説明

連続鋳造設備のガスカッター装置昇降モーターの電磁ディスクブレーキの手動強制解放装置

【課題】 連続鋳造設備のガスカッター装置の昇降モーターのブレーキを手動で短時間で強制解放し、作業の危険を減らすしたブレーキの手動強制解放装置を提供する。
【解決手段】 モールドから引抜いた鋳片を指定長さに切断するガスカッター装置本体2を切断当初の位置に昇降させる昇降モーターにおいて、ブレーキ外枠35に設けた取付け治具28の他端に支点ピン26を設け、支点ピン26により回動する円弧形門型フレーム24を設け、この上部背面に当接するカム23を操作レバー21で回転自在に取付け、操作レバー21によるカム23の回転により円弧形門型フレーム24の上端部を前方に傾け、円弧形門型フレーム24の支点ピン26の下部に設けた作動ピン27をブレーキ外枠35の前端のブレーキ制動板13aとブレーキ制動板13bの間に挿着し、作動ピン27の交付への回動でブレーキ制動板13bを押して隙間15cを設け、ブレーキを解放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造設備のモールドから引抜いた鋳片を切断するガスカッター装置本体を昇降させる昇降モーターの電磁ディスクブレーキの故障発生時に、速やかに電磁ディスクブレーキを手動で強制解放する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に、連続鋳造設備における引抜いた鋳片を切断する従来のガスカッター装置本体とその昇降モーターについて説明する。
【0003】
連続鋳造では、図4のように、モールド1から鋳片1aをピンチロール1bで引抜き、ピンチロール1bの下端で鋳片1aを指定された長さに切断するために、ガスカッター装置本体2が鋳片1aの側部に設置されている。
【0004】
そのガスカッター装置本体2は、図5の(a)に示すように、モールドから引き抜かれた鋳片1aが指定の長さ位置にくると、図5の(b)に示すクランプ装置3が鋳片1aを挟みこむと同時に、ガスカッター装置本体2を駆動する昇降モーター20に配設の、クラッチ5の固定鉄心6の電磁コイルに電流が流れ、固定鉄心6が電磁石となり、クラッチ5を可動する可動鉄心7が電磁コイルを有する固定鉄心6に吸着される結果、クラッチ5が切れた状態になる。昇降モーター20に配設のクラッチ5が切れると、図5の(a)に示す昇降用モーター20のディスクブレーキからなるブレーキ本体9が利いた状態となる。この結果、図5の(b)に示すクランプ装置3は鋳片1aをクランプしてぶら下がる状態で鋳片1aと同じ速度でトーチ4が下方に移動しながら、トーチ4を駆動するトーチ駆動モーター34の正転動作により、トーチ4が前進して鋳片1aの切断を開始する。この状態を保って鋳片1aおよびクランプ装置3は下方に移動しながらトーチ4を駆動させるモーター34の正転動作によってトーチ4の前進動作で鋳片1aを切断する。
【0005】
鋳片1aの切断が終了すると、トーチ4を駆動させるモーター34が逆転動作してトーチ4が後退し定位置まで戻ると、クランプ装置3のクランプが鋳片1aから外れ、昇降モーター20のディスクブレーキからなるブレーキ本体9の、図5の(d)に示す、固定鉄心10の電磁コイルに電流が流れ、電磁コイルを有する固定鉄心10が電磁石となって、可動鉄心11が電磁コイルを有する固定鉄心10の側へ吸着されて、ブレーキ本体9が解放される。この動作と同時にブレーキ本体9のクラッチ5の固定鉄心6の電磁コイルに流れる電流が0になって吸着力がなくなる結果、可動鉄心7がクラッチの制動ばね8の力で押され、ブレーキ本体9のクラッチ5が接続される。ここで、図5の(c)に示すクラッチ5を有する機構と図5の(d)に示すブレーキ本体9を制御するブレーキ制御ユニット19を有するモーター機構を示す。
【0006】
このクラッチ5の接続により、図5の(a)に示す、ガスカッター装置本体2の昇降モーター20が動きだしてチェーン33を巻上げ、ガスカッター本体装置2を切断初期の位置まで上昇させる。ガスカッター本体装置2が切断初期の位置に到達すると、昇降モーター20が停止し、図5の(d)に示すように、ディスクブレーキからなるブレーキ本体9のブレーキ固定鉄心10の電磁コイルに流れる電流が0になって吸着力がなくなり、ブレーキ本体9のブレーキ可動鉄心11がブレーキ制動ばね12の力で押されて、ブレーキが利いた状態になって、ガスカッター装置本体2が停止する。ガスカッター装置本体2は、鋳片1aが所定の長さに切断される様に、鋳片1aが指定された長さに下降するまで待機する。その指定された長さに鋳片1aが達すると、図5の(a)に示すように、クランプ装置3で鋳片1aをクランプして切断を開始しながら鋳片と共に下降する。
【0007】
ところで、昇降モーター20のブレーキ本体9が故障すると、鋳片切断が完了してもガスカッター本体装置2は切断当初の位置まで上昇不能となり、次の切断工程に進めず、生産阻害が発生する。
【0008】
ブレーキ本体9が故障する原因は、ブレーキ制御ユニット19の熱による焼損と、ブレーキ本体9の機械的不良の2つである。
【0009】
どちらの故障の場合も修理時間が大幅にかかる。前者の修理には、ブレーキ制御ユニットの19の取替えを、後者の修理には、ガスカッター装置本体2を上昇させる昇降モーター20の取替えを、それぞれ実施しなければない。このために修理に多大な時間を費やすこととなり、連続鋳造設備を停止させなければならない。しかし、連続鋳造設備を停止させると生産に支障が出るので、取り替えまではディスクブレーキからなるブレーキ本体9を手動で強制解放して、ブレーキを外して、鋳片切断が完了したガスカッター本体装置2を切断当初の位置まで上昇させるしか方法がない。
【0010】
このためのブレーキ本体9の手動強制解放の従来の方法は下記のとおりである。
【0011】
図6の(a)に示すように、ディスクブレーキからなるブレーキ本体9にある2ヶ所の従来のブレーキ手動強制解放ボルト15aおよび15bを先ず外し、スペーサー16を抜き取り、その後に、図6の(b)に示すように、再びこれらのブレーキ手動強制解放ボルト15aと15bを時計方向に回すことにより、ブレーキ手動強制解放ボルト15aおよび15bの先端の円錐部がねじ込まれてブレーキ制動板13bの背後をブレーキ固定鉄心10で支持されたブレーキ制動バネ12に抗してブレーキ可動鉄心11を移動させて押し拡げ、ブレーキライニング板14とブレーキ制動板13bの間に隙間15cを設けることにより、ブレーキ本体9は手動で強制解放される。このような従来のモーターのブレーキ本体9を手動で強制解放する装置はすでに出願されている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
ところで、この従来のモーターのブレーキ本体9を手動で強制解放する装置では、ブレーキ手動強制解放ボルト15aは見えない位置にあり、かつ作業し難い位置にある。したがって、このブレーキ手動強制解放ボルト15aの機構を連続鋳造設備の引抜き手段のピンチロール1bの下部のガスカッター装置本体2による鋳片1aの切断に採用すると、解放ボルト15aが見えない状況下での手探り作業となる。それにブレーキ本体9を手動で強制解放する作業の際には、ガスカッター装置本体2の下に入って行う作業であるので、時間が掛かれば、それだけリスクも増えて危険である。
【0013】
このように、従来のブレーキ本体9の手動強制解放の手段を連続鋳造設備に適応した場合、機構的な制約や操業上の制約が多く、故障対応の際に手間が掛かって危険でもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−124116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
連続鋳造設備のモールドから引き抜かれた鋳片を切断するために引抜きラインに配置されたガスカッター装置本体を昇降させる昇降モーターにおいて、そのブレーキ本体が故障してブレーキが効いたままの状態になると、鋳片を切断しながら下降したガスカッター装置本体が切断当初の位置に上昇して戻らなくなり、モールドから引き抜かれた鋳片を指定された長さに切断することが不可能となる。このようになると、鋳造工程のみならずその後の製鋼工程も止めてしまうこととなる。そこでブレーキ本体の故障対応には迅速に対応しなければならない。しかし、電磁ディスクブレーキからなるブレーキ本体が故障すると、ブレーキ本体は昇降モーターと一体化して設けられているので、昇降モーター自体の取替えとなる。このために取替のために数時間が掛かってしまうので、生産に多大な影響を与える。
【0016】
そこで、仮処置として昇降モーターの電磁ディスクブレーキからなるブレーキ本体を手動で強制的に解放することによりブレーキをはずして、昇降モーターを運転可能としてガスカッター装置本体を当初の切断開始位置に上昇させるものとする。
【0017】
ところで、従来の電磁ディスクブレーキのブレーキ本体の手動強制解放ブレーキを手動で強制解放する手段では、その作業に時間が掛かるという問題がある。さらに作業場所が鋳片の引抜きラインのガスカッター装置本体の真下で行う作業であるので、強制解放する作業に時間が掛かると作業自体も危険が増えるという問題があった。
【0018】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記の問題を解消するために、電磁ディスクブレーキを手動で強制解放する作業時間の短縮することにより、作業自体の危険を減らすことができる連続鋳造設備のガスカッター装置昇降モーターの電磁ディスクブレーキの手動強制解放装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、連続鋳造設備でのガスカッター装置本体2の昇降モーター20のディスクブレーキ本体9を手動で強制解放する作業の時間短縮のため、ガスカッター装置本体2をモールド1から引抜き中の鋳片1aに引抜きラインに沿って昇降させる昇降モーター20において、電磁ディスクブレーキからなるブレーキ本体9を、ブレーキライニング板14を有するブレーキ制動板13aとブレーキ制動板13bから形成し、これらのブレーキ制動板13aのブレーキライニング板14にブレーキ制動板13bを対面して配設する。さらに、ブレーキ本体9の操作機構部として、ブレーキ制動板13aのブレーキライニング板14とブレーキ制動板13bとの間に、円弧形門型フレーム24の支点ピン26を支点として回動する作動ピン27を設置し、この作動ピン27の回動による押圧力によりブレーキ制動板13aのブレーキライニング板14に当接するブレーキ制動板13bをブレーキライニング板14から押し離すことで、ブレーキを解放するためのブレーキライニング板14とブレーキ制動板13bの間に隙間15cを設ける。
【0020】
一方、ブレーキ本体9の機構として、L形取付け治具30の短辺側の背面をブレーキ外枠35の右側壁の後壁35aにボルト31で取付け、さらにブレーキ制御板13aおよびブレーキ制御板13bの対面する面と平行にかつブレーキ制御板13bの右端上に、L形取付け治具30の長辺側の先端部分を設け、この先端部分にカム23の回転軸とした操作レバー支点ピン22を上方から取付ける。このカム23の側部にカム23と直角に設けたブレーキ手動強制解放操作レバー21を取り付ける。さらに、ブレーキ外枠35の側壁35bの右側壁の後部中央に取付けボルト29で取付け治具28の一端を取り付け、この取付け治具28の他端をブレーキ制動板13aまで水平に配置する。この取付け治具28の他端側に支点ピン26を設け、この支点ピン26をブレーキ制動板13aとブレーキ制動板13bの間に位置するものとする。さらに、この取付け治具28の支点ピン26を円弧形門型フレーム24の下端部に開口した支点ピン孔26aに嵌め込み、支点ピン26のまわりに円弧形門型フレーム24を回動可能とする。さらに、円弧形門型フレーム24の支点ピン26の下部に作動ピン27を内側に挿通して作動ピン27の長軸27aの先端をブレーキ制御板13aとブレーキ制御板13bの間に位置するものとする。さらに円弧形門型フレーム24の上部にはストッパー孔25aを設け、操作レバー21の回転をストップするストッパ−25を立設する。
【発明の効果】
【0021】
連続鋳造設備のガスカッター装置本体の昇降モーターのディスクブレーキであるブレーキ本体の故障発生の際、従来の方法では、ブレーキ本体にある2箇所のブレーキ手動強制解放ボルトを先ず外し、スペーサーを抜き、その後再び2箇所のブレーキ手動強制解放ボルトを時計方向に回す作業を行わねばならず、ディスクブレーキを手動で機械的に強制解放するために要する時間は15分程度掛かっていた。これに対して、本発明による手段では、ブレーキ本体の手動強制解放レバーを手動で90°回転する操作のみであるので、僅か数秒でブレーキ本体を手動で強制解放することが可能となり、したがって、鋳片の製造およびその後の鋼片の製造に支障をもたらすことが起こらなくなった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の実施形態のブレーキ強制解放装置をガスカッター装置の昇降モーターの電磁ディスクブレーキに設置した右側面図、(b)は(a)の電磁ディスクブレーキを強制解放する操作レバーの平面図。
【図2】(a)は図1の(a)のブレーキ強制解放装置の電磁ディスクブレーキを手で強制解放したときの右側面図、(b)は(a)の電磁ディスクブレーキの手動強制解放中の操作レバーの上面図。
【図3】(a)はブレーキ手動強制解放機構部の円弧形門型フレームの正面図および側面図、(b)はカムの平面図および側面図、(c)は取付け治具の平面図および側面図。
【図4】連続鋳造設備の引抜きラインのピンチロールの下部のガスカッター装置本体の配置図。
【図5】(a)はガスカッター装置本体による鋳片の切断時の側面図、(b)はクランプ装置の平面図、(c)はブレーキ手動強制解放機構のクラッチの平面図、(d)は昇降モータおよび電磁ディスクブレーキの平面図。
【図6】(a)は従来のブレーキ手動強制解放前のブレーキの模式的側面図、(b)は従来のブレーキ手動強制解放時のブレーキの模式的側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のディスクブレーキからなるブレーキ手動強制解放装置は、図1に示すように、その操作機構部として、ブレーキ手動強制解放操作レバー21およびカム23を有する。それらの取付けとして、先ずカム23の取付け治具である、図1の(a)に示す、L型取付け治具30の短辺側を、取付けボルト31でブレーキ外枠35の右側壁に取付け、さらにカム23を取付けるためのL型取付け治具30の長辺側に、操作レバー支点ピン22を取付け、ブレーキ手動強制解放操作レバー21を、図1の(b)に示すように、カム23の側部に設置する。
【0024】
それに加え、本発明の手段の新しいブレーキ強制解放機構部である円弧形門型フレーム24を、図1の(a)に示すように、L型取付け治具30の長辺側の先端の右側に設置する。このブレーキ手動強制解放機構部である、図3の(a)に示す、円弧形門型フレーム24の取付けとして、図1の(a)に示す右側面の取付け治具28の後端を取付けボルト29でブレーキ外枠35の右側面壁に取付け、取付け治具28の左方の先端側に支点ピン26を取付け、この支点ピン26に回動可能にブレーキ手動強制解放機構部である円弧形門型フレーム24を設置する。
【0025】
ブレーキ手動強制解放操作レバー21を手動で、図1の(b)に矢印で示す時計方向に90°回転すると、図1の(a)に示すストッパー25に当たるまでブレーキ手動強制解放操作レバー21が支点ピン22を支軸として矢印方向に回転する。そのブレーキ手動強制解放操作レバー21の回転により一体となってカム23も回転する。このカム23の回転によりブレーキ手動強制解放機構部である円弧形門型フレーム24の上部が、支点ピン26を支点として、カム23に押されて、図1の(a)の上部の矢印方向に移動する力が作用し、円弧形門型フレーム24の作動ピン27を有する下部が図1の(a)の下部の矢印方向に移動する力が作用して、図2の(a)に示すように円弧形門型フレーム24が支点ピン26を支点にして傾斜した状態となる。これらにおいて、支点ピン26の軸径は、ブレーキが利いた状態での制動板13aと13bの隙間とほぼ同等の寸法であり、支点ピン26の軸の長さはライニング板14に当接することなくブレーキ制動板13aおよびブレーキ制動板13bに挿入できる長さとなっている。
【0026】
図1の(a)に示すように、円弧形門型フレーム24が矢印方向に移動する力作用すると、作動ピン27がブレーキ制動板13bに当接してブレーキ制動板13bを図2の(b)に示す右側へ押圧する。この結果、ブレーキ制動板13aのブレーキライニング板14とブレーキ制動板13bが隙間15cを設けて離れ、ブレーキライニング板14に掛かる圧力が解放され、従来の方法の制動力を解放するブレーキ手動強制解放と同等の効果が得られて、ブレーキがきかなくなる。
【実施例1】
【0027】
2枚のブレーキ制動板13aとブレーキ制動板13bの間に隙間15cをあけて、ブレーキ本体9を手動で強制解放させる装置とするために、図6に示す従来の装置における上下から差込む2つのブレーキ手動強制解放ボルト15aおよびブレーキ手動強制解放ボルト15bを撤去した。この撤去した2つのブレーキ手動強制解放ボルト15aおよび15bに代えて、図1の(a)に示すように、取付けボルト29でブレーキ外枠の後壁35aに取付けた、図3の(c)に示す取付け治具28の先端の支点ピン26に、図3の(a)に示す新しいブレーキ強制解放機構部である円弧形門型フレーム24を設置した。
【0028】
この設置したブレーキ手動強制解放機構部の操作および動作原理は、図1の(b)に示すようにブレーキ手動強制解放操作レバー21を時計方向に回転し、図1の(a)の上部に示すように、ブレーキ手動強制解放操作レバー21がストッパー25に当接するまで、支点ピン22を支点として90°回転した。このブレーキ手動強制解放操作レバー21の回転でカム23も回転した。このブレーキ手動強制解放操作レバー21の回転により、カム23が円弧形門型フレーム24の上部を、図1(a)の左側に押して図2の(a)に示すように傾けた。一方、図1(a)の下部の矢印のように、支点ピン26を支点として円弧形門型フレーム24の作動ピン27が支点ピン26を支点としてブレーキ制動板13bの内面を矢印方向の側へ押した。この結果、ブレーキライニング板14とブレーキ制動板13bに隙間15cが形成されて離間した。この離間によりライニング板14にブレーキ制動板13bから掛かる圧力が解除された。これは、既に上記したように、図6の(b)に示す制動力を解放する従来方法のブレーキ手動強制解放装置によるブレーキライニング板14とブレーキ制動板13bの間に隙間15cが形成されて離間する動作と同様で、同じようにブレーキが手動で強制解放された。なお、図2(a)の矢印はブレーキ手動強制解放を中止して隙間15cを解消してブレーキを掛けた状態とするときの円弧形門型フレーム24の移動方向を示している。
【0029】
次に、図4に示す連続鋳造設備のモールド1の下部の引抜きラインのピンチロール1bの下部に配設したガスカッター装置本体2において、ブレーキ手動強制解放引抜きレバー21を図2の(b)の矢印方向に回転して、カム23により円型門形フレーム24の上部を図2の(a)の右向きの矢印の方向に戻して直立させることで、モールドから引抜いた鋳片1aを、図5の(a)に示すように、クランプ装置3でクランプして昇降モーター20でしながら、トーチ駆動モーター34でトーチ4を前方へ進めながら鋳片1aを切断した。しかしながら、鋳片1aの切断を終えたところで、図5の(d)に示す昇降モーター20の電磁ディスクブレーキであるブレーキ本体9に故障が発生した。そこで、昇降モーター20を調べると、ブレーキ本体9のブレーキライニング板14を有するブレーキ制動板13aとブレーキ制動板13bとの間に隙間15cが形成されずに、クラッチ5が利いた状態のままとなって昇降モーター20が停止していた。このため、再び引抜きラインの鋳片1aを切断するために、トーチ4を上昇させて当初の切断開始位置に戻すことができなかった。そこで、図1の(b)に示すように、ブレーキ手動強制解放操作レバー21をストッパー25に当たるまで矢印の時計方向へ回転した。このブレーキ手動強制解放操作レバー21の時計方向への回転により、図2の(a)に示すように、ブレーキ制動板13aとブレーキ制動板13bとの間に隙間15cが形成され、ガスカッター装置本体2の昇降モーター20が回転を始めだし、ガスカッター装置本体2が上昇し始め、切断初期の位置まで上昇した。そこで、クランプ装置3で鋳片1aをクランプさせて下降しながら、ガスカッター装置本体2のトーチ4で再び鋳片1aを切断させた。
【0030】
上記の連続鋳造設備でのガスカッター装置本体2の昇降モーター20の電磁ディスクブレーキであるブレーキ本体9の手動強制解放作業の時間は、約2秒であったため、生産に支障は生じることはなかった。
【符号の説明】
【0031】
1 モールド
1a 鋳片
1b ピンチロール
2 ガスカッター装置本体
3 クランプ装置
4 トーチ
5 クラッチ
6 クラッチ固定鉄心
7 クラッチ可動鉄心
8 クラッチ制動ばね
9 ブレーキ本体
10 ブレーキ固定鉄心
11 ブレーキ可動鉄心
12 ブレーキ制動ばね
13a ブレーキ制動板
13b ブレーキ制動板
14 ブレーキライニング板
15a 従来のブレーキ手動強制解放ボルト
15b 従来のブレーキ手動強制解放ボルト
15c 隙間
16 スペーサー
18 ブレーキカバー
19 ブレーキ制御ユニット
20 昇降モーター
21 ブレーキ手動強制解放操作レバー
22 操作レバー支点ピン
23 カム
24 円弧形門型フレーム
25 ストッパー
26 支点ピン
26a 支点ピン孔
27 作動ピン
27a 長軸
28 取付け治具
29 取付けボルト
30 L形治具
31 ボルト
32 バランスウェイト
33 チェーン
34 トーチ駆動モーター
35 ブレーキ外枠
35a 後壁
35b 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造設備のモールド(1)から鋳込まれた鋳片(1a)を引抜きラインのピンチロール(1b)の下部で指定長さに切断するためのガスカッター装置本体(2)を切断当初の位置に昇降させる昇降モーター(20)のブレーキ本体(9)において、ブレーキ外枠(35)に一端を取り付けた取付け治具(28)の他端に支点ピン(26)を配設し、該支点ピン(26)を支点として回動しうる円弧形門型フレーム(24)を設け、該円弧形門型フレーム(24)の上部背面に押圧して当接するカム(23)を操作レバー(21)で回転自在として取付け治具(30)に設け、操作レバー(21)によるカム(23)の回転により円弧形門型フレーム(24)の上端部を押して前方に回動可能とし、さらに円弧形門型フレーム(24)の支点ピン(26)の下部に作動ピン(27)を設け、該作動ピン(27)をブレーキ外枠(35)の前端に設けたブレーキ制動板(13a)とブレーキ制動板(13b)の間に挿着し、支点ピン(26)を支点とした円弧形門型フレーム(24)の下部の作動ピン(27)の後方への回動により、ブレーキ制動板(13b)に圧力を掛け、該圧力によりブレーキ制動板(13a)に固着したブレーキライニング板(14)とブレーキ制動板(13b)の間に隙間(15c)を設け得るものとした、ブレーキ制動板(13a)に設けたブレーキライニング板(14)による制動力を解放する操作機構部からなることを特徴とする電磁ディスクブレーキの手動強制解放装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−130923(P2012−130923A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282486(P2010−282486)
【出願日】平成22年12月19日(2010.12.19)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】