遊星歯車機構
【課題】キャリアの肉厚増大を抑えることができる遊星歯車機構を提供すること。
【解決手段】本発明の遊星歯車機構は、対向する一対のキャリアプレート14b,14cと、各キャリアプレート14b,14cに形成された、互いに対向する一対の軸支持孔14d,14dに挿入されて、ピニオンギヤ(段付きプラネタリピニオン)13を回転自在に保持するピニオンシャフト27と、ピニオンシャフト27の一端に設けられ、キャリアプレート14bの外表面14boに内端面27biが当接するフランジ部27bと、フランジ部27bの外端面27boに当接する当接部31と、キャリアプレート14bの対向する両側面14h,14hを把持する把持部32と、を有する保持部材30と、を備えている。
【解決手段】本発明の遊星歯車機構は、対向する一対のキャリアプレート14b,14cと、各キャリアプレート14b,14cに形成された、互いに対向する一対の軸支持孔14d,14dに挿入されて、ピニオンギヤ(段付きプラネタリピニオン)13を回転自在に保持するピニオンシャフト27と、ピニオンシャフト27の一端に設けられ、キャリアプレート14bの外表面14boに内端面27biが当接するフランジ部27bと、フランジ部27bの外端面27boに当接する当接部31と、キャリアプレート14bの対向する両側面14h,14hを把持する把持部32と、を有する保持部材30と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアと、キャリアに支持されると共にピニオンギヤを回転可能に保持するピニオンシャフトと、を備えた遊星歯車機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キャリアの孔にピニオンシャフトを挿通した状態で、この孔の縁を軸線方向に叩くことで孔の周りにカシメ部を形成し、ピニオンシャフトをキャリアに固定する遊星歯車機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-147285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の遊星歯車機構にあっては、カシメ部を形成することでキャリアの孔の縁が軸方向につぶれてしまう。つまり、カシメ部を形成することにより孔の軸方向長さが短くなる。
一方、遊星歯車機構の回転時、キャリアの孔の内周面には、ピニオンシャフトから径方向の荷重が作用する。そのため、ピニオンシャフトの外周面とキャリアの孔の内周面との接触面積を確保して孔の剛性を高める必要がある。
すなわち、従来の遊星歯車機構では、ピニオンシャフトの外周面とキャリアの孔の内周面との接触面積を確保するために、カシメ部を形成する分、孔の軸方向長さを長くしておく必要があり、キャリアの肉厚が増大するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、キャリアの肉厚増大を抑えることができる遊星歯車機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の遊星歯車機構では、対向する一対のキャリアプレートと、一対の軸支持孔と、ピニオンシャフトと、フランジ部と、保持部材と、を備えている。
前記一対の軸支持孔は、前記一対のキャリアプレートのそれぞれに形成され、互いに対向する。
前記ピニオンシャフトは、前記一対の軸支持孔に挿入され、前記一対のキャリアプレートの間で軸受を介してピニオンギヤを回転自在に保持する。
前記フランジ部は、前記ピニオンシャフトの一端に設けられ、一方のキャリアプレートの外表面に内端面が当接する。
前記保持部材は、前記フランジ部の外端面に当接する当接部と、前記フランジ部が当接したキャリアプレートの両側面を把持する把持部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の遊星歯車機構では、保持部材の当接部がフランジ部の外端面に当接し、把持部がキャリアプレートの両側面を把持する。
すなわち、ピニオンシャフトの一端に設けられたフランジ部の軸方向の移動がフランジ部と当接部によって規制されると共に、フランジ部及び当接部は把持部によってキャリアプレートに固定される。
そのため、キャリアプレートに形成された軸支持孔が、軸方向につぶされるようなカシメ部を形成することなくキャリアプレートに対してピニオンシャフトを固定することができる。この結果、軸支持孔の軸方向長さが短くならないので、キャリアプレートの肉厚を増加する必要がなくなり、キャリアの肉厚増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の遊星歯車機構が適用されたインホイールモータユニットを示す縦断側面図である。
【図2】実施例1の遊星歯車機構の要部を示す斜視図である。
【図3】(a)は図2におけるA−A断面を模式的に示す図であり、(b)は図3(a)におけるC部拡大図である。
【図4】図2におけるB−B断面を模式的に示す図である。
【図5】ピニオンシャフトの要部を示す斜視図である。
【図6】遊星歯車機構の構造を示す模式図である。
【図7】(a)はキャリアプレートによるピニオンシャフトの支持構造を示す模式図であり、(b)は遊星歯車機構においてピニオンシャフトからキャリアプレートに荷重が作用した状態を示す要部拡大断面図である。
【図8】(a)は第1比較例の遊星歯車機構の要部を示す断面図であり、(b)は図8(a)の要部拡大図である。
【図9】第2比較例の遊星歯車機構の要部を示す拡大図である。
【図10】第3比較例の遊星歯車機構の要部を示す断面図である。
【図11】実施例1の遊星歯車構造におけるピニオンシャフト固定工程を説明する説明図であり、(a)はピニオンシャフトの挿入状態を示し、(b)は保持部材の嵌合を示し、(c)は保持部材の嵌合途中を示し、(d)はピニオンシャフト固定状態を示す。
【図12】(a)は実施例1の遊星歯車機構の変形例を示す要部を示す斜視図であり、(b)は図12(a)におけるD−D断面図である。
【図13】実施例1の遊星歯車機構の他の変形例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の遊星歯車機構を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、本発明の遊星歯車機構の構成を、「遊星歯車機構適用例の構成」、「キャリアの構成」、「ピニオンシャフトの構成」、「保持部材の構成」に分けて説明する。
【0011】
[遊星歯車機構適用例の構成]
図1は、実施例1の遊星歯車機構が適用されたインホイールモータユニットを示す縦断側面図である。
【0012】
図1において、1はインホイールモータユニットMUのハウジング本体を示し、2はこのハウジング本体1のリヤカバーを示している。そして、このハウジング本体1及びリヤカバー2で、インホイールモータユニットMUのハウジング3を構成する。
【0013】
図1に示すインホイールモータユニットMUは、ハウジング3内に電動モータ4及び遊星歯車組式減速機(遊星歯車機構)5(以下、単に「減速機」と言う)を収納して構成し、これら電動モータ4及び減速機5を同軸に対向配置する。
【0014】
前記電動モータ4は、ハウジング本体1の内周に嵌合して固設した円環状の外周ステータ(以下、単に「ステータ」と言う)6と、このステータ6の内周にラジアルギャップを持たせて同心に配した内周ロータ(以下、単に「ロータ」と言う)7とを有する。
【0015】
前記減速機5は、同軸に対向させて配置した入力軸8及び出力軸9と、サンギヤ11と、このサンギヤ11に対し軸線方向へずらせて同心配置したリングギヤ12と、これらサンギヤ11及びリングギヤ12に噛合する段付きプラネタリピニオン(ピニオンギヤ)13と、かかる段付きプラネタリピニオン13を回転自在に支持するキャリア14とを有する。
【0016】
前記入力軸8は、外周面にサンギヤ11を一体成形して具え、このサンギヤ11からリヤカバー2に向かって延在されて、電動モータ結合部材7aを介してロータ7と一体回転可能に支持されている。
【0017】
前記出力軸9は、一端が軸継手23を介して減速機5の出力メンバであるキャリア14に接続され、他端がハウジング本体1に形成した開口から突出して車輪10が結合される。なお、ハウジング本体1に形成した開口内側には、前記リングギヤ12が回転止め且つ抜け止めして固設されている。また、この開口の軸方向外側には、キャリア14を回転可能に支持する延長ハウジング1aが固定されている。
【0018】
前記段付きプラネタリピニオン13は、サンギヤ11に噛合する大径ギヤ部13a、及び、リングギヤ12に噛合する小径ギヤ部13bを一体に有している。なお、段付きプラネタリピニオン13は、ここでは1個のみを図示しているが、3個一組として円周方向に等間隔に配置されている。各段付きプラネタリピニオン13は、キャリア14に両端が支持されると共に、保持部材30により抜け止めされたピニオンシャフト27により、円周方向に等間隔配置を保って回転自在に支持されている。
【0019】
前記キャリア14は、減速機5の出力回転メンバであり、入力軸8と出力軸9の間で、この両軸8,9と同軸位置に配置される。また、このキャリア14の外周面は、延長ハウジング1aの内側に設けられたベアリング1bによって回転可能に支持される。また、このキャリア14の内側には、ベアリング15を介して入力軸8の突合せ端部8aが相対回転可能に軸受け挿入されている。
【0020】
このように、入出力軸8,9は、相対回転可能な軸ユニットを構成し、この軸ユニットは同時にキャリア14及び段付きプラネタリピニオン13をも、同一ユニットとして具えている。このようにユニット化させた入出力軸8,9の軸ユニットを、ハウジング3に対して回転自在に支承するに際しては、軸線方向に離間した2箇所でベアリング17,18を用いている。
ここで、ベアリング17,18のうち、電動モータ側ベアリング17は、リヤカバー2と略同じ軸線方向位置において当該リヤカバー2の中心孔内周と入力軸8の対応端部外周との間に介在させる。また、車輪側ベアリング18は、ハウジング本体1に固定した延長ハウジング1aの開口を塞ぐ端蓋19に取着したベアリングサポート21の内周と、ハウジング本体1の前端開口から突出する出力軸9の突出部に嵌着したホイールハブ22の外周との間に介在させる。
【0021】
なお、出力軸9に対して車輪10を結合するには、まず、ホイールハブ22に同心に、ブレーキドラム24を一体結合して設け、これらホイールハブ22及びブレーキドラム24を貫通して軸線方向に突出するよう複数個のホイールボルト25を植設する。
そして、車輪10のホイールディスク10aに穿ったボルト孔(図示せず)にホイールボルト25が貫通するようホイールディスク10aをブレーキドラム24の側面に密接させ、この状態でホイールボルト25にホイールナット26を緊締螺合させることにより、出力軸9に対して車輪10の取り付けを行う。
【0022】
[キャリアの構成]
図2は、実施例1の遊星歯車機構の要部を示す斜視図である。図3は、(a)は図2におけるA−A断面を模式的に示す図であり、(b)は図3(a)におけるC部拡大図である。図4は、図2におけるB−B断面を模式的に示す図である。
【0023】
前記キャリア14は、図2及び図3に示すように、キャリア本体14aと、一対のキャリアプレート14b,14cと、を有している。
【0024】
前記キャリア本体14aは、入力軸8と同軸に配置される中心軸であり、このキャリア本体14aの内側に入力軸8の突合せ端部8aが相対回転可能に軸受け挿入されている。
【0025】
前記一対のキャリアプレート14b,14cは、前記キャリア本体14aの周囲に設けられると共に、軸方向に並設されて互いに対向するプレートである。また、各キャリアプレート14b,14cには、それぞれ対向する位置に形成された一対の軸支持孔14d,14dが3組形成されている。
【0026】
前記一方のキャリアプレート14bは、キャリア本体14aの周面から径方向に直接張り出しており、キャリア本体14aと一体になっている。なお、ここでは等間隔をあけて三方に張り出した矩形状の板形状を呈している。また、この一方のキャリアプレート14bの内部には、入力軸8の内部に設けられた入力軸油路8bに連通するキャリア油路14eが形成されている。このキャリア油路14eは、入力軸油路8bからの潤滑油が流れる潤滑油流路となる。そして、このキャリア油路14eは、キャリア本体14aの中心部から径方向に延在され、軸支持孔14dの内側面に開放した吐出口14fを有している。
【0027】
前記他方のキャリアプレート14cは、キャリア本体14aを取り囲む環状プレートであり、キャリア本体14aの周面に固定された脚部14gによって、キャリア本体14aに保持されている。
【0028】
そして、前記一対の軸支持孔14d,14dは、前記ピニオンシャフト27の後述するシャフト本体27aの外径よりもわずかに大きい内径となっており、ピニオンシャフト27を挿入可能としている。
【0029】
[ピニオンシャフトの構成]
図5は、ピニオンシャフトの要部を示す斜視図である。
【0030】
前記ピニオンシャフト27は、図3及び図4に示すように、シャフト本体27aと、フランジ部27bと、シャフト油路27cと、を有している。
【0031】
前記シャフト本体27aは、互いに対向する一対の軸支持孔14d,14dに挿入され、両端がキャリアプレート14b,14cに支持される金属製の軸である。このシャフト本体27aは、一対のキャリアプレート14b,14cの間に位置する中央部分において、軸受28を介して段付きプラネタリピニオン(ピニオンギヤ)13を回転自在に保持する。なお、図3において、28aは、段付きプラネタリピニオン13の両端部と一対のキャリアプレート14b,14cの間に介在したワッシャーである。
【0032】
前記フランジ部27bは、シャフト本体27aの一端に一体的に設けられ、径方向に延在した板形状を呈している。このフランジ部27bの最大外径は、軸支持孔14dの内径よりも大きい寸法となっている。これにより、フランジ部27bは、シャフト本体27aを一対の軸支持孔14d,14dに挿入した際に、一方のキャリアプレート14bの外表面14boに内端面27biが当接する。また、このフランジ部27bは、図5に示すように、中心部に凹み27b´が形成されると共に、側面には互いに対向する一対の平行側面部27bs,27bsが形成されている。
【0033】
前記シャフト油路27cは、キャリア油路14eからの潤滑油が流れる潤滑油流路である。このシャフト油路27cは、シャフト本体27aの中心部で軸方向に延在されると共に、フランジ部27bの外端面27boに開放する開口部27dと、シャフト本体27aのフランジ部27b近傍の外周面27aoに開放する流入口27eと、シャフト本体27aの軸方向中央部の外周面27aoに開放する流出口27fと、を有している。
ここで、前記開口部27dは、フランジ部27bの凹み27b´の中心位置に開放し、保持部材30により覆われている。前記流入口27eは、軸支持孔14dの内側面に開放したキャリア油路14eの吐出口14fに対向している。前記流出口27fは、軸受28の軸方向中心位置に対向している。
なお、開口部27dの開口縁部は、開放端に向かって次第に拡径するテーパ面となっている。
【0034】
[保持部材の構成]
前記保持部材30は、ピニオンシャフト27のフランジ部27bを覆い、ピニオンシャフト27がキャリアプレート14b,14cから脱落することを防止する。この保持部材30は、当接部31と、把持部32と、回転規制部33と、を有する。
【0035】
前記当接部31は、保持部材30の中心に位置し、フランジ部27bを覆うと共にこのフランジ部27bの外端面27boに当接する。また、この当接部31には、フランジ部27bの外端面27boに向かって突出するエンボス部34が中心部に形成されている。
【0036】
前記エンボス部34は、フランジ部27bの外端面27boに開放したシャフト油路27cの開口部27dの縁部に嵌合し、この開口部27dを閉塞している。
【0037】
前記把持部32は、当接部31の両側から延在され、フランジ部27bが当接した一方のキャリアプレート14bの回転方向の両側面14h,14hを挟み込んで把持する。ここで、両側面14h,14hは、互いに対向する面であり、把持部32は、この対向した両側面14h,14hを外方から押圧する板バネ反力を有する。
すなわち、この把持部32は、一方の側面14hに当接する一方の内面32aと、他方の側面14hに当接する他方の内面32aとの間隔が、一方のキャリアプレート14bの両側面14h,14hの間隔よりも小さい。このため、図4のように把持部32の内側にキャリアプレート14bが入り込んだ状態では、把持部32の間隔が押し広げられ、把持部32は両側面14h,14hを外方から押圧することとなる。さらに、ここでは、把持部32の先端部32b,32bが互いに近接する方向に屈曲している。
【0038】
前記回転規制部33は、把持部32の延在方向と直行する方向に沿って当接部31の両側から延在され、フランジ部27bの側面に形成された一対の平行側面部27bs,27bsを挟み込む。すなわち、フランジ部27bは、一対の平行側面部27bs,27bsが回転規制部33に対向した状態で、回転規制部33の間に嵌合することとなる。
【0039】
次に、作用を説明する。
まず、「遊星歯車構造について」と、「比較例の遊星歯車構造における課題」の説明を行い、続いて、実施例1の遊星歯車構造における作用を「ピニオンシャフトの固定作用」と、「ピニオンシャフトの回転方向位置決め作用」に分けて説明する。
【0040】
[遊星歯車構造について]
図6は、遊星歯車機構の構造を示す模式図である。図7は、(a)はキャリアプレートによるピニオンシャフトの支持構造を示す模式図であり、(b)は遊星歯車機構においてピニオンシャフトからキャリアプレートに荷重が作用した状態を示す要部拡大断面図である。
【0041】
図6に示すように、シングルピニオン式の遊星歯車機構100は、一般的にサンギヤ101と、複数のピニオンギヤ102,…と、リングギヤ103と、キャリア104と、を備えている。この遊星歯車機構100では、中央にサンギヤ101があり、その周囲を太陽の周りを自転しながら公転する遊星のように動く複数のピニオンギヤ102,…がほぼ等間隔に置かれる。そして、各ピニオンギヤ102が同じだけ公転するように、キャリア104によってピニオンギヤ102の回転が支えられ、その公転するピニオンギヤ102の周りを包み込むような形でリングギヤ103が配置されている。
【0042】
ここで、ピニオンギヤ102は、図7(a)に示すように、ピニオンシャフト105に軸受105aを介して回転自在に保持される。一方、このピニオンシャフト105は、キャリア104の互いに対向する一対のキャリアプレート106,106によって両端部が支持される。このとき、ピニオンシャフト105の両端部は、一対のキャリアプレート106,106のそれぞれに形成された軸支持孔107,107に挿入される。
【0043】
そして、遊星歯車機構100が回転すると、図7(b)に示すように、径方向に作用する荷重Fが、ピニオンシャフト105からキャリアプレート106に作用する。この荷重Fは、キャリアプレート106に形成した軸支持孔107の内周面107aによって支持されるため、この軸支持孔107の軸方向の長さ寸法であるキャリアプレート106の厚みH1によって支持可能な荷重Fの大きさが決まる。
【0044】
すなわち、キャリアプレート106の厚みH1を大きくして、ピニオンシャフト105に対するキャリアプレート106の接触面積の拡大を図ることで、支持可能な荷重Fは大きくなる。一方、キャリアプレート106の厚みH1が小さく、ピニオンシャフト105に対するキャリアプレート106の接触面積が縮小するほど、支持可能な荷重Fは小さくなる。
【0045】
[比較例の遊星歯車構造における課題]
図8は、(a)第1比較例の遊星歯車機構の要部を示す断面図であり、(b)は図8(a)の拡大図である。図9は、第2比較例の遊星歯車機構の要部を示す拡大図である。図10は、第3比較例の遊星歯車機構の要部を示す断面図である。
【0046】
図8に示す第1比較例の遊星歯車機構では、ピニオンシャフト105をキャリアプレート106に形成した軸支持孔107,107に挿入した際に、この軸支持孔107,107から両端が突出するように、ピニオンシャフト105の軸方向の長さ寸法を一対のキャリアプレート106,106の間隔寸法よりも大きくする。
そして、キャリアプレート106から突出したピニオンシャフト105の両端を軸方向に叩いて、この両端にそれぞれカシメ部Kを形成し、ピニオンシャフト105をキャリアプレート106に固定する。
【0047】
しかしながら、図8(b)に示すように、ピニオンシャフト105の両端にカシメ部Kを形成する場合、軸支持孔107の開口周縁をテーパ状に拡径しておき、カシメ部Kを傾斜させて角度をとらないと、このカシメ部Kが切断してしまう可能性がある。そのため、ピニオンシャフト105からの荷重を受けられる軸支持孔107の長さ寸法H2がキャリアプレート106の厚みH1よりも小さくなり、図7に示したカシメ部Kを形成しない場合よりも軸支持孔107の内周面107aとピニオンシャフト105との接触面積が小さくなる。これにより、キャリアプレート106の強度や剛性が低下してしまう。
【0048】
一方、図9に示す第2比較例の遊星歯車機構では、ピニオンシャフト105をキャリアプレート106に形成した軸支持孔107,107に挿入した際に、この軸支持孔107,107の内側にピニオンシャフト105の両端が入り込むように、ピニオンシャフト105の軸方向の長さ寸法を一対のキャリアプレート106,106の間隔寸法よりも小さくする。
そして、ピニオンシャフト105の両端を取り囲む軸支持孔107の開口周縁を軸方向に叩いて、この軸支持孔107の開口周縁にカシメ部Kを形成し、ピニオンシャフト105をキャリアプレート106に固定する。
【0049】
しかしながら、この場合であっても、軸支持孔107の開口周縁にカシメ部Kを形成することで、軸支持孔107の開口周縁が径方向内側につぶされて、ピニオンシャフト105からの荷重を受けられる軸支持孔107の長さ寸法H2がキャリアプレート106の厚みH1よりも小さくなる。しかも、この第2比較例の遊星歯車の場合では、カシメ部Kを形成するためにピニオンシャフト105の軸方向の長さ寸法を一対のキャリアプレート106,106の間隔寸法よりも小さくしているため、キャリアプレート106の厚みH1よりもピニオンシャフト105に接触可能な孔長さは短い。
そのため、軸支持孔107の内周面107aとピニオンシャフト105との接触面積が、図7に示したカシメ部Kを形成しない場合よりも小さくなり、キャリアプレート106の強度や剛性が低下してしまう。
【0050】
このように、ピニオンシャフト105にカシメ部Kを形成する場合と、キャリアプレート106にカシメ部Kを形成する場合のいずれであっても、カシメ部Kを形成することで軸支持孔107の内周面107aとピニオンシャフト105との接触面積が、図7に示すようなカシメ部Kを形成しない場合よりも小さくなる。その結果、キャリアプレート106の強度や剛性が低下することを避けられない。
【0051】
そのため、キャリアプレート106の強度を必要強度とするためには、カシメ部Kを形成することを見込んだ上でキャリアプレート106の厚みを設定する必要があり、キャリアプレート106の肉厚をカシメ部Kの分大きくしなければならないという問題があった。さらに、キャリアプレート106の肉厚が増大すると、材料増に伴う製造コストの上昇やキャリア104の質量増加といった問題も発生するという問題もある。また、カシメ部Kの形成する設備が別工程で必要となり、組立コストも上昇してしまう。
【0052】
さらに、ピニオンシャフト105に潤滑油が流れるシャフト油路108を形成した場合は、シャフト油路108に連通する横穴108aと、キャリアプレート106に形成したキャリア油路106aとの位置合わせが必要となる。つまり、横穴108aは一方向にしか開放しておらず、このときにはピニオンシャフト105の回転方向の位置決めが必要である。
【0053】
しかしながら、カシメ部Kによるシャフト固定では、回転方向の位置決め精度を確保することは難しい。つまり、回転方向の位置決めを行った状態でカシメ部Kを形成することは困難であり、通常、カシメ部Kを形成する際には回転方向の位置決めを行わない。そのため、カシメ部Kの形成時に、ピニオンシャフト105の回転方向の精度ばらつきが大きくなってしまう。
【0054】
そのため、図10に示す第3比較例の遊星歯車機構では、ピニオンシャフト105の一方の端部と、この端部を支持するキャリアプレート106とを径方向に貫通する固定ピン109により、ピニオンシャフト105を固定する。
【0055】
この場合では、固定ピン109によってピニオンシャフト105の抜け止めを行うと同時に、ピニオンシャフト105の回転が規制されるので、回転方向の位置決め精度を確保することができる。しかしながら、固定ピン109が貫通するための小穴110を、ピニオンシャフト105及びキャリアプレート106に加工形成する必要があり、キャリアプレート106の板厚を増加しなければならない。また、ピニオンシャフト105の小穴110と、キャリアプレート106の小穴110との位置合わせをした上で固定ピン109を貫通させなければならず、組立作業性も悪化してしまうという問題もあった。
【0056】
[ピニオンシャフトの固定作用]
図11は、実施例1の遊星歯車構造におけるピニオンシャフト固定工程を説明する説明図であり、(a)はピニオンシャフトの挿入状態を示し、(b)は保持部材の嵌合を示し、(c)は保持部材の嵌合途中を示し、(d)はピニオンシャフト固定状態を示す。
【0057】
実施例1の遊星歯車構造において、ピニオンシャフト27をキャリアプレート14b,14cに固定するには、まず、図11(a)に示すように、ピニオンシャフト27のシャフト本体27aを、フランジ部27bが設けられていない端部から、一方のキャリアプレート14bに形成された軸支持孔14dに挿入する。続いて、ここでは不図示の軸受28等を装着してから、シャフト本体27aのフランジ部27bが設けられていない端部を、他方のキャリアプレート14cに形成された軸支持孔14dに挿入する。
【0058】
このとき、フランジ部27bの最大外径が軸支持孔14dの内径よりも大きいので、フランジ部27bの内端面27biが一方のキャリアプレート14bの外表面14boに当接する。これにより、ピニオンシャフト27が、キャリアプレート14b,14cを貫通することはない。
【0059】
次に、図11(b)に示すように、保持部材30の把持部32により、フランジ部27bが当接した一方のキャリアプレート14bの両側面14h,14hを把持する。
ここで、把持部32は、一方の側面14hに当接する一方の内面32aと、他方の側面14hに当接する他方の内面32aとの間隔W1が、一方のキャリアプレート14bの両側面14h,14hの間隔W2よりも小さい。
そのため、図11(c)に示すように、把持部32の内面32a,32a間にキャリアプレート14bが入り込むことで、把持部32の内面32a,32aは、内側から押し広げられることとなる。
【0060】
そして、図11(d)に示すように、保持部材30は、当接部31に形成されたエンボス部34が、フランジ部27bの外端面27boに開放したシャフト油路27cの開口部27dの縁部に嵌合するまで押し込まれる。このとき、保持部材30の当接部31はフランジ部27bの外端面27boに当接する。また、保持部材30の把持部32はキャリアプレート14bの両側面14h,14hを把持する。
【0061】
これにより、保持部材30により、ピニオンシャフト27は、フランジ部27bを覆われた状態でキャリアプレート14bに固定される。そのため、上述の第1比較例や第2比較例の遊星歯車機構のように、キャリアプレート106の厚みH1よりも、ピニオンシャフト105からの荷重を受けられる軸支持孔107の長さ寸法H2が小さくなることはない。すなわち、実施例1の遊星歯車機構である減速機5では、カシメ部Kを形成することを見込んでキャリアプレート14bの厚みを設定する必要がなく、キャリアプレート14bの肉厚増大を抑制することができる。
【0062】
また、ピニオンシャフト27の抜け止めは、フランジ部27bと保持部材30によって行うことができる。このため、ピニオンシャフト27の固定は、フランジ部27bが設けられた一端で行うことができ、フランジ部27bが設けられていない端部は、他方のキャリアプレート14cに形成された軸支持孔14dに挿入されているのみである。これにより、ピニオンシャフト27の加工性及び固定作業性にすぐれる。
【0063】
そして、把持部32の内面32a,32aが、キャリアプレート14bによって内側から押し広げられた状態となることで、把持部32は、キャリアプレート14bの対向する両側面14h,14hを外方から押圧する板バネ反力を有することとなる。
【0064】
そのため、把持部32が両側面14h,14hに密着してはずれにくくなり、ピニオンシャフト27の固定性能を高めることができる。特に、実施例1では、把持部32の先端部32b,32bが互いに近接する方向に屈曲しているため、キャリアプレート14bの両側面14h,14hを外方から押圧する板バネ反力をさらに向上することができる。
【0065】
そして、実施例1の遊星歯車機構である減速機5では、保持部材30のフランジ部27bの外端面27boに向かって突出するエンボス部34が、この外端面27boに開放したシャフト油路27cの開口部27dの縁部に嵌合する。これにより、開口部27dがエンボス部34によって閉塞され、この開口部27dをふさぐためのプラグ部品等が不要となり、簡易な構造でシャフト油路27cの確保ができる。
特に、実施例1における保持部材30は、把持部32がキャリアプレート14bの両側面14h,14hを外方から押圧する板バネ反力を有しているため、エンボス部34の開口部27dの縁部への嵌合性能が高くなる。
【0066】
[ピニオンシャフトの回転方向位置決め作用]
実施例1の遊星歯車機構である減速機5では、図11に示すように、保持部材30の把持部32により、一方のキャリアプレート14bの両側面14h,14hを把持する。このとき、フランジ部27bに形成した互いに対向する一対の平行側面部27bs,27bsが、保持部材30の回転規制部33によって挟まれるように、ピニオンシャフト27の回転方向位置を調整する。
【0067】
そして、保持部材30の把持部32によってキャリアプレート14bが把持されたとき、回転規制部33と平行側面部27bs,27bsとが対向すると、これにより、ピニオンシャフト27の回転方向の移動、つまり軸周りの回転移動が規制される。
すなわち、保持部材30は、把持部32がキャリアプレート14bを把持することで、回転方向に移動することはない。これにより、回転規制部33の回転方向の位置決めもなされる。一方、この回転規制部33に、フランジ部27bに形成した平行側面部27bs,27bsがそれぞれ対向していることで、ピニオンシャフト27が軸周りに回転すると、平行側面部27bs,27bsが回転規制部33と干渉する。ここで、回転規制部33は回転方向の位置決めがなされているので、回転規制部33に干渉した平行側面部27bs,27bsの回転移動が規制され、ピニオンシャフト27が回転することなく、回転方向の位置決めを行うことができる。
【0068】
さらに、ピニオンシャフト27の回転方向の位置決め機能を保持部材30が有することで、第3比較例の遊星歯車機構のように、固定ピン109や小穴110の加工等が不要となり、組み付け性の向上を図ることもできる。
【0069】
そして、実施例1の遊星歯車機構である減速機5では、当接部31が保持部材30の中心に位置してフランジ部27bを覆い、フランジ部27bが当接したキャリアプレートの両側面14h,14hに向かって、この当接部31から把持部32が延在すると共に、この把持部32と直交する方向に当接部31から回転規制部33が延在している。このように、当接部31と把持部32と回転規制部33が、当接部31を中心に一体的に形成されているため、生産性にすぐれ、製造コストの低減を図ることができる。
【0070】
次に、効果を説明する。
実施例1の遊星歯車機構(減速機5)にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0071】
(1) 対向する一対のキャリアプレート14b,14cと、
前記一対のキャリアプレート14b,14cのそれぞれに形成され、互いに対向する一対の軸支持孔14d,14dと、
前記一対の軸支持孔14d,14dに挿入され、前記一対のキャリアプレート14b,14cの間で軸受28を介してピニオンギヤ(段付きプラネタリピニオン)13を回転自在に保持するピニオンシャフト27と、
前記ピニオンシャフト27の一端に設けられ、一方のキャリアプレート14bの外表面14boに内端面27biが当接するフランジ部27bと、
前記フランジ部27bの外端面27boに当接する当接部31と、前記フランジ部27bが当接したキャリアプレート14bの対向する両側面14h,14hを把持する把持部32と、を有する保持部材30と、
を備えた構成とした。
このため、ピニオンシャフトを固定しても、キャリアプレートとピニオンシャフトとの接触面積が低減しないため、キャリアプレートの肉厚を増加する必要がなくなり、キャリアの肉厚増大を抑えることができる。
【0072】
(2) 前記把持部32は、前記キャリアプレート14bの対向する両側面14h,14hを押圧する板バネ反力を有する構成とした。
このため、(1)の効果に加え、把持部32が両側面14h,14hに密着してはずれにくくなり、保持部材30によるピニオンシャフト27の固定性能を高めることができる。
【0073】
(3) 前記フランジ部27bは、互いに対向する一対の平行側面部27bs,27bsを有し、
前記保持部材30は、前記一対の平行側面部27bs,27bsを挟み込む回転規制部33を有する構成とした。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、保持部材30により、ピニオンシャフト27の回転方向の位置決めを行うことができる。
【0074】
(4) 前記ピニオンシャフト27は、軸方向に延びると共に、前記フランジ部27bの前記外端面27boに開口部27dを有するシャフト油路27cが内部に形成され、
前記保持部材30は、前記フランジ部27bの前記外端面27boに向かって突出するエンボス部34を有し、
前記エンボス部34は、前記シャフト油路27cの前記開口部27dに嵌合する構成とした。
このため、(1)から(3)の効果に加え、ピニオンシャフト27の内部にシャフト油路27cを確保できると共に、このシャフト油路27cの軸方向の開口部27dを保持部材30で閉塞することができる。
【0075】
(5) 前記当接部31は、前記保持部材30の中心に位置して前記フランジ部27bを覆い、
前記把持部32は、前記フランジ部27bが当接したキャリアプレート14bの両側面14h,14hに向かって、前記当接部31から延在し、
前記回転規制部33は、前記把持部32と直交する方向に前記当接部31から延在した構成とした。
このため、(3)の効果に加え、当接部31を中心に把持部32と回転規制部33を一体的に形成することができて、生産性にすぐれ、製造コストの低減を図ることができる。
【0076】
以上、本発明の遊星歯車機構を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0077】
実施例1では、一方のキャリアプレート14bが、キャリア本体14aの周面から等間隔をあけて三方に張り出した矩形状の板形状を呈している。しかしながら、これに限らず、例えば図12に示すように、一方のキャリアプレート14bは、キャリア本体14aの周面から径方向に張り出した環状の板形状となっていてもよい。
【0078】
この場合では、フランジ部27bが当接する一方のキャリアプレート14bは、軸支持孔14dの周囲に位置する一対の貫通孔14i,14iを有している。そして、保持部材30の把持部32は、この一対の貫通孔14i,14iに挿入すると共に、キャリアプレート14bの両側面となる各貫通孔14iの内側面14jを把持する。
【0079】
この場合であっても、ピニオンシャフト27の固定にかかわらず、キャリアプレート14bとピニオンシャフト27との接触面積が低減しないため、キャリアプレート14bの肉厚を増加する必要がなくなり、キャリア14の肉厚増大を抑えることができる。また、当接部31を中心に把持部32と回転規制部33を一体的に形成することができて、生産性にすぐれ、製造コストの低減を図ることができる。
【0080】
そして、実施例1の保持部材30では、把持部32がキャリアプレート14bの両側面14h,14hを外方から押圧する板バネ反力を有しているが、この板バネ反力を有していなくともよい。すなわち、例えば、図13に示すように、キャリアプレート14bの両側面14h,14hに、把持部32の先端部32b,32bが係合する係合凹部35,35を形成してもよい。この場合であっても、キャリアプレート14bの板厚を増大することなく、ピニオンシャフト27を固定することができる。
【0081】
また、実施例1では、フランジ部27bをピニオンシャフト27のシャフト本体27a一端に一体的に設けているが、これに限らない。シャフト本体27aとフランジ部27とを別体とし、例えばねじ構造等で接続してもよい。
さらに、実施例1では、本発明の歯車遊星機構をインホイールモータユニットMUの減速機5として適用する例を示したが、通常の変速機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
5 減速機(遊星歯車機構)
14 キャリア
14b キャリアプレート
14bo 外表面
14c キャリアプレート
14d 軸支持孔
14e キャリア油路
14h 側面
27 ピニオンシャフト
27a シャフト本体
27b フランジ部
27bi 内端面
27bo 外端面
27b´ 凹み
27bs 平行側面部
27c シャフト油路
27d 開口部
28 軸受
30 保持部材
31 当接部
32 把持部
32a 内面
33 回転規制部
34 エンボス部
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアと、キャリアに支持されると共にピニオンギヤを回転可能に保持するピニオンシャフトと、を備えた遊星歯車機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キャリアの孔にピニオンシャフトを挿通した状態で、この孔の縁を軸線方向に叩くことで孔の周りにカシメ部を形成し、ピニオンシャフトをキャリアに固定する遊星歯車機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-147285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の遊星歯車機構にあっては、カシメ部を形成することでキャリアの孔の縁が軸方向につぶれてしまう。つまり、カシメ部を形成することにより孔の軸方向長さが短くなる。
一方、遊星歯車機構の回転時、キャリアの孔の内周面には、ピニオンシャフトから径方向の荷重が作用する。そのため、ピニオンシャフトの外周面とキャリアの孔の内周面との接触面積を確保して孔の剛性を高める必要がある。
すなわち、従来の遊星歯車機構では、ピニオンシャフトの外周面とキャリアの孔の内周面との接触面積を確保するために、カシメ部を形成する分、孔の軸方向長さを長くしておく必要があり、キャリアの肉厚が増大するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、キャリアの肉厚増大を抑えることができる遊星歯車機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の遊星歯車機構では、対向する一対のキャリアプレートと、一対の軸支持孔と、ピニオンシャフトと、フランジ部と、保持部材と、を備えている。
前記一対の軸支持孔は、前記一対のキャリアプレートのそれぞれに形成され、互いに対向する。
前記ピニオンシャフトは、前記一対の軸支持孔に挿入され、前記一対のキャリアプレートの間で軸受を介してピニオンギヤを回転自在に保持する。
前記フランジ部は、前記ピニオンシャフトの一端に設けられ、一方のキャリアプレートの外表面に内端面が当接する。
前記保持部材は、前記フランジ部の外端面に当接する当接部と、前記フランジ部が当接したキャリアプレートの両側面を把持する把持部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の遊星歯車機構では、保持部材の当接部がフランジ部の外端面に当接し、把持部がキャリアプレートの両側面を把持する。
すなわち、ピニオンシャフトの一端に設けられたフランジ部の軸方向の移動がフランジ部と当接部によって規制されると共に、フランジ部及び当接部は把持部によってキャリアプレートに固定される。
そのため、キャリアプレートに形成された軸支持孔が、軸方向につぶされるようなカシメ部を形成することなくキャリアプレートに対してピニオンシャフトを固定することができる。この結果、軸支持孔の軸方向長さが短くならないので、キャリアプレートの肉厚を増加する必要がなくなり、キャリアの肉厚増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の遊星歯車機構が適用されたインホイールモータユニットを示す縦断側面図である。
【図2】実施例1の遊星歯車機構の要部を示す斜視図である。
【図3】(a)は図2におけるA−A断面を模式的に示す図であり、(b)は図3(a)におけるC部拡大図である。
【図4】図2におけるB−B断面を模式的に示す図である。
【図5】ピニオンシャフトの要部を示す斜視図である。
【図6】遊星歯車機構の構造を示す模式図である。
【図7】(a)はキャリアプレートによるピニオンシャフトの支持構造を示す模式図であり、(b)は遊星歯車機構においてピニオンシャフトからキャリアプレートに荷重が作用した状態を示す要部拡大断面図である。
【図8】(a)は第1比較例の遊星歯車機構の要部を示す断面図であり、(b)は図8(a)の要部拡大図である。
【図9】第2比較例の遊星歯車機構の要部を示す拡大図である。
【図10】第3比較例の遊星歯車機構の要部を示す断面図である。
【図11】実施例1の遊星歯車構造におけるピニオンシャフト固定工程を説明する説明図であり、(a)はピニオンシャフトの挿入状態を示し、(b)は保持部材の嵌合を示し、(c)は保持部材の嵌合途中を示し、(d)はピニオンシャフト固定状態を示す。
【図12】(a)は実施例1の遊星歯車機構の変形例を示す要部を示す斜視図であり、(b)は図12(a)におけるD−D断面図である。
【図13】実施例1の遊星歯車機構の他の変形例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の遊星歯車機構を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、本発明の遊星歯車機構の構成を、「遊星歯車機構適用例の構成」、「キャリアの構成」、「ピニオンシャフトの構成」、「保持部材の構成」に分けて説明する。
【0011】
[遊星歯車機構適用例の構成]
図1は、実施例1の遊星歯車機構が適用されたインホイールモータユニットを示す縦断側面図である。
【0012】
図1において、1はインホイールモータユニットMUのハウジング本体を示し、2はこのハウジング本体1のリヤカバーを示している。そして、このハウジング本体1及びリヤカバー2で、インホイールモータユニットMUのハウジング3を構成する。
【0013】
図1に示すインホイールモータユニットMUは、ハウジング3内に電動モータ4及び遊星歯車組式減速機(遊星歯車機構)5(以下、単に「減速機」と言う)を収納して構成し、これら電動モータ4及び減速機5を同軸に対向配置する。
【0014】
前記電動モータ4は、ハウジング本体1の内周に嵌合して固設した円環状の外周ステータ(以下、単に「ステータ」と言う)6と、このステータ6の内周にラジアルギャップを持たせて同心に配した内周ロータ(以下、単に「ロータ」と言う)7とを有する。
【0015】
前記減速機5は、同軸に対向させて配置した入力軸8及び出力軸9と、サンギヤ11と、このサンギヤ11に対し軸線方向へずらせて同心配置したリングギヤ12と、これらサンギヤ11及びリングギヤ12に噛合する段付きプラネタリピニオン(ピニオンギヤ)13と、かかる段付きプラネタリピニオン13を回転自在に支持するキャリア14とを有する。
【0016】
前記入力軸8は、外周面にサンギヤ11を一体成形して具え、このサンギヤ11からリヤカバー2に向かって延在されて、電動モータ結合部材7aを介してロータ7と一体回転可能に支持されている。
【0017】
前記出力軸9は、一端が軸継手23を介して減速機5の出力メンバであるキャリア14に接続され、他端がハウジング本体1に形成した開口から突出して車輪10が結合される。なお、ハウジング本体1に形成した開口内側には、前記リングギヤ12が回転止め且つ抜け止めして固設されている。また、この開口の軸方向外側には、キャリア14を回転可能に支持する延長ハウジング1aが固定されている。
【0018】
前記段付きプラネタリピニオン13は、サンギヤ11に噛合する大径ギヤ部13a、及び、リングギヤ12に噛合する小径ギヤ部13bを一体に有している。なお、段付きプラネタリピニオン13は、ここでは1個のみを図示しているが、3個一組として円周方向に等間隔に配置されている。各段付きプラネタリピニオン13は、キャリア14に両端が支持されると共に、保持部材30により抜け止めされたピニオンシャフト27により、円周方向に等間隔配置を保って回転自在に支持されている。
【0019】
前記キャリア14は、減速機5の出力回転メンバであり、入力軸8と出力軸9の間で、この両軸8,9と同軸位置に配置される。また、このキャリア14の外周面は、延長ハウジング1aの内側に設けられたベアリング1bによって回転可能に支持される。また、このキャリア14の内側には、ベアリング15を介して入力軸8の突合せ端部8aが相対回転可能に軸受け挿入されている。
【0020】
このように、入出力軸8,9は、相対回転可能な軸ユニットを構成し、この軸ユニットは同時にキャリア14及び段付きプラネタリピニオン13をも、同一ユニットとして具えている。このようにユニット化させた入出力軸8,9の軸ユニットを、ハウジング3に対して回転自在に支承するに際しては、軸線方向に離間した2箇所でベアリング17,18を用いている。
ここで、ベアリング17,18のうち、電動モータ側ベアリング17は、リヤカバー2と略同じ軸線方向位置において当該リヤカバー2の中心孔内周と入力軸8の対応端部外周との間に介在させる。また、車輪側ベアリング18は、ハウジング本体1に固定した延長ハウジング1aの開口を塞ぐ端蓋19に取着したベアリングサポート21の内周と、ハウジング本体1の前端開口から突出する出力軸9の突出部に嵌着したホイールハブ22の外周との間に介在させる。
【0021】
なお、出力軸9に対して車輪10を結合するには、まず、ホイールハブ22に同心に、ブレーキドラム24を一体結合して設け、これらホイールハブ22及びブレーキドラム24を貫通して軸線方向に突出するよう複数個のホイールボルト25を植設する。
そして、車輪10のホイールディスク10aに穿ったボルト孔(図示せず)にホイールボルト25が貫通するようホイールディスク10aをブレーキドラム24の側面に密接させ、この状態でホイールボルト25にホイールナット26を緊締螺合させることにより、出力軸9に対して車輪10の取り付けを行う。
【0022】
[キャリアの構成]
図2は、実施例1の遊星歯車機構の要部を示す斜視図である。図3は、(a)は図2におけるA−A断面を模式的に示す図であり、(b)は図3(a)におけるC部拡大図である。図4は、図2におけるB−B断面を模式的に示す図である。
【0023】
前記キャリア14は、図2及び図3に示すように、キャリア本体14aと、一対のキャリアプレート14b,14cと、を有している。
【0024】
前記キャリア本体14aは、入力軸8と同軸に配置される中心軸であり、このキャリア本体14aの内側に入力軸8の突合せ端部8aが相対回転可能に軸受け挿入されている。
【0025】
前記一対のキャリアプレート14b,14cは、前記キャリア本体14aの周囲に設けられると共に、軸方向に並設されて互いに対向するプレートである。また、各キャリアプレート14b,14cには、それぞれ対向する位置に形成された一対の軸支持孔14d,14dが3組形成されている。
【0026】
前記一方のキャリアプレート14bは、キャリア本体14aの周面から径方向に直接張り出しており、キャリア本体14aと一体になっている。なお、ここでは等間隔をあけて三方に張り出した矩形状の板形状を呈している。また、この一方のキャリアプレート14bの内部には、入力軸8の内部に設けられた入力軸油路8bに連通するキャリア油路14eが形成されている。このキャリア油路14eは、入力軸油路8bからの潤滑油が流れる潤滑油流路となる。そして、このキャリア油路14eは、キャリア本体14aの中心部から径方向に延在され、軸支持孔14dの内側面に開放した吐出口14fを有している。
【0027】
前記他方のキャリアプレート14cは、キャリア本体14aを取り囲む環状プレートであり、キャリア本体14aの周面に固定された脚部14gによって、キャリア本体14aに保持されている。
【0028】
そして、前記一対の軸支持孔14d,14dは、前記ピニオンシャフト27の後述するシャフト本体27aの外径よりもわずかに大きい内径となっており、ピニオンシャフト27を挿入可能としている。
【0029】
[ピニオンシャフトの構成]
図5は、ピニオンシャフトの要部を示す斜視図である。
【0030】
前記ピニオンシャフト27は、図3及び図4に示すように、シャフト本体27aと、フランジ部27bと、シャフト油路27cと、を有している。
【0031】
前記シャフト本体27aは、互いに対向する一対の軸支持孔14d,14dに挿入され、両端がキャリアプレート14b,14cに支持される金属製の軸である。このシャフト本体27aは、一対のキャリアプレート14b,14cの間に位置する中央部分において、軸受28を介して段付きプラネタリピニオン(ピニオンギヤ)13を回転自在に保持する。なお、図3において、28aは、段付きプラネタリピニオン13の両端部と一対のキャリアプレート14b,14cの間に介在したワッシャーである。
【0032】
前記フランジ部27bは、シャフト本体27aの一端に一体的に設けられ、径方向に延在した板形状を呈している。このフランジ部27bの最大外径は、軸支持孔14dの内径よりも大きい寸法となっている。これにより、フランジ部27bは、シャフト本体27aを一対の軸支持孔14d,14dに挿入した際に、一方のキャリアプレート14bの外表面14boに内端面27biが当接する。また、このフランジ部27bは、図5に示すように、中心部に凹み27b´が形成されると共に、側面には互いに対向する一対の平行側面部27bs,27bsが形成されている。
【0033】
前記シャフト油路27cは、キャリア油路14eからの潤滑油が流れる潤滑油流路である。このシャフト油路27cは、シャフト本体27aの中心部で軸方向に延在されると共に、フランジ部27bの外端面27boに開放する開口部27dと、シャフト本体27aのフランジ部27b近傍の外周面27aoに開放する流入口27eと、シャフト本体27aの軸方向中央部の外周面27aoに開放する流出口27fと、を有している。
ここで、前記開口部27dは、フランジ部27bの凹み27b´の中心位置に開放し、保持部材30により覆われている。前記流入口27eは、軸支持孔14dの内側面に開放したキャリア油路14eの吐出口14fに対向している。前記流出口27fは、軸受28の軸方向中心位置に対向している。
なお、開口部27dの開口縁部は、開放端に向かって次第に拡径するテーパ面となっている。
【0034】
[保持部材の構成]
前記保持部材30は、ピニオンシャフト27のフランジ部27bを覆い、ピニオンシャフト27がキャリアプレート14b,14cから脱落することを防止する。この保持部材30は、当接部31と、把持部32と、回転規制部33と、を有する。
【0035】
前記当接部31は、保持部材30の中心に位置し、フランジ部27bを覆うと共にこのフランジ部27bの外端面27boに当接する。また、この当接部31には、フランジ部27bの外端面27boに向かって突出するエンボス部34が中心部に形成されている。
【0036】
前記エンボス部34は、フランジ部27bの外端面27boに開放したシャフト油路27cの開口部27dの縁部に嵌合し、この開口部27dを閉塞している。
【0037】
前記把持部32は、当接部31の両側から延在され、フランジ部27bが当接した一方のキャリアプレート14bの回転方向の両側面14h,14hを挟み込んで把持する。ここで、両側面14h,14hは、互いに対向する面であり、把持部32は、この対向した両側面14h,14hを外方から押圧する板バネ反力を有する。
すなわち、この把持部32は、一方の側面14hに当接する一方の内面32aと、他方の側面14hに当接する他方の内面32aとの間隔が、一方のキャリアプレート14bの両側面14h,14hの間隔よりも小さい。このため、図4のように把持部32の内側にキャリアプレート14bが入り込んだ状態では、把持部32の間隔が押し広げられ、把持部32は両側面14h,14hを外方から押圧することとなる。さらに、ここでは、把持部32の先端部32b,32bが互いに近接する方向に屈曲している。
【0038】
前記回転規制部33は、把持部32の延在方向と直行する方向に沿って当接部31の両側から延在され、フランジ部27bの側面に形成された一対の平行側面部27bs,27bsを挟み込む。すなわち、フランジ部27bは、一対の平行側面部27bs,27bsが回転規制部33に対向した状態で、回転規制部33の間に嵌合することとなる。
【0039】
次に、作用を説明する。
まず、「遊星歯車構造について」と、「比較例の遊星歯車構造における課題」の説明を行い、続いて、実施例1の遊星歯車構造における作用を「ピニオンシャフトの固定作用」と、「ピニオンシャフトの回転方向位置決め作用」に分けて説明する。
【0040】
[遊星歯車構造について]
図6は、遊星歯車機構の構造を示す模式図である。図7は、(a)はキャリアプレートによるピニオンシャフトの支持構造を示す模式図であり、(b)は遊星歯車機構においてピニオンシャフトからキャリアプレートに荷重が作用した状態を示す要部拡大断面図である。
【0041】
図6に示すように、シングルピニオン式の遊星歯車機構100は、一般的にサンギヤ101と、複数のピニオンギヤ102,…と、リングギヤ103と、キャリア104と、を備えている。この遊星歯車機構100では、中央にサンギヤ101があり、その周囲を太陽の周りを自転しながら公転する遊星のように動く複数のピニオンギヤ102,…がほぼ等間隔に置かれる。そして、各ピニオンギヤ102が同じだけ公転するように、キャリア104によってピニオンギヤ102の回転が支えられ、その公転するピニオンギヤ102の周りを包み込むような形でリングギヤ103が配置されている。
【0042】
ここで、ピニオンギヤ102は、図7(a)に示すように、ピニオンシャフト105に軸受105aを介して回転自在に保持される。一方、このピニオンシャフト105は、キャリア104の互いに対向する一対のキャリアプレート106,106によって両端部が支持される。このとき、ピニオンシャフト105の両端部は、一対のキャリアプレート106,106のそれぞれに形成された軸支持孔107,107に挿入される。
【0043】
そして、遊星歯車機構100が回転すると、図7(b)に示すように、径方向に作用する荷重Fが、ピニオンシャフト105からキャリアプレート106に作用する。この荷重Fは、キャリアプレート106に形成した軸支持孔107の内周面107aによって支持されるため、この軸支持孔107の軸方向の長さ寸法であるキャリアプレート106の厚みH1によって支持可能な荷重Fの大きさが決まる。
【0044】
すなわち、キャリアプレート106の厚みH1を大きくして、ピニオンシャフト105に対するキャリアプレート106の接触面積の拡大を図ることで、支持可能な荷重Fは大きくなる。一方、キャリアプレート106の厚みH1が小さく、ピニオンシャフト105に対するキャリアプレート106の接触面積が縮小するほど、支持可能な荷重Fは小さくなる。
【0045】
[比較例の遊星歯車構造における課題]
図8は、(a)第1比較例の遊星歯車機構の要部を示す断面図であり、(b)は図8(a)の拡大図である。図9は、第2比較例の遊星歯車機構の要部を示す拡大図である。図10は、第3比較例の遊星歯車機構の要部を示す断面図である。
【0046】
図8に示す第1比較例の遊星歯車機構では、ピニオンシャフト105をキャリアプレート106に形成した軸支持孔107,107に挿入した際に、この軸支持孔107,107から両端が突出するように、ピニオンシャフト105の軸方向の長さ寸法を一対のキャリアプレート106,106の間隔寸法よりも大きくする。
そして、キャリアプレート106から突出したピニオンシャフト105の両端を軸方向に叩いて、この両端にそれぞれカシメ部Kを形成し、ピニオンシャフト105をキャリアプレート106に固定する。
【0047】
しかしながら、図8(b)に示すように、ピニオンシャフト105の両端にカシメ部Kを形成する場合、軸支持孔107の開口周縁をテーパ状に拡径しておき、カシメ部Kを傾斜させて角度をとらないと、このカシメ部Kが切断してしまう可能性がある。そのため、ピニオンシャフト105からの荷重を受けられる軸支持孔107の長さ寸法H2がキャリアプレート106の厚みH1よりも小さくなり、図7に示したカシメ部Kを形成しない場合よりも軸支持孔107の内周面107aとピニオンシャフト105との接触面積が小さくなる。これにより、キャリアプレート106の強度や剛性が低下してしまう。
【0048】
一方、図9に示す第2比較例の遊星歯車機構では、ピニオンシャフト105をキャリアプレート106に形成した軸支持孔107,107に挿入した際に、この軸支持孔107,107の内側にピニオンシャフト105の両端が入り込むように、ピニオンシャフト105の軸方向の長さ寸法を一対のキャリアプレート106,106の間隔寸法よりも小さくする。
そして、ピニオンシャフト105の両端を取り囲む軸支持孔107の開口周縁を軸方向に叩いて、この軸支持孔107の開口周縁にカシメ部Kを形成し、ピニオンシャフト105をキャリアプレート106に固定する。
【0049】
しかしながら、この場合であっても、軸支持孔107の開口周縁にカシメ部Kを形成することで、軸支持孔107の開口周縁が径方向内側につぶされて、ピニオンシャフト105からの荷重を受けられる軸支持孔107の長さ寸法H2がキャリアプレート106の厚みH1よりも小さくなる。しかも、この第2比較例の遊星歯車の場合では、カシメ部Kを形成するためにピニオンシャフト105の軸方向の長さ寸法を一対のキャリアプレート106,106の間隔寸法よりも小さくしているため、キャリアプレート106の厚みH1よりもピニオンシャフト105に接触可能な孔長さは短い。
そのため、軸支持孔107の内周面107aとピニオンシャフト105との接触面積が、図7に示したカシメ部Kを形成しない場合よりも小さくなり、キャリアプレート106の強度や剛性が低下してしまう。
【0050】
このように、ピニオンシャフト105にカシメ部Kを形成する場合と、キャリアプレート106にカシメ部Kを形成する場合のいずれであっても、カシメ部Kを形成することで軸支持孔107の内周面107aとピニオンシャフト105との接触面積が、図7に示すようなカシメ部Kを形成しない場合よりも小さくなる。その結果、キャリアプレート106の強度や剛性が低下することを避けられない。
【0051】
そのため、キャリアプレート106の強度を必要強度とするためには、カシメ部Kを形成することを見込んだ上でキャリアプレート106の厚みを設定する必要があり、キャリアプレート106の肉厚をカシメ部Kの分大きくしなければならないという問題があった。さらに、キャリアプレート106の肉厚が増大すると、材料増に伴う製造コストの上昇やキャリア104の質量増加といった問題も発生するという問題もある。また、カシメ部Kの形成する設備が別工程で必要となり、組立コストも上昇してしまう。
【0052】
さらに、ピニオンシャフト105に潤滑油が流れるシャフト油路108を形成した場合は、シャフト油路108に連通する横穴108aと、キャリアプレート106に形成したキャリア油路106aとの位置合わせが必要となる。つまり、横穴108aは一方向にしか開放しておらず、このときにはピニオンシャフト105の回転方向の位置決めが必要である。
【0053】
しかしながら、カシメ部Kによるシャフト固定では、回転方向の位置決め精度を確保することは難しい。つまり、回転方向の位置決めを行った状態でカシメ部Kを形成することは困難であり、通常、カシメ部Kを形成する際には回転方向の位置決めを行わない。そのため、カシメ部Kの形成時に、ピニオンシャフト105の回転方向の精度ばらつきが大きくなってしまう。
【0054】
そのため、図10に示す第3比較例の遊星歯車機構では、ピニオンシャフト105の一方の端部と、この端部を支持するキャリアプレート106とを径方向に貫通する固定ピン109により、ピニオンシャフト105を固定する。
【0055】
この場合では、固定ピン109によってピニオンシャフト105の抜け止めを行うと同時に、ピニオンシャフト105の回転が規制されるので、回転方向の位置決め精度を確保することができる。しかしながら、固定ピン109が貫通するための小穴110を、ピニオンシャフト105及びキャリアプレート106に加工形成する必要があり、キャリアプレート106の板厚を増加しなければならない。また、ピニオンシャフト105の小穴110と、キャリアプレート106の小穴110との位置合わせをした上で固定ピン109を貫通させなければならず、組立作業性も悪化してしまうという問題もあった。
【0056】
[ピニオンシャフトの固定作用]
図11は、実施例1の遊星歯車構造におけるピニオンシャフト固定工程を説明する説明図であり、(a)はピニオンシャフトの挿入状態を示し、(b)は保持部材の嵌合を示し、(c)は保持部材の嵌合途中を示し、(d)はピニオンシャフト固定状態を示す。
【0057】
実施例1の遊星歯車構造において、ピニオンシャフト27をキャリアプレート14b,14cに固定するには、まず、図11(a)に示すように、ピニオンシャフト27のシャフト本体27aを、フランジ部27bが設けられていない端部から、一方のキャリアプレート14bに形成された軸支持孔14dに挿入する。続いて、ここでは不図示の軸受28等を装着してから、シャフト本体27aのフランジ部27bが設けられていない端部を、他方のキャリアプレート14cに形成された軸支持孔14dに挿入する。
【0058】
このとき、フランジ部27bの最大外径が軸支持孔14dの内径よりも大きいので、フランジ部27bの内端面27biが一方のキャリアプレート14bの外表面14boに当接する。これにより、ピニオンシャフト27が、キャリアプレート14b,14cを貫通することはない。
【0059】
次に、図11(b)に示すように、保持部材30の把持部32により、フランジ部27bが当接した一方のキャリアプレート14bの両側面14h,14hを把持する。
ここで、把持部32は、一方の側面14hに当接する一方の内面32aと、他方の側面14hに当接する他方の内面32aとの間隔W1が、一方のキャリアプレート14bの両側面14h,14hの間隔W2よりも小さい。
そのため、図11(c)に示すように、把持部32の内面32a,32a間にキャリアプレート14bが入り込むことで、把持部32の内面32a,32aは、内側から押し広げられることとなる。
【0060】
そして、図11(d)に示すように、保持部材30は、当接部31に形成されたエンボス部34が、フランジ部27bの外端面27boに開放したシャフト油路27cの開口部27dの縁部に嵌合するまで押し込まれる。このとき、保持部材30の当接部31はフランジ部27bの外端面27boに当接する。また、保持部材30の把持部32はキャリアプレート14bの両側面14h,14hを把持する。
【0061】
これにより、保持部材30により、ピニオンシャフト27は、フランジ部27bを覆われた状態でキャリアプレート14bに固定される。そのため、上述の第1比較例や第2比較例の遊星歯車機構のように、キャリアプレート106の厚みH1よりも、ピニオンシャフト105からの荷重を受けられる軸支持孔107の長さ寸法H2が小さくなることはない。すなわち、実施例1の遊星歯車機構である減速機5では、カシメ部Kを形成することを見込んでキャリアプレート14bの厚みを設定する必要がなく、キャリアプレート14bの肉厚増大を抑制することができる。
【0062】
また、ピニオンシャフト27の抜け止めは、フランジ部27bと保持部材30によって行うことができる。このため、ピニオンシャフト27の固定は、フランジ部27bが設けられた一端で行うことができ、フランジ部27bが設けられていない端部は、他方のキャリアプレート14cに形成された軸支持孔14dに挿入されているのみである。これにより、ピニオンシャフト27の加工性及び固定作業性にすぐれる。
【0063】
そして、把持部32の内面32a,32aが、キャリアプレート14bによって内側から押し広げられた状態となることで、把持部32は、キャリアプレート14bの対向する両側面14h,14hを外方から押圧する板バネ反力を有することとなる。
【0064】
そのため、把持部32が両側面14h,14hに密着してはずれにくくなり、ピニオンシャフト27の固定性能を高めることができる。特に、実施例1では、把持部32の先端部32b,32bが互いに近接する方向に屈曲しているため、キャリアプレート14bの両側面14h,14hを外方から押圧する板バネ反力をさらに向上することができる。
【0065】
そして、実施例1の遊星歯車機構である減速機5では、保持部材30のフランジ部27bの外端面27boに向かって突出するエンボス部34が、この外端面27boに開放したシャフト油路27cの開口部27dの縁部に嵌合する。これにより、開口部27dがエンボス部34によって閉塞され、この開口部27dをふさぐためのプラグ部品等が不要となり、簡易な構造でシャフト油路27cの確保ができる。
特に、実施例1における保持部材30は、把持部32がキャリアプレート14bの両側面14h,14hを外方から押圧する板バネ反力を有しているため、エンボス部34の開口部27dの縁部への嵌合性能が高くなる。
【0066】
[ピニオンシャフトの回転方向位置決め作用]
実施例1の遊星歯車機構である減速機5では、図11に示すように、保持部材30の把持部32により、一方のキャリアプレート14bの両側面14h,14hを把持する。このとき、フランジ部27bに形成した互いに対向する一対の平行側面部27bs,27bsが、保持部材30の回転規制部33によって挟まれるように、ピニオンシャフト27の回転方向位置を調整する。
【0067】
そして、保持部材30の把持部32によってキャリアプレート14bが把持されたとき、回転規制部33と平行側面部27bs,27bsとが対向すると、これにより、ピニオンシャフト27の回転方向の移動、つまり軸周りの回転移動が規制される。
すなわち、保持部材30は、把持部32がキャリアプレート14bを把持することで、回転方向に移動することはない。これにより、回転規制部33の回転方向の位置決めもなされる。一方、この回転規制部33に、フランジ部27bに形成した平行側面部27bs,27bsがそれぞれ対向していることで、ピニオンシャフト27が軸周りに回転すると、平行側面部27bs,27bsが回転規制部33と干渉する。ここで、回転規制部33は回転方向の位置決めがなされているので、回転規制部33に干渉した平行側面部27bs,27bsの回転移動が規制され、ピニオンシャフト27が回転することなく、回転方向の位置決めを行うことができる。
【0068】
さらに、ピニオンシャフト27の回転方向の位置決め機能を保持部材30が有することで、第3比較例の遊星歯車機構のように、固定ピン109や小穴110の加工等が不要となり、組み付け性の向上を図ることもできる。
【0069】
そして、実施例1の遊星歯車機構である減速機5では、当接部31が保持部材30の中心に位置してフランジ部27bを覆い、フランジ部27bが当接したキャリアプレートの両側面14h,14hに向かって、この当接部31から把持部32が延在すると共に、この把持部32と直交する方向に当接部31から回転規制部33が延在している。このように、当接部31と把持部32と回転規制部33が、当接部31を中心に一体的に形成されているため、生産性にすぐれ、製造コストの低減を図ることができる。
【0070】
次に、効果を説明する。
実施例1の遊星歯車機構(減速機5)にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0071】
(1) 対向する一対のキャリアプレート14b,14cと、
前記一対のキャリアプレート14b,14cのそれぞれに形成され、互いに対向する一対の軸支持孔14d,14dと、
前記一対の軸支持孔14d,14dに挿入され、前記一対のキャリアプレート14b,14cの間で軸受28を介してピニオンギヤ(段付きプラネタリピニオン)13を回転自在に保持するピニオンシャフト27と、
前記ピニオンシャフト27の一端に設けられ、一方のキャリアプレート14bの外表面14boに内端面27biが当接するフランジ部27bと、
前記フランジ部27bの外端面27boに当接する当接部31と、前記フランジ部27bが当接したキャリアプレート14bの対向する両側面14h,14hを把持する把持部32と、を有する保持部材30と、
を備えた構成とした。
このため、ピニオンシャフトを固定しても、キャリアプレートとピニオンシャフトとの接触面積が低減しないため、キャリアプレートの肉厚を増加する必要がなくなり、キャリアの肉厚増大を抑えることができる。
【0072】
(2) 前記把持部32は、前記キャリアプレート14bの対向する両側面14h,14hを押圧する板バネ反力を有する構成とした。
このため、(1)の効果に加え、把持部32が両側面14h,14hに密着してはずれにくくなり、保持部材30によるピニオンシャフト27の固定性能を高めることができる。
【0073】
(3) 前記フランジ部27bは、互いに対向する一対の平行側面部27bs,27bsを有し、
前記保持部材30は、前記一対の平行側面部27bs,27bsを挟み込む回転規制部33を有する構成とした。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、保持部材30により、ピニオンシャフト27の回転方向の位置決めを行うことができる。
【0074】
(4) 前記ピニオンシャフト27は、軸方向に延びると共に、前記フランジ部27bの前記外端面27boに開口部27dを有するシャフト油路27cが内部に形成され、
前記保持部材30は、前記フランジ部27bの前記外端面27boに向かって突出するエンボス部34を有し、
前記エンボス部34は、前記シャフト油路27cの前記開口部27dに嵌合する構成とした。
このため、(1)から(3)の効果に加え、ピニオンシャフト27の内部にシャフト油路27cを確保できると共に、このシャフト油路27cの軸方向の開口部27dを保持部材30で閉塞することができる。
【0075】
(5) 前記当接部31は、前記保持部材30の中心に位置して前記フランジ部27bを覆い、
前記把持部32は、前記フランジ部27bが当接したキャリアプレート14bの両側面14h,14hに向かって、前記当接部31から延在し、
前記回転規制部33は、前記把持部32と直交する方向に前記当接部31から延在した構成とした。
このため、(3)の効果に加え、当接部31を中心に把持部32と回転規制部33を一体的に形成することができて、生産性にすぐれ、製造コストの低減を図ることができる。
【0076】
以上、本発明の遊星歯車機構を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0077】
実施例1では、一方のキャリアプレート14bが、キャリア本体14aの周面から等間隔をあけて三方に張り出した矩形状の板形状を呈している。しかしながら、これに限らず、例えば図12に示すように、一方のキャリアプレート14bは、キャリア本体14aの周面から径方向に張り出した環状の板形状となっていてもよい。
【0078】
この場合では、フランジ部27bが当接する一方のキャリアプレート14bは、軸支持孔14dの周囲に位置する一対の貫通孔14i,14iを有している。そして、保持部材30の把持部32は、この一対の貫通孔14i,14iに挿入すると共に、キャリアプレート14bの両側面となる各貫通孔14iの内側面14jを把持する。
【0079】
この場合であっても、ピニオンシャフト27の固定にかかわらず、キャリアプレート14bとピニオンシャフト27との接触面積が低減しないため、キャリアプレート14bの肉厚を増加する必要がなくなり、キャリア14の肉厚増大を抑えることができる。また、当接部31を中心に把持部32と回転規制部33を一体的に形成することができて、生産性にすぐれ、製造コストの低減を図ることができる。
【0080】
そして、実施例1の保持部材30では、把持部32がキャリアプレート14bの両側面14h,14hを外方から押圧する板バネ反力を有しているが、この板バネ反力を有していなくともよい。すなわち、例えば、図13に示すように、キャリアプレート14bの両側面14h,14hに、把持部32の先端部32b,32bが係合する係合凹部35,35を形成してもよい。この場合であっても、キャリアプレート14bの板厚を増大することなく、ピニオンシャフト27を固定することができる。
【0081】
また、実施例1では、フランジ部27bをピニオンシャフト27のシャフト本体27a一端に一体的に設けているが、これに限らない。シャフト本体27aとフランジ部27とを別体とし、例えばねじ構造等で接続してもよい。
さらに、実施例1では、本発明の歯車遊星機構をインホイールモータユニットMUの減速機5として適用する例を示したが、通常の変速機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
5 減速機(遊星歯車機構)
14 キャリア
14b キャリアプレート
14bo 外表面
14c キャリアプレート
14d 軸支持孔
14e キャリア油路
14h 側面
27 ピニオンシャフト
27a シャフト本体
27b フランジ部
27bi 内端面
27bo 外端面
27b´ 凹み
27bs 平行側面部
27c シャフト油路
27d 開口部
28 軸受
30 保持部材
31 当接部
32 把持部
32a 内面
33 回転規制部
34 エンボス部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対のキャリアプレートと、
前記一対のキャリアプレートのそれぞれに形成され、互いに対向する一対の軸支持孔と、
前記一対の軸支持孔に挿入され、前記一対のキャリアプレートの間で軸受を介してピニオンギヤを回転自在に保持するピニオンシャフトと、
前記ピニオンシャフトの一端に設けられ、一方のキャリアプレートの外表面に内端面が当接するフランジ部と、
前記フランジ部の外端面に当接する当接部と、前記フランジ部が当接したキャリアプレートの対向する両側面を把持する把持部と、を有する保持部材と、
を備えたことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項2】
請求項1に記載された遊星歯車機構において、
前記把持部は、前記キャリアプレートの対向する両側面を押圧する板バネ反力を有することを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された遊星歯車機構において、
前記フランジ部は、互いに対向する一対の平行側面部を有し、
前記保持部材は、前記一対の平行側面部を挟み込む回転規制部を有することを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された遊星歯車機構において、
前記ピニオンシャフトは、軸方向に延びると共に、前記フランジ部の前記外端面に開口部を有するシャフト油路が内部に形成され、
前記保持部材は、前記フランジ部の前記外端面に向かって突出するエンボス部を有し、
前記エンボス部は、前記シャフト油路の前記開口部に嵌合することを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項5】
請求項3に記載された遊星歯車機構において、
前記当接部は、前記保持部材の中心に位置して前記フランジ部を覆い、
前記把持部は、前記フランジ部が当接したキャリアプレートの両側面に向かって、前記当接部から延在し、
前記回転規制部は、前記把持部と直交する方向に前記当接部から延在したことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項6】
請求項3に記載された遊星歯車機構において、
前記フランジ部が当接したキャリアプレートは、前記軸支持孔の周囲に位置する貫通孔を有し、
前記当接部は、前記保持部材の中心に位置して前記フランジ部を覆い、
前記把持部は、前記貫通孔に挿入すると共に、前記貫通孔の内側面に向かって、前記当接部から延在し、
前記回転規制部は、前記把持部と直交する方向に前記当接部から延在したことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項1】
対向する一対のキャリアプレートと、
前記一対のキャリアプレートのそれぞれに形成され、互いに対向する一対の軸支持孔と、
前記一対の軸支持孔に挿入され、前記一対のキャリアプレートの間で軸受を介してピニオンギヤを回転自在に保持するピニオンシャフトと、
前記ピニオンシャフトの一端に設けられ、一方のキャリアプレートの外表面に内端面が当接するフランジ部と、
前記フランジ部の外端面に当接する当接部と、前記フランジ部が当接したキャリアプレートの対向する両側面を把持する把持部と、を有する保持部材と、
を備えたことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項2】
請求項1に記載された遊星歯車機構において、
前記把持部は、前記キャリアプレートの対向する両側面を押圧する板バネ反力を有することを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された遊星歯車機構において、
前記フランジ部は、互いに対向する一対の平行側面部を有し、
前記保持部材は、前記一対の平行側面部を挟み込む回転規制部を有することを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された遊星歯車機構において、
前記ピニオンシャフトは、軸方向に延びると共に、前記フランジ部の前記外端面に開口部を有するシャフト油路が内部に形成され、
前記保持部材は、前記フランジ部の前記外端面に向かって突出するエンボス部を有し、
前記エンボス部は、前記シャフト油路の前記開口部に嵌合することを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項5】
請求項3に記載された遊星歯車機構において、
前記当接部は、前記保持部材の中心に位置して前記フランジ部を覆い、
前記把持部は、前記フランジ部が当接したキャリアプレートの両側面に向かって、前記当接部から延在し、
前記回転規制部は、前記把持部と直交する方向に前記当接部から延在したことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項6】
請求項3に記載された遊星歯車機構において、
前記フランジ部が当接したキャリアプレートは、前記軸支持孔の周囲に位置する貫通孔を有し、
前記当接部は、前記保持部材の中心に位置して前記フランジ部を覆い、
前記把持部は、前記貫通孔に挿入すると共に、前記貫通孔の内側面に向かって、前記当接部から延在し、
前記回転規制部は、前記把持部と直交する方向に前記当接部から延在したことを特徴とする遊星歯車機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−2527(P2013−2527A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133167(P2011−133167)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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