説明

連結配線基板

【課題】分割後の配線基板のバリや欠けの発生が低減され、かつ焼成中の基板の割れもない連結配線基板を提供する。
【解決手段】ガラスセラミックス組成物の焼結体からなる母基板の両主面上に、金属ペーストを焼成してなる配線層を有する複数の配線領域が形成され、母基板の少なくとも非搭載面において、配線領域を区画する分割溝が配設された連結配線基板である。非搭載面の分割溝の近傍に形成された配線層を、TMAによる収縮開始温度が、ガラスセラミックス組成物の収縮開始温度に対して−100℃乃至+80℃の範囲にあり、かつ最終収縮量が、ガラスセラミックス組成物の最終収縮量に対して±10%の範囲にある金属ペーストにより形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結配線基板に係り、より詳細には、各々が発光素子のような電子部品を搭載するための配線基板となる領域が、複数個連結して配列・形成された連結配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体素子等の電子部品を搭載するための配線基板は、例えば、セラミックス焼結体等から成る基板本体の表面に、金属粉末メタライズからなる配線導体が配設されて形成されている。
【0003】
近年、電子装置の小型化の要求に伴い、配線基板のサイズも小型化が進んでいる。小サイズの配線基板を効率よく得るため、多数個の小型の配線基板を一枚の広い面積の母基板から同時に得るようにした、いわゆる多数個取りの製作が一般的である。以下では、このような多数個取りの配線基板を連結配線基板という。
【0004】
連結配線基板は、例えば、広面積の母基板に個々の配線基板となる配線基板部を縦横に複数個配列・形成し、各配線基板部を区分する分割溝を母基板の少なくとも一方の主面に縦横に形成したものである。分割溝に沿って母基板を分割することにより、複数の配線基板を効率的に得ることができる。また、連結配線基板の一方の主面、つまり素子搭載面の配線領域に半導体素子を実装した後、分割溝に沿って母基板を分割することで、複数の半導体装置を効率的に製造できる。ここで、半導体素子としては、例えばLED素子のような発光素子を挙げることができる。また、半導体装置としては、例えば半導体パッケージを挙げることができる。
【0005】
しかし、分割溝が十分な幅と深さを持たないと、分割後の配線基板の表面、つまり分割面にバリや欠けが発生するという問題がある。そして、配線基板にバリや欠けが存在すると、この配線基板に電子部品を搭載する際に、実装位置の精度が低下するおそれがある。また、電子機器に実装する際に不具合が生じたり、あるいは強度が不足し破壊が生じるおそれがある。
【0006】
このように、分割後の配線基板にバリや欠けを生じさせない分割をするには、深い分割溝を有することが必要であるが、分割溝が深すぎると未焼成の連結配線基板の強度が不足し、分割前の焼成やメッキの工程で割れが生じたり、内層配線の切断が生じることがある。
【0007】
また、分割溝は、連結配線基板を焼成する前のグリーンシート積層体の段階で形成されるが、分割溝に近い領域に金属ペースト層による電極、例えば外部電極端子を設ける構造のものでは、形成時には十分な深さでも、焼成時に分割溝の内部が融着して部分的に塞がることがある。そして、融着により部分的に閉塞した分割溝により分割した場合には、前述と同様に、得られた配線基板にバリや欠けが発生するという問題がある。
因みに、分割溝の近傍の領域には、金属ペースト層による電極を設けない技術もあるが、そのような配線基板では、例えば、実装基板に接合するための裏面側の電極面積を大きく採ることができず、十分な接続強度を確保できない。
【0008】
なお、従来から分割性を向上させるために、外周部の廃棄部との間に形成された分割溝上に、封止用枠体部まで貫通せず、基板下底面に開口する端子用ホールを設けたチップキャリア用基板が開示されている(例えば、特許文献1参照。)
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された基板では、ホールを形成するための穴あけ工程が必要なため、生産性の低下が生じていた。また、分割後の配線基板のバリや欠けの発生抑制の効果が十分でないばかりでなく、焼成後の全体形状が所望の形状に保たれにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭58−186953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、分割精度に優れており、分割後の配線基板のバリや欠けの発生がなく、かつ焼成中の基板の割れもない連結配線基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の連結配線基板は、ガラス粉末とセラミックス粉末とを含むガラスセラミックス組成物の焼結体からなる母基板の両主面上に、金属ペーストを焼成してなる配線層を有する複数の配線領域が形成され、前記母基板の少なくとも素子が搭載される面と反対側の非搭載面において、前記配線領域を区画する分割溝が配設された連結配線基板であって、前記母基板の前記非搭載面において、前記分割溝の近傍に形成される前記配線層を、TMA(Thermo-Mechanical Analysis;熱機械分析)による収縮開始温度が、前記ガラスセラミックス組成物の収縮開始温度に対して−100℃乃至+80℃の範囲にあり、かつTMAによる最終収縮量が、前記ガラスセラミックス組成物の最終収縮量に対して±10%の範囲にある金属ペーストにより形成することを特徴とする。
【0013】
本発明の連結配線基板において、前記金属ペーストは、銀を主成分とする金属粉末を含有することが好ましい。また、前記分割溝の近傍に形成された配線層は、前記分割溝の中心線からの距離が200μm以下の領域まで配設されている。さらに、前記分割溝は、5乃至20μmの幅を有し、かつ母基板の厚みに対して20乃至30%の深さを有することが好ましい。またさらに、前記分割溝は、前記母基板の両主面に設けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の連結配線基板によれば、母基板の非搭載面において、分割溝の近傍に配設される近傍配線層を形成するための金属ペーストのTMAによる収縮開始温度および最終収縮量が、母基板を形成するためのガラスセラミックス組成物の収縮開始温度および最終収縮量に対して、所定の範囲内に設定されているので、焼成の際の融着等による分割溝の閉塞や、深さや幅の低減を防止できる。したがって、分割精度を向上させ、分割後の配線基板のバリや欠けの発生を防止できる。また、分割前の焼成やメッキの工程での基板割れや内層配線の切断等も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の連結配線基板の一実施形態を表面である素子搭載面側から見た平面図である。
【図2】本発明の連結配線基板の一実施形態を裏面である非搭載面側から見た平面図である。
【図3】図1のX−X線断面の一部を拡大して示す断面図である。
【図4】実施例で銀ペースト(A)乃至(H)およびグリーンシートについてTMAで測定されたTMA曲線のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図1および図2は、いずれも本発明の連結配線基板の実施形態の一例を示す平面図である。図1は、素子搭載面側から見た平面図であり、図2は、素子搭載面と反対側の非搭載面側から見た平面図である。また、図3は、図1におけるX−X線に沿った断面の一部を拡大して示す図である。
【0017】
これらの図に示すように、連結配線基板1は、これを主として構成する母基板2を有している。母基板2の一方の主面である素子搭載面2aには、例えば縦に3列、横に3行、合計9個の配線領域(以下、「搭載面側配線領域」という。)が互いに隣接して配列されている。なお、図3における上面を、LED素子のような発光素子が搭載される素子搭載面2aとする。母基板2のもう一方の主面、つまり図3における下面であり、発光素子の非搭載面2bである面にも、前記搭載面側配線領域と対応する位置に、縦に3列、横に3行、合計9個の配線領域(以下、「非搭載面側配線領域」という。)が形成されている。なお、「搭載面側配線領域」と「非搭載面側配線領域」を合わせて、単に「配線領域」ということがある。
【0018】
9個の隣接し合う配線領域の境界線には、配線領域を区画する分割溝3が、母基板2の素子搭載面側と非搭載面側の両主面側からそれぞれ設けられている。素子搭載面2a側に設けられた分割溝3aと非搭載面2b側に設けられた分割溝3bとは、平面図で重なる位置に形成されており、これらの分割溝3に応力を負荷する等によって母基板2は分割され、複数個の配線基板となる。なお、この分割における欠け等の不具合の発生を防止するために、母基板2を貫通する分割孔4を配線領域の4隅を切り欠くように形成できる。分割の容易さと分割前の母基板2の強度等の観点から、分割溝3は、5〜20μmの幅を有し、かつ母基板2の厚さの20乃至30%の深さを有することが好ましい。すなわち、母基板2の厚みが1mmの場合、両主面からの深さが200乃至300μmの分割溝3を設けることが好ましい
【0019】
なお、この実施形態では、母基板2の両主面に分割溝3が設けられているが、必ずしも両主面に設ける必要はなく、一方の主面にだけ設けることもできる。しかし、基板のバリや欠けを抑制するには、両主面に分割溝を設けることが好ましく、特に非搭載面は、実装基板への搭載エリア近傍に他部品も多く実装されるので、バリや欠けの抑制のための分割溝が必須となる。また、後述するように、外部電極端子のようなできるだけ大面積の配線層を設ける必要がある非搭載面側には、分割溝を設けるものとする。
【0020】
各々の搭載面側配線領域には、中央部を底面(以下、「キャビティ底面」という。)とするキャビティを構成するように、周縁部に枠体5が配設されており、キャビティ底面には、LED素子のような発光素子と電気的に接続される一対で二極の素子接続端子6が、中央の素子搭載部を挟むように設けられている。
【0021】
また、各々の非搭載面側配線領域には、外部回路と電気的に接続される一対の外部電極端子7が設けられている。外部回路を施した実装基板との接合の強度を確保するために、これらの外部電極端子7は、周辺側端部が前記した分割溝3bに極めて近接し、電極面積が十分に大きくなるように形成されている。例えば、一対の外部電極端子7の周辺側端部の分割溝3bの中心線からの距離dは、200μm以下となっている。
【0022】
そして、各配線領域において母基板2の内部には、素子接続端子6と外部電極端子7とを電気的に接続する貫通導体8が設けられている。ここで、外部接続端子7および貫通導体8については、これらが発光素子→素子接続端子6→貫通導体8→外部接続端子7→外部回路と電気的に接続される限りは、その配設される位置や形状、大きさは図1乃至図3に示されるものに限定されず、適宜調整できる。また、素子接続端子6についても、搭載面のキャビティ底面に配設され、上記電気的な接続が確保されていれば、形状、大きさについては適宜調整できる。
【0023】
図3には示されていないが、本実施例の連結配線基板1を分割溝3から分割してなる配線基板を発光素子搭載用として用いる場合、熱抵抗を低減するために、各配線領域において母基板2の内部にサーマルビアを埋設したり、素子搭載面2aに平行する放熱層を設けたりしてもよい。サーマルビアは、例えば、素子搭載部より小さい柱状のものであり、素子搭載部の直下に複数設けられる。サーマルビアを設ける場合には、素子搭載面2aに達しないように、非搭載面2bから素子搭載面2aの近傍にかけて設けることが好ましい。このような配置とすることで、素子搭載面2a、特に素子搭載部の平坦度を向上させることができ、素子と母基板2との熱抵抗を低減し、また発光素子を搭載したときの傾きも抑制できる。
【0024】
また、図示されていないが、搭載される発光素子からの光の取り出し効率を上げるために、キャビティ底面のできるだけ広い範囲に、例えば銀を主成分とする反射膜を、上記一対の素子接続端子6に電気的に接続しないように形成し、その上に反射膜の端縁を含む全体を覆うオーバーコートガラス層を形成してもよい。
【0025】
本発明の実施形態の連結配線基板において、母基板2は、ガラス粉末とセラミックス粉末とを含むガラスセラミックス組成物の焼結体(Low Temperature Co−fired Ceramics。以下、LTCCと示す。)から構成される。ガラスセラミックス組成物の原料組成、焼結条件等については後述する通りである。
【0026】
配線導体層、すなわち素子接続端子6、外部接続端子7および貫通導体8の構成材料としては、銅、銀、金等を主成分とする金属材料が挙げられる。銀、銀と白金、または銀とパラジウムからなる金属材料が好ましい。配線導体は、このような金属の粉末を含む金属ペーストを焼成して形成されたものである。金属ペーストとしては、銅、銀、金等を主成分とする金属粉末に、エチルセルロース等のビヒクルと、必要に応じてその他の添加剤、溶剤等を添加してペースト状としたものを使用できる。金属粉末の粒径(50%粒径(D50))は、0.5μm以上10μm以下が好ましい。なお、本明細書において、粒径はレーザ回折・散乱法による粒子径測定装置により得られる値をいう。そして、金属粉末の含有量(溶剤を除いた固形分全体に対する金属粉末の含有割合)は、80乃至90質量%の範囲に調整するのが好ましい。さらに、添加剤としては、パラジウムや三酸化二ロジウムが挙げられる。パラジウム、三酸化二ロジウムは、いずれも銀の焼結阻害剤として作用する。三酸化二ロジウムは少量で大きく焼成収縮を遅延させる効果があるが、添加量が多くなると基板との密着強度を低下させたり、印刷性を阻害したりするので、添加量を抑える必要がある。
【0027】
本発明においては、このような配線導体層のうちで、特に前記したように分割溝3の近傍の領域に形成される外部接続端子7が、所定の範囲の熱収縮特性を有する金属ペーストの焼成により形成されていることを特徴としている。なお、製造の容易性の観点から、素子接続端子6、外部接続端子7および貫通導体8等の配線導体層は、全て1種類の金属ペーストから形成されるので、外部接続端子7だけでなく素子接続端子6および貫通導体8を形成するための金属ペーストも、以下に示す熱収縮特性を有することになる。
【0028】
実施形態においては、前記金属ペーストのTMAにより測定された収縮開始温度が、母基板2を形成するためのガラスセラミックス組成物の収縮開始温度の−100℃から+80℃の範囲となっている。−75℃から+55℃の範囲がさらに好ましい。
また、前記金属ペーストのTMAにより測定された最終収縮量が、母基板2を形成するためのガラスセラミックス組成物の最終収縮量に対して±10%の範囲となっている。±7%の範囲がさらに好ましい。すなわち、金属ペーストの最終収縮量が前記ガラスセラミックス組成物の最終収縮量を基準100%として、90%乃至110%の範囲にあることが好ましく、93%乃至107%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0029】
なお、TMA(Thermo-Mechanical Analysis;熱機械分析)は、試料の温度を一定のプログラムによって変化させながら、圧縮、引張り、曲げ等の非振動的荷重を加えて、物質の変形を温度または時間の関数として測定する方法である。温度変化に対応して試料の熱膨張や軟化等試料の変形が起こると、変形に伴う変位量が、プローブの位置変化量として、変位検出部で計測される。本発明の実施形態において、TMA測定は、例えば島津製作所製の商品名TMA−50を使用し、試料に10mgの荷重を負荷しながら温度を10℃/分の速度で上昇させて、そのときの収縮量を測定することにより行う。
【0030】
収縮開始温度は、TMA測定により得られる熱収縮曲線(以下、「TMA曲線」という。)において、収縮量が3乃至10%の間の一定の値(例えば5%)に達する温度が好ましい。
【0031】
金属ペーストのTMA曲線における収縮開始温度および最終収縮量は、金属ペースト中の金属粉末の粒径、金属粉末の含有量により調整できる。また、パラジウム、三酸化二ロジウムのような添加剤を添加することで、前記収縮開始温度および最終収縮量を調整できる。
【0032】
本発明の連結配線基板1では、外部接続端子7等を形成するための金属ペーストの収縮開始温度および最終収縮量を前記範囲とすることにより、焼成の際の分割溝3内部の融着等を防止し、かつ分割溝3の拡幅による基板強度の低下を防止できる。したがって、焼成中や焼成後のメッキ工程で基板割れが生じることがなく、かつ分割後の配線基板のバリや欠けの発生を少なくできる。
【0033】
金属ペーストの収縮開始温度が、ガラスセラミックス組成物の収縮開始温度を基準として−100℃未満の場合、すなわち、金属ペーストの収縮開始温度がガラスセラミックス組成物のそれより100℃超低い場合には、後述するように、この金属ペーストからなる未焼成配線層を有し、未焼成分割溝が形成された前記ガラスセラミックス組成物からなるグリーンシートの積層体を同時焼成して連結配線基板1を製造する際に、ガラスセラミックス組成物に比べて金属ペーストが早く焼結しすぎるため、分割溝3の内壁面同士を近づけて溝を狭くしあるいは閉塞しようとする力が強く働き、分割溝3の内部の融着が生じやすい。したがって、分割溝3に沿った分割の際に配線基板の分割面にバリや欠けが発生しやすい。
【0034】
金属ペーストの収縮開始温度が、ガラスセラミックス組成物の収縮開始温度に対して+80℃を超えて高い場合には、ガラスセラミックス組成物が十分に収縮した後に金属ペーストが収縮するため、分割溝3の幅が広くなり過ぎる。そのため、焼成中の基板割れが生じやすい。
【0035】
金属ペーストの最終収縮量がガラスセラミックス組成物の最終収縮量に対して10%を超えて小さい、すなわち金属ペーストの最終収縮量がガラスセラミックス組成物の最終収縮量の90%未満である場合には、分割溝3の内壁面同士を近づけて溝を狭くしあるいは閉塞しようとする力が強く働くため、分割溝3の内部の融着が生じやすい。したがって、分割の際に配線基板にバリや欠けが発生しやすい。
【0036】
金属ペーストの最終収縮量がガラスセラミックス組成物の最終収縮量に対して10%を超えて大きい、すなわち金属ペーストの最終収縮量がガラスセラミックス組成物の最終収縮量の110%超である場合には、金属ペーストの収縮量が大きくなり過ぎるため、分割溝3の幅が広くなり過ぎる。そのため、焼成中の基板割れが生じやすい。
【0037】
以上、本発明の連結配線基板1について一例を挙げて説明したが、本発明の趣旨に反しない限度において、また必要に応じて、その構成を適宜変更できる。
【0038】
次に、本発明の連結配線基板1を製造する方法について記載する。なお、以下の説明では、製造に用いる部材について、完成品の部材と同一の符号を付して説明する。
【0039】
(A)グリーンシート製造工程
まず、略平板状(目視レベルで平板状の意味、以下同様)の基板用グリーンシートおよび枠体用グリーンシートを製造する。これらのグリーンシートは、基板用ガラス粉末とセラミックス粉末とを含むガラスセラミックス組成物にバインダー、必要に応じて可塑剤、溶剤等を添加してスラリーを調製し、これをドクターブレード法等によりシート状に成形し、乾燥させることで製造できる。ここで、略平板状とは、目視レベルで平板状の意味である。以下も同様とする。
【0040】
基板用ガラス粉末は、必ずしも限定されるものではないものの、Tgで表記されるガラス転移点が550℃以上700℃以下のものが好ましい。ガラス転移点が550℃未満の場合、後述する脱脂が困難となるおそれがある。一方、ガラス転移点が700℃を超える場合、収縮開始温度が高くなり過ぎて、寸法精度が低下するおそれがある。
【0041】
また、800℃以上930℃以下で焼成したときに結晶が析出することが好ましい。結晶が析出しない場合、十分な機械的強度を得ることができないおそれがある。さらに、DTA(Differential Thermal Analysis、示差熱分析示差熱分析)により測定され、Tcで表記される結晶化ピーク温度が880℃以下のものが好ましい。結晶化ピーク温度が880℃を超える場合、寸法精度が低下するおそれがある。
【0042】
このような母基板用ガラス粉末としては、例えばSiOを57mol%以上65mol%以下、Bを13mol%以上18mol%以下、CaOを9mol%以上23mol%以下、Alを3mol%以上8mol%以下、KOとNaOから選ばれる少なくとも一方を合計で0.5mol%以上6mol%以下含有するものが好ましい。このような組成のものを用いることで、基板表面の平坦度を向上させることが容易となる。
【0043】
ここで、SiOは、ガラスのネットワークフォーマとなる。SiOの含有量が57mol%未満の場合、安定なガラスを得ることが難しく、また化学的耐久性も低下するおそれがある。一方、SiOの含有量が65mol%を超える場合、ガラス溶融温度やガラス転移点が過度に高くなるおそれある。SiOの含有量は、好ましくは58mol%以上、より好ましくは59mol%以上、特に好ましくは60mol%以上である。また、SiOの含有量は、好ましくは64mol%以下、より好ましくは63mol%以下である。
【0044】
は、ガラスのネットワークフォーマとなる。Bの含有量が13mol%未満の場合、ガラス溶融温度やガラス転移点が過度に高くなるおそれがある。一方、Bの含有量が18mol%を超える場合、安定なガラスを得ることが難しく、また化学的耐久性も低下するおそれがある。Bの含有量は、好ましくは14mol%以上、より好ましくは15mol%以上である。また、Bの含有量は、好ましくは17mol%以下、より好ましくは16mol%以下である。
【0045】
Alは、ガラスの安定性、化学的耐久性、および強度を高めるために添加される。Alの含有量が3mol%未満の場合、ガラスが不安定となるおそれがある。一方、Alの含有量が8mol%を超える場合、ガラス溶融温度やガラス転移点が過度に高くなるおそれがある。Alの含有量は、好ましくは4mol%以上、より好ましくは5mol%以上である。また、Alの含有量は、好ましくは7mol%以下、より好ましくは6mol%以下である。
【0046】
CaOは、ガラスの安定性や結晶の析出性を高めると共に、ガラス溶融温度やガラス転移点を低下させるために添加される。CaOの含有量が9mol%未満の場合、ガラス溶融温度が過度に高くなるおそれがある。一方、CaOの含有量が23mol%を超える場合、ガラスが不安定となるおそれがある。CaOの含有量は、好ましくは12mol%以上、より好ましくは13mol%以上、特に好ましくは14mol%以上である。また、CaOの含有量は、好ましくは22mol%以下、より好ましくは21mol%以下、特に好ましくは20mol%以下である。
【0047】
O、NaOは、ガラス転移点を低下させるために添加される。KOおよびNaOの合計した含有量が0.5mol%未満の場合、ガラス溶融温度やガラス転移点が過度に高くなるおそれがある。一方、KOおよびNaOの合計した含有量が6mol%を超える場合、化学的耐久性、特に耐酸性が低下するおそれがあり、電気的絶縁性も低下するおそれがある。KOおよびNaOの合計した含有量は、0.8mol%以上5mol%以下が好ましい。
【0048】
基板用ガラス粉末は、必ずしも上記成分のみからなるものに限定されず、ガラス転移点等の諸特性を満たす範囲で他の成分を含有できる。他の成分を含有する場合、その合計した含有量は10mol%以下が好ましい。
【0049】
基板用ガラス粉末は、上記したようなガラス組成を有するガラスを溶融法によって製造し、乾式粉砕法や湿式粉砕法によって粉砕することにより得ることができる。湿式粉砕法の場合、溶媒として水を用いることが好ましい。粉砕は、例えばロールミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて行う。
【0050】
基板用ガラス粉末の50%粒径(D50)は、0.5μm以上2μm以下が好ましい。基板用ガラス粉末の50%粒径が0.5μm未満の場合、ガラス粉末が凝集しやすく、取り扱いが困難になるばかりでなく、均一に分散させることが困難になる。一方、基板用ガラス粉末の50%粒径が2μmを超える場合、ガラス軟化温度の上昇や焼結不足が発生するおそれがある。粒径の調整は、例えば粉砕後に必要に応じて分級することにより行う。
【0051】
セラミックス粉末としては、従来からLTCC基板の製造に用いられるものを特に制限なく使用でき、例えば、アルミナ粉末、ジルコニア粉末、またはアルミナ粉末とジルコニア粉末との混合物を好適に用いる。セラミックス粉末の50%粒径(D50)は、0.5μm以上4μm以下が好ましい。
【0052】
このようなセラミックス粉末と前記基板用ガラス粉末とを、例えば基板用ガラス粉末が30質量%以上50質量%以下、セラミックス粉末が50質量%以上70質量%以下となるように配合、混合することによりガラスセラミックス組成物を得る。また、このガラスセラミックス組成物に、バインダー、必要に応じて可塑剤、分散剤、溶剤等を添加することによりスラリーを得る。
【0053】
バインダーとしては、例えばポリビニルブチラール、アクリル樹脂等が好適に使用できる。可塑剤としては、例えばフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル等が使用できる。また、溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系の有機溶剤、ブタノール等のアルコール系の有機溶剤が使用できる。さらに、分散剤やレベリング剤を使用することもできる。
【0054】
このスラリーをドクターブレード法等によりシート状に成形し、乾燥させることで、グリーンシートを製造できる。そして、こうして得られたグリーンシートの各配線領域の所定位置を、打ち抜き型あるいはパンチングマシーンを使用して打ち抜いて、層間接続用のビアホール等を形成することで、基板用グリーンシートを製造する。また、前記グリーンシートにおいて、各配線領域の中央部を楕円形等所定形状にくり抜き、枠体用グリーンシートを製造する。なお、図示されていないが、積層のための位置合わせの印を枠体用グリーンシートに形成できる。
【0055】
(B)配線導体ペースト層形成工程
上記(A)工程で得られた基板用グリーンシートにおいて、搭載面側配線領域および非搭載面側配線領域に相当する領域の所定の位置に、配線導体ペースト層を形成する。
【0056】
まず、基板用グリーンシートの各搭載面側配線領域において、所定の位置に所定の大きさで素子接続端子用金属ペースト層6を形成する。また、各々の非搭載面側配線領域において、所定の位置に所定の大きさで外部接続端子用金属ペースト層7を形成する。さらに、層間接続用のビアホールに金属ペーストを充填し、グリーンシートを素子搭載面から非搭載面に貫通する貫通導体用金属ペースト層8を形成する。こうして金属ペースト層付きの基板用グリーンシートが得られる。なお、図示されていないが、積層のための位置合わせの印を基板用グリーンシートに形成できる。
【0057】
素子接続端子用金属ペースト層6、外部接続端子用金属ペースト層7、および貫通導体用金属ペースト層8の形成方法としては、金属ペーストをスクリーン印刷法により塗布、充填する方法が挙げられる。素子接続端子用金属ペースト層6および外部接続端子用金属ペースト層7の膜厚は、最終的に得られる素子接続端子6および外部接続端子7の膜厚が所定の膜厚となるように調整される。
【0058】
金属ペーストとしては、銅、銀、金等を主成分とする金属粉末に、エチルセルロース等のビヒクル、必要に応じて溶剤、添加剤等を添加してペースト状としたものを用いる。上記金属粉末としては、銀からなる金属粉末、銀と白金またはパラジウムからなる金属粉末が好ましい。そして、この金属ペーストは、前記した所定の範囲の熱収縮特性を有するものである。すなわち、TMAにより測定された収縮開始温度が、母基板を形成するための前記ガラスセラミックス組成物の収縮開始温度に対して−100℃乃至+80℃の範囲にあり、かつ最終収縮量が前記ガラスセラミックス組成物の最終収縮量に対して±10%の範囲にある金属ペーストが使用される。
【0059】
(C)積層ならびに分割溝形成工程
上記(B)工程で得られた金属ペースト層付きの基板用グリーンシートの素子搭載面側に、上記(A)工程で得られた枠体用グリーンシートを位置合わせしつつ積層し、加熱および加圧して一体化し、グリーンシート積層体を形成する。次いで、このグリーンシート積層体の素子搭載面側および非搭載面側の両面において、縦横に配列された配線領域の境界領域に、グリーンシート積層体切断機等を用いて未焼成分割溝3を形成する。さらに、未焼成分割孔4として、未焼成分割溝3の交点を中心とする円形の貫通孔を孔開け機等を用いて形成し、未焼成連結配線基板1を得る。
【0060】
(D)焼成工程
上記(C)工程後、得られた未焼成連結配線基板1について、必要に応じてグリーンシートに含まれる樹脂等のバインダー等を分解・除去するための脱脂を行った後、ガラスセラミックス組成物等を焼結させるために、800乃至930℃の温度で焼成する。
【0061】
脱脂は、例えば、500℃以上600℃以下の温度で1時間以上10時間以下保持する条件が好ましい。脱脂温度が500℃未満もしくは脱脂時間が1時間未満の場合、バインダー等を十分に除去できないおそれがある。一方、脱脂温度は600℃程度、脱脂時間は10時間程度とすれば、十分にバインダー等を除去でき、これを超えると生産性が低下する。
【0062】
焼成は、基板の緻密な構造の獲得と生産性を考慮して、800℃乃至930℃の温度範囲で適宜時間を調整する。具体的には、850℃以上900℃以下の温度で20分以上60分以下保持することが好ましく、特に860℃以上880℃以下の温度で20分以上60分以下保持することが好ましい。焼成温度が800℃未満では、緻密な構造の基板が得られないおそれがある。一方、焼成温度が930℃を超えると基板が変形するなど生産性等が低下するおそれがある。また、銀を主成分とする金属粉末を含有する金属ペーストを用いた場合、焼成温度が880℃を超えると、金属ペーストが過度に軟化して所定の形状を維持できなくなるおそれがある。
【0063】
このようにして、未焼成連結配線基板1が焼成されて連結配線基板1が得られるが、焼成後、必要に応じて素子接続端子6および外部接続端子7の全体を被覆するように、金メッキ等の通常、配線基板において導体保護用に用いられる導電性保護膜を形成することもできる。また、このような分割前の連結配線基板1の状態で、搭載面側配線領域のキャビティ底面の素子搭載部に、LED素子のような発光素子を配置して固定することもできる。
【0064】
以上、本発明の連結配線基板の製造方法について説明したが、基板用グリーンシートおよび枠体用グリーンシートは、必ずしも単一のグリーンシートからなる必要はなく、複数枚のグリーンシートを積層したものであってもよい。また、各部の形成順序等についても、連結配線基板の製造が可能な限度において適宜変更できる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の具体的実施例について記載する。
【0066】
以下に示すようにして、配線層用の銀ペースト(A)乃至(H)を調製した。また、基板用のグリーンシート(ガラスセラミックス組成物)を作製した。
(銀ペーストの調製)
以下に示す銀粉末(a)乃至(f)をそれぞれ用意した。
銀粉末(a):大研化学工業社製S400−2
(D502.0μm、粒子の形状 球状)
銀粉末(b):DOWAエレクトロニクス社製AG−2−1C
(D500.8μm、粒子の形状 球状)
銀粉末(c):DOWAエレクトロニクス社製AG−3−8F
(D501.4μm、粒子の形状 球状)
銀粉末(d):大研化学工業社製F−1
(D503.0μm、粒子の形状 球状)
銀粉末(e):DOWAエレクトロニクス社製FA−D−2
(D505.5μm、粒子の形状 扁平状)
銀粉末(f):大研化学工業社製S550
(D505.0μm、粒子の形状 扁平状)
【0067】
銀ペースト(A)乃至(F)については、表1に示すように、銀粉末の合計量を100質量部とし、銀ペースト(G),(H)については、合計100質量部の銀粉末に、表1に示す添加剤を同表に示す量(質量部)だけ配合した。そして、これにビヒクルとしてのエチルセルロースを質量比90:15で配合した。この混合物を、表1に示す固形分比(質量%)となるように溶剤としてのαテレピネオールに分散した後、磁器乳鉢中で1時間混練を行い、さらに三本ロールにより3回分散を行って、銀ペースト(A)乃至(H)を調製した。
【0068】
【表1】

【0069】
(グリーンシートの作製)
SiOを60.4mol%、Bを15.6mol%、Alを6mol%、CaOを15mol%、KOを1mol%、NaOを2mol%となるように原料を配合、混合し、この原料混合物を白金ルツボに入れて1600℃で60分溶融させた後、この溶融状態のガラスを流し出し冷却した。このガラスをアルミナ製ボールミルにより40時間粉砕して基板用ガラス粉末を製造した。なお、粉砕の溶媒にはエチルアルコールを用いた。
【0070】
このガラス粉末が35質量%、アルミナフィラー(昭和電工社製、商品名:AL−45
H)が40質量%、ジルコニアフィラー(第一稀元素化学工業社製、商品名:HSY−3
F−J)が25質量%となるように配合し、混合することにより基板用ガラスセラミックス組成物を調製した。
【0071】
この基板用ガラスセラミックス組成物50gに、有機溶剤(トルエン、キシレン、2−プロパノール、2−ブタノールを質量比4:2:2:1で混合したもの)15g、可塑剤(フタル酸ジ−2−エチルヘキシル)2.5g、バインダーとしてのポリビニルブチラール(デンカ社製、商品名:PVK#3000K)5g、さらに分散剤(ビックケミー社製、商品名:BYK180)を配合し、混合してスラリーを調製した。
【0072】
このスラリーをPETフィルム上にドクターブレード法により塗布し、乾燥させた後切断し、厚さが0.1mmのグリーンシートを製造した。
【0073】
次に、こうして得られたグリーンシート(ガラスセラミックス組成物)と前記銀ペースト(A)乃至(H)について、TMA測定を行った。測定は、島津製作所製のTMA−50を用いて行った。銀ペースト(A)乃至(H)およびグリーンシートから作製された試料に、10mgの荷重を負荷しながら温度を10℃/分の速度で上昇させ、そのときの収縮曲線をそれぞれ測定した。
【0074】
銀ペーストの試料は、銀ペースト(A)乃至(H)をそれぞれ250℃で1時間加熱乾燥した後、アルミナ製乳鉢で凝集をほぐし、次いで直径5mmの円柱状の金型でプレスして、厚さ1mmの円盤状の試料を作製した。グリーンシートの試料は、前記した厚さが0.1mmのグリーンシートを直径5mmの円盤状に刳り抜いて作製した。
【0075】
こうして測定された銀ペースト(A)乃至(H)およびグリーンシートのTMA曲線を、図4に示す。
【0076】
次に、図4に示すTMA曲線から、銀ペースト(A)乃至(H)の収縮開始温度(収縮量が5%に達する温度)をそれぞれ求め、それらの値が基準値であるグリーンシートの収縮開始温度(℃)に対して、どれだけ高いか(+t℃;tは正数。以下同じ。)あるいは低いか(−t℃)を求めた。また、TMA曲線から銀ペースト(A)乃至(H)の最終収縮量(%)を求め、それらの値のグリーンシートの最終収縮量(%)を基準とする割合(%)を求めた。なお、TMA曲線における左側の縦軸は、初期状態を0として収縮をマイナス量として表わしているので、最終収縮量(%)は縦軸の値の絶対値として求めた。
【0077】
これらの結果を表2に示す。
【表2】

【0078】
表2の結果から、銀ペースト(E)(F)および(G)は、いずれもTMAによる収縮開始温度が基板形成用グリーンシートの収縮開始温度に対して−100℃乃至+80℃の範囲にあり、かつ最終収縮量が前記グリーンシートの最終収縮量に対して±10%以内(グリーンシートの最終収縮量の90%乃至110%の範囲)にあり、本発明の連結配線基板における配線形成用の金属ペーストとして好適するものであることがわかる。
これに対して、銀ペースト(A)乃至(D)および(H)は、いずれもTMAによる収縮開始温度が基板形成用グリーンシートの収縮開始温度に対して−100℃乃至+80℃の範囲にはなく、また最終収縮量も前記グリーンシートの最終収縮量に対して±10%以内にはないので、本発明の連結配線基板における配線形成用の金属ペーストとして適さないものである。
【0079】
次に、前記した基板形成用グリーンシートを使用し、かつ配線形成用の金属ペーストとして銀ペースト(A)乃至(H)を使用して連結配線基板を製造した。すなわち、基板形成用グリーンシートの未焼成貫通導体に相当する部分に孔空け機を用いて貫通孔を形成した後、この貫通孔に、スクリーン印刷法により銀ペースト(A)乃至(H)を充填して未焼成貫通導体ペースト層を形成するとともに、未焼成接続端子導体ペースト層、未焼成外部電極端子導体ペースト層をそれぞれ形成した。このグリーンシートを重ね合わせ、熱圧着により一体化して、導体ペースト層付き本体用グリーンシートを得た。
【0080】
次いで、複数枚の導体ペースト層付き本体用グリーンシートを位置合わせしつつ重ね合わせ、加熱および加圧し一体化して、焼成後の厚みが1mmとなるグリーンシート積層体を形成した。次いで、グリーンシート積層体の表裏両面の所定の位置に、セラミックグリーンシート積層体切断機(UHT社製G−cut6)を用いて分割溝を形成し、未焼成連結配線基板を製造した。なお、分割溝は、幅10μmで200μmの深さを有し、その中心線が未焼成外部電極端子導体ペースト層の端部から200μmの位置に形成した。
【0081】
上記で得られた未焼成連結配線基板を、550℃で5時間保持して脱脂を行い、さらに870℃で30分間保持して焼成を行って連結配線基板を製造した。
こうして得られた連結配線基板において、分割溝の断面を測長顕微鏡により調べたところ、銀ペースト(E)(F)および(G)を使用して外部電極端子等の配線を形成したものは、内壁面の融着による溝の閉塞等がなく、160μm以上の深さを有していた。そして、連結配線基板を分割溝に沿って分割し、得られた配線基板の分割面のバリ、欠けの発生を調べたところ、バリ、欠けの発生は全くなかった。また、焼成中の基板の割れも生じなかった。
【0082】
これに対して、銀ペースト(A)乃至(D)および(H)を使用して外部電極端子等の配線を形成したものは、内壁面の融着による分割溝の閉塞が生じており、深さが100μm以下に減少していた。そして、連結配線基板を分割溝に沿って分割したところ、得られた配線基板の分割面に50μm以上のバリ、欠けの発生が見られた。
【0083】
なお、分割溝の深さを300μm超とする以外は前記と同様にして連結配線基板を製造したところ、銀ペースト(A)乃至(H)のいずれを使用したものも、焼成中に基板割れが生じ、連結配線基板を得ることができなかった。
【符号の説明】
【0084】
1…連結配線基板、2…母基板、2a…素子搭載面、2b…非搭載面、3…分割溝、4…分割孔、5…枠体、6…素子接続端子、7…外部接続端子、8…貫通導体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス粉末とセラミックス粉末とを含むガラスセラミックス組成物の焼結体からなる母基板の両主面上に、金属ペーストを焼成してなる配線層を有する複数の配線領域が形成され、前記母基板の少なくとも素子が搭載される面と反対側の非搭載面において、前記配線領域を区画する分割溝が配設された連結配線基板であって、
前記母基板の前記非搭載面において、前記分割溝の近傍に形成される前記配線層を、TMA(熱機械分析)による収縮開始温度が、前記ガラスセラミックス組成物の収縮開始温度に対して−100℃乃至+80℃の範囲にあり、かつTMAによる最終収縮量が、前記ガラスセラミックス組成物の最終収縮量に対して±10%の範囲にある金属ペーストにより形成することを特徴とする連結配線基板。
【請求項2】
前記金属ペーストは、銀を主成分とする金属粉末を含有する請求項1記載の連結配線基板。
【請求項3】
前記分割溝の近傍に形成された配線層は、前記分割溝の中心線からの距離が200μm以下の領域まで配設されている請求項1または2記載の連結配線基板。
【請求項4】
前記分割溝は、5乃至20μmの幅を有し、かつ前記母基板の厚みに対して20乃至30%の深さを有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の連結配線基板。
【請求項5】
前記分割溝は、前記母基板の両主面に設けられる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の連結配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−160553(P2012−160553A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18803(P2011−18803)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】