説明

連続洗濯機の定置洗浄方法及び連続洗濯機

【課題】 CPI式連続洗濯機の浴槽の自動清浄技術の提供。
【解決手段】 外側ユニット内に区切られた浴槽内に洗剤とアルカリ剤とキレート剤を予め定められた濃度で混在した洗浄液を高水位まで投入し、且つ蒸気投入口から外部の蒸気を各浴槽ユニット内に供給して浴槽内部を約80度〜90度に設定し、すくいシャベル30を反時計方向に1G以下のGが発生する速度で約2〜3時間回転又は回動し、洗浄液を排水した後、常温水を前記浴槽内に前記高水位まで投入し、前記すくいシャベルを反時計方向に1G以下のGが発生する速度で約1時以上回転することにより、浴槽内部の自動洗浄を行うもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗物を並設した複数の浴槽内で連続して洗濯を行うことができる連続洗濯機に係り、特に浴槽内を自動的に洗浄することができるCIP(定置洗浄)式連続洗濯機の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に連続洗濯機は、被洗物を予洗/本洗い/濯ぎ用の各浴槽間を移動しながら連続して洗濯を行うものであり、この連続洗濯機に関する技術が記載された文献としては下記特許文献が挙げられる。
これを説明すると従来技術による連続洗濯機は、両端に入口と出口を有すると共に、少なくとも下部を各浴槽部に分割する側壁を有する細長い外側ハウジングと、該外側ハウジング内に配置され且つ連結された複数のドラムを有する細長い内側ハウジングとを備え、前記内側ハウジングを回転させることによって、浴槽内の被洗物の予洗/本洗い/濯ぎを各浴槽で行いながらドラム間を各ドラム内に配置されたすすくいシャベルの揺動により上流側から下流側に移送する様に構成されている。
【特許文献1】特開平5−208175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の特許公報記載技術は、低コストで製造でき、占有面積を小さくすることができる簡単構造の連続洗濯機を提供する技術が記載されているものの、連続洗濯機の浴槽自体の洗浄については考慮されていないものであった。
【0004】
即ち、従来技術による連続洗濯機は、前記外側ハウジングの内壁や内側ハウジング自体の浴槽内部の洗浄を行う際には、前記浴槽内に装置洗浄用の洗剤を含む洗浄液を入れ、被洗物の洗濯時と同様に内側ハウジング及びすくいシャベルを揺動することによって、前記浴槽内の洗浄を行うものであるが、内側ハウジング及びすくいシャベルが所定角度内でしか揺動しないため、洗浄液が浴槽内で揺れる範囲にしか届かず、洗浄液が届かない範囲は人手によって洗浄しなければならないと言う不具合があった。
【0005】
本発明の目的は、前記従来技術による不具合を除去することであり、浴槽内の自動洗浄を行うことができるCPI式連続洗濯機の洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明は、すくいシャベルを有する内側ユニットを外側ユニット内で揺動することによって前記外側ユニット内の垂直壁により区分けされた浴槽間で被洗物を移動させながら洗濯を行う連続洗濯機において、前記浴槽内に洗浄液を垂直壁により区分けされた浴槽内に入れた状態で前記すくいシャベルを反時計方向に1G以下のGが発生する速度で少なくとも外側ユニットの頂点位置まで回転又は回動し、前記すくいシャベルが前記すくい上げた洗浄液を浴槽内に落下させることにより、浴槽内の自動洗浄を行うことを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、前記特徴によるCPI方式において、前記洗浄液を被洗物の洗濯時の水位より高水位になる様に各槽の堰の高さを設定して洗浄を行うことを第2の特徴とし、前記連続洗濯機において、前記浴槽内に高温水蒸気を供給する蒸気投入口を設け、該蒸気投入口から外部蒸気を各浴槽ユニット内に供給することにより、浴槽内部を約80度〜90度に設定した状態で洗浄を行うことを第3の特徴とする。
【0008】
また本発明は、すくいシャベルを有する内側ユニットを外側ユニット内で揺動することによって前記外側ユニット内の垂直壁により区分けされた浴槽間で被洗物を移動させながら洗濯を行う連続洗濯機において、洗浄液を被洗物の洗濯時の水位より高水位になる様に各槽の堰を設定し、浴槽内に高温水蒸気を供給する蒸気投入口とを設け、前記浴槽内に洗剤とアルカリ剤とキレート剤を予め定められた濃度で混在した洗浄液を前記高水位まで投入し、且つ蒸気投入口から外部蒸気を各浴槽ユニット内に供給して浴槽内部を約80度〜90度に設定し、前記すくいシャベルを反時計方向に1G以下のGが発生する速度で少なくとも外側ユニットの頂点位置まで回転又は回動する動作を約2〜3時間継続して洗浄を行い且つ前記洗浄液を排水した後、常温水を前記浴槽内に前記高水位まで投入し、前記すくいシャベルを反時計方向に1G以下のGが発生する速度で少なくとも外側ユニットの頂点位置まで回動又は回転する動作を約1時間継続して濯ぎを行うことにより、浴槽内の自動洗浄を行うことを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による連続洗濯機のCPI方式の洗浄方法は、前記浴槽内に洗剤とアルカリ剤とキレート剤を予め定められた濃度で混在した洗浄液を前記高水位まで投入し、且つ蒸気投入口から外部の蒸気を各浴槽ユニット内に供給して浴槽内部を約80度〜90度に設定し、すくいシャベルを反時計方向に1G以下のGが発生する速度で約2〜3時間回転し、洗浄液を排水した後、常温水を前記浴槽内に前記高水位まで投入し、前記すくいシャベルを反時計方向に1G以下のGが発生する速度で約1時間回転することにより、浴槽内部の洗浄を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態によるCPI式連続洗濯機を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態によるCPI式連続洗濯機の横断面図、図2及び図3は図1の2−2断面を示す縦断面図である。
【0011】
図1に示す連続洗濯機20は、端と端を対向させて略一線に配置された一対のハウジングから成る外側ハウジング22と、該外側ハウジング22内に夫々支持された一対の端と端を突き合わせた内側ハウジング21と、前記外側ハウジング22の右側に配されて洗濯前の被洗物を投入するためのシュート23と、該外側ハウジング22の左側に配されて洗濯後の被洗物を排出するためのシュート24と、前記一対の外側ハウジング22間で被洗物を上流側の内側ハウジングの下流端から排出された被洗物を下流側内側ハウジングの上流端へ排出するための移送部25とを備える。
【0012】
前記内側ハウジング21は、短縮円筒形状の複数のドラム26から成り、このドラム26は、貫通開口を与えるために互いに連結された中心入口27及び出口28と、端壁を連結するための外側の穴の開いた壁29と、被洗物を上流側から下流側に移送し、最も下流側のドラムにおいては洗浄機から出口に被洗物を移送するために各ドラム26内に搭載されたすくいショベル30とを備える。
【0013】
前記外側ハウジング22は、下部を横方向に横切って延びて、被洗物が処理される液体を収容するための浴槽部に分ける壁33を含み、この壁33は近接したドラムの下部の互いに向かい合った端壁の間において、上方に延在するように外側ハウジング22の長手方向に沿って配置されているため、前記浴槽部が図2に示す高さLまで満たされた場合、ドラムが外側ハウジング内においてに揺動されると、ドラム下部内の被洗物に液体(水又は洗濯液)を循環して被洗物の予洗/本洗い/濯ぎを順次行う様に構成されている。
【0014】
前記各ドラム26は、そのドラムの外壁に固定された一側のエッジ30Aと前記外壁からスペースを持つもう一つ側のエッジ30Bとを有する湾曲したシートを持つすくいショベル30が設けられ、該すくいショベル30は、その上側の端のエッジ30Cが入口の上側エッジの下にわずかな距離をもって入口の端壁に連結されており、その下側の端壁30Dが出口の下側周囲に近接した出口側の端壁に連結されている。前記入口のエッジ30Cの上の部分は、壁30Eによって閉鎖されている。
【0015】
前記ドラム26は、洗浄サイクルの間に図2に示すように、その排出、即ち転送位置の両側に交互に揺動させられ、或いは、前記洗濯液等がドラムの下部内の被洗物を通って循環させ、ドラムから被洗物を転送しないように揺動させられた後、洗浄サイクルの完了により、被洗物を(図2及び図3において)反時計方向の回動により次のドラムに移送する。尚、前記反時計方向とは、図1の連続洗濯機を被洗物投入側のシート23から見た符号2−2で切断した断面を示す図2における左回転方向である。
【0016】
この被洗物の移送は、前記ドラムの反時計回動によってすくいショベル30が、図3の位置からドラム26底部の被洗物をすくい上げ、図2の位置に被洗物を持ち上げ、そのときに被洗物がすくいショベル30の傾斜した部分を滑り降りることにより下流側のドラムへ落ち、或いは、末端のドラムの場合には洗浄機の外に滑り出る動作である。
【0017】
さて、本実施形態によるCPI式連続洗濯機は、前述の構成に加え、次の機構を有している。
(1)浴槽を区分けする前記壁33があり、その外に被洗物の洗濯時の水位を調整できる堰がある機構A。洗浄時にはこの堰を移動し高水位になる様に高さを設定する。
(2)すくいシャベル30が反時計方向に1G以下のGが発生する速度で回転又は回動し、この回転又は回動によってすくいシャベル30が浴槽の底部に溜まった洗浄液をすくい上げ、符号Aで示す頂点に達した位置以上に回転して洗浄液を重力により浴槽内(外側ユニットの内壁及びドラム全体)に落下させることによって、浴槽内を洗浄する機構B。
この機構Bは、すくいシャベル30を反時計方向に回転又は180度以上〜360度未満に回動(往復運動)させるためのドラム回動機構であり、浴槽内に溜めた洗浄液をすくい上げて浴槽内に重力により叩き付けることにより浴槽内壁に付着した汚れを除去することができる。尚、前記回転速度を1G以下のGが発生する速度で回転又は回動させる理由は、1G以上では洗浄液が遠心力によって頂点位置Aに達しても落下しないためであり、前記回転とは一定方向に連続して回転する動作であり、前記回動とは反時計方向に回転した後に時計方向に回転する両方向に動くことである。
【0018】
(3)前記外側ユニット毎に外部から蒸気投入口を設け、この蒸気投入口から外部の蒸気を各浴槽ユニット内に供給する機構C。
(4)前記外側ユニット毎に外部から洗浄液を投入する様に開口されたレベルボックスの機構D。
【0019】
この様に構成されたCPI式の連続洗濯機は、装置の浴槽(外側ユニットの内壁及び内側ユニットを構成するドラム)の洗浄を行う場合、次のように動作する。
(a)前記機構Aによって水槽内の水位24を調整できる堰で高水位に設定する工程。
(b)前記機構DによるレベルボックスDから、浴槽内に、洗剤/アルカリ剤/キレート剤を予め定められた濃度で水と混在した洗浄液を、洗濯時より高い水位まで投入する工程。
【0020】
(c)前記機構Cによる蒸気投入口から高温蒸気を浴槽内部に投入して各浴槽の内部温度を約80度〜90度に温度を上げる工程。
(d)前記構成Bにより、すくいシャベル30を反時計方向に1G以下のGが発生する速度で回転又は回動し、この回転又は回動によって底部に溜まった洗浄液をすくい上げ、すくいシャベル30が頂点位置A以上に回転することによって、吸い上げた洗浄液を浴槽内に落下させ、浴槽内を洗浄する工程。この工程(d)は、約2〜3時間程度が望ましい。
【0021】
(f)前記工程eの後、洗浄液を排水し、各浴槽内に常温水を供給し、前記構成Bにより、すくいシャベル30を反時計方向に1G以下のGが発生する速度で回転し、この回転によって底部に溜まった常温水をすくい上げ、すくいシャベル30が頂点位置以上に回動することによって、浴槽内に常温水を落下させ、浴槽内の洗浄液を濯ぐ工程。この工程(f)は、約1時間程度が望ましい。
【0022】
この様に本実施形態によるCPI式の連続洗濯機の洗浄方法は、各浴槽内の水位を上げた状態で所定の洗剤を混入した洗浄液を洗濯時より高水位に供給し、且つ蒸気により約80度〜90度の内部温度にした状態で、すくいシャベルを反時計方向に1G以下のGが発生する速度で回転駆動することによって、高温な洗浄液を前記すくいシャベル30を反時計方向に1G以下のGが発生する速度で回転し、この回転によって底部に溜まった洗浄液をすくい上げ、すくいシャベル30が頂点に達した位置以上に回転することにより洗浄液を重力により落下させて浴槽内に当てる(叩き付ける)ことによって、浴槽内を洗浄し、この後に前記同様に常温水を前記すくいシャベル30を反時計方向に1G以下のGが発生する速度で回転し、この回転によって底部に溜まった常温水すくい上げ、すくいシャベル30が頂点に達した位置A以上に回転又は回動することにより常温水を重力により落下させて浴槽内に当てることによって、浴槽内を濯ぎ、浴槽内部に付着した汚れを自動的に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による連続洗濯機の横断面図。
【図2】本実施形態による連続洗濯機の縦断面図。
【図3】本実施形態による連続洗濯機の縦断面図。
【符号の説明】
【0024】
20:CIP式式連続洗濯機、21:内側ハウジング、22:外側ハウジング、23:シュート、24:水位、25:移送部、26:ドラム、27:中心入口、28:出口、29:穴の開いた外側壁、30:すくいショベル、30A:エッジ、30B:エッジ、30C:エッジ、30D:端壁、30E:壁、33:壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
すくいシャベルを有する内側ユニットを外側ユニット内で揺動することによって前記外側ユニット内の垂直壁により区分けされた浴槽間で被洗物を移動させながら洗濯を行う連続洗濯機であって、
前記浴槽内に洗浄液を垂直壁により区分けされた浴槽内に入れた状態で前記すくいシャベルを反時計方向に1G以下のGが発生する速度で少なくとも外側ユニットの頂点位置まで回転又は回動し、前記すくいシャベルが前記すくい上げた洗浄液を浴槽内に落下させることにより、浴槽内の自動洗浄を行うことを特徴とするCPI(定置洗浄)方式。
【請求項2】
前記連続洗濯機の各槽の堰を高水位になる様に高さを設定して洗浄を行うことを特徴とする請求項1記載のCPI(定置洗浄)方式。
【請求項3】
前記浴槽内に高温水蒸気を供給する蒸気投入口を設け、該蒸気投入口から外部蒸気を各浴槽ユニット内に供給することにより、浴槽内部を約80度〜90度に設定した状態で洗浄を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のCPI(定置洗浄)方式。
【請求項4】
すくいシャベルを有する内側ユニットを外側ユニット内で揺動することによって前記外側ユニット内の垂直壁により区分けされた浴槽間で被洗物を移動させながら洗濯を行う連続洗濯機であって、
洗浄液を被洗物の洗濯時の水位より高水位になる様に設定し、浴槽内に高温水蒸気を供給する蒸気投入口とを設け、
前記浴槽内に洗剤とアルカリ剤とキレート剤を予め定められた濃度で混在した洗浄液を前記高水位まで投入し、且つ蒸気投入口から外部蒸気を各浴槽ユニット内に供給して浴槽内部を約80度〜90度に設定し、前記すくいシャベルを反時計方向に1G以下のGが発生する速度で少なくとも外側ユニットの頂点位置まで回転又は回動する動作を約2〜3時間継続して洗浄を行い且つ前記洗浄液を排水した後、常温水を前記浴槽内に前記高水位まで投入し、前記すくいシャベルを反時計方向に1G以下のGが発生する速度で少なくとも外側ユニットの頂点位置まで回動又は回転する動作を約1時間継続して濯ぎを行うことにより、浴槽内の自動洗浄を行うことを特徴とするCPI式連続洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−29878(P2007−29878A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218197(P2005−218197)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(390027421)株式会社東京洗染機械製作所 (47)
【Fターム(参考)】