説明

遅延発生装置及びICテスタ

【課題】回路規模を抑制する遅延発生装置及びICテスタを実現することを目的にする。
【解決手段】本発明は、基準クロックによりカウントを行うカウンタと、このカウンタのカウント値と遅延データとを加算する加算器と、遅延トリガ信号と基準クロックとを入力し、論理積を行う論理積回路と、この論理積回路の出力を書き込みクロックとして、加算器の出力を入力するFIFOと、このFIFOの出力とカウンタの出力とを入力し、一致を検出し、遅延信号を出力すると共に、この遅延信号をFIFOの読み出しクロックとする一致検出回路とを備えたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路規模を抑制する遅延発生装置及びICテスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICテスタに用いられるタイミング発生器に搭載される遅延発生装置は、基準クロックのN倍(N:2以上の自然数)までの遅延を発生できる。このような装置は、例えば、下記特許文献1に記載されている。以下、図3を用いて説明する。
【0003】
図3において、カウンタ10は、基準クロック100により0から2−1(k:自然数)までカウントを繰り返し、kビットのカウント値を出力する。加算器20は、カウンタ10のカウント値とkビットの遅延データ101とを加算する。ANDゲート30は、基準クロック100と遅延トリガ信号102とを入力し、論理積を行う。レジスタ41〜4Nは、直列に接続され、ANDゲート30の出力をクロックとして、加算器20のkビット出力を順次保持する。EXORゲート51〜5Nは、それぞれ、レジスタ41〜4Nのkビット出力とカウンタ10のkビット出力とを入力し、排他的論理和を行い、反転して出力を行う。ORゲート60は、EXORゲート51〜5Nの出力を入力し、論理和を行い、遅延信号103を出力する。
【0004】
このような装置の動作を以下に説明する。図4は図3に示す装置の動作を示したタイミングチャートである。
【0005】
加算器20が、遅延データ101”4”とカウンタ10の出力”0”を加算し、”4”を出力する。そして、基準クロック100の立ち上がりで、カウンタ10がカウントアップし、”1”を出力する。そして、遅延トリガ信号102がハイレベルなので、ANDゲート30の出力により、レジスタ41が加算器20の前出力”4”を保持する(a)。その他のレジスタ42〜4Nは、”0”を保持する。
【0006】
遅延データ101が”5”になり、この遅延データ101”5”を、加算器20がカウンタ10の出力”1”と加算し、”6”を出力する。そして、次の基準クロック100の立ち上がりで、カウンタ10がカウントアップし、”2”を出力する。そして、遅延トリガ信号102がハイレベルなので、ANDゲート30の出力により、レジスタ41が加算器20の前出力”6”を保持し、レジスタ42がレジスタ41の前出力”4”を保持する(b)。その他のレジスタ43〜4Nは、”0”を保持する。そして、加算器20は、遅延データ101”5”とカウンタ20の出力”2”とを加算し、”7”を出力する。
【0007】
次の基準クロック100の立ち上がりで、カウンタ10がカウントアップし、”3”を出力する。そして、遅延トリガ信号102がハイレベルなので、ANDゲート30の出力により、レジスタ41が加算器20の前出力”7”を保持し、レジスタ42がレジスタ41の前出力”6”を保持し、レジスタ43がレジスタ42の前出力”4”を保持する(c)。その他のレジスタ44〜4Nは、”0”を保持する。
【0008】
再び、基準クロック100の立ち上がりで、カウンタ10がカウントアップし、”4”を出力する(d)。この結果、カウンタ10の出力”4”がレジスタ43の出力”4”と一致し、図示しないEXORゲート53がハイレベルを出力する(e)。このEXORゲート53の出力により、ORゲート60の出力である遅延信号103が立ち上がる(f)。
【0009】
次の基準クロック100の立ち上がりで、カウンタ10がカウントアップし、”5”を出力する(g)。この結果、カウンタ10の出力”5”がレジスタ43の出力”4”と不一致となり、図示しないEXORゲート53がロウレベルになる(h)。このEXORゲート53の出力により、ORゲート60の出力である遅延信号103が立ち下がる(i)。
【0010】
このように、遅延トリガ信号102がハイレベルである区間の基準クロック100の3サイクルが、”4,5,5”のサイクル分の順の遅延で、遅延信号103が出力される。しかし、基準クロック100の2サイクル目と3サイクル目の遅延信号は、同じ遅延量のため、遅延信号103がハイレベルの状態のままとなり、つながっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開平7−26787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような装置が、被試験対象のIC等に対するドライバ波形の反転位置(エッジ)を定めている。このため、ICテスタにおいては、複雑なパターンを発生するために、多くのエッジを与える必要があり、1ピンに対して、数エッジが必要となっている。上記装置では、回路規模の縮小に寄与したが、1ピン当たりのエッジ数が近年さらに増加し、ICテスタのピン数も増加傾向にあり、回路規模の抑制ができないという問題点があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、回路規模を抑制する遅延発生装置及びICテスタを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
基準クロックによりカウントを行うカウンタと、
このカウンタのカウント値と遅延データとを加算する加算器と、
遅延トリガ信号と前記基準クロックとを入力し、論理積を行う論理積回路と、
この論理積回路の出力を書き込みクロックとして、前記加算器の出力を入力するFIFOと、
このFIFOの出力と前記カウンタの出力とを入力し、一致を検出し、遅延信号を出力すると共に、この遅延信号を前記FIFOの読み出しクロックとする一致検出回路と
を備えたことを特徴とするものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明であって、
前記論理積回路の出力をクロックとして、前記加算器の出力を保持するレジスタと、
このレジスタの出力と前記加算器の出力とにより、エラーを検出するエラー検出回路と
を設けたことを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明であって、
前記エラー検出回路は、前記加算器の出力から前記レジスタの出力を減算し、遅延データの変化順に遅延信号出力が行われていないエラーを検出することを特徴とするものである。
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の発明であって、
前記エラー検出回路は、近接間隔データを入力し、前記加算器の出力から前記レジスタの出力を減算し、減算結果が近接間隔データより小さいとき、エラーを検出することを特徴とするものである。
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明であって、
前記一致検出回路は、
前記FIFOの出力と前記カウンタの出力とを入力し、排他的論理和を行う排他的論理和回路と、
この排他的論理和回路の出力を入力し、前記FIFOからデータが存在しないことを示すエンプティフラグが入力されない場合、前記排他的論理和回路の出力を遅延信号とするゲート回路を設けたことを特徴とするものである。
請求項6記載の発明は、
請求項1〜5のいずれかに記載の遅延発生装置を用いたことを特徴とするICテスタである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、FIFOが、カウンタのカウント値と遅延データとを加算した加算器の出力を保持して出力し、この出力と一致検出回路がカウンタのカウント値の一致を検出し、遅延信号を出力するので、複数のEXORゲートを設ける必要がなく、FIFOによりレジスタと比較しても回路規模が小さくなり、回路規模の増加を抑制することができる。
【0016】
請求項2〜4によれば、エラー検出回路が、カウンタのカウント値と遅延データとを加算する加算器の出力とこの加算器の前出力を保持するレジスタの出力により、遅延信号の前後の設定を確認することができ、遅延データの設定違反を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示した構成図である。
【図2】図1に示す装置の動作を説明する図である。
【図3】従来の遅延発生装置の構成を示した図である。
【図4】図3に示す装置の動作を示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示した構成図である。
【0019】
図1において、カウンタ1は、k+1ビットのバイナリー・フリーラン・カウンタで、基準クロック110により0から2k+1−1までカウントを繰り返し、k+1ビットのカウント値を出力する。加算器2は、k+1ビットのカウンタ1のカウント値とkビットの遅延データ111とを加算する。ANDゲート3は論理積回路で、遅延トリガ信号112と基準クロック110とを入力し、論理積を行う。FIFO(First-In First-Out)4はN段で構成され、ANDゲート3の出力を書き込みクロックとして、加算器2の下位kビット出力を入力すると共に、データを存在しないことを示すエンプティフラグを出力する。ここで、FIFO4は、エンプティ状態でライトすると、リードポートにそのままライトしたデータが現れるものである。EXORゲート5は排他的論理和回路で、FIFO4のkビット出力とカウンタ1の下位kビット出力とを入力し、排他的論理和を行い、一致を検出する。ANDゲート6はゲート回路で、FIFO4のエンプティフラグとEXORゲート5の出力とを入力し、遅延信号115を出力すると共に、この遅延信号115をFIFO4の読み出しクロックとする。レジスタ7は、ANDゲート3の出力をクロックとして、加算器2のk+1ビット出力を保持する。エラー検出回路8は、FIFO4のエンプティフラグとレジスタ7のk+1ビット出力と加算器2のk+1ビット出力とにより、エラーを検出し、エラー信号116を出力する。ここで、EXORゲート5とANDゲート6とが、一致検出回路となる。
【0020】
このような装置の動作を以下に説明する。
【0021】
(1)まず、遅延発生動作について説明する。
カウンタ1が基準クロック110に同期して、0から2k+1−1までインクリメントして、再び、0に戻り、インクリメントを行う。このカウンタ1のカウント値と遅延データ111とを加算器2が加算し、FIFO4に出力する。そして、FIFO4は、基準クロック110と遅延トリガ信号112との論理積の結果をANDゲート3から入力し、このANDゲート3の出力ごとに、加算器2の下位kビット出力を保存する。
【0022】
FIFO4にデータが存在する場合、EXORゲート5は、FIFO4の出力とカウンタ1の下位kビット出力との排他的論理和を行い、一致したときに、ハイレベルとして出力する。
【0023】
このEXORゲート5の出力をANDゲート6で、FIFO4のエンプティフラグと論理積を行い、遅延信号115を出力する。この遅延信号115を読み出しクロックとして、FIFO4は、次のデータを出力し、FIFO4にデータ存在する場合、上述の一致検出を繰り返す。
【0024】
遅延トリガ信号112が連続して与えられている場合、FIFO4に保存されているデータに着目すると、その値は、Nサイクル分までしか格納できない。それまでに一致検出が終わっていないと、遅延信号115が正しく発生できないことから、遅延トリガ信号112を無制限に連続して与えるためには、(遅延データ111)≦Nでなければならない。
【0025】
そして、Nを増加させたい場合は、FIFO4の段数を増加させればよい。FIFOは一般的にメモリマクロなどで構成されることが多く、段数を増加させても、回路規模はフリップフロップでの構成に比較すると増加量は小さい。
【0026】
このように、FIFO4が、カウンタ1のカウント値と遅延データ111とを加算した加算器2の出力を保持して出力し、この出力とEXORゲート5がカウンタ1のカウント値の一致を検出し、ANDゲート6で、FIFO4のエンプティフラグでゲートし、遅延信号115を出力するので、複数のEXORゲートを設ける必要がなく、FIFOによりレジスタと比較しても回路規模が小さくなり、回路規模の増加を抑制することができる。
【0027】
(2)次に、エラー検出動作について説明する。
カウンタ1が基準クロック110に同期して、0から2k+1−1までインクリメントして、再び、0に戻り、インクリメントを行う。このカウンタ1のカウント値と遅延データ111とを加算器2が加算し、レジスタ7、エラー検出回路8に出力する。そして、レジスタ7は、基準クロック110と遅延トリガ信号112との論理積の結果をANDゲート3から入力し、このANDゲート3の出力ごとに、加算器2のk+1ビット出力を保存する。
【0028】
そして、FIFO4のエンプティフラグがハイの場合(FIFO4にデータが存在しない場合)、エラー検出回路8は、何も行わない。
【0029】
FIFO4のエンプティフラグがロウの場合(FIFO4にデータが存在する場合)、エラー検出回路8は、図2に示すように、加算器2のk+1ビット出力からレジスタ7のk+1ビット出力を減算する。この減算結果の最上位ビットが”0”の場合、エラー検出回路8は、遅延データの変化順に遅延信号出力が行われていないエラーとして、エラー信号を出力する。そして、最上位ビットが”1”の場合、エラー検出回路8はエラー信号を出力しない。また、減算結果が近接間隔データ114より大きいまたは等しい場合は、エラー検出回路8はエラー信号を出力せず、近接間隔データ114より小さい場合は、エラー検出回路8は、連続した遅延信号115が近接できる範囲外のエラーとして、エラー信号を出力する。
【0030】
このように、エラー検出回路8が、カウンタ1のカウント値と遅延データ111とを加算する加算器2の出力とこの加算器2の前出力を保持するレジスタ7の出力により、遅延信号115の前後の設定を確認することができ、遅延データ111の設定違反を検出することができる。
【0031】
なお、本発明はこれに限定されるものではなく、エラー検出回路8は、エンプティフラグを入力する構成を示したが、入力せずに、エラー信号116を出力する構成でもよい。
【0032】
また、エラー検出回路8を設けない構成にした場合、カウンタ1、加算器2の出力は、kビットでよい。
【0033】
また、エラー検出回路8は、エラーの種類が異なっても同じエラー信号116を出力したが、エラーの種類ごとにエラー信号を設けてもよい。
【0034】
また、エラー検出回路8は、減算結果が近接間データ114と等しい場合は、エラー信号を出力しない構成を示したが、エラー信号を出力する構成にしてもよい。
【0035】
そして、ANDゲート6を設けた構成を示したが、FIFO4が、データがなくなった場合に、前のデータを出力する構成であれば、ANDゲート6を必要とせずに、EXORゲート5の出力を、遅延信号115としてもよい。あるいは、遅延トリガ信号112を無制限に与える構成にすれば、FIFO4のデータがエンプティにならないので、ANDゲート6を必要としない。
【符号の説明】
【0036】
1 カウンタ
2 加算器
3 ANDゲート
4 FIFO
5 EXORゲート
6 ANDゲート
7 レジスタ
8 エラー検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロックによりカウントを行うカウンタと、
このカウンタのカウント値と遅延データとを加算する加算器と、
遅延トリガ信号と前記基準クロックとを入力し、論理積を行う論理積回路と、
この論理積回路の出力を書き込みクロックとして、前記加算器の出力を入力するFIFOと、
このFIFOの出力と前記カウンタの出力とを入力し、一致を検出し、遅延信号を出力すると共に、この遅延信号を前記FIFOの読み出しクロックとする一致検出回路と
を備えたことを特徴とする遅延発生装置。
【請求項2】
前記論理積回路の出力をクロックとして、前記加算器の出力を保持するレジスタと、
このレジスタの出力と前記加算器の出力とにより、エラーを検出するエラー検出回路と
を設けたことを特徴とする請求項1記載の遅延発生装置。
【請求項3】
前記エラー検出回路は、前記加算器の出力から前記レジスタの出力を減算し、遅延データの変化順に遅延信号出力が行われていないエラーを検出することを特徴とする請求項2記載の遅延発生装置。
【請求項4】
前記エラー検出回路は、近接間隔データを入力し、前記加算器の出力から前記レジスタの出力を減算し、減算結果が近接間隔データより小さいとき、エラーを検出することを特徴とする請求項2または3記載の遅延発生装置。
【請求項5】
前記一致検出回路は、
前記FIFOの出力と前記カウンタの出力とを入力し、排他的論理和を行い、一致を検出する排他的論理和回路と、
この排他的論理和回路の出力を入力し、前記FIFOからデータが存在しないことを示すエンプティフラグが入力されない場合、前記排他的論理和回路の出力を遅延信号とするゲート回路と
を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遅延発生装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の遅延発生装置を用いたことを特徴とするICテスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−206603(P2010−206603A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50678(P2009−50678)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】