説明

通電加熱式触媒装置の通電制御システム

【課題】通電加熱式触媒装置における触媒担体の破損の発生をおさえる通電制御システムを提供する。
【解決手段】通電加熱式触媒装置17の通電制御システムは、触媒を担持する触媒担体17aであって、触媒担体17aが通電されて温度上昇することにより担持した触媒を温め、触媒担体17aの温度変化に伴って触媒担体17aの通電抵抗値が変化するNTC特性を有するものを有する通電加熱式触媒装置17を備える。触媒担体17aに配置された第1、第2温度センサ18a、18bを備える。第1、第2温度センサ18a、18bからの情報に基づいて触媒担体17aへの通電制御を行う制御部5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電加熱式触媒装置の通電制御システムに関し、特に触媒を担持する触媒担体の破損の発生を抑える通電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の始動直後など排気ガスを浄化する触媒が活性化するまでの時間、すなわちNOなどの排気ガスを十分に浄化できない時間を短縮するために、触媒担体を通電により温めることにより担持した触媒を温める通電加熱式触媒装置(Electrical Heated Catalyst:EHC)が提案されている。この通電加熱式触媒装置では、触媒担体の過加熱や内部温度差に基づく割れなどの破損を防止する必要がある。
【0003】
特許文献1は、DPF(DieselParticulate Filter)を温める電気ヒータを、DPFの下流で且つ径方向に複数設置し、温度センサをDPFと電気ヒータとの間に複数設置した排ガス浄化装置を開示する。複数の温度センサからの情報に基づいて複数の電気ヒータの通電制御を行うことにより、DPF内に温度差が生じることを抑制することが可能になる。
【特許文献1】特開平09−13954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のようなDPFを温めるため、DPFの下流に配置された複数の電気ヒータへの通電を制御する形態を、通電加熱式触媒装置における触媒担体を温めるため、触媒担体自身への通電を制御する形態に応用することは困難であり、触媒担体に生じる過加熱や内部温度差に基づく割れなどの破損の発生を十分に抑制することは出来ない。
【0005】
したがって本発明の目的は、通電加熱式触媒装置における触媒担体の破損の発生を抑える通電制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る通電加熱式触媒装置の通電制御システムは、触媒を担持する触媒担体であって、触媒担体が通電されて温度上昇することにより担持した触媒を温め、触媒担体の温度変化に伴って触媒担体の通電抵抗値が変化するNTC特性を有するものを有する通電加熱式触媒装置と、触媒担体に配置された第1、第2温度センサと、第1、第2温度センサからの情報に基づいて触媒担体への通電制御を行う制御部とを備える。
【0007】
触媒担体が通電状態にされると、触媒担体に流れる電流によるジュール熱で触媒担体が温まり、担持された触媒も昇温する。但し、触媒担体への通電が過剰に実施されると、過加熱により触媒担体は内部に割れなどの破損が生ずるおそれがある。また、放熱が行われやすい箇所と、行われにくい箇所との間で触媒担体に内部温度差が生じる。内部温度差が大きくなると、触媒担体は内部に割れなどの破損が生じるおそれがある。そのため、2カ所で得られた触媒担体の温度に関する情報に基づいて、触媒担体への通電制御を行う。具体的には、触媒担体の温度が、触媒担体が破損する程度に高い(過加熱状態である)と判断した場合や、2カ所で得られた情報の差異が大きく、内部温度差が、触媒担体が破損する程度に大きいと判断した場合には、触媒担体への通電を停止させる。通電が停止すると、高温部から低温部へ熱が伝わるため、高温部の温度が下がり、触媒担体の内部温度差が小さくなる。通電停止後、過加熱状態が解消し、且つ内部温度差が小さくなると、通電が再開される。
【0008】
このように、触媒担体の温度差が発生する2カ所の温度情報に基づいて、触媒担体の通電制御を行うことにより、触媒担体の破損の発生を抑えることが可能になる。また、NTC特性を有する触媒担体の場合、内部温度差が生じると、相対的に通電抵抗値が低い領域(電流が流れやすい領域)に電流が更に流れ、更に温度が高くなり、かかる温度差はさらに大きくなる。このため、NTC特性を有しない触媒担体に比べて、温度情報に基づいて破損の発生を抑える通電制御を行うことの効果が大きい。
【0009】
好ましくは、通電のための電極は、触媒担体における排気ガスの流れる第1方向の両端部に配置され、第1温度センサは第1方向の中心近傍で且つ第1方向と垂直な第2方向の中心近傍に配置され、第2温度センサは第1方向の端部近傍で且つ第2方向の端部近傍に配置される。
【0010】
第1方向(例えば軸方向)の位置、及び第2方向(例えば径方向)の位置が異なる2カ所に温度センサを配置することにより、検出される温度差を大きくし、これにより、触媒担体の破損の発生を抑える通電制御の精度を高めることが可能になる。
【0011】
本発明に係る通電加熱式触媒装置の通電制御システムは、触媒を担持する触媒担体であって、触媒担体が通電されて温度上昇することにより担持した触媒を温め、触媒担体の温度変化に伴って触媒担体の通電抵抗値が変化するNTC特性を有するものを有する通電加熱式触媒装置と、触媒担体の変形量に関する情報を得るセンサと、センサからの情報に基づいて触媒担体への通電制御を行う制御部とを備える。
【0012】
触媒担体が通電状態にされると、触媒担体に流れる電流によるジュール熱で触媒担体が温まり、担持された触媒も昇温する。但し、触媒担体への通電が過剰に実施されると、過加熱により触媒担体は内部に割れなどの破損が生ずるおそれがある。そのため、1カ所で計測した触媒担体の変形量に関する情報に基づいて、触媒担体への通電制御を行う。具体的には、変形量が、触媒担体が破損する程度に大きい(過加熱状態にある)と判断した場合には、触媒担体への通電を停止させる。通電が停止すると、放熱により触媒担体の温度が下がる。通電停止後、過加熱状態が解消すると、通電が再開される。
【0013】
このように、触媒担体の1カ所の変形量情報に基づいて、触媒担体の通電制御を行うことにより、触媒担体の破損の発生を抑えることが可能になる。また、NTC特性を有する触媒担体の場合、内部温度差が生じると、相対的に通電抵抗値が低い領域(電流が流れやすい領域)に電流が更に流れ、更に温度が高くなくなる。このため、NTC特性を有しない触媒担体に比べて、変形量情報に基づいて破損の発生を抑える通電制御などを行うことの効果が大きい。
【0014】
好ましくは、通電のための電極は、触媒担体における排気ガスの流れる方向の両端部に、触媒担体の変形量に応じて応力変化が生じる状態で配置され、センサは電極に取り付けられる。これにより、触媒担体にセンサを取り付ける形態に比べて、取付が容易にできる。
【0015】
好ましくは、制御部は、センサからの情報に基づいて、触媒担体の異常判定を行う。一定時間の間の触媒担体の変形量が適度に大きい場合は、触媒担体が通電により正常に発熱(膨張)していると判断される。小さい場合には、触媒担体が通電により正常に発熱していない、すなわち異常が生じていると判断される。このため、触媒担体の変形量情報に基づいて、触媒担体の破損の発生を抑える通電制御だけでなく、異常判定を行うことも可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、通電加熱式触媒装置における触媒担体の破損の発生を抑える通電制御システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図1〜3を用いて説明する。第1実施形態における内燃機関1は、ECUなどの制御部5、エンジン11、吸気通路12、排気通路15、空燃比センサ16、通電加熱式触媒装置17、第1温度センサ18a、第2温度センサ18b、スイッチ19、Oセンサ21、主触媒22、及びバッテリ25を備える。
【0018】
制御部5は、CPU、制御プログラムを格納したROM、及び各種データを格納するRAM等を有し、第1温度センサ18a等の各種センサからの信号が入力され、また制御信号を出力して内燃機関1を含む車両の各部を制御する。制御部5は、特に、通電加熱式触媒装置17の温度状態などに基づいて、触媒担体17aへの通電制御を行う。
【0019】
内燃機関1の運転中、エンジン11の各シリンダーの燃焼室には、吸気通路12から吸気弁(不図示)を介して、空気が吸入される(図1の点線矢印参照)。インジェクタから噴射された燃料は、吸入された空気と混ざって混合気を形成する。制御部5からの点火信号に基づく点火プラグの点火によって、混合気は燃焼する。混合気の燃焼による爆発力に応じたピストンの往復運動により、クランクシャフト(不図示)が回転せしめられる。
【0020】
エンジン11の燃焼による排気ガスは、排気弁(不図示)を介して排気通路15より排出される(図1の実線矢印参照)。排気通路15上であって通電加熱式触媒装置17の上流に設けられた空燃比センサ16により、排気ガスの空燃比(A/F)が検出され、これに基づいて、空燃比フィードバック補正(インジェクタから噴射する燃料量の調整、酸化還元量の最適化)が行われる。また、排気ガスは、排気通路15に設けられた上流の通電加熱式触媒装置17、及び下流の主触媒22により浄化される。また、通電加熱式触媒装置17と、主触媒22の間に配置されたOセンサ21により、通電加熱式触媒装置17の出口におけるOの量(通電加熱式触媒装置17による排気ガス浄化後の空燃比)が検出され、これに基づいて、前記空燃比フィードバック補正におけるフィードバック補正量が調整される。
【0021】
通電加熱式触媒装置17による排気ガスの浄化構造の詳細について説明する。通電加熱式触媒装置17は、触媒を担持する円柱形状の触媒担体17a、触媒担体17aの排気上流側の端部近傍に接続される正電極17b、及び触媒担体17aの排気下流側の端部近傍に接続される負電極17cを有する(図2参照)。なお、正電極17b、負電極17cの配置は逆であってもよい。具体的には、正電極17bは、触媒担体17aの外周面(側面)であって軸方向(排気ガスの流れる方向)の端部近傍の一方(上流側)と接触し且つこれを囲んで嵌合するように構成され、触媒担体17aに熱変形(膨張)が発生した場合には、その変形量に応じて、リング状の正電極17bに応力変化が生じる。負電極17cは、触媒担体17aの外周面(側面)であって軸方向の端部近傍の他方(下流側)と接触し且つこれを囲んで嵌合するように構成され、触媒担体17aに熱変形が発生した場合には、その変形量に応じて、リング状の負電極17cに応力変化が生じる。触媒担体17a、正電極17b、及び負電極17cの外側には、これらを囲み通電加熱式触媒装置17の外形を形成し排気通路15との連結口が開放されている外殻(触媒担体17aの保持部材、不図示)が設けられる。
【0022】
第1温度センサ18aは、触媒担体17aの中心部近傍(半径方向の中心近傍で且つ軸方向の中心近傍、図2のA部参照)、すなわち外殻または排気ガスなどの外気と接触して放熱しやすい部分から遠い位置に取り付けられて、取り付けられた箇所の温度に関する情報を取得する。第2温度センサ18bは、触媒担体17aの内部であって、半径方向の端部近傍(外周面近傍)で且つ軸方向の端部近傍(図2のB部参照)、すなわち外殻または外気と接触して放熱しやすい部分に近い位置(第1実施形態では負電極17c近傍)に取り付けられて、取り付けられた箇所の温度に関する情報を取得する。正電極17bはスイッチ19に接続され、負電極17cはバッテリ25に接続される。スイッチ19は、制御部5、及びバッテリ25に接続され、制御部5の制御に基づいて、触媒担体17aへの通電制御を行う。
【0023】
通電加熱式触媒装置17における触媒は、白金やロジウムなどの貴金属で構成され、排気ガス中の窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)などを浄化する。また、通電加熱式触媒装置17における触媒担体17aは、炭化珪素(SiC)のようにNTC特性(自身の温度上昇に伴い、自身の通電抵抗値が減少する特性)を有する導体あるいは半導体で構成されたハニカム基材が用いられる。
【0024】
通電加熱式触媒装置17は、通電時に触媒担体17aに流れる電流によるジュール熱で触媒担体17aが温まり、これにより触媒担体17aが担持した触媒を温める。
【0025】
制御部5及びスイッチ19の制御に基づいて触媒担体17aが通電状態にされると、触媒担体17aにおいて、電流は、排気ガスの入口側(正電極17b側)から出口側(負電極17c側)に向かって流れる。触媒担体17aは、自身に流れる電流によるジュール熱で温まるが、触媒担体17aの外周面は、外殻のように発熱していない部材と接するため放熱し、触媒担体17aの軸方向の端部は、排気ガスのように外気と接するため放熱する。放熱する部分は、放熱しにくい中心部に比べて温度が高くならないため、内部温度差が発生する。そのため、NTC特性を有する触媒担体17aの中心部の通電抵抗値は外周面近傍の部位の通電抵抗値に比べて低くなり電流が流れやすくなる。電流が流れやすい領域には、より大きな電流が流れることによりさらに発熱し、温度差はさらに大きくなる。
【0026】
触媒担体17aの中心部近傍(半径方向の中心近傍で且つ軸方向(排気ガスの流れる方向)の中心近傍、図2のA部参照)、すなわち第1温度センサ18aが配置された部分は、通電によって最も温度が高くなる箇所になる。触媒担体17aの内部であって、半径方向の端部近傍(外周面近傍)で且つ軸方向の端部近傍(図2のB部参照)、すなわち第2温度センサ18bが配置された部分は、発熱していない部材(外殻)や外気(排気ガスなど)と接するため、最も温度が上がりにくい箇所になる。
【0027】
触媒担体17aの内部であって半径方向の端部近傍(外周面近傍)で且つ軸方向の中心近傍(図2のC部参照)は発熱していない部材(外殻)と接するため、触媒担体17aの内部であって半径方向の中心近傍で且つ軸方向の端部近傍(図2のD部参照)は外気(排気ガスなど)と接するため、第1温度センサ18aが配置された部分よりも温度が低く、第2温度センサ18bが配置された部分よりも温度が高い。従って、第1、第2温度センサ18a、18bが配置された部分は、触媒担体17aにおいて温度差が最も大きくなる。
【0028】
第1実施形態では、触媒担体17aにおいて、最も温度が高くなる箇所に第1温度センサ18aを配置し、最も温度が低くなる(高くならない)箇所に第2温度センサ18bを配置し、第1、第2温度センサ18a、18bで得られる温度に関する情報に基づいて、触媒担体17aの内部温度差を算出または推定する。算出結果(または推定結果)は、後述する通電加熱式触媒装置17への通電制御に使用される。
【0029】
触媒担体17aへの通電は、第1条件が成立した場合、すなわち内燃機関1の冷間始動直後であるなど触媒担体17aを通電する必要がある状態であって、第1温度センサ18aで得られる触媒担体17aの最も温度が高くなる箇所の第1温度Tが温度閾値T以下であり、且つ炭化珪素で構成され耐熱衝撃性が低い触媒担体17aにおいて最も温度差が大きくなる部分の温度差、すなわち第1温度Tと第2温度センサ18bで得られる触媒担体17aの第2温度Tの温度差ΔTが温度差閾値ΔT以下である場合に行われる。
【0030】
温度閾値Tは、過加熱(過通電)により触媒担体17aが破損しない上限温度に対応する値が設定される。温度差閾値ΔTは、内部温度差の拡大により触媒担体17aが破損しない内部温度差の上限値に対応する値が設定される。
【0031】
触媒担体17aを通電によって温めることにより、触媒が活性化するまでの時間、すなわちNOなどの排気ガスを、触媒を使って十分に浄化できない時間が短縮される。内燃機関1の運転が停止されるなど、第1条件の少なくとも1つが成立しない場合は、触媒担体17aは非通電状態にされる。
【0032】
第1実施形態における制御部5による触媒担体17aへの通電制御の手順を図3のフローチャートを用いて説明する。図3のフローチャートに示す通電制御は、内燃機関1が運転中の一定時間ごとの割り込み動作として行われる。割り込み動作が開始されると、ステップS11で、内燃機関1が冷間始動直後で暖機されていない状態であるなど触媒担体17aへの通電が必要な状態であるか否かが判断される。通電が必要な状態でない場合はステップS15に進められる。通電が必要な状態である場合には、ステップS12で、第1温度Tが温度閾値T以下か否かが判断される。第1温度Tが温度閾値T以下でない場合は、ステップS15に進められる。第1温度Tが温度閾値T以下である場合は、ステップS13で、温度差ΔTが温度差閾値ΔT以下か否かが判断される。温度差ΔTが温度差閾値ΔT以下でない場合は、ステップS15に進められる。温度差ΔTが温度差閾値ΔT以下である場合は、第1条件が成立したとして、ステップS14で、スイッチ19がオン状態にされて、触媒担体17aが通電状態にされる。ステップS15で、スイッチ19がオフ状態にされて、触媒担体17aが非通電状態にされる。
【0033】
触媒担体17aが通電状態にされると、触媒担体17aに流れる電流によるジュール熱で触媒担体17aが温まり、担持された触媒も昇温する。但し、触媒担体17aへの通電が過剰に実施されると、過加熱により触媒担体17aは内部に割れなどの破損が生ずるおそれがある。また、放熱が行われやすい箇所(温度が比較的高くならない領域)と、行われにくい箇所(温度が比較的高くなる領域)との間で触媒担体17aに内部温度差が生じる。触媒担体17aのNTC特性により、温度の高くなる領域の通電抵抗値は低くなる。通電抵抗値が低い領域(電流が流れやすい領域)に電流が更に流れ更に温度が高くなりかかる温度差はさらに大きくなる。温度差が大きくなると、耐熱衝撃性が低い炭化珪素で構成された触媒担体17aは内部に割れなどの破損が生じるおそれがある。第1実施形態では、2カ所で計測した触媒担体17aの温度(第1温度T、第2温度T)に基づいて、温度が高くまたは内部温度差が大きく触媒担体17aが破損する可能性が高いと判断した場合には、触媒担体17aへの通電を停止させる(非通電状態にする)。通電が停止すると、高温部から低温部へ熱が伝わるため、温度が高い箇所の温度は下がり、触媒担体17aの内部温度差が小さくなる。通電停止後、内部温度差が小さくなるなど、第1条件が成立した場合には、通電が再開される。
【0034】
このように、1つの触媒担体17aの2カ所の温度状態に基づいて、触媒担体17aの通電制御を行うことにより、触媒担体17aの破損の発生をおさえることが可能になる。また、第1実施形態では、触媒担体17aの2カ所の温度を計測することにより、触媒担体17aの通電制御を行うため、少なくとも2つの温度センサ(第1、第2温度センサ18a、18b)を2カ所に配置するだけで良く、通電加熱式触媒装置17の構造を不必要に複雑にすることはない。
【0035】
なお、第1実施形態では、触媒担体17aにおいて最も温度差が生じる2カ所の温度(第1温度T、第2温度T)に基づいて通電制御を行う形態を説明したが、温度差が生じる2カ所であれば、他の箇所(例えば内部に取り付ける場合に比べて取付が容易になる外周面上など)でも構わない。この場合、2カ所の温度(第1温度T、第2温度T)に基づいて、触媒担体17aにおいて最も温度が高くなる箇所の温度や触媒担体17aにおいて最も内部温度差が大きくなる箇所の温度差が推定され、温度閾値Tとの比較や温度差閾値ΔTとの比較が行われ、触媒担体17aの通電制御が行われる。但し、温度差が大きくなる2カ所で測定した方が、内部温度差等を正確に把握出来る。
【0036】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、温度センサ(第1、第2温度センサ18a、18b)に代えて、歪みゲージセンサ18cを用いて、触媒担体17aの破損の発生をおさえる通電制御を行う点で異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する(図4〜6参照)。
【0037】
歪みゲージセンサ18cは、負電極17cに貼付けされる。制御部5は、負電極17cの応力変化により変化する歪みゲージセンサ18cの通電抵抗値を計測する。負電極17cは、触媒担体17aの外周面であって軸方向の端部近傍の他方(下流側)と接触し且つこれを囲んで嵌合するように構成され、触媒担体17aに熱変形が発生した場合には、その変形量に応じて、リング状の負電極17cに応力変化が生じる。そのため、歪みゲージセンサ18cで得られた値(通電抵抗値)に基づいて、負電極17cの歪みゲージセンサ18cが取り付けられた部分の歪み量、すなわち、触媒担体17aにおける負電極17cと接触する部分の歪み量Dを算出または推定することが出来る。かかる歪み量Dが、触媒担体17aの破損の発生をおさえる通電制御に用いられる。
【0038】
なお、歪みゲージセンサ18cが取り付けられる負電極17cは、触媒担体17aの熱変形に応じて応力変化が生じる状態で触媒担体17aに配置されれば、形状はリング状に限られない。
【0039】
また、歪みゲージセンサ18cが取り付けられる箇所は、負電極17cの内側(触媒担体17aと対向する面側)であってもよいし、外側であってもよい。また、歪みゲージセンサ18cは、正電極17bに取り付けられてもよいし、両方に取り付けられてもよい。正電極17b、及び負電極17cの両方に歪みゲージセンサ18cが取り付けられた場合は、これらから出力される値の平均値若しくはいずれか大きい方の出力値が、歪み量Dとして、触媒担体17aの破損の発生をおさえる通電制御に用いられる。
【0040】
また、歪みゲージセンサ18cは、取付が比較的容易な電極ではなく、触媒担体17aの外周面や内部に直接取り付けられるなど、触媒担体17aの変形を面で受ける場所を有する他の箇所(歪み量検知が可能な部分)に取り付けられても良い。この場合も、温度上昇による変形量が大きい(歪み量が大きい)箇所に取り付けられるのが望ましい。
【0041】
第2実施形態では、触媒担体17aにおいて歪み量検知が可能な部分(負電極17c上)に歪みゲージセンサ18cを配置し、歪みゲージセンサ18cで得られる歪み量に関する情報(通電抵抗値)に基づいて、歪み量Dを算出(または推定)する。かかる歪み量Dが大きいか否かを判断することにより、触媒担体17aの温度が高く過加熱状態にあるか否かを判断して、触媒担体17aへの通電制御を行う。
【0042】
触媒担体17aは、温度上昇に伴って熱変形するため、温度が高くなると、歪み量も大きくなる。特に、炭化珪素は、他のハニカム基材に比べて、熱変形量が大きいため、熱変形量に対応する歪み量を測定しやすい。第2実施形態では、歪みゲージセンサ18cで得られた情報に基づく触媒担体17aの歪みゲージセンサ18c近傍の歪み量Dを、第1歪み量閾値Dと比較して、触媒担体17aが過加熱状態にあるか否かを判断し、通電制御を行う。
【0043】
触媒担体17aへの通電は、第2条件が成立した場合、すなわち内燃機関1の冷間始動直後であるなど触媒担体17aを通電する必要がある状態であって、且つ歪みゲージセンサ18cで得られる触媒担体17aの歪みゲージセンサ18c近傍の歪み量Dが第1歪み量閾値D以下である場合に行われる。
【0044】
第1歪み量閾値Dは、過加熱により触媒担体17aが破損しない温度上限値に対応する値(歪みゲージセンサ18cが取り付けられた箇所の歪み量)が設定される。
【0045】
触媒担体17aを通電によって温めることにより、触媒が活性化するまでの時間、すなわちNOなどの排気ガスを十分に浄化できない時間が短縮される。内燃機関1の運転が停止されるなど、第2条件の少なくとも1つが成立しない場合は、触媒担体17aは非通電状態にされる。
【0046】
第2実施形態における制御部5による触媒担体17aへの通電制御の手順を図6のフローチャートを用いて説明する。図6のフローチャートに示す通電制御は、内燃機関1が運転中の一定時間ごとの割り込み動作として行われる。割り込み動作が開始されると、ステップS21で、内燃機関1が冷間始動直後で暖機されていない状態であるなど触媒担体17aへの通電が必要な状態であるか否かが判断される。通電が必要な状態でない場合はステップS24に進められる。通電が必要な状態である場合には、ステップS22で、歪み量Dが第1歪み量閾値D以下か否かが判断される。歪み量Dが第1歪み量閾値D以下でない場合は、ステップS24に進められる。歪み量Dが第1歪み量閾値D以下である場合は、第2条件が成立したとして、ステップS23で、スイッチ19がオン状態にされて、触媒担体17aが通電状態にされる。ステップS24で、スイッチ19がオフ状態にされて、触媒担体17aが非通電状態にされる。
【0047】
触媒担体17aが通電状態にされると、触媒担体17aに流れる電流によるジュール熱で触媒担体17aが温まり、担持された触媒も昇温する。但し、触媒担体17aへの通電が過剰に実施されると、過加熱により触媒担体17aは内部に割れなどの破損が生ずるおそれがある。第2実施形態では、1カ所で計測した触媒担体17aの歪み量Dに基づいて、過加熱状態にあり触媒担体17aが破損する可能性が高いと判断した場合には、触媒担体17aへの通電を停止させる(非通電状態にする)。放熱により触媒担体17aの温度が下がる。通電停止後、歪み量Dが小さくなるなど、第2条件が成立した場合には、通電が再開される。
【0048】
このように、触媒担体17aの1カ所の熱変形量に基づいて、触媒担体17aの通電制御を行うことにより、触媒担体17aの破損の発生をおさえることが可能になる。また、第2実施形態では、触媒担体17aの1カ所の歪み量を計測することにより、触媒担体17aの通電制御を行うため、少なくとも1つの歪みゲージセンサ18cを加えるだけで良く、通電加熱式触媒装置17の構造を不必要に複雑にすることはない。
【0049】
なお、第2実施形態では、触媒担体17aの熱変形量を測定するために、歪みゲージセンサ18cを用いる形態を説明したが、熱変形量を測定するセンサはこれに限られない。
【0050】
また、1つの歪みゲージセンサ18cを使い、触媒担体17aが過加熱状態にあるか否かを判別して通電制御を行う形態を説明した。但し、歪みゲージセンサ18cを複数設け、複数の熱変形量の平均値などに基づいて過加熱状態を判別すると共に、複数の熱変形量の差異に基づいて触媒担体17aの内部温度差を算出(または推定)して通電制御を行う形態であってもよい。
【0051】
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第2実施形態における触媒担体17aの熱変形量に基づいて、触媒担体17aの破損の発生をおさえる通電制御を行う形態に加えて、触媒担体17aを含む通電加熱式触媒装置17の異常判定(OBD:On-Board Diagnosis)を行う点で異なる。以下、第2実施形態と異なる点(加えられた点)を中心に説明する(図7参照)。
【0052】
第3実施形態における歪み量Dは、第2実施形態と同様、電触媒担体17aの破損の発生をおさえる通電制御(第1歪み量閾値Dとの比較)に用いられる。さらに、歪み量Dは、触媒担体17aの異常判定に用いられる。具体的には、触媒担体17aへの通電が開始されてから所定時間が経過した時の歪み量Dが、正常に発熱(膨張)したときの第2歪み量閾値D以上に大きい場合は、触媒担体17aが通電により正常に発熱していると判断される。歪み量Dが第2歪み量閾値Dより小さい場合は、触媒担体17aが通電により正常に発熱していない、すなわち異常が生じていると判断され、通電が停止され、警告表示(MIL点灯)が行われる。
【0053】
第2歪み量閾値Dは、触媒担体17aが通電状態にされてから所定時間経過した時に正常に発熱した場合の歪み量下限値に対応する値が設定される(第2歪み量閾値D<第1歪み量閾値D)。
【0054】
第3実施形態における制御部5による触媒担体17aへの通電制御の手順は、第2実施形態と同様である(図6参照)。第3実施形態における制御部5による通電加熱式触媒装置17の異常判定制御の手順を図7のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
通電加熱式触媒装置17の異常判定制御が開始されると、ステップS31で、内燃機関1が、暖機が行われている状態であるか否かが判断される。エンジン11の始動時に暖機が完了している状態である場合には、触媒担体17aは通電されない(非通電状態のままにされる)ため、かかる異常判定は行わずに制御は終了する。冷間始動時の場合など、エンジン11の始動時に暖機が行われる状態である場合には、ステップS32に進められる。
【0056】
ステップS32で、触媒担体17aが通電状態にされたか否かが判断される。通電状態にされていない場合は、ステップS32が繰り返される。通電状態にされた場合は、ステップS33で、通電状態にされてから所定時間が経過したか否かが判断される。所定時間が経過していない場合はステップS33が繰り返される。所定時間が経過した場合は、ステップS34で、歪み量Dが第2歪み量閾値D以上に大きいか否かが判断される。大きい場合には、ステップS35で、触媒担体17aが通電により正常に発熱していると判断され、異常判定制御は終了する。大きくない場合は、ステップS36で、触媒担体17aが通電により正常に発熱していない、すなわち異常が生じていると判断される。ステップS37で、触媒担体17aへの通電が停止され、警告表示(MIL点灯)が行われ、異常判定制御は終了する。
【0057】
このように、触媒担体17aの熱変形量に基づいて、触媒担体17aの通電及び異常判定制御を行うことにより、触媒担体17aの破損の発生をおさえるだけでなく、触媒担体17aの異常判定を行うことが可能になる。
【0058】
なお、第1〜第3実施形態では、通電加熱式触媒装置17の下流側に、別途主触媒を設ける形態を説明したが、通電加熱式触媒装置17が主触媒としての機能も兼ねる形態であってもよい。
【0059】
また、電極(正電極17b、負電極17c)の位置や形状が、触媒担体17aの外周面で且つ両端部を囲むものであること、及び触媒担体17aの形状が円柱形状であることを説明したが、これらの条件に限られるものではない。これらの条件が変更されても、第1、第2温度センサ18a、18b(または歪みゲージセンサ18c)の配置位置や閾値(温度差閾値ΔTなど)を調整すれば、触媒担体17aの破損の発生をおさえる通電制御や通電加熱式触媒装置17の異常判定を行うことは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態における内燃機関の構成図である。
【図2】第1実施形態における通電加熱式触媒装置を含む周辺部分の構成図である。
【図3】第1実施形態触媒担体の通電制御の手順を示すフローチャートである。
【図4】第2実施形態における内燃機関の構成図である。
【図5】第2実施形態における通電加熱式触媒装置を含む周辺部分の構成図である。
【図6】第2実施形態触媒担体の通電制御の手順を示すフローチャートである。
【図7】第3実施形態触媒担体の通電制御の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 内燃機関
5 制御部
11 エンジン
12 吸気通路
15 排気通路
16 空燃比センサ
17 通電加熱式触媒装置
17a 触媒担体
17b 正電極
17c 負電極
18a、18b 第1、第2温度センサ
18c 歪みゲージセンサ
19 スイッチ
21 Oセンサ
22 主触媒
25 バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を担持する触媒担体であって、前記触媒担体が通電されて温度上昇することにより担持した前記触媒を温め、前記触媒担体の温度変化に伴って前記触媒担体の通電抵抗値が変化するNTC特性を有するものを有する通電加熱式触媒装置と、
前記触媒担体に配置された第1、第2温度センサと、
前記第1、第2温度センサからの情報に基づいて、前記触媒担体への通電制御を行う制御部とを備えることを特徴とする通電加熱式触媒装置の通電制御システム。
【請求項2】
前記通電のための電極は、前記触媒担体における排気ガスの流れる第1方向の両端部に配置され、
前記第1温度センサは、前記第1方向の中心近傍で且つ、前記第1方向と垂直な第2方向の中心近傍に配置され、
前記第2温度センサは、前記第1方向の端部近傍で且つ、前記第2方向の端部近傍に配置されることを特徴とする請求項1に記載の通電制御システム。
【請求項3】
触媒を担持する触媒担体であって、前記触媒担体が通電されて温度上昇することにより担持した前記触媒を温め、前記触媒担体の温度変化に伴って前記触媒担体の通電抵抗値が変化するNTC特性を有するものを有する通電加熱式触媒装置と、
前記触媒担体の変形量に関する情報を得るセンサと、
前記センサからの情報に基づいて、前記触媒担体への通電制御を行う制御部とを備えることを特徴とする通電加熱式触媒装置の通電制御システム。
【請求項4】
前記通電のための電極は、前記触媒担体における排気ガスの流れる方向の両端部に、前記触媒担体の変形量に応じて応力変化が生じる状態で配置され、
前記センサは、前記電極に取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の通電制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記センサからの情報に基づいて、前記触媒担体の異常判定を行うことを特徴とする請求項3に記載の通電制御システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−189921(P2009−189921A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31651(P2008−31651)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】