説明

遅延回路及びそれを用いた映像信号処理回路

【課題】ドレイン・基板間の寄生容量を軽減させる。
【解決手段】充電用・放電用トランジスタとそれらのソースに接続された容量素子とを有したスイッチド・キャパシタ部を複数有し、入力信号が充電用トランジスタのドレイン各々に対して共通に入力され且つ容量素子を充電させるように接続されるとともに、放電用トランジスタのドレイン各々から容量素子を放電させて出力信号が出力されるように接続されるスイッチド・キャパシタ群と、充電用及び放電用トランジスタのゲート各々のオン・オフを制御して容量素子各々を入力信号に基づいて順次充電させるとともに、当該順次充電の際に前回充電しておいた容量素子を放電させることで出力信号を順次出力させるスイッチング制御部と、を有し、隣接する二つの前記スイッチド・キャパシタ部において、双方の充電用・放電用トランジスタ同士を隣接させ、双方の充電用・放電用トランジスタのドレインを共通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅延回路及びそれを用いた映像信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
世界で採用されるアナログカラーテレビ方式としては、日本や北中米で主に採用されるNTSC(National Television Standards Committee)方式、西欧州諸国で主に採用されるPAL(Phase Alternation by Line)方式、東欧州諸国で主に採用されるSECAM(SEquential Couleur A Memoire)方式、に大別される。NTSC方式は、水平方向の走査線数が525本で毎秒30フレームのインターレース走査であり、水平走査周波数は15.75kHz、垂直走査周波数は60Hzである。PAL方式は、水平方向の走査線数が625本で、走査線毎に位相を反転させた、毎秒25フレームのインターレース走査である。SECAM方式は、水平方向の走査線数が625本で、毎秒25フレームのインターレース走査である。このように、NTSC、PAL、SECAMのいずれの方式であっても、基本的には、インターレース走査を行っており、図8に示すように、1フレームを奇数フィールドと偶数フィールドの二回に分けて走査することで、1枚の画面を伝送する。詳述すると、インターレース走査では、奇数フィールドの全走査線を1本の走査線おきに画面の上から下まで走査する。そして、奇数フィールドの最後の走査線の走査を半分で中止して、奇数フィールドの全走査線の間を埋めるように、偶数フィールドの全走査線を上から下まで走査する。
【0003】
また、NTSC、PAL、SECAM方式では、テレビカメラで撮像したR(赤)、G(緑)、B(青)の映像信号をそのままの形で送らず、その映像信号を、画面の明るさを表現する輝度信号Yと画面の色の濃淡度合いを表現するクロマ信号Cとに変換し、さらに、輝度信号Yとクロマ信号Cとを合成したコンポジット信号SCを送るという方式を採用している。図9は、クロマ信号C、輝度信号Y、コンポジット信号SCの波形図の一例を示す図である。図9(a)に示すクロマ信号Cは、R信号及びB信号から輝度信号Yを差し引いた2つの色差信号R−Y、B−Yを互いに直交するI・Q信号(NTSC方式の場合)又はU・V信号(PAL方式の場合)へ変換するとともに、それらを合成して振幅変調した信号である。また、クロマ信号Cは、カラーバースト信号BSと搬送色信号CAとが含まれる。尚、カラーバースト信号BSは、搬送色信号CAの位相と振幅の基準とする信号であり、搬送色信号CAとは、位相が色相を示すとともに振幅が彩度を示す信号である。図9(b)に示す輝度信号Yは、水平同期信号HSYNCと輝度信号YAとが含まれる。尚、水平同期信号HSYNCとは、水平方向の1本の走査線の開始を示す信号であり、隣接する二つの水平同期信号HSYNCの間の期間は、「1H期間(1水平走査期間:約64μsec)」、と呼ばれている。また、輝度信号YAとは、輝度の内容を示す信号である。図9(c)に示すコンポジット信号SCは、図9(a)に示したクロマ信号Cと、図9(b)に示した輝度信号Yと、を合成したものである。詳述すると、コンポジット信号SCは、クロマ信号Cのカラーバースト信号BSを、輝度信号Yのバックポーチへと重畳させるとともに、クロマ信号Cの搬送色信号CAを輝度信号YAに重畳させた波形となる。
【0004】
ところで、海外用のPAL・SECAM方式では、受信側の映像信号処理回路において、アンテナで受信した映像信号より復調された色差信号R−Y、B−Yを1H期間遅延させるとともに、その1H期間遅延させた後の信号を最新の色差信号R−Y、B−Yと合成することによって、伝送経路での歪みを除去するとともに、ライン補正によって全走査線の色差情報を揃えることが定められている。このように1H期間遅延させるための回路(以下、1H遅延回路と称する。)としては、これまで、CCD(Charged Coupled Device)遅延素子を用いたタイプが主流であった(例えば、以下に示す特許文献1を参照)。
【0005】
しかしながら、1H遅延回路用のCCD遅延素子以外の映像信号処理回路は、これまで、アナログ信号を取り扱い易いバイポーラ・プロセスで専ら設計・製造されていたが、バイポーラとCMOSの両方を使える次世代のBiCMOSプロセスに変更すれば、CCD遅延素子を含めて当該映像信号処理回路を1チップ化して、安価に設計・製造することが可能となる。また、1H遅延回路としては、CCD遅延素子よりも安価であり且つこれまでアナログフィルタとして専ら利用されていた「スイッチド・キャパシタ回路」を代用することも提案されている。
【0006】
図10は、従来のスイッチド・キャパシタ回路を用いた遅延回路の構成を示す図である。尚、図10に示す遅延回路は、説明を簡略化するため、スイッチド・キャパシタ部を2組分設けた構成としているが、必要な遅延時間に応じてスイッチド・キャパシタ部の数が変化することになる。
【0007】
NMOSトランジスタM1、M2は、双方のソース電極が共通接続されており、そのソース電極には容量素子C1が接続され、一組のスイッチド・キャパシタ部703aを構成する。同様に、NMOSトランジスタM3、M4は、双方のソース電極が共通接続されており、そのソース電極には容量素子C2が接続され、一組のスイッチド・キャパシタ部703bを構成する。尚、NMOSトランジスタM1、M3のドレイン電極には遅延対象の入力電圧VINが印加され、NMOSトランジスタM2、M4のドレイン電極はボルテージフォロワ702の非反転入力端子へと接続される。
【0008】
すなわち、スイッチド・キャパシタ部703aにおいて、NMOSトランジスタM1は、入力信号INに基づいて容量素子C1を充電させる充電用MOSトランジスタとして機能し、NMOSトランジスタM2は、容量素子C1を放電させて出力信号OUTを出力させる放電用トランジスタとして機能する。また、スイッチド・キャパシタ部703bにおいて、NMOSトランジスタM3は、入力信号INに基づいて容量素子C2を充電させる充電用MOSトランジスタとして機能し、NMOSトランジスタM4は、容量素子C2を放電させて出力信号OUTを出力させる放電用MOSトランジスタとして機能する。
【0009】
さらに、かかる遅延回路には、NMOSトランジスタM1〜M4のゲート電極のオン・オフを制御するためのスイッチング制御回路701が設けられる。尚、スイッチング制御回路701は、NMOSトランジスタM1のゲート電極にスイッチ信号SW1を供給し、NMOSトランジスタM2、M3のゲート電極にスイッチ信号SW2を供給し、NMOSトランジスタM4のゲート電極にスイッチ信号SW3を供給する。かかる構成により、ボルテージフォロワ702において、入力電圧VINをNMOSトランジスタM1〜M4のスイッチング周期分遅延させた出力電圧VOUTが出力される。
【0010】
図11は、図10に示した遅延回路の動作例を示すタイミングチャートである。尚、時刻T0〜T5で区切られた各期間において、入力電圧VINのレベルがD0〜D4へと変動したものとする(図11(a)参照)。また、時刻T0〜T5で区切られた各期間は、NMOSトランジスタM1〜M4のスイッチング周期に対応づけられる。
【0011】
まず、時刻T0において、NMOSトランジスタM1〜M4のゲート電極へと供給されるスイッチ信号SW1〜SW3は、「L、H、L」となり、時刻T1まで当該状態を継続する(図11(b)〜(d)参照)。すなわち、時刻T0において、NMOSトランジスタM1、M4はオフ、NMOSトランジスタM2、M3はオンとなり、時刻T1まで当該状態を継続する(図11(e)〜(g)参照)。よって、時刻T0〜T1の期間において、NMOSトランジスタM3と容量素子C2の充電経路が形成されるので、かかる期間の入力電圧VINのレベルD0に応じた電荷が、NMOSトランジスタM3を介して容量素子C2へと充電されることで、入力電圧VINのレベルD0の情報が保持される(図11(i)参照)。一方、NMOSトランジスタM2と容量素子C1の放電経路が形成されることになるが、容量素子C1にはまだ電荷が保持されておらず(図11(h)参照)、出力電圧VOUTは不定のままである(図11(j)参照)。
【0012】
つぎに、時刻T1において、NMOSトランジスタM1〜M4のゲート電極へと供給されるスイッチ信号SW1〜SW3は、「H、L、H」となり、時刻T2まで当該状態を継続する(図11(b)〜(d)参照)。すなわち、時刻T1において、NMOSトランジスタM1、M4はオン、NMOSトランジスタM2、M3はオフとなり、時刻T2まで当該状態を継続する(図11(e)〜(g)参照)。よって、時刻T1〜T2の期間において、NMOSトランジスタM1と容量素子C1の充電経路が形成されるので、かかる期間の入力電圧VINのレベルD1に応じた電荷が、NMOSトランジスタM1を介して容量素子C1へと充電されることで、入力電圧VINのレベルD1の情報が保持される(図11(h)参照)。一方、NMOSトランジスタM4と容量素子C2の放電経路が形成されるので、容量素子C2において保持されていた電荷が放電されることによって当該電荷に応じたレベルD0の入力電圧VINが読み出されて(図11(i)参照)、ボルテージフォロワ702の非反転入力端子へと印加される。よって、ボルテージフォロワ702において、レベルD0の入力電圧VINをNMOSトランジスタM1〜M4のスイッチング周期分遅延させた出力電圧VOUTが、出力される(図11(j)参照)。そして、以後、時刻T2〜T3、時刻T3〜T4、時刻T4〜T5の各期間において、以上のような動作が繰り返し行われる。
【0013】
ところで、NMOSトランジスタM1〜M4は、一般的に、図12に示すような所謂ウェル型の断面構造を呈する。すなわち、P型シリコン基板16上にゲート絶縁膜用の二酸化シリコン(SiO2)14を介して多結晶ポリシリコン13が形成され、さらに、その上にゲート18が形成される。また、P型シリコン基板16上にはN+領域(N型不純物濃度が高い領域)15が形成され、その上にはドレイン17、ソース19がそれぞれ形成される。尚、10、11、12は、それぞれ、ドレイン17、ゲート18、ソース19から引き出されたドレイン電極、ゲート電極、ソース電極である。一方、PMOSトランジスタの場合は、図12に示したNMOSトランジスタ各部の導電型を反転したものとなる。
【0014】
図13は、図12に示したNMOSトランジスタの一般的な断面構造を用いて、図10に示した遅延回路を構成するスイッチド・キャパシタ回路部(NMOSトランジスタM1〜M4)のレイアウトならびに各種接続関係を説明する図である。尚、スイッチド・キャパシタ部703aのP型シリコン基板16aと、スイッチド・キャパシタ部703bのP型シリコン基板16cは、それぞれ分離させて図示してあるが、同一のシリコンウェハ上に形成されたものである。図13に示すように、スイッチド・キャパシタ部703aにおいて、NMOSトランジスタM1、M2を隣接配置させるとともに、双方のソース19a、19bとを共通させた配置としてある。同様に、スイッチド・キャパシタ部703bにおいて、NMOSトランジスタM3、M4を隣接配置させるとともに、双方のソース19c、19dとを共通させた配置としてある。このように、一般的には、ソース19a、19b並びにソース19c、19dを共通させた配置とすることで、レイアウト設計面での集積化を図っている。
【特許文献1】特開平9−191472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、ソースとP型シリコン基板間や、ドレインとP型シリコン基板間には、P型・N型と導電型が異なって隣接しているので、それぞれ寄生容量Csb(ソース・基板間)、Cdb(ドレイン・基板間)が潜在的に存在する。尚、寄生容量Csb、Cdbは、トランジスタの幅Wと、ドレイン長Ldを用いて、つぎの式(1)で表現される。但し、αは、トランジスタ毎に設定される係数である。
Csb = Cdb = (W+α)×(Ld+α) ・・・ 式(1)
【0016】
図13においても、スイッチド・キャパシタ部703aにおいて、ドレイン17aとP型シリコン基板16a間には寄生容量Cdb1が存在し、ドレイン17bとP型シリコン基板16a間には寄生容量Cdb2が存在する。また、スイッチド・キャパシタ部703bにおいて、ドレイン17cとP型シリコン基板16b間には寄生容量Cdb3が存在し、ドレイン17dとP型シリコン基板16b間には寄生容量Cdb4が存在する。尚、ソース19a、19bとP型シリコン基板16a間には寄生容量Csb1が存在し、同様に、ソース19c、19dとP型シリコン基板16b間には寄生容量Csb2が存在するが、ソース電極12aには容量素子C1が接続されるとともに、ソース電極12cには容量素子C2が接続される。すなわち、寄生容量Csb1と容量素子C1が並列接続され、寄生容量Csb2と容量素子C2が並列接続されたといえる。ここで、容量素子C1、C2は一般的にピコ(F)オーダーであるのに対して、寄生容量Csb1、Csb2は通常フェムト(F)オーダーであるので無視しても差し支えない。よって、図13に示す遅延回路において、ドレイン・基板間の寄生容量Cdb1〜Cdb4のみを考慮すればよい。
【0017】
ここで、遅延回路として必要とする遅延時間に応じて、スイッチド・キャパシタ部703a、703bを数多く設ける必要があるが、この結果として、ドレイン・基板間の寄生容量Cdb1〜Cdb4の数が増えて、それらを並列接続させた場合の合成容量が、遅延回路の信号経路上に出現することになる。そして、この合成容量によって、遅延回路の最終的な出力波形を鈍らせるとともに、ひいては、遅延特性を悪化させるという課題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するための主たる発明は、入力信号を遅延させた出力信号を得る遅延回路において、充電用MOSトランジスタ及び放電用MOSトランジスタと前記充電用及び前記放電用MOSトランジスタのソースに接続されて前記充電用及び前記放電用MOSトランジスタのゲートのオン・オフによって充放電がなされる容量素子とを有したスイッチド・キャパシタ部を複数有し、前記入力信号が前記充電用MOSトランジスタのドレイン各々に対して共通に入力され且つ前記容量素子を充電させるように接続されるとともに、前記放電用MOSトランジスタのドレイン各々から前記容量素子を放電させて前記出力信号が出力されるように接続されるスイッチド・キャパシタ群と、前記充電用及び前記放電用MOSトランジスタのゲート各々のオン・オフを制御することで、前記容量素子各々を前記入力信号に基づいて順次充電させていくととともに、当該順次充電の際に前回充電しておいた前記容量素子を放電させることで前記出力信号を順次出力させていくスイッチング制御部と、を有しており、前記複数のスイッチド・キャパシタ部のうち隣接する二つの前記スイッチド・キャパシタ部において、双方の前記充電用MOSトランジスタ同士を隣接させるとともに双方の前記放電用MOSトランジスタ同士を隣接させ、前記双方の充電用MOSトランジスタのドレインを共通させるとともに前記双方の放電用MOSトランジスタのドレインを共通させることとする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ドレイン・基板間の寄生容量を軽減させた、スイッチド・キャパシタを利用した遅延回路及びそれを用いた映像信号処理回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<テレビ受信システムの構成>
図1は、本発明に係るテレビ受信システムの構成図である。
チューナ120は、アンテナ110で受信したテレビジョン放送の映像信号の中から、受信対象とするチャンネルの信号を抽出した後にそれを増幅出力するフロントエンド処理回路である。尚、テレビジョン放送の映像信号は、PAL方式又はSECAM方式に準拠したものであり、テレビカメラによって撮像された色の三原色(R、G、B)情報を有する。
【0021】
中間周波フィルタ130は、チューナ120から出力される信号から中間周波信号IFのみを抽出するフィルタである。
映像中間周波処理回路140は、中間周波フィルタ130において抽出された中間周波信号IFを検波してコンポジット信号SCを抽出する回路である。
クランプ回路150は、映像中間周波処理回路140より抽出されたコンポジット信号SCのペデスタルレベルを所定レベルに固定化するための回路である。
YC分離回路160は、クランプ回路150から供給されるコンポジット信号SCを、輝度信号Yとクロマ信号Cとに同期分離する回路である。
輝度信号処理回路170は、YC分離回路160から供給される輝度信号Yのコントラスト調整やブランキング調整を行う回路である。
【0022】
色信号処理回路180は、YC分離回路160から供給されるクロマ信号Cのチャネル毎のゲイン調整や、カラーキラー等の処理を行う回路である。
色復調回路190は、主に、色信号処理回路180での各種処理が施されたクロマ信号C’に基づいて、色差信号R−Y、B−Yを復調する回路である。
【0023】
マトリクス回路200は、色復調回路190で復調された色差信号R−Y、B−Yと、輝度信号処理回路10での各種処理が施された輝度信号Y’を合成して、3つのR信号、G信号、B信号から成る映像信号を復元する回路である。
RGBドライバ210は、マトリクス回路200から供給された3つのR信号、G信号、B信号に基づいて、ディスプレイ220に所望のカラー映像を再現するための駆動信号ROUT、GOUT、BOUTを生成する駆動回路である。
【0024】
<映像信号処理回路の構成>
図2は、本発明の『遅延回路』の一実施形態に係る1H遅延回路400を有したアナログカラーテレビ用の映像信号処理回路300の構成図である。尚、映像信号処理回路300は、PAL方式の映像信号を主に処理対象とするものであるが、SECAMデコーダ500を外付けすることでSECAM方式の映像信号についても処理可能である。尚、映像信号処理回路300は、SECAMデコーダ500も併せて集積化する実施形態としてもよい。また、映像信号処理回路300は、バイポーラとCMOSの両方を使えるBiCMOSプロセスによって設計・製造される集積回路とする。
【0025】
映像信号処理回路300は、図1に示したクランプ回路150、YC分離回路160、輝度信号処理回路170、色信号処理回路180、色復調回路190、マトリクス回路200、RGBドライバ210、を1チップに集積化した場合とするが、チューナ120、中間周波フィルタ130、映像中間周波処理回路140を含めて1チップ化してもよい。
【0026】
クランプ回路150、YC分離回路160、マトリクス回路200、RGBドライバ210は、前述と同様であるため、説明を省略する。
【0027】
輝度信号処理回路170は、遅延ライン171、シャープネス調整部172、ブラック・ストレッチ処理部173、コントラスト調整部174を有する。遅延ライン171は、クロマ信号Cの復調処理との時間差を調整すべく、輝度信号Yを遅延させる回路である。シャープネス調整部172は、輝度信号Yに基づく画像の輪郭補正処理を行い、ブラック・ストレッチ処理部173は、輝度信号Yに基づく画像の暗部の解像度を上げて黒つぶれを防止する処理を行い、コントラスト調整部174は、輝度信号Yに基づく画像の明暗の差を調整する処理を行う。すなわち、シャープネス調整部172、ブラック・ストレッチ処理部173、コントラスト調整部174は、いわゆるエフェクタとして機能する。
【0028】
色信号処理回路180は、ゲイン調整部181、カラーキラー回路182を有する。ゲイン調整部181は、クロマ信号Cに含まれるカラーバースト信号SCを基準として、クロマ信号Cをチャンネルに応じた適切なレベルに調整するための処理を行い、カラーキラー回路182は、白黒放送時に色復調回路190が働くとノイズが現れるので、カラーバースト信号SCを検出して搬送色信号CAを色復調回路190に送らないようにするための処理を行う。
【0029】
色復調回路190は、同期検波回路191、色合い調整PLL回路197、1H遅延回路400、加算器198、カラークランプ回路199、を有する。
【0030】
同期検波回路191は、PAL方式の場合のクロマ信号Cを処理対象とするものであって、副搬送波信号発振器194において発振生成された副搬送波信号fscと、色信号処理回路180から供給されたクロマ信号C’とを乗算することで同期検波を行い、色差信号B−Y、R−Yを同時に出力する。詳述すると、副搬送波信号fscを位相シフタ195によって90°位相シフトした後、乗算器192においてクロマ信号C’と掛け合わせることによって、色差信号B−Yが検波復調される。また、乗算器193において、副搬送波信号fscとクロマ信号C’と掛け合わせることで色差信号R−Yが検波復調される。なお、乗算器192、193でそれぞれ検波復調された色差信号B−Y、R−Yには高調波成分が含まれている。このため、通常、LPF196によってその高調波成分が取り除かれる。ここで、同期検波回路191において検波復調された色差信号B−Y、R−Yと、それに対応する輝度信号Yの波形図の一例を図3に示しておく。
【0031】
色合い調整用PLL回路197は、PLL回路の一部を構成する発振回路(不図示)にて生成された発振クロック信号の位相を、クロマ信号Cに含まれるカラーバースト信号SCの位相と一致させるPLL制御を行うことによって、クロマ信号C’の色合いの調整を行うPLL回路である。
【0032】
SECAMデコーダ500は、SECAM方式の場合のクロマ信号Cを処理対象とする外付け回路であって、YC分離回路160後のクロマ信号Cが供給され、そのクロマ信号Cから検波復調された色差信号B−Y、R−Yを出力する。そして、この検波復調された色差信号B−Y、R−Yは映像信号処理回路300へと供給される。尚、SECAMデコーダ500は、PAL方式の場合の同期検波回路191と異なり、SECAM方式に従って、色差信号B−Y、R−Yを1H期間毎に交互に出力する。すなわち、SECAMデコーダ500は、色差信号B−Yを出力する時には色差信号R−Yを出力せず、また、色差信号R−Yを出力する時には色差信号B−Yを出力しない。
【0033】
クランプ回路600は、SECAMデコーダ500から供給された色差信号B−Y、R−Yを所定レベルに固定する回路である。
スイッチ回路601は、同期検波回路191から同時に供給されるPAL方式の場合の色差信号B−Y、R−Y、又は、クランプ回路600から交互に供給されるSECAM方式の場合の色差信号B−Y、R−Yのいずれか一方を、受信した映像信号のアナログカラーテレビ方式に従って選択する回路である。
【0034】
1H遅延回路400は、スイッチ回路601から供給された色差信号B−Y、R−Yを、1H期間(1水平走査期間:約64μsec)遅延させる遅延回路である。尚、1H期間は、図11に示したとおり、隣接する二つの水平同期信号HSYNCの間の期間である。
【0035】
加算器198は、スイッチ回路601から供給された色差信号B−Y、R−Yと、1H遅延回路400によって1H期間遅延させた色差信号B−Y、R−Yを加算する回路である。この加算によって、伝送経路でのクロマ信号Cの歪みを除去するとともに、ライン補正によって全走査線の色差情報を揃えられる。なお、加算器198の加算結果は、カラークランプ回路199において所定レベルに固定された後、マトリクス回路200へと供給される。この結果、マトリクス回路200は、輝度信号処理回路170から供給された輝度信号Y’と、カラークランプ回路199から供給された色差信号B−Y、R−Yに基づいて、テレビカメラによって撮像された色の三原色(R、G、B)情報を再生する。
【0036】
<1H遅延回路の構成>
図4は、1H遅延回路400の回路構成の一例を示した図である。
1H遅延回路400は、スイッチド・キャパシタ群412と、スイッチング制御回路413と、を有する。尚、1H遅延回路400は、色差信号B−Y、R−Yそれぞれに設けられる。
【0037】
スイッチド・キャパシタ群412は、充電用MOSトランジスタ及び放電用MOSトランジスタと、充電用及び放電用MOSトランジスタのソースに接続されて充電用及び放電用MOSトランジスタのゲートのオン・オフによって充放電がなされる容量素子とを有したスイッチド・キャパシタ部を1H期間に応じて複数有し、入力信号IN(色差信号B−Y、R−Y)が、充電用MOSトランジスタのドレイン各々に対して共通に入力され且つ容量素子を充電させるように接続されるとともに、放電用MOSトランジスタのドレイン各々から容量素子を放電させて、入力信号INを1H期間遅延させた出力信号OUT(色差信号B−Y、R−Y)が出力される。
【0038】
尚、図4に示すスイッチド・キャパシタ群412は、充電用及び放電用MOSトランジスタとしてNMOSトランジスタ(N1〜N8)を採用し、スイッチド・キャパシタ部としては、いわゆるスイッチド・キャパシタ部(410a〜410d)を採用したものである。尚、スイッチド・キャパシタ部(410a〜410d)は、1H期間に応じた数分設けられる。例えば、1H期間を“64μsec”、1組のスイッチド・キャパシタ部(410a〜410d)の各々の遅延時間を“0.25μsec”とした場合、スイッチド・キャパシタ部(410a〜410d)の段数は“257段”分必要となる。
【0039】
例えば、スイッチド・キャパシタ部410aは、充電用MOSトランジスタとしてのNMOSトランジスタN1と、放電用MOSトランジスタとしてのNMOSトランジスタN2と、一つの容量素子C1と、を有する。NMOSトランジスタN1、N2の双方のソース電極が共通接続されるとともに、その共通接続部には容量素子C1が接続される。NMOSトランジスタN1のドレイン電極へ入力信号INを供給し、NMOSトランジスタN1をオンさせる場合にはNMOSトランジスタN2をオフさせて、容量素子C1では入力信号INに応じて適切に充電がなされる。一方、NMOSトランジスタN2をオンさせる場合にはNMOSトランジスタN1をオフさせて、容量素子C1では適切に放電がなされて、NMOSトランジスタN2のドレイン電極から出力信号OUTを得る。
【0040】
尚、スイッチド・キャパシタ部410aの後段のスイッチド・キャパシタ部410b〜410dについても同様の構成・動作である。すなわち、スイッチド・キャパシタ部410a〜410dでは、各々の充電用MOSトランジスタに該当するNMOSトランジスタN1、N4、N5、N8の各ドレイン電極を共通に接続させて、スイッチド・キャパシタ部410a〜410d各々に入力信号INを順次入力させるようにする。また、スイッチド・キャパシタ部410a〜410dでは、各々の放電用MOSトランジスタに該当するNMOSトランジスタN2、N3、N6、N7の各ドレイン電極とボルテージフォロワ411の非反転入力端子を共通に接続させて、スイッチド・キャパシタ部410a〜410d各々から、入力信号INを1H期間遅延させた出力信号OUTが順次得られるようにする。
【0041】
スイッチング制御回路413は、本発明の『スイッチング制御部』の一実施形態である。すなわち、スイッチング制御回路413は、スイッチド・キャパシタ部410a〜410dが有するNMOSトランジスタN1〜N8の各々のゲートのオン・オフを制御することで、スイッチド・キャパシタ部410a〜410dが有する容量素子C1〜C4の各々を、入力信号INに基づいて順次充電させていく。また、容量素子C1〜C4の順次充電の際には、一スイッチング周期前に充電しておいた容量素子C1〜C4のいずれか一つを放電させることで、スイッチド・キャパシタ部410a〜410d各々から出力信号OUTを順次出力させていく。
【0042】
尚、スイッチング制御回路413は、例えば、D型フリップフロップ素子を多段接続したシフトレジスタによって構成することができる。スイッチング制御回路413は、NMOSトランジスタN1〜N8のスイッチング周期が設定されたシフトクロック信号SCKが入力される毎にトリガ信号T(シリアル入力信号)の1ショットパルスを順次シフトしていくことで、NMOSトランジスタN1〜N8を順次オン・オフさせるスイッチング信号SW0〜SW4を生成する。
【0043】
<1H遅延回路の動作>
図5に示すタイミングチャートに基づいて、図4に示した1H遅延回路400の動作例を説明する。
【0044】
まず、スイッチング制御回路413では、時刻T0〜T1、時刻T1〜T2、・・・、時刻T4〜T5の各期間毎に、順にLレベルからHレベルへとシフトとするスイッチング信号SW0〜SW4を出力する(図5(b)〜(f)を参照)。尚、時刻T0〜T1、時刻T1〜T2、・・・、時刻T4〜T5の各期間は、NMOSトランジスタN1〜N8のスイッチング周期を定めるものである。また、NMOSトランジスタN1〜N8のスイッチング周期は、入力信号INの遅延時間である1H期間に設定されてある。ゆえに、尚、時刻T0〜T1、時刻T1〜T2、・・・、時刻T4〜T5の各期間は、1H期間に対応する。
【0045】
つぎに、スイッチド・キャパシタ群412では、スイッチド・キャパシタ部410a〜410dに対して入力信号IN(色差信号R−Y、B−Y)が入力された場合とする。尚、入力信号INのレベルは、時刻T0〜T1の期間ではD0、時刻T1〜T2ではD1、・・・、時刻T4〜T5ではD5、へと変化した場合とする(図5(a)参照)。
【0046】
まず、時刻T0〜T1の期間において、スイッチング制御回路413から供給されたスイッチング信号SW0〜SW4のうち、スイッチング信号SW0のみがHレベル、その他のスイッチング信号SW1〜SW4はLレベルのままである(図5(b)〜(f)参照)。よって、時刻T0〜時刻T1の期間では、スイッチド・キャパシタ部410aのNMOSトランジスタN1がオンとなり、残りのNMOSトランジスタN2〜N8は全てオフである(図5(g)〜(k)参照)。このため、時刻T0〜T1の期間では、スイッチド・キャパシタ部410aにおいて、NMOSトランジスタN1と容量素子C1の充電経路が形成されることになるため、入力信号INのレベルD0に応じた電荷が容量素子C1へと充電され、入力信号INのレベルD0の情報が容量素子C1へと保持される(図5(l)参照)。
【0047】
つぎに、時刻T1〜T2の期間において、スイッチング制御回路413から供給されたスイッチング信号SW0〜SW4のうち、スイッチング信号SW1のみがHレベルであり、その他のスイッチング信号SW0、SW2〜SW4はLレベルのままである(図5(b)〜(f)参照)。よって、時刻T1〜時刻T2の期間では、スイッチド・キャパシタ部410aのNMOSトランジスタN2とスイッチド・キャパシタ部410bのNMOSトランジスタN4がオンとなり、残りのNMOSトランジスタN1、N3、N5〜N8は全てオフである(図5(g)〜(k)参照)。このため、時刻T1〜T2の期間では、スイッチド・キャパシタ部410aにおいて、NMOSトランジスタN2と容量素子C1の放電経路が形成されて容量素子C1に保持しておいた電荷が放電されることで、入力信号INのレベルD0が容量素子C1から読み出されて、ボルテージフォロワ411の非反転入力端子へと入力される。この結果、ボルテージフォロワ411からレベルD0の入力信号INが出力される(図5(p)参照)。また、時刻T1〜T2の期間では、スイッチド・キャパシタ部410bにおいて、NMOSトランジスタN4と容量素子C2の充電経路が形成されて入力信号INのレベルD1に応じた電荷が容量素子C2へと充電されることで、入力信号INのレベルD1の情報が容量素子C2へと保持される(図5(m)参照)。
【0048】
以後、時刻T2〜T3、時刻T3〜T4、時刻T4〜T5の各期間においても、同様の動作が行われる。
【0049】
<スイッチド・キャパシタ群のレイアウト設計>
図6は、図12に示したNMOSトランジスタの一般的な断面構造を用いて、図4に示した本発明に係るスイッチング・キャパシタ群412のうち、NMOSトランジスタN1〜N8のレイアウトならびに各種接続関係を説明する図である。尚、P型シリコン基板16a、16b、16d、16fは、それぞれ分離させて図示してあるが、同一のシリコンウェハ上に形成されたものである。
【0050】
まず、スイッチド・キャパシタ部410aにおいて、NMOSトランジスタN1は、所謂ウェル型の断面構造を呈している。すなわち、P型シリコン基板16a上には、ゲート絶縁膜用の二酸化シリコン(SiO2)等を介してゲート18aが形成され、そのゲート18aからゲート電極11aが引き出される。また、P型シリコン基板16a上にはN+領域(N型不純物濃度が高い領域)が形成され、その上にはドレイン17a、ソース19aがそれぞれ形成される。そして、ドレイン17a、ソース19aからは、ドレイン電極10a、ソース電極12aが引き出される。ここで、ゲート電極11aにはスイッチング制御回路413からスイッチング信号SW0が供給され、ドレイン電極10aには入力信号INが供給される。また、NMOSトランジスタN1、N2の共通のソース電極12aには容量素子C1が接続される。一方、NMOSトランジスタN2では、NMOSトランジスタN3と共通のP型シリコン基板16b上に、ドレイン17b、ゲート18b、ソース19b、が形成されるとともに、それぞれからドレイン電極10b、ゲート電極11b、ソース電極12aが引き出される。尚、ソース電極12aは、NMOSトランジスタN1、N2において共通させてある。ここで、ゲート電極11bにはスイッチング制御回路413からスイッチング信号SW1が供給され、ドレイン電極10bから出力信号OUTが出力される。
【0051】
つぎに、スイッチド・キャパシタ部410bにおいて、NMOSトランジスタN3では、P型シリコン基板16b上に、ドレイン17c、ゲート18c、ソース19cが形成されるとともに、それぞれからドレイン電極10b、ゲート電極11c、ソース電極12cが引き出される。尚、ドレイン電極10bは、NMOSトランジスタN2、N3で共通させてある。ここで、ゲート電極11cにはスイッチング制御回路413からスイッチング信号SW2が供給され、ドレイン電極10bから出力信号OUTが出力される。また、NMOSトランジスタN3、N4の共通のソース電極12cには容量素子C2が接続される。一方、NMOSトランジスタN4では、NMOSトランジスタN5と共通のP型シリコン基板16d上に、ドレイン17d、ゲート18d、ソース19d、が形成されるとともに、それぞれからドレイン電極10d、ゲート電極11d、ソース電極12cが引き出される。尚、ソース電極12cは、NMOSトランジスタN3、N4で共通させてある。ここで、ゲート電極11dにはスイッチング制御回路413からスイッチング信号SW1が供給され、ドレイン電極10dには入力信号INが供給される。
【0052】
つぎに、スイッチド・キャパシタ部410cにおいて、NMOSトランジスタN5では、P型シリコン基板16d上に、ドレイン17e、ゲート18e、ソース19eが形成されるとともに、それぞれからドレイン電極10d、ゲート電極11e、ソース電極12eが引き出される。尚、ドレイン電極10dは、NMOSトランジスタN4、N5で共通させてある。ここで、ゲート電極11eにはスイッチング制御回路413からスイッチング信号SW2が供給され、ドレイン電極10dには入力信号INが供給される。また、NMOSトランジスタN5、N6の共通のソース電極12eには容量素子C3が接続される。一方、NMOSトランジスタN6では、NMOSトランジスタN7と共通のP型シリコン基板16f上に、ドレイン17f、ゲート18f、ソース19f、が形成されるとともに、それぞれからドレイン電極10f、ゲート電極11f、ソース電極12eが引き出される。尚、ソース電極12eは、NMOSトランジスタN5、N6で共通させてある。ここで、ゲート電極11fにはスイッチング制御回路413からスイッチング信号SW3が供給され、ドレイン電極10fからは出力信号OUTが出力される。
【0053】
ところで、隣接する二つのスイッチド・キャパシタ部410a、410bにおいて、スイッチド・キャパシタ部410aの放電用MOSトランジスタとして機能するNMOSトランジスタN2と、スイッチド・キャパシタ部410bの放電用MOSトランジスタとして機能するNMOSトランジスタN3とを隣接配置させてある。さらに、NMOSトランジスタN2、N3の双方のドレイン17b、17cを共通させた配置としてある。また、同様に、隣接する二つのスイッチド・キャパシタ部410b、410cにおいて、スイッチド・キャパシタ部410bの充電用MOSトランジスタとして機能するNMOSトランジスタN4と、スイッチド・キャパシタ部410cの充電用MOSトランジスタとして機能するNMOSトランジスタN5とを隣接配置させてある。さらに、NMOSトランジスタN4、N5の双方のドレイン17d、17eを共通させた配置としてある。
【0054】
この結果、スイッチド・キャパシタ部410a、410b、410cにおいて、ドレイン・基板間の寄生容量Cdbとしては、NMOSトランジスタN1のドレイン17aとP型シリコン基板16a間の寄生容量Cdb1、NMOSトランジスタN2、N3で共通とさせたドレイン(17b、17c)とP型シリコン基板16b間の寄生容量Cdb2、NMOSトランジスタN4、N5で共通とさせたドレイン(17d、17e)とP型シリコン基板16d間の寄生容量Cdb3、NMOSトランジスタN6、N7で共通させたドレイン(17f、17g)とP型シリコン基板16f間の寄生容量Cdb4が存在する。尚、寄生容量Cdb1、Cdb3は、スイッチド・キャパシタ群412の入力側に出現し、寄生容量Cdb2、Cdb4は、スイッチド・キャパシタ群412の出力側に出現する。
【0055】
このように、スイッチド・キャパシタ群412のレイアウト設計をすることで、NMOSトランジスタN1〜N8の全てにドレイン・基板間の寄生容量Cdbが生じ得ない。すなわち、隣接する二つのスイッチド・キャパシタ部において、共に放電用MOSトランジスタとして機能するNMOSトランジスタN2、N3の双方のドレインを共通させることや、共に充電用MOSトランジスタとして機能するNMOSトランジスタN4、N5の双方のドレインを共通させることで、その分、スイッチド・キャパシタ群412全体におけるドレイン・基板間の寄生容量Cdbが軽減することになる。それゆえに、スイッチド・キャパシタ群412の最終的な出力波形が鈍ることを回避でき、ひいては、1H遅延回路400の遅延特性の悪化を回避することができる。
【0056】
尚、図7は、図4に示した本発明に係るスイッチング・キャパシタ群412について、従来のレイアウトならびに従来の各種接続関係を示したものである。従来のレイアウトでは、例えば、スイッチド・キャパシタ部410aにおいて、充電用MOSトランジスタとして機能させるNMOSトランジスタN1のソース19aと、放電用MOSトランジスタとして機能させるNMOSトランジスタN2のソース19bを共通させる点で、本発明のレイアウトとは相違する。また、この結果、従来のレイアウトでは、一つのスイッチド・キャパシタ部410aにおいて、NMOSトランジスタN1のドレイン17aとP型シリコン基板16a間の寄生容量Cdb1と、NMOSトランジスタN2のドレイン17bとP型シリコン基板16a間の寄生容量Cdb2とがNMOSトランジスタ毎に存在する点で、本発明のレイアウトとは相違する。
【0057】
以上、本実施の形態について説明したが、前述した実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係るテレビ受信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る映像信号処理回路の構成を示す図である。
【図3】本発明に係る色差信号B−Y、R−Yの波形図とそれに対応する輝度信号Yの波形図の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る1H遅延回路の構成を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る1H遅延回路の主要信号の動作タイミングを示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るスイッチド・キャパシタ群のレイアウトならびに各種接続関係を示す図である。
【図7】従来の場合のスイッチド・キャパシタ群のレイアウトならびに各種接続関係を示す図である。
【図8】インターレース走査を説明するための図である。
【図9】クロマ信号C、輝度信号Y、コンポジット信号SCの波形図の一例を示す図である。
【図10】スイッチド・キャパシタ回路を用いた従来の遅延回路の構成を説明するための図である。
【図11】スイッチド・キャパシタ回路を用いた従来の遅延回路の主要信号のタイミングを示す図である。
【図12】NMOSトランジスタの一般的な断面構造を示す図である。
【図13】従来の遅延回路を構成するスイッチド・キャパシタ回路のレイアウトならびに各種接続関係を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10 ドレイン電極 11 ゲート電極
12 ソース電極 13 多結晶ポリシリコン
14 二酸化シリコン 15 N+領域
16 P型シリコン基板 17 ドレイン
18 ゲート 19 ソース
110 アンテナ 120 チューナ
130 中間周波フィルタ 140 映像中間周波処理回路
150、600 クランプ回路 160 YC分離回路
170 輝度信号処理回路 171 遅延ライン
172 シャープネス調整部 173 ブラック・ストレッチ処理部
174 コントラスト調整部 180 色信号処理回路
181 ゲイン調整部 182 カラーキラー回路
190 色復調回路 191 同期検波回路
192、193 乗算器 194 副搬送波信号発振器
195 位相シフタ 196 LPF
198 加算器 199 カラークランプ回路
200 マトリクス回路 210 RGBドライバ
220 ディスプレイ 300 映像信号処理回路
400 1H遅延回路 412 スイッチド・キャパシタ群
701、413 スイッチング制御回路
702、411 ボルテージフォロワ
410a〜410d スイッチド・キャパシタ部
703a〜703b スイッチド・キャパシタ部
500 SECAMデコーダ
600 クランプ回路
601 スイッチ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を遅延させた出力信号を得る遅延回路において、
充電用MOSトランジスタ及び放電用MOSトランジスタと前記充電用及び前記放電用MOSトランジスタのソースに接続されて前記充電用及び前記放電用MOSトランジスタのゲートのオン・オフによって充放電がなされる容量素子とを有したスイッチド・キャパシタ部を複数有し、前記入力信号が前記充電用MOSトランジスタのドレイン各々に対して共通に入力され且つ前記容量素子を充電させるように接続されるとともに、前記放電用MOSトランジスタのドレイン各々から前記容量素子を放電させて前記出力信号が出力されるように接続されるスイッチド・キャパシタ群と、
前記充電用及び前記放電用MOSトランジスタのゲート各々のオン・オフを制御することで、前記容量素子各々を前記入力信号に基づいて順次充電させていくととともに、当該順次充電の際に前回充電しておいた前記容量素子を放電させることで前記出力信号を順次出力させていくスイッチング制御部と、を有しており、
前記複数のスイッチド・キャパシタ部のうち隣接する二つの前記スイッチド・キャパシタ部において、双方の前記充電用MOSトランジスタ同士を隣接させるとともに双方の前記放電用MOSトランジスタ同士を隣接させ、前記双方の充電用MOSトランジスタのドレインを共通させるとともに前記双方の放電用MOSトランジスタのドレインを共通させること、
を特徴とする遅延回路。
【請求項2】
撮像された色の三原色情報を有したテレビジョン放送の映像信号に基づいて輝度信号とクロマ信号を復調し、さらに、前記輝度信号の輝度信号処理と並行して前記クロマ信号の色復調処理の過程で当該クロマ信号を二つの色差信号に復調し、前記輝度信号と前記二つの色差信号に基づいて前記複合映像信号が有する前記三原色情報を再生する映像信号処理回路において、
充電用MOSトランジスタ及び放電用MOSトランジスタと前記充電用及び前記放電用MOSトランジスタのソースに接続されて前記充電用及び前記放電用MOSトランジスタのゲートのオン・オフによって充放電がなされる容量素子とを有したスイッチド・キャパシタ部を複数有し、前記復調後の色差信号が前記充電用MOSトランジスタのドレイン各々に対して共通に入力され且つ前記容量素子を充電させるように接続されるとともに、前記放電用MOSトランジスタのドレイン各々から前記容量素子を放電させて前記色差信号を1H期間遅延させた信号が出力されるように接続されるスイッチド・キャパシタ群と、
前記充電用及び前記放電用MOSトランジスタのゲート各々のオン・オフを制御することで、前記容量素子各々を前記色差信号に基づいて順次充電させていくととともに、当該順次充電の際に前回充電しておいた前記容量素子を放電させることで前記色差信号を1H期間遅延させた信号を順次出力させていくスイッチング制御部と、
前記1H期間遅延させる前と後の前記色差信号を加算する加算器と、
前記加算器の加算結果と前記輝度信号処理後の輝度信号とに基づいて前記三原色の情報を再生するマトリクス回路と、を有しており、さらに、
前記複数のスイッチド・キャパシタ部のうち隣接する二つの前記スイッチド・キャパシタ部において、双方の前記充電用MOSトランジスタ同士を隣接させるとともに双方の前記放電用MOSトランジスタ同士を隣接させ、前記双方の充電用MOSトランジスタのドレインを共通させるとともに前記双方の放電用MOSトランジスタのドレインを共通させること、を特徴とする映像信号処理回路。
【請求項3】
前記映像信号は、PAL(Phase Alternation by Line)方式又はSECAM(SEquential Couleur A Memoire)方式に準拠した信号であること、を特徴とする請求項2に記載の映像信号処理回路。
【請求項4】
前記映像信号処理回路は、BiCMOSプロセスによって形成された回路であること、を特徴とする請求項2又は3に記載の映像信号処理回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−97019(P2007−97019A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286081(P2005−286081)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】