説明

遊技機の演出装置

【課題】遊技媒体の動きを自然な態様で表示可能な演出技術を提供する。
【解決手段】
遊技機の遊技盤面上で、遊技球あるいは遊技メダルなどの遊技媒体が通過する経路に沿って、複数の発光部を設け、各発光部には、遊技媒体の通過を非接触で検出する検出部を一体に設けておく。そして、検出部が遊技媒体を検出すると、一体に設けられた発光部が、所定期間、発光する。こうすれば、遊技媒体の経路に沿って複数の発光部を設けておくだけで、遊技媒体が通過すると、次々と発光部が発光することになるので、遊技媒体の動きを遊技者にハッキリと認識させることができる。もちろん、遊技媒体は非接触で検出されるので、遊技媒体の動きが不自然になってしまうことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技盤面に遊技球や遊技メダルなどの遊技媒体を発射することによって行われる遊技を演出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機で遊技するときの最も大きな楽しみは、大当りの遊技を行うことであるが、それ以外にも、遊技盤面を流下する遊技球の動きや、ステージや役物内で遊技球が振り分けられる様子を観察することも、遊技を楽しむ上での重要な要素となっている。そこで、遊技者が遊技をより楽しむことができるように、遊技球の動きを遊技者に印象付けるようにした技術が提案されている。
【0003】
例えば、遊技盤面に設けられた複数本の障害釘の中心に光ファイバを仕込んでおき、障害釘に遊技球が衝突すると光ファイバによって釘の先端を光らせるようにした技術が提案されている(特許文献1)。提案の技術によれば、遊技盤面を流下する遊技球が障害釘に衝突すると釘の先端が光るので、遊技球の動きを表示することが可能となる。
【0004】
また、1球の遊技球が遊技盤面を流下する映像を録画しておき、遊技盤面の特定の箇所を遊技球が通過したことを検出すると、録画しておいた映像を遊技盤面上に投影して、遊技球の動きを表示する技術も提案されている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−282449号公報
【特許文献2】特開2005−237864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、提案されている技術では、遊技球の動きを自然な態様で表示することができず、従って遊技球の動きを表示しても、遊技者を遊技に引き付けるまでには至っていないという問題があった。すなわち、障害釘の先端を光らせる技術では、遊技球が障害釘に衝突して釘の先端を光らせる度に遊技球の進路が変わってしまい、滑らかな経路とならないので、障害釘の先端を点灯させても、遊技者が、それを遊技球の通路であると直ちに了解できるとは限らない。また、録画しておいた映像を遊技盤面上に投影する技術では、遊技球の通過を検知してから映像を投影するまでに時間差が生じてしまうため、映像を投影しても、それが実際の遊技球の経路を示す映像であると、遊技者が直ちに認識できるとは限らない。このように従来の技術では、遊技球の動きを表示しても、遊技者が直ちに了解できる程度に自然な態様で表示することができず、このため遊技者を遊技に引き付けることができないという問題があった。また、こうした問題は、パチンコ機に限らず、遊技メダルなどの遊技媒体を遊技盤面に発射して遊技を行う各種の遊技機においても、同様に生じ得る。
【0007】
この発明は、従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、遊技媒体(遊技球や遊技メダルなど)の動きを自然な態様で表示することにより、遊技者を遊技に引き付けることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の演出装置は次の構成を採用した。すなわち、
遊技盤面に遊技媒体を発射することによって遊技を行う遊技機に搭載されて、該遊技の演出を行う演出装置であって、
前記遊技媒体が通過する経路に沿って設けられた複数の発光部と、
前記発光部と一体に組み込まれて、前記経路を通過する前記遊技媒体を非接触で検出する検出部と
を備え、
前記発光部は、一体に組み込まれた前記検出部が前記遊技媒体を検出すると、所定期間、発光する発光部であることを要旨とする。
【0009】
本発明の演出装置は、遊技球あるいは遊技メダルなどの遊技媒体を遊技盤面に発射することによって遊技を行う遊技機に搭載されるものであり、このような遊技機では、発射された遊技媒体が、遊技盤面で転動し、あるいは遊技盤面を流下することによって遊技が行われる。本発明の演出装置は、遊技媒体が通過する経路に沿って設けられた複数の発光部によって構成されており、また、それぞれの発光部には、遊技媒体の通過を非接触で検出する検出部が一体に設けられている。そして、検出部が遊技媒体を検出すると、一体に設けられた発光部が、所定期間、発光するように構成されている。
【0010】
こうすれば、遊技媒体の経路に沿って複数の発光部を設けておくだけで、遊技媒体が通過すると、次々と発光部が発光することになるので、遊技媒体の動きを遊技者にハッキリと認識させることができる。もちろん、遊技媒体は非接触で検出されるので、遊技媒体の動きが不自然になってしまうことがない。このため、自然な態様で遊技媒体の動きを演出することが可能であり、遊技者を遊技に引き付けることが可能となる。
【0011】
また、それぞれの発光部および検出部は、遊技媒体を検出したら所定期間、発光するという極めて単純な動作をしているに過ぎない。このため、次のように、遊技機の演出装置として極めて優れた利点を得ることができる。先ず、個々の発光部および検出部は極めて小さくすることができるので、遊技盤面上のようなスペースの限られた処であっても、所望の箇所に容易に搭載することができる。更に、複雑な制御が不要であるため、例えばパチンコ機の遊技球のような素早い動きに対しても、瞬間的に反応して発光することができるので、違和感のない演出を行うことができる。更に加えて、発光部および検出部が自律的に演出を行うことができるので、遊技機の制御が複雑になることがなく、また配線などによって遊技機の構造が複雑になることもない。
【0012】
また、このような本発明の演出装置においては、遊技媒体の有無に起因する磁界の変化を検出することによって、経路を通過する遊技媒体を検出することとしてもよい。
【0013】
通常、遊技媒体は主に金属材料を用いて形成されている。従って、例えば、ホール素子などのような磁界の強さに応じて電圧を発生させる素子や、MR素子などのように磁界の強さに応じて抵抗値が変化する素子などを用いれば、遊技媒体を非接触で、しかも確実に検出することが可能となる。
【0014】
また、上記の本発明の演出装置においては、次のようにしても良い。先ず、検出部では、磁界の変化によって遊技媒体を検出する際に、変化量も検出可能としておく。そして、検出した変化量が所定の閾値を越えた場合には、異常の発生を示す所定の異常信号を出力するようにしてもよい。
【0015】
通常、遊技機の遊技盤面は、ガラスなどの透明板によって保護されており、遊技媒体以外の異物が入らない構造になっている。ところが、遊技を有利に進めるために、磁石などを用いて遊技媒体を誘導するような不正な行為が行われることがある。従って、検出部によって検出した磁界の変化量が所定の閾値を超えた場合に異常信号を出力するようにしておけば、磁石などを用いた不正な行為が行われたことを直ちに検知することが可能となる。また、上述したように、本発明の演出装置は小形化できるため、不正行為の行為者が磁石を用いて遊技媒体を誘導しようとする箇所に設けることが容易であり、この点からも、不正行為を効果的に検知することができる。
【0016】
また、上記の本発明の演出装置においては、次のようにしても良い。先ず、検出部では、遊技媒体を検出すると、遊技媒体を検出してから検出しなくなるまでの経過時間も検出可能としておく。そして、遊技媒体を検出している経過時間に応じて、異なる態様で、すなわち発光する色や、明るさ、時間を異ならせて、発光するようにしてもよい。
【0017】
遊技機では遊技媒体を発射する速度、あるいは遊技媒体の移動速度が、その後の遊技の進行を決定することが多い。そして、遊技媒体の速度が速くなるほど、個々の検出部で遊技媒体を検出している経過時間は短くなる。従って、経過時間に応じた態様で発光部を光らせてやれば、遊技者は、発光する態様に基づいて遊技媒体の速度を認識しながら、遊技を進めることが可能となる。
【0018】
あるいは、本発明の演出装置においては、次のようにして遊技球の有無を検出しても良い。先ず、所定の周期で強さが変動する磁界(変動磁界)を、遊技球の経路上に発生させる。このような変動磁界は、コイル部に電流を流すことによって発生させることができる。尚、変動磁界は磁界の強さが変化すれば十分であり、従って、コイル部に流す電流は、交流成分を有する電流であれば良い。例えば、磁界の向きが変化する変動磁界を発生させるのであれば、いわゆる交流電流(向きが変化する電流)をコイル部に流してやれば良い。また、電流の向きは変化しないものの、大きさが変化する電流を流してやれば、磁界の強さのみが変化して向きは変わらない変動磁界を発生させることができる。そして、このような変動磁界を遊技媒体が通過した時に、コイル部でのインピーダンスの変化を検出することによって、遊技媒体の有無を検出しても良い。
【0019】
前述したように、遊技媒体は、通常、主に金属材料を用いて形成されている。そして、金属材料に変動磁界が作用すると、いわゆる渦電流が発生する。この現象を、変動磁界を発生するコイル部の側から見れば、変動磁界を発生させる上に、渦電流も発生させなければならないことになるので、その分だけ、コイル部でのインピーダンスが増加する。尚、インピーダンスとは、大まかには、交流成分に対する抵抗のようなものと考えておけばよい。従って、インピーダンスの変化を検出することによっても、遊技媒体を非接触で、しかも確実に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下では、上述した本願発明の実施例について説明する。図1は、本実施例の演出装置を搭載したパチンコ機100の正面図である。パチンコ機100の筐体は大きくわけると、パチンコ機100の側壁となる外枠110と、制御基盤など主要部品を内蔵する中枠120と、中枠120に開閉可能に固定された前面枠130などから構成されている。また、前面枠130のほぼ中央には開口部が設けられており、この開口部には、ガラスなどの透明材料で形成された透明板が嵌め込まれている。開口部から視認可能な位置には、遊技盤が着脱可能な態様で中枠120に取り付けられて、遊技盤面210を形成している。
【0021】
前面枠130の下方にあたる中枠120の正面部には、遊技に使用する遊技球を溜めておく上皿部140と、パチンコ機100から払いだされた遊技球を上皿部140に排出する払出口150とが設けられている。また、上皿部140の下方には、下皿部160と、下皿部に遊技球を排出する下部払出口170とが設けられている。上皿部140と下部払出口170とは、中枠120の内側に設けられた流路(図示せず)によって連結されており、上皿部140が、遊技球で満たされている場合は、遊技球を下部払出口から排出させることによって、遊技球を、下皿部160に排出することが可能となっている。
【0022】
また、中枠120の正面部にはハンドル180が設けられている。このハンドル180は、発射装置(図示せず)に信号をおくるコントローラーの役割を果たしており、ハンドル180を回すことによって上皿部140に装填されている遊技球を遊技盤200に発射することができる。パチンコ機による遊技は、遊技者が、ハンドル180を操作し、遊技盤内に遊技球が発射されることで開始される。
【0023】
図2は、遊技盤上に形成された遊技盤面210を正面から図示したものである。遊技盤面210の中央には、遊技の進行に合わせて演出を行う演出部300が設けられており、演出部300の周囲には、多数の障害釘230を初めとして、風車240、始動入賞口270、大入賞口280などが設けられている。
【0024】
遊技者がハンドル180を操作して遊技球10を発射すると、発射口220から遊技盤面210へと遊技球10が発射された後、重力の作用を受けながら、遊技盤面210を下方へと落下する。前述したように、遊技盤面210には、多数の障害釘230や、風車240などが設けられており、遊技球10は落下する途中でこれらに衝突する結果、種々の経路を通って落下することになる。
【0025】
また、遊技盤面210には、遊技球10が入球し得る入賞口が複数箇所に設けられており、何れかの入賞口に遊技球10が入球すると、所定個数の遊技球が、賞球として払出口150から払い出されるようになっている。
【0026】
これら入賞口の中には、始動入賞口270と呼ばれる特殊な入賞口や、大入賞口280と呼ばれる特殊な入賞口が設けられている。大入賞口280は、通常時は閉鎖されていて遊技球10が入球し得ない状態となっているが、始動入賞口270に遊技球10が入球すると、賞球が払い出されるだけでなく、大当たり抽選が併せて実行される。そして、大当たり抽選の結果が、大当たりであった場合には、大入賞口280が開口する。大入賞口280は大きく開口するので、大入賞口280が開口すると遊技者は多くの遊技球10を入球させることが可能となり、その結果、多くの賞球を獲得することが可能となる。このように大入賞口280が開口して多くの賞球が獲得可能な状態は、大当たり状態と呼ばれる。また、大当たりの抽選が行われる様子および抽選の結果は、演出部300を用いて遊技者に示される。
【0027】
始動入賞口270に遊技球10を入球させることは、それほど簡単なことではないが、次のような経路を通過させることで、比較的容易に入球させることが可能となる。すなわち、演出部300の左上肩の位置には、遊技球10を取り込む開口部310が設けられており、この開口部310は、図示しないワープ通路に繋がっており、ワープ通路の出口は、演出部300の内部に設けられたステージ250に繋がっている。ステージ250は、演出部300の一端から他端に向けて形成された細長い通路のような形状となっており、演出部300の両端側は僅かに高く、演出部300の中央付近は僅かに低く形成されている。このため、ステージ250に導かれた遊技球は、しばらくの間、ステージ250の上を転動しているが、やがてステージ250から下方に落下する。このとき、ステージ250のちょうど中央部分、すなわち最も低くなっている位置から遊技球10が落下すると、その真下に形成された始動入賞口270に入球させることが可能となる。
【0028】
また、何れの入賞口にも入球しなかった遊技球10は、遊技盤内の最も低い位置に設けられたアウト口260から、遊技盤外へと排出される。
【0029】
ここで、本実施例の演出装置500は、遊技盤面210で遊技球10が通過する経路に沿って設けられている。図2に示した例では、発射口220から発射されるまでに遊技球10が通過する通路の部分に、複数の演出用チップが設けられて演出装置500が形成されている。また、ステージ250上で遊技球10が転動する部分にも、複数の演出用チップが設けられて演出装置500が形成されている。このように、本実施例の演出装置500は、遊技盤面210で遊技球10が通過する経路に沿って設けられた複数の演出用チップによって構成されている。
【0030】
図3は、本実施例の演出装置500を構成する演出用チップ510の構造を示した説明図である。図3(a)は、演出用チップ510の外観形状を示しており、図3(b)は、演出用チップ510の内部構造を示している。図3(a)に示したように、演出用チップ510は、セラミックス材料または樹脂材料によってモールドされた略箱形の本体512の上面に、発光ダイオードによって構成された発光ダイオード514や、各種回路が内蔵されたICチップ516、その他の小さな回路部品などが実装された構成となっている。また、図3(b)に示されるように、本体512の内部には、永久磁石522が埋め込まれており、永久磁石522の上方には、薄膜化されたMR素子520が埋め込まれている。ここでMR素子520とは、磁界の強さによって抵抗値が変化する特性を有する素子である。MR素子520は、永久磁石522の上方に設けられているので、MR素子520には永久磁石522の磁界が絶えず作用している。このような状態で、MR素子520の上方を遊技球10などが通過すると、永久磁石522からの磁力線が曲げられて、MR素子520を通過する磁界が変化する。従って、このときの抵抗値の変化を検出することで、遊技球10が通過したことを検出することが可能となる。尚、図3では、MR素子520と、ICチップ516とは別体に構成されている場合が示されているが、MR素子520も、他の回路と一緒にICチップ516の中に組み込んでも良い。
【0031】
図4は、本実施例の演出装置500を構成する演出用チップ510の回路構成を示した説明図である。図示されているように、MR素子520は、4つの素子によって、いわゆるホイーストンブリッジが形成されており、ホイーストンブリッジからの差動電圧が、作動アンプに入力されている。このようにすることで、各MR素子での僅かな抵抗値の変化を高い感度で検出することが可能である。
【0032】
作動アンプの出力は、比較器に入力される。比較器は、2つの入力端子と1つの出力端子を有するアナログ回路の一種であり、一方の入力端子の入力電圧を他方の入力端子の入力電圧と比較して、その結果に応じた電圧を出力する機能を有している。本実施例では、一方の入力端子には差動アンプの出力が、他方の入力端子には一定の閾値電圧Thrが入力されており、差動アンプの出力電圧が閾値電圧Thrを越えている間だけ+5Vとなり、その他の場合は0Vとなるパルス電圧を出力する。
【0033】
比較器からのこのような出力は、LED駆動回路に入力される。LED駆動回路では、比較器からのパルス波形の立ち下がりエッジを検出して、エッジ位置から所定時間幅のパルスを生成する。次いで、このパルスを、トランジスタなどで構成されたスイッチ回路に入力する。スイッチ回路には、発光ダイオード514がオープンコレクタ接続されており、パルスが入力されると、その期間だけ電流が流れて発光ダイオード514が点灯するようになっている。前述したICチップ516には、上述した差動アンプや、比較器、LED駆動回路などの回路が組み込まれている。
【0034】
以上に説明したように、演出用チップ510は、発光ダイオード514やICチップ516と、永久磁石522と、MR素子520などから構成されており、極めて小型に構成することができる。このため、遊技盤面210の遊技球10が通過する経路に沿って設けることで、遊技球の通過を効果的に演出する演出装置500として用いることが可能となる。以下では、この点について説明する。
【0035】
図5は、ステージ250上で転動する遊技球10の動きを、本実施例の演出装置500を用いて演出している様子を例示した説明図である。図5(a)は、ワープ通路を通って遊技球10がステージ250に導かれた直後の様子を表している。図中に示した小さな矩形は演出用チップ510を表している。演出用チップ510は、遊技球10が転動するステージ250の表面の裏側に設けられており、遊技球10がステージ250を転動しても、演出用チップ510が障害になることはない。また、ステージ250は、少なくとも一部が透明に形成されており、演出用チップ510の発光ダイオード514が点灯すると、これを遊技者が容易に認識できるように構成されている。
【0036】
図5(a)に示されているように、ステージ250上で遊技球10が転動すると、ステージ250に組み込まれた演出用チップ510が遊技球10の通過を検出して、一定期間だけ発光ダイオード514を点灯させる。この結果、図5(a)に示されるように、遊技球10が通過した直ぐ後の位置から、短い光の尾を引くような態様で発光ダイオード514が点灯する。
【0037】
また、前述したように、ステージ250の他端側は上り斜面となっているから、ステージ250を転動する遊技球10は次第に減速して、他端に達する手前側で停止した後、今度は斜面を下るようにして、逆方向に転動し始める。図5(b)には、遊技球10がステージ250の他端側で停止する直前の様子が示されている。遊技球10は停止する直前で、転動速度は小さいので、遊技球10の直後から引く光の尾の長さは短くなっている。しかし、下り斜面を転動するに従って、遊技球10は次第に速くなり、ステージ250が最も低くなっている位置(すなわち、ほぼ中央の位置)の通過時には、最も転動速度が高くなっている。図5(c)には、ステージ250のほぼ中央の位置を遊技球10が通過する様子が示されている。遊技球10の転動速度が高いことと対応して、遊技球10の直ぐ後から尾を引く光の長さは長くなっている。
【0038】
このように、本実施例の演出装置500では、ステージ250の上を転動する遊技球10の動きに合わせて発光ダイオード514を次々と光らせることで、遊技球10がステージ250を転動する様子を、遊技者にハッキリと認識させることができる。また、遊技球10が、あたかも光の尾を引いているかのような、極めて印象的な演出を行うことができる。加えて、転動速度に応じて、光の尾の長さが変わっているかのように見えるので、遊技球10が転動する様子を、遊技者により一層印象付けることが可能である。
【0039】
もちろん、このような印象的な演出が可能であるにも拘わらず、遊技球10の転動する通路に沿って複数の演出用チップ510を設けるだけであり、しかも個々の演出用チップ510の構造も単純なので、パチンコ機100が複雑になることがない。また、演出用チップ510は、遊技球10を非接触で検出することから、遊技球10の動きには影響を与えることがない。このため、遊技者にとってはたいへん分かり易い態様で、遊技球10の自然な動きを表示することが可能となる。
【0040】
また、図2に示したように、本実施例の演出装置500を、遊技球が発射口220から発射されるまでの通路に設けた場合も、同様にして遊技球10の動きを効果的に演出することができる。すなわち、遊技者が遊技球を発射する度に、発射口220までの通路に沿って設けられた複数の発光ダイオード514が光るので、遊技球10があたかも光の尾を引きながら、遊技盤面210に発射されていくかのような印象を遊技者に与えることが可能となる。
【0041】
尚、本実施例の演出装置500は、遊技球10の通路に沿って演出用チップ510を設けるだけであり、そして、演出用チップ510は極めて小形化できる。従って、上述したようにステージ250や、発射口220の付近に限らず、遊技盤面210のどのような箇所にも配置することが可能であり、遊技球10の動きを演出することが可能である。
【0042】
上述した本実施例の演出装置500には、幾つかの変形例が存在している。以下では、これら変形例について簡単に説明する。
【0043】
図6は、第1の変形例における演出用チップ510内の回路構成を示した説明図である。図示されるように第1の変形例は、図4に示した回路構成に対して、比較器が1つ追加された構成となっている。差動アンプの出力は、比較器1および比較器2に入力されており、比較器1には閾値電圧Thr1が入力され、比較器2には閾値電圧Thr2が入力されている。ここで、比較器1に入力される閾値電圧Thr1は、図4を用いて前述した回路構成の閾値電圧Thrと同様の電圧値に設定されている。これに対して、追加された比較器2に入力される閾値電圧Thr2は、遊技球10が通過した程度では達しないような、十分に高い電圧値に設定されている。このため、通常に遊技が行われている間は、比較器2は常に0Vを出力しており、LED駆動回路には比較器1からの出力のみが入力された状態となっている。その結果、前述した実施例と同様に、遊技球10の通過を検出するたびに発光ダイオード514が点灯することになる。
【0044】
ところが、強力な磁石を用いて遊技球10を誘導する不正な行為が行われると、差動アンプからは大きな電圧波形が出力されて、比較器2から+5Vの電圧パルスが出力され、この電圧パルスが異常信号として外部に出力される。また、比較器2の出力は、反転された後、比較器1の出力との論理積(AND)がLED駆動回路に入力されている。このため、比較器2から異常信号が出力されている間は、発光ダイオード514が光ることはない。
【0045】
このように第1の変形例では、遊技球10の動きを演出するだけでなく、磁石を用いて遊技球10を誘導する不正行為が行われた場合には、これを検出して異常信号を出力することができる。遊技者が遊技球10の動きを注視する箇所は、不正行為を行って遊技球10を誘導しようとする箇所でもあることが多い。従って、第1の変形例の演出装置500によれば、遊技者が遊技球10の動きを注視する箇所で、遊技球10の動きを効果的に演出することができるとともに、不正行為が行われた場合には、これを検知して直ちに異常信号を出力することが可能となる。もちろん、前述したように演出用チップ510は極めて小型にできるから、搭載スペースが障害になって演出用チップ510を搭載できないといった事態が発生する懸念はない。
【0046】
図7は、第2の変形例における演出用チップ510内の回路構成を示した説明図である。図示されるように第2の変形例は、図4に示した回路構成に対して、比較器の出力がパルス幅検出回路に入力されており、このパルス幅検出回路の出力がLED駆動回路に入力されている。また、LED駆動回路は、3つの発光ダイオード514を駆動する構成となっている。ここで、3つの発光ダイオード514は、発する光の色が異なっており、それぞれ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光を放射する。パルス幅検出回路は、遊技球10の通過にともなって比較器が出力した波形のパルス幅を検出する。遊技球10の通過速度が速ければパルス幅は短くなり、逆に通過速度が遅ければパルス幅は長くなる。そして、LED駆動回路は、パルス幅検出回路からパルス幅に関する信号を受け取って、パルス幅に応じて、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光を放射する何れかの発光ダイオード514を駆動する。例えば、パルス幅が短い場合には青色の発光ダイオード514を駆動し、パルス幅が長くなると緑色の発光ダイオード514を、そして更にパルス幅が長くなると赤色の発光ダイオード514を駆動する。
【0047】
このような第2の変形例では、遊技球10が通過したときに点灯する光の色に基づいて、遊技球10の速度を知ることができる。例えば、第2の変形例の510を、遊技球10が発射する発射口220の付近に設けておく。すると、遊技球10を勢いよく発射した場合には、遊技球10が赤い光の尾を引きながら遊技盤面210に発射され、逆に遊技球10を弱く発射した場合は、遊技球10が青い光の尾を引きながら発射され、中ほどで発射した場合は、緑の光の尾を引きながら発射されるような演出を行うことができる。このため、遊技者は、遊技球が狙ったところに行くか否かを、光の色によって見当を付けながら遊技を行うことが可能となる。
【0048】
また、上述した実施例では、MR素子520を用いて遊技球10を検出するものとして説明した。しかし、遊技球10を非接触で検出可能であれば、どのような方法で検出しても構わない。例えば、高周波数成分を含んだ変動磁界を発生させることによって、遊技球10を検出しても良い。
【0049】
図8は、変動磁界を用いて遊技球10を検出する第3の変形例の回路構成を示した説明図である。第3の変形例では、MR素子520の代わりにコイル600が搭載されている。また、ICチップ516には、高周波数駆動回路や、インピーダンス検出回路が組み込まれている。第3の変形例においては、高周波数駆動回路を用いて、高周波成分を含む変動電流を発生させて、コイル600に供給すると、コイル600の周囲には、変動磁界(強さが周期的に変化する磁界)が放出される。
【0050】
このような変動磁界の中を、遊技球10のような金属材料でできた物体が通過すると、物体の内部に渦電流が発生し、そのことに対応して、高周波数駆動回路がコイル600に変動電流を供給するときの、コイル600のインピーダンスが増加する。そこで、コイル600のインピーダンスをインピーダンス検出回路によって検出し、インピーダンスが所定の閾値電圧Thrよりも大きくなった場合は、遊技球10が通過したものと判断するようにしてもよい。
【0051】
このようにしても、遊技球10の通過を非接触で確実に検出することが可能となる。また、MR素子520に較べれば、コイル600は構造が単純なため、その分だけ、故障などが生じ難く、小形化も容易であり、加えて、安価に入手することが可能である。その結果、演出用チップ510を、より小型で、信頼性が高く、且つ安価にすることが可能となる。
【0052】
以上、本発明について各種の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施例の演出装置を搭載したパチンコ機100の正面図である。
【図2】遊技盤上に形成された遊技盤面210を正面から図示したものである。
【図3】本実施例の演出装置500を構成する演出用チップ510の構造を示した説明図である。
【図4】本実施例の演出装置500を構成する演出用チップ510の回路構成を示した説明図である。
【図5】ステージ250上で転動する遊技球10の動きを演出している様子を例示した説明図である。
【図6】第1の変形例における演出用チップ510の回路構成を示した説明図である。
【図7】第2の変形例における演出用チップ510の回路構成を示した説明図である。
【図8】第3の変形例における演出用チップ510の回路構成を示した説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10…遊技球、 100…パチンコ機、 110…外枠、 120…中枠、
130…前面枠、 140…上皿部、 150…払出口、 160…下皿部、
170…下部払出口、 180…ハンドル、 200…遊技盤、
210…遊技盤面、 220…発射口、 230…障害釘、 240…風車、
250…ステージ、 260…アウト口、 270…始動入賞口
280…大入賞口、 300…演出部、 310…開口部、
500…演出装置、 510…演出用チップ、 512…本体、
514…発光ダイオード、 516…ICチップ、 522…永久磁石、
600…コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技盤面に遊技媒体を発射することによって遊技を行う遊技機に搭載されて、該遊技の演出を行う演出装置であって、
前記遊技媒体が通過する経路に沿って設けられた複数の発光部と、
前記発光部と一体に組み込まれて、前記経路を通過する前記遊技媒体を非接触で検出する検出部と
を備え、
前記発光部は、一体に組み込まれた前記検出部が前記遊技媒体を検出すると、所定期間、発光する発光部である演出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の演出装置であって、
前記検出部は、前記遊技媒体の有無に起因する磁界の変化を検出することによって、前記経路を通過する遊技媒体を検出する検出部である演出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の演出装置であって、
前記検出部は、前記磁界の変化量を検出可能な検出部であり、
前記検出部で検出された変化量が所定の閾値を越えた場合には、異常の発生を示す所定の異常信号を出力する異常信号出力部を備える演出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の演出装置であって、
前記検出部は、前記遊技媒体を検出すると、該遊技媒体を検出してから検出しなくなるまでの経過時間も検出する検出部であり、
前記発光部は、前記検出部で検出された前記経過時間に応じて、異なる態様で発光する発光部である演出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の演出装置であって、
前記検出部は、
所定の周期で強さが変動する変動磁界を、前記遊技球の経路上に発生させるコイル部を備えるとともに、
前記コイル部が前記変動磁界を発生させる際のインピーダンスの変化を検出することによって、前記経路を通過する遊技媒体を検出する検出部である演出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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