説明

連続焼成炉

【課題】重量の大きい被焼成物を大量に焼成可能であって、同時に、焼成エネルギー効率に優れた連続炉を提供すること。
【解決手段】トンネル状の連続炉の長手方向に直行する複数の回転式搬送手段2を備え、被焼成物5を載置したセラミック製の板状またはフレーム状の焼成治具3を該回転式搬送手段2によって支持し、該回転式搬送手段2の回転方向に、該被焼成物5を載置したセラミック製の板状またはフレーム状の焼成治具3を搬送しながら焼成を行う連続焼成炉1であって、該回転式搬送手段2が、両側壁より突出した一対の片持ちローラである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続焼成炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、重量の大きい被焼成物を大量に焼成するための連続焼成炉として、被焼成物を台車に載せて炉内を搬送しながら焼成するトンネルキルンが使用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
例えば、セラミック製品焼成用のトンネルキルンにあっては、複数台の焼成台車を、進行方向に連なった状態で炉内を移動させることにより、前記焼成台車上に載置した被焼成品を焼成するようにしている。この場合、トンネル炉の入口部には、プッシャーと称される駆動装置が設けられ、このプッシャーにより最後尾の焼成台車の中心部が押されることにより、各焼成台車の前端縁部に設けられた接触プレートが、夫々前の焼成台車の後端縁部に接触して押圧力を順次伝達するようになっている。
【0004】
しかし、従来のトンネルキルンは、被焼成物を載置する為に使用される焼成台車自体の熱容量が大きく、炉内からの持出し熱量が大きくなるので、省エネルギーの観点から好ましくないという問題があった。また、炉内からの持出し熱量が殆どないローラハースキルンも、連続焼成炉として広く用いられているが、重量物を載せるとローラが撓むおそれがあり、トンネルキルンと同等の生産性を持たせることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−55356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は前記問題を解決し、従来のトンネルキルンと同等の生産性を維持しつつ、同時に、焼成エネルギー効率に優れた連続焼成炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の連続焼成炉は、トンネル状の連続炉の長手方向に直行する複数の回転式搬送手段を備え、被焼成物を載置したセラミック製の板状またはフレーム状の焼成治具を該回転式搬送手段によって支持し、該回転式搬送手段の回転方向に、該被焼成物を載置したセラミック製の板状またはフレーム状の焼成治具を搬送しながら焼成を行う連続焼成炉であって、該回転式搬送手段が、両側壁より突出した一対の片持ちローラであることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の連続焼成炉において、焼成治具の両端部を各々支持する一対の片持ちローラ間に連結軸を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の連続焼成炉において、該回転式搬送手段が、搬送中の焼成治具が蛇行することを防止する蛇行防止手段を備えることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の連続焼成炉において、該片持ちローラが、駆動装置に接続されないフリーローラであって、該連続炉の入口部に設けたプッシャーからの押圧力により該焼成治具を搬送することを特徴とするものである。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の連続焼成炉において、該片持ちローラが、駆動装置に接続された駆動式ローラであって、該駆動式ローラの回転駆動により、該焼成治具を搬送することを特徴とするものである。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の連続焼成炉において、入口部および出口部に扉を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る連続焼成炉は、被焼成物を載置したセラミック製の板状またはフレーム状の焼成治具を、トンネル状の連続炉の長手方向の両側壁より突出した一対の片持ちローラによって支持しながら搬送する構成を有する。当該構成によれば、高熱容量の焼成台車を用いることなく、例えば、被焼成品を積載した棚組のみを通窯することができるため、焼成台車により被焼成物を搬送する場合と同等の生産性を維持しつつ、焼成エネルギー効率は改善することができる。
【0014】
請求項2記載の発明では、焼成治具の両端部を各々支持する一対の片持ちローラを連結する駆動軸を備え、該駆動軸を炉幅方向に貫通するローラとして構成している。当該構成によれば、駆動軸の一端に動力を与えることにより、一対の片持ちローラを連動して回転駆動することができる。
【0015】
請求項3記載の発明では、連続焼成炉において、該片持ちローラの蛇行防止手段を備えるとして構成している。当該構成によれば、焼成治具の搬送に伴う炉幅方向へのズレや蛇行を防止することができる。
【0016】
請求項6記載の発明では、連続焼成炉において入口部および出口部に扉を備えることにより、炉内雰囲気を保った状態で、被焼成物を該炉内へ搬入する際および、被焼成物を該炉外へ搬出することができ、省エネルギー効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ハニカム焼成炉として用いた本発明の連続焼成炉の幅方向断面図である。
【図2】衛生陶器焼成炉として用いた本発明の連続焼成炉の幅方向断面図である。
【図3】その他の実施形態の幅方向断面図である。
【図4】その他の実施形態の幅方向断面図である。
【図5】その他の実施形態の幅方向断面図である。
【図6】入口部および出口部に扉を備える連続焼成炉の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。なお、本発明の連続焼成炉はトンネル状の連続炉であって、その長手方向に直行する複数の回転式焼成物搬送装置を備えるものである。
【0019】
(実施形態1)
図1は、ハニカム焼成炉として用いた本発明の連続焼成炉1の幅方向断面図を示し、図2は、衛生陶器焼成炉として用いた本発明の連続焼成炉1の幅方向断面図を示している。
【0020】
図1には、ハニカムを被焼成物5とし、棚組を焼成治具3として用いた例を示し、図2には、衛生陶器を被焼成物5とし、焼成板を焼成治具3として用いた例を示している。
【0021】
本実施形態では、トンネル状の連続炉の長手方向を構成する両側壁に、複数の片持ちローラ2を備えている。該片持ちローラ2は、両側壁の対向位置に各々設けられており、対向位置に配置された一対の片持ちローラ2が、焼成治具3の炉幅方向端部を各々支持する。
【0022】
従来は台車で受けていた被焼成物の重量を、一対の片持ちローラ2で受けることとなるが、片持ちローラ2の側壁からの突出量を小さくし、かつ、片持ちローラ2の直径を大きくしておけば、重量の大きい被焼成物を支障なく支持することができる。該片持ちローラ2の材質は、該片持ちローラ2が設置される箇所の焼成条件と、耐食性や耐熱性を考慮して、鋼やSiC系材料等から最適なものを選択することができる。
【0023】
被焼成物5を載置した焼成治具3の移動手段は、トンネル状の連続焼成炉1内を、複数の焼成治具3が進行方向に連なった状態で移動されるようになっている。このとき、トンネル炉の入口部には、プッシャーと称される駆動装置が設けられ、このプッシャーにより最後尾の焼成治具3の中心部が押され、該押圧力により片持ちローラ2の回転を促しつつ、前に位置する他の焼成治具3の後端縁部に接触して押圧力が順次伝達されるようになっている。
【0024】
ただし、搬送手段は前記のプッシャー式には限定されず、片持ちローラ2を駆動装置に接続して回転駆動し、ローラの自転に伴って焼成治具3が搬送されていく手段を採用することもできる。
【0025】
本発明は、炉内の製品を台車に載せて搬送するタイプのトンネルキルンと同等の生産性を維持することを前提とするものであるため、該片持ちローラ2は、重量の大きい被焼成物を大量に載置した焼成治具3の荷重に耐えうる高強度の素材で作製されることが必要である。
【0026】
また、本発明は、連続焼成炉1の焼成エネルギー効率の改善を目的とするものであるため、焼成治具3は、より蓄熱量が少なく、かつ、高強度の部材であることが好ましい。
【0027】
(その他の実施形態)
図3は、本発明のその他の実施形態の幅方向断面図を示している。図3では、焼成治具3の両端部を各々支持する一対の片持ちローラ2を連結する駆動軸4を備え、該駆動軸4を炉幅方向に貫通するローラとして構成している。
【0028】
本実施形態では、該駆動軸4の一端を駆動装置に接続して、該駆動軸4に回転方向の動力を与えることにより、該駆動軸4の回転に連動して、一対の片持ちローラを回転駆動させることができる。
【0029】
また、例えば、図4に示すように、該片持ちローラ2に鍔7をつけた鍔付きローラとして構成することにより、該鍔部によって焼成治具3をガイドできるため、焼成治具3の搬送に伴う炉幅方向へのズレや蛇行を防止することができる。なお、焼成治具3の搬送に伴う炉幅方向へのズレや蛇行を防止する手段は、図4に示す鍔付きローラに限定されず、図5に示すような焼成炉の側面に鍔7を設ける構成でも良く、別形態のガイドレールを設ける等のその他の手段を採用することもできる。
【0030】
焼成治具3の蛇行を防止するために、該駆動軸4への荷重バランスが、炉幅方向で均等配分されることが好ましい。その他、焼成治具3の蛇行を防止するために、図4に示すように、駆動軸4の炉内両端部に、該駆動軸4の外周を被覆するリング状部材6を設け、焼成治具3を該リング状部材6でガイド支持することもできる。
【0031】
図6は、入口部および出口部に扉を備える連続焼成炉の説明図を示している。図6に示すように、連続焼成炉において入口部および出口部に扉8(好ましくは2重扉)を備えることにより、炉内雰囲気を保った状態で、被焼成物を該炉内へ搬入する際および、被焼成物を該炉外へ搬出することができ、省エネルギー化を実現することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 連続焼成炉
2 片持ちローラ
3 焼成治具
4 駆動軸
5 被焼成物
6 リング状部材
7 鍔
8 扉


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル状の連続炉の長手方向に直行する複数の回転式搬送手段を備え、被焼成物を載置したセラミック製の板状またはフレーム状の焼成治具を該回転式搬送手段によって支持し、
該回転式搬送手段の回転方向に、該被焼成物を載置したセラミック製の板状またはフレーム状の焼成治具を搬送しながら焼成を行う連続焼成炉であって、
該回転式搬送手段が、両側壁より突出した一対の片持ちローラであることを特徴とする連続焼成炉。
【請求項2】
焼成治具の両端部を各々支持する一対の片持ちローラ間に連結軸を設けたことを特徴とする請求項1記載の連続焼成炉。
【請求項3】
該回転式搬送手段が、搬送中の焼成治具が蛇行することを防止する蛇行防止手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の連続焼成炉。
【請求項4】
該片持ちローラが、駆動装置に接続されないフリーローラであって、
該連続炉の入口部に設けたプッシャーからの押圧力により該焼成治具を搬送することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の連続焼成炉。
【請求項5】
該片持ちローラが、駆動装置に接続された駆動式ローラであって、
該駆動式ローラの回転駆動により、該焼成治具を搬送することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の連続焼成炉。
【請求項6】
入口部および出口部に扉を備えることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の連続焼成炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−75190(P2011−75190A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226635(P2009−226635)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(591076109)エヌジーケイ・キルンテック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】