連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置
【課題】 高価な測定装置を使用することなく、連続X線発生源の軟線と硬線の割合を算出する方法及び装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 均一な物質に連続X線を照射して得られる透過厚と透過強度との関係を示す透過厚特性データを用いて、連続X線を単色X線の重ね合わせでモデル化して、軟線と硬線の割合を算出する。
【解決手段】 均一な物質に連続X線を照射して得られる透過厚と透過強度との関係を示す透過厚特性データを用いて、連続X線を単色X線の重ね合わせでモデル化して、軟線と硬線の割合を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエネルギー周波数分析方法および装置に関するものであり、特に、X線エネルギー周波数分析方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線源より放射されるX線は、高エネルギーから低エネルギーまでを含んでいる、いわゆる多色X線である。この各エネルギーのX線のうち、低エネルギーのものは被写体で大きく減衰し、高エネルギーのものは減衰率が低いと云う特性がある。従って、X線透過経路の被写体厚が厚い場合、透過後のX線は、低エネルギーのX線は大きく減衰するため、高エネルギーのX線だけが残ることになる。これを一般に線質硬化と云う。
【0003】
X線を被写体に照射して、X線撮影画像を取得する撮影技師は、より良い撮影を実現するために、照射エネルギーの何割が低エネルギーであり、また何割が高エネルギーなのかを知ることが、肝要である。高エネルギーだけならば、被写体を透過しても減衰しないため、X線撮影画像から被写体に関する情報が得られない。しかし、低エネルギーだけならば、被写体で大きく減衰するため、X線撮影画像から被写体に関する情報が多いが、その減衰分は、被写体がX線を吸収してしまうということであり、被写体にとって好ましくない。より良い撮影を実現するためには、適切な低エネルギーのX線と高エネルギーのX線が必要である。
【0004】
そのため、撮影技師は、X線照射装置を購入する際に付随する、代表的ないくつかの撮影条件に関するX線エネルギー周波数分布データを分析しながら、自らが決定した撮影条件で、どの程度の低エネルギーと高エネルギーが含まれるのかを予測しながら撮影していた。低エネルギーのX線とは、X線エネルギー周波数が低いX線であり、高エネルギーのX線とは、X線エネルギー周波数が高いX線である。
【0005】
あるいは、X線エネルギー周波数分析器を使用して、撮影技師が決定した撮影条件におけるX線エネルギー周波数分布を解析していた。X線エネルギー周波数分析器の例としては、たとえば、TMメディカル(株)のX線出力アナライザーなどがある。
【0006】
X線源とX線照射装置とX線発生装置とは、同一意味として使用している。
【0007】
従来例としては、例えば特許文献1をあげることが出来る。
【特許文献1】特公平03−027046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、代表的ないくつかの撮影条件に関するX線エネルギー周波数データを分析する方法では、撮影技師が自ら決定した撮影条件が、前記代表的ないくつかの撮影条件から大きく外れている場合、予測が困難であり、満足できるものではない。
【0009】
さらに、X線エネルギー周波数分析器を使用する方法は、分析器が高価であり、かつ、大雑把なX線のエネルギー周波数分布、たとえば、軟線と硬線との割合など、エネルギー周波数分解能が低い情報を取得する場合であっても、高価なX線エネルギー周波数分析器を使用するしか方法が無く、不便である。ここで、軟線とは低エネルギーのX線であり、硬線とは高エネルギーのX線である。
【0010】
どの撮影条件が良いかどうかを決定するために、市販されているX線エネルギー周波数分析器が持つ高い周波数分解能は不要であり、低い周波数分解能で、安価な装置および方法で十分である。
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みてなされたもので、高価な測定装置を使用することなく、連続X線発生源の軟線と硬線の割合を算出する方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、上記課題に対し、このような課題を解決するための手段をとる。
【0013】
すなわち、均一な物質に連続X線を照射して得られる透過厚と透過強度との関係を示す透過厚特性データを入力する透過厚特性データ入力部と、
連続X線をN種類(N>=1)の離散X線エネルギー周波数で近似する近似モデル式を作成する近似モデル式作成部と、
前記透過厚特性データと、近似モデル式と、を用いて、前記連続X線に含まれるN種類のX線エネルギー周波数の強度比と、前記N種類のX線エネルギー周波数の減弱係数と、を算出するX線エネルギー周波数分布算出部と、
前記X線エネルギー周波数分布算出部で算出した複数の算出データのうち、少なくとも強度比を含む算出データを出力するX線パラメータ出力部と、
を有することを特徴とし、
前記近似モデル式は、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比をFn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【0014】
【数1】
であること、を特徴とする。
【0015】
(効果)
X線撮影におけるX線管電圧、付加フィルタの選択は、照射されるX線エネルギーの周波数フィルタ設計であり、画像のコントラスト、被曝線量、X線管の負荷に影響を与える。X線エネルギーの周波数フィルタを設計する上で、照射されるX線のエネルギー周波数分布を知ることは非常に有用である。従来は、X線のエネルギー周波数分布を知るためには、高価なX線エネルギー周波数分析器を使用するしか方法が無かった。大雑把なX線のエネルギー周波数分布、たとえば、軟線と硬線との割合など、周波数分解能が低い情報を取得する場合であっても、高価なX線エネルギー周波数分析器を使用するしか方法が無かった。本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置によれば、周波数分解能は低いが、X線のエネルギー周波数分布を安価にかつ簡便に取得することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、従来は、照射されるX線のエネルギー周波数分布を取得するためには、高価なX線エネルギー周波数分析器を使用するしか方法が無かったが、周波数分解能は低いけれどもX線のエネルギー周波数分布を安価にかつ簡便に取得することが可能になる。たとえば、軟線と硬線の割合を調べたいときは、N=2として、本発明を実施することにより、軟線と硬線のX線エネルギー周波数の強度比が取得できる。X線撮影におけるX線管電圧、付加フィルタの選択は、照射されるX線エネルギーの周波数フィルタ設計であり、画像のコントラスト、被曝線量、X線管の負荷に影響を与えるため、照射されるX線のエネルギー周波数分布を安価にかつ簡便に 取得できるようになる本発明は、X線エネルギーの周波数フィルタを設計する上で非常に有用である。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、連続X線をどのような離散代表周波数で近似したのかを取得することが可能となる。請求項1に記載の発明では、N=2は、軟線と硬線という情報しか得られないが、たとえば1M[Hz]と2M[Hz]という具体的な周波数という情報として取得することが可能になり、さらに、X線エネルギーの周波数フィルタを設計する上で有用となる。なお、周波数*波長=光の速度という関係式があるため、周波数を波長に換算することも可能である。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、連続X線の軟線と硬線のX線エネルギー周波数の強度比が取得できる。X線エネルギーの周波数フィルタを設計する上で一番知りたい情報は、軟線と硬線の割合であり、N=2として、本発明を実施することにより、N>=3に必要な機能を排除して装置を最適化し、簡便かつ高速かつ安価な連続X線エネルギー周波数分布算出装置を提供できる、
請求項4に記載の発明によれば、近似モデル式が連続X線をよく近似しているかを測るための尺度として、最小2乗誤差を採用する。最小2乗誤差を最小化するアルゴリズムは、応用範囲が広いため、各分野でよく研究されており、実用化されている各種の高速かつ精度が高い、未知パラメータ推定アルゴリズムを適用することができ、本発明を、高速かつ高精度な装置または方法として実施することが可能になる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、水で作られたファントムや容器は、CTのキャリブレーション用の器具として広く普及しているため、本発明をさらに安価にかつ簡便に実施することが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、アクリルで作られたファントムや容器は、CTのキャリブレーション用の器具として広く普及しているため、本発明をさらに安価にかつ簡便に実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施の形態)
図1は、本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の構成を示す本実施例の機能ブロック図である。図6は、本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の動作を示すフローチャート図である。以下に、各ブロックの機能についてフローチャート順に説明する。
【0022】
図6における各ステップは、図4におけるコンピュータPCのハードディスクHDまたは光磁気ディスクMOまたはRAMまたはROMなどの記憶装置に格納されており、コンピュータPCのCPUが、各ステップを格納されている領域から読み出してフローチャート順に実行することにより、以下に記述するようなアクションが実行される。
【0023】
図4においてコンピュータPCはネットワークNを介して1つ或いは複数の透過厚特性データ生成装置MDに接続されている。透過厚特性データ生成装置は、後述する透過厚特性データ生成部を有し、透過厚特性データを生成する。または、不図示の透過厚特性データ生成装置により生成された透過厚特性データが、予めファイルサーバFSに保存されており、それを透過厚特性データ生成装置と同等に扱えるようにしても、本発明を全く同じように適用することができる。
【0024】
連続X線エネルギー周波数分布算出部2および連続X線エネルギー周波数分布表示部3はコンピュータPCおよびそれに内蔵された周辺機器により実現することができる。一例として、本発明による心胸郭比計測部2および心胸郭比表示部3は表示装置MONおよびハードディスクHDに格納されたプログラムとして実現することができる。この場合、不図示のユーザ入力によりハードディスクHDに保存されたプログラムがRAMに読み出され、前述したようにCPUがRAM内のプログラムを順次実行して前述した機能を実現し、処理の結果得られた画像が表示装置MONに表示される。ここで、表示装置MONは例えば、CRTモニタ、液晶ディスプレイ等を用いることができる。
【0025】
また、本発明を実施するプログラムはハードディスクHDに保存されることに限定される必要はなく、外部記憶装置としてコンピュータPCに接続された光磁気ディスクMO、あるいはネットワークを介して接続されるファイルサーバFSに記憶されるようにしてもよい。あるいは、本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出部2および連続X線エネルギー周波数分布表示部3は、部分あるいは全てをコンピュータPCに装着された専用のハードウェアACCとして実現するようにしてもよい。
【0026】
図6において、「はじめ」のトリガーは、図1における連続X線エネルギー周波数分布算出部2の透過厚特性データ入力部210が透過厚特性データEをX線エネルギー周波数分布算出部220に入力したことが合図となる。透過厚特性データEは、図1における透過厚特性データ生成部1が透過厚特性データEを出力して、透過厚特性データ入力部210に入力することにより、取得する。ここで透過厚特性データEとは、均一な物質に連続X線を照射して得られる透過厚と透過強度との関係を示す特性データであり、図9の(a)のような特性データである。この特性データは、たとえば均一な物質が水である場合、図9の(b)のように、連続X線源と、透過厚が既知の容器と、X線の強度を測定するX線センサーとを用いて、X線の入力強度とX線の出力強度を測定することにより、得られる。具体的には,透過厚が短い容器から長い容器まで様々な場合に関して、それぞれ、入力強度と出力強度の比を求めることにより、透過強度比を求めて、プロットすることにより、図9の(a)のような透過厚特性データを得る。入力強度は、透過厚が0の場合における出力強度である。または、図9の(c)のようにあらかじめ透過厚が様々な容器をひとまとめにしておいて、連続X線源と、デジタルラジオグラフィ(DR)などのX線センサー配列を用いて測定すれば、図9の(a)の場合に比較して、手間がかからず、また短時間で測定が可能である。このような均一な物質における透過厚特性データを調べるための容器は、市販されており、安価である。また、CT(コンピュータトモグラフィ)が置いてある施設の場合は、このCTのキャリブレーションをするための容器が備品として所持している場合が多く、このような場合は、このキャリブレーションをするための容器を透過厚特性データを取得するための容器として兼用することが可能である。均一な物質とは、本実施例では、水であるが、他の物質、たとえばアクリルであってもよいし、混合物質でもよい。均一な密度で構成されていて、透過厚に対して減衰することが観測できるような物質であればよい。たとえば、空気のように、透過厚に対して、ほとんど減衰しないような物質は、適さない。
【0027】
ステップS110では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、透過厚特性データEを用いて、最低周波数に対応する減弱係数Uaと最高周波数に対応する減弱係数Ucを求める。ここで、減弱係数とは、単位長さあたりにX線が減衰する程度を示す係数であり、物質に固有の係数である。また、X線エネルギー周波数に依存する。同一物質ならば、減弱係数は、一般に周波数が高い場合より周波数が低いの方が、大きい値になる。すなわち、図3のような連続X線エネルギー周波数分布である場合、最低周波数に対応する減弱係数Uaと、最高周波数に対応する減弱係数Ucは、Uc<Uaという関係にある。減弱係数Uaと減弱係数Ucは、透過厚特性データの透過厚強度を自然対数に変換した、図10のような片対数透過厚特性データを用いて、それぞれ、最大傾斜、最小傾斜を求めることにより、算出する。図9のような透過厚特性データにおける透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度比をI(x)とすると、
Ua=max{−dlog(I(x))/dx}
Ub=min{−dlog(I(x))/dx}
である。
【0028】
次に、ステップS120では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、減弱係数Ucと減弱係数Uaとの間をM分割する。分割方法は、等間隔で分割しても良いし、不等間隔で分割してもよい。たとえば、M=5で等間隔に分割する場合には、刻み幅をdU、分割した減弱係数を小さい方からU1,U2,U3,U4,U5とすると、
dU=(Ua−Uc)/4;
U1=Uc
U2=Uc+dU
U3=Uc+dU*2
U4=Uc+dU*3
U5=Uc+dU*4=Ua
となる。このMが大きいほど、エネルギー周波数分解能が高くなるが、後述するステップS140におけるX線エネルギー周波数分布算出部220の計算量が大きくなるため、計算時間が長くなる。Mはエネルギー周波数分解能と計算時間とを勘案して決定する。Mは、連続X線エネルギー周波数分布算出装置に固定定数としてあらかじめ決定して組み込んでも良いし、本装置が動作するときに、変数として外部から与えてもよい。
【0029】
次に、ステップS130では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、M分割した減弱係数からN個取り出して、重複なしの減弱係数パラメータセット{Un}を作成する。ここでNは、連続X線をいくつの離散エネルギー周波数で近似するのかを決定する近似モデル次数である。本発明では、連続X線を、次のように近似モデル化する。
【0030】
透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比を Fn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【0031】
【数2】
一方、連続X線は、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をI(x)、周波数をv、周波数vに対応する強度比をF(v)、周波数vに対応する減弱係数をU(v)としたとき、
I(x)=∫F(v)exp(−U(v)x)dv
であるため、近似モデル式は、連続X線を、N個の代表する離散エネルギー周波数で近似することに相当する。このNは、連続X線エネルギー周波数分布算出装置に固定定数としてあらかじめ決定して組み込んでも良いし、本装置が動作するときに、変数として外部から与えてもよい。
【0032】
M=mであり、N−nである場合の、重複なしの減弱係数パラメータセット{Un}の数は、全部でmCn個である。ここでmCnは、
mCn=m!/{(m−n)!・n!}
である。たとえば、M=5であり、N=2である場合の、重複なしの減弱係数パラメータセット{Un}の数は、10個である。分割した減弱係数をU1,U2,U3,U4,U5とすると、
{U1,U2}、
{U1,U3}、
{U1,U4}、
{U1,U5}、
{U2,U2}、
{U2,U3}、
{U2,U4}、
{U2,U5}、
{U1,U4}、
{U1,U5}、
という10個のパラメータセットを作成する。
【0033】
次に、ステップS140では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、すべての減弱係数パラメータセットに関して、誤差量eを最小にする強度比{Fn}と、その誤差量eを求める。図7は、ステップS140におけるフローチャートを詳細に表現した図である。図7における各ステップは、すべて、X線エネルギー周波数分布算出部220が実行する。まず、ステップS141で、近似モデル式を作成する。近似モデル式は、前述のS130で説明したように、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比をFn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【0034】
【数3】
である。次に、ステップS145で、減弱係数パラメータセット{Un}から1つの減弱係数パラメータセット{Un}を選択して、ステップS146で誤差量e を最小にする強度比{Fn}を算出する。誤差量eは、連続X線と近似モデル式との誤差量である。 本実施例では、最小2乗誤差を採用する。I(x)を透過厚特性データから導かれる、連続X線の透過厚xに対応する透過強度とすると、
e=∫{I(x)−J(x)}
である。ここでJ(x)は、ステップS130で説明したようなM=5であり、N=2である場合のパラメータセットにおいて、{U1,U4}を選択した場合は、
J(x)=F1exp(−U1x)+F2exp(−U4x)
である。
【0035】
透過厚特性データは、離散データであることが多いし、また、連続関数データであっても、コンピュータで計算するときには離散データとして計算しなければならない。そのため、透過厚xをL個の離散的な透過厚で表現し、L個のうちi番目の透過厚をxiとすると、上式の誤差量eは、
【0036】
【数4】
となる。この誤差量eの未知パラメータは、N個の強度比Fn(n=1,2,...,N−1,N)である。このFnは、最小2乗法で求めることが可能である。最小2乗法は、途中で逆行列を計算する必要があるが、この逆行列の状態が不安定だったり、透過厚特性データに含まれる雑音が過大である場合、Fnを正しく求めることができない場合がある。透過厚特性データに含まれる雑音が過大であることがあらかじめ分かっている場合は、Jacobi法や、最急降下法や、共役勾配法などの反復法を使用することにより、雑音の影響を避けて、Fnを求めることが可能であるため、これらの反復法を使用してもよい。
【0037】
本実施例では、最小2乗誤差を採用したが、最小2乗平均誤差や、他の誤差規範を採用してもよい。さらに、本実施例は、減弱係数Unは、誤差量eの未知パラメータではないが、未知パラメータとして取り扱ってもよい。すなわち、本実施例におけるステップS120とステップS130を実行しないで、S140において、強度比{Fn}と減弱係数{Un}を非線形最適化手法を用いて、求めてもよい。非線形最適化手法は、たとえば最小2乗誤差を採用する場合、Gauss−Newton法や、Davidon Fletcher Powell法やシンプレックス法やニューラルネットワークを用いた反復法などを用いることになる。
【0038】
次にステップS147では、ステップS146で求めた強度比{Fn}と、誤差量eと、選択した減弱パラメータセット{Un}を関連データとして記憶する。ステップS130で説明したようなM=5であり、N=2である場合のパラメータセットにおいて、{U1,U4}を選択した場合は、
[誤差量e,{F1,F2},{U1,U4}]
を一連の関連があるデータとして記憶する。本実施例では、誤差量eに、強度比{F1,F2}と減弱係数{U1,U4}を関連付けるように記憶する。
【0039】
次にステップS148では、ステップS130で作成したすべての減弱パラメータセット{Un}に関して、ステップS145、ステップS146、ステップS147を実行したかどうかを判断する。もし、実行していないと判断すると、ステップS145に戻り、まだ選択していない減弱パラメータセット{Un}を選択することになる。もし、実行したと判断すると、図7のフローチャートを終了して、ステップS150へ進む。
【0040】
次にステップS150では、まず、X線エネルギー周波数分布算出部220が、ステップS147で記憶した誤差量eの中で、一番小さい誤差量eを求めて、その誤差量eに関連付けられた強度比{Fn}と減弱係数{Un}を見つけて、強度比{Fn}と減弱係数{Un}を算出データとして出力する。次に、算出データは、X線パラメータ出力部230が入力として受信する。X線パラメータ出力部230は、算出データの中から、少なくとも強度比{Fn}をX線パラメータとして選択する。この際、強度比{Fn}の順番は、エネルギー周波数が小さい順番、または、大きい順番のどちらかで整列するように処理する。なお、X線パラメータは、強度比{Fn}に対応する減弱係数{Un}をX線パラメータに加えてもよい。減弱係数{Un}の順番は、強度比{Fn}の順番に対応するよう処理する。X線パラメータ出力部230がX線パラメータを選択し終えたら、X線パラメータ出力部230がX線パラメータを連続X線エネルギー周波数分布算出部2から出力して、図6におけるフローチャートを終了する。
【0041】
本発明を使用すれば、たとえば、軟線と硬線の割合を調べたいときは、N=2として、図6におけるステップを実行して、 エネルギー周波数が小さい順に、強度比{F1,F2}を出力すれば、軟線と硬線の割合は、F1:F2として求めることができる。
【0042】
連続X線エネルギー周波数分布算出部2から出力されたX線パラメータは、連続X線エネルギー周波数分布表示部3へ入力して、連続X線エネルギー周波数分布表示部3が前述した図4における表示装置MONに表示する。
【0043】
以上説明した機能を実施するためには、例えば図4に示すような形態を用いることができる。同図においてコンピュータPCがネットワークNを介して1つ或いは複数の画像生成装置MDに接続されている。この画像生成装置としては前述した各種撮影装置が該当する。または、不図示の撮影装置により撮影された画像が、予めファイルサーバFSに保存されており、それを画像生成装置と同等に扱えるようにしても、本発明を全く同じように適用することができる。
【0044】
以上説明した機能を実施するためには、図4に示すようなネットワークを介した接続に限定されるものではなく、図5に示すような構成によることもできる。本構成においては、コンピュータPCは透過厚特性データ生成部1と直接接続されており、直接透過厚特性データを受信する。また、透過厚特性データ生成部1がコンピュータPCを備えている場合は、本発明を透過厚特性データ生成装置の中に実現することも可能である。
【0045】
(第2実施の形態)
図2は、本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の構成を示す本実施例の機能ブロック図である。図8は、本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の動作を示すフローチャート図である。以下に、各ブロックの機能についてフローチャート順に説明する。
【0046】
図8における各ステップは、図4におけるコンピュータPCのハードディスクHDまたは光磁気ディスクMOまたはRAMまたはROMなどの記憶装置に格納されており、コンピュータPCのCPUが、各ステップを格納されている領域から読み出してフローチャート順に実行することにより、以下に記述するようなアクションが実行される。
【0047】
図4においてコンピュータPCはネットワークNを介して1つ或いは複数の透過厚特性データ生成装置MDに接続されている。透過厚特性データ生成装置は、後述する透過厚特性データ生成部を有し、透過厚特性データを生成する。または、不図示の透過厚特性データ生成装置により生成された透過厚特性データが、予めファイルサーバFSに保存されており、それを透過厚特性データ生成装置と同等に扱えるようにしても、本発明を全く同じように適用することができる。
【0048】
連続X線エネルギー周波数分布算出部2および連続X線エネルギー周波数分布表示部3はコンピュータPCおよびそれに内蔵された周辺機器により実現することができる。一例として、本発明による心胸郭比計測部2および心胸郭比表示部3は表示装置MONおよびハードディスクHDに格納されたプログラムとして実現することができる。この場合、不図示のユーザ入力によりハードディスクHDに保存されたプログラムがRAMに読み出され、前述したようにCPUがRAM内のプログラムを順次実行して前述した機能を実現し、処理の結果得られた画像が表示装置MONに表示される。ここで、表示装置MONは例えば、CRTモニタ、液晶ディスプレイ等を用いることができる。
【0049】
また、本発明を実施するプログラムはハードディスクHDに保存されることに限定される必要はなく、外部記憶装置としてコンピュータPCに接続された光磁気ディスクMO、あるいはネットワークを介して接続されるファイルサーバFSに記憶されるようにしてもよい。あるいは、本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出部2および連続X線エネルギー周波数分布表示部3は、部分あるいは全てをコンピュータPCに装着された専用のハードウェアACCとして実現するようにしてもよい。
【0050】
図8において、「はじめ」のトリガーは、図2における連続X線エネルギー周波数分布算出部2の透過厚特性データ入力部210が透過厚特性データEをX線エネルギー周波数分布算出部220に入力したことが合図となる。透過厚特性データEは、図1における透過厚特性データ生成部1が透過厚特性データEを出力して、透過厚特性データ入力部210に入力することにより、取得する。ここで透過厚特性データEとは、均一な物質に連続X線を照射して得られる透過厚と透過強度との関係を示す特性データであり、図9の(a)のような特性データである。この特性データは、たとえば均一な物質が水である場合、図9の(b)のように、連続X線源と、透過厚が既知の容器と、X線の強度を測定するX線センサーとを用いて、X線の入力強度とX線の出力強度を測定することにより、得られる。具体的には,透過厚が短い容器から長い容器まで様々な場合に関して、それぞれ、入力強度と出力強度の比を求めることにより、透過強度比を求めて、プロットすることにより、図9の(a)のような透過厚特性データを得る。入力強度は、透過厚が0の場合における出力強度である。または、図9の(c)のようにあらかじめ透過厚が様々な容器をひとまとめにしておいて、連続X線源と、デジタルラジオグラフィ(DR)などのX線センサー配列を用いて測定すれば、図9の(a)の場合に比較して、手間がかからず、また短時間で測定が可能である。このような均一な物質における透過厚特性データを調べるための容器は、市販されており、安価である。また、CT(コンピュータ トモグラフィ)が置いてある施設の場合は、このCTのキャリブレーションをするための容器が備品として所持している場合が多く、このような場合は、このキャリブレーションをするための容器を透過厚特性データを取得するための容器として兼用することが可能である。均一な物質とは、本実施例では、水であるが、他の物質、たとえばアクリルであってもよいし、混合物質でもよい。均一な密度で構成されていて、透過厚に対して減衰することが観測できるような物質であればよい。たとえば、空気のように、透過厚に対して、ほとんど減衰しないような物質は、適さない。
【0051】
ステップS110では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、透過厚特性データEを用いて、最低周波数に対応する減弱係数Uaと最高周波数に対応する減弱係数Ucを求める。ここで、減弱係数とは、単位長さあたりにX線が減衰する程度を示す係数であり、物質に固有の係数である。また、X線エネルギー周波数に依存する。同一物質ならば、減弱係数は、一般に周波数が高い場合より周波数が低いの方が、大きい値になる。すなわち、図3のような連続X線エネルギー周波数分布である場合、最低周波数に対応する減弱係数Uaと、最高周波数に対応する減弱係数Ucは、Uc<Uaという関係にある。減弱係数Uaと減弱係数Ucは、透過厚特性データの透過厚強度を自然対数に変換した、図10のような片対数透過厚特性データを用いて、それぞれ、最大傾斜、最小傾斜を求めることにより、算出する。図9のような透過厚特性データにおける透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度比をI(x)とすると、
Ua=max{−dlog(I(x))/dx}
Ub=min{−dlog(I(x))/dx}
である。
【0052】
次に、ステップS120では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、減弱係数Ucと減弱係数Uaとの間をM分割する。分割方法は、等間隔で分割しても良いし、不等間隔で分割してもよい。たとえば、M=5で等間隔に分割する場合には、刻み幅をdU、分割した減弱係数を小さい方からU1,U2,U3,U4,U5とすると、
dU=(Ua−Uc)/4;
U1=Uc
U2=Uc+dU
U3=Uc+dU*2
U4=Uc+dU*3
U5=Uc+dU*4=Ua
となる。このMが大きいほど、エネルギー周波数分解能が高くなるが、後述するステップS140におけるX線エネルギー周波数分布算出部220の計算量が大きくなるため、計算時間が長くなる。Mはエネルギー周波数分解能と計算時間とを勘案して決定する。Mは、連続X線エネルギー周波数分布算出装置に固定定数としてあらかじめ決定して組み込んでも良いし、本装置が動作するときに、変数として外部から与えてもよい。
【0053】
次に、ステップS130では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、M分割した減弱係数からN個取り出して、重複なしの減弱係数パラメータセット{Un}を作成する。ここでNは、連続X線をいくつの離散エネルギー周波数で近似するのかを決定する近似モデル次数である。本発明では、連続X線を、次のように近似モデル化する。
【0054】
透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比を Fn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【0055】
【数5】
一方、連続X線は、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をI(x)、周波数をv、周波数vに対応する強度比をF(v)、周波数vに対応する減弱係数をU(v)としたとき、
I(x)=∫F(v)exp(−U(v)x)dv
であるため、近似モデル式は、連続X線を、N個の代表する離散エネルギー周波数で近似することに相当する。たとえば、N=1のときは、図11の(a)のように、連続X線エネルギー周波数分布を代表周波数1で近似することに相当し、また、N=2のときは、図11の(b)のように、代表周波数1と代表周波数2で近似することに相当する。同様に、N=3のときは、図11の(c)のように代表周波数1と代表周波数2と代表周波数3で近似することに相当する。後述のステップは、Nを決定したとき、一番よく近似している代表周波数をN個算出するためのステップである。このNは、連続X線エネルギー周波数分布算出装置に固定定数としてあらかじめ決定して組み込んでも良いし、本装置が動作するときに、変数として外部から与えてもよい。
【0056】
M=mであり、N−nである場合の、重複なしの減弱係数パラメータセット{Un}の数は、全部でmCn個である。ここでmCnは、
mCn=m!/{(m−n)!・n!}
である。たとえば、M=5であり、N=2である場合の、重複なしの減弱係数パラメータセット{Un}の数は、10個である。分割した減弱係数をU1,U2, U3,U4,U5とすると、
{U1,U2}、
{U1,U3}、
{U1,U4}、
{U1,U5}、
{U2,U2}、
{U2,U3}、
{U2,U4}、
{U2,U5}、
{U1,U4}、
{U1,U5}、
という10個のパラメータセットを作成する。
【0057】
次に、ステップS140では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、すべての減弱係数パラメータセットに関して、誤差量eを最小にする強度比{Fn}と、その誤差量eを求める。図7は、ステップS140におけるフローチャートを詳細に表現した図である。図7における各ステップは、すべて、X線エネルギー周波数分布算出部220が実行する。まず、ステップS141で、近似モデル式を作成する。近似モデル式は、前述のS130で説明したように、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比をFn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【0058】
【数6】
である。次に、ステップS145で、減弱係数パラメータセット{Un}から1つの減弱係数パラメータセット{Un}を選択して、ステップS146で誤差量eを最小にする強度比{Fn}を算出する。誤差量eは、連続X線と近似モデル式との誤差量である。本実施例では、最小2乗誤差を採用する。I(x)を透過厚特性データから導かれる、連続X線の透過厚xに対応する透過強度とすると、
e=∫{I(x)−J(x)}
である。ここでJ(x)は、ステップS130で説明したようなM=5であり、N=2である場合のパラメータセットにおいて、{U1,U4}を選択した場合は、
J(x)=F1exp(−U1x)+F2exp(−U4x)
である。
【0059】
透過厚特性データは、離散データであることが多いし、また、連続関数データであっても、コンピュータで計算するときには離散データとして計算しなければならない。そのため、透過厚xをL個の離散的な透過厚で表現し、L個のうちi番目の透過厚をxiとすると、上式の誤差量eは、
【0060】
【数7】
となる。この誤差量eの未知パラメータは、N個の強度比Fn(n=1,2,...,N−1,N)である。このFnは、最小2乗法で求めることが可能である。最小2乗法は、途中で逆行列を計算する必要があるが、この逆行列の状態が不安定だったり、透過厚特性データに含まれる雑音が過大である場合、Fnを正しく求めることができない場合がある。透過厚特性データに含まれる雑音が過大であることがあらかじめ分かっている場合は、Jacobi法や、最急降下法や、共役勾配法などの反復法を使用することにより、雑音の影響を避けて、Fnを求めることが可能であるため、これらの反復法を使用してもよい。
【0061】
本実施例では、最小2乗誤差を採用したが、最小2乗平均誤差や、他の誤差規範を採用してもよい。さらに、本実施例は、減弱係数Unは、誤差量eの未知パラメータではないが、未知パラメータとして取り扱ってもよい。すなわち、本実施例におけるステップS120とステップS130を実行しないで、S140において、強度比{Fn}と減弱係数{Un}を非線形最適化手法を用いて、求めてもよい。非線形最適化手法は、たとえば最小2乗誤差を採用する場合、Gauss−Newton法や、Davidon Fletcher Powell法やシンプレックス法やニューラルネットワークを用いた反復法などを用いることになる。
【0062】
次にステップS147では、ステップS146で求めた強度比{Fn}と、誤差量eと、選択した減弱パラメータセット{Un}を関連データとして記憶する。ステップS130で説明したようなM=5であり、N=2である場合のパラメータセットにおいて、{U1,U4}を選択した場合は、
[誤差量e,{F1,F2},{U1,U4}]
を一連の関連があるデータとして記憶する。本実施例では、誤差量eに、強度比{F1,F2}と減弱係数{U1,4}を関連付けるように記憶する。
【0063】
次にステップS148では、ステップS130で作成したすべての減弱パラメータセット{Un}に関して、ステップS145、ステップS146、ステップS147を実行したかどうかを判断する。もし、実行していないと判断すると、ステップS145に戻り、まだ選択していない減弱パラメータセット{Un}を選択することになる。もし、実行したと判断すると、図7のフローチャートを終了して、ステップS150へ進む。
【0064】
次にステップS150では、まず、X線エネルギー周波数分布算出部220が、ステップS147で記憶した誤差量eの中で、一番小さい誤差量eを求めて、その誤差量eに関連付けられた強度比{Fn}と減弱係数{Un}を見つけて、強度比{Fn}と減弱係数{Un}を算出データとして出力する。次に、算出データは、X線パラメータ出力部230が入力として受信する。X線パラメータ出力部230は、算出データの中から、少なくとも強度比{Fn}をX線パラメータとして選択する。この際、強度比{Fn}の順番は、エネルギー周波数が小さい順番、または、大きい順番のどちらかで整列するように処理する。なお、X線パラメータは、強度比{Fn}に対応する減弱係数{Un}をX線パラメータに加えてもよい。減弱係数{Un}の順番は、強度比{Fn}の順番に対応するよう処理する。X線パラメータ出力部230がX線パラメータを選択し終えたら、X線パラメータ出力部230がX線パラメータを連続X線エネルギー周波数分布算出部2から出力する。
【0065】
次に、ステップS160では、減弱係数テーブル格納部250に格納されている減弱係数データと、ステップS150で出力した減弱係数{Un}とを使用して、X線エネルギー周波数分布算出部220が、減弱係数{Un}に対応するX線エネルギー周波数{Vn}を算出する。ここで減弱係数テーブル格納部250には、透過厚特性データを測定するときに使用した、均一な物質に関する減弱係数が格納されている。この減弱係数は、X線エネルギー周波数に関連付けられており、これを利用して、減弱係数に対応するX線エネルギー周波数を求める。求めたX線エネルギー周波数{Vn}を出力すると、図8におけるフローチャートを終了する。エネルギー周波数{Vn}の順番は、強度比{Fn}の順番に対応するよう処理する。
【0066】
本発明を使用すれば、たとえば、軟線と硬線の割合を調べたいときは、N=2として、図6におけるステップを実行して、ネルギー周波数が小さい順に、強度比{F1,F2}を出力すれば、軟線と硬線の割合は、F1:F2として求めることができる。さらに、どのエネルギー周波数を軟線と硬線に代表周波数として割り当てたかを、エネルギー周波数{V1,V2}により取得することも可能である。
【0067】
連続X線エネルギー周波数分布算出部2から出力されたX線パラメータは、連続X線エネルギー周波数分布表示部3へ入力して、連続X線エネルギー周波数分布表示部3が前述した図4における表示装置MONに表示する。
【0068】
以上説明した機能を実施するためには、例えば図4に示すような形態を用いることができる。同図においてコンピュータPCがネットワークNを介して1つ或いは複数の画像生成装置MDに接続されている。この画像生成装置としては前述した各種撮影装置が該当する。または、不図示の撮影装置により撮影された画像が、予めファイルサーバFSに保存されており、それを画像生成装置と同等に扱えるようにしても、本発明を全く同じように適用することができる。
【0069】
以上説明した機能を実施するためには、図4に示すようなネットワークを介した接続に限定されるものではなく、図5に示すような構成によることもできる。本構成においては、コンピュータPCは透過厚特性データ生成部1と直接接続されており、直接透過厚特性データを受信する。また、透過厚特性データ生成部1がコンピュータPCを備えている場合は、本発明を透過厚特性データ生成装置の中に実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1実施の形態における本発明の連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】第2実施の形態における本発明の連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】連続X線エネルギー周波数分布と、最低周波数、最高周波数との関係を表した図である。
【図4】実施形態における機器構成の1例を示すブロック図である。
【図5】実施形態における機器構成の1例を示すブロック図である。
【図6】第1実施の形態における本発明の連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の動作を示すフローチャート図である。
【図7】フローチャートのステップS140に関するサブフローチャートである。
【図8】第2実施の形態における本発明の連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の動作を示すフローチャート図である。
【図9】透過厚特性データに関する説明図である。
【図10】最低周波数に対応する減弱係数と最高周波数に対応する減弱係数を求める方法に関する説明図である。
【図11】連続X線エネルギー周波数分布と、離散代表周波数との関係を表した図である。
【符号の説明】
【0071】
1 透過厚特性データ生成部
2 連続X線エネルギー周波数分布算出部
3 連続X線エネルギー周波数分布表示部
210 透過厚特性データ入力部
220 X線エネルギー周波数分布算出部
230 X線パラメータ出力部
240 近似モデル式作成部
250 減弱係数テーブル格納部
E 透過厚特性データ
F 算出データ
G X線パラメータ
K 近似モデル式
H 減弱係数データ
【技術分野】
【0001】
本発明はエネルギー周波数分析方法および装置に関するものであり、特に、X線エネルギー周波数分析方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線源より放射されるX線は、高エネルギーから低エネルギーまでを含んでいる、いわゆる多色X線である。この各エネルギーのX線のうち、低エネルギーのものは被写体で大きく減衰し、高エネルギーのものは減衰率が低いと云う特性がある。従って、X線透過経路の被写体厚が厚い場合、透過後のX線は、低エネルギーのX線は大きく減衰するため、高エネルギーのX線だけが残ることになる。これを一般に線質硬化と云う。
【0003】
X線を被写体に照射して、X線撮影画像を取得する撮影技師は、より良い撮影を実現するために、照射エネルギーの何割が低エネルギーであり、また何割が高エネルギーなのかを知ることが、肝要である。高エネルギーだけならば、被写体を透過しても減衰しないため、X線撮影画像から被写体に関する情報が得られない。しかし、低エネルギーだけならば、被写体で大きく減衰するため、X線撮影画像から被写体に関する情報が多いが、その減衰分は、被写体がX線を吸収してしまうということであり、被写体にとって好ましくない。より良い撮影を実現するためには、適切な低エネルギーのX線と高エネルギーのX線が必要である。
【0004】
そのため、撮影技師は、X線照射装置を購入する際に付随する、代表的ないくつかの撮影条件に関するX線エネルギー周波数分布データを分析しながら、自らが決定した撮影条件で、どの程度の低エネルギーと高エネルギーが含まれるのかを予測しながら撮影していた。低エネルギーのX線とは、X線エネルギー周波数が低いX線であり、高エネルギーのX線とは、X線エネルギー周波数が高いX線である。
【0005】
あるいは、X線エネルギー周波数分析器を使用して、撮影技師が決定した撮影条件におけるX線エネルギー周波数分布を解析していた。X線エネルギー周波数分析器の例としては、たとえば、TMメディカル(株)のX線出力アナライザーなどがある。
【0006】
X線源とX線照射装置とX線発生装置とは、同一意味として使用している。
【0007】
従来例としては、例えば特許文献1をあげることが出来る。
【特許文献1】特公平03−027046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、代表的ないくつかの撮影条件に関するX線エネルギー周波数データを分析する方法では、撮影技師が自ら決定した撮影条件が、前記代表的ないくつかの撮影条件から大きく外れている場合、予測が困難であり、満足できるものではない。
【0009】
さらに、X線エネルギー周波数分析器を使用する方法は、分析器が高価であり、かつ、大雑把なX線のエネルギー周波数分布、たとえば、軟線と硬線との割合など、エネルギー周波数分解能が低い情報を取得する場合であっても、高価なX線エネルギー周波数分析器を使用するしか方法が無く、不便である。ここで、軟線とは低エネルギーのX線であり、硬線とは高エネルギーのX線である。
【0010】
どの撮影条件が良いかどうかを決定するために、市販されているX線エネルギー周波数分析器が持つ高い周波数分解能は不要であり、低い周波数分解能で、安価な装置および方法で十分である。
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みてなされたもので、高価な測定装置を使用することなく、連続X線発生源の軟線と硬線の割合を算出する方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、上記課題に対し、このような課題を解決するための手段をとる。
【0013】
すなわち、均一な物質に連続X線を照射して得られる透過厚と透過強度との関係を示す透過厚特性データを入力する透過厚特性データ入力部と、
連続X線をN種類(N>=1)の離散X線エネルギー周波数で近似する近似モデル式を作成する近似モデル式作成部と、
前記透過厚特性データと、近似モデル式と、を用いて、前記連続X線に含まれるN種類のX線エネルギー周波数の強度比と、前記N種類のX線エネルギー周波数の減弱係数と、を算出するX線エネルギー周波数分布算出部と、
前記X線エネルギー周波数分布算出部で算出した複数の算出データのうち、少なくとも強度比を含む算出データを出力するX線パラメータ出力部と、
を有することを特徴とし、
前記近似モデル式は、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比をFn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【0014】
【数1】
であること、を特徴とする。
【0015】
(効果)
X線撮影におけるX線管電圧、付加フィルタの選択は、照射されるX線エネルギーの周波数フィルタ設計であり、画像のコントラスト、被曝線量、X線管の負荷に影響を与える。X線エネルギーの周波数フィルタを設計する上で、照射されるX線のエネルギー周波数分布を知ることは非常に有用である。従来は、X線のエネルギー周波数分布を知るためには、高価なX線エネルギー周波数分析器を使用するしか方法が無かった。大雑把なX線のエネルギー周波数分布、たとえば、軟線と硬線との割合など、周波数分解能が低い情報を取得する場合であっても、高価なX線エネルギー周波数分析器を使用するしか方法が無かった。本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置によれば、周波数分解能は低いが、X線のエネルギー周波数分布を安価にかつ簡便に取得することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、従来は、照射されるX線のエネルギー周波数分布を取得するためには、高価なX線エネルギー周波数分析器を使用するしか方法が無かったが、周波数分解能は低いけれどもX線のエネルギー周波数分布を安価にかつ簡便に取得することが可能になる。たとえば、軟線と硬線の割合を調べたいときは、N=2として、本発明を実施することにより、軟線と硬線のX線エネルギー周波数の強度比が取得できる。X線撮影におけるX線管電圧、付加フィルタの選択は、照射されるX線エネルギーの周波数フィルタ設計であり、画像のコントラスト、被曝線量、X線管の負荷に影響を与えるため、照射されるX線のエネルギー周波数分布を安価にかつ簡便に 取得できるようになる本発明は、X線エネルギーの周波数フィルタを設計する上で非常に有用である。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、連続X線をどのような離散代表周波数で近似したのかを取得することが可能となる。請求項1に記載の発明では、N=2は、軟線と硬線という情報しか得られないが、たとえば1M[Hz]と2M[Hz]という具体的な周波数という情報として取得することが可能になり、さらに、X線エネルギーの周波数フィルタを設計する上で有用となる。なお、周波数*波長=光の速度という関係式があるため、周波数を波長に換算することも可能である。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、連続X線の軟線と硬線のX線エネルギー周波数の強度比が取得できる。X線エネルギーの周波数フィルタを設計する上で一番知りたい情報は、軟線と硬線の割合であり、N=2として、本発明を実施することにより、N>=3に必要な機能を排除して装置を最適化し、簡便かつ高速かつ安価な連続X線エネルギー周波数分布算出装置を提供できる、
請求項4に記載の発明によれば、近似モデル式が連続X線をよく近似しているかを測るための尺度として、最小2乗誤差を採用する。最小2乗誤差を最小化するアルゴリズムは、応用範囲が広いため、各分野でよく研究されており、実用化されている各種の高速かつ精度が高い、未知パラメータ推定アルゴリズムを適用することができ、本発明を、高速かつ高精度な装置または方法として実施することが可能になる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、水で作られたファントムや容器は、CTのキャリブレーション用の器具として広く普及しているため、本発明をさらに安価にかつ簡便に実施することが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、アクリルで作られたファントムや容器は、CTのキャリブレーション用の器具として広く普及しているため、本発明をさらに安価にかつ簡便に実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施の形態)
図1は、本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の構成を示す本実施例の機能ブロック図である。図6は、本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の動作を示すフローチャート図である。以下に、各ブロックの機能についてフローチャート順に説明する。
【0022】
図6における各ステップは、図4におけるコンピュータPCのハードディスクHDまたは光磁気ディスクMOまたはRAMまたはROMなどの記憶装置に格納されており、コンピュータPCのCPUが、各ステップを格納されている領域から読み出してフローチャート順に実行することにより、以下に記述するようなアクションが実行される。
【0023】
図4においてコンピュータPCはネットワークNを介して1つ或いは複数の透過厚特性データ生成装置MDに接続されている。透過厚特性データ生成装置は、後述する透過厚特性データ生成部を有し、透過厚特性データを生成する。または、不図示の透過厚特性データ生成装置により生成された透過厚特性データが、予めファイルサーバFSに保存されており、それを透過厚特性データ生成装置と同等に扱えるようにしても、本発明を全く同じように適用することができる。
【0024】
連続X線エネルギー周波数分布算出部2および連続X線エネルギー周波数分布表示部3はコンピュータPCおよびそれに内蔵された周辺機器により実現することができる。一例として、本発明による心胸郭比計測部2および心胸郭比表示部3は表示装置MONおよびハードディスクHDに格納されたプログラムとして実現することができる。この場合、不図示のユーザ入力によりハードディスクHDに保存されたプログラムがRAMに読み出され、前述したようにCPUがRAM内のプログラムを順次実行して前述した機能を実現し、処理の結果得られた画像が表示装置MONに表示される。ここで、表示装置MONは例えば、CRTモニタ、液晶ディスプレイ等を用いることができる。
【0025】
また、本発明を実施するプログラムはハードディスクHDに保存されることに限定される必要はなく、外部記憶装置としてコンピュータPCに接続された光磁気ディスクMO、あるいはネットワークを介して接続されるファイルサーバFSに記憶されるようにしてもよい。あるいは、本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出部2および連続X線エネルギー周波数分布表示部3は、部分あるいは全てをコンピュータPCに装着された専用のハードウェアACCとして実現するようにしてもよい。
【0026】
図6において、「はじめ」のトリガーは、図1における連続X線エネルギー周波数分布算出部2の透過厚特性データ入力部210が透過厚特性データEをX線エネルギー周波数分布算出部220に入力したことが合図となる。透過厚特性データEは、図1における透過厚特性データ生成部1が透過厚特性データEを出力して、透過厚特性データ入力部210に入力することにより、取得する。ここで透過厚特性データEとは、均一な物質に連続X線を照射して得られる透過厚と透過強度との関係を示す特性データであり、図9の(a)のような特性データである。この特性データは、たとえば均一な物質が水である場合、図9の(b)のように、連続X線源と、透過厚が既知の容器と、X線の強度を測定するX線センサーとを用いて、X線の入力強度とX線の出力強度を測定することにより、得られる。具体的には,透過厚が短い容器から長い容器まで様々な場合に関して、それぞれ、入力強度と出力強度の比を求めることにより、透過強度比を求めて、プロットすることにより、図9の(a)のような透過厚特性データを得る。入力強度は、透過厚が0の場合における出力強度である。または、図9の(c)のようにあらかじめ透過厚が様々な容器をひとまとめにしておいて、連続X線源と、デジタルラジオグラフィ(DR)などのX線センサー配列を用いて測定すれば、図9の(a)の場合に比較して、手間がかからず、また短時間で測定が可能である。このような均一な物質における透過厚特性データを調べるための容器は、市販されており、安価である。また、CT(コンピュータトモグラフィ)が置いてある施設の場合は、このCTのキャリブレーションをするための容器が備品として所持している場合が多く、このような場合は、このキャリブレーションをするための容器を透過厚特性データを取得するための容器として兼用することが可能である。均一な物質とは、本実施例では、水であるが、他の物質、たとえばアクリルであってもよいし、混合物質でもよい。均一な密度で構成されていて、透過厚に対して減衰することが観測できるような物質であればよい。たとえば、空気のように、透過厚に対して、ほとんど減衰しないような物質は、適さない。
【0027】
ステップS110では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、透過厚特性データEを用いて、最低周波数に対応する減弱係数Uaと最高周波数に対応する減弱係数Ucを求める。ここで、減弱係数とは、単位長さあたりにX線が減衰する程度を示す係数であり、物質に固有の係数である。また、X線エネルギー周波数に依存する。同一物質ならば、減弱係数は、一般に周波数が高い場合より周波数が低いの方が、大きい値になる。すなわち、図3のような連続X線エネルギー周波数分布である場合、最低周波数に対応する減弱係数Uaと、最高周波数に対応する減弱係数Ucは、Uc<Uaという関係にある。減弱係数Uaと減弱係数Ucは、透過厚特性データの透過厚強度を自然対数に変換した、図10のような片対数透過厚特性データを用いて、それぞれ、最大傾斜、最小傾斜を求めることにより、算出する。図9のような透過厚特性データにおける透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度比をI(x)とすると、
Ua=max{−dlog(I(x))/dx}
Ub=min{−dlog(I(x))/dx}
である。
【0028】
次に、ステップS120では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、減弱係数Ucと減弱係数Uaとの間をM分割する。分割方法は、等間隔で分割しても良いし、不等間隔で分割してもよい。たとえば、M=5で等間隔に分割する場合には、刻み幅をdU、分割した減弱係数を小さい方からU1,U2,U3,U4,U5とすると、
dU=(Ua−Uc)/4;
U1=Uc
U2=Uc+dU
U3=Uc+dU*2
U4=Uc+dU*3
U5=Uc+dU*4=Ua
となる。このMが大きいほど、エネルギー周波数分解能が高くなるが、後述するステップS140におけるX線エネルギー周波数分布算出部220の計算量が大きくなるため、計算時間が長くなる。Mはエネルギー周波数分解能と計算時間とを勘案して決定する。Mは、連続X線エネルギー周波数分布算出装置に固定定数としてあらかじめ決定して組み込んでも良いし、本装置が動作するときに、変数として外部から与えてもよい。
【0029】
次に、ステップS130では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、M分割した減弱係数からN個取り出して、重複なしの減弱係数パラメータセット{Un}を作成する。ここでNは、連続X線をいくつの離散エネルギー周波数で近似するのかを決定する近似モデル次数である。本発明では、連続X線を、次のように近似モデル化する。
【0030】
透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比を Fn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【0031】
【数2】
一方、連続X線は、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をI(x)、周波数をv、周波数vに対応する強度比をF(v)、周波数vに対応する減弱係数をU(v)としたとき、
I(x)=∫F(v)exp(−U(v)x)dv
であるため、近似モデル式は、連続X線を、N個の代表する離散エネルギー周波数で近似することに相当する。このNは、連続X線エネルギー周波数分布算出装置に固定定数としてあらかじめ決定して組み込んでも良いし、本装置が動作するときに、変数として外部から与えてもよい。
【0032】
M=mであり、N−nである場合の、重複なしの減弱係数パラメータセット{Un}の数は、全部でmCn個である。ここでmCnは、
mCn=m!/{(m−n)!・n!}
である。たとえば、M=5であり、N=2である場合の、重複なしの減弱係数パラメータセット{Un}の数は、10個である。分割した減弱係数をU1,U2,U3,U4,U5とすると、
{U1,U2}、
{U1,U3}、
{U1,U4}、
{U1,U5}、
{U2,U2}、
{U2,U3}、
{U2,U4}、
{U2,U5}、
{U1,U4}、
{U1,U5}、
という10個のパラメータセットを作成する。
【0033】
次に、ステップS140では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、すべての減弱係数パラメータセットに関して、誤差量eを最小にする強度比{Fn}と、その誤差量eを求める。図7は、ステップS140におけるフローチャートを詳細に表現した図である。図7における各ステップは、すべて、X線エネルギー周波数分布算出部220が実行する。まず、ステップS141で、近似モデル式を作成する。近似モデル式は、前述のS130で説明したように、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比をFn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【0034】
【数3】
である。次に、ステップS145で、減弱係数パラメータセット{Un}から1つの減弱係数パラメータセット{Un}を選択して、ステップS146で誤差量e を最小にする強度比{Fn}を算出する。誤差量eは、連続X線と近似モデル式との誤差量である。 本実施例では、最小2乗誤差を採用する。I(x)を透過厚特性データから導かれる、連続X線の透過厚xに対応する透過強度とすると、
e=∫{I(x)−J(x)}
である。ここでJ(x)は、ステップS130で説明したようなM=5であり、N=2である場合のパラメータセットにおいて、{U1,U4}を選択した場合は、
J(x)=F1exp(−U1x)+F2exp(−U4x)
である。
【0035】
透過厚特性データは、離散データであることが多いし、また、連続関数データであっても、コンピュータで計算するときには離散データとして計算しなければならない。そのため、透過厚xをL個の離散的な透過厚で表現し、L個のうちi番目の透過厚をxiとすると、上式の誤差量eは、
【0036】
【数4】
となる。この誤差量eの未知パラメータは、N個の強度比Fn(n=1,2,...,N−1,N)である。このFnは、最小2乗法で求めることが可能である。最小2乗法は、途中で逆行列を計算する必要があるが、この逆行列の状態が不安定だったり、透過厚特性データに含まれる雑音が過大である場合、Fnを正しく求めることができない場合がある。透過厚特性データに含まれる雑音が過大であることがあらかじめ分かっている場合は、Jacobi法や、最急降下法や、共役勾配法などの反復法を使用することにより、雑音の影響を避けて、Fnを求めることが可能であるため、これらの反復法を使用してもよい。
【0037】
本実施例では、最小2乗誤差を採用したが、最小2乗平均誤差や、他の誤差規範を採用してもよい。さらに、本実施例は、減弱係数Unは、誤差量eの未知パラメータではないが、未知パラメータとして取り扱ってもよい。すなわち、本実施例におけるステップS120とステップS130を実行しないで、S140において、強度比{Fn}と減弱係数{Un}を非線形最適化手法を用いて、求めてもよい。非線形最適化手法は、たとえば最小2乗誤差を採用する場合、Gauss−Newton法や、Davidon Fletcher Powell法やシンプレックス法やニューラルネットワークを用いた反復法などを用いることになる。
【0038】
次にステップS147では、ステップS146で求めた強度比{Fn}と、誤差量eと、選択した減弱パラメータセット{Un}を関連データとして記憶する。ステップS130で説明したようなM=5であり、N=2である場合のパラメータセットにおいて、{U1,U4}を選択した場合は、
[誤差量e,{F1,F2},{U1,U4}]
を一連の関連があるデータとして記憶する。本実施例では、誤差量eに、強度比{F1,F2}と減弱係数{U1,U4}を関連付けるように記憶する。
【0039】
次にステップS148では、ステップS130で作成したすべての減弱パラメータセット{Un}に関して、ステップS145、ステップS146、ステップS147を実行したかどうかを判断する。もし、実行していないと判断すると、ステップS145に戻り、まだ選択していない減弱パラメータセット{Un}を選択することになる。もし、実行したと判断すると、図7のフローチャートを終了して、ステップS150へ進む。
【0040】
次にステップS150では、まず、X線エネルギー周波数分布算出部220が、ステップS147で記憶した誤差量eの中で、一番小さい誤差量eを求めて、その誤差量eに関連付けられた強度比{Fn}と減弱係数{Un}を見つけて、強度比{Fn}と減弱係数{Un}を算出データとして出力する。次に、算出データは、X線パラメータ出力部230が入力として受信する。X線パラメータ出力部230は、算出データの中から、少なくとも強度比{Fn}をX線パラメータとして選択する。この際、強度比{Fn}の順番は、エネルギー周波数が小さい順番、または、大きい順番のどちらかで整列するように処理する。なお、X線パラメータは、強度比{Fn}に対応する減弱係数{Un}をX線パラメータに加えてもよい。減弱係数{Un}の順番は、強度比{Fn}の順番に対応するよう処理する。X線パラメータ出力部230がX線パラメータを選択し終えたら、X線パラメータ出力部230がX線パラメータを連続X線エネルギー周波数分布算出部2から出力して、図6におけるフローチャートを終了する。
【0041】
本発明を使用すれば、たとえば、軟線と硬線の割合を調べたいときは、N=2として、図6におけるステップを実行して、 エネルギー周波数が小さい順に、強度比{F1,F2}を出力すれば、軟線と硬線の割合は、F1:F2として求めることができる。
【0042】
連続X線エネルギー周波数分布算出部2から出力されたX線パラメータは、連続X線エネルギー周波数分布表示部3へ入力して、連続X線エネルギー周波数分布表示部3が前述した図4における表示装置MONに表示する。
【0043】
以上説明した機能を実施するためには、例えば図4に示すような形態を用いることができる。同図においてコンピュータPCがネットワークNを介して1つ或いは複数の画像生成装置MDに接続されている。この画像生成装置としては前述した各種撮影装置が該当する。または、不図示の撮影装置により撮影された画像が、予めファイルサーバFSに保存されており、それを画像生成装置と同等に扱えるようにしても、本発明を全く同じように適用することができる。
【0044】
以上説明した機能を実施するためには、図4に示すようなネットワークを介した接続に限定されるものではなく、図5に示すような構成によることもできる。本構成においては、コンピュータPCは透過厚特性データ生成部1と直接接続されており、直接透過厚特性データを受信する。また、透過厚特性データ生成部1がコンピュータPCを備えている場合は、本発明を透過厚特性データ生成装置の中に実現することも可能である。
【0045】
(第2実施の形態)
図2は、本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の構成を示す本実施例の機能ブロック図である。図8は、本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の動作を示すフローチャート図である。以下に、各ブロックの機能についてフローチャート順に説明する。
【0046】
図8における各ステップは、図4におけるコンピュータPCのハードディスクHDまたは光磁気ディスクMOまたはRAMまたはROMなどの記憶装置に格納されており、コンピュータPCのCPUが、各ステップを格納されている領域から読み出してフローチャート順に実行することにより、以下に記述するようなアクションが実行される。
【0047】
図4においてコンピュータPCはネットワークNを介して1つ或いは複数の透過厚特性データ生成装置MDに接続されている。透過厚特性データ生成装置は、後述する透過厚特性データ生成部を有し、透過厚特性データを生成する。または、不図示の透過厚特性データ生成装置により生成された透過厚特性データが、予めファイルサーバFSに保存されており、それを透過厚特性データ生成装置と同等に扱えるようにしても、本発明を全く同じように適用することができる。
【0048】
連続X線エネルギー周波数分布算出部2および連続X線エネルギー周波数分布表示部3はコンピュータPCおよびそれに内蔵された周辺機器により実現することができる。一例として、本発明による心胸郭比計測部2および心胸郭比表示部3は表示装置MONおよびハードディスクHDに格納されたプログラムとして実現することができる。この場合、不図示のユーザ入力によりハードディスクHDに保存されたプログラムがRAMに読み出され、前述したようにCPUがRAM内のプログラムを順次実行して前述した機能を実現し、処理の結果得られた画像が表示装置MONに表示される。ここで、表示装置MONは例えば、CRTモニタ、液晶ディスプレイ等を用いることができる。
【0049】
また、本発明を実施するプログラムはハードディスクHDに保存されることに限定される必要はなく、外部記憶装置としてコンピュータPCに接続された光磁気ディスクMO、あるいはネットワークを介して接続されるファイルサーバFSに記憶されるようにしてもよい。あるいは、本発明による連続X線エネルギー周波数分布算出部2および連続X線エネルギー周波数分布表示部3は、部分あるいは全てをコンピュータPCに装着された専用のハードウェアACCとして実現するようにしてもよい。
【0050】
図8において、「はじめ」のトリガーは、図2における連続X線エネルギー周波数分布算出部2の透過厚特性データ入力部210が透過厚特性データEをX線エネルギー周波数分布算出部220に入力したことが合図となる。透過厚特性データEは、図1における透過厚特性データ生成部1が透過厚特性データEを出力して、透過厚特性データ入力部210に入力することにより、取得する。ここで透過厚特性データEとは、均一な物質に連続X線を照射して得られる透過厚と透過強度との関係を示す特性データであり、図9の(a)のような特性データである。この特性データは、たとえば均一な物質が水である場合、図9の(b)のように、連続X線源と、透過厚が既知の容器と、X線の強度を測定するX線センサーとを用いて、X線の入力強度とX線の出力強度を測定することにより、得られる。具体的には,透過厚が短い容器から長い容器まで様々な場合に関して、それぞれ、入力強度と出力強度の比を求めることにより、透過強度比を求めて、プロットすることにより、図9の(a)のような透過厚特性データを得る。入力強度は、透過厚が0の場合における出力強度である。または、図9の(c)のようにあらかじめ透過厚が様々な容器をひとまとめにしておいて、連続X線源と、デジタルラジオグラフィ(DR)などのX線センサー配列を用いて測定すれば、図9の(a)の場合に比較して、手間がかからず、また短時間で測定が可能である。このような均一な物質における透過厚特性データを調べるための容器は、市販されており、安価である。また、CT(コンピュータ トモグラフィ)が置いてある施設の場合は、このCTのキャリブレーションをするための容器が備品として所持している場合が多く、このような場合は、このキャリブレーションをするための容器を透過厚特性データを取得するための容器として兼用することが可能である。均一な物質とは、本実施例では、水であるが、他の物質、たとえばアクリルであってもよいし、混合物質でもよい。均一な密度で構成されていて、透過厚に対して減衰することが観測できるような物質であればよい。たとえば、空気のように、透過厚に対して、ほとんど減衰しないような物質は、適さない。
【0051】
ステップS110では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、透過厚特性データEを用いて、最低周波数に対応する減弱係数Uaと最高周波数に対応する減弱係数Ucを求める。ここで、減弱係数とは、単位長さあたりにX線が減衰する程度を示す係数であり、物質に固有の係数である。また、X線エネルギー周波数に依存する。同一物質ならば、減弱係数は、一般に周波数が高い場合より周波数が低いの方が、大きい値になる。すなわち、図3のような連続X線エネルギー周波数分布である場合、最低周波数に対応する減弱係数Uaと、最高周波数に対応する減弱係数Ucは、Uc<Uaという関係にある。減弱係数Uaと減弱係数Ucは、透過厚特性データの透過厚強度を自然対数に変換した、図10のような片対数透過厚特性データを用いて、それぞれ、最大傾斜、最小傾斜を求めることにより、算出する。図9のような透過厚特性データにおける透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度比をI(x)とすると、
Ua=max{−dlog(I(x))/dx}
Ub=min{−dlog(I(x))/dx}
である。
【0052】
次に、ステップS120では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、減弱係数Ucと減弱係数Uaとの間をM分割する。分割方法は、等間隔で分割しても良いし、不等間隔で分割してもよい。たとえば、M=5で等間隔に分割する場合には、刻み幅をdU、分割した減弱係数を小さい方からU1,U2,U3,U4,U5とすると、
dU=(Ua−Uc)/4;
U1=Uc
U2=Uc+dU
U3=Uc+dU*2
U4=Uc+dU*3
U5=Uc+dU*4=Ua
となる。このMが大きいほど、エネルギー周波数分解能が高くなるが、後述するステップS140におけるX線エネルギー周波数分布算出部220の計算量が大きくなるため、計算時間が長くなる。Mはエネルギー周波数分解能と計算時間とを勘案して決定する。Mは、連続X線エネルギー周波数分布算出装置に固定定数としてあらかじめ決定して組み込んでも良いし、本装置が動作するときに、変数として外部から与えてもよい。
【0053】
次に、ステップS130では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、M分割した減弱係数からN個取り出して、重複なしの減弱係数パラメータセット{Un}を作成する。ここでNは、連続X線をいくつの離散エネルギー周波数で近似するのかを決定する近似モデル次数である。本発明では、連続X線を、次のように近似モデル化する。
【0054】
透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比を Fn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【0055】
【数5】
一方、連続X線は、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をI(x)、周波数をv、周波数vに対応する強度比をF(v)、周波数vに対応する減弱係数をU(v)としたとき、
I(x)=∫F(v)exp(−U(v)x)dv
であるため、近似モデル式は、連続X線を、N個の代表する離散エネルギー周波数で近似することに相当する。たとえば、N=1のときは、図11の(a)のように、連続X線エネルギー周波数分布を代表周波数1で近似することに相当し、また、N=2のときは、図11の(b)のように、代表周波数1と代表周波数2で近似することに相当する。同様に、N=3のときは、図11の(c)のように代表周波数1と代表周波数2と代表周波数3で近似することに相当する。後述のステップは、Nを決定したとき、一番よく近似している代表周波数をN個算出するためのステップである。このNは、連続X線エネルギー周波数分布算出装置に固定定数としてあらかじめ決定して組み込んでも良いし、本装置が動作するときに、変数として外部から与えてもよい。
【0056】
M=mであり、N−nである場合の、重複なしの減弱係数パラメータセット{Un}の数は、全部でmCn個である。ここでmCnは、
mCn=m!/{(m−n)!・n!}
である。たとえば、M=5であり、N=2である場合の、重複なしの減弱係数パラメータセット{Un}の数は、10個である。分割した減弱係数をU1,U2, U3,U4,U5とすると、
{U1,U2}、
{U1,U3}、
{U1,U4}、
{U1,U5}、
{U2,U2}、
{U2,U3}、
{U2,U4}、
{U2,U5}、
{U1,U4}、
{U1,U5}、
という10個のパラメータセットを作成する。
【0057】
次に、ステップS140では、X線エネルギー周波数分布算出部220が、すべての減弱係数パラメータセットに関して、誤差量eを最小にする強度比{Fn}と、その誤差量eを求める。図7は、ステップS140におけるフローチャートを詳細に表現した図である。図7における各ステップは、すべて、X線エネルギー周波数分布算出部220が実行する。まず、ステップS141で、近似モデル式を作成する。近似モデル式は、前述のS130で説明したように、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比をFn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【0058】
【数6】
である。次に、ステップS145で、減弱係数パラメータセット{Un}から1つの減弱係数パラメータセット{Un}を選択して、ステップS146で誤差量eを最小にする強度比{Fn}を算出する。誤差量eは、連続X線と近似モデル式との誤差量である。本実施例では、最小2乗誤差を採用する。I(x)を透過厚特性データから導かれる、連続X線の透過厚xに対応する透過強度とすると、
e=∫{I(x)−J(x)}
である。ここでJ(x)は、ステップS130で説明したようなM=5であり、N=2である場合のパラメータセットにおいて、{U1,U4}を選択した場合は、
J(x)=F1exp(−U1x)+F2exp(−U4x)
である。
【0059】
透過厚特性データは、離散データであることが多いし、また、連続関数データであっても、コンピュータで計算するときには離散データとして計算しなければならない。そのため、透過厚xをL個の離散的な透過厚で表現し、L個のうちi番目の透過厚をxiとすると、上式の誤差量eは、
【0060】
【数7】
となる。この誤差量eの未知パラメータは、N個の強度比Fn(n=1,2,...,N−1,N)である。このFnは、最小2乗法で求めることが可能である。最小2乗法は、途中で逆行列を計算する必要があるが、この逆行列の状態が不安定だったり、透過厚特性データに含まれる雑音が過大である場合、Fnを正しく求めることができない場合がある。透過厚特性データに含まれる雑音が過大であることがあらかじめ分かっている場合は、Jacobi法や、最急降下法や、共役勾配法などの反復法を使用することにより、雑音の影響を避けて、Fnを求めることが可能であるため、これらの反復法を使用してもよい。
【0061】
本実施例では、最小2乗誤差を採用したが、最小2乗平均誤差や、他の誤差規範を採用してもよい。さらに、本実施例は、減弱係数Unは、誤差量eの未知パラメータではないが、未知パラメータとして取り扱ってもよい。すなわち、本実施例におけるステップS120とステップS130を実行しないで、S140において、強度比{Fn}と減弱係数{Un}を非線形最適化手法を用いて、求めてもよい。非線形最適化手法は、たとえば最小2乗誤差を採用する場合、Gauss−Newton法や、Davidon Fletcher Powell法やシンプレックス法やニューラルネットワークを用いた反復法などを用いることになる。
【0062】
次にステップS147では、ステップS146で求めた強度比{Fn}と、誤差量eと、選択した減弱パラメータセット{Un}を関連データとして記憶する。ステップS130で説明したようなM=5であり、N=2である場合のパラメータセットにおいて、{U1,U4}を選択した場合は、
[誤差量e,{F1,F2},{U1,U4}]
を一連の関連があるデータとして記憶する。本実施例では、誤差量eに、強度比{F1,F2}と減弱係数{U1,4}を関連付けるように記憶する。
【0063】
次にステップS148では、ステップS130で作成したすべての減弱パラメータセット{Un}に関して、ステップS145、ステップS146、ステップS147を実行したかどうかを判断する。もし、実行していないと判断すると、ステップS145に戻り、まだ選択していない減弱パラメータセット{Un}を選択することになる。もし、実行したと判断すると、図7のフローチャートを終了して、ステップS150へ進む。
【0064】
次にステップS150では、まず、X線エネルギー周波数分布算出部220が、ステップS147で記憶した誤差量eの中で、一番小さい誤差量eを求めて、その誤差量eに関連付けられた強度比{Fn}と減弱係数{Un}を見つけて、強度比{Fn}と減弱係数{Un}を算出データとして出力する。次に、算出データは、X線パラメータ出力部230が入力として受信する。X線パラメータ出力部230は、算出データの中から、少なくとも強度比{Fn}をX線パラメータとして選択する。この際、強度比{Fn}の順番は、エネルギー周波数が小さい順番、または、大きい順番のどちらかで整列するように処理する。なお、X線パラメータは、強度比{Fn}に対応する減弱係数{Un}をX線パラメータに加えてもよい。減弱係数{Un}の順番は、強度比{Fn}の順番に対応するよう処理する。X線パラメータ出力部230がX線パラメータを選択し終えたら、X線パラメータ出力部230がX線パラメータを連続X線エネルギー周波数分布算出部2から出力する。
【0065】
次に、ステップS160では、減弱係数テーブル格納部250に格納されている減弱係数データと、ステップS150で出力した減弱係数{Un}とを使用して、X線エネルギー周波数分布算出部220が、減弱係数{Un}に対応するX線エネルギー周波数{Vn}を算出する。ここで減弱係数テーブル格納部250には、透過厚特性データを測定するときに使用した、均一な物質に関する減弱係数が格納されている。この減弱係数は、X線エネルギー周波数に関連付けられており、これを利用して、減弱係数に対応するX線エネルギー周波数を求める。求めたX線エネルギー周波数{Vn}を出力すると、図8におけるフローチャートを終了する。エネルギー周波数{Vn}の順番は、強度比{Fn}の順番に対応するよう処理する。
【0066】
本発明を使用すれば、たとえば、軟線と硬線の割合を調べたいときは、N=2として、図6におけるステップを実行して、ネルギー周波数が小さい順に、強度比{F1,F2}を出力すれば、軟線と硬線の割合は、F1:F2として求めることができる。さらに、どのエネルギー周波数を軟線と硬線に代表周波数として割り当てたかを、エネルギー周波数{V1,V2}により取得することも可能である。
【0067】
連続X線エネルギー周波数分布算出部2から出力されたX線パラメータは、連続X線エネルギー周波数分布表示部3へ入力して、連続X線エネルギー周波数分布表示部3が前述した図4における表示装置MONに表示する。
【0068】
以上説明した機能を実施するためには、例えば図4に示すような形態を用いることができる。同図においてコンピュータPCがネットワークNを介して1つ或いは複数の画像生成装置MDに接続されている。この画像生成装置としては前述した各種撮影装置が該当する。または、不図示の撮影装置により撮影された画像が、予めファイルサーバFSに保存されており、それを画像生成装置と同等に扱えるようにしても、本発明を全く同じように適用することができる。
【0069】
以上説明した機能を実施するためには、図4に示すようなネットワークを介した接続に限定されるものではなく、図5に示すような構成によることもできる。本構成においては、コンピュータPCは透過厚特性データ生成部1と直接接続されており、直接透過厚特性データを受信する。また、透過厚特性データ生成部1がコンピュータPCを備えている場合は、本発明を透過厚特性データ生成装置の中に実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1実施の形態における本発明の連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】第2実施の形態における本発明の連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】連続X線エネルギー周波数分布と、最低周波数、最高周波数との関係を表した図である。
【図4】実施形態における機器構成の1例を示すブロック図である。
【図5】実施形態における機器構成の1例を示すブロック図である。
【図6】第1実施の形態における本発明の連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の動作を示すフローチャート図である。
【図7】フローチャートのステップS140に関するサブフローチャートである。
【図8】第2実施の形態における本発明の連続X線エネルギー周波数分布算出方法および装置の動作を示すフローチャート図である。
【図9】透過厚特性データに関する説明図である。
【図10】最低周波数に対応する減弱係数と最高周波数に対応する減弱係数を求める方法に関する説明図である。
【図11】連続X線エネルギー周波数分布と、離散代表周波数との関係を表した図である。
【符号の説明】
【0071】
1 透過厚特性データ生成部
2 連続X線エネルギー周波数分布算出部
3 連続X線エネルギー周波数分布表示部
210 透過厚特性データ入力部
220 X線エネルギー周波数分布算出部
230 X線パラメータ出力部
240 近似モデル式作成部
250 減弱係数テーブル格納部
E 透過厚特性データ
F 算出データ
G X線パラメータ
K 近似モデル式
H 減弱係数データ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一な物質に連続X線を照射して得られる透過厚と透過強度との関係を示す透過厚特性データを入力する透過厚特性データ入力部と、
連続X線をN種類(N>=1)の離散X線エネルギー周波数で近似する近似モデル式を作成する近似モデル式作成部と、
前記透過厚特性データと、近似モデル式と、を用いて、前記連続X線に含まれるN種類のX線エネルギー周波数の強度比と、前記N種類のX線エネルギー周波数の減弱係数と、を算出するX線エネルギー周波数分布算出部と、
前記X線エネルギー周波数分布算出部で算出した複数の算出データのうち、少なくとも強度比を含む算出データを出力するX線パラメータ出力部と、
を有することを特徴とし、
前記近似モデル式は、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比をFn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【数1】
であること、
を特徴とする連続X線エネルギー周波数分布算出装置。
【請求項2】
前記均一な物質に関する減弱係数テーブルを格納する減弱係数テーブル格納部と、
前記X線エネルギー周波数分布算出部で算出した減弱係数と、前記減弱係数テーブル格納部に格納されている減弱係数テーブルとを用いて、算出した減弱係数に対応するX線エネルギー周波数を算出するX線エネルギー周波数分布算出部と、
を有することを特徴とする、請求項1記載の連続X線エネルギー周波数分布算出装置。
【請求項3】
前記X線エネルギー周波数分布算出部において、N=2として軟線の割合と硬線の割合の2種類を算出すること、
を特徴とする、請求項1、2、記載の連続X線エネルギー周波数分布算出装置。
【請求項4】
前記X線エネルギー周波数分布算出部において、透過厚特性データの透過厚をx、透過強度をI(x)とした場合に、
e=∫{I(x)−J(x)}2dx
という誤差量eを最小にする強度比Fnと減弱係数Unを算出すること、
を特徴とする、請求項1、2、3記載の連続X線エネルギー周波数分布算出装置。
【請求項5】
前記均一な物質とは、水であることを特徴とする請求項1、2、3、4記載の連続X線エネルギー周波数分布算出装置。
【請求項6】
前記均一な物質とは、アクリルであることを特徴とする請求項1、2、3、4記載の連続X線エネルギー周波数分布算出装置。
【請求項7】
均一な物質に連続X線を照射して得られる透過厚と透過強度との関係を示す透過厚特性データを入力する透過厚特性データ入力ステップと、
連続X線をN種類(N>=1)の離散X線エネルギー周波数で近似する近似モデル式を作成する近似モデル式作成ステップと、
前記透過厚特性データと、近似モデル式と、を用いて、前記連続X線に含まれるN種類のX線エネルギー周波数の強度比と、前記N種類のX線エネルギー周波数の減弱係数と、を算出するX線エネルギー周波数分布算出ステップと、
前記X線エネルギー周波数分布算出部で算出した複数の算出データのうち、少なくとも強度比を含む算出データを出力するX線パラメータ出力ステップと、
を有することを特徴とし、
前記近似モデル式は、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比をFn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【数2】
であること、
を特徴とする連続X線エネルギー周波数分布算出方法。
【請求項8】
前記均一な物質に関する減弱係数テーブルを格納する減弱係数テーブル格納ステップと、
前記X線エネルギー周波数分布算出部で算出した減弱係数と、前記減弱係数テーブル格納部に格納されている減弱係数テーブルとを用いて、算出した減弱係数に対応するX線エネルギー周波数を算出するX線エネルギー周波数分布算出ステップと、
を有することを特徴とする、請求項7記載の連続X線エネルギー周波数分布算出方法。
【請求項9】
前記X線エネルギー周波数分布算出ステップにおいて、N=2として軟線の割合と硬線の割合の2種類を算出すること、
を特徴とする、請求項7、8、記載の連続X線エネルギー周波数分布算出方法。
【請求項10】
前記X線エネルギー周波数分布算出ステップにおいて、透過厚特性データの透過厚をx、透過強度をI(x)とした場合に、
e=∫{I(x)−J(x)}2dx
という誤差量eを最小にする強度比Fnと減弱係数Unを算出すること、
を特徴とする、請求項7、8、9記載の連続X線エネルギー周波数分布算出方法。
【請求項11】
前記均一な物質とは、水であることを特徴とする請求項7、8、9、10記載の連続X線エネルギー周波数分布算出方法。
【請求項12】
前記均一な物質とは、アクリルであることを特徴とする請求項7、8、9、10記載の連続X線エネルギー周波数分布算出方法。
【請求項1】
均一な物質に連続X線を照射して得られる透過厚と透過強度との関係を示す透過厚特性データを入力する透過厚特性データ入力部と、
連続X線をN種類(N>=1)の離散X線エネルギー周波数で近似する近似モデル式を作成する近似モデル式作成部と、
前記透過厚特性データと、近似モデル式と、を用いて、前記連続X線に含まれるN種類のX線エネルギー周波数の強度比と、前記N種類のX線エネルギー周波数の減弱係数と、を算出するX線エネルギー周波数分布算出部と、
前記X線エネルギー周波数分布算出部で算出した複数の算出データのうち、少なくとも強度比を含む算出データを出力するX線パラメータ出力部と、
を有することを特徴とし、
前記近似モデル式は、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比をFn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【数1】
であること、
を特徴とする連続X線エネルギー周波数分布算出装置。
【請求項2】
前記均一な物質に関する減弱係数テーブルを格納する減弱係数テーブル格納部と、
前記X線エネルギー周波数分布算出部で算出した減弱係数と、前記減弱係数テーブル格納部に格納されている減弱係数テーブルとを用いて、算出した減弱係数に対応するX線エネルギー周波数を算出するX線エネルギー周波数分布算出部と、
を有することを特徴とする、請求項1記載の連続X線エネルギー周波数分布算出装置。
【請求項3】
前記X線エネルギー周波数分布算出部において、N=2として軟線の割合と硬線の割合の2種類を算出すること、
を特徴とする、請求項1、2、記載の連続X線エネルギー周波数分布算出装置。
【請求項4】
前記X線エネルギー周波数分布算出部において、透過厚特性データの透過厚をx、透過強度をI(x)とした場合に、
e=∫{I(x)−J(x)}2dx
という誤差量eを最小にする強度比Fnと減弱係数Unを算出すること、
を特徴とする、請求項1、2、3記載の連続X線エネルギー周波数分布算出装置。
【請求項5】
前記均一な物質とは、水であることを特徴とする請求項1、2、3、4記載の連続X線エネルギー周波数分布算出装置。
【請求項6】
前記均一な物質とは、アクリルであることを特徴とする請求項1、2、3、4記載の連続X線エネルギー周波数分布算出装置。
【請求項7】
均一な物質に連続X線を照射して得られる透過厚と透過強度との関係を示す透過厚特性データを入力する透過厚特性データ入力ステップと、
連続X線をN種類(N>=1)の離散X線エネルギー周波数で近似する近似モデル式を作成する近似モデル式作成ステップと、
前記透過厚特性データと、近似モデル式と、を用いて、前記連続X線に含まれるN種類のX線エネルギー周波数の強度比と、前記N種類のX線エネルギー周波数の減弱係数と、を算出するX線エネルギー周波数分布算出ステップと、
前記X線エネルギー周波数分布算出部で算出した複数の算出データのうち、少なくとも強度比を含む算出データを出力するX線パラメータ出力ステップと、
を有することを特徴とし、
前記近似モデル式は、透過厚をx、透過厚xに対応する透過強度をJ(x)、n番目のX線エネルギー周波数の強度比をFn、n番目のX線エネルギー周波数の減弱係数をUnとした場合に、
【数2】
であること、
を特徴とする連続X線エネルギー周波数分布算出方法。
【請求項8】
前記均一な物質に関する減弱係数テーブルを格納する減弱係数テーブル格納ステップと、
前記X線エネルギー周波数分布算出部で算出した減弱係数と、前記減弱係数テーブル格納部に格納されている減弱係数テーブルとを用いて、算出した減弱係数に対応するX線エネルギー周波数を算出するX線エネルギー周波数分布算出ステップと、
を有することを特徴とする、請求項7記載の連続X線エネルギー周波数分布算出方法。
【請求項9】
前記X線エネルギー周波数分布算出ステップにおいて、N=2として軟線の割合と硬線の割合の2種類を算出すること、
を特徴とする、請求項7、8、記載の連続X線エネルギー周波数分布算出方法。
【請求項10】
前記X線エネルギー周波数分布算出ステップにおいて、透過厚特性データの透過厚をx、透過強度をI(x)とした場合に、
e=∫{I(x)−J(x)}2dx
という誤差量eを最小にする強度比Fnと減弱係数Unを算出すること、
を特徴とする、請求項7、8、9記載の連続X線エネルギー周波数分布算出方法。
【請求項11】
前記均一な物質とは、水であることを特徴とする請求項7、8、9、10記載の連続X線エネルギー周波数分布算出方法。
【請求項12】
前記均一な物質とは、アクリルであることを特徴とする請求項7、8、9、10記載の連続X線エネルギー周波数分布算出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−68711(P2007−68711A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258011(P2005−258011)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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