説明

通電接合装置及び通電接合方法

【課題】金属材料を相互に通電接合する場合に、接合する金属部材の形状や大きさに係わらずに金属部材間の接合面に生じる温度差を抑制して均質な接合を可能にした通電接合装置を提供する。
【解決手段】通電可能な複数の金属部材101、102と、これら複数の金属材料に対して加圧力を作用させてこれらの金属部材を相互に押圧する加圧装置と、これらの複数の金属部材に設置されて通電による抵抗発熱によりこれらの金属部材を加熱する複数組の対となる電極11、12と、この複数組の電極に電流を供給する電源装置6と、電源装置から複数組の電極に通電する電極の組を切り替えて通電する通電制御部5を備えて、複数の金属部材を接合させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として難溶接性金属材料の同種材、及び異種金属材料の通電接合装置及び通電接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属材料の接合方法において、接合する金属部材に加圧下で通電を行い、接合界面の電気抵抗、及び材料内部の電気抵抗によるジュール発熱を利用して金属材料を加熱して接合する電気抵抗溶接法は、接合部に集中して温度上昇や材料変形が生じるためエネルギー効率が良く接合時間も短いとの利点から自動車産業を始めとして幅広い産業分野で適用されている。
【0003】
一方で電気抵抗溶接法は、大きな電流密度で急加熱を行なう手法であることから、接合界面や金属部材と通電を行なう電極との接触状態によって加熱挙動が変化し、溶接品質にばらつきを生じることがあり、特に接合する金属部材の接合面積が大きくなると均質な溶接部を得ることが困難である。
【0004】
また、接合部の金属材料の一部を溶融させて両者を結合する場合がほとんどであり、溶融、凝固に伴って割れや脆性化合物を生じるような溶接性の悪い材料では良好な品質を得ることができない。
【0005】
このような問題の解決手法として、通電焼結接合法と呼ばれる接合法がある。この通電焼結接合法には、たとえば特許第3548509号公報、特開2003−112264号公報、特開2005−21946号公報、特開2005−262244号公報に記載のあるように、直流の連続通電を行なうもの、もしくは直流のパルス通電を行なうもの等があり、連続通電焼結接合法、パルス通電焼結接合法、パルス通電接合法、放電プラズマ焼結接合法、放電プラズマ接合法などと称されている。
【0006】
これらの接合法において、接合される部材は接合面を合わせて対向配置された電極の間に挟まれ、加圧機構により電極を介して接合面に圧力が付与された状態で、電極間に連続電流、もしくはパルス電流、あるいはこれらを組み合わせた電流を流して接合界面を中心に抵抗発熱させる。
【0007】
このときの電流密度は電気抵抗溶接の十数分の一から数十分の一程度である。そして、接合する材料の溶融温度以下の固相温度範囲で加熱を行い、材料の軟化、変形による接合界面の密着と固相拡散現象により接合がなされる。
【0008】
電気抵抗溶接に比べて接合部の加熱速度が小さく、温度上昇に伴って接合面の微小な変形が生じて界面の密着度が上がるため、接合面積が大きくても均質な接合部を得ることが容易であり、また接合する材料の溶融を伴わないため接合による変形が小さい。溶融接合では良好な品質が得にくい難溶接材料の接合にも適する。
【0009】
変形による接合界面の密着と固相拡散現象を利用した接合方法には、ホットプレス法や固相拡散接合法があるが、これらの手法は接合する部材全体を熱処理炉中で均一に加熱するため、接合に要する時間が数時間から数十時間と長く、部材全体が同様に変形するため接合変形が大きい。通電焼結接合法は局部加熱であることから、これらの方法よりも接合に要する時間を短くでき、接合変形も抑制することが可能である。
【0010】
【特許文献1】特許第3548509号公報
【特許文献2】特開2003−112264号公報
【特許文献3】特開2005−21946号公報
【特許文献4】特開2005−262244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した特許文献1乃至4に記載の従来の通電焼結接合法では、接合する金属部材に厚みの異なる部位がある場合、厚い部分と薄い部分では加熱の効率が異なって厚肉部位の温度は低く、薄肉部位の温度は高くなる場合がある。
【0012】
このため、薄肉部位の接合面が目的の接合温度に達していても、厚肉部位の接合面の加熱は不十分になり、接合強度が不十分であるか、または接合されないといった問題が生じる。
【0013】
逆に、厚肉部位の接合面の温度を目的の接合温度に加熱すると、薄肉部位の温度は目的の接合温度よりも高くなり、結晶粒の粗大化や溶融が生じるため、材料特性の低下を招く恐れがある。
【0014】
また、接合する金属部材の厚みに差が無い場合でも、金属部材間の接合面が大きい場合には接合面の中心部と外周部では接合面の温度に勾配が発生するため、同様の問題が生じる。対となった二つの電極で通電を行なう従来の通電接合法では、金属部材の形状や大きさによって接合面に生じる温度勾配を調整することは困難であった。
【0015】
本発明の目的は、金属材料を相互に通電接合する場合に、接合する金属部材の形状や大きさに係わらずに金属部材間の接合面に生じる温度差を抑制して均質な接合を可能にした通電接合装置及び通電接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の通電接合装置は、通電可能な複数の金属部材と、これら複数の金属材料に対して加圧力を作用させてこれらの金属部材を相互に押圧する加圧装置と、これらの複数の金属部材に設置されて通電による抵抗発熱によりこれらの金属部材を加熱する複数組の対となる電極と、この複数組の電極に電流を供給する電源装置と、電源装置から複数組の電極に通電する電極の組を切り替えて通電する通電制御部を備えて、複数の金属部材を接合させるように構成したことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の通電接合装置は、通電可能な複数の金属部材と、これら複数の金属材料に対して加圧力を作用させてこれらの金属部材を相互に押圧する加圧装置と、これらの複数の金属部材に設置されて通電による抵抗発熱によりこれらの金属部材を加熱する複数組の対となる電極と、この複数組の電極に複数の通電経路を介して夫々電流を供給する電源装置と、電源装置から複数組の電極に通電する通電経路を切り替える通電切り替え装置と、通電切り替え装置による通電の切り替えを制御して電源装置から複数組の電極に通電する通電制御部を備えて、複数の金属部材を接合させるように構成したことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の通電接合方法は、通電可能な複数の金属部材に対して外部から加圧力を作用させてこれらの金属部材を相互に押圧し、押圧下でこれらの金属部材間に通電を行って通電による抵抗発熱により金属部材を加熱して複数の金属部材を接合する通電接合方法において、複数の金属部材間に通電を行なう電極を複数組の対となるように配置し、この複数組の電極の中から通電を行なう電極の組を切り替えて通電することにより金属部材を所望の温度範囲に加熱して複数の金属部材を接合するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、金属材料を相互に通電接合する場合に、接合する金属部材の形状や大きさに係わらずに金属部材間の接合面に生じる温度差を抑制して均質な接合を可能にした通電接合装置及び通電接合方法が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明の実施例である通電接合装置及び通電接合方法について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明を適用した通電接合装置の第1の実施例であって、二つの金属部材を接合する場合の接合部材、電極、電源部、加圧機構、通電制御部を示した概略構成図である。接合部材および電極の構成は断面で示している。本実施例では金属材料の接合部材の一例として合金工具鋼のSKD61を用いた。
【0022】
図1において、金属材料SKD61から成る接合部材のうち、上部に配置された一方の接合部材は、厚みが薄い中央部101aとこの中央部101aの外周側の厚みが厚い端部101bを有する断面が凹状に形成された円盤状の差厚部材101である。また、接合部材のうち、下方に配置された他方の接合部材は、前記差厚部材101に接合される厚みが一様な円盤状の板状部材102である。
【0023】
そして、これらの差厚部材101と板状部材102とは、双方の対抗面に形成した接合面3で相互に接触して配置され、通電接合装置によって加圧状況下で通電することにより、接合部材の接触面及び材料内部の抵抗発熱により前記接合部材を加熱して接合部材同士を接合する。
【0024】
具体的には、円盤状の差厚部材101の凹状底部となる薄肉の中央部101aの上部にA電極11aが設置され、差厚部材101の厚肉の端部101bの上部に複数個のB電極12aが夫々設置されている。
【0025】
そして通電時には、差厚部材101に設置したこのA電極11aに電源部6aから通電経路1aを通じて電圧が負荷され、複数個のB電極12aには電源部6bから通電経路1bを通じて電圧が負荷されるように構成されている。
【0026】
また、厚みが一様な円盤状の板状部材102の中央部の背面にはA電極11bが設置され、板状部材102の外周側の端部の背面にはB電極12bが複数箇所設置されている。
【0027】
そして通電時には、板状部材102に設置したこのA電極11aに電源部6aから通電経路1aを通じて電圧が負荷され、複数箇所のB電極11bに電源部6bから通電経路1bを通じて電圧が負荷されるように構成されている。
【0028】
接合部材の差厚部材101と板状部材102との双方を加圧する加圧機構として、差厚部材101を上方から押圧するプレス工具2a1及び板状部材102を下方から押圧するプレス工具2a2と、これらのプレス工具2a1及びプレス工具2a2の双方に押圧力を付与する油圧シリンダ等の加圧手段2bとが設置されている。
【0029】
また、板状部材102の中央部の背面に設置したA電極11b及び板状部材102の端部の背面に複数箇所設置したB電極12bには温度検出器4が夫々設置されており、これらの各温度検出器4で検出したA電極11bの検出温度信号21a及び複数箇所のB電極12bの検出温度信号21bを通電制御部5に夫々入力するようになっている。
【0030】
通電制御部5では、接合の対象となる金属材料毎に予め入力されている接合部材を通電接合するために必要な所定の温度設定値と、温度検出器4で検出して入力されたA電極11bの検出温度信号21a及び複数箇所のB電極12bからの検出温度信号21bに基づいて、これらの検出温度が所定の温度設定値の目標温度範囲に入るようにA電極及びB電極に前記電源部6a及び電源部6bから夫々通電すべき各通電量である電流値及び通電時間を演算する。
【0031】
そして、通電制御部5で演算したA電極及びB電極に通電すべき各通電量を指令する、電源部6a及び電源部6bに対する制御信号22a、22bを出力して、これらの電源部6a及び電源部6bからA電極に流す電流値IAと通電時間、及びB電極に流す電流値IBと通電時間を制御して通電を行なう。
【0032】
即ち、加圧機構であるプレス工具2a1、2a2と加圧手段2bとによる差厚部材101と板状部材102との加圧状況下で、差厚部材101の凹状底部の中央部101aに設けたA電極11aと、板状部材102の中央部の背面に設けたA電極11bとのA電極間に、通電制御部5の制御信号22aに基づいて電源部6aから電流値IAの直流電流を通電する。
【0033】
また、差厚部材101の端部101bに設けたB電極12aと、板状部材102の端部の背面に設けたB電極12bとの各B電極間に、通電制御部5の制御信号22bに基づいて電源部6bから電流値IBの直流電流を通電する。
【0034】
上記したように加圧状況下でA電極間とB電極間に通電して、接合部材である差厚部材101と板状部材102との間の接合面3及び差厚部材101と板状部材102の金属材料内部の抵抗発熱により加熱して、これらの差厚部材101と板状部材102とを接合するものである。
【0035】
この結果、差厚部材101と板状部材102との間の接合面における温度勾配が小さくなり、金属材料SKD61の差厚部材101と板状部材102との接合面全体を所定の接合温度範囲内の950〜1200℃に昇温することが可能となって、差厚部材101と板状部材102との良好な通電接合が達成される。
【0036】
次に、図1に記載した本発明の実施例における通電接合装置の通電方法について説明する。図1において、A電極は、差厚部材101の厚みの薄い中央部101aに設置のA電極11aと、板状部材102の中央部の背面に設置のA電極11bとから構成されている。
【0037】
また、B電極は、差厚部材101の厚みの厚い端部101bに複数個設置のB電極12aと、板状部材102の端部の背面に複数個設置のB電極12bとから構成されている。
【0038】
そして、これらの電極への通電加熱時には、A電極間であるA電極11aとA電極11bにのみ通電する過程と、B電極間である複数個のB電極12aとB電極12bにのみ通電する過程を繰り返す。
【0039】
図2は図1に示した本発明の第1の実施例である通電接合装置によって、加圧機構であるプレス工具2a1、2a2と加圧手段2bとによる差厚部材101と板状部材102との加圧状況下で、金属材料SKD61からなる接合部材の差厚部材101と板状部材102とに設置したA電極間とB電極間に通電して前記接合部材を通電接合した場合における通電加熱時のA電極間およびB電極間に流す電流と時間の関係を示したグラフである。
【0040】
本実施例では差厚部材101の中央部101aに設置したA電極11aと、板状部材102の中央部に設置したA電極11bとの対で構成するA電極間となるA電極11aとA電極11bとに、通電量として通電時間60msの間、電流値IAの直流の連続通電を行なう。
【0041】
その後、2msの休止時間をおいて、差厚部材101の端部101bに設置した複数個のB電極12aと、板状部材102の端部に設置した複数個のB電極12bとの夫々の対で構成するB電極間となるB電極12aとB電極12bとに、通電量として通電時間60msの間、電流値IBの直流の連続通電を行なう。
【0042】
その後、2ms休止時間をおいて、再び前記したA電極間に電流値IAの直流の連続通電と、休止時間を挟んでB電極間に電流値IBの直流の連続通電を行なう通電サイクルを繰り返す。各電極間に通電する電流値IA及び電流値IBの直流電流の大きさは、接合される金属部材である差厚部材101と板状部材102とを均一に加熱できる条件となる直流電流の値に設定しておく。
【0043】
そして、加圧機構であるプレス工具2a1、2a2と加圧手段2bとによる差厚部材101と板状部材102との加圧状況下で、板状部材102の中央部に設置したA電極11b及び板状部材102の端部に複数個設置したB電極12bに夫々設けられた温度検出器4によってそれぞれの電極の温度を検出温度信号21a、21bとして検出する。
【0044】
通電制御部5ではこれらの検出温度信号21a、21bが所定の目標温度範囲内に入るように各電極に電源部6a、電源部6bから通電すべき各通電量を演算して指令値となる制御信号22a、22bを出力し、電源部6a、電源部6bから各電極に流すべき各通電量の電流値IAと通電時間、及び電流値IBと通電時間を制御する。
【0045】
このようにそれぞれのA電極間及びB電極間に流す通電量である電流IA及び電流IBの大きさと通電時間とを夫々制御することにより、接合すべき金属材料である差厚部材101と板状部材102を加熱して昇温させて前記金属材料の接合面3における温度勾配を小さくし、金属材料SKD61の差厚部材101と板状部材102との接合面全体を所定の接合温度範囲内の950〜1200℃に昇温することが可能となって、これらの差厚部材101と板状部材102との良好な通電接合が達成される。
【0046】
実際に接合された差厚部材101と板状部材102との接合面の断面観察を行ったところ、接合界面は全体にわたって隙間が無く良好に接合されており、接合された金属部材から試験片を採取して引張試験を行ったところ母材同等の引張強度が得られた。
【0047】
本実施例では、接合する金属部材を合金工具鋼であるSKD61としたが、他の金属材料であってもよく、金属部材の数が三つ以上であっても、また金属部材の材質が相互に異なっても構わない。
【0048】
本実施例では、接合部材である差厚部材101と板状部材102に設置したA電極間及びB電極間に通電する通電過程における電流の形態は直流の一定値としたが、通電時間の長さや休止時間の長さは接合する金属部材によって変更してもよく、また通電する電流は交流であっても、直流パルス、交流パルスであっても構わない。
【0049】
また前述のような通電サイクルを設定する代わりに、A電極間とB電極間に流す電流を交流とし、通電制御部5によってそれぞれの位相を変えることによって通電のタイミングをずらして、差厚部材101の厚肉部位と薄肉部位に流す電流量を別々に制御することも可能である。
【0050】
また、加圧機構は油圧式、空圧式、機械式など一般的に用いられている機構を用いればよい。温度検出器4は、温度の検出位置が電極の内部にある場合は熱電対などの接触式のもの、電極の外側にある場合には、放射温度計などの非接触式のものが利用可能である。
【0051】
また、接合部材である差厚部材101と板状部材102は円盤状のものを使用したが、形状にとらわれることなく矩形形状及びその他の形状の接合部材にも適用できることは明らかである。
【0052】
本実施例によれば、厚みの異なる部位が存在する金属部材を効率良く加熱して接合するために、対となった複数組の電極の組を厚みの異なる部位に別々に配置して通電を行い、通電する電極の組を順次切り替えながら加熱すると共に、夫々の組の電極温度を計測してこの電極温度を所望の温度範囲内となるように夫々の電極の組に供給する通電量を調整するようにしたので、金属部材を接合に適した所望の温度範囲内に効率よく昇温でき、よって均質な接合が可能となる。
【実施例2】
【0053】
次に、本発明の他の実施例である第2の実施例について図3を用いて説明する。図3において、本実施例では、図1及び図2に示した第1の実施例と基本構成は共通であるので、共通の構成についてはその説明を省略し、相違する部分について説明する。
【0054】
図3は本発明を適用した通電接合装置の第2実施例であり、二つの金属部材を接合する場合の接合部材である円盤状部材103及び溝107を有する溝付円盤状部材104に、電極、電源部、加圧機構、温度検出手段、通電経路切り替え機構、通電制御部を備えた通電接合装置を示した概略構成図である。接合部材および電極の構成は断面で示している。
【0055】
本実施例では接合部材を金属材料のSUS304としている。図3において、金属材料SUS304から成る接合部材のうち、上部に配置された一方の接合部材は、厚みが一様な円盤状部材103であり、また、下方に配置された他方の接合部材は前記円盤状部材103に接合される厚みが一様で外面に溝107が形成されている溝付円盤状部材104である。
【0056】
そして、これらの円盤状部材103と溝付円盤状部材104とは、双方の対抗面に形成した接合面3で相互に接触して配置され、通電接合装置によって加圧状況下で通電することにより、接合部材の接触面及び材料内部の抵抗発熱により前記接合部材を加熱して接合部材同士を接合する。
【0057】
溝107は、接合される対象の金属部材の中に、溝が形成されている部材がある場合を考慮して、本実施例では溝付円盤状部材104を用いて説明している。
【0058】
具体的には、円盤状部材103の中央部の上部にA電極11aが設置され、外周側の端部の上部に複数個のB電極12aが夫々設置されている。そして通電時には、円盤状部材103に設置したA電極11aに電源部6から通電経路切り替え機構7を経由して通電経路1aを通じて電圧が負荷され、また、複数個のB電極12bには電源部6から通電経路切り替え機構7を経由して通電経路1bを通じて電圧が負荷されるように構成されている。
【0059】
また、溝付円盤状部材104の中央部の背面にはA電極11bが設置され、その外周側の端部の背面にはB電極12bが複数箇所設置されている。そして通電時には、溝付円盤状部材104に設置したA電極11aに電源部6から通電経路切り替え機構7を経由して通電経路1aを通じて電圧が負荷され、複数箇所のB電極12aにも電源部6から通電経路切り替え機構7を経由して通電経路1bを通じて電圧が負荷されるように構成されている。
【0060】
また、溝付円盤状部材104の中央部の背面に設置したA電極11b及び溝付円盤状部材104の外周側の端部の背面に複数箇所設置したB電極12bには温度検出器4が夫々設置されており、これらの各温度検出器4で検出したA電極11bの検出温度信号21a及び複数箇所のB電極12bの検出温度信号21bを通電制御部5に夫々入力するようになっている。
【0061】
通電制御部5では、接合の対象となる金属材料毎に予め入力されている接合部材を通電接合するために必要な所定の温度設定値と、各温度検出器4で検出し入力されたA電極11bの検出温度信号21a及び複数箇所のB電極12bからの検出温度信号21bに基づいて、これらの検出温度が所定の温度設定値の目標温度範囲に入るようにA電極及びB電極に前記電源部6から通電経路切り替え機構7を経由して通電すべき各通電量である電流値及び通電時間と、通電経路切り替え機構7に通電の切り替えを指令する指令値を演算する。
【0062】
接合部材の円盤状部材103と溝付円盤状部材104を加圧する加圧機構として、プレス工具2a1及びプレス工具2a2と、これらのプレス工具2a1及びプレス工具2a2の双方に押圧力を付与する油圧シリンダ等の加圧手段2bとが設置されているのは前記第1の実施例と同様である。
【0063】
そして、A電極間及びB電極間に流す通電量である電流IA及び電流IBの大きさと各通電時間とを制御することにより、接合すべき金属材料SUS304の円盤状部材103と溝付円盤状部材104を加熱昇温させて前記金属材料の接合面3における温度勾配を小さくし、金属材料SUS304の円盤状部材103と溝付円盤状部材104との接合面3全体を所定の接合温度範囲内の950〜1250℃に昇温することが可能となり、これらの円盤状部材103と溝付円盤状部材104との良好な通電接合が達成される。
【0064】
次に、図3に記載した本発明の実施例における通電接合装置の通電方法について説明する。図3において、A電極は、円盤状部材103の中央部に設置のA電極11aと、溝付円盤状部材104の中央部の背面に設置のA電極11bとから構成されており、また、B電極は、円盤状部材103の外周側の端部に複数個設置のB電極12aと、溝付円盤状部材104の外周側の端部の背面に複数個設置のB電極12bとから構成されている。
【0065】
そして、これらの電極への通電加熱時には、A電極間であるA電極11aとA電極11bにのみ通電する過程と、B電極間である複数個のB電極12aとB電極12bにのみ通電する過程を繰り返す。
【0066】
図4は図3に示した本発明の第2の実施例である通電接合装置によって、加圧機構であるプレス工具2a1、2a2と加圧手段2bとによる差厚部材101と板状部材102との加圧状況下で、金属材料SUS304からなる接合部材の円盤状部材103と溝付円盤状部材104とに設置したA電極間とB電極間に通電して前記接合部材を通電接合した場合における通電加熱時のA電極間及びB電極間に流す電流と時間の関係を示したグラフである。
【0067】
本実施例では円盤状部材103の中央部に設置したA電極11aと、溝付円盤状部材104の中央部に設置したA電極11bとの対で構成するA電極間となるA電極11aとA電極11bとに、通電時間30msの間、パルス幅3msで電流値IA1の直流のパルス通電を行い、3msの休止期間を持つ。
【0068】
次に、円盤状部材103の外周側の端部に設置した複数個のB電極12aと、溝付円盤状部材104の外周側の端部に設置した複数個のB電極12bとの夫々の対で構成するB電極間となるB電極12aとB電極12bとに、通電時間30msの間、パルス幅3msで電流値IB1の直流のパルス通電を行い、3msの休止期間を持つ。
【0069】
その後再び、前記A電極間となるA電極11aとA電極11bとに、通電時間30msの間、パルス幅3msで電流値IA2の直流のパルス通電を行い、3msの休止期間を持つ。
【0070】
次に再び、前記B電極間となるB電極12aとB電極12bとに、通電時間30msの間、パルス幅3msで電流値IB2の直流のパルス通電を行い、3msの休止期間を持つ。
【0071】
そして、前記したA電極間の電流値IA1又は電流値IA2による直流のパルス通電と、夫々休止時間を挟んでB電極間に電流値IB1又は電流値IB2による直流のパルス通電を行なう通電サイクルを繰り返す。前記した直流のパルス通電と休止時間とからなる通電サイクルを1単位として、通電サイクルが切り替わるときに電流量である電流値IA1又は電流値IA2と各通電時間、及び電流値IB1又は電流値IB2と各通電時間や、これらの切り替えのために通電経路切り替機構7による通電経路1a、1bの切り替えを行なう。
【0072】
通電される電流値IA1又は電流値IA2、電流値IB1又は電流値IB2は、図4に示したように電流値IAと電流値IBとを交互に切り替えて通電しなくても、接合対象の金属部材である円盤状部材103と溝付円盤状部材104とが所望の温度範囲内に均一に加熱できるのでれば、電流値IA1又は電流値IA2、或いは電流値IB1又は電流値IB2の何れかを連続して通電するようにしてもよい。
【0073】
そして、加圧機構であるプレス工具2a1、2a2と加圧手段2bとによる円盤状部材103と溝付円盤状部材104との加圧状況下で、溝付円盤状部材104の中央部に設置したA電極11b及び溝付円盤状部材104の外周側の端部に複数個設置したB電極12bに夫々設けられた温度検出器4によってA電極とB電極の温度を検出温度信号21a、21bとして夫々検出する。
【0074】
通電制御部5ではこれらの検出温度信号21a、21bが所定の目標温度範囲内に入るようにA電極とB電極に電源部6から通電経路切り替え機構7を経由して通電すべき各通電量を指令する指令値となる制御信号22a、22bを出力して、電源部6からA電極に流す電流値IAと通電時間、及びB電極に流す電流値IBと通電時間を制御して通電を行なう。
【0075】
上記で説明したように夫々のA電極間及びB電極間に流す通電量である電流IA及び電流IBの大きさと各通電時間とを制御することにより、接合すべき金属材料である円盤状部材103と溝付円盤状部材104を加熱して昇温させて前記金属材料の接合面3における温度勾配を小さくし、金属材料SUS304の円盤状部材103と溝付円盤状部材104との接合面3全体を所定の接合温度範囲内の950〜1250℃に昇温するが可能となって、これらの円盤状部材103と溝付円盤状部材104との良好な通電接合が達成される。
【0076】
実際に接合された円盤状部材103と溝付円盤状部材104との接合面の断面観察を行ったところ、接合界面は全体にわたって隙間が無く良好に接合されており、接合された金属部材から試験片を採取して引張試験を行ったところ母材同等の引張強度が得られた。
【0077】
本実施例では、接合する金属部材をSUS304としたが、他の金属材料であってもよく、金属部材の数が三つ以上であっても、金属部材の材質が異なっても構わない。本実施例では、A電極間、及びB電極間に通電するひとつの通電サイクルにおける電流の形態は直流のパルスとしたが、パルス幅や休止時間の長さは接合する部材によって変更してもよく、また交流パルスであっても、直流または交流の連続通電であってもよい。
【0078】
また、加圧機構は油圧式、空圧式、機械式など一般的に用いられている機構を用いればよい。温度検出器は、温度の検出位置が電極の内部にある場合は熱電対などの接触式のもの、電極の外側にある場合には、放射温度計などの非接触式のものが利用可能である。
【0079】
また、接合部材である差厚部材101と板状部材102は円盤状のものを使用したが、形状にとらわれることなく矩形形状及びその他の形状の接合部材にも適用できることは明らかである。
【0080】
本実施例によれば、部材同士の接合面積が大きい金属部材を効率良く加熱して接合するために、対となった複数組の電極の組を接合面の中央部と外周部に別々に配置して通電を行い、通電する電極の組を順次切り替えながら加熱すると共に、夫々の組の電極温度を計測してこの電極温度を所望の温度範囲内となるように夫々の電極の組に通電する時間の長さを調整するようにしたので、金属部材を接合に適した所望の温度範囲内に効率よく昇温でき、よって均質な接合が可能となる。
【実施例3】
【0081】
次に、本発明の更に他の実施例である第3の実施例について図5乃至図7を用いて説明する。図5乃至図7において、本実施例では、図1及び図2に示した第1の実施例と基本構成は共通であるので、共通の構成についてはその説明を省略し、相違する部分について説明する。
【0082】
図5及び図6は本発明を適用した通電接合装置の第3実施例であり、二つの金属部材を接合する場合の接合部材である穴108及び穴109を有する円盤状の穴付き部材105及び溝107を有する円盤状の溝付きチル部材106に、加熱用部材、電極、電源部、加圧機構、温度検出手段、通電制御部を備えた通電接合装置を示した概略構成図である。
【0083】
図5に示す前記第3実施例の通電接合装置の側面図では、接合部材、加熱用部材および電極の構成を断面で示している。図6に示す前記第3実施例の通電接合装置の上面図では、接合部材、加熱用部材、電極の構成を上面から見た場合を示している。
【0084】
本実施例では接合部材を金属材料の無酸素銅としている。図5及び図6において、金属材料である無酸素銅から成る接合部材のうち、上部に配置された一方の接合部材は、厚みが一様で中央部に穴108と、周辺部に穴109を有する円盤状の穴付き部材105である。
【0085】
また、下方に配置された他方の接合部材は前記穴付き部材105に接合される厚みが一様で該穴109と連通した溝107が外面に形成されている溝付きチル部材106である。
【0086】
そして、これらの穴付き部材105と溝付きチル部材106とは、双方の対抗面に形成した接合面3で相互に接触して配置され、通電接合装置によって加圧状況下で通電することにより、接合部材の接触面及び材料内部の抵抗発熱により前記接合部材を加熱して接合部材同士を接合する。
【0087】
穴108、穴109、及び溝107は、接合される対象の金属部材の中に、穴や溝が形成されている部材がある場合を考慮して、本実施例では穴付き部材105及び溝付きチル部材106を夫々用いて説明している。
【0088】
具体的には、穴付き部材105の上部には、この穴付き部材105の中央部に形成した穴108の内部に配置されるようにA電極11aが設置され、穴付き部材105の外周側の端部の上部には複数個のB電極12aが夫々設置されている。そして通電時には、穴付き部材105に設置したA電極11aに電源部6aから通電経路1aを通じて電圧が負荷され、また、複数個のB電極12bには電源部6bから通電経路1bを通じて電圧が負荷されるように構成されている。
【0089】
また、円盤状の溝付きチル部材106は、その半径方向外周側に環状の加熱用部材13が分割して設置されており、これらの加熱用部材13の更に半径方向外方に2個のC電極14が設置された構造となっている。
【0090】
そして、この溝付きチル部材106の中央部の背面にはA電極11bが配置されると共に、このA電極11bの外周側に位置するようにB電極12bが複数箇所設置されている。
【0091】
そして通電時には、溝付きチル部材106に設置したA電極11aに電源部6aから通電経路1aを通じて電圧が負荷され、複数箇所のB電極12aには電源部6bから通電経路1bを通じて電圧が負荷されるように構成されている。
【0092】
また、2個のC電極14には電源部6cから通電経路1cを通じて電圧が負荷されるように構成されている。
【0093】
溝付きチル部材106に加熱用部材13とC電極14とを設けて通電するように構成したことによって、接合される一方の金属部材である溝付きチル部材106を、より効率良く所望の温度範囲に均一に加熱することが可能となる。
【0094】
また、溝付きチル部材106の中央部の背面に設置したA電極11bには温度検出器4が設置され、穴付き部材105と溝付きチル部材106との間の接合面3を検出する非接触式の温度検出器4cが前記接合面3から離間して設置され、溝付きチル部材106の外周側に設置した複数個のB電極12bにはこのB電極12bから離間して非接触式の温度検出器4bが設置されている。
【0095】
そして、これらの温度検出器4で検出したA電極11bの検出温度信号21a、及び温度検出器4cで検出した穴付き部材105と溝付きチル部材106との間の接合面3の検出温度信号21c、及び温度検出器4bで検出した複数箇所のB電極12bの検出温度信号21bを通電制御部5に夫々入力するようになっている。
【0096】
通電制御部5では、接合の対象となる金属材料毎に予め入力されている接合部材を通電接合するために必要な所定の温度設定値と、温度検出器4で検出し入力されたA電極11bの検出温度信号21a、穴付き部材105と溝付きチル部材106との間の接合面3の検出温度信号21c、及び温度検出器4bで検出した複数箇所のB電極12bの検出温度信号21bとに基づいて、これらの検出温度が所定の温度設定値の目標温度範囲に入るようにA電極、B電極、及びC電極に前記電源部6a、6b、6c、から夫々通電すべき各通電量である電流値及び通電時間を演算して、この各通電量を指令する。
【0097】
接合部材の穴付き部材105と溝付きチル部材106を加圧する加圧機構として、プレス工具2a1及びプレス工具2a2と、これらのプレス工具2a1及びプレス工具2a2の双方に押圧力を付与する油圧シリンダ等の加圧手段2bとが設置されているのは前記第1の実施例と同様である。
【0098】
そして、A電極間、B電極間及びC電極間に流す通電量である電流IA、電流IB及び電流ICの大きさと各通電時間とを制御することにより、接合すべき金属材料の無酸素銅の穴付き部材105と溝付きチル部材106を加熱昇温させて前記金属材料の接合面3における温度勾配を小さくし、金属材料の無酸素銅の穴付き部材105と溝付きチル部材106との接合面3全体を所定の接合温度範囲内の800〜950℃に昇温することが可能となり、これらの穴付き部材105と溝付きチル部材106との良好な通電接合が達成される。
【0099】
次に、図5及び図6に記載した本発明の実施例における通電接合装置の通電方法について説明する。
【0100】
図5において、A電極は、穴付き部材105の中央部に形成した穴108に設置されたA電極11aと、溝付きチル部材106の中央部の背面に設置のA電極11bとから構成されており、B電極は、穴付き部材105の外周側の端部に複数個設置のB電極12aと、溝付きチル部材106の外周側の端部の背面に複数個設置のB電極12bとから構成されている。
【0101】
また、C電極は、溝付きチル部材106の外周側に設けた環状の加熱用部材13の外方に2個設置のC電極14とから構成されている。
【0102】
そして、これらの電極への通電加熱時には、A電極間であるA電極11aとA電極11bにのみ通電する過程と、B電極間である複数個のB電極12aとB電極12bにのみ通電する過程と、これらの各通電の過程にC電極である2個のC電極14のみに通電する過程を加えた各過程を繰り返す。
【0103】
図7(A)及び図7(B)は、図5及び図6に示した本発明の第3の実施例である通電接合装置によって、加圧機構であるプレス工具2a1、2a2と加圧手段2bとによる差厚部材101と板状部材102との加圧状況下で、無酸素銅からなる接合部材の穴付き部材105と溝付きチル部材106とに設置したA電極間とB電極間に通電し、更に必要に応じて溝付きチル部材106に設置したC電極間にも通電して、前記接合部材を通電接合した場合における通電加熱時のA電極間、B電極間及びC電極間に流す電流と時間の関係を示したグラフである。
【0104】
本実施例では、まず図7(a)に示すように、穴付き部材105の中央部に設置したA電極11aと、溝付きチル部材106の中央部に設置したA電極11bとの対で構成するA電極間となるA電極11aとA電極11bとに、通電量として通電時間18msの間、電流値IAの連続通電を行い、2msの休止期間を持つ。
【0105】
次に、穴付き部材105の外周側の端部に設置した複数個のB電極12aと、溝付きチル部材106の外周側の端部に設置した複数個のB電極12bとの夫々の対で構成するB電極間となるB電極12aとB電極12bとに、通電量として通電時間18msの間、電流値IBの連続通電を行い、2msの休止期間を持つ。
【0106】
そして、前記したA電極間の電流値IAによる連続通電と、休止時間を挟んでB電極間に電流値IBによる連続通電を行なう通電サイクルを繰り返す。前記した連続通電と休止時間とからなる通電サイクルを1単位として、通電サイクルが切り替わるときに電流量である電流値IA及び電流値IBの切り替えを行なう。
【0107】
そして、加圧機構であるプレス工具2a1、2a2と加圧手段2bとによる穴付き部材105と溝付きチル部材106との加圧状況下で、溝付きチル部材106の中央部に設置したA電極11bに設けられた温度検出器4によってA電極の温度を検出温度信号21aとして検出する。
【0108】
また、溝付きチル部材106の外周側に設置したB電極12bから離間して設けられた非接触式の温度検出器4bによってB電極12bの温度を検出温度信号21bとして検出する。
【0109】
通電制御部5ではこれらの検出温度信号21a、21bが所定の目標温度範囲内に入るように、A電極とB電極に電源部6a及び電源部6bから夫々通電すべき各通電量を演算して指令値となる制御信号22a、22bを出力し、電源部6a及び電源部6b6からA電極とB電極に電圧として負荷する各通電量の電流値IAと通電時間、及び電流値IBと通電時間を制御する。
【0110】
このように夫々のA電極間及びB電極間に流す電流IA及び電流IBの大きさと通電時間とを制御することにより、接合すべき金属材料である穴付き部材105と溝付きチル部材106を加熱させて所望の温度範囲内に昇温し、前記金属材料の接合面3における温度勾配を小さくなるように穴付き部材105と溝付きチル部材106の加熱を行なう。
【0111】
そして、前記の加熱の過程で穴付き部材105と溝付きチル部材106の金属材料が加熱により軟化して、接合面3における穴付き部材105と溝付きチル部材106との密着度が向上すると、接合面3における抵抗発熱が小さくなり、電流値IA及び電流値IBを、ある大きさで増加させたときの温度上昇幅が減少する。
【0112】
そこで、図7(B)に示すように、前記A電極間への電流IAの通電、及びB電極間への電流IBの通電の次に、溝付きチル部材106の外周側の端部に設置した2個のC電極14の対で構成するC極間に通電時間18msの間、電流値Icの連続通電を行い2msの休止期間を持つ通電を追加し、これらの各通電を繰り返す。
【0113】
溝付きチル部材106の外周側の端部に設けた加熱用部材13に対してC電極14から通電する電流の大きさである電流値ICは、温度検出器4cによって計測される穴付き部材105の接合面3の近傍温度とみなす検出温度信号21cが目標とする接合温度範囲内に入るように調整される。
【0114】
また、夫々のA電極間及びB電極間に流す電流値IA、及び電流値IBは、A電極11bに設置した温度検出器4、及びB電極12bの表面温度を計測する温度検出器4bから得られた温度計測値である検出温度信号21a、21bが夫々所定の温度範囲内に入るように継続的に制御される。
【0115】
上記で説明したように夫々のA電極間、B電極間及びC電極間に夫々流す通電量である電流値IA、電流値IB及び電流値ICの大きさと各通電時間とを図7(A)及び図7(B)に示すように夫々制御することにより、接合すべき金属材料である穴付き部材105と溝付きチル部材106を加熱し昇温させて前記金属材料の接合面3における温度勾配を小さくし、この接合面3全体を所定の接合温度範囲内に昇温することで、これらの穴付き部材105と溝付きチル部材106との良好な通電接合が達成される。
【0116】
また、溝付きチル部材106に設けた発熱効率の高い加熱用部材13に対してC電極14から電流値ICを通電してこの加熱用部材13を過熱し、熱伝達を利用して穴付き部材105と溝付きチル部材106との接合面3全体を接合に適した所望の温度範囲内に昇温することで、更に効率的に接合が達成される。
【0117】
上記で説明したように夫々のA電極間、B電極間及びC電極間に流す通電量である電流IA、電流IB及び電流ICの大きさと各通電時間とを制御することにより、接合すべき金属材料の無酸素銅の穴付き部材105と溝付きチル部材106を加熱昇温させて前記金属材料の接合面3における温度勾配を小さくし、金属材料の無酸素銅の穴付き部材105と溝付きチル部材106との接合面3全体を所定の接合温度範囲内の800〜950℃に昇温することが可能となり、これらの穴付き部材105と溝付きチル部材106との良好な通電接合が達成される。
【0118】
実際に接合された穴付き部材105と溝付きチル部材106との接合面の断面観察を行ったところ、接合界面は全体にわたって隙間が無く良好に接合されており、接合された金属部材から試験片を採取して引張試験を行ったところ母材同等の引張強度が得られた。
【0119】
本実施例では、接合する金属部材を無酸素銅としたが、銅合金やアルミニウム合金等、他の金属材料であってもよく、金属部材の数が三つ以上であっても、部材の材質が異なっても構わない。
【0120】
本実施例では、A電極間、B電極間、及びC電極間に通電する通電過程における電流の形態は直流の一定値としたが、通電時間の長さや休止時間の長さは接合する部材によって変更してもよく、また交流であっても、直流パルス、交流パルスであっても構わない。
【0121】
また、前記電極間への通電は、図7(A)及び図7(B)に示すような通電サイクルを設定する代わりに、各電極間に流す電流を交流とし、通電制御部5によってそれぞれの位相を変えることによって通電のタイミングをずらし、穴付き部材105と溝付きチル部材106の加熱用にA電極間及びB電極間に流す電流値IA及び外周部に流す電流値IBと、加熱用部材13を加熱するためにC電極間に流す電流値ICとを通電制御部5によって個別に制御することも可能である。
【0122】
また、溝付きチル部材106に設けた加熱用部材13への通電は、通電加熱開始の時点から行っても構わない。また、加圧機構は油圧式、空圧式、機械式など一般的に用いられている機構を用いればよい。温度検出器は、温度の検出位置が電極の内部にある場合は熱電対などの接触式のもの、電極の外側にある場合には、放射温度計などの非接触式のものが利用可能である。
【0123】
本実施例によっても、前述した本発明と同様の効果を奏することができる。
【0124】
また、接合部材である穴付き部材105と溝付きチル部材106は円盤状のものを使用したが、形状にとらわれることなく矩形形状及びその他の形状の接合部材にも適用できることは明らかである。
【0125】
本実施例によれば、電気抵抗が小さい金属部材を効率良く加熱して接合するために、対となった複数組の電極の組を接合する金属部材と接合する金属部材に接触させた電気抵抗が大きい金属部材との両方に配置して通電を行い、電気抵抗の大きい金属部材で発生した熱を熱伝達によって接合する金属部材を加熱するようにしたので、接合する金属部材のみを通電加熱した場合よりも少ない電流量で金属部材を接合に適した所望の温度範囲内に効率よく昇温でき、よって均質な接合が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、各種の産業分野における難溶接性金属材料や異種金属材を接合する通電接合装置、並びに通電接合方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の一実施例である通電接合装置示す概略構成図。
【図2】図1に示した実施例の通電接合装置で通電する通電量の一例を示す電流波形図。
【図3】本発明の他の実施例である通電接合装置を示す概略構成図。
【図4】図3に示した他の実施例の通電接合装置で通電する通電量の一例を示す電流波形図。
【図5】本発明の更に他の実施例である通電接合装置を示す側面図。
【図6】図5の本発明の更に他の実施例である通電接合装置を示す上面成図。
【図7(A)】図5に示した他の実施例の通電接合装置で通電する通電量の一例を示す電流波形図。
【図7(B)】図5に示した他の実施例の通電接合装置で通電する通電量の他の一例を示す電流波形図。
【符号の説明】
【0128】
1a、1b、1c:通電経路、2a1、2a2:プレス工具、2b:加圧手段、3:接合面、4、4b、4c:温度検出器、5:通電制御部、6a、6b、6c、6:電源部、7:通電経路切り替え機構、11a、11b:A電極、12a、12b:B電極、13:加熱用部材、14:C電極、21a、21b、21c:温度検出信号、22a、22b、22c:制御信号、101:差厚部材、101a:中央部、101b:端部、102:板状部材、103:円盤状部材、104:溝付き円盤状部材、105:穴付き部材、106:溝付きチル部材、107:溝、108、109:穴、IA、IB、Ic:電流値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電可能な複数の金属部材に対して外部から加圧力を作用させてこれらの金属部材を相互に押圧し、押圧下でこれらの金属部材間に通電を行って通電による抵抗発熱により金属部材を加熱して複数の金属部材を接合する通電接合方法において、複数の金属部材間に通電を行なう電極を複数組の対となるように配置し、この複数組の電極の中から通電を行なう電極の組を切り替えて通電することにより金属部材を所望の温度範囲に加熱して複数の金属部材を接合することを特徴とする通電接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の通電接合方法において、通電を行なう複数組の電極に対して通電する電流の大きさ、及び通電する時間のうち、少なくとも一方を変化させて通電することを特徴とする通電接合方法。
【請求項3】
請求項1に記載の通電接合方法において、複数組の電極から通電を行なう際に、金属部材又は電極の温度を複数箇所から検出し、この複数箇所から検出した温度が所望の温度範囲内となるように、通電を行なう電極の組に対して通電する電流量、及び通電する時間のうち、少なくとも一方を変化させて通電することを特徴とする通電接合方法。
【請求項4】
請求項1に記載の通電接合方法において、接合される金属部材に別の電極を備えた加熱用部材を設置してこの別の電極に通電を行って加熱用部材を加熱し、加熱された該加熱用部材からの伝熱によって接合される金属部材を加熱することを特徴とする通電接合方法。
【請求項5】
通電可能な複数の金属部材と、これら複数の金属材料に対して加圧力を作用させてこれらの金属部材を相互に押圧する加圧装置と、これらの複数の金属部材に設置されて通電による抵抗発熱によりこれらの金属部材を加熱する複数組の対となる電極と、この複数組の電極に電流を供給する電源装置と、電源装置から複数組の電極に通電する電極の組を切り替えて通電する通電制御部を備えて、複数の金属部材を接合させることを特徴とする通電接合装置。
【請求項6】
通電可能な複数の金属部材と、これら複数の金属材料に対して加圧力を作用させてこれらの金属部材を相互に押圧する加圧装置と、これらの複数の金属部材に設置されて通電による抵抗発熱によりこれらの金属部材を加熱する複数組の対となる電極と、この複数組の電極に複数の通電経路を介して夫々電流を供給する電源装置と、電源装置から複数組の電極に通電する通電経路を切り替える通電切り替え装置と、通電切り替え装置による通電の切り替えを制御して電源装置から複数組の電極に通電する通電制御部を備えて、複数の金属部材を接合させることを特徴とする通電接合装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の通電接合装置において、接合される金属部材に別の電極を備えた加熱用部材を設置し、この別の電極に電源装置から通電を行って加熱用部材を加熱し該加熱用部材からの伝熱によって接合される金属部材の加熱を行なうように前記通電制御部から電極に対する通電量を制御して、複数の金属部材を接合させることを特徴とする通電接合装置。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載の通電接合装置において、金属部材又は電極の温度を検出する温度検出器を複数箇所に設置し、この複数箇所の温度検出器から検出した温度が所望の温度範囲内となるように前記通電制御部から電極に対する通電量を制御して、複数の金属部材を接合させることを特徴とする通電接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7(A)】
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【図7(B)】
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