説明

遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法

【課題】本発明は、バイポーラ定電圧駆動方式リール駆動ユニットにおける各Hアームをオンさせることにより、巻線両端をVDD電位に接続し、低消費電力化、小型化を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明による遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法は、コントローラによりリールを停止させるための条件が発生したリール停止条件発生後、前記各Hブリッジ(1,2)における各Hアーム(3,7)を全てオンとし、二相巻線(10)の両端を電源電位に接続してステップモータ(5)を停止させる場合、前記リール停止条件発生後、一旦、前記二相巻線(10)を励磁し、前記コントローラ(20)に予めパラメータとして設定された時間経過後に前記各Hアーム(3,7)をオンとする方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法に関し、特に、バイポーラ定電圧駆動方式リール駆動ユニットにおけるHブリッジ回路のHアーム両側をオンさせることにより、巻線両端をVDD電位に接続し、回路構成の簡略化、低消費電力化及び小型化を達成するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のステップモータの駆動・停止制御方法としては、一般に、ステップモータをユニポーラ定電圧駆動方式によって駆動及び停止させる方式が採用され、リール停止制御はモータ巻線全ての相(A相、Aバー相、B相、Bバー相)に励磁を行い、全相を励磁させることによって発生するトルクによってモータにブレーキをかける方式である。
【0003】
また、バイポーラ方式の場合、バイポーラ定電圧駆動方式によるリール駆動ユニットの場合においては、停止制御の例として、モータ巻線の両端を接地することによって、停止を実現していた。
前述のユニポーラ定電圧駆動方式及びバイポーラ定電圧駆動方式は、後述の特許文献1及び2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−11148号公報
【特許文献2】特開2007−7192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、一般に、ユニポーラ定電圧駆動方式とバイポーラ定電圧駆動方式とを比較すると、次のような長所及び短所が存在する。
ユニポーラ駆動における長所・短所
長所:駆動回路構成及び制御が簡単(FET等が4点で構成可能)
短所:モータ巻線を駆動時に半分しか使えないため、巻線に対する効率が悪い。
同一トルク基準ならば、バイポーラ方式に比べてモータは大型化
バイポーラ駆動における長所・短所
長所:巻線を全て使った励磁ができるため、同一トルクを基準とするならば、モータ小型 化が可能
短所:駆動回路構成及び制御が複雑化する(FET等が8点必要)
【0006】
前述のユニポーラ定電圧駆動方式においては、遊技機のリール停止時に全相励磁停止制御を行っているが、全相巻線に流す電流は全て無効電流であり、結果的にモータでの消費電力が増えることになっていた。
【0007】
また、前述のバイポーラ定電圧駆動方式においては、モータの巻線両端を接地して停止させるため、ブリッジのHアームとLアームのオン/オフ遅延による貫通電流発生の可能性があり、この貫通電流の発生を防止するために、前述のオン/オフ遅延の制御及び貫通電流保護回路を含む機能を有する専用ICを作らなくてはならず、コストダウンが困難であった。
また、他の方法として、Hアーム及びLアーム素子においてオンからオフへの遅延時間と、オフからオンへの遅延時間の特性を選定することにより、貫通電流を予め回避することも可能であるが、このように組合わせる素子の特性を選定することは多大の労力を必要とし、大量生産には大きい障害となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法は、二相巻線をバイポーラ定電圧駆動方式の各HブリッジにおけるHアーム及びLアームの切換えにより励磁し、ステップモータをステップ駆動及び停止させてリールの動作をコントローラにより制御するようにした遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法において、前記コントローラにより前記リールを停止させるための条件が発生したリール停止条件発生後、前記各Hブリッジにおける各Hアームを全てオンとし、前記二相巻線の両端を電源電位に接続させて前記ステップモータを停止させる場合、前記リール停止条件発生後、一旦、前記二相巻線を励磁し、前記コントローラに予めパラメータとして設定された時間経過後に前記各Hアームをオンとする方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、二相巻線をバイポーラ定電圧駆動方式の各HブリッジにおけるHアーム及びLアームの切換えにより励磁し、ステップモータをステップ駆動及び停止させてリールの動作をコントローラにより制御するようにした遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法において、前記コントローラにより前記リールを停止させるための条件が発生したリール停止条件発生後、前記各Hブリッジにおける各Hアームを全てオンとし、前記二相巻線の両端を電源側に接続させて前記ステップモータを停止させることにより、従来のブリッジIC等の代わりにコントローラからなる制御構成のみで、貫通電流の発生を回避し、ステップモータの小型化や低消費電力化が可能となり、さらに、停止制御時には、巻線の両端をVDD電位に接続することにより、電流を流すことなくステップモータの停止制御を行うことができる。
また、低消費電力化及び小型化等によるコスト削減にも寄与できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法を示す構成図である。
【図2】図1の停止時の励磁状態を示す構成図である。
【図3】本発明の駆動・停止制御方法を適用するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、バイポーラ定電圧駆動方式リール駆動ユニットにおけるHブリッジ回路のHアーム両側をオンさせることにより、巻線両端をVDD電位に接続し、回路構成の簡略化、低消費電力化及び小型化を達成するようにした遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法を提供することを目的とする。
【実施例】
【0012】
以下、図面と共に本発明による遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本発明による図3のモータ駆動部26を構成するためのバイポーラ定電圧駆動回路を示し、このバイポーラ定電圧駆動回路は、A相用とB相用の周知の各Hブリッジ1,2で構成され、前記各Hブリッジ1は、VDDに接続されたHアーム3側の素子AH及びAバーHと接地側であるAGに接続されたLアーム4側のAバーL及びALとからなり、ステップモータ5のA相巻線6が前記Hアーム3とLアーム4間のA及びAバー間に接続されている。
【0013】
前記B相用のHブリッジ2は、VDDに接続されたHアーム7側の素子BH及びBバーHと接地側であるAGに接続されたLアーム側8のBバーL及びBLとからなり、前記ステップモータ5のB相巻線9が前記Hアーム7とLアーム8間のB及びBバー間に接続されている。
尚、前述のA相巻線6及びB相巻線9はステップモータ5をバイポーラ定電圧駆動するための二相巻線10を形成している。
【0014】
次に、前述のバイポーラ定電圧駆動回路を用いてスロットマシーン等の遊技機のリール(図示せず)をステップモータ5によって駆動・停止する場合について説明する。
前記A相巻線6及びB相巻線9に接続された前記各ブリッジ1,2の各スイッチングトランジスタであるAH,AL,BH,BL,AバーH,AバーL,BバーH,BバーLを次の表1の第1表で示される各パターン0〜7に沿って、図3に示すコントローラとしての制御部20によって駆動制御することにより、前記ステップモータ5を介して遊技機のリール(図示せず)の回転駆動と停止を行うことができる。
【0015】
【表1】

【0016】
前述の場合、回転中の前記リールを停止させようとする場合、図3における遊技者のストップボタン31,32,33の操作(ボタンのオン動作)がトリガとなり、遊技機内蔵の前記コントローラによって所望位置に停止するため、コントローラ20がタイミングを計ってリール停止処理が行われるが、このリールを停止させるためのリール停止条件が前述のように成立(発生)した時点において、ステップモータ5では8通り(前述のパターン0〜7)の励磁組合わせのうちの何れかの1パターンの励磁が行われている。
【0017】
前述の時点で、本発明の提案である各Hブリッジ1,2の各Hアーム3,7のAH,AバーH,BH及びBバーHを全てをオンとし、各巻線6,9の両端をVDD側に接続するとステップモータ5は停止状態に移行する。
【0018】
尚、前述の場合、各ブリッジ1,2のHアーム3および7とLアーム4,8のオン/オフ遅延が仮に発生すると、従来のような貫通電流が発生する可能性が残るため、コントローラ20によって前記リール停止条件発生後に、一旦、前記二相巻線10を励磁し、前記コントローラ20に予めパラメータとて設定された時間経過後に前記各Hアーム3,7のAH,AバーH,BH及びBバーHをオンとして各巻線6,9の両端を電源電位に接続して停止させることにより、貫通電流を確実に回避してステップモータ5及びリールの回転を停止させることができる。
従って、各Hブリッジ1,2の各素子のオン/オフ遅延を制御したり、貫通電流保護回路等を含むと云う機能を備えた従来の専用ICを用いることなく、単純な制御構成のみの前記コントローラ20のみで貫通電流の発生を回避した停止制御を行うことができる。
【0019】
また、図3は、本発明における遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法を適用するためのブロック図である。この遊技機の構成は制御部20、操作部21、モータ駆動部22に分かれる。前記制御部20はマイコン23とメモリであるROM24及びRAM25にて構成され、操作部21からの入力信号処理と、モータ駆動部26への制御出力処理を行うI/O27を有している。
前記操作部21は、遊戯者によるリール回転開始操作のためのスタートレバー30と、3つあるリールをそれぞれ停止する3個のストップボタン31,32,33にて構成される。このスタートレバー30と3個のストップボタン31〜33の入力はマイコン23のI/O27に接続される。
前記モータ駆動部26は図1で示したトランジスタ等の駆動用素子からなるA相用Hブリッジ1及びB相用Hブリッジ2によって構成され、トランジスタはマイコンのI/O27に接続されている。
【0020】
遊戯者はスタートレバー30を操作することによって、スタートレバー30からの信号をマイコン23がI/O27経由にて受領し、ステップモータ5を回転させる駆動パルスをマイコン23内にて生成させ、3個のリール(図示せず)を回すための信号をI/O27経由にてモータ駆動部26に出力する。
このモータ駆動部26はこの駆動パルスにてステップモータ5を回転開始させ、目標回転速度となった時点で定速回転の制御に切り替える。
リールが一定回転となった状態において、遊戯者がストップボタン31,32,33を操作すると、ストップボタン31,32,33からの信号をマイコン23がI/O27経由にて受領し、3個あるストップボタン31〜33のうち操作した何れかのストップボタン31〜33に該当したリールを停止すべく、リールへの停止制御をモータ駆動部26へI/O27経由にて出力する。
このモータ駆動部26は指示された制御パターンにて、リール停止を行う。
【産業上の利用可能性】
【0021】
従って、本発明による遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法は、遊技機だけではなく、工作機等の駆動停止にも適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1,2 A相、B相用Hブリッジ
3,7 Hアーム
4,8 Lアーム
5 ステップモータ
6 A相巻線
9 B相巻線
10 二相巻線
20 コントローラ(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二相巻線(10)をバイポーラ定電圧駆動方式の各Hブリッジ(1,2)におけるHアーム(3,7)及びLアーム(4,8)の切換えにより励磁し、ステップモータ(5)をステップ駆動及び停止させてリールの動作をコントローラ(20)により制御するようにした遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法において、
前記コントローラ(20)により前記リールを停止させるための条件が発生したリール停止条件発生後、前記各Hブリッジ(1,2)における各Hアーム(3,7)を全てオンとし、前記二相巻線(10)の両端を電源電位に接続して前記ステップモータ(5)を停止させる場合、前記リール停止条件発生後、一旦、前記二相巻線(10)を励磁し、前記コントローラ(20)に予めパラメータとして設定された時間経過後に前記各Hアーム(3,7)をオンとすることを特徴とする遊技機用ステップモータの駆動・停止制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−172396(P2011−172396A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34399(P2010−34399)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】