説明

連続雰囲気焼鈍炉出入口のシール方法及びシール設備

【課題】 連続雰囲気焼鈍炉でストリップを焼鈍するための連続雰囲気焼鈍
炉出入口のフェルトシールによるストリップ表面の疵付きを防止する連続雰囲
気焼鈍炉出入口のシール方法及びシール設備の提供。
【解決手段】 連続雰囲気焼鈍炉出入口に配置されて鋼板(1)を挟み込む
一対のシールロール(11、21)を回転する工程を有し、該シールロール(
11、21)の回転速度を、その表面に巻回されたシール材(10)の周速度
が鋼板(1)の走行速度に対して0.002%〜5%となる様に設定されてい
る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板(ストリップ)を焼鈍する連続雰囲気焼鈍炉の出入口のシー
ル方法及びシール設備に関する。
【背景技術】
【0002】
連続雰囲気焼鈍炉の出入口は、図9、図10(出口を示す)に示すように、
焼鈍炉内にあるストリップ1が大気に送出される出口Dから炉内の雰囲気ガス
が漏出しないようなシールが行われている。
【0003】
従来のシール設備では、鋼板1に対し両側からフェルトや不織布類(以下フ
ェルトと称す。)10、10をロール11及び21によりストリップ1の面の
垂直方向へ挟み込んで押し付け、炉内のガス圧力の大気放出を封じるようにし
ている。
フェルト10、10の押し付けは、シリンダ6のピストン伸縮によって作動
するリンク機構L8がロール11及び21を接/離するように構成されている。
【0004】
そして、フェルト10、10と接触する鋼板表面に疵が発生した場合、ロー
ル11または21の軸端部7にハンドルを取付けてフェルト10、10を手動
にて断続的に回転させ、未使用部分を接触させるようにしている。また、シリ
ンダ6の元圧を調整してリンク機構L8によりロール11及び21の間のシー
ル圧力を加減し炉内のガス圧力を保持するようにしている。
【0005】
上記のようなシール設備では、ストリップ1とフェルト10、10が接触し
、シリンダ6の力により押し付けてシール性を高めている。雰囲気焼鈍炉内で
はストリップ1と雰囲気ガスとの反応により微細な異物が発生するが、異物そ
のものが圧力の低い出入口付近に集まり易く、またストリップ1の表面に付着
した異物は直接に接触するフェルト10、10が回収し、結果としてフェルト
10、10の表面へ滞留あるいは蓄積する。そうした異物は、ストリップ1の
表面と接触し、擦り傷を発生させてしまう、という問題を有している。
【0006】
シールの先行技術として、連続炉の出入口部に弾性回転ロール及びロール表
面に圧接する可撓性シール材を設け、ストリップ幅方向へ移動調整可能とした
設備でシール性を向上し、炉内ガス漏洩による操業上の危険を防止する提案が
されている(特許文献1)。
【0007】
また、雰囲気焼鈍炉の出入口において金属帯(ストリップ)の走行速度と同
速の弾性回転ロールを用い、金属帯表面に固定された弾性シールパッドへの押
圧力を検出して最適なシールを可能とする技術が提案されている(特許文献2
)。
【0008】
さらに、シールロールをゴムチューブの圧力により微小移動させて、薄膜ス
トリップの焼鈍炉の出入口シール装置を非接触でシール性を優れたものにする
技術が提案されている(特許文献3)。
【0009】
しかし、上記の従来技術(特許文献1〜特許文献3に開示された従来技術)
は、炉内ガスのシールに関するもので、前記の従来技術における、ストリップ
1に生じる擦り傷の発生あるいは擦り傷の拡大防止に関する技術ではない。
従って、上述した様な問題点(異物がストリップの表面と接触し、擦り傷を
発生させてしまう、という問題)を解決することは出来ない。
【特許文献1】特開平9−194951号公報
【特許文献2】特開平7−331339号公報
【特許文献3】特開平6−184648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述した従来の問題点に鑑みて提案されたものであり、連続雰囲気
焼鈍炉でストリップを焼鈍するための連続雰囲気焼鈍炉出入口のフェルトシー
ルによるストリップ表面の疵付きを防止する連続雰囲気焼鈍炉出入口のシール
方法及びシール設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の連続雰囲気焼鈍炉出入口のシール方法は、連続雰囲気焼鈍炉出入口
に配置されて鋼板(1)を挟み込む一対のシールロール(11、21)を回転
する工程を有し、該シールロール(11、21)の回転速度を、その表面に巻
回されたシール材(10)の周速度が鋼板(1)の走行速度に対して0.00
2%〜5%となる様に設定されている(請求項1)。
上記において、シール材の周速度とはシールロールの外周に沿ってシール材
が走行する速度を言う。尚、上記0.002%〜5%は、絶対値であって、シ
ール材の周速度と鋼板の走行速度とが同一方向である場合と、逆方向である場
合とを含む。
ここで、シール材は、例えばフェルトが好ましい。
【0012】
前記一対のシールロール(11、21)を相互に押し付ける押圧機構(M8
)は流体シリンダ(61、63)を有しており、該流体シリンダ(61、63
)内の圧力を計測する工程と、該工程で計測された流体シリンダ(61、63
)内の圧力を所定値に維持する様に、流体シリンダ(61、63)への圧力流
体の供給を制御する圧力流体供給制御工程、とを有していることが好ましい(
請求項2)。
ここで、流体シリンダはエアシリンダが好ましく、圧力流体は圧縮エアが好
ましい。ただし、作動の制御が可能であれば、エアシリンダにかえて液体シリ
ンダでもよく、電磁モータであってもよい。
【0013】
前記鋼板(1)の走行速度を計測する工程と、シールロール(11、21)
表面に巻回されたシール材(10)の周速度が計測された鋼板速度の0.00
2%〜5%となる様に、制御手段(22A)によってシールロール(11、2
1)の回転速度を調節する工程、とを有していることが好ましい(請求項3)

【0014】
本発明の連続雰囲気焼鈍炉出入口のシール設備は、連続雰囲気焼鈍炉出入口
に配置されて鋼板(1)を挟み込む一対のシールロール(11、21)を有し
、該シールロール(11、21)は、その表面に巻回されたシール材(12)
の周速度が鋼板(1)の走行速度に対して0.002%〜5%となる角速度で
回転する様に構成されている(請求項4)。
【0015】
前記一対のシールロール(11、21)を相互に押し付ける押圧機構(M8
)を有し、該押圧機構(M8)は、流体シリンダ(61、63)と、該流体シ
リンダ(61、63)のピストンに連結され且つピストンが縮小すると前記一
対のシールロール(11、21)を相互に押し合う方向へ移動するリンク機構
(L8)と、前記流体シリンダ(61、63)内の圧力を計測する圧力計測手
段(Ps)と、前記流体シリンダ(61、63)に圧力流体を供給する圧力流
体供給機構(23)と、制御手段(22)とを備えており、該制御手段(22
)は前記流体シリンダ(61、63)内の圧力が所定値を維持する制御を行う
様に構成されていることが好ましい(請求項5)。
【0016】
前記シールロール(11、21)を回転するシールロール回転機構(2D)
と、前記鋼板(1)の走行速度を計測する鋼板走行速度計測手段(Vs)と、
制御手段(22A)とを備えており、前記制御手段(22A)は、シールロー
ル(11、21)表面に巻回されたシール材(10)の周速度が鋼板走行速度
計測手段(Vs)で計測された鋼板速度の0.002%〜5%となる様に前記
シールロール回転機構(Rs)を制御する様に構成されていることが好ましい
(請求項6)。
【発明の効果】
【0017】
上述したような構成による本発明の効果は下記の通りである。
(a) 鋼板(1)を挟み込む一対のシールロール(11、21)を回転
する工程を有し、該シールロール(11、21)の回転速度を、その表面に巻
回されたシール材(10)の周速度が鋼板(1)の走行速度に対して0.00
2%〜5%となる様に設定されているので(請求項1)、シール材に付着した
鋼板の異物がシールロール面から移動して鋼板への疵付きを防止する利点があ
る。
ここで、シール材の周速度が鋼板(1)の走行速度に対して0.002%以
下ではシール材が固定されているのと同様であるため疵付きが生じ易く、5%
以上ではシール材の使用量が増加し過ぎるので宜しくない。
【0018】
(b) 一対のシールロール(11、21)を相互に押し付ける押圧機構
は流体シリンダ(61、63)を有しており、該流体シリンダ(61、63)
内の圧力を計測する工程と、該工程で計測された流体シリンダ(61、63)
内の圧力を所定値に維持する様に、流体シリンダ(61、63)への圧力流体
の供給を制御する圧力流体供給制御工程、とを有していれば(請求項2)、鋼
板(1)を挟み込む一対のシールロール(11、21)への圧力は流体シリン
ダの圧力制御によって所定値が得られ、ストリップの厚さとシール材の厚さに
関係なく一定の圧力で押し付けできる利点がある。
【0019】
(c) 前記鋼板(1)の走行速度を計測する工程と、シールロール(1
1、21)表面に巻回されたシール材(10)の周速度が計測された鋼板速度
の0.002%〜5%となる様に、制御手段(22A)によってシールロール
(11、21)の回転速度を調節する工程、とを有していれば(請求項3)、
制御手段(22A)によってシール材(10)の周速度を所定速度に確実に制
御することができる。
【0020】
(d) 連続雰囲気焼鈍炉出入口に配置されて鋼板(1)を挟み込む一対
のシールロール(11、21)を有し、該シールロール(11、21)は、そ
の表面に巻回されたシール材(12)の周速度が鋼板(1)の走行速度に対し
て0.002%〜5%となる角速度で回転する様に構成すれば(請求項4)、
シール材に付着した異物が鋼板のシールロール面から移動して、鋼板への疵付
きを防止する利点がある。
【0021】
(e) 一対のシールロール(11、21)を相互に押し付ける押圧機構
(M8)は、流体シリンダ(61、63)と、該流体シリンダ(61、63)
のピストンに連結され且つピストンが縮小すると前記一対のシールロール(1
1、21)を相互に押し合う方向へ移動するリンク機構(L8)と、前記流体
シリンダ(61、63)内の圧力を計測する圧力計測手段(Ps)と、前記流
体シリンダ(61、63)に圧力流体を供給する圧力流体供給機構(23)と
、制御手段(22)とを備え、該制御手段(22)は前記流体シリンダ(61
、63)内の圧力が所定値を維持する制御を行う様にすれば(請求項5)、鋼
板(1)を挟み込む一対のシールロール(11、21)への圧力は流体シリン
ダ(61、63)の圧力制御によって、確実に所定値が得えられるという利点
がある。
【0022】
(f) シールロール(11、21)を回転するシールロール回転機構(
Rs)と、前記鋼板(1)の走行速度を計測する鋼板走行速度計測手段(Vs
)と、制御手段(22A)とを備え、前記制御手段(22A)は、シールロー
ル(11、21)表面に巻回されたシール材(10)の周速度が鋼板走行速度
計測手段(Vs)で計測された鋼板速度の0.002%〜5%となる様に前記
シールロール回転機構(Rs)を制御する様に構成されていれば(請求項6)
、制御手段(22A)の制御によって、シール材(10)の周速度を高精度に
て所定の速度に制御することができる。それにより、鋼板表面の疵付きを確実に
防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2は本発明の連続雰囲気焼鈍出入口のシール設備の第1実施形態
を示している。ここで、入口側と出口側は実質的に同じであり、図示の実施形
態では出口側について説明する。
【0024】
図1はシール設備の側面図を、図2は図1のX矢視正面図を示している。
図1及び図2において、帯状の鋼板であるストリップ1は図示しない手段に
よって炉内から大気側の出口Dに向けて走行するように構成され、ストリップ
1は平面に垂直方向に一対のシールロール11、21によって挟み込まれてい
る。
【0025】
シールロール11、21のそれぞれの外径の表面にシール材10が巻回され
ていて、シールロール11に巻回されるシール材10はシールロール11の回
転に連れられて送出軸13から送出され、巻取軸15に巻取られるよう構成さ
れている。
同様に、シールロール21に巻回されるシール材10はシールロール21の
回転に連れられて送出軸23から送出され、巻取軸25に巻取られるよう構成
されている。
【0026】
図1を参照して、シールロール11、21はそれぞれが単独なシールロール
回転機構である駆動系2Dによって駆動されるよう構成されている。
駆動系2Dは、シールロール11、21にそれぞれ直結するユニバーサルジ
ョイント付の駆動軸5と、噛合いクラッチ4と、減速機3と、サーボモータ2
、とで構成されている。
【0027】
そして、サーボモータ2によってシールロール11が(以降、必要がない限
りシールロール11のみについて説明する。)自在の回転速度で回転可能にな
されていて、シール材10の周速度即ちシールロール11の外径、外周に沿っ
て走行する速度が所定のストリップ1の走行速度の0.002%〜5%となる
ように構成されている。
【0028】
シールロール11の両端部は、流体シリンダ61、63とそれぞれに係合す
るリンク機構L8に係合されていて、シリンダ61、63の縮、伸によってシ
ールロール11が挟み押圧/離反されるように構成されている。本例では流体シ
リンダ61、63は、エアシリンダが使用されている。
シールロール11、21の近接/離反による駆動軸5の軸心の移動は駆動軸5
に設けられたユニバーサルジョイントによって可能になっている。
【0029】
上記構成の第1実施形態の作用を説明する。
連続雰囲気焼鈍炉で焼鈍され、炉の出口から大気に向って走行し、送出され
るストリップ1をシール材10を巻回した一対のシールロール11、21が挟
み込んで回転する(シールロールを回転する工程)。
【0030】
そのシールロール11、21の回転速度(角速度)を、ストリップ1の走行
速度に対してシール材10の速度を0.002%〜5%の低速で走行させる(
シール材を所定の低速で走行させる工程)。
ここで、シール材10の周速度或いは移動速度が、鋼板1の走行速度に対し
て0.002%以下では、シール材10の移動速度が遅過ぎて、シール材10
の同一箇所が鋼材と接触するのと同等の結果となってしまうので、シール材鋼
板への疵付きが発生してしまう。一方、5%以上では疵付き防止の効果に対して
、シール材10の使用量が増加してしまうので、コスト的に得策でない。
【0031】
そして、ストリップ1に付着している異物をシール材10に移動させるとと
もに、異物を保持したシール材10をストリップ1との接触面から移動させる

このようにして、ストリップ1に付着していた異物がシール材10に移動し
、シール材10に移動したその異物がシール材10の走行によって移動しスト
リップ1を疵付けることを防止する。
なお、入口側も出口側と実質的に同じである。
【0032】
図3、4は本発明の連続雰囲気焼鈍出入口のシール設備の第2実施形態を示
している。便宜上、出口側について、第1実施形態と異なる部分を主体にして
説明する。
図3及び図3のX1矢視正面を示す図4において、流体シリンダ61(図3
においては63)にシリンダ内の流体圧を検出する圧力センサPsが取付けら
れ電線Lpによって制御手段である制御装置22に連結されている。
【0033】
また、流体シリンダ61(図3においては63)と圧力流体供給機構の、本
例では圧縮空気タンク23、とは調整弁24を介して管T23で連結されてい
る。調整弁24は圧縮空気タンク23から流体シリンダ61に圧力流体である
高圧エアを供給して加圧する機能と、流体シリンダ61の圧力を低減するため
の大気放出機能とを有している。
【0034】
制御装置22は、圧力センサPsによって検出された流体シリンダ61の内
圧が、シールロール11、21がシール材10をストリップ1に押圧する所定
の押圧力を維持するように調整弁24を制御する機能を有している。
【0035】
符号M8は、ストリップ1を挟み込んでシールロール11、21を相互に押
し付ける押付機構であって、シリンダ61(63)と、リンク機構L8と、前
記の圧力センサPsと、圧縮空気タンク23と、調整弁24と、制御装置22
と、それらを連結する線(Lp、L22)、管(T23)とで構成されている

上記以外は第1実施形態と同じである。
【0036】
上記構成の第2実施形態の固有の作用を図5のフローチャートによって説明
する。
連続雰囲気焼鈍炉で焼鈍され、炉の出口から大気に向って走行し、送出され
るストリップ1をシール材10を巻回した一対のシールロール11、21が挟
み込んで回転する(シールロールを回転する工程)。
【0037】
そのストリップ1をシール材10を巻回した一対のシールロール11、21
を所定の押し付け力で相互に押し付けるには、まず、シリンダ61(63)の
内圧を圧力センサPsで検出する(ステップS1)。この工程がシリンダ内の
圧力を計測する工程である。
【0038】
ついで、そのシリンダ内の圧力が、炉内ガスを外部に放出しない所定値であ
るか否かを制御装置22によって比較確認する(ステップS2)。
【0039】
シリンダ内の圧力が所定値より低い場合は押し付け力不足による炉内ガスの
放出の不具合が生じるので、制御装置22が圧力センサPsの検知圧に基づい
て調整弁24を制御してシリンダ内の圧力を加圧させ所定値にする(ステップ
S3)。そしてステップS6に進む。
【0040】
シリンダ内の圧力が所定値内にあれば、そのシリンダ内の圧力を維持させる
(ステップS4)。即ち、制御装置22はその状態の維持を指示する。そして
ステップS6に進む。
【0041】
シリンダ内の圧力が所定値より高い場合は過圧による不具合が生じるので、
制御装置22が圧力センサPsの検知圧に基づいて調整弁24を制御してシリ
ンダ内の圧力を減圧させ所定値にする(ステップS5)。そしてステップS6
に進む。
上記におけるステップS3、S4、S5が圧力流体供給制御工程である。
なお、圧力制御については、なめらかなフィードバックバック制御によって
、圧力の急変がないようにすることが肝要である。
【0042】
ステップ6では、炉の運転が終了したか否かを判断し、終了であれば制御を
完了し、未了であればステップS1に戻る。
【0043】
このような圧力制御の結果を制御装置22に保存させることによってストリ
ップ1に対する最適圧力の再現が可能になる。
【0044】
図6、7は本発明の連続雰囲気焼鈍出入口のシール設備の第3実施形態を示
している。出口側について第2実施形態と異なる部分を主に、説明する。
図6において、シールロール回転機構である駆動系2Dは第1実施形態と同
様に、シールロール11にそれぞれ直結するユニバーサルジョイント付の駆動
軸5と、噛合いクラッチ4と、減速機3と、サーボモータ2、とで構成されて
いる。
【0045】
そして、サーボモータ2によってシールロール11が(以降、必要がない限
りシールロール11のみについて説明する。)自在の回転速度で回転可能にな
されていて、後記する制御装置22Aによって所定値の回転速度(角速度)で
回転するように構成されている
【0046】
図6及び図6のX2矢視正面を示す図7において、ストリップ1の走行速度
を計測するための鋼板走行速度計測手段である速度センサVsがストリップ1
を走行させる明示しない装置に取付けられ、電線Lvによって制御手段である
制御装置22Aに連結されている。
【0047】
また、シールロール11にシール材10の周速度を検知するためのロール1
1の回転速度計測センサNsが取付けられ、電線Lnによって制御装置22A
に連結されている。
【0048】
制御装置22Aは、速度センサVsと回転速度計測センサNsとからの計測
データに基づいて、シール材10の周速度即ちシールロール11の外径、外周
に沿って走行する速度がストリップ1の走行速度の0.002%〜5%となる
ように駆動系2Dのサーボモータ2を制御する機能を有して構成されている。
上記以外の構成、機能は第2の実施形態と同じである。
【0049】
上記構成の第3実施形態の固有の作用を図8のフローチャートによって説明
する。
連続雰囲気焼鈍炉で焼鈍され、炉の出口Dから大気に向って走行し、送出さ
れるストリップ1をシール材10を巻回した一対のシールロール11、21が
挟み込んで回転する(シールロールを回転する工程)。
【0050】
そのストリップ1の走行速度を速度センサVsによって検出し(走行速度を
計測する工程)、同時にシールロール11の回転速度を回転速度計測センサN
sによって検出する。そして、シールロール11の回転速度からシールロール
11の周速度に換算する。(ステップS11)。
【0051】
ついで、シールロール11の周速度がストリップ走行速度の所定値である0
.002%〜5%にあるか否かを比較確認する(ステップS12)。
【0052】
シールロール11の周速度がストリップ走行速度の0.002%以下であれ
ば、制御装置22Aが駆動系2Dのサーボモータ2の回転速度を増速して所定
値にするように制御する(ステップS13)。そしてステップS16に進む。
【0053】
シールロール11の周速度がストリップ走行速度の0.002%〜5%内で
あれば、駆動系2Dのサーボモータ2の回転速度をそのまま維持する(ステッ
プS14)。そしてステップS16に進む。
【0054】
シールロール11の周速度がストリップ走行速度の5%以上であれば、制御
装置22Aが駆動系2Dのサーボモータ2の回転速度を減速して所定値にする
ように制御する(ステップS15)。そしてステップS16に進む。
上記のステップS13、14、15がシールロールの回転速度を調節する工
程である。
【0055】
ステップS16では、炉の運転が終了したか否かを判断し、終了であれば制
御を完了し、未了であればステップS11に戻る。
【0056】
上記設備構成とシール方法による効果を実施例によって説明する。
以下の実施例では
(1) シール材の送り速度の効果を、連続光輝焼鈍炉(BA炉)の出入
口に本発明のシール設備を設置し、ステンレス鋼板(厚さ0.8mm)の連続
通板(走行)を行い、炉内ガスのシール性及び鋼板表面の耐疵付き性について
シール装置の送り速度を変更しながら評価を行った。シール材として、羊毛フ
ェルト(厚み13mm)と不織布で比較した。
耐疵付き性の評価については片側の面のみをCCDカメラ方式の連続疵検出器
を用いて実施した。
その結果は表1に示す通りである。
【0057】
【表1】

【0058】
表1の結果より鋼板への耐疵付き性はシール材の送り速度が鋼板走行速度に
対し0.0020〜0.0027%の微速度で効果が得られた。
また、高速側では速度比率が3%と5%で効果が得られるが、5%を超える
とシール材の使用量が増加し、コスト的に不利になる。
【0059】
(2) 従来法との比較
連続光輝焼鈍炉(BA炉)の出入口に本発明のシール設備を設置し、ステン
レス鋼板(厚さ0.2〜1.5mm)の通板(走行)を行った。厚さの異なる
ステンレス鋼板を連続的に通板させ、シールの送り速度を鋼板走行速度の0.
003%とし、炉内ガスのシール性及び鋼板表面の疵付き性について従来法と
比較した結果を表2に示す。
シール材として羊毛フェルト(厚み13mm)を使用し、耐疵付き性の評価につ
いては片側の面のみをCCDカメラ方式の連続疵検出器を用いて実施した。
【0060】
【表2】

【0061】
表2の結果より、本発明は鋼板表面への疵付き性に対して有効であることは
明らかで、さらに炉内と大気とのシール性につても損ねていないことが解った

また、本発明によれば、板厚及びシール材の厚さに関係なく、一定の圧力で押
し付けることが可能であるが、従来法と同様に板厚が厚いものほど、耐疵付き
性は悪い傾向であった。
【0062】
上記とは別の実施例として、以下を確認した。
(1) 実機 連続光輝焼鈍炉の出入口に本発明のシール設備を設置し、ス
テンレス鋼板(板厚0.8mmt、板幅1020mm)をシール送り速度0.
002%で連続通板し、耐疵付き性及びシール性について良好な結果が得られ
た。
(2) 実機 連続光輝焼鈍炉の出入口に本発明のシール設備を設置し、ス
テンレス鋼板(板厚0.3mmt、板幅760mm)をシール送り速度0.0
1%で連続通板し、耐疵付き性及びシール性について良好な結果が得られた。
【0063】
以上のように、本発明は従来技術と比較して鋼板表面の耐疵付き性は明らか
に改善され、また鋼板の厚さに関係なくシール性の維持が可能である。
このような設備を設けることにより、シール性の維持しながら比較的安価に
耐疵付き性の改善がはかれることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の連続雰囲気焼鈍炉出入口のシール設備の第1実施形態の側面を示す図。
【図2】図1の正面図。
【図3】本発明のシール設備の第2実施形態の側面図。
【図4】図3の正面図に制御装置のブロック図を加えた図。
【図5】第2実施形態の作用を示すフローチャート。
【図6】本発明のシール設備の第3実施形態の側面図。
【図7】図6の正面図に制御装置のブロック図を加えた図。
【図8】第3実施形態の作用を示すフローチャート。
【図9】従来の連続雰囲気焼鈍炉出入口のシール設備の正面図。
【図10】図9の側面図。
【符号の説明】
【0065】
D・・・出口
2D・・シールロール回転機構、シールロール駆動系
Ps・・圧力計測手段、圧力センサ
Ns・・回転速度センサ
Vs・・鋼板走行速度計測手段、速度センサ
L8・・リンク機構
M8・・押圧機構
1・・・鋼板、ストリップ
2・・・サーボモータ
3・・・減速機
4・・・クラッチ
7・・・手動ハンドル
10・・シール材、フェルト
11、21・・シールロール
13、15・・軸
22、22A・・制御手段
23、23A・・圧力流体供給機構、空気タンク
24、24A・・弁
61、63・・シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続雰囲気焼鈍炉出入口に配置されて鋼板を挟み込む一対のシールロールを
回転する工程を有し、該シールロールの回転速度を、その表面に巻回されたシ
ール材の周速度が鋼板の走行速度に対して0.002%〜5%となる様に設定
することを特徴とする連続雰囲気焼鈍炉出入口のシール方法。
【請求項2】
前記一対のシールロールを相互に押し付ける押圧機構は流体シリンダを有し
ており、該流体シリンダ内の圧力を計測する工程と、該工程で計測された流体
シリンダ内の圧力を所定値に維持する様に、流体シリンダへの圧力流体の供給
を制御する圧力流体供給制御工程、とを有している請求項1の連続雰囲気焼鈍
炉出入口のシール方法。
【請求項3】
前記鋼板の走行速度を計測する工程と、シールロール表面に巻回されたシー
ル材の周速度が計測された鋼板速度の0.002%〜5%となる様に、制御手
段によってシールロールの回転速度を調節する工程、とを有している請求項1
、2の何れかの連続雰囲気焼鈍炉出入口のシール方法。
【請求項4】
連続雰囲気焼鈍炉出入口に配置されて鋼板を挟み込む一対のシールロールを
有し、該シールロールは、その表面に巻回されたシール材の周速度が鋼板の走
行速度に対して0.002%〜5%となる角速度で回転する様に構成されてい
ることを特徴とする連続雰囲気焼鈍炉出入口のシール設備。
【請求項5】
前記一対のシールロールを相互に押し付ける押圧機構を有し、該押圧機構は
、流体シリンダと、該流体シリンダのピストンに連結され且つピストンが伸長
すると前記一対のシールロールを相互に押し合う方向へ移動するリンク機構と
、前記流体シリンダ内の圧力を計測する圧力計測手段と、前記流体シリンダに
圧力流体を供給する圧力流体供給機構と、制御手段とを備えており、該制御手
段は前記流体シリンダ内の圧力が所定値を維持する制御を行う様に構成されて
いる請求項4の連続雰囲気焼鈍炉出入口のシール設備。
【請求項6】
前記シールロールを回転するシールロール回転機構と、前記鋼板の走行速度
を計測する鋼板走行速度計測手段と、制御手段とを備えており、前記制御手段
は、シールロール表面に巻回されたシール材の周速度が鋼板走行速度計測手段
で計測された鋼板速度の0.002%〜5%となる様に前記シールロール回転
機構を制御する様に構成されている請求項4、5の何れかの連続雰囲気焼鈍炉
出入口のシール設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−342406(P2006−342406A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170351(P2005−170351)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(591186718)高砂鐵工株式会社 (12)
【Fターム(参考)】