説明

通電加熱型ハニカム体の制御システム

【課題】通電する電圧及び/又は電流を制御して通電加熱型ハニカム体の温度制御が可能、かつ通電加熱型ハニカム体内の温度を正確に検出可能な通電加熱型ハニカムシステムである。とりわけ、通電加熱型ハニカム体の劣化判断が可能となり、温度検出の精度を向上でき、加えて、劣化を見込んだ温度コントロールが実施でき、信頼性を向上できる通電加熱型ハニカムシステムである。
【解決手段】内燃機関から排出される排ガス浄化に用いられる通電加熱型ハニカム体の制御システム1であって、通電加熱型ハニカム体7に電力を供給するための電源部5と、電源部3から通電加熱型ハニカム体7に通電する電圧及び/又は電流を制御可能な制御部3と、を少なくとも備えており、制御部3において電圧及び電流値から通電加熱型ハニカム体7の抵抗値を算出し、得られた抵抗値から通電する電圧及び/又は電流を制御して通電加熱型ハニカム体の温度制御を行う通電加熱型ハニカムシステム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電加熱型ハニカム体の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン、ディーゼル等の内燃機関から排出されるHC、CO、NO、PM等の有害物質については世界的規模で規制が強化されているが、昨今の地球温暖化問題に対して上述したエミッションのほかに、燃費の向上が求められている。
【0003】
ところで、燃費の向上を行うと排ガス温度の低下が起こる。従来は触媒がコートされたハニカム構造体を用いることで排ガス浄化を行っていたが、排ガス温度の低温化により触媒が活性しない状態が比較的長時間続く現象が発生する。とりわけ、排ガスエミッションでは始動直後の所謂コールドエミッションの排出が多くなる。このように、排ガス温度が低下し、かつ触媒を早期に暖めることができないと、結果として排ガスが浄化されないこととなり、従来技術では対応が困難になってきた。
【0004】
このような問題に対して、触媒を暖める手段として通電加熱型ハニカム体(EHC)を使用した排ガス処理システムがある。このシステムでは、EHCを使用するために、EHCに印加する主に電圧のコントロールを行い、温度を制御するが、温度コントロールはEHCの出口側に設置される温度センサーの値により制御を行うことが一般的である。しかしながら、排ガス温度を利用しての温度コントロールはEHC本体の温度とタイムラグが生じ正確な温度制御ができない。さらに、燃費の悪化やEHC本体の信頼性を低下させる要因となる。ここで、EHC本体内部に温度センサーを設置すればタイムラグは無くなるが、温度センサー自体の破壊やEHCに加工が必要となり信頼性低下やコストアップの要因となる。
【0005】
このように、従来のシステムでは、EHC温度を直接的に検知する手段がなく、排ガス温度から間接的にEHC温度を推定する方法が一般的であるが、触媒反応が加わりEHC温度を正確に把握できない。
【0006】
さらに、EHCの劣化度を直接的に測定し、その測定した結果に基づいて、温度制御することもできなかった。
【0007】
このような問題に対し、下記特許文献1〜2がある。
【0008】
特許文献1では、排気通路を有するハニカム構造体からなる触媒を担持した担体(以下「触媒担体」と言う)に一対の電極を付設して、触媒担体を電気加熱する際に、この触媒担体を均一に加熱するために、触媒担体の外周壁から内方へスリットを入れて電流を迂回させる構造とした電気加熱式触媒が開示されている。しかし、この特許文献1では、電極部が触媒担体等の外周壁に付設してあるため、ハニカムの長さ方向に均一な加熱がしづらく、排ガスを均一に温めることができず、局部的に触媒の活性化温度とならない虞が高い。その結果、EHC内の温度を正確に直接的に検知することができず、EHCから排出される排ガス温度から間接的にEHC温度を推定する方法によって温度検知されるため、EHC本体の温度とタイムラグが生じてしまい、正確な温度制御ができない。さらに、劣化度を直接的に測定し、その測定した結果に基づいて、温度制御することもできない。
【0009】
特許文献2では、自己発熱型DPFにおいて、フィルタ本体端面に形成される電極層の形成面積及び形状を最適化することによって、フィルタ本体の温度差を低減し、再生効率の高いDPFを提供することを目的に、多孔質導電性セラミックス等からなるフィルタ本体の両端面に、その中心部を除く周囲に電極層を形成させた自己発熱型ディーゼルパティキュレートフィルタが開示されている。しかし、特許文献2でも、均一な加熱ができずEHC本体内部正確な温度を検知することができず、EHC本体の温度とタイムラグが生じてしまい、正確な温度制御ができない。さらに、劣化度を直接的に測定し、その測定した結果に基づいて、温度制御することもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8―218856号公報
【特許文献2】特開2000−297625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、内燃機関から排出される排ガス浄化に用いられる通電加熱型ハニカム体の制御システムであって、通電加熱型ハニカム体に電力を供給するための電源部と、電源部から前記通電加熱型ハニカム体に通電する電圧及び/又は電流を制御可能な制御部と、を少なくとも備えており、制御部において電圧及び電流値から通電加熱型ハニカム体の抵抗値を算出し、得られた前記抵抗値から通電する電圧及び/又は電流を制御して通電加熱型ハニカム体の温度制御を行う通電加熱型ハニカムシステムとして構成されることにより、通電する電圧及び/又は電流を制御して通電加熱型ハニカム体の温度制御が可能、かつ通電加熱型ハニカム体内の温度を正確に検出可能な通電加熱型ハニカムシステムを提供する。とりわけ、通電加熱型ハニカム体の劣化判断が可能となり、温度検出の精度を向上でき、加えて、劣化を見込んだ温度コントロールが実施でき、信頼性を向上できる通電加熱型ハニカムシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明により、以下の通電加熱型ハニカム体が提供される。
【0013】
[1] 内燃機関から排出される排ガス浄化に用いられる通電加熱型ハニカム体の制御システムであって、前記通電加熱型ハニカム体に電力を供給するための電源部と、前記電源部から前記通電加熱型ハニカム体に通電する電圧及び/又は電流を制御可能な制御部を少なくとも備えており、前記制御部において電圧及び電流値から通電加熱型ハニカム体の抵抗値を算出し、得られた前記抵抗値から前記通電する電圧及び/又は電流を制御して通電加熱型ハニカム体の温度制御を行う通電加熱型ハニカムシステム。
【0014】
[2] 前記通電加熱型ハニカム体が、温度変化によって抵抗値が変化する材料から構成されている[1]に記載の通電加熱型ハニカムシステム。
【0015】
[3] 前記通電加熱型ハニカムに触媒がコートされている[1]又は[2]に記載の通電加熱型ハニカムシステム。
【0016】
[4] 前記制御部が、通電する電圧及び電流を制御して前記通電加熱型ハニカム体に流入する排ガス温度を触媒活性温度以下に制御可能、かつ、通電した前記電圧及び電流値から前記通電加熱型ハニカム体の抵抗値を算出し、初期の抵抗値に対する変化により前記通電加熱型ハニカム体の劣化度を診断可能である[1]〜[3]のいずれかに記載の通電加熱型ハニカムシステム。
【0017】
[5] 前記劣化度に基いて、前記制御部が前記通電加熱型ハニカム体の温度制御を行う[4]に記載の通電加熱型ハニカムシステム。
【0018】
[6] 前記通電加熱型ハニカム体がセラミックスと金属との複合材料で構成されている[1]〜[5]のいずれかに記載の通電加熱型ハニカムシステム。
【0019】
[7] さらに、前記通電加熱型ハニカム体の内部及び/又は外部には、前記排ガスの流入温度及び/又は前記排ガスの流出温度を検出可能な温度検出部が備えられている[1]〜[6]のいずれかに記載の通電加熱型ハニカムシステム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、制御部において電圧及び電流値から通電加熱型ハニカム体の抵抗値を算出し、得られた前記抵抗値から通電する電圧及び/又は電流を制御して通電加熱型ハニカム体の温度制御を行う通電加熱型ハニカムシステムとして構成されることにより、通電する電圧及び/又は電流を制御して通電加熱型ハニカム体の温度制御が可能、かつ通電加熱型ハニカム体内の温度を正確に検出可能な通電加熱型ハニカムシステムを提供できるといった優れた効果を奏することができる。とりわけ、通電加熱型ハニカム体の劣化判断が可能となり、温度検出の精度を向上でき、加えて、劣化を見込んだ温度コントロールが実施でき、信頼性を向上できる通電加熱型ハニカムシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】本発明の一実施形態が適用される通電加熱型ハニカムシステムの一実施形態を示すものであって、模式図である。
【図1B】本発明の別の実施形態が適用される通電加熱型ハニカムシステムの一実施形態を示すものであって、模式図である。
【図1C】本発明の別の実施形態が適用される通電加熱型ハニカムの(一方の端面(排ガス流入側端面)を模式的に示す平面図である。
【図2】本発明の別の実施形態が適用される通電加熱型ハニカムシステムの一実施形態を示すものであって、模式図である。
【図3】本発明の別の実施形態が適用される通電加熱型ハニカムシステムの一実施形態を示すものであって、模式図である。
【図4A】12V/5秒間での抵抗変化と基準温度(100℃)での抵抗値との関係を示したグラフである。
【図4B】劣化検知における通電加熱型ハニカムの温度−抵抗曲線群を示したグラフである。
【図5】未燃炭化水素排出量測定結果について、目標温度400℃までの昇温傾向を示したグラフである。
【図6】実施例の実体計測値を測定する際の通電加熱型ハニカム体の抵抗値の測定方法を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の通電加熱型ハニカム体の制御システムについて具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える通電加熱型ハニカム体の制御システムを広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
[1]本発明の通電加熱型ハニカム体の制御システム:
本発明の通電加熱型ハニカム体の制御システムは、図1Aに示されるように、内燃機関から排出される排ガス浄化に用いられる通電加熱型のハニカム構造体の制御システム1であって、通電加熱型ハニカム7に電力を供給するための電源部5と、電源部3から通電加熱型ハニカム7に通電する電圧及び/又は電流を制御可能な制御部3と、を少なくとも備えており、制御部3において電圧及び電流値から通電加熱型ハニカム7の抵抗値を算出し、得られた前記抵抗値から通電する電圧及び/又は電流を制御して通電加熱型ハニカムの温度制御を行う通電加熱型ハニカムシステム1として構成される。
【0024】
[1−1]制御部:
本実施形態における制御部は、後述の電源部から通電加熱型ハニカム体に通電する電圧及び/又は電流を制御可能に構成されている。すなわち、本実施形態では、制御部において電圧及び電流値から通電加熱型ハニカム体の抵抗値を算出し、得られた抵抗値から通電する電圧及び/又は電流を制御して通電加熱型ハニカム体の温度制御を行うものとして構成されている。具体的には、抵抗値は温度依存性を有するため、電圧、電流値より計算された抵抗値が温度を示すことになり、この抵抗値により通電加熱型ハニカム体の内部温度を確実に検出できるだけでなく、抵抗値から算出した温度によって、印加する電圧あるいは電流量を制御することで、通電加熱型ハニカム体内の温度コントロールを確実に行うことができる。
【0025】
また、従来のような、温度検出手段をハニカム内或いはハニカム外部に設置して温度検出及び温度制御を行う方式に比べて、温度制御をするために温度検出手段が不要となり、算出された抵抗値により直接電圧あるいは電流を抑制できる。
【0026】
なお、この制御部は、主にエンジンの制御に使用される電子制御装置(Electronic Control Unit、以下適宜「ECU」という。)として構成したものに、前述のような機能を備えさせてもよい。
【0027】
具体的には、図1Aに示されるように、制御部3と、後述の電源部5、通電加熱型ハニカム体7は、電気接続されている。
【0028】
[1−2]電源部:
本実施形態の電源部は、通電加熱型ハニカム体に電力を供給するために設けられるものであり、通常車載に搭載されるバッテリー又はオルタネータ等から構成される。この電源部から、通電加熱型ハニカム体に電圧、電流が印加されることによって、通電加熱型ハニカム体が発熱し、通電加熱型ハニカム体内で、内燃機関から排出された排ガスの浄化を行うことができる。この電源部の電圧としては、12〜24V、あるいは100〜200Vであることが好ましい。通常、車載されるバッテリー又はオルタネータ等の電圧は、前述の所定範囲内であるため、従来からある電源部にそのまま適応できるため、汎用性を備えることができるからである。
【0029】
具体的には、図1Aに示されるように、電源部5は、制御部3を介して、通電加熱型ハニカム体7に電気接続され、通電加熱型ハニカム体内に電圧、電流を印加できる。
【0030】
[1−3]通電加熱型ハニカム体:
本実施形態における通電加熱型ハニカム体は、電源部から制御部を介して通電されることによって発熱するとともに、その発熱によって内燃機関からの排出ガスを加熱可能であることが望ましい。このように構成されることによって、制御部によって、通電加熱型ハニカム体に通電する電圧及び/又は電流を制御でき、通電加熱型ハニカム体の温度制御を行うことができるからである。具体的には、通電加熱型ハニカム体が、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔と、排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に体積抵抗率が低い電極部と、電極部の間に体積抵抗率が高い発熱部とが備えられていることが好ましい。均一な発熱と加熱を確実に行えるとともに、制御部が算出された抵抗値から通電する電圧及び/又は電流を制御して、通電加熱型ハニカム体全体の温度制御を確実に行えるからである。
【0031】
[1−3−1]電極部:
通電加熱型ハニカム体の電極部は、排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に形成されるとともに、その電極部では、体積抵抗率が低くなるように形成されることが好ましい。電流を十分にかつハニカム構造体全体に均質に流すことができ、後述の発熱部での発熱と(排ガスの)加熱とを確実にでき、制御部での温度制御を確実に行えるからである。
【0032】
[1−3−2]発熱部:
通電加熱型ハニカム体の発熱部は、両端面全面に形成される電極部の間に形成されるとともに、その発熱部では、体積抵抗率が高くなるように形成されることが好ましい。電極部から十分に均質に発熱部に通電されることによって、発熱部での発熱と(排ガスの)加熱とを確実にでき、制御部での温度制御を確実に行えるからである。
【0033】
たとえば、図1Aに示されるように、電極部が、通電加熱型ハニカム体内に体積抵抗率が低い電極部7として構成され、一方の端面(排ガス流入側端面)に電極部7aが形成され、他方の端面(排ガス流出側端面)に電極部7bが形成され、一方の端面(排ガス流入側端面))の電源端子から電極部7aに通電が行われ、発熱部7cに電流が流れた後、他方の端面(排ガス流出側端面))の電極部7b、さらにその電極部に接続されている電源端子から、電流が流れ出るものを一例として挙げることができる。なお、前述のように、電極部7a、7bは体積抵抗率が低く、発熱部7cは体積抵抗率が高く形成されているため、電極部7aを通電した電流が、発熱部7cに通電された際に発熱部で発熱し温度上昇がおこり、排ガスの温度を上昇させることができる。
【0034】
[1−3−3]通電加熱型ハニカム体のその他の構成:
さらに、通電加熱型ハニカム体は、金属とセラミックの複合材料から構成されることが好ましい。金属を含有させることで導電性を確保しながら、セラミックを含有させることで、成形しやすくできるためである。ただし、「通電加熱型ハニカム体は、金属とセラミックの複合材料から構成される」ものには、通電加熱型ハニカム体全体の、金属とセラミックの含有量が一定量からなる複合材料から構成されるものを意味するものではない。通電加熱型ハニカム体には、体積抵抗率が低い電極部と体積抵抗率が高い発熱部とを備えるため、体積抵抗率が低い電極部では、ハニカム全体に対して(電極部を除いた残余の部分に対して)金属含有率が高く構成されるとともに、体積抵抗率が高い発熱部では、ハニカム全体に対して(発熱部を除いた残余の部分に対して)金属含有率が低く構成されることが好ましい。このように電極部がハニカム全体に対して(電極部を除いた残余の部分に対して)金属含有率が高く構成されることによって、通電しやすくなるとともに、発熱部がハニカム全体に対して(発熱部を除いた残余の部分に対して)金属含有率が低く構成されることによって、発熱を容易行えるため、浄化効率を向上させながら、制御部によって確実に印加される電圧量を調整でき、通電加熱型ハニカム体の温度制御を行うことができる。
【0035】
また、通電加熱型ハニカム体が、温度変化によって抵抗値が変化する材料から構成されていることが好ましい。温度変化によって抵抗値が変化する材料から構成されることによって、通電加熱型ハニカム体(発熱部)の温度上昇を、得られた抵抗値の変化によって制御部が検知でき、通電する電圧及び/又は電流を制御しやすくなるため、通電加熱型ハニカム体の温度制御を確実に行うことができる。たとえば、通電加熱型ハニカム体を、Si金属とSiCより構成することによって、温度変化によって抵抗値が変化し、温度制御を確実に行える。
【0036】
好ましいのは、通電加熱型ハニカム体がSiとSiCからなり、Siの含有比率が5%以上70%以下、さらに好ましくはSiの含有比率が10%以上50%以下であり、さらに電極部のSi含有量を、発熱部に対して1.2倍〜15倍の範囲で含有させる。これにより、電極部を構成するSiの構成比率が発熱部よりも大きくなり、発熱部の断面内電流分布を均一化でき、かつ、所望の抵抗値を有する通電加熱型ハニカム体を得ることができる。
【0037】
すなわち、電極部を構成するSiの構成比率を発熱部よりも大きくし、或いは、発熱部を構成するSiCの構成比率を電極部よりも大きくして、電極部及び発熱部における体積抵抗率を任意に変更し、通電加熱型ハニカム体(発熱部)の温度上昇を、得られた抵抗値の変化によって制御部で検知し、通電する電圧及び/又は電流を制御する。
【0038】
また、発熱部での加熱温度は触媒活性温度であることが好ましい。触媒活性温度に排気ガスを温度上昇させるように発熱を生じさせることにより、触媒担体での触媒による浄化処理を確実に向上させるものである。ここで、触媒活性温度は、担持する触媒によって差異はあるものの、一般的には、250℃〜400℃の範囲内である。
【0039】
また、発熱部の体積抵抗率が0.1〜10Ωcmで、電極部の体積抵抗率が発熱部の体積抵抗率の1/10以下であることが好ましい。発熱部において発熱を確実に生じさせ所望温度に温度上昇(加熱)させるとともに、発熱に伴う過剰な温度上昇を制御でき、耐クラック性を向上させることができ、均一な発熱と加熱を行えるからである。さらに、均一な発熱と加熱を制御部によって制御しやすくなるからである。他方、発熱部の体積抵抗率が0.1Ωcm未満であると、発熱部への通電が過剰となるだけでなく、発熱が十分おこらないため、排ガスを温度付与(加熱)できなくなり、10Ωcm超であると、体積抵抗率が高すぎ、目的の昇温速度が得られなくなる。さらに、電極部の体積抵抗率が発熱部の体積抵抗率の1/10超であると、均一な通電ができないために、不均一な温度分布となり、温度制御しづらくなるから好ましくない。
【0040】
また、電極部と、電極部を除いた通電用ハニカム構造体の残部との熱膨張係数差は、1.0×10−6/℃(40〜800℃)以下であることが好ましい。加熱冷却時における熱応力でクラックが発生し難いものとなるからである。
【0041】
また、金属の含有率が、両端面全体から通電加熱型ハニカム体の中央領域に向けて漸減して形成されることが好ましい。電極部と発熱部における熱膨張差の境界が無くなり応力集中が小さくなるために、クラックが発生し難くクラックの発生を防止でき、制御し易くなるからである。なお、この金属の含有率が、両端面から通電加熱型ハニカム体の中央領域に向けて漸減する割合としては、たとえば、含有率が変化する遷移領域長さを電極部長さと同等あるいは2倍程度とするものを一例として挙げることができる。ただし、このようなものに限定されるものでなく、本発明を逸脱しないものであればよい。
【0042】
さらに、通電加熱型ハニカム体に印加可能な電圧が12〜24V、あるいは100〜200Vであることが好ましい。このような所望電圧を印加できることで、車に搭載するバッテリー容量に対応できるためである。例えば、24V超であると、車に搭載するバッテリーに対応できず、また燃費効率も低減するため好ましくなく、12V未満であると、EHC内での発熱が十分とならないため、浄化処理に支障がでる虞があるため好ましくない。
【0043】
なお、電極がハニカム端面からハニカム体の中央領域に向けて1mm以上10mm以下の領域に形成されていると、均一な加熱ができ、耐クラック性を向上させることができる。他方、電極が、ハニカム端面からハニカム体の中央領域に向けて1mm未満であると、電源との接続において信頼性が確保されず、接点抵抗の増加によって局所的な発熱が発生するという問題が生じてしまうため好ましくなく、また、電極がハニカム端面からハニカム体の中央領域に向けて10mm超の領域に形成される場合には、後述の発熱部の面積が小さくなるか、ハニカム全長が過大に長くなってしまうため、好ましくない。
【0044】
また、発熱部の熱伝導率は10W/mK以上100W/mK以下であることが好ましい。発熱部で発熱された熱が均一に伝わるため通電加熱型ハニカム体をより均一に加熱することが可能である。熱伝導率が高すぎると、発熱部で発熱した熱が外部へ放出されやすくなり、通電加熱型ハニカム体に触媒をコートした場合、触媒活性が得られ難くなる。
【0045】
また、発熱部のCTE(Coefficient of thermal expansion(熱膨張係数))が8.0×10−6/℃(40〜800℃以下)であることが好ましい。発熱部にクラックが生じることを防ぐことができるため好ましい。
【0046】
さらに、通電加熱型ハニカム体に触媒がコートされていることが好ましい。浄化処理効率を向上できるからである。また、この通電加熱型ハニカム体の後方に、図1Bに示されるように、触媒担体11を合わせて使用する場合には、相乗効果的に浄化処理効率を向上させるため好ましい。特に、通電加熱型ハニカム体は、電気によって通常のハニカムよりも早期に昇温でき、エンジン始動直後の排ガスを浄化できるため、浄化の際に発生する発熱(HC、COを酸化する際に生じる発熱)と、この通電加熱型ハニカム体に触媒をコートした触媒コート通電用ハニカム体が加熱した排ガスの熱と、を利用でき、更に、そのような謂わば2重の意味で加熱された排ガスが、その後方に備えられる触媒担体を暖気させ、触媒担体を昇温させ早期に触媒活性できる。
【0047】
また、通電加熱型ハニカム体には、酸化触媒、他の触媒や浄化材が担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)からなるNO吸蔵触媒、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(HydroCarbon)吸着材等が担持されていてもよい。
【0048】
触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が好適に用いられる。
【0049】
たとえば、触媒にはCeとそれ以外の少なくとも1種の希土類金属、アルカリ土類金属、または遷移金属を含んでもよい。
【0050】
ここで、希土類金属としては、たとえば、Sm、Gd、Nd、Y、Zr、Ca、La、Pr等から選択することができる。
【0051】
また、触媒に含まれるアルカリ土類金属としては、たとえば、Mg、Ca、Sr、Ba等から選択することができる。
【0052】
また、触媒に含まれる遷移金属としては、たとえば、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sc、Ti、V、Cr等から選択することができる。
【0053】
このような触媒の担持方法は特に限定されないが、例えば、通電加熱型ハニカム体の、発熱部の隔壁に対して、触媒成分を含む触媒液をウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法等が挙げられる。また、例えば、ディッピング法等の従来公知のセラミック膜形成方法を利用して、セラミックスラリーをハニカム構造の基材の隔壁に付着させ、乾燥、焼成する方法等により、薄膜状の触媒層を形成してもよい。この際、触媒層の平均細孔径はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や配合比等、気孔率はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や造孔材の量等、コート層厚みはセラミックスラリーの濃度や膜形成に要する時間等を制御することにより所望の値に調整することができる。
【0054】
なお、酸化触媒、NO吸蔵触媒等の触媒成分は、高分散状態で担持させるため、予めアルミナのような比表面積の大きな耐熱性無機酸化物に一旦担持させた後、ハニカム構造体(たとえば隔壁等)に担持させてもよい。
【0055】
また、上記触媒は、例えば、吸引法等の従来公知の触媒担持方法を応用して、触媒スラリーを隔壁の細孔内に担持させ、乾燥、焼成する方法等により形成してもよい。
【0056】
さらに、通電加熱型ハニカム体には、ストレスレリーフが形成されていることも好ましい。通電加熱型ハニカム体内での応力緩和が可能となるからである。このストレスレリーフとしては、単純に切り込みを入れたものでも、応力緩和という点で効果的ではあるが、より好ましいのは、そのストレスレリーフの先端部を丸く形成することである。先端を丸く形成することで、先端部分で応力が吸収され、更なる応力緩和ができるからである。さらに好ましいのは、ストレスレリーフ内に低ヤング率の部材を充填してストレスレリーフが形成されることである。このように構成されることによって、一層応力緩和が行われやすくなり振動によるクラック発生を抑制することもできる。最も好ましいのは、ストレスレリーフ内に、ストレスレリーフ以外の残部よりも、ヤング率が低く、且つ体積抵抗率が高い充填材が充填されていることが好ましい。このように構成されることで、応力緩和が行われるため振動によるクラック発生を防止できる。
【0057】
なお、低ヤング率の部材としては、たとえば、繊維状SiC、あるいは粒子状SiCとコロイダルシリカを主成分とするセメント材料等を挙げることができ、所望のヤング率としては、0.001〜0.05GPaである。
【0058】
このようなストレスレリーフとしては、たとえば、図1Cに示されるようなストレスレリーフ13を一例として挙げることができる。ただし、このようなものに限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲で公知のストレスレリーフを用いることができる。なお、図1Cの、符号8aは(一方の端面(排ガス流入側端面)の)電源端子であって、符号8bは(他方の端面(排ガス流出側端面)の)電源端子である。また、符号9はフレキシブル電極である。
【0059】
また、本実施形態における通電加熱型ハニカム体の基材は、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔を有し、ガス流入側及びガス流出側の両端面6を有するハニカム構造体からなる。このハニカム構造体には、多数の流通孔の上流側に形成される開口端部、及び下流側に形成される開口端部が形成される。さらに、必要に応じて、その開口端部には互い違いに目封じされてなる目封止部が形成されていることも好ましい形態である。なお、通電加熱型ハニカム体の全体形状については、例えば、円筒状の他、四角柱状、三角柱状等の形状を挙げることができる。
【0060】
また、本実施形態の通電加熱型ハニカム体が備える流通孔の開口形状(セル形状ともいい、セルの形成方向に対して垂直な断面におけるセルの形状)としては、例えば、四角形セルの他、六角形セル、三角形セル等の形状を挙げることができる。またセル密度についても特に制限はなく、6〜1500セル/平方インチ(0.9〜233セル/cm)の範囲であることが好ましい。また、隔壁の厚さは、20〜2000μmの範囲であることが好ましい。 さらに、隔壁の気孔率は10〜75%であることが好ましい。
【0061】
なお、本明細書において、「平均細孔径」、「気孔率」というときには、水銀圧入法により測定した平均細孔径、気孔率を意味するものとする。
【0062】
また、通電加熱型ハニカム体の基材が備える隔壁の平均細孔径1〜40μmであることが好ましい。平均細孔径が1μmより小さいと触媒をコートする際に剥離しやすくなる。40μmより大きいと触媒が細孔内部で偏析する傾向が強くなりクラックが生じやすくなる。
【0063】
また、通電加熱型ハニカム体の基材は、金属とセラミックとの複合材料から形成されることが好ましい。この金属としては、珪素、鉄、銅、銀、亜鉛、錫、アルミニウム、ニッケル、コバルトなどを挙げることができ、セラミックとしては、炭化珪素、コージェライト、窒化珪素、アルミニウムチタネート、サイアロン、ムライト、アルミナ、ジルコニアなどを挙げることができる。
【0064】
また、上記のようなハニカム構造の基材は、例えば、セラミックからなる骨材粒子、水の他、所望により有機バインダ(ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等)、造孔材(グラファイト、澱粉、合成樹脂等)、界面活性剤(エチレングリコール、脂肪酸石鹸等)等を混合し、混練することによって坏土とし、その坏土を所望の形状に成形し、乾燥することによって成形体を得、その成形体を焼成することによって得ることができる。
【0065】
ハニカム構造体の作製方法としては、たとえば次のような方法が一例として挙げられる。ただし、このようなハニカム構造体の作製方法に限らず、公知のハニカム構造体の作製方法を用いることもできる。
【0066】
例えば、複数本のハニカムセグメントからなるハニカムセグメント接合体であって、セグメント同士が接合材で接合され、外周面を所望形状に切削加工されて成型される場合には、次の手順で行うとよい。
【0067】
まず、ハニカムセグメントを作製する。このハニカムセグメント原料として、たとえば、SiC粉80質量部に対して金属Si20質量部を配合し、適宜成形助剤と造孔材を加え混合を行い、水を添加して粘土状とする。SiC粉、金属Siともに後に押出成形を行うために、口金のスリットに対して大きな粒径を持つような原料を除外する分級工程を経た原料が好ましい。
【0068】
粘土状になった原料を押出し成形し所望形状のハニカム成形体を成形する。次いで、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、目封止をして焼成(仮焼き)する。
【0069】
この仮焼きは、脱脂のためにおこなわれるものであって、たとえば、酸化雰囲気において550℃で、3時間程度で行うものが挙げられるが、これに限られるものではなく、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)に応じて行われることが好ましい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はないが、通常は、3〜100時間程度である。
【0070】
さらに、焼成(本焼成)を行う。この「本焼成」とは、仮焼体中の成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度・時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。たとえば、Ar不活性雰囲気で焼成する場合の焼成温度は一般的には、約1400℃〜1500℃前後程度であるが、これに限られるものではない。
【0071】
前述のような工程を経て所望寸法の複数のハニカムセグメント(焼結体)を得た後、そのハニカムセグメントの周面に、繊維状SiC、あるいは、粒子状SiCとコロイダルシリカを主成分とし、体積抵抗率低減用材料として銀、銅、鉄、ニッケル等のいずれかを含むセメント材料などの低抵抗接合材等からなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角柱状のハニカムセグメント接合体を得る。そして、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周面を、ハニカムセグメント成形体と同材料からなる外周コート層で被覆し、乾燥により硬化させることにより、セグメント構造を有する円柱形状のハニカム成形体を得ることができる。
【0072】
また、セグメント構造でない一体型として通電加熱型ハニカム体を作成する場合には、たとえば、SiC粉80質量部に対して金属Si20質量部を配合し、適宜成形助剤と造孔材を加え混合を行い、水を添加して粘土状とする。SiC粉、金属Siともに後に押出成形を行うために口金のスリットに対して大きな粒径を持つような原料を除外する分級工程を経た原料が好ましい。また、成形助剤、造孔材は任意の原料を使用しても問題無いが、成形性、最終製品の目的気孔率が得られるように設定する必要がある。
【0073】
粘土状になった原料を押出し成形しハニカム状とする。ハニカムは焼成による収縮を予め見込み焼成後に所望寸法となるようなスリット且つ所望セル数となるような口金を使用するとよい。成形後、乾燥を行いハニカム構造の乾燥体について両端の切断を行った後にAr雰囲気で焼成を行い焼成後のハニカム構造体を得ることができる。さらに必要に応じて、その周面を、ハニカムセグメント成形体と同材料からなる外周コート層で被覆し、乾燥により硬化させることにより、セグメント構造を有する円柱形状のハニカム成形体を得ることができる。
【0074】
その後、前述のようセグメント構造からなる焼成後のハニカム成形体或いは、前述のような一体型からなるハニカム成形体に対して、その両端面に、端面よりハニカム成形体の長さ方向に向かって所望長さ寸法までのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、金属板(たとえばSiからなる金属板)を載せ、真空下で加熱を行い、Siを含侵させ電極部分を形成するとよい。
【0075】
なお、必要に応じて、目封じ部を形成することが好ましい。目封じ部を形成する場合には、たとえば、仮焼きの前工程で目封じ処理を行い、その後仮焼き、本焼成の工程が行われることが好ましい。
【0076】
この目封止部の形成方法としては、まず目封止スラリーを調製し、貯留容器に貯留しておく。次に、前述のハニカム構造体に上記マスクを施した側の端部を、貯留容器中に浸漬して、マスクを施していないセルの開口部に目封止スラリーを充填する。そして、他方の端部については、一方の端部において目封止されたセルについてマスクを施し、上記一方の端部において目封止されていないセルに、目封止スラリーを充填して目封止部を形成してもよい。これにより、上記一方の端部において目封止されていないセルについて、他方の端部において目封止され、他方の端部においても市松模様状にセルが交互に塞がれた構造となる。また、目封止は、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を形成した後に、施してもよい。
【0077】
また、例えば、コージェライトを基材の材料とする場合には、コージェライト化原料に、水等の分散媒、及び造孔材を加えて、更に、有機バインダ及び分散剤を加えて混練し、粘土状の坏土を形成する。コージェライト化原料(成形原料)を混練して坏土を調製する手段は、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることが出来る。コージェライト原料を焼成する場合には、1410〜1440℃で焼成することが好ましく、3〜10時間程度焼成することが好ましい。
【0078】
なお、成形方法としては、上述のように調製した坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形する方法等を好適に用いることができる。
【0079】
なお、通電加熱型ハニカム体を、導電性材料からなる隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔を有する、複数のハニカムセグメントを並列接合して形成されるとともに、並列するハニカムセグメントを接合する接合材が、低抵抗接合材からなる通電加熱型ハニカム体として構成することも好ましい。電極部で通電性を確実に行うことができ、且つ、発熱部に通電させて発熱を確実に行わせることができるからである。
【0080】
さらに、本実施形態の通電加熱型ハニカム体の嵩密度が0.8g/cm以下であることが好ましい。車載に搭載される場合には、使用可能な電力に限界があり、重量が大きくなるとハニカムの加熱に多大なエネルギーが必要となるためである。
【0081】
なお、内部温度分布を均一にする観点からは、ハニカム構造体の直径をD、長さをL、電極部の幅をaとしたとき、以下の(1)で求められる関係になることが好ましい。
【0082】
【数1】

【0083】
このような数値内の関係にある場合に、加熱を均一に行えて本願の効果を奏し易いからである。他方、10より大きい場合には、例えば、ハニカム構造体の直径が、ハニカム構造体の長さ、或いは電極部の幅に対して過大となって、十分に加熱を行うことができず、内部温度分布を均一にできない。とりわけ、車載する場合には、バッテリー等の電流値に限界があるため、好ましくない。他方、1より小さい場合、たとえば、a(電極部長さ)が大きすぎる場合には、発熱部の容積を確保できず、発熱効率が悪化し、また、Dに対してLが相対的に大きすぎる場合は圧損が過大になる。
【0084】
[2]劣化度診断:
さらに、制御部が、通電する電圧及び電流を制御して通電加熱型ハニカム体に流入する排ガス温度を触媒活性温度以下に制御可能、かつ、通電した電圧及び電流値から通電加熱型ハニカム体の抵抗値を算出し、初期の抵抗値に対する変化により通電加熱型ハニカム体の劣化度を診断可能であることが好ましい。制御部によって、通電加熱型ハニカム体の劣化診断を行えることで、劣化を見込んだ温度コントロールが実施でき、信頼性を向上できるからである。具体的には、予め通電加熱型ハニカム体に電圧及び電流を通電し、その通電による抵抗値(初期抵抗値)を算出しておく。エンジン始動直後であれば排ガス温度とEHC温度が等しくなることが考えられ、初期値との差異によりEHCの劣化度判断ができる。そして、エンジン始動後、その電圧及び電流から算出した抵抗値が初期抵抗値に対しての変化(上昇)を検出できるようにする。SiCを主原料としたEHCでは、使用により主に酸化が発生し抵抗値の上昇が発生するが、たとえば、測定した100℃以下での抵抗値が初期の抵抗値に対して5〜10倍以上の抵抗値を示せば、警告灯を点灯させ、EHCの交換を促させるとよい。このように始動初期であれば抵抗値の計測値と初期値(新品の抵抗値)の比較を実施することで劣化度合いの判定が可能となり、必要に応じたEHCの交換時期を判断することが可能となる。
【0085】
さらに、劣化度に基いて、制御部が前通電加熱型ハニカム体の温度制御を行うことが好ましい。前述のように劣化が、EHCの交換を必要するまでに進行していない場合にも、劣化度により温度に対する抵抗値の変化があるために劣化度を考慮した温度コントロールが実施できる。
【0086】
[3]温度検出部:
さらに、通電加熱型ハニカム体の内部及び/又は外部には、排ガスの流入温度及び/又は排ガスの流出温度を検出可能な温度検出部が備えられていることも好ましい形態の一つである。温度検出部を、ハニカム構造体又はその下流の排ガス温度を検知する手段として補助的に設置することで、通電加熱型ハニカム体に印加する電圧と電流値から抵抗を算出し、抵抗値と温度の関係から予測する温度と、温度検出部(たとえば、熱電対あるいは抵抗温度計等)での定常状態での温度計測データを比較でき、前述の電圧と電流値から算出した抵抗値からの、通電加熱型ハニカム体内の予測温度を補正できるため、温度制御の精度を向上できる。また、劣化検知についても図4Bの関係を直接用いることができる。たとえば、図2に示されるように、温度検出部T1を通電加熱型ハニカム体の内部に設置したもの、或いは、図2に示されるように、温度検出部T2を通電加熱型ハニカム体の外部に設置したものを例示できる。
【0087】
[4]通電加熱型ハニカム体のセッティング方法:
前述した通電加熱型ハニカム体の電極部と、車載するバッテリー等の電源と接続して使用する。このような端面近傍の高電気伝導部位からバッテリー等の電源に電気接続する方法としては、たとえば、端面近傍の部位の外周を金属メッシュ等の伝導材で覆い、金属メッシュ等の伝導材と、通電加熱型ハニカム体との間を、金属ろう付け等の高耐熱性を有する接着処理により接着して行われることが好ましい。さらに、金属メッシュ等の伝導材料の外周側に、銅電線等の伝導材を、前述と同様の金属ろう付け等の高耐熱性を有する接着処理により接着し、それらを絶縁部材で挟む構造にして絶縁性を確保することが好ましい。また、絶縁部材の外側全周を、通常の触媒コンバータに用いられるのと同様のセラミック繊維マット等の部材で覆い、外周にかかる面圧を例えば0.3MPa等といった所望面圧となるように、前述のセラミック繊維マット、及び金属メッシュを圧縮した状態で、金属キャン(金属缶)内に押し込み、金属キャン内に固定することが好ましい。なお、前述のような銅電線等の伝導材は金属キャンと絶縁することが好ましいため、絶縁スリーブを貫通させて電極端子につながる構造となることが好ましい。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、実施例における各種の評価、測定は、下記方法により実施した。
【0089】
[1]実体計測値:
電源を接続した実施例、比較例の通電加熱型ハニカム体の、ガス流入側に形成される電極部の抵抗R1を測定するとともに、ガス流入側に形成される電極部と、ガス流出側に形成される電極部との間の抵抗R2を測定した。具体的には、図6に示されるように、ガス流入側に形成される電極部7aの抵抗R1、及びガス流入側に形成される電極部7aとガス流出側に形成される電極部7bの間の抵抗R2を測定した。
【0090】
[1−1]切り出しテストピース計測値(TP計測値):
実施例、比較例の通電加熱型ハニカム体の電極部から0.2cm×1cm×1cmの試験片を取り出し、端部体積抵抗率(Ωcm)を測定するとともに、実施例、比較例の通電加熱型ハニカム体の発熱部から、1cm×1cm×1cmの試験片を取り出し、中央部体積抵抗率(Ωcm)を測定した。
【0091】
[1−2]温度時間測定:
実施例、比較例の通電加熱型ハニカム体の長さ方向に形成される発熱部の中央領域をT1とし、夫々の通電加熱型ハニカム体に10kWの電力を与えて、T1が400℃になるまでの平均時間、及び標準偏差を求めた。平均時間が15秒より短いものを○とし、平均時間が15秒以上であるものを×として評価し、標準偏差が、3より小さいものを○とし、3以上のものを×として評価した。
【0092】
[2]未燃炭化水素排出量測定:
排気量2リッターのガソリンエンジンを搭載した車両の排気系に実施例、比較例の通電加熱型ハニカム体を搭載し、米国LA−4コールドスタートモードの排気エミッション測定をシャシダイナモ試験により実施し、初期500秒間の未燃炭化水素排出量を測定した。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例1)
SiC粉70質量部に対して金属Si30質量部を配合し、適宜成形助剤と造孔材を加え混合を行い、水を添加して粘土状とする。この際、SiC粉、金属Siともに後に押出成形を行うため、口金のスリットに対して大きな粒径を持つような原料を除外する分級工程処理を行った。
【0094】
次に、前述の粘土状になった成形原料を押出し成形しハニカム状とする。このハニカムは、焼成による収縮を予め見込み焼成後に100μmとなるようなスリット、且つセル数が62個/cmとなるような口金を使用した。成形後、乾燥を行いハニカム構造の乾燥体について両端の切断を行った。その後Ar雰囲気で焼成を行いハニカム構造体とした。なお、乾燥条件は、600℃、3hrであり、焼成条件は1430℃、3hrである。
【0095】
さらに、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より10mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ1.2mmの金属Siの板を載せ、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成した。この際の、加熱条件は、1410℃、0.5hrである。
【0096】
このようにして、直径Φ100mm×長さ100mmの通電加熱型ハニカム体を得ることができた。この際の通電加熱型ハニカム体の特性としては中央部体積抵抗0.1Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.65g/cm(気孔率50%)となった。
【0097】
さらに、前述のようにして得られた通電加熱型ハニカム体に、触媒コートを行った。
【0098】
なお、触媒付けは三元触媒をディッピング法等により、前述の通電加熱型ハニカム体の隔壁に担持させた。
【0099】
このようにして得られた、通電加熱型ハニカム体の電極部に、電源を接続した。この電気接続の方法としては、端面近傍の高電気伝導部位の外周を金属メッシュで覆い、金属メッシュとハニカム焼成体との間は高耐熱性の金属ろう付けにより接着した。金属メッシュの外周側に銅電線を金属ろう付けしそれを絶縁部材で挟む構造で絶縁性を確保した。絶縁部材の外側全周を通常触媒コンバータに用いるのと同様のセラミック繊維マットで覆い、外周にかかる面圧として0.3MPaとなるようセラミック繊維マット、および金属メッシュを圧縮した形態で、金属キャン内に押し込み、金属キャン内に固定した。銅電線は金属キャンと絶縁するため絶縁スリーブを貫通して電極端子につながっている構造をとった。
【0100】
このようにして、図3に示される制御システムであって、「制御2用」の温度検出手段を取り付けずに、「制御1用」の温度検出手段を取り付けた実施例1の通電加熱型ハニカムシステムを構築し、通電加熱型ハニカムの温度制御を行った。制御方法として、電極間の電圧、電流を検知して抵抗を算出し、温度制御させて、劣化検知フィードバックとして、常温抵抗値からのフィードバックの方法1を用い、耐久試験時間を0(hr)として、前述のような実験を行った。その結果を表2に示す。また、実施例1のその他の物性値を表1、2に示す。
【0101】
(常温抵抗値からのフィードバック方法1)
ECUに入るエンジン水温情報、点火信号情報、回転数信号情報より判断して、エンジン停止後一定時間以上経過している時点において、12V一定電圧を通電加熱型ハニカム体に5秒間印加し、この間の電流、電圧より、この間の抵抗変化を算出し、あらかじめ把握してありECUに記録されている図4Aの12V/5秒間での抵抗変化と基準温度(100℃)での抵抗値との関係より、基準温度(100℃)での抵抗値を算出し、一方で、あらかじめ把握してあった各種劣化程度の通電加熱型ハニカム体の温度−抵抗曲線群(図4B)より、100℃での抵抗が一致する曲線を選択し、これを、その後の通電加熱型ハニカム体の加熱状態コントロールのための電圧制御に用いる劣化フィードバック方法として用いた。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
(実施例2〜4)
実施例1と同様に、「制御2用」の温度検出手段を取り付けずに、「制御1用」の温度検出手段を取り付けた通電加熱型ハニカムシステムを構築し、通電加熱型ハニカムの温度制御を行った。制御方法として、電極間の電圧、電流を検知して抵抗を算出し、温度制御させて、劣化検知フィードバックとして、常温抵抗値からのフィードバックの方法1を用い、耐久試験時間を100(hr)としたものを実施例2とし、同様に耐久試験時間を200(hr)としたものを実施例3とし、同様に耐久試験時間を500(hr)としたものを実施例4として、前述のような実験を行った。その結果を表2に示す。また、実施例2〜4のその他の物性値を表1、2に示す。
【0105】
(実施例5〜8)
実施例1と同様に「制御2用」の温度検出手段を取り付けずに、「制御1用」の温度検出手段を取り付けた通電加熱型ハニカムシステムを構築し、通電加熱型ハニカムの温度制御を行った。制御方法として、電極間の電圧、電流を検知して抵抗を算出し、温度制御させて、劣化検知フィードバックを行わずに、耐久試験時間を0(hr)としたものを実施例5とし、同様に、耐久試験時間を100(hr)としたものを実施例6とし、同様に耐久試験時間を200(hr)としたものを実施例7とし、同様に耐久試験時間を500(hr)としたものを実施例8として、前述のような実験を行った。その結果を表2に示す。また、実施例5〜8のその他の物性値を表1、2に示す。
【0106】
(実施例9〜12)
「制御2用」の温度検出手段と「制御1用」の温度検出手段を共に取り付けた通電加熱型ハニカムシステムを構築し、通電加熱型ハニカム体の温度制御を行った。制御方法として、電極間の電圧、電流を検知して抵抗を算出し、温度制御させて、劣化検知フィードバックとして常温抵抗値からのフィードバックの方法2を用い、耐久時間を0(hr)としたものを実施例9とし、耐久試験時間を100(hr)としたものを実施例10とし、同様に耐久試験時間を200(hr)としたものを実施例11とし、同様に耐久試験時間を500(hr)としたものを実施例12として、前述のような実験を行った。その結果を表2に示す。また、実施例9〜12のその他の物性値を表1、2に示す。
【0107】
(常温抵抗値からのフィードバックの方法2)
通電加熱型ハニカム体の下流側に設置された制御2用温度検出センサにより、この温度が基準温度(100℃)となるようにエンジン排気温度をコントロールし、この時の通電加熱型ハニカム体に印加した電圧と電流の関係より電極間抵抗を算出し、あらかじめ把握してあった各種劣化程度の通電加熱型ハニカムの温度−抵抗曲線群(図4B)より、100℃での抵抗が一致する曲線を選択し、これを、その後の通電加熱型ハニカム体の加熱状態コントロールのための電圧制御に用いる劣化フィードバック方法として用いた。
【0108】
(比較例1〜4)
「制御1用」の温度検出手段を取り付けずに、「制御2用」の温度検出手段を取り付けて、実施例1と同様に、通電加熱型ハニカムシステムを構築し、通電加熱型ハニカム体の温度制御を行った。制御方法として、通電加熱型ハニカムの排気ガス流出側出口に、排気ガスの温度を検出する出口排気温度検出部を設け、温度検出部で検知した温度データによって、通電量を制御可能な制御部に電気接続するシステムとして構成した。そして、劣化検知フィードバックを行わずに、耐久試験時間を0(hr)としたものを比較例1とし、同様に、耐久試験時間を100(hr)としたものを比較例2とし、同様に耐久試験時間を200(hr)としたものを比較例3とし、同様に耐久試験時間を500(hr)としたものを比較例4として、前述のような実験を行った。その結果を表2に示す。また、比較例1〜4のその他の物性値を表1、2に示す。
【0109】
(考察)
表2より、実施例1〜12において、良好な結果を得ることができた。したがって、本実施形態の通電加熱型ハニカムシステムによれば、通電する電圧及び/又は電流を制御して通電加熱型ハニカム体の温度制御が可能、かつ通電加熱型ハニカム体内の温度を正確に検出可能な通電加熱型ハニカムシステムを提供する。とりわけ、通電加熱型ハニカム体の劣化判断が可能となり、温度検出の精度を向上でき、劣化を見込んだ温度コントロールが実施でき、信頼性を向上でき、加えて、抵抗値の比を管理すれば製品間のバラツキを抑制することができることが実証された。なお、図4は、エンジン始動後の初期の通電加熱型ハニカム体と、劣化後の通電加熱型ハニカム体について、電極間抵抗と温度との関係を示したグラフであり、図5は、未燃炭化水素排出量測定結果について、目標温度400℃までの昇温傾向を示したグラフである。
【0110】
他方、表2より、比較例では、400℃になるまでの平均時間が長くなり、ばらつきも生じており、さらに未燃炭化水素排出量測定のばらつきも生じていることから、通電加熱型ハニカム体内の温度を正確に検出できないばかりか、劣化判断もできず、温度コントロールができないものであることが実証された。したがって、製品間のバラツキを生じさせるおそれもあり、信頼性を得ることができないものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の通電型ハニカム体は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、燃焼装置排ガス処理向けに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0112】
1:通電加熱型ハニカムシステム(通電加熱型ハニカム体の制御システム)、3:制御部、3a:CPU(中央処理装置)、3b:温度コントローラ、7:通電加熱型ハニカム体、7a:(一方の端面(排ガス流入側端面)の)電極部、7b:(他方の端面(排ガス流出側端面)の)電極部、7c:発熱部、8a:(一方の端面(排ガス流入側端面)の)電源端子、8b:(他方の端面(排ガス流出側端面)の)電源端子、9:フレキシブル電極、11:触媒付ハニカム構造体、13:ストレスレリーフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガス浄化に用いられる通電加熱型ハニカム体の制御システムであって、前記通電加熱型ハニカム体に電力を供給するための電源部と、
前記電源部から前記通電加熱型ハニカム体に通電する電圧及び/又は電流を制御可能な制御部と、を少なくとも備えており、
前記制御部において電圧及び電流値から通電加熱型ハニカム体の抵抗値を算出し、得られた前記抵抗値から前記通電する電圧及び/又は電流を制御して通電加熱型ハニカム体の温度制御を行う通電加熱型ハニカムシステム。
【請求項2】
前記通電加熱型ハニカム体が、温度変化によって抵抗値が変化する材料から構成されている請求項1に記載の通電加熱型ハニカムシステム。
【請求項3】
前記通電加熱型ハニカム体に触媒がコートされている請求項1又は2に記載の通電加熱型ハニカムシステム。
【請求項4】
前記制御部が、通電する電圧及び電流を制御して前記通電加熱型ハニカム体に流入する排ガス温度を触媒活性温度以下に制御可能、かつ、通電した前記電圧及び電流値から前記通電加熱型ハニカム体の抵抗値を算出し、初期の抵抗値に対する変化により前記通電加熱型ハニカム体の劣化度を診断可能である請求項1〜3のいずれか1項に記載の通電加熱型ハニカムシステム。
【請求項5】
前記劣化度に基いて、前記制御部が前記通電加熱型ハニカム体の温度制御を行う請求項4に記載の通電加熱型ハニカムシステム。
【請求項6】
前記通電加熱型ハニカム体がセラミックスと金属との複合材料で構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の通電加熱型ハニカムシステム。
【請求項7】
さらに、前記通電加熱型ハニカム体の内部及び/又は外部には、前記排ガスの流入温度及び/又は前記排ガスの流出温度を検出可能な温度検出部が備えられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の通電加熱型ハニカムシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−229978(P2010−229978A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81189(P2009−81189)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】