説明

造粒装置

【課題】引火性の高い発泡剤が用いられた廃発泡性樹脂を、発泡剤の引火を防止しながら処理して造粒体を製造できる造粒装置を提供すること。
【解決手段】造粒装置1は、造粒動作を行うペレットミル2と、材料をペレットミル2に供給する定量供給機3と、ペレットミル2へ材料を供給する供給ダクト23から第1サイクロンセパレータ4を介して空気を吸引する第1吸引ブロワ5と、ペレットミル2からのペレットの排出路から第2サイクロンセパレータ6を介して空気を吸引する第2吸引ブロワ7を備える。第1吸引ブロワ5により、供給ダクト23内に材料の供給方向と反対方向に向かう空気流を形成し、第2吸引ブロワ6により、ダイケーシング22内にペレットの排出方向と反対方向に向かう空気流を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば発泡剤を含んだ発泡性樹脂等のように、添加剤を含んだ材料を再生処理してペレット状に成型する造粒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用を図るため、廃棄された家電製品のリサイクルが促進されつつあり、特に廃冷蔵庫に関して、廃棄物としての排出量が比較的多い断熱材のリサイクルが望まれている。
【0003】
冷蔵庫の断熱材は、ウレタン発泡樹脂やスチレン発泡樹脂で形成されており、発泡剤に特定フロンが用いられていたが、オゾン層の保護のため、1990年代の後半には発泡剤として代替フロンが用いられるようになった。その後、代替フロンの温室効果が問題となり、最近、フロンを用いないノンフロン発泡剤を用いた断熱材が普及しつつある。
【0004】
断熱材のリサイクルでは、断熱材を破砕機で破砕して数ミリメートルの寸法の破砕片を形成し、この破砕片を造粒装置で成型してペレットを製造する。このペレットを、プラスチック製品の材料として再利用するマテリアルリサイクルや、化学工業の原料として再利用するケミカルリサイクルや、燃焼により熱量を得るサーマルリサイクルに利用している。
【0005】
断熱材の破砕片を成型するための造粒装置としては、特許文献1のような廃棄物処理で用いられるペレットミルが用いられている。このペレットミルは、図5の模式図に示すように、円筒形状のリングダイ25と、リングダイ25の内周面に接触するように配置された2つの押出ロール38,38を備える。押出ロール38,38の回転軸が固定された状態で、リングダイ25が矢印R1で示すように回転駆動され、これに伴い、押出ロール38,38が従動して矢印R2で示すように回転する。これにより、リングダイ25の内側に供給された断熱材の破砕片を、押出ロール38がリングダイ25のダイ孔に押し込み、リングダイ25の外周面側へ押し出して柱状に成型する。成型された破砕片を、リングダイ25の外周面に近接して配置された固定刃40,40で所定長さに切断してペレット41,41を形成し、ペレット41を図示しないケーシングの排出口から外部に排出するように構成されている。
【0006】
ところで、ノンフロン発泡剤としては、HFC134a等の代替フロンと比較して温室効果が大幅に少ないシクロペンタンが普及しつつある。しかしながら、シクロペンタンは引火性が高いので、断熱材の破砕及び造粒を行う際に引火防止を行う必要がある。したがって、断熱材のリサイクルでは、発泡剤がフロンである場合は大気の漏れを防止しながら回収する必要があり、また、発泡剤がシクロペンタンである場合は引火を防止しながら回収する必要がある。このように、フロンやシクロペンタンの発泡剤を回収しながら発泡樹脂のリサイクルを行うシステムとして、特許文献2に示すようなものが開示されている。
【0007】
特許文献2には、破砕羽根を駆動する駆動軸が鉛直向きに配置された竪型破砕機と、この竪型破砕機の排出口に搬送部の上部に気密空間が形成されるように設置された振動フィーダと、上記排出口から排出される破砕片および発生ガスを気密状態で振動フィーダに導入する導入路と、上記振動フィーダの気密空間から吸い込んだガスを上記竪型破砕機の破砕室の上部に戻す循環ガス路と、この循環ガス路の途中からガスを回収するガス回収装置とを備えたガス回収システムが記載されている。このガス回収システムは、竪型破砕機によって断熱材等の廃棄物を破砕する際に発生するフロンやシクロペンタン等のガスを、竪型破砕機、導入路、振動フィーダ、循環ガス路及び竪型破砕機の順に循環させ、循環する間にガスを濃縮させて、ガス回収装置で回収するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4536744号明細書
【特許文献2】特開2002−191999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
引用文献1に記載の造粒装置は、シクロペンタンの発泡剤を含む断熱材が材料である場合、リングダイ25の内周面に押出ロール38,38が接触する状態でリングダイ25が回転駆動されるので、駆動部品や接触部品の相互間で生じる火花により、シクロペンタンが引火するおそれがある。また、フロンの発泡剤を含む断熱材が材料である場合、ケーシングの排出口からペレット41と共にフロンが外部に漏出するおそれがある。
【0010】
一方、引用文献2には、竪型破砕機でシクロペンタンの引火防止やフロンの漏れ防止を行う構造は、開示されていない。
【0011】
そこで、本発明の課題は、発泡性樹脂等のように添加剤を含んだ材料を処理するにあたり、引火性の高い添加剤の引火を防止でき、また、環境負荷の大きい添加剤や、有害又は有毒の添加剤や、悪臭のする添加剤の漏出を防止できる造粒装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の造粒装置は、
添加剤を含んだ材料を成型して成型物を製造する造粒装置であって、1個又は複数の成型孔を有するダイと、ダイに向かって材料を押圧して成型孔から材料を押し出す押出手段と、上記ダイ及び押出手段を収容するケーシングと、上記ダイの押出手段側に材料を供給する供給通路と、上記ダイの成型孔から材料が押し出されてなる成型物をケーシングから排出する排出部とを備える造粒装置において、
上記ダイに関して材料が供給される側の気体を吸引し、材料が供給される方向と反対方向に気体の流れを形成する材料供給側吸引手段と、
上記ダイに関して成型物が排出される側の気体を吸引し、成型物が排出される方向と反対方向に気体の流れを形成する成型物排出側吸引手段と
を備えることを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、供給通路を通じてダイの押出手段側に供給された材料が、押出手段でダイの成型孔に向かって押圧され、ダイの成型孔から材料が押し出されて成型物が形成される。ここで、材料供給側吸引手段により、ダイに関して材料が供給される側の気体が吸引されて、材料の供給方向と反対方向の気体の流れが形成される。この材料が供給される方向と反対方向の流れにより、ダイに関して材料供給側に位置する材料に接触する気体の流量を大きくして、材料から効果的に添加剤を分離することができる。これと共に、成型物排出側吸引手段により、ダイに関して成型物排出側の気体が吸引されて、成型物の排出方向と反対方向の気体の流れが形成される。この成型物が排出される方向と反対方向の流れにより、ダイの成型物排出側に位置する成型物に接触する気体の流量を大きくして、成型物から効果的に添加剤を分離することができる。上記材料供給側吸引手段と成型物排出側吸引手段により、材料の成型動作が行われるダイに関して材料供給側と成型物排出側に分けて気体の流れを形成するので、供給及び成型過程の材料から放出される添加剤と、成型された材料から放出される添加剤を、夫々効果的に収集することができる。その結果、添加剤を迅速に収集できて、引火性の高い添加剤の引火を効果的に防止でき、また、環境負荷の大きい添加剤や、有害又は有毒の添加剤や、悪臭のする添加剤の漏出を効果的に防止できる。
【0014】
また、材料供給側吸引手段でダイの材料供給側の気体を吸引すると共に、成型物排出側吸引手段でダイの成型物排出側の気体を吸引するので、ケーシング及び供給通路内の気圧が大気圧よりも低く保持される。したがって、供給過程や成型過程で材料から放出された添加剤を、ケーシング及び供給通路から周辺に漏出させることなく収集することができる。また、材料の粒子を、ケーシング及び供給通路から周辺に漏出させることなく収集することができる。その結果、造粒装置の周辺の作業環境を清浄に保つことができる。
【0015】
また、材料供給側吸引手段でダイの材料供給側の気体を吸引すると共に、成型物排出側吸引手段でダイの成型物排出側の気体を吸引するので、材料供給側吸引手段と成型物排出側吸引手段の吸引量を調整することにより、ダイの材料供給側と成型物排出側との間に気圧の差が生じることを防止できる。したがって、成型孔を押出手段で押し出される材料に対して、押出方向の動きを阻害したり、押出方向の動きを加速したりすることを防止できる。その結果、成型孔を押出手段で押し出される材料に、適正な圧縮力を作用させることができて、適正な比重の成型物を製造することができる。
【0016】
なお、本発明の造粒装置において、材料から分離されて収集された添加剤は、添加剤の特性に応じて、分解又は燃焼する処理を施してもよく、あるいは、大気に放出してもよい。また、添加剤が有害である場合や、毒性を有する場合は、材料供給側吸引手段と成型物排出側吸引手段で吸引した気体から、添加剤をフィルタや吸収剤や吸着剤で捕捉して除去し、この後に、添加剤の除去された気体を放出するのが好ましい。
【0017】
一実施形態の造粒装置は、上記材料供給側吸引手段は、上記ダイの材料供給側に連通する材料供給側吸引通路を通して気体を吸引するように形成されている
【0018】
上記実施形態によれば、材料供給側吸引通路を通して、材料から分離した添加剤を含む気体をダイの材料供給側から効率的に吸引することができる。
【0019】
一実施形態の造粒装置は、上記供給通路が、上記材料供給側吸引通路を兼ねている。
【0020】
上記実施形態によれば、供給通路を通してダイの材料供給側から気体を吸引することにより、この供給通路を通る材料から添加剤を効率的に分離することができる。
【0021】
一実施形態の造粒装置は、上記ダイの材料供給側に空気を供給する材料供給側給気部が設けられている。
【0022】
上記実施形態によれば、材料供給側給気部により空気がダイの材料供給側に供給される状態で、供給通路を通った材料がダイの材料供給側に供給される。材料供給側給気部から供給された空気により、材料から添加剤を分離すると共に、ダイと押出手段で押出作用が施される際に材料から放出された添加剤を、効果的に材料供給側に流すことができる。
【0023】
一実施形態の造粒装置は、上記成型物排出側吸引手段は、上記ダイの成型物排出側に連通する成型物排出側吸引通路を通して気体を吸引するように形成されている。
【0024】
上記実施形態によれば、成型物排出側吸引通路を通して、材料が成型される過程で分離した添加剤や、成型後の成型物から分離した添加剤を含む気体を、ダイの成型物排出側から効率的に吸引することができる。
【0025】
一実施形態の造粒装置は、上記ケーシングが、成型物排出側吸引手段を兼ねている。
【0026】
上記実施形態によれば、ケーシングを通してダイの成型物排出側から気体を吸引することにより、ケーシング内のダイから押し出されて排出部に向かう成型物に気体の流れを接触させることができ、成型物から効果的に添加剤を分離することができる。
【0027】
一実施形態の造粒装置は、上記ケーシング内のダイの成型物排出側に空気を供給する成型物排出側給気部を備える。
【0028】
上記実施形態によれば、成型物排出側給気部により空気がダイの成型物排出側に供給される状態で、ケーシング内のダイで成型された成型物がダイの成型物排出側を排出部に向かって移動する。成型物排出側給気部から供給された空気により、成型物から添加剤を分離すると共に、ダイと押出手段で押出作用が施される際に材料から放出された添加剤を、効果的に成型物排出側に流すことができる。
【0029】
一実施形態の造粒装置は、上記成型物の排出部が、上記成型物排出側給気部を兼ねている。
【0030】
上記実施形態によれば、排出部から成型物が排出されると共に、この排出部からダイの成型物排出側に空気が供給されるので、成型物がダイで成型されて排出部から排出されるまでの間に、成型物の排出方向と反対方向に流れる空気に接触させて、成型物から効果的に添加剤を分離することができる。
【0031】
一実施形態の造粒装置は、上記供給通路に、上記材料に力を直接与えてダイの材料供給側に送る送り手段を備える。
【0032】
上記実施形態によれば、送り手段で材料に直接力を与えることにより、かさ比重の比較的小さい材料を、確実にダイの材料供給側に送ることができ、また、材料に含まれる添加剤を効果的に分離させることができる。ここで、供給通路が材料供給側吸引通路を兼ねている場合は、材料の供給方向と反対方向の気体の流れに抗して材料を確実にダイの材料供給側に送ることができ、また、気体の流れと反対方向に材料を送ることにより、材料を大量の気体に接触させて、材料から添加剤を効果的に分離することができる。
【0033】
一実施形態の造粒装置は、上記材料は、断熱材、吸音材、緩衝材又は容器材料である。
【0034】
上記実施形態によれば、断熱材、吸音材、緩衝材又は容器材料に含まれる添加剤を、成型工程で効果的に分離して収集することができる。したがって、断熱材、吸音材、緩衝材又は容器材料のリサイクルを促進することができる。ここで、断熱材としては、例えば家電に用いられるものや建築物に用いられるものが該当し、吸音材としては、例えば音響機器や建築物に用いられるものが該当し、緩衝材としては、例えば梱包用に用いられるものが該当し、容器材料としては、例えば食品や日用品や医薬品に用いられるものが該当するが、本発明の造粒装置で処理される断熱材、吸音材、緩衝材又は容器材料の用途は、特に限定されない。
【0035】
一実施形態の造粒装置は、上記材料の添加剤は、可燃性ガス、温室効果ガス、有害ガス、有毒ガス又は悪臭ガスである。
【0036】
上記実施形態によれば、添加剤が可燃性ガスである場合、引火を防止しながら添加剤を材料から分離して収集できる。また、添加剤が温室効果ガス、有害ガス、有毒ガス又は悪臭ガスである場合、添加剤の漏出を防止しながら添加剤を材料から分離して収集できる。これと共に、上記添加剤を分離した材料を成型することができる。したがって、可燃性ガス、温室効果ガス、有害ガス、有毒ガス又は悪臭ガスを添加剤として含む材料を、安全性や環境保全性を確保しながらリサイクルに利用することができる。
【0037】
一実施形態の造粒装置は、上記材料は発泡性樹脂であり、上記添加剤は発泡剤である。
【0038】
上記実施形態によれば、材料としての発泡性樹脂に用いられた発泡剤を、引火や外部への漏出の不都合を防止しながら材料から分離して収集すると共に、上記発泡剤を分離した発泡性樹脂を成型することができる。したがって、発泡性樹脂を、安全性や環境保全性を確保しながらリサイクルに利用することができる。
【0039】
一実施形態の造粒装置は、上記発泡性樹脂の発泡剤は、シクロペンタン又はフロンである。
【0040】
上記実施形態によれば、代替フロンに替わって発泡剤として普及しつつあるシクロペンタンを含んだ発泡性樹脂を材料として、引火を防止しながらシクロペンタンを材料から分離して収集できると共に、シクロペンタンを分離した材料を成型することができる。したがって、シクロペンタンを発泡剤に用いた発泡性樹脂の廃材を、安全性を確保しながらリサイクルに利用することができる。
【0041】
また、上記実施形態によれば、フロンを含んだ発泡性樹脂を材料として、フロンの外部への漏出を防止しながら、材料からフロンを分離して収集できると共に、フロンを分離した材料を成型することができる。したがって、フロンを発泡剤に用いた発泡性樹脂の廃材を、環境への影響を防止しながらリサイクルに利用することができる。
【0042】
一実施形態の造粒装置は、上記ダイは、内周面に押出手段としてのローラが相対的に転動可能に収容されたリングダイであり、このリングダイの端面に形成された開口に、上記供給通路の供給口と材料供給側給気部の開口が近接して配置されている。
【0043】
上記実施形態によれば、リングダイとローラを備えたリングダイ式の造粒装置において、供給通路の供給口からリングダイの開口を通して内部に供給される材料に、材料供給側給気部の開口から給気される気体を効果的に接触させることができ、材料から効果的に添加剤を収集することができる。
【0044】
一実施形態の造粒装置は、上記供給通路に材料を供給する供給手段と、
上記材料供給側吸引手段で吸引される気体と、成型物排出側吸引手段で吸引される気体との少なくとも一方における添加剤の濃度を測定する濃度計と、
上記供給手段及び濃度計に接続され、上記濃度計による測定値に基づいて、上記供給手段による材料の供給量を制御する供給手段制御部とを備える。
【0045】
上記実施形態によれば、供給手段により、供給通路に材料が供給され、供給された材料が供給通路を通してダイの材料供給側に導かれる。また、濃度計により、材料供給側吸引手段で吸引される気体と、成型物排出側吸引手段で吸引される気体との少なくとも一方における添加剤の濃度が測定される。上記濃度計による測定値に基づいて、供給手段による材料の供給量が供給手段制御部によって制御され、これにより、造粒装置で分離される添加剤の量が制御される。例えば、ダイの材料供給側に供給される材料から分離する添加剤の量が増大し、あるいは、ダイの成型孔を押し出される材料から分離する添加剤の量が増大し、あるいは、ダイの成型物排出側に排出される成型物から分離する添加剤の量が増大することにより、濃度計で測定される添加剤の濃度の測定値が所定の基準値を超えると、供給手段制御部により、供給手段の動作が、供給通路への材料の供給量を減少するように制御される。これにより、造粒装置で分離される添加剤の量が減少するので、造粒装置内で添加剤が引火したり、吸引手段による吸引能力を超えた添加剤が外部に漏出して環境に負荷を与える不都合を防止できる。また、供給通路への材料の供給量を減少させた後、濃度計で測定される添加剤の濃度の測定値が所定の基準値を下回った場合、供給手段制御部は、供給手段の動作を、供給通路への材料の供給量を増大させてもよい。ここで、上記供給手段制御部は、供給手段による材料の供給量を、濃度の測定値に応じた量となるように制御してもよく、また、濃度の測定値が閾値を越えたときに供給手段による材料の供給を停止してもよい。
【0046】
一実施形態の造粒装置は、上記材料供給側吸引手段で吸引される気体と、成型物排出側吸引手段で吸引される気体との少なくとも一方における添加剤の濃度を測定する濃度計と、
上記供給手段及び濃度計に接続され、上記濃度計による測定値に基づいて、上記材料供給側吸引手段又は成型物排出側吸引手段の気体の吸引量を制御する吸引手段制御部とを備える。
【0047】
上記実施形態によれば、濃度計により、材料供給側吸引手段で吸引される気体と、成型物排出側吸引手段で吸引される気体との少なくとも一方における添加剤の濃度が測定される。上記濃度計による測定値に基づいて、材料供給側吸引手段又は成型物排出側吸引手段の気体の吸引量が吸引手段制御部によって制御され、これにより、造粒装置からの添加剤を含む空気の吸引量が制御される。例えば、ダイの材料供給側に供給される材料から分離する添加剤の量が増大し、あるいは、ダイの成型孔を押し出される材料から分離する添加剤の量が増大し、あるいは、ダイの成型物排出側に排出される成型物から分離する添加剤の量が増大することにより、濃度計で測定される添加剤の濃度の測定値が所定の基準値を超えると、吸引手段制御部により、材料供給側吸引手段又は成型物排出側吸引手段の動作が、造粒装置内の材料供給側又は成型物排出側からの空気の吸引量を増大するように制御される。これにより、造粒装置内の添加剤の濃度が減少するので、造粒装置内で添加剤が引火したり、吸引手段による吸引能力を超えた添加剤が外部に漏出して環境に負荷を与える不都合を防止できる。
【0048】
一実施形態の造粒装置は、上記材料供給側吸引手段で吸引される気体と、成型物排出側吸引手段で吸引される気体との少なくとも一方における添加剤の濃度を測定する濃度計と、
上記供給手段及び濃度計に接続され、上記濃度計による測定値に基づいて警告動作を行う警告部とを備える。
【0049】
上記実施形態によれば、濃度計により、材料供給側吸引手段で吸引される気体と、成型物排出側吸引手段で吸引される気体との少なくとも一方における添加剤の濃度が測定される。上記濃度計による測定値に基づいて、警告部が警告動作を行う。例えば、ダイの材料供給側に供給される材料から分離する添加剤の量が増大し、あるいは、ダイの成型孔を押し出される材料から分離する添加剤の量が増大し、あるいは、ダイの成型物排出側に排出される成型物から分離する添加剤の量が増大することにより、濃度計で測定される添加剤の濃度の測定値が所定の基準値を超えると、警告部が警告動作を行う。警告部は、警告動作として、警告音を鳴動してもよく、警告光を出射してもよく、警告情報を出力してもよい。警告部が警告動作を行うことにより、造粒装置内の添加剤の濃度が増大したことを操作者や管理者に迅速に通知でき、したがって、造粒装置内で添加剤が引火したり、吸引手段による吸引能力を超えた添加剤が外部に漏出して環境に負荷を与える不都合を防止できる。なお、上記警告部は、濃度計が測定した濃度に応じて、例えば異なる音色又は音量の警告音を鳴動させ、あるいは、異なる色やパターンや点滅形態の警告光を出射し、あるいは、異なる内容の警告情報を出力する等のように、測定濃度に対応する異なる警告動作を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態の造粒装置を示す模式図である。
【図2】造粒装置を構成するペレットミルを示す縦断面図である。
【図3】ペレットミルのケーシング内を示す横断面図である。
【図4】ペレットミルに接続される供給ダクトの端部を示す図である。
【図5】ペレットミルの基本動作を説明する模式図である。
【図6】他の実施形態の造粒装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0052】
図1は、実施形態の造粒装置を示す模式図である。実施形態の造粒装置1は、添加剤としての可燃性の発泡剤が用いられた発泡性樹脂を材料として、成型物としてのペレットを製造するための装置である。本実施形態では、発泡剤にシクロペンタンが用いられた発泡ウレタンを含む断熱材を、図示しない破砕機によって3mm〜10mmの寸法に破砕された破砕片を、材料として用いている。この造粒装置1は、造粒動作を行うペレットミル2と、材料をペレットミル2に供給する定量供給機3と、ペレットミル2への材料の供給通路から第1サイクロンセパレータ4を介して空気を吸引する材料供給側吸引手段としての第1吸引ブロワ5と、ペレットミル2からのペレットの排出路から第2サイクロンセパレータ6を介して空気を吸引する成型物排出側吸引手段としての第2吸引ブロワ7を備える。
【0053】
ペレットミル2は、リングダイ式の造粒機であり、リングダイの駆動機構を収容した駆動部ケーシング21と、リングダイを収容したダイケーシング22と、リングダイへの材料の供給通路を形成する供給ダクト23と、ダイケーシング22から矢印P2で示すようにペレットを排出する排出部を形成する排出口24を有する。排出口24は、後に詳述するように、成型物排出側給気部を兼ねている。
【0054】
定量供給機3は、概ね直方体の箱状体で形成されて材料を一時貯留するコンテナ部31と、コンテナ部31の下端に設けられて材料をペレットミル2の供給ダクト23に送り出す供給手段としてのスクリューコンベヤ32を有する。スクリューコンベヤ32は、筒状のケーシングと、このケーシング内に収容され、駆動軸の外周に螺旋羽根が固定されてなるスクリュー体を有し、スクリュー体の駆動軸に駆動モータ33が連結されている。この駆動モータ33は、後述する制御部52により動作が制御される。制御部52は、CPU,ROM及びRAM等からなるマイクロコンピュータで構成されている。
【0055】
第1サイクロンセパレータ4は、供給ダクト23から導かれた空気に含まれる材料の粒子を分離するように構成されており、第1サイクロンセパレータ4で分離した粒子は定量供給機3のコンテナ部31に戻すように構成されている。第1吸引ブロワ5は、供給ダクト23の上端に接続された吸引管を介して供給ダクト23内の空気を矢印A14で示すように吸引し、吸引した空気を第1サイクロンセパレータ4に導入して、第1サイクロンセパレータ4に粒子の分離動作を行わせるように構成されている。第1サイクロンセパレータ4で粒子を分離した後の空気は、第1吸引ブロワ5の吐出口を通って、矢印E1で示すように大気に放出するように構成されている。
【0056】
第2サイクロンセパレータ6は、ダイケーシング22から導かれた空気に含まれる材料の粒子を分離するように構成されており、第2サイクロンセパレータ6で分離した粒子は定量供給機3のコンテナ部31に戻すように構成されている。第2吸引ブロワ7は、ダイケーシング22の上部に接続された吸引管を介してダイケーシング22内の空気を矢印A24で示すように吸引し、吸引した空気を第2サイクロンセパレータ6に導入して、第2サイクロンセパレータ6に粒子の分離動作を行わせるように構成されている。第2サイクロンセパレータ6で粒子を分離した後の空気は、第2吸引ブロワ7の吐出口を通って、矢印E2で示すように大気に放出するように構成されている。
【0057】
上記第1及び第2サイクロンセパレータ4,6は公知の構造を採用でき、例えば、下方に向かって縮径する概ね円錐形状の分離室と、分離室内に中心軸を一致して配置されて、第1及び第2吸引ブロワ5,7の吸入口に連なる排気筒とを有するものを用いることができる。第1及び第2吸引ブロワ5,7の吸引動作により、ペレットミル2の空気が分離室の上部から導入されて分離室内で旋回流を形成し、この旋回流の遠心力で材料の粒子が空気から分離されて分離室の下端から排出される。材料の粒子が分離された空気は、排気筒から第1及び第2吸引ブロワ5,7に吸引されて大気に放出されるように構成されている。
【0058】
供給ダクト23と第1サイクロンセパレータ4との間の吸引管には、供給ダクト23から第1サイクロンセパレータ4に吸引される空気中に含まれる発泡剤としてのシクロペンタンの濃度を測定する濃度計51が接続されている。また、ケーシング22と第2サイクロンセパレータ6との間の吸引管には、ケーシング22から第2サイクロンセパレータ6に吸引される空気中に含まれる発泡剤としてのシクロペンタンの濃度を測定する濃度計50が接続されている。これら濃度計50,51は制御部52に接続されており、制御部52は、濃度計50,51により測定されたシクロペンタンの濃度の測定値が、爆発下限界濃度の15%を越えたときにスクリューコンベヤ32の動作を停止するように設定されている。
【0059】
図2はペレットミル2の縦断面図であり、図3はダイケーシング22内を示す横断面図であり、図4は供給ダクトの端部を示す図である。
【0060】
図2及び3に示すように、ダイケーシング22内には、円筒形状のリングダイ25が、回転軸を水平方向に向けて収容されている。リングダイ25は、ダイケーシング22の正面側(図2において紙面の右側)が開口した有底の円筒形状を有し、底部に駆動軸34が固定されている。リングダイ25は、正面側の端部に位置して内側に開口部が形成された環状の枠部材252と、背面側の端部に位置して駆動軸34に接続された円盤状の底部材253を有する。補強部材252と底部材253の間に、スリーブ状のダイ本体251が固定されている。ダイ本体251には、複数の成型孔25a,25a,25a・・・が全周面にわたって設けられており、これらの成型孔25aの内径側の開口には、外径側に向かうにつれて縮径するテーパが設けられている。リングダイ25の底部材253に固定された駆動軸34は、背面側に向かうにつれて縮径する概ね円錐形状を有する。駆動軸34の背面側の先端部にはプーリが設けられており、モータM1のプーリ36との間に駆動ベルト35,37が掛けられている。モータM1は、正面視において駆動軸34の左右両側の上方に2つ配置されており、各モータM1のプーリ36に掛けられたベルト35,37により、駆動軸34が吊り下げられた状態で支持されている。
【0061】
リングダイ25の内側には、図3に示すように、支持軸39に回動自在に支持された2つの押出手段としてのローラ38,38が収容されている。これらのローラ38,38は、リングダイ25が矢印R1で示すように回転駆動されるに伴い、矢印R2で示すように従動して転動するように構成されている。リングダイ25の内周面とローラ38,38の外周面が近接した状態で相対的に転動することにより、リングダイ25とローラ38,38の間に材料を挟み込み、ローラ38,38でリングダイ25の成型孔25a内に材料を押し込み、リングダイ25の外径側に押し出して、成型動作を行うようになっている。ローラ38,38の外周面には、図5に示すように、軸方向に延びる複数の矩形断面の溝が設けられている。
【0062】
一方、リングダイ25の外側には、ローラ38,38に対応する位置に、リングダイ25の外周面に近接してカッター40,40が配置されている。カッター40は、ローラ38によってリングダイ25の外周面から押し出された材料を所定の長さに切断して、ペレット41,41を形成するように構成されている。リングダイ25の外周面とカッター40の刃先との距離は調整可能に構成されており、このリングダイ25の外周面とカッター40の刃先との距離に応じてペレット41の長さが調整可能になっている。カッター40で切断されて形成されたペレット41,41は、ダイケーシング22内を下方に移動し、ダイケーシング22の下端部に設けられた排出口24から、矢印P2で示すように外部に排出されるように構成されている。
【0063】
上記ダイケーシング22の正面側には、材料をリングダイ25の内側に向けて供給する供給ダクト23が設置されている。供給ダクト23は、鉛直方向に延在して矩形断面を有する鉛直部231と、鉛直部231の下端に連なって水平方向に延在する水平投入部232を有する。鉛直部231の上端部の側面に、定量供給機3のスクリューコンベヤ32が連結されている。鉛直部231の上端に、供給ダクト23内の空気を排出するダクト排気部28が設けられている。水平投入部232はダイケーシング22の正面に貫通して固定されており、この状態で、水平投入部232の先端の開口23bが、リングダイ25の枠部材252の内側の開口内に挿入されている。水平投入部232の正面側の内部には、鉛直部231と水平投入部232との接続部に位置するように、圧送手段としての押込スクリュー29が設けられている。図4に示すように、押込スクリュー29は、モータM2で回転駆動される回転軸291と、回転軸292に固定された複数のスクリュー292,292,292を有する。押込スクリュー29は、鉛直部231の上端部にスクリューコンベヤ32で投入されて落下してきた材料に、回転するスクリュー292によって水平方向に撃力を与える。これにより、材料を水平投入部232の開口23bから排出させ、リングダイ25の内部に向かって圧送するように形成されている。
【0064】
供給ダクト23には、外部の空気をリングダイ25の内部へ導く材料供給側給気部としての給気管27が内蔵されている。給気管27は、供給ダクト23の内側に仕切板が固定されて形成されており、水平投入部232のダイケーシング22側の下部に空気を吸入する吸入口27aが開口すると共に、水平投入部232の開口23bの内側に、吸入口27aから吸入した空気を吹き出す吹出口27bが開口している。給気管27は、第1吸引ブロワ5が吸引動作を行うに伴い、吸入口27aから空気を吸入し、吸入した空気を吹出口27bからリングダイ25の内側に吹き出すように形成されている。このように、給気管27により、ダイの材料供給側であるリングダイ25の内側に空気を供給することにより、矢印A12で示すように、このリングダイ25の内側から供給ダクト23の水平投入部232に向かって、矢印D2で示す材料の供給方向と反対方向に向かう空気流を形成する。そして、水平投入部232に連なる供給ダクト23の鉛直部231に、矢印A13で示すように、矢印D1で示す材料の投入方向と反対方向に向かう鉛直上向きの空気流を形成する。供給ダクト23の鉛直部231の上端に達した空気は、ダクト排気部28を通り、第1サイクロンセパレータ4を経て第1吸引ブロワ5に導かれる。このように、材料供給側吸引手段である第1吸引ブロワ5により、リングダイ25の材料供給側であるリングダイ25の内側と、供給ダクト23の水平投入部232及び鉛直部231に、材料が供給される方向と反対方向の空気の流れを形成するように形成されている。
【0065】
上記ダイケーシング22の上部には、正面から見て右側に、ダイケーシング22内の空気を排出するケーシング排気管26が設けられている。ケーシング排気管26は、第2サイクロンセパレータ6に接続されている。第2吸引ブロワ7が吸引動作を行うに伴い、成型物排出側給気部を兼ねる排出口24から空気が吸入され、吸入された空気が、ダイケーシング22内のリングダイ25の外側を通ってケーシング排気管26から排出されるように形成されている。詳しくは、矢印A2で示すように、ペレットが排出される矢印P2の方向と反対方向に排出口24から空気がダイケーシング22内に流入する。ダイケーシング22内に流入した空気は、矢印A21で示すように、ダイケーシング22の内壁面とリングダイ25の外側面との間を、リングダイ25で成型されたペレット41が矢印P1で示すように排出口24へ向かう方向と反対方向に流れる。リングダイ25のペレット41が成型される位置よりも上方位置では、矢印A22で示すように、リングダイ25の外周面に沿って空気が流れる。こうしてダイケーシング22内を、ペレットの排出方向と反対向きに流れ、また、リングダイ25の外周面に沿って流れた空気は、矢印A23で示すようにダイケーシング22からケーシング排気管26に流入し、矢印A24で示すように第2サイクロンセパレータ6に導かれ、最終的に第2吸引ブロワ7に導かれる。このように、成型物排出側吸引手段である第2吸引ブロワ7により、リングダイ25の成型物排出側であるリングダイ25の外周面とダイケーシング22の内壁面との間と、排出口24に、成型物としてのペレットが排出される方向と反対方向の空気の流れを形成するように形成されている。
【0066】
上記構成の造粒装置1は、次のようにして動作する。まず、モータM1が起動し、プーリ36及びベルト35,37を介して駆動力が駆動軸34に伝達され、駆動軸34に固定されたリングダイ25が回転する。これと共に、第1及び第2吸引ブロワ5,7が起動し、第1サイクロンセパレータ4を通した供給ダクト23及びリングダイ25内の空気の吸引と、第2サイクロンセパレータ6を通したダイケーシング22内の空気の吸引が開始される。第1吸引ブロワ5の空気の吸引量と、第2吸引ブロワ6の吸引量は、リングダイ25の内側と外側の間に気圧の差が生じない値に設定する。この後、定量供給機3のスクリューコンベヤ32が作動し、コンテナ部31に貯留された材料が供給ダクト23に供給される。供給ダクト23に供給された材料は、図2の矢印D1で示すように供給ダクト23の鉛直部231内を落下し、押込スクリュー29によって水平投入部232内を矢印D2で示すように水平に圧送され、水平投入部232の開口23bから排出されてリングダイ25の内側に供給される。リングダイ25の内側に供給された材料は、回転するリングダイ25の内部で攪拌され、リングダイ25の内周面とローラ38,38の外周面との間に挟み込まれる。挟み込まれた材料は、ローラ38でリングダイ25の成型孔25a内に押し込まれ、この成型孔25a内を通過する過程で圧縮及び成型されて、リングダイ25の外周側に押し出される。リングダイ25の外周側に押し出された材料は、カッター40で切断されてペレット41となり、ダイケーシング22の内壁面とリングダイ25の外周面との間を矢印P1で示すように落下し、排出口24から矢印P2で示すように排出される。
【0067】
材料が供給ダクト23を通してリングダイ25に供給され、リングダイ25でペレットに成型されて排出される間、上記材料に含まれる発泡剤としてのシクロペンタンがペレットミル2の内部に放出される。
【0068】
ここで、リングダイ25に関して、材料が供給される側である材料供給側に、すなわち、リングダイ25の内側と供給ダクト23の内側に、第1吸引ブロワ5により、材料が供給される方向と反対方向の空気の流れが形成される。これにより、供給ダクト23を通って供給される材料に大きな流量の空気が接触し、材料から効果的にシクロペンタンが分離される。また、リングダイ25の内側で攪拌され、ローラ38に挟み込まれつつある材料から分離したシクロペンタンが、給気管27の吹出口27bから吹き出された空気に効果的に混合される。こうして材料から分離したシクロペンタンは、空気に混合されて供給ダクト23から矢印A14で示すように第1サイクロンセパレータ4に導かれ、第1サイクロンセパレータ4で材料の粒子が分離された後、第1吸引ブロワ5により、矢印E1で示すように大気に放出される。
【0069】
また、リングダイ25に関して、成型されたペレット41が排出される側である成型物排出側に、すなわち、リングダイ25の外周面とダイケーシング22の内壁面との間に、第2吸引ブロワ7により、ペレット41が排出される方向と反対方向の空気の流れが形成される。これにより、リングダイ25の外周面とダイケーシング22の内壁面との間を通って排出されるペレット41に大きな流量の空気が接触し、ペレット41から効果的にシクロペンタンが分離される。ペレット41から分離したシクロペンタンは、空気に混合されてダイケーシング22から矢印A24で示すように第2サイクロンセパレータ6に導かれ、第2サイクロンセパレータ6で材料の粒子が分離された後、第2吸引ブロワ7により、矢印E2で示すように大気に放出される。
【0070】
このように、リングダイ25に関して材料供給側と成型物排出側に、材料の供給方向と反対方向の空気流と、ペレット41の排出方向と反対方向の空気流を形成することにより、材料及びペレット41からシクロペンタンを迅速かつ効果的に除去して外部に放出することができる。
【0071】
さらに、本実施形態の造粒装置1は、ペレット41の製造に伴って材料から分離されたシクロペンタンの量が所定量を超えると、ペレット41の製造動作を停止する。すなわち、濃度計51,52のいずれか一方により測定されたシクロペンタンの濃度の測定値が、爆発下限界濃度の15%を越えると、制御部52が、スクリューコンベヤ32の駆動モータ33への電力供給を停止する。これにより、スクリューコンベヤ32による供給ダクト23への材料供給を停止し、造粒装置1の内部におけるシクロペンタンの濃度の増大を防止し、その結果、シクロペンタンの引火の危険性を効果的に防止することができる。
【0072】
このように、本実施形態の造粒装置1は、リングダイ25に関して材料供給側と成型物排出側に形成した空気流でシクロペンタンを除去し、また、造粒装置1からの空気流に含まれるシクロペンタンの量が所定量を超えるとリングダイ25への材料の供給を停止する。したがって、冷蔵庫に用いられる断熱材を、断熱材がシクロペンタンを発泡剤に用いたものであっても、効果的に爆発を防止して処理することができ、その結果、断熱材から再生用のペレットを安全に製造することができる。また、リングダイ25に関して材料供給側と成型物排出側に分けて空気流を形成するので、供給及び成型の過程で材料から放出されるシクロペンタンと、成型されたペレットから放出されるシクロペンタンを、夫々効果的に収集することができる。その結果、シクロペンタンを迅速に収集でき、シクロペンタンの引火を効果的に防止できる。
【0073】
また、第1吸引ブロワ5でリングダイ25の材料供給側の空気を吸引すると共に、第2吸引ブロワ7でリングダイ25の成型物排出側の空気を吸引するので、ダイケーシング22及び供給ダクト23内の気圧が大気圧よりも低く保持される。したがって、供給過程や成型過程で材料から放出された発泡剤を、ダイケーシング22及び供給ダクト23から周辺に漏出させることなく収集することができる。また、材料の微小な粒子を、ダイケーシング22及び供給ダクト23から周辺に漏出させることなく収集することができる。その結果、造粒装置1の周辺の作業環境を清浄に保つことができる。
【0074】
また、第1吸引ブロワ5の空気の吸引量と、第2吸引ブロワ6の吸引量を、リングダイ25の内側と外側の間に気圧の差が生じない値に設定するので、リングダイ25の成型孔25aをローラ38で押し出される材料に対して、押出方向の動きを阻害したり、押出方向の動きを加速したりすることを防止できる。その結果、成型孔25aをローラ38で押し出される材料に、適正な圧縮力を作用させることができて、適正な比重のペレットを製造することができる。
【0075】
また、ダイケーシング22及び供給ダクト23の内側から吸引した空気に含まれる材料の粒子を、第1及び第2サイクロンセパレータ4,6で分離して定量供給機3に戻すので、発泡剤の収集に伴う材料の損失を低減できる。
【0076】
上記実施形態において、材料供給側給気部としての給気管27を、供給ダクト23に内蔵したが、材料供給側給気部は供給ダクト23に内蔵しなくてもよく、供給ダクト23とは個別に設けた配管で構成してもよい。また、成型物排出側給気部は、ダイケーシング22の排出口24と兼用したが、排出口24と分離して成型物排出側給気部を設けてもよい。
【0077】
また、上記実施形態において、制御部52は、濃度計50,51の測定値が爆発下限界濃度の15%を越えたときにスクリューコンベヤ32の動作を停止したが、他の測定値に基づいてスクリューコンベヤ32の動作を停止してもよい。また、制御部52は、スクリューコンベヤ32の停止制御を行う以外に、駆動モータ33の回転数を低減する減速制御を行ってもよい。また、濃度が所定の閾値を下回ったときに、スクリューコンベヤ32の動作を復活してもよい。また、濃度計50,51は、供給ダクト23と第1サイクロンセパレータ4との間の吸引管や、ケーシング22と第2サイクロンセパレータ6との間の吸引管以外に、ケーシング22や供給ダクト23等の他の位置に設けられてもよく、要は、リングダイ25に供給され、成型される材料から分離したシクロペンタンや、リングダイ25で成型されたペレットから分離したシクロペンタンの量を測定できればよい。
【0078】
また、上記制御部52は、スクリューコンベヤ32以外に、第1及び第2吸引ブロワ5,7の動作を制御してもよい。この場合、濃度計50,51の測定値が所定値を超えたときに、第1及び第2吸引ブロワ5,7の吸引量を増大する。これにより、造粒装置1内のシクロペンタンの濃度が増大したときに、シクロペンタンを速やかに外部に排出し、引火を効果的に防止することができる。また、濃度計50,51の測定値が所定値を超えたときに警告動作を行う警告部を設けてもよい。警告部は、音や光や情報出力により、シクロペンタンの濃度が増大したことを操作者や管理者に迅速に通知する。したがって、造粒装置内でシクロペンタンが引火したり、吸引手段による吸引能力を超えたシクロペンタンが外部に漏出する不都合を効果的に防止できる。
【0079】
また、上記実施形態において、ペレットミル2は、円筒形状のリングダイ25を備えたリングダイ式であったが、平板状のダイを備えたペレットミルを用いてもよい。平板状のダイを備えたペレットミルとして、例えば、ドーナツ状のダイの上をローラがドーナツの中心軸周りに転動するものや、矩形のダイの上をローラが転動しつつ往復動を繰り返すものに本発明を適用することができる。
【0080】
また、上記実施形態において、造粒装置1は、材料及びペレットから収集したシクロペンタンを大気に放出したが、シクロペンタンに分解や燃焼等の処理を施してもよい。
【0081】
また、上記実施形態において、ペレット41を製造する材料は、可燃性の発泡剤としてシクロペンタンを用いた発泡ウレタンで形成されたが、プロパン、ブタン及びペンタン等の他の可燃性の発泡剤を用いた発泡樹脂を処理してもよい。また、材料は、発泡ウレタンのほか、発泡スチロール等の他の発泡樹脂であってもよい。
【0082】
また、上記実施形態において、ダイケーシング22及び供給ダクト23内に空気を供給し、供給した空気に発泡剤を混合させて吸引したが、例えば窒素等の不活性ガスをダイケーシング22及び/又は供給ダクト23内に供給して発泡剤を混合させ、発泡剤が混合した不活性ガスを吸引してもよい。
【0083】
また、上記実施形態の造粒装置1は、可燃性の発泡剤としてのシクロペンタンを回収したが、例えばフロン等の環境負荷の大きい発泡剤を回収することもできる。上記造粒装置1によりフロンを回収する場合は、第1吸引ブロワ5及び第2吸引ブロワ7の吐出口から吐出される気体を、フロン回収装置に導いてフロンを分離回収するように構成すればよい。さらに、第1吸引ブロワ5及び第2吸引ブロワ7の吐出口を、大気開放とフロン回収装置との間で切り替え可能に構成し、材料が含む発泡剤に応じて、回収した発泡剤の処理を大気開放と回収とのいずれかに選択可能としてもよい。このように、発泡剤の種類に応じて大気開放と回収とを選択可能に構成することにより、1つの装置で多種類の発泡剤を含んだ材料を処理することができる。
【0084】
また、上記実施形態の造粒装置1は、添加剤としてシクロペンタンを含む材料を処理したが、有害な添加剤や毒性を有する添加剤を含む材料を処理する場合は、ペレットミル2から第1及び第2吸引ブロワ5,7で吸引した空気から、添加剤を吸収剤や吸着剤やフィルタで捕捉するのが好ましい。図2は、有害又は有毒の添加剤を含む材料を処理する造粒装置12を示す模式図であり、図2に示す造粒装置12おいて、図1の造粒装置1と同じ機能を有する部分には、図1の参照番号と同じ参照番号を付している。図2に示すように、この実施形態の造粒装置12は、ペレットミル2の供給ダクト23の上端に接続された吸引管にフィルタ装置61と吸着装置62を接続し、その下流に接続した第1吸引ブロワ5により、供給ダクト23の空気をフィルタ装置61と吸着装置62に導くように構成されている。また、ペレットミル2のダイケーシング22の上部に接続された吸引管に、フィルタ装置63と吸着装置64を接続し、その下流に第2吸引ブロワ7を接続し、ダイケーシング22の空気をフィルタ装置63と吸着装置64に導くように構成されている。フィルタ装置61,63としては、プレフィルタ、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ、ULPA(Ultra
Low Penetration Air Filter)フィルタ、静電フィルタ、及び、ケミカルフィルタ等の単体又は組み合わせを含むものを用いることができる。吸着装置62,64としては、活性炭やゼオライト等を用いた乾式の吸着装置や、化学液を用いた湿式の吸着装置等を用いることができる。フィルタ装置61,63は、主に材料の粒子を分離し、分離された材料の粒子を、定量供給機3のコンテナ部31に戻すように構成されている。フィルタ装置61,63で材料の粒子が分離された空気から、吸着装置62,64で有害成分や有毒成分を吸着除去し、有害成分や有毒成分が除去された無害の空気を、大気開放するように構成されている。この造粒装置12によれば、有害又は有毒の添加剤を含んだ材料に対して、有害成分や毒性成分を効果的に回収して漏洩を防止しながら、成型を行うことができる。
【0085】
また、上記実施形態において、造粒装置1は、冷蔵庫の断熱材を処理したが、冷蔵庫に限らず、他の機器や建築物に用いられた断熱材を処理することもできる。また、断熱材以外に、発泡性樹脂で形成された吸音材、緩衝材又は容器材料を処理することもできる。
【0086】
また、本実施形態の造粒装置1は、発泡剤以外に、例えば、樹脂改質材、劣化防止剤又は冷媒等の他の添加剤を含んだ材料を処理し、成型物を製造することができる。例えば、添加剤として、ペンタン、プロパン、トルエン、キシレン、ブタジエン等の有害ガス、有毒ガス又は悪臭ガスが添加された材料を、引火や漏洩を防止しながら収集することができると共に、これらの添加が分離された材料の成型物を製造できる。
【符号の説明】
【0087】
1 造粒装置
2 ペレットミル
3 定量供給機
4 第1サイクロンセパレータ
5 第1吸引ブロワ
6 第2サイクロンセパレータ
7 第2吸引ブロワ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加剤を含んだ材料を成型して成型物を製造する造粒装置であって、1個又は複数の成型孔を有するダイと、ダイに向かって材料を押圧して成型孔から材料を押し出す押出手段と、上記ダイ及び押出手段を収容するケーシングと、上記ダイの押出手段側に材料を供給する供給通路と、上記ダイの成型孔から材料が押し出されてなる成型物をケーシングから排出する排出部とを備える造粒装置において、
上記ダイに関して材料が供給される側の気体を吸引し、材料が供給される方向と反対方向に気体の流れを形成する材料供給側吸引手段と、
上記ダイに関して成型物が排出される側の気体を吸引し、成型物が排出される方向と反対方向に気体の流れを形成する成型物排出側吸引手段と
を備えることを特徴とする造粒装置。
【請求項2】
請求項1に記載の造粒装置において、
上記材料供給側吸引手段は、上記ダイの材料供給側に連通する材料供給側吸引通路を通して気体を吸引するように形成されていることを特徴とする造粒装置。
【請求項3】
請求項2に記載の造粒装置において、
上記供給通路が、上記材料供給側吸引通路を兼ねていることを特徴とする造粒装置。
【請求項4】
請求項1に記載の造粒装置において、
上記ダイの材料供給側に空気を供給する材料供給側給気部が設けられていることを特徴とする造粒装置。
【請求項5】
請求項1に記載の造粒装置において、
上記成型物排出側吸引手段は、上記ダイの成型物排出側に連通する成型物排出側吸引通路を通して気体を吸引するように形成されていることを特徴とする造粒装置。
【請求項6】
請求項5に記載の造粒装置において、
上記ケーシングが、上記成型物排出側吸引通路を兼ねていることを特徴とする造粒装置。
【請求項7】
請求項1に記載の造粒装置において、
上記ケーシング内のダイの成型物排出側に空気を供給する成型物排出側給気部を備えることを特徴とする造粒装置。
【請求項8】
請求項7に記載の造粒装置において、
上記成型物の排出部が、上記成型物排出側給気部を兼ねていることを特徴とする造粒装置。
【請求項9】
請求項1に記載の造粒装置において、
上記供給通路に、上記材料に力を直接与えてダイの材料供給側に送る送り手段を備えることを特徴とする造粒装置。
【請求項10】
請求項1に記載の造粒装置において、
上記材料は、断熱材、吸音材、緩衝材又は容器材料であることを特徴とする造粒装置。
【請求項11】
請求項1に記載の造粒装置において、
上記材料の添加剤は、可燃性ガス、温室効果ガス、有害ガス、有毒ガス又は悪臭ガスであることを特徴とする造粒装置。
【請求項12】
請求項1に記載の造粒装置において、
上記材料は発泡性樹脂であり、上記添加剤は発泡剤であることを特徴とする造粒装置。
【請求項13】
請求項12に記載の造粒装置において、
上記発泡性樹脂の発泡剤は、シクロペンタン又はフロンであることを特徴とする造粒装置。
【請求項14】
請求項1に記載の造粒装置において、
上記ダイは、内周面に押出手段としてのローラが相対的に転動可能に収容されたリングダイであり、このリングダイの端面に形成された開口に、上記供給通路の供給口と材料供給側給気部の開口が近接して配置されていることを特徴とする造粒装置。
【請求項15】
請求項1に記載の造粒装置において、
上記供給通路に材料を供給する供給手段と、
上記材料供給側吸引手段で吸引される気体と、成型物排出側吸引手段で吸引される気体との少なくとも一方における添加剤の濃度を測定する濃度計と、
上記供給手段及び濃度計に接続され、上記濃度計による測定値に基づいて、上記供給手段による材料の供給量を制御する供給手段制御部とを備えることを特徴とする造粒装置。
【請求項16】
請求項1に記載の造粒装置において、
上記材料供給側吸引手段で吸引される気体と、成型物排出側吸引手段で吸引される気体との少なくとも一方における添加剤の濃度を測定する濃度計と、
上記供給手段及び濃度計に接続され、上記濃度計による測定値に基づいて、上記材料供給側吸引手段又は成型物排出側吸引手段の気体の吸引量を制御する吸引手段制御部とを備えることを特徴とする造粒装置。
【請求項17】
請求項1に記載の造粒装置において、
上記材料供給側吸引手段で吸引される気体と、成型物排出側吸引手段で吸引される気体との少なくとも一方における添加剤の濃度を測定する濃度計と、
上記供給手段及び濃度計に接続され、上記濃度計による測定値に基づいて警告動作を行う警告部とを備えることを特徴とする造粒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−223948(P2012−223948A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92490(P2011−92490)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(591119624)株式会社御池鐵工所 (86)
【出願人】(599114760)株式会社テルム (3)
【Fターム(参考)】