される。
【0088】
このようにして同伴者判定は終了する。同伴者は、例え何人いようと、最初にアクセスし通行する登録者のIDカードを使い回し、所定の時間内に順次アクセスし通行するという簡単なルールで、登録などの処理も必要なく、効率的に通行することが可能になる。また、上記ルールにより不正通行者が途中で紛れ込むことも困難になる。
【0089】
<照合処理のフロー>
図2のステップS17、すなわち照合処理工程の詳細フローについて、図4を用いて説明する。図4は照合処理工程を示すフローチャートである。
【0090】
図4の照合処理は、第1の生体情報取得部12により取得された第1の生体情報としての顔画像(以下、第1の顔画像と称する)と、第2の生体情報取得部16により取得された第2の生体情報としての顔画像(以下、第2の顔画像と称する)とに基づき、照合処理部14で実行される。
【0091】
照合処理は、アクセスしている個人の顔(第1の顔画像)が、そのIDで登録されている顔(第2の顔画像)と一致するか否かを照合判定するものであり、それぞれの顔画像に対して特徴量分析処理を行い、両者の類似度を算出し、閾値と比較することによって判定処理する。
【0092】
まずステップS41で、第1及び第2の顔画像について顔部位を抽出する。
【0093】
顔領域の中から、顔の特徴的な部位の位置(画像上の座標)を計算する。顔の特徴的な部位は、目(瞳中心・目尻・目頭・瞳の上下)、眉(両端部・中央部)、鼻(小鼻の端・中央下部・鼻孔)、下顎尖端位置などの部位が挙げられる。
【0094】
次にステップS42では、第1及び第2の顔画像について特徴量を算出する。特徴量としては、形状特徴量・テクスチャ情報を抽出する。
【0095】
形状特徴量は、例えば、顔の特徴部位の位置の相関関係などから抽出できる。またテクスチャ情報は、特徴的な局所領域を選択してそこでの濃度分布、すなわち二次元的なパターンをベクトル化して用いることができる。一般的には、これらの高次元の特徴量に対して次元圧縮の処理が行われる。特徴量抽出の詳細については、後述する。
【0096】
次にステップS43では、各顔画像についての各特徴量から類似度を算出する。
【0097】
形状特徴量の類似度は、それぞれの顔の特徴部位の位置を示す各頂点間の距離の合計で算出することができる。各局所テクスチャ特徴量毎の類似度は、それぞれの特徴空間上での、各局所テクスチャ特徴量の距離を用いて算出される。総合的な類似度は、各顔特徴量グループ毎に計算した類似度の重み付け和で算出される。
【0098】
このように、第1と第2の顔画像での顔特徴量の類似度は、特徴空間での両者の距離で表現され、距離が近いほど類似度が高く、距離が遠いほど類似度が低くなる。類似度算出の詳細については、後述する。
【0099】
次にステップS44では、算出した第1と第2の顔画像の類似度が所定の閾値以内であるかどうかを判定する。類似度が所定の閾値内であれば、距離が近い、すなわち類似度が高く第1と第2の顔画像は一致している(同一人物)と見なすことができる。
【0100】
類似度が所定の閾値以内である場合(ステップS44:YES)は、ステップS45を実行する。ステップS45では照合判定結果としてYESが提出される。類似度が所定の閾値以内でない場合(ステップS44:NO)は、ステップS46を実行する。ステップS46では照合判定結果としてNOが提出される。
【0101】
このようにして照合処理は終了する。照合処理は同伴者と判定された場合には実行されないので、最初にアクセスし通行する登録者は照合処理を受けるが、同伴者は照合処理が省略され、例え何人いようと、効率的に通行することが可能になる。
【0102】
(通行管理の具体例1)
図5は通行管理の具体例1を示す図である。図5を参照して、登録している通行者Aが同伴者B、Cを伴い、通行する場合の通行管理の具体例を説明する。
【0103】
図5において、51に示すように、最初(アクセス順1)に登録している通行者Aが通行管理システム1にアクセスし、所持しているA本人のIDカードを提示する(アクセス情報はIDA及び時刻T1)。合わせて顔画像(生体情報fA)が撮影され、通行管理システム1に入力される。通行管理システム1においては、前回アクセス情報(IDX及び時刻Tx)と、上記今回のアクセス情報とに基づいて、同伴者でないと判定する。従って第2の顔画像(fA)が取得され、上記第1の顔画像(fA)と照合処理される。照合結果はOKであり、Aは通行を許可され、通行ゲートが開く。通行ゲートは、一人ずつ開閉するようになっており、Aの通行後に閉じる。前回アクセス情報は今回のアクセス情報でもって更新される。
【0104】
次に52に示すように、続いて(アクセス順2)同伴者BがAのIDカードを再度使用して、通行管理システム1にアクセスする(アクセス情報は、IDA及び時刻T2)。合わせて顔画像(生体情報fB)が撮影され、通行管理システム1に入力される。通行管理システム1においては、前回、すなわちAが通行したときのアクセス情報(IDA及び時刻T1)と、上記今回のアクセス情報とに基づいて、同伴者であると判定する(T1とT2の差は所定の閾値内)。従って照合処理はなく、上記第1の顔画像(fB)は使用されない。同伴者判定YESによりBは通行を許可され、通行ゲートが開き、Bの通行後に閉じる。前回アクセス情報は今回のアクセス情報でもって更新される。
【0105】
次に53に示すように、最後に(アクセス順3)同伴者CがAのIDカードを三度目に使用して、通行管理システム1にアクセスする(アクセス情報は、IDA及び時刻T3)。合わせて顔画像(生体情報fC)が撮影され、通行管理システム1に入力される。通行管理システム1においては、前回、すなわちBが通行したときのアクセス情報(IDA及び時刻T2)と、上記今回のアクセス情報とに基づいて、やはり同伴者であると判定する(T2とT3の差は所定の閾値内)。従って照合処理はなく、上記第1の顔画像(fC)は使用されない。同伴者判定YESによりCは通行を許可され、通行ゲートが開き、Cの通行後に閉じる。前回アクセス情報は今回のアクセス情報でもって更新される。
【0106】
このように登録していない同伴者を連れていても、登録者のIDカードを使い回し、所定の時間内に順次アクセスし通行するという簡単なルールで、効率的に通行することが可能になる。
【0107】
(通行管理の具体例2)
図6は通行管理の具体例2を示す図である。図6を参照して、登録している通行者Aが同伴者Bを伴い、その後同伴者かどうか不明のCが通行する場合の通行管理の具体例を説明する。
【0108】
図6において、61に示すように、最初(アクセス順1)に登録している通行者Aが通行管理システム1にアクセスし、通行する手順は、具体例1の登録者Aの場合と同様であり、説明は省略する。
【0109】
次に62に示すように、続いて(アクセス順2)同伴者BがAのIDカードを再度使用して、通行管理システム1にアクセスし、通行するが、この手順も具体例1の同伴者Bの場合と同様であり、説明は省略する。
【0110】
次に63に示すように、最後に(アクセス順3)同伴者かどうか不明のCがAのIDカードを三度目に使用して、通行管理システム1にアクセスする(アクセス情報は、IDA及び時刻T3)。合わせて顔画像(生体情報fC)が撮影され、通行管理システム1に入力される。通行管理システム1においては、前回、すなわちBが通行したときのアクセス情報(IDA及び時刻T2)と、上記今回のアクセス情報とに基づいて、同伴者でないと判定する(T2とT3の差が所定の閾値を越える)。従って第2の顔画像(fA)が取得され、上記第1の顔画像(fC)と照合処理される。当然、照合結果はNGであり、Cは通行を許可されず、通行ゲートは閉じたままである。前回アクセス情報は更新されない。
【0111】
このように同伴者であっても一定時間内にアクセスしないと同伴者と見なされない。これは不正な通行者を阻止するためのルールである。もし、不正な通行者が登録者AのIDカードを不正に取得して、通行しようとしているのであれば、それを阻まなければならない。簡単なルールで、効率的に運用しながら、セキュリティの観点からリスクをできるだけ小さくしておく。
【0112】
(通行管理の具体例3)
図7は通行管理の具体例3を示す図である。図7を参照して、登録している通行者Aの通行した後で同伴者Cが通行しようとするが、別の登録者Bがその間に割り込んで通行しようとする場合の通行管理の具体例を説明する。
【0113】
図7において、71に示すように、最初(アクセス順1)に登録している通行者Aが通行管理システム1にアクセスし、通行する手順は、具体例1及び2の登録者Aの場合と同様であり、説明は省略する。
【0114】
次に72に示すように、続いて(アクセス順2)同伴者ではない別の登録者Bが自分のIDカードを使用して、通行管理システム1にアクセスする(アクセス情報は、IDB及び時刻T2)。合わせて顔画像(生体情報fB)が撮影され、通行管理システム1に入力される。通行管理システム1においては、前回、すなわちAが通行したときのアクセス情報(IDA及び時刻T1)と、上記今回のアクセス情報とに基づいて、同伴者でないと判定する(IDAとIDBが異なる)。従って第2の顔画像(fB)が取得され、上記第1の顔画像(fB)と照合処理される。当然、照合結果はOKであり、Bは通行を許可され、通行ゲートが開き、Bの通行後に閉じる。前回アクセス情報は今回のアクセス情報でもって更新される。
【0115】
次に73に示すように、最後に(アクセス順3)Aの同伴者であるCがAのIDカードを再度使用して、通行管理システム1にアクセスする(アクセス情報は、IDA及び時刻T3)。合わせて顔画像(生体情報fC)が撮影され、通行管理システム1に入力される。通行管理システム1においては、前回、すなわちBが通行したときのアクセス情報(IDB及び時刻T2)と、上記今回のアクセス情報とに基づいて、同伴者でないと判定する(IDBとIDCが異なる)。従って第2の顔画像(fA)が取得され、上記第1の顔画像(fC)と照合処理される。当然、照合結果はNGであり、Cは通行を許可されず、通行ゲートは閉じたままである。前回アクセス情報は更新されない。
【0116】
このように同伴者であっても引き続き順次アクセスしないと同伴者と見なされない。これも多少不便ではあるが、不正な通行者を阻止するためのルールである。もし、Cが登録者AのIDカードを不正に取得して不正に通行しようとしているのであれば、そのリスクをできるだけ小さくしておくために、こういったルールが有効となるだろう。
【0117】
(顔画像の特徴量抽出の例)
第1及び第2の顔画像についての顔部位抽出と特徴量の算出について、詳細な例を説明する。
【0118】
まず顔領域の中から、顔の特徴的な部位の位置(画像上の座標)を計算する。
【0119】
顔の特徴的な部位は、目(瞳中心・目尻・目頭・瞳の上下)、眉(両端部・中央部)、鼻(小鼻の端・中央下部・鼻孔)、下顎尖端位置などの部位が挙げられる。図8に顔画像に対して位置を求める各部位の例を示す。例えば、図8のP1からP23に至る各点が求める顔特徴部位であり、これらの点の位置を算出する。
【0120】
次に顔画像、及びその特徴部位の位置から、顔の照合処理に用いる特徴量を抽出する。特徴量としては、形状特徴量・テクスチャ情報を抽出する。
【0121】
形状特徴量は、例えば、顔の特徴部位の位置の相関関係などから抽出することができる。関係要素は多数存在し得るので、形状特徴量は高次元空間のベクトルで表される。また、テクスチャ情報については、特徴的な局所領域を選択してそこでの濃度分布、すなわち二次元的なパターンをベクトル化して用いることができる。これも高次元の特徴量であり、さらに特徴的な局所領域を複数選択すると、複数の特徴量ベクトルとなる。
【0122】
一般的には、これらの高次元の特徴量に対して、次元圧縮の処理が行われる。
【0123】
例えば特徴量xに対して、実験的にサンプルデータを収集して、次元圧縮のための有効な座標軸を求める。次の式(1)で新たな空間での特徴量cが表される。
【0124】
x=xm+Pc (1)
mは特徴量xの平均、Pは変化の正規モード(固有ベクトルのセット)である。
【0125】
Pによって、次元圧縮のために有効な新たな空間が設定される。cはその空間で表現された特徴量である。Pで表される空間は、以下に示すような考え方で、既に元のn次元からk次元に低減されていると考えてもよい。
【0126】
特徴量xのばらつきに対して、個人性を表す部分空間と、属性の変動を表す部分空間とに分割するように考える。このように特徴空間を分割して、特徴量xをn次元からk次元(特徴ベクトルd)に低減させる変換は、行列Aを用いて、次のような式(2)で表現できる。
【0127】
d=Atx (2)
ここで、Aはn×kの行列である。変換Aを決定する手法としては、次に示すような方法が公知である。
(1)特徴空間の各種成分の中から、クラス内分散とクラス間分散の比率(F比)の大きい主成分をk個選び出すことで、個人性を表す部分空間を求める(PCA法)。
(2)特徴空間から、クラス間分散とクラス内分散の差が大きくなるような射影空間を求める(EM法)。
(3)特徴空間から、クラス間分散とクラス内分散の比が大きくなるような射影空間を求める。Fisherの判別分析法を多クラスの問題に一般化した重判別分析法である(MDA法)。
【0128】
クラス間分散は個人性を表す部分空間での分散であり、クラス内分散は属性の変動を表す部分空間での分散である。
【0129】
上記の形状特徴量、テクスチャ情報を、上述のように変換処理した形状特徴量dsと局所テクスチャ特徴量d(k)の組み合わせが、次のような顔特徴量として、個人照合辞書に登録されたり、類似度計算に用いられたりする。
【0130】
顔特徴量:(d(0)、d(1)、・・・、d(L))、
L:局所特徴の数、d(0)は、dsである。
【0131】
もちろん、個人照合用の特徴量抽出は、形状特徴量・テクスチャ情報単独でもよい。
【0132】
(類似度算出の例)
第1の顔画像から抽出した顔特徴量(以下、第1の顔特徴量という)と、第2の顔画像から抽出した顔特徴量(以下、第2の顔特徴量という)との類似度を算出する。
【0133】
形状特徴量の類似度は、第1と第2の顔特徴量における、顔の特徴部位の位置を示す各頂点間のユークリッド距離の合計で、次の式(3)のように算出することができる。
【0134】
sij=(dsj−dsit(dsj−dsi) (3)
ここでiとjは、それぞれ第1と第2の顔特徴量を示す変数である。
【0135】
局所テクスチャ特徴量は、局所特徴の数Lだけあるものとする。
【0136】
各局所テクスチャ特徴量毎の類似度は、それぞれの特徴空間上での、第1と第2の顔特徴量における各局所テクスチャ特徴量k(k=1・・・L)の距離(例えばユークリッド距離)を用いて、次の式(4)のように算出される。
【0137】
(k)ij=(dj−dit(dj−di) (4)
類似度計算は、上式のように各顔特徴量グループ毎に行われ、総合的な類似度は、各顔特徴量グループの類似度の重み付け和で、次の式(5)のように算出される。
【0138】
ij=Wss+ΣWk(k)ij (5)
Σはk(k=1・・・L)についての総和である。
【0139】
また、別の類似度算出方法として、それぞれ第1と第2の顔特徴量のサンプルiとサンプルjとの類似度を、k次元部分空間上でのマハラノビス距離で表現することもできる。その場合の類似度は、次の式(6)のように算出できる。
【0140】
ij=(dj−ditdm-1(dj−di) (6)
mは共分散行列であり、次の式(7)のように算出される。
【0141】
dm=(1/M)ΣΣ(dfm−dc)(dfm−dct (7)
ここで、ΣΣはfとmについての総和である。fは各個人を表す変数であり、mは各個人毎の各サンプルを表す変数であり、Mは総サンプル数、すなわちfの総数×mの総数である。dcはf、mに関するすべてのdの平均であり、次の式(8)のように表される。
【0142】
c=(1/M)ΣΣdfm (8)
ここで、ΣΣはやはりfとmについての総和である。
【0143】
以上のように、第1の顔特徴量と第2の顔特徴量の類似度は、特徴空間での両者の距離で表現され、距離が近いほど類似度が高く、距離が遠いほど類似度が低いことになる。
【0144】
上述したように、本実施形態によれば、グループで利用する場合にも、代表者のID情報の記録媒体をグループ内で使い回し、また各人の通過間隔を所定時間内に行うようにすることで、同伴者の事前登録の手間を要せず、個人認証による待ち行列の発生を抑制して、効率的な利用を可能にするとともに、グループ利用時にも不正な割り込み人物の通行を阻止し、安全性を確保できる通行管理システム、及び通行管理方法を提供することができる。
【0145】
また本発明の範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、それらの変更された形態もその範囲に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明に係る通行管理システムの一実施形態について、その機能構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の通行管理システムによる通行管理の全体動作フローを示すフローチャートである。
【図3】図2における同伴者判定工程を示すフローチャートである。
【図4】図2における照合処理工程を示すフローチャートである。
【図5】通行管理の具体例1を示す図である。
【図6】通行管理の具体例2を示す図である。
【図7】通行管理の具体例3を示す図である。
【図8】顔画像から特徴量抽出するための、顔特徴部位の位置の例を示す図である。
【符号の説明】
【0147】
1 通行管理システム
2 ID読み取り装置
3 生体情報入力装置
4 通行ゲート開閉装置
10 入力処理部
11 第1のアクセス情報取得部
12 第1の生体情報取得部
13 同伴者判定部
14 照合処理部
15 第2のアクセス情報取得部
16 第2の生体情報取得部
17 情報更新部
18 判定出力部
20 制御部
21 アクセス情報記憶部
22 生体情報記憶部
30 出力処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人を特定するID情報の記録された記録媒体の提示を受けて、前記ID情報を含む第1のアクセス情報を取得する第1のアクセス情報取得手段と、
前記第1のアクセス情報取得手段により取得されたアクセス情報を記憶するアクセス情報記憶手段と、
前記アクセス情報記憶手段から最新のアクセス情報を第2のアクセス情報として取得する第2のアクセス情報取得手段と、
前記記録媒体の提示者である個人から、その生体情報を第1の生体情報として取得する第1の生体情報取得手段と、
前記ID情報と対応づけて生体情報を記憶する生体情報記憶手段と、
前記生体情報記憶手段、または前記ID情報を取得する記録媒体から、前記ID情報に基づき、対応する生体情報を第2の生体情報として取得する第2の生体情報取得手段と、
前記第1のアクセス情報取得手段により取得された第1のアクセス情報と、前記第2のアクセス情報取得手段により取得された第2のアクセス情報とに基づき、前記記録媒体の提示者である個人が同伴者であるかどうかを判定する同伴者判定手段と、
前記第1の生体情報取得手段により取得された第1の生体情報と、前記第2の生体情報取得手段により取得された第2の生体情報とを比較照合し、合致するかどうかを判定する照合処理手段と、
前記同伴者判定手段による判定結果、または前記照合処理手段による照合結果に基づいて、前記個人の通行の可否を決定する判定出力手段と、
前記判定出力手段の結果に基づいて、前記アクセス情報記憶手段の最新のアクセス情報を更新するかどうかを決定するアクセス情報更新手段と、を有する、
ことを特徴とする通行管理システム。
【請求項2】
前記同伴者判定手段は、
前記第1のアクセス情報及び前記第2のアクセス情報におけるID情報が一致するかどうかに基づいて、アクセスした個人が同伴者であるかどうかを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の通行管理システム。
【請求項3】
前記第1のアクセス情報及び前記第2のアクセス情報は、それぞれアクセスした時刻情報を含み、
前記同伴者判定手段は、
前記第2のアクセス情報における時刻情報から前記第1のアクセス情報における時刻情報への経過時間に基づいて、アクセスした個人が同伴者であるかどうかを判定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の通行管理システム。
【請求項4】
前記判定出力手段は、
前記同伴者判定手段により同伴者でないと判定され、かつ前記照合処理手段による照合結果が合致しない場合に、通行否と決定し、
前記同伴者判定手段により同伴者であると判定される、もしくは前記照合処理手段による照合結果が合致する場合に、通行可と決定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の通行管理システム。
【請求項5】
前記アクセス情報更新手段は、
前記判定出力手段の結果が通行可である場合に、前記第1のアクセス情報を、前記アクセス情報記憶手段の最新のアクセス情報として、更新記憶し、
前記判定出力手段の結果が通行否である場合に、前記第1のアクセス情報を、前記アクセス情報記憶手段の最新のアクセス情報として更新記憶しない、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の通行管理システム。
【請求項6】
前記生体情報記憶手段は、前記第1の生体情報取得手段により取得された第1の生体情報を記憶する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の通行管理システム。
【請求項7】
前記第1の生体情報及び前記第2の生体情報は、顔画像情報である、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の通行管理システム。
【請求項8】
個人を特定するID情報の記録された記録媒体の提示を受けて、前記ID情報を含む第1のアクセス情報を取得する第1のアクセス情報取得工程と、
アクセス情報を記憶するアクセス情報記憶手段から最新のアクセス情報を第2のアクセス情報として取得する第2のアクセス情報取得工程と、
前記記録媒体の提示者である個人から、その生体情報を第1の生体情報として取得する第1の生体情報取得工程と、
前記ID情報と対応づけて生体情報を記憶する生体情報記憶手段から、または前記ID情報を取得する記録媒体から、前記ID情報に基づき、対応する生体情報を第2の生体情報として取得する第2の生体情報取得工程と、
前記第1のアクセス情報取得工程において取得された第1のアクセス情報と、前記第2のアクセス情報取得工程において取得された第2のアクセス情報とに基づき、前記記録媒体の提示者である個人が同伴者であるかどうかを判定する同伴者判定工程と、
前記第1の生体情報取得工程において取得された第1の生体情報と、前記第2の生体情報取得工程において取得された第2の生体情報とを比較照合し、合致するかどうかを判定する照合処理工程と、
前記同伴者判定工程における判定結果、または前記照合処理工程における照合結果に基づいて、前記個人の通行の可否を決定する判定出力工程と、
前記判定出力工程の結果に基づいて、前記アクセス情報記憶手段の最新のアクセス情報を更新するかどうかを決定するアクセス情報更新工程と、を有する、
ことを特徴とする通行管理方法。
【請求項9】
前記同伴者判定工程は、
前記第1のアクセス情報及び前記第2のアクセス情報におけるID情報が一致するかどうかに基づいて、アクセスした個人が同伴者であるかどうかを判定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の通行管理方法。
【請求項10】
前記第1のアクセス情報及び前記第2のアクセス情報は、それぞれアクセスした時刻情報を含み、
前記同伴者判定工程は、
前記第2のアクセス情報における時刻情報から前記第1のアクセス情報における時刻情報への経過時間に基づいて、アクセスした個人が同伴者であるかどうかを判定する、
ことを特徴とする請求項8または9に記載の通行管理方法。
【請求項11】
前記判定出力工程は、
前記同伴者判定工程において同伴者でないと判定され、かつ前記照合処理工程において照合結果が合致しない場合に、通行否と決定し、
前記同伴者判定工程において同伴者であると判定される、もしくは前記照合処理工程において照合結果が合致する場合に、通行可と決定する、
ことを特徴とする請求項8乃至10の何れか1項に記載の通行管理方法。
【請求項12】
前記アクセス情報更新工程は、
前記判定出力工程の結果が通行可である場合に、前記第1のアクセス情報を、前記アクセス情報記憶手段の最新のアクセス情報として、更新記憶し、
前記判定出力工程の結果が通行否である場合に、前記第1のアクセス情報を、前記アクセス情報記憶手段の最新のアクセス情報として更新記憶しない、
ことを特徴とする請求項8乃至11の何れか1項に記載の通行管理方法。
【請求項13】
前記生体情報記憶手段は、前記第1の生体情報取得手段により取得された第1の生体情報を記憶する、
ことを特徴とする請求項8乃至12の何れか1項に記載の通行管理方法。
【請求項14】
前記第1の生体情報及び前記第2の生体情報は、顔画像情報である、
ことを特徴とする請求項8乃至13の何れか1項に記載の通行管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−286872(P2007−286872A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113090(P2006−113090)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】