説明

通話装置

【課題】車両移動無線機用のハンドセットの操作が容易な通話装置を提供する。
【解決手段】ホルダー3は弾性を有する樹脂材で形成され、ハンドセット2の通話部22および送話部23をそれぞれ内側で保持するとともにハンドセット2の着脱時にガイドとなる第1外壁31aおよび第2外壁31bと、第1外壁31aと第2外壁31bの間に手掛用開口部3aを設けて連結する連結部32とからなり、第1外壁31aおよび第2外壁31bの連結部32側の左右端には、第1外壁31aおよび第2外壁31bよりも高く形成され向かい合う第1係止片33aおよび第2係止片33bが設けられ、第1係止片33aと第1外壁31aの間と、第2係止片33bと第2外壁31bの間には第1切欠部34aおよび第2切欠部34bを形成し、第1係止片33aおよび第2係止片33bの突端には、それぞれ内側に向かって突出した係止爪35を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防自動車や救急車などで用いる移動無線通信機用のハンドセットの着脱が容易な通話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消防自動車や救急自動車に載置される移動無線通信機に接続され通話に使われるハンドセット100は、図7に示すように車内のコンソールや壁面や床面に取り付けられたホルダー110で振動や衝撃により脱落しないように保持されている。
ホルダー110は、車内に固定される背板111と、ハンドセット100の受話部101を係止する前記背板111の上端に溶着されたコ字状のアーム112と、ハンドセット100の送話部102を係止する前記背板111の下端に溶着されたコ字状のアーム113とアーム113の上端に連結されたコイルバネ114で構成されている。
ハンドセット100をホルダー110に装着する場合は、まず、送話部102をコイルバネ114に引っ掛けた後、ハンドセット100をアーム112側へ移動させ、受話部101がアーム112を一度を乗り越えてからアーム112に係止することで装着される。
同様にハンドセット100をホルダー110から取り外す場合は、受話部101をアーム112から取り外し、アーム113側へ移動させてコイルバネ114から外すことになる。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−16639号公報(従来の技術、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例においては、着脱する際には必ず一度ハンドセット100をアーム112側もしくはアーム113側へ移動させる動作が必要となり、その後にハンドセット100を着脱することになる。いわば2段階に外す動作により操作性が悪く、緊急を要する通話の際にハンドセットを取り外す時間が余計にかかることになる。
また、この種のハンドセットは消防自動車や救急自動車内のコンソールや壁面や床面で他の通信機器や救急医療機器機材に囲まれた極めて狭い場所に設置されるため、ハンドセットを移動させて着脱するスペースがないこともある。
【0005】
本発明は以上述べた問題点を解決し、消防自動車や救急車などで用いる移動無線機用のハンドセットの操作が容易であり、且つ操作に余分なスペースを必要としない通話装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、ハンドセットと、同ハンドセットを着脱自在に保持するホルダーからなる通話装置において、
前記ハンドセットは、受話部と送話部と、同受話部と同送話部を連結して手掛となる手掛部とからなり、
前記ホルダーは、弾性を有する樹脂材で形成され、前記ハンドセットの前記受話部および前記送話部をそれぞれ内側で保持するとともに前記ハンドセットの着脱時にガイドとなる第1外壁および第2外壁と、前記第1外壁と前記第2外壁の間に手掛用開口部を設けて連結する連結部からなり、
前記第1外壁および前記第2外壁の前記連結部側の左右端には、前記第1外壁および前記第2外壁よりも高く形成され左右で向かい合う第1係止片および第2係止片が設けられ、前記第1係止片と前記第1外壁の間と、前記第2係止片と前記第2外壁の間にはそれぞれ前記第1外壁および前記第2外壁の高さより低い位置まで切欠いた第1切欠部および第2切欠部を形成し、
前記第1係止片および前記第2係止片の突端には、それぞれ内側に向かって突出した係止爪が備えられたことを特徴とする。
【0007】
向かい合う前記第1係止片の間隔および向かい合う前記第2係止片の間隔は、前記ハンドセットを保持するときに前記ハンドセットの当接する部分を挟持するように形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した本発明の通話装置は、ハンドセットをホルダーに対して前面からの一方向で着脱することができるため、操作性が向上し、緊急を要する通話の際はすばやく着脱することができる。また、従来例のようにハンドセットを上下に移動させて着脱するスペースを必要としないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による通話装置の斜視図である。
【図2】本発明によるハンドセットの斜視図である。
【図3】図1の通話装置を縦中心に切断した内部機構を省略した断面図である。
【図4】本発明によるホルダーの斜視図である。
【図5】本発明による通話装置の側面図である。
【図6】本発明によるハンドセットとホルダーの着脱方向を示す図である。
【図7】従来例を示し(A)はホルダーの図で、(B)はハンドセットをホルダーに取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1に係る通話装置1は、図1に示すように消防自動車や救急自動車に載置される無線通信機に接続され、通話や通信に使われるハンドセット2と、車内のコンソールや壁面や床面に取り付けられてハンドセット2を保持するホルダー3とからなる。
【0012】
尚、図1でハンドセット2が位置する方向を前面とし、ホルダー3が位置する方向を背面とし、ハンドセット2の左上方向を上面とし、右下方向を下面とし、ハンドセット2を前面側から見て左側を左側面とし、右側を右側面として説明を進める。
【0013】
ハンドセット2は、図2および図3に示すように、前面から見ると縦長の小判形をした前面ケース20と、前面ケース20の背面側に組み付けられた背面ケース21で外郭が構成され、上端側にホルダー3側に向かって突出して設けられた受話部22と、下端側にホルダー3側に向かって突出して設けられた送話部23と、受話部22と送話部23を連結して手掛となる手掛部24とからなる。
【0014】
前面ケース20と背面ケース21が嵌合する合せ目25は、側面から見ると前面ケース20と平行な緩やかな弓形を成し前面ケース20の側面周囲は合せ目25に向かい徐々に広がる傾斜面20aを形成している。
また、背面ケース21の受話部22と送話部23はそれぞれ先端部の受話面22aと送話面23aに向けて外径が徐々に細くなるように受話側傾斜面21aと送話側傾斜面21bが形成されている。さらに、背面ケース21の下端からは無線通信機に接続されるコード4が引き出されている。
前面ケース20と背面ケース21の左右側面で受話部22と送話部23の近傍には、合せ目25を跨いで凸状のリブ26が複数本設けられている。
以上の構成により、ハンドセット2は合せ目25の部分が最も縦長で幅広に形成されている。
【0015】
ホルダー3は、図3から図5に示すように、弾性を有する例えばポリプロピレンの樹脂材で形成され、ハンドセットの通話部22および送話部23を内側で保持してガイド機構を有する第1外壁31aおよび第2外壁31bと、第1外壁31aと第2外壁31bの間に手掛用開口部3aを設けて連結する連結部32と、ホルダー3を車両に固定する取付板5とからなり、前面側から見るとハンドセット2の縦長の小判形の外径を若干大きくした形状となっている。
【0016】
第1外壁31aは、内側にハンドセット2の受話部22を保持するために、受話面22aと受話側傾斜面21aの形状に合わせた第1保持部30aを有し、第2外壁31bは、内側にハンドセット2の送話部23を保持するために、送話面23aと送話側傾斜面21bの形状に合わせた第2保持部30bを有する。第1外壁31aと第2外壁31bの高さはハンドセット2の保持状態で合わせ目25までの高さとなっているが、これに限らずハンドセット2を保持する壁が少しでもあれば良い。
また、第2外壁31bの下端にはコード4を導出するためのコード導出用凹部31b1が設けられている。
【0017】
連結部32は、使用者の手が挿入できるように第1保持部30aと第2保持部30bよりも背面側に低く形成されハンドセット2を装着した時に手掛用開口部3a用の空間が設けられるようになっている。連結部32の側面は第1外壁31aと、第2外壁31bのそれぞれの左右側面を面一となるように連結している。
【0018】
第1外壁31aの連結部32側の左右端には、それぞれ、第1外壁31aの高さよりも高く形成され左右で向かい合う第1係止片33a、33aが設けられている。第1係止片33a、33aと第1外壁31aの間には第1外壁31aより低い位置まで緩やかな三角形状に切欠いた第1切欠部34aがある。第1係止片33aは手掛用開口部3aから連続した辺と、切込部34から立ちあがった辺により山形を形成することで、先端が弾性を有しながらも強度を有するものとなる。
第1係止片33a、33aのハンドセット側の突端には、内側に向かって突出した係止爪35が備えられている。係止爪35はハンドセット側の先端が細くホルダー3の底面側が広い三角形状となっている。
同様に、第2外壁31bの連結部32側の左右端には、それぞれ、第2外壁31bの高さよりも高く形成され左右で向かい合う第2係止片33b、33bが設けられている。第2係止片33b、33bと第2外壁31bの間には第2外壁31bより低い位置まで緩やかな三角形状に切欠いた第2切欠部34bがある。第2係止片33bは手掛用開口部3aから連続した辺と、切込部34から立ちあがった辺により山形を形成することで、先端が弾性を有しながらも強度を有するものとなる。
第2係止片33b、33bのハンドセット側の突端には、内側に向かって突出した係止爪35が備えられている。係止爪35はハンドセット側の先端が細くホルダー3の底面側が広い三角形状となっている。
尚、第1係止片33aと第1外壁31aの間と第2係止片33bと第2外壁31bの間にそれぞれ第1切欠部34aおよび第2切欠部34bを備えることで、第1係止片33aと第2係止片33bは、第1外壁31a第と2外壁31bよりも若干背を高くすることで弾性を有することが出来き、ハンドセット2のホルダー3への着脱を容易にし、且つホルダー3全体の高さを抑えコンパクトにすることが可能となる。
また、第1係止片33aと第2係止片33bが拡開と反発を繰り返しても、第1切欠部34aおよび第2切欠部34bがあることで、第1外壁31aおよび第2外壁31bに拡開の影響を与えることがなく、ホルダー3の変形を防止できる。
【0019】
向かい合う第1係止片33a、33aの間隔、および向かい合う第2係止片33b、33bの間隔は、ハンドセット2を保持するときにハンドセットの当接する部分を挟持するように形成されるとともに、向かい合う係止爪35の間隔はハンドセットの当接する部分よりも狭く形成されていることで、ハンドセット3を強固に挟持することが可能となり、ホルダー3から脱落することはない。
【0020】
上記の構成により、ハンドセット2をホルダー3に保持する際の動作について説明する。ホルダー3は弾性を有する樹脂材で成形され、4箇所設けられた第1係止片33a、33aと第2係止片33b、33bは、第1外壁31aおよび第2外壁31bとの間に第1切欠部34aおよび第2切欠部34bが設けられていることから、図6に示すように前方から直接ホルダー3にハンドセット2を差し込むと、ハンドセット2は係止爪35の三角形状に沿って移動する。ハンドセット2が挿入されると4箇所の第1係止片33a、33aと第2係止片33b、33bはハンドセット2に押されて拡開する。
そのままハンドセット2を移動すると受話側傾斜面21aが第1保持部30aをガイドとし、送話側傾斜面21bが第2保持部30bをガイドとして移動することになるため、ハンドセット2は上下を抑えられ、また第1係止片33aと第2係止片33bに左右を抑えられていることで上下左右にずれることなくスムーズに移動することができる。
【0021】
受話部22が第1保持部30aに収納され、同時に送話部23が第2保持部30bに収納されると、係止爪35が最も幅広であるハンドセット2の合せ目25を乗り越えて、前面ケース2の傾斜面20aに位置することから、第1係止片33a、33aと第2係止片33b、33bは弾性により閉じられる。これによりハンドセット2を4箇所の係止爪35で強固に挟持することができる。
また第1外壁31aおよび第2外壁31bもハンドセット2の最も縦長部分である合せ目25と当接することで、ハンドセット2を壁掛けで使用した場合でも、ハンドセット2の下部が第2外壁31bで支えられることでホルダー3から脱落することはない。
【0022】
次に、ハンドセット2をホルダー3から取り外す際の動作について説明する。使用者は手掛用開口部3aに手を挿入してハンドセット2を握り前方へ引き出す。第1係止片33a、33aと第2係止片33b、33bは弾性を有することで拡開して、係止爪35が合せ目25を通過すると取り外すことができる。
【0023】
ハンドセット2は、係止爪35と接する部分にリブ26を設けていることで、係止爪35はリブ26に沿って移動する。これによりハンドセット2と接する面が少なくなり摩擦が減ることによりハンドセット2の着脱が容易になるとともに、係止爪35による傷がなくなる。また、保持する際は、係止爪35がリブ26の上端に引っ掛かり係止されることから、より確実に係止される。
【0024】
以上説明したように、ハンドセット2は、ホルダー3に対して前面からの一方向で着脱することができるため、操作性が向上し、緊急を要する通話の際はすばやく着脱することができる。また、従来例のようにハンドセットを上下にスライドさせて着脱するスペースを必要とせず、さらに、ホルダー3は前面視でハンドセット2よりも若干大きい形状であることで、消防自動車や救急自動車内のコンソールや壁面や床面で他の通信機器や救急医療機器機材に囲まれた極めて狭い場所に設置可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1 :通話装置
2 :ハンドセット
20 :前面ケース
21 :背面ケース
21a:受話側傾斜面
21b:送話側傾斜面
22 :受話部
23 :送話部
25 :合せ目
26 :リブ
3 :ホルダー
3a :手掛用開口部
30a:第1保持部
30b:第2保持部
31a:第1外壁
31b:第2外壁
32 :連結部
33a:第1係止片
33b:第2係止片
34a:第1切欠部
34a:第2切欠部
35 :係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドセットと、同ハンドセットを着脱自在に保持するホルダーからなる通話装置において、
前記ハンドセットは、受話部と送話部と、同受話部と同送話部を連結して手掛となる手掛部とからなり、
前記ホルダーは、弾性を有する樹脂材で形成され、前記ハンドセットの前記受話部および前記送話部をそれぞれ内側で保持するとともに前記ハンドセットの着脱時にガイドとなる第1外壁および第2外壁と、前記第1外壁と前記第2外壁の間に手掛用開口部を設けて連結する連結部からなり、
前記第1外壁および前記第2外壁の前記連結部側の左右端には、前記第1外壁および前記第2外壁よりも高く形成され左右で向かい合う第1係止片および第2係止片が設けられ、前記第1係止片と前記第1外壁の間と、前記第2係止片と前記第2外壁の間にはそれぞれ前記第1外壁および前記第2外壁の高さより低い位置まで切欠いた第1切欠部および第2切欠部を形成し、
前記第1係止片および前記第2係止片の突端には、それぞれ内側に向かって突出した係止爪が備えられたことを特徴とする通話装置。
【請求項2】
向かい合う前記第1係止片の間隔および向かい合う前記第2係止片の間隔は、前記ハンドセットを保持するときに前記ハンドセットの当接する部分を挟持するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の通話装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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