説明

運搬台車用盗難防止カバー

【課題】この発明は、運搬台車用の積荷を保護し、盗難を防止することができるカバーに関する。
【解決手段】底面が開口した袋状のカバー本体と、該カバー本体の側面に下端から中途位置まで開口し、運搬台車の上からかぶせることのできファスナーによって開閉自在に形成されたスリット部と、該スリットの下端寄りでスリットを挟んで隣接する一対の側面に左右一対に設けられた孔部と、上記一方の孔部からカバー本体の内部に挿入され、運搬台車の荷台上で縦枠に掛け止めて他方の孔部からカバー本体の外部に出るチェーンや紐等の線条体と、該線条体を無端に連結してロックする施錠具とを設けてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運搬台車用の積荷を保護し、盗難を防止することができるカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャスタ付きの荷台に、荷台上の背面と左右側面の3面を格子状のパネルで平面視コ字状に囲って、積荷の抜け落ちを防止する運搬台車が知られている(例えば、特許第2878134号等)。
しかし、この種の運搬台車は、前面は積み卸し用に開放されており、落下防止用にバーが横架される程度であり、また各パネルの格子部分も目が粗いため、作業者が運搬台車から離れた隙に積荷の一部が抜き取られるなどの問題があった。
そこで、例えば特開2009−23623号の手押し台車上の荷崩れ防止具では、積み荷落下の危険をほぼ完全になくし、盗難の危険を減らし、さらに、現在使用されている手押し台車に簡単に後付けできるような手押し台車上の荷崩れ防止具として、荷台とキャスタと直立するハンドルを有する手押し台車に取り付ける荷崩れ防止具であって、積み荷を台車ハンドルごと上方から覆う荷崩れ防止ネットと、前記荷台の衝撃緩和用ゴムクッションの上に載置されるフレームと、前記フレームに取り付けられる、断面が湾曲した複数のゴムバンドホルダーと、前記ゴムバンドホルダーの前記湾曲断面により形成される窪みに掛けられるゴムバンドからなる構成が開示されている。
しかし、上記構成では荷台にゴムバンドホルダーを設けておき、荷崩れ防止ネットを拘束するゴムバンドを前記ホルダーの窪みに掛け渡す必要があるので、前記荷崩れ防止ネットを運搬台車に適用するには、荷崩れ防止ネットの着脱に時間がかかり、また構造が複雑化するなどの問題があり、またゴムバンドを施錠することはできず、盗難防止効果としては十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−23623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、簡単な構成で、運搬台車の荷台上に積み込まれた積荷の盗難を防止することができると共に、積荷を保護することができる運搬台車用盗難防止カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するために、
頂面と側面を有し底面が開口した袋状のカバー本体と、
該カバー本体の側面に下端から少なくとも中途位置まで開口し、運搬台車の上からかぶせることのできる長さでファスナーによって開閉自在に形成されたスリット部と、
該スリットの下端寄りでスリットを挟んで隣接する一対の側面に左右一対に設けられた孔部と、
上記一方の孔部からカバー本体の内部に挿入され、運搬台車の荷台上で荷台に取り付けられた枠又は支柱の外側を通って他方の孔部からカバー本体の外部に出るチェーンや紐等の可撓性を有する線条体と、
該線条体を無端に連結してロックする施錠具とを設けてなることを特徴とする。
請求項2の発明では、
前記袋状のカバー本体が、運搬台車に略隙間無く外嵌する角筒状からなっていることを特徴とする。
また、請求項3の発明では、
前記ファスナーがスナップボタンからなっており、
カバー本体の側面でスリット部の縁部にスナップボタンの一方の係合部が取り付けられ、
前記側面と隣接する側面から延びて前記スリット部を塞いで前後に重なる重合片部にスナップボタンの他方の係合部が取り付けられてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明の盗難防止カバーは、運搬台車の全体を上からスリット部を広げた袋状のカバー本体を被せて下まで引っ張って覆うことができる。
そして、開いているスリット部に隣接する重合片部を前後に重ねてファスナーで閉じる。
閉じた袋状のカバー本体の一方の孔部から線条体の一端を通し、運搬台車の荷台上で枠体又は柱体の外側に廻して他方の孔部から出し、線条体の一端と他端とを結び施錠具でロックする。
これにより、カバー本体は運搬台車と一体となって外れることがないので、運搬台車の荷台に積み込まれた積荷が抜き取られることがない。
前記カバー本体を外す際には、施錠具を解錠し、線条体を孔部から抜き取り、ファスナーを外してスリット部を開き、カバー本体を上に上げて運搬台車から外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】運搬台車に盗難防止カバーを取り付けた状態の斜視図である。
【図2】図1の盗難防止カバーを示す斜視図である。
【図3】カバー本体の下部の部分拡大図である。
【図4】図1の運搬台車の一例を示す斜視図である。
【図5】複数の施錠具を設けた盗難防止カバーの別の実施例を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明では、運搬台車10に盗難防止カバー1を外嵌し、盗難防止カバー1のスリット部に線条体を通して施錠することで、簡単な構造で運搬台車上の積荷の盗難防止効果を実現した。
【実施例1】
【0009】
以下に、この発明の実施例1の盗難防止カバーについて図面を参照しながら説明する。
図1から図3に示す盗難防止カバー1は、底面が開口した袋状のカバー本体2と、該カバー本体2の一側に形成されたスリット部3と、スリット部3に隣接する片から延びてスリット部3が形成された片と前後に重なる重合片部4と、該重合片部4とスリット部3を有する片とに形成されたファスナーの構成部5A、5Bと、スリット部3の下側で隣接する片に形成された一対の孔部6a、6bと、該孔部6a、6b間に掛け渡される線条体7と、該線条体7を無端に連結して施錠する施錠具8とからなっている。
【0010】
[カバー本体]
カバー本体2は、外嵌する運搬台車10の形状に対応してほぼ隙間無く外嵌しうる大きさの角筒形状からなっており、底面が開口している。
この発明では、カバー本体2は運搬台車10に外嵌できればよく、円筒状であってもよいし、任意の袋形状であってもよい。
また、積荷が見分けられるように、任意の個所(図示例では上部)に透明な樹脂で覆った小窓9を設けることが好ましい。
【0011】
[スリット部]
カバー部2には、その一側面2aのコーナー寄りに、下端から上方寄りの中途位置まで直線状に切り込まれたスリット部3が形成されている。
そして、前記スリット部3に隣接する側面2bには、前記側面2aのスリット部3の縁部3aに対して、前記側面2bから延びてスリット部3を塞ぎ前記縁部3aと前後に重なる重合片部4が形成されている(図3参照)。
【0012】
[ファスナー]
前記スリット部3は開閉可能となっており、本実施例では前記側面2aのスリット部3の縁部3aと、隣接する側面2bの重合片部4との、一方にファスナーの一方の構成部5Aが取り付けられ、他方の対応位置にファスナーの他方の構成部5Bが取り付けられている。
【0013】
ファスナーの構成部5A、5Bは、本実施例の場合、スナップボタンからなっている。
そして、カバー本体2の側面2aでスリット部3の縁部3aにスナップボタンの一方の係合部5Aが固着されている。
また、前記側面2aと隣接する側面2bには、前述のように該側面2bから延びて前記スリット部3を塞いで前後に重なる重合片部4が形成されており、前記係合部5Aに対応する位置にスナップボタンの他方の係合部5Bが固着されている。
【0014】
本実施例では、点ファスナーの一例であるスナップボタンを用いたが、この発明ではその他の点ファスナーでもよいし、マジックテープ(登録商標)のような面ファスナーや務歯を持つスライドファスナーのような線ファスナーを用いてもよい。
なお、線ファスナーの場合には重合片部4は設ける必要がなく、スリット部3の両側の側面2a、2bの端部に線ファスナーを設ければよい。
【0015】
[孔部]
また、スリット部3を挟んで隣接する側面2a、2bのスリット部3の下方寄りには、一対の孔部6a、6bが形成されている。
本実施例では上記孔部6a、6bにはその縁部にハトメ金具が固着されている。
この孔部6a、6bの位置は、前述のようにスリット部3の開放端の近傍であるが、更に、後述の線条体7を通す際に運搬台車10の荷台15上の所定位置に掛け渡せるような位置に設定している。
【0016】
[線条体]
前記孔部6a、6bには1本の線条体7を通し、両端を連結して無端状にする。
線条体7としては、チェーン、ワイヤー、紐などの可撓性と強度を有するものが用いられる。
本実施例では両端に施錠具7に掛止めるリング部7a、7bを有しているが、その他、ループ状に連結するための係合手段又は連結手段を設けておくことが好ましい。
【0017】
[施錠具]
本実施例で、線条体7は、両端のリング部7a、7bを施錠具8で連結しロックする。
施錠具8は、線条体7に一体に形成されたものであっても、別体のものであってもよい。
例えば、図示しないが、ワイヤーの一端に施錠具を一体に有し、ワイヤーの他端を係止する係止部を有し、係止個所をロックするような自転車用の公知のワイヤーロックのような構造であってもよい。
また、錠前を用い鍵で開閉するものであっても、ダイヤル式、テンキー式などの施錠、解錠機構を有するものであってもよい。
【0018】
[運搬台車]
運搬台車10は、図4に一例を示すものであり、垂直に延びる矩形の背面枠12と、該背面枠12の左右両側の側枠12aにヒンジ部Hを介して鉛直軸心廻りに枢動自在に連結される矩形の左右側面枠13,14とを有して、平面視コ字状となる3面の縦枠を備えている。
該縦枠の下部には矩形からなる荷台15が掛け止められ又は固定されている。
上記荷台15又は縦枠のコ字状底部の四隅にはキャスタ16を取付けており運搬台車10を移動させることができる。
前記背面枠12及び左右側面枠13,14は矩形の外側枠体の中に、それぞれ縦材21と横材22を交差させて縦横に延びる格子枠が一体に固定された公知構成からなっている。
【0019】
[使用方法]
本実施例は上記構成からなっているので、盗難防止カバー1は、運搬台車10の全体を上からスリット部3を広げた状態でカバー本体2を被せて運搬台車10の下まで引っ張って覆うことができる。
そして、開いているスリット部3を閉じる。本実施例ではスリット部3を有する側面2aのスリット部3の縁部3aと、該側面2aに隣接する側面2bから延びて前記縁部3aと前後に重なる重合片部4とを前後に揃えて、対応するファスナー構成部5A、5Bを用いてスリット部3を閉じる。
【0020】
次いで、カバー本体2の一方の孔部6aから線条体7の一端を通して内部に挿入する。
この際に、例えば、前記ファスナー構成部5A、5Bは下部側を開いておけば、線条体7の取り回しを容易に行うことができ、後述の線条体7を外側に取り出してから開いている部分のファスナー構成部5A、5Bを閉じればよい。
【0021】
挿入した線条体7の先端は、運搬台車10の荷台15上で前記背面枠12又は左右側面枠13,14の側枠12a、13a、14aまたは格子状となる格子枠の縦材21又は横材22の外側に廻して他方の孔部6bからカバー本体2の外側へ出す。
即ち、線条体7は、側枠12a、13a又は14aと荷台15との交差個所、又は格子枠の縦材21と荷台15との交差個所に掛け渡すことで、低位置で掛止めることができる。
図4では、一例として、荷台15上で右側面枠13の側枠13aと荷台15の交差個所に線条体7を掛け渡した状態を図示した。
しかし、低位置であれば、側枠12a、13a又は14aと格子枠の横材22の交差個所、又は格子枠の縦材21と横材22の交差個所に掛け止めてもよい。
【0022】
そして線条体7の両端を連結して施錠具8でロックして無端のループを形成する(図1、図2参照)。
これにより、カバー本体2は運搬台車10に掛け止められ一体となって外れることがないので、運搬台車10の荷台15上に積み込まれた積荷が抜き取られることがない。
前記盗難防止カバー1を運搬台車10から外す際には、施錠具8を解錠し、線条体7を孔部6a、6bから抜き取り、ファスナーの構成部5A、5Bの係合を外してスリット部3を開き、カバー本体2を上に引き上げて運搬台車10から取り外せばよい。
【実施例2】
【0023】
実施例1では、1個所に一対の孔部6a、6bを設けて1本の線条体7を通してロックする場合を例示したが、スリット部3の上下の複数個所でロックする構成としてもよい。
図5の実施例2では、上下2個所に一対の孔部6a、6bと6a’、6b’を設け、それぞれに線条体7、7’を通してループとし施錠具8、8’でロックした場合を示す。
【0024】
この場合、上下のロック構成は位置が異なるだけであり、上方のロック構成では掛止める運搬台車10の背面枠12又は左右側面枠13,14の側枠12a、13a、14aまたは格子状となる格子枠の縦材21と、格子枠の横材22との交差個所に掛止めればよく、その他の構成は前記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
その他、この発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1 盗難防止カバー
2 カバー本体
2a 小窓
3 スリット部
4 重合片部
5A、5B ファスナーの構成部
6a、6b 一対の孔部
7 線条体
8 施錠具
10 運搬台車
12 背面枠
12a 背面枠の側枠
13、14 左右側面枠
13a、14a 左右側面枠の側枠
15 荷台
16 キャスタ
21 格子枠の縦材
22 格子枠の横材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂面と側面を有し底面が開口した袋状のカバー本体と、
該カバー本体の側面に下端から少なくとも中途位置まで開口し、運搬台車の上からかぶせることのできる長さでファスナーによって開閉自在に形成されたスリット部と、
該スリットの下端寄りでスリットを挟んで隣接する一対の側面に左右一対に設けられた孔部と、
上記一方の孔部からカバー本体の内部に挿入され、運搬台車の荷台上で荷台に取り付けられた枠又は支柱の外側を通って他方の孔部からカバー本体の外部に出るチェーンや紐等の可撓性を有する線条体と、
該線条体を無端に連結してロックする施錠具とを設けてなることを特徴とする運搬台車の盗難防止カバー。
【請求項2】
袋状のカバー本体が、運搬台車に略隙間無く外嵌する角筒状からなっていることを特徴とする請求項1に記載の運搬台車の盗難防止カバー。
【請求項3】
ファスナーがスナップボタンからなっており、
カバー本体の側面でスリット部の縁部にスナップボタンの一方の係合部が取り付けられ、
前記側面と隣接する側面から延びて前記スリット部を塞いで前後に重なる重合片部にスナップボタンの他方の係合部が取り付けられてなることを特徴とする請求項1に記載の運搬台車の盗難防止カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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