説明

運行管理方法,運行管理装置,走行制御装置

【課題】列車の運行予測の精度を向上する。
【解決手段】予測対象の列車上で、予測列車の現在の走行状況を基に、予測列車の走行上の物理的特性に対し、予測列車の進行に関わる、軌道形状の条件,速度制限の条件,保安確保上の条件,運行営業上の条件,先行列車との走行上の支障条件、ならびに、対向列車との走行上の支障条件の少なくとも1つに基づく制約の影響を勘案することで求められる、時刻あたりの列車の速度、及び、列車位置あたりの列車速度からなる、現在時刻以降の列車の走行予測(走行パターン)情報を求め、その走行予測情報に基づき、列車の運行の予測情報を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行計画に基づいて移動体を移動させ、その移動実態から将来にわたる移動の予測を求め、運行を管理する者に提示し、運行管理に活用するシステムに関する。特に、列車の運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最初に、本発明において用いる用語を説明する。
【0003】
「列車の走行」とは、列車の加速,減速,一定速度移動,滑走など、列車の物理的な動作のことをいう。
【0004】
「列車の走行制御」とは、列車の動力,列車の制動力を用いて、列車の走行を決定することをいう。
【0005】
「列車の運行」とは、旅客・貨物・回送など、用務を持った列車の走行をいい、時刻表(あるいは、ダイヤ)、時間当たりの運転本数(あるいは、運転間隔時間)、あるいは、臨時の旅客案内等で公示されている運行予定に従い列車を所定の出発駅(始発出発時刻)所定の終着駅(終着到着時刻)まで、列車の走行を実施させることをいう。
【0006】
「列車の運行制御」とは、各列車の運行予定に従って、あるいは、各列車の運行予定を変更の上で、その変更後の予定に従って、列車の運行を実施させることをいう。また、信号機や標識、転てつ機等の設備により、列車の運行に変化をもたらすことをいう。
【0007】
「軌道」とは、列車の走行する物理的な経路をいい、レール,枕木,転てつ機,踏切,橋、などにより構成される。
【0008】
「路線」とは、列車が運行する、あるいは、運行を管理する上での経路をいい、軌道回路,閉そく,進路、などにより構成される。
【0009】
「運行計画」とは、当該日の列車の運行スケジュールをいい、始発駅出発時刻,始発駅出発番線,終着駅到着時刻,終着駅到着番線,途中駅出発時刻,途中駅到着時刻,途中駅使用番線、などの情報からなる。
【0010】
「ダイヤ」とは、運行計画の一表現形態をいい、図示した場合、2次元表記で、一方の軸を駅ならび方向、もう一方の軸を時刻方向で表現し、各駅の到着時刻−出発時刻の情報を多角線で結んだ表現たものをいう。一般に、縦方向を駅ならび方向、横方向を時刻方向としている場合が多く、本発明でもそのように表現する。
【0011】
「走行パターン」とは、列車の走行制御を目的として、時間あたりの列車速度,地点あたりの列車速度を規定した情報をいう。特に、それら情報を2次元グラフ表現した場合の曲線をいう場合もある。
【0012】
「信号」とは、列車に対して、その走行速度を指示する情報のことをいい、列車は、その指示された速度以下で走行することが求められる。形態としては、ある区間内の最高速度を規定するもの、最高速度をゼロ(即ち、停止)とする地点を規定するもの、などがある。
【0013】
「軌道条件」とは、軌道の勾配,曲率など、列車の走行に影響を与える物理的な条件、及び、駅構内等の線路の配置,転てつ機の配置など、列車の走行及び列車の運行に影響を与える条件のことをいう。
【0014】
「運行の乱れ」とは、事故などの発生により、当初の運行計画通りに列車の運行がされなくなっている状態をいう。
【0015】
「運行の予測」とは、列車の運行計画に対して、実際の列車の運行がどのようになるか予測することをいう。通常、運行の乱れなど、特に運行状況に問題が無ければ、運行計画にそったものになるはずである。
【0016】
「運行営業上の制約」とは、例えば、旅客列車の場合、乗客が列車を乗車降車するのに必要な停車時間,乗り継ぎ関係にある列車間の到着出発順序・間隔の関係、など、その列車が持つ用務を実施する上で必要な制約のことをいう。
【0017】
「先行列車」とは、当該列車に対して、進行方向上、前方を走行している列車のことをいう。
【0018】
「続行列車」とは、当該列車に対して、進行方向上、後方を走行している列車のことをいう。従って、続行列車からみた当該列車は、先行列車ということになる。また、先行列車からみた当該列車は、続行列車ということになる。
【0019】
「支障」とは、列車の走行上の安全を確保する(列車同士の衝突の回避,列車の脱線の回避、など)ため信号等により列車の走行を制御すること等で、結果として、列車の運行上から見た場合、余分な時間を必要とし、列車の運行を妨げることになることをいう。
【0020】
「退避」とは、主に、列車の走行順序を変更するために、追い越される側になる先行列車に対して、続行列車が追い越しをできるように、進路を設定し、駅に到着させることをいう。
【0021】
「退避支障」とは、先行列車を退避することにより発生する支障のことをいう。一般に、先行列車の退避動作のための安全な進路設定の開始から、先行列車の安全な退避、そして、続行列車の追い越し動作のための安全な進路設定が完了するまでをいう。
【0022】
「渡り線」とは、直進進行する線路とは異なる線路へ、列車の進行を変える構造のことをいう。
【0023】
「交差」とは、2つの線路間で相互に進行を変更することができる渡り線が存在する構造をいう。また、その構造を利用して、異なる進行方向の列車同士が、進行する行為のことをいう。
【0024】
「立体交差」とは、渡り線同士が立体構造関係にあり、本設備を使用して異なる進行方法の列車同士が進行する際には、基本的に支障は存在しない。
【0025】
「平面交差」とは、渡り線同士が同一平面構造にあり、本設備を使用して異なる進行方向の列車同士が進行する際には、支障が存在する。本発明では、平面交差を「交差」として使用する。
【0026】
「交差支障」とは、平面交差において、渡り線を使用する列車同士が支障することをいう。
【0027】
「順序変更」とは、運行計画に対して、本来先行列車であるものに対して、本来続行列車あるものを、先行列車に変更する作業のことをいう。一般に退避を実施して実行する。
【0028】
「制限速度」とは、列車間の衝突を避けるため、列車の脱線を避けるため、線路沿線の状況などから、列車の走行速度に対して設定される速度の上限をいう。
【0029】
「臨速」とは、特定の地点や区間に対して、臨時に設けられる制限速度をいう。臨時速度制限の省略形。
【0030】
「閉そく」とは、列車間の衝突を避けるために、ある特定の区間内に存在する列車が1つとなるように排他制御を行う際の、その区間をいう。また、その排他制御そのものをさす場合もある。
【0031】
「停止限界」とは、列車の走行上の安全を確保する(列車同士の衝突の回避,列車の脱線の回避、など)ために、列車の走行(進行)が許容される限界点のことをいう。即ち、当該地点において、列車の速度はゼロとなることが求められる。
【0032】
「定刻」とは、実際の列車の運行が、運行計画で規定されている時刻と同一に行われていることをいう。
【0033】
「車両(あるいは車輌)」とは、動力,制動力を要した移動体としての物体をいう。
【0034】
「列車」とは、旅客・貨物・回送などの用務をもった、車両のことをいう。
【0035】
「ダイヤ変更」とは、当初設定されていた運行計画(ダイヤ)に対して、列車運行の乱れに応じて、列車運行の乱れの影響を収束させるために、ダイヤ(即ち運行計画)を変更する作業のことをいう。
【0036】
「運転整理」とは、ダイヤ変更などを通じて列車の運行を制御することにより、列車の運行の乱れを収束させ、通常の運行状態を回復させる作業のことをいう。
【0037】
「運行実績」とは、運行計画の情報項目に対応して、実際に列車が運行した履歴情報をいう。
【0038】
「運行管理」とは、列車の運行計画に沿って、列車が運行しているかを監視・追跡し、運行上の問題が発生した場合(一般に、運行計画に対して運行実績に差異が生じた場合)、各種方策を用いて、運行上の問題の影響を解消する行為のことをいう。
【0039】
「時分」とは、ある事象に対して要する時間のことをいう。
【0040】
「最小駅間走行時分」とは、特別な制約が無い場合(各種支障が無い,臨速が無い、当該列車(車両による走行性能の別,運行形態:特急や各駅停車の別,停車パターン:停車あるいは通過の別))について、出発駅の出発時刻から到着駅の到着時刻までの時分をいう。
【0041】
「最小停車時分」とは、当該列車,当該駅において、特別な制約が無い場合の、到着時刻から出発時刻までの時分をいう。
【0042】
「最小折り返し時分」とは、当該列車,当該駅において、到着時刻から折り返しを実施した後の出発時刻までの時分をいう。
【0043】
「余裕時分」とは、最小駅間走行時分に対し、前駅の出発時刻から当駅の到着時刻との間に含ませる余分な時間のことをいう。一般にダイヤ上の出発−到着時間には余裕時分を持たせており、微小な遅れ等は、最適に近い走行(回復運転)により自然回復可能になっている。
【0044】
「回復運転」とは、軽微な遅延等に対して、最小駅間走行時分に可能な限り近い走行を行うことにより、ダイヤに含まれる余裕時分を消化することで、遅延を回復していくことをいう。
【0045】
「時隔」とは、ある事象の発生時刻に対して、比較する事象の発生時刻との間の時間間隔をいう。場合によっては、その時間間隔を設けること自体をさす場合もある。
【0046】
「最小運転時隔」とは、先行列車の出発時刻と続行列車の出発時刻の時隔をいう。場合によっては、先行列車の到着時刻と続行列車の到着時刻の時隔をいう場合もある。
【0047】
「進路」とは、線路上、1つの列車に対してのみ進行可能な経路のことをいう。同一の経路の一部、あるいは、全部を使用する別の経路とは、同時に使用されることが無いよう、排他制御が行われる。
【0048】
「採時」とは、出発や到着などの事象の発生時刻を検知するために、軌道上に置かれた装置により、当該地点に列車が存在することを検知し、その時刻を獲得する事をいう。一般に、事象の発生位置と検知位置は異なる場合が多く、当該検知時刻から想定時間分経過後に到着したもの、あるいは、当該検知時刻から想定時分以前に出発していたもの、と補正をする場合が多い。
【0049】
列車の運行を管理するにあたり、平常、列車は、列車の運行計画に沿って運行を行っており、その状況を確認することが運行管理業務となる。ところが、事故等の発生により、運行計画通りに列車の運行ができない状況(運行の乱れ)が発生した場合、列車の運行計画(ダイヤ)を変更することにより、運行の乱れの直接的、あるいは、間接的な影響を、回避,最小化,解消することより、定常の運行状態を回復させる業務(運転整理)が行われる。
【0050】
この運転整理を実施する際に重要になるのが、列車運行の乱れにより、今後の列車の運行が、どのようになるか、を予測することである。現在時刻以降の、各列車の各駅の到着時刻,出発時刻がどうなるか、を予測することが求められる。
【0051】
従来、システムの支援が導入される以前は、運転整理を実施する業務員(指令員)の経験と勘によるところが大きかった。その後、システムの支援が導入された。そこにおいて、列車の運行予測は、採時に基づく、列車の出発時刻,列車の到着時刻に対して、駅間の最小駅間走行時分,最小駅停車時分,最小運転時隔などの数値を積算することにより、次駅以降の到着時刻,出発時刻を求めることにより行われていた。例えば、
次駅の到着予測時刻=当駅の出発時刻+次駅間の最小駅間走行時分
(ただし、先行列車の次駅到着予想時刻+最小運転時隔より遅い場合)
次駅の到着予測時刻=先行列車の次駅到着時刻+次駅の最小運転時隔
(ただし、当駅の出発時刻+次駅間の最小駅間走行時分より遅い場合)
次駅の出発予想時刻=次駅の到着予想時刻+最小駅停車時分
(ただし、先行列車の次駅出発予想時刻+最小運転時隔より遅い場合)
次駅の出発予想時刻=先行列車の次駅の出発予想時刻+最小運転時隔
(ただし、次駅の到着予想時刻+最小駅停車時分より遅い場合)
となる。即ち、上記の各積算で求められる時刻のうち、遅い方の時刻を採用するということになっていた。(参考文献1)
【0052】
また、予め作成しているパターンとの差異で遅れを検知し、該走行パターンに加算する方式(参考文献2)が考えられていた。
【0053】
また、予め作成しているパターンに、先行の遅延情報を受け取って、自列車の走行パターンに減速パターンを加味し、算出する方式(参考文献3)が考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開2008−222004号公報
【特許文献2】特開2002−249049号公報
【特許文献3】特開2004−229359号公報
【0055】
しかし、これらの方式による運行予測では、以下の点が問題になる。
・採時の精度がすべての基本情報になるため、採時の精度に、予測全体の精度が影響を
受ける
・採時する点以外における事象(例えば、他列車間との支障関係,臨速など、その現場
ごとで発生している事象など)の影響が予測に反映されない
・あくまで列車上での走行予測であって、地上システムにおける運行予測に反映されず
、運行管理(特に運転整理業務)に寄与しない
【0056】
実際、採時と実際の事象の発生時刻との間では、乖離する場合が多く、基本情報とするには問題のある場合が多い。
【0057】
これらにより、従来の運行予測方法では運行予測の精度に問題が生じ、実際の運行と予測が乖離する問題が発生していた。それにより、運転整理業務に影響が生じ、列車の運行管理の性能に影響を与えてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0058】
そこで本発明は、採時に変わる方法と、採時する点以外における事象(例えば、他列車間との支障関係,臨速など、その現場ごとで発生している事象など)の影響を、列車の運行予測に反映させることができるようにし、列車の運行予測の精度を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0059】
本発明に係る運行管理方法は、上記課題を解決するために、予測対象の列車に搭載された車上装置で、当該列車について現時刻以後に走行可能な列車の走行パターンを生成し、通信装置を用いて、走行パターン情報を地上に設置された地上装置へ送信し、地上装置で、走行パターン情報を受信して、走行パターン情報に基づいて現時刻以後の列車の運行を予測することを特徴とする。
【0060】
また、本発明に係る運行管理装置は、上記課題を解決するために、列車に搭載される車上装置と、地上に設置されて複数の列車の運行を管理する地上装置とを備え、前記車上装置は、前記地上装置へ情報を送信可能な車上情報送信装置と、自列車の走行制限情報を保存する走行制限情報保存装置と、自列車の走行状態情報を検出する走行センサと、前記走行制限情報および前記走行状態情報から自列車の現時刻以降の走行情報を生成する走行情報生成装置と、を備え、前記地上装置は、前記車上情報送信装置から前記走行情報を受信する地上情報受信装置と、前記走行情報から列車の運行計画ダイヤを生成する運行計画ダイヤ生成装置と、を備えることを特徴とする。
【0061】
ここで、走行制限情報は、予測列車の進行に関わる、軌道形状の条件,速度制限の条件,保安確保上の条件,運行営業上の条件,先行列車との走行上の支障条件、ならびに、対向列車との走行上の支障条件、の少なくとも1つに基づく制約の影響を勘案することで求められる。
【0062】
さらに、本発明に係る走行制御装置は、地上に設置されて、複数列車の運行を管理する地上装置へ情報の送受信を行う情報送受信装置と、自列車の走行制限情報を保存する走行制限情報保存装置と、自列車の走行状態情報を検出する走行センサと、前記走行制限情報および前記走行状態情報から自列車の現時刻以降の走行情報を生成する走行情報生成装置と、を備え、生成した前記走行情報を前記情報送受信装置から前記地上装置へ送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0063】
本発明により、採時に代わる方法を提供し、採時する点以外における事象の影響を列車の運行予測に反映させることができ、運行予測の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明にかかる、運行管理装置の一実施形態を示す。
【図2】本発明にかかる、運行管理装置の内、列車上の一実施形態を示す。
【図3】本発明にかかる、運行管理装置の内、地上装置上の一実施形態を示す。
【図4】本発明にかかる、運行管理装置における、状態遷移を示す。
【図5】本発明にかかる、運行管理装置において、列車が最速走行した場合の運行予測の実施形態を示す。
【図6】本発明にかかる、運行管理装置において、列車が定刻到着と目的に走行した場合の運行予測の実施形態を示す。
【図7】本発明にかかる、運行管理装置において、2列車が追従走行し、続行列車が先行列車の影響を受ない場合の運行予測の実施形態を示す。
【図8】本発明にかかる、運行管理装置において、2列車が追従走行し、続行列車が先行列車の影響を受ける場合の運行予測の実施形態を示す。
【図9】本発明にかかる、運行管理装置において、軌道の影響を加味した場合の運行予測の実施形態を示す。
【図10】本発明にかかる、運行管理装置において、先行列車との退避関係における制約を加味した場合の運行予測の実施形態を示す。
【図11】本発明にかかる、運行管理装置において、対向列車との交差支障関係における制約を加味した場合の運行予測の実施形態を示す。
【図12】本発明にかかる、運行管理装置において、路線上に臨時速度制限が設定されている場合の運行予測の実施形態を示す。
【図13】本発明にかかる、運行管理装置の地上装置における、運行予測の表示の内、多角線による予測表示の実施形態を示す。
【図14】本発明にかかる、運行管理装置の地上装置における、運行予測の表示の内、直線による予測表示の実施形態を示す。
【図15】本発明にかかる、運行管理装置の処理フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
列車の運行予測を求めるために、各列車に、無線により情報を送受信する送受信装置,運行計画の情報を受信し記憶する運行計画受信記憶装置,軌道の情報を受信し記憶する軌道情報記憶装置,列車の走行速度を規定する信号情報を受信し記憶する信号受信記憶装置,列車の物理的な特性の情報を記憶する物理特性情報記憶装置,他列車の走行パターン情報を受信し記憶する他走行パターン受信記憶装置,当該列車の走行の状態を表す情報を受信し記憶する走行情報受信装置,当該列車の走行を制御する走行制御装置,当該列車の走行パターン情報を生成する走行パターン生成装置,各列車で時刻を一致化する時刻一致化装置を備えて、予測対象の列車上で、当該列車の現在の走行状況を基に、当該列車の走行上の物理的特性に対し、進行に関わる、軌道の形状の条件,速度制限の条件,保安確保上の条件,運行営業上の条件,先行列車との走行上の支障条件、ならびに、対向列車との走行上の支障条件、などの少なくとも1つに基づく制約の影響を勘案することで求められる、時刻あたりの列車の速度、及び、列車位置あたりの列車速度、からなる現在時刻以降の列車の走行予測(走行パターン)情報を求め、地上装置上に走行パターン情報から運行予測情報への変換装置を備え、走行パターンに基づいて列車の運行予測を求める。
【0066】
以下に、図面を用いて本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0067】
図1は、本発明にかかる運行管理装置の一実施形態を示す。
【0068】
図1において、列車の進行方向は、左から右で、100は続行列車(ここでは、運行予測対象列車)、110は先行列車、120は出発駅、130は到着駅、140は地上装置、150は列車100上で求められる走行パターン、160は列車110上で求められる走行パターン、151は列車100について求められる走行パターンを時刻−速度曲線で表示したもの、152は列車100について求められる走行パターンを位置−速度曲線で表示したもの、161は列車110に対して求められる走行パターンを時刻−速度曲線で表示したもの、162は列車110に対して求められる走行パターンを位置−速度曲線で表示したもの、195は列車110と列車100の間の距離、170は列車110と列車100の間の距離195に応じた列車100の速度制限、171は速度制限を位置−速度で表した曲線、106は列車100の情報伝送装置、116は列車110の情報伝送装置、146は地上装置140の情報伝送装置、105は列車100と列車110の間の双方向情報伝送経路、115は先行列車110と地上装置140の間の双方向情報伝送経路、145は続行列車100と地上装置140の間の双方向情報伝送経路、180は地上装置上の運行予測情報提示装置、190は地上装置の運転整理入力装置、185は列車の運行予測情報、186は先行列車110に関する運行予測情報、187は続行列車100に関する運行予測情報、188は先行列車110と続行列車100の最接近時刻とその間隔、をそれぞれ示している。
【0069】
通常、列車は運行計画(ダイヤ)に従って運行している。続行列車100は、地上装置140上の運行予測情報提示装置180に示される、続行列車のダイヤ表示182に従って運行している。また、先行列車110は、先行列車のダイヤ表示181に従って運行している。
【0070】
ここで、先行列車110が、想定されている最高速度で走行できなくなったものとする。この場合の先行列車の走行パターン160は、続行列車の走行パターン150に比べ、速度方向の最高値が低い走行パターンとなる。先行列車110は、この先行列車の走行パターン160を、列車110の情報伝送装置116から経路105を介して続行する列車100、及び、経路115を介して地上装置140に、それぞれ伝達する。
【0071】
続行列車100は、情報伝送装置106を介して先行列車の走行パターン160を受信する。受信した走行パターン160と、列車間隔195を安全な距離保つために遵守が求められる速度制限170で定められる位置−速度(減速)パターン171から、続行列車100の走行パターン150を求める。
【0072】
走行パターン150は、時間−速度曲線151,位置−速度曲線152のように、途中までは、当初想定している最高速度まで達するように走行するものの、先行列車110の減速の影響を受けて、速度を落として進行する走行パターンを導出する。
【0073】
続行列車100は、導出した走行パターン150を、情報伝送装置106から経路145を介して地上装置140に伝達する。
【0074】
地上装置140は、受信した走行パターン情報150、及び、160から、先行列車110、及び、続行列車100の運行予測情報185を導出する。運行予測情報185においては、先行列車の運行予測186に対し、最接近時刻及び距離188まで、続行列車100が通常の走行をするものの、その後、先行列車110の減速の影響を受けながら次駅まで追従運行する予測を導出する。この運行予測情報185を、運行計画(ダイヤ)180に代えて表示したり、あるいは、運行計画(ダイヤ)に重畳表示したりすることにより、運行管理を実施する指令員に提示する。それに基づき、指令員は、運転整理入力装置190を介して、運行計画(ダイヤ)の変更,駅・列車等現場への連絡・指示等の必要な処置を実施することになる。
【0075】
以上により、本発明にかかる運行管理装置を実現することができる。
【0076】
なお、上記した方法は、指令員が運転整理入力装置190を用いて必要な操作を行う方法であるが、上記の方法で導出した先行列車および続行列車の運行予測情報と、予め規定したルールとに基づき、運行計画(ダイヤ)180の変更を、指令員の操作等を介さずに実施する形態でも良い。その場合、指令員の操作の軽減などを図ることができる。
【0077】
また、運行予測情報185の導出を各列車上で行い、各列車装置上,地上装置上でこの運行予測情報185を伝達し合って共有してもよい。その場合、地上装置上の構成を縮小できる。
【0078】
ここでは、運行予測情報提示装置180は、ダイヤ図形式で表示される実施例を示したが、他の形式(多角線形式,文字列形式)であっても良い。
【0079】
図2は、本発明にかかる運行管理装置の内、列車上の一実施形態を示す。
【0080】
図2において、200は当該続行列車100の走行パターン情報を生成する走行パターン生成装置、210は無線により情報を送受信する送受信装置、220は運行計画の情報を受信し記憶する運行計画受信記憶装置、230は列車の走行速度を規定する信号情報を受信し記憶する信号受信記憶装置、240は他列車の走行パターン情報を受信し記憶する他走行パターン受信記憶装置、250は軌道の情報を受信し記憶する軌道情報受信記憶装置、260は列車の物理的な特性の情報を記憶する物理特性情報記憶装置、270は進行に関わる、軌道の形状の条件,速度制限の条件,保安確保上の条件,運行営業上の条件,先行列車との走行上の支障条件、ならびに、対向列車との走行上の支障条件、などの運行制約情報受信記憶装置、280は列車の走行情報を受信し記憶する走行情報受信装置、290は列車の走行を制御する走行制御装置、205は列車間及び地上設備間で時刻を一致化する車上側の時刻一致化装置、をそれぞれ表している。また、経路221は送受信装置210と運行計画受信記憶装置220をつなぐ経路であり、経路231は送受信装置210と信号受信記憶装置230をつなぐ経路であり、経路241は送受信装置210と他走行パターン受信記憶装置240をつなぐ経路であり、経路271は送受信装置210と運行制約情報受信記憶装置270をつなぐ経路であり、経路222は運行計画受信記憶装置220と走行パターン生成装置200をつなぐ経路、経路252は軌道情報記憶装置250と走行パターン生成装置200をつなぐ経路、経路232は信号受信記憶装置230と走行パターン生成装置200をつなぐ経路、経路262は物理特性情報記憶装置260と走行パターン生成装置200をつなぐ経路、経路242は他走行パターン受信記憶装置240と走行パターン生成装置200をつなぐ経路、経路272は運行制約情報受信記憶装置270と走行パターン生成装置200をつなぐ経路、経路281は走行パターン生成装置200と走行情報受信装置280をつなぐ経路、経路291は走行パターン生成装置200と走行制御装置290をつなぐ経路、経路282は走行情報受信装置280と走行センサ(走行距離センサ,走行速度センサ,車輪の回転速度センサ,時刻センサ,走行位置センサなど)をつなぐ経路、経路292は走行制御装置290と動力部をつなぐ経路、経路201は送受信装置210と走行パターン生成装置200をつなぐ経路、経路202は送受信装置210と時刻一致化装置205をつなぐ経路、経路203は時刻一致化装置205と走行パターン生成装置200をつなぐ経路、をそれぞれ表している。
【0081】
走行パターン生成装置200は、例えば、コンピュータ,LSI回路,IC回路,トランジスタ回路,真空管回路,リレー回路等の情報を処理する装置などで構成され、各種情報の入力処理装置および前記情報を演算処理などする装置および出力処理装置を有し、走行パターン情報の生成を実施可能とする。
【0082】
時刻一致化装置205は、例えば、コンピュータ,LSI回路,IC回路,トランジスタ回路,真空管回路,リレー回路等の情報を処理する装置などで構成され、他列車あるいは地上システムからの時刻情報を入力する入力装置および前記情報を処理する装置および自列車の時刻情報の出力装置からなり、列車間及び地上システム間で時刻の一致化を実施可能とする。
【0083】
送受信装置210は、コンピュータ,LSI回路,IC回路,トランジスタ回路,真空管回路,リレー回路等の情報を処理する装置などで構成され、伝送装置106との間の情報の受信及び送信装置である。伝送装置106は、駅スポット伝送(近距離大容量通信),沿線漏洩同軸ケーブル(LCX),地上波無線通信,衛星無線通信等の情報を伝達する装置などで構成され、列車間及び地上システム間における情報の送受信を実施可能とする。
【0084】
運行計画受信記憶装置220,信号受信記憶装置230,他走行パターン受信記憶装置240,運行制約情報受信記憶装置270は、例えば、コンピュータ,LSI回路,IC回路,トランジスタ回路,真空管回路,リレー回路等の情報を処理する装置などで構成される情報入力装置と、磁気テープ,磁気ディスク,光磁気ディスク,ハードディスク,メモリなどで構成される情報記憶装置と、前記情報を処理する装置で構成される情報検索装置および情報出力装置とを有し、運行計画情報の受信及び記憶,信号情報の受信及び記憶,他列車走行パターン情報の受信記憶,運行上の制約情報の受信及び記憶、及び、それら情報の適宜検索および出力をそれぞれ実施可能とする。なお、これらは、プログラミング等で処理を分担し、また記憶領域を分けることで、同一の処理装置、及び、記憶装置で、実現してもよい。
【0085】
軌道情報記憶装置250,物理特性情報記憶装置260は、例えば、磁気テープ,磁気ディスク,光磁気ディスク,ハードディスク,メモリなどからなる情報記憶装置と、コンピュータ,LSI回路,IC回路,トランジスタ回路,真空管回路,リレー回路などからなる情報検索装置および情報出力装置とを有し、それぞれの情報を記憶,検索,出力を実施可能とする。なお、これらは、プログラミング等で処理を分担し、記憶領域を分けることで、同一の処理装置、及び、記憶装置で、実施してもよい。
【0086】
走行情報受信装置280は、例えば、コンピュータ,LSI回路,IC回路,トランジスタ回路,真空管回路,リレー回路等で構成される情報入力装置と、情報出力装置とを有し、列車の走行状態の情報を入手・伝達する機能を実施可能とする。
【0087】
走行制御装置290は、例えば、コンピュータ,LSI回路,IC回路,トランジスタ回路,真空管回路,リレー回路等で構成される情報入力装置と、情報出力装置とを有し、与えられた情報に基づき、列車走行の制御を実施可能とする。
【0088】
なお、上記装置類は、プログラミング等で処理を分担し、記憶領域を分けることで、同一の処理装置、及び、記憶装置で、実施してもよい。
【0089】
通常、各列車は、通信装置106,送受信装置210、及び、経路202を介して、時刻情報の送受信を行い、差分調整により列車間及び地上システム140との間で、時刻の一致化を周期的に実施している。例えば、地上システムの時刻に一致化を図ることにより、各列車,地上装置の時刻を一致化する。一致化された時刻情報は、経路203を介して走行パターン情報生成装置200に送られ、走行パターン生成の基準情報として使用される。
【0090】
今、当該列車100の先行列車が遅延し、その先行列車の走行パターン情報が、通信装置106を介して、送受信装置210に受信されたものとする。この時、受信された走行パターン情報は、経路241を介して、他走行パターン受信記憶装置240が受信し記憶する。
【0091】
通常、続行列車100では、走行パターン生成装置200において、最新の走行パターンの作成を実施している。走行パターン生成装置200は、他走行パターン受信記憶装置240から、経路242を介して、先行列車の走行パターン情報を受け取る。受け取った先行列車の走行パターン情報から、先行列車の走行と、走行パターン生成装置にて常時求めている自列車の走行パターン情報との比較を行い、自列車に関する走行パターン情報の変更の要否や変更内容を求め、自列車の走行パターン情報に反映する。その際、運行計画受信記憶装置220から経路222を介し運行計画上の制約条件情報,軌道情報記憶装置250から経路252を介し列車が進行する軌道上の制約条件情報,信号情報受信記憶装置230から経路232を介して関連する信号情報,物理特性情報記憶装置260から経路262を介して列車走行上の物理的特性の情報,運行制約情報受信記憶装置270から経路272を介して列車の運行上の制約条件,走行情報送受信装置280から経路281を介して自列車の走行情報を、それぞれ受け取り、自列車の走行パターン情報生成に反映させる。なお、運行計画受信記憶装置220は経路221を介し、信号受信記憶装置230は経路231を介し、運行制約情報受信記憶装置270は経路271を介し、送受信装置210から常に最新の情報を受け取り記憶している。
【0092】
また、走行パターン生成装置200で生成された最新の走行パターン情報は、経路201および送受信装置210および伝送装置106を介して、他列車及び地上装置に伝送されている。
【0093】
また、生成された走行パターン情報は、経路291を介して走行制御装置290に送信され、走行制御装置290は当該走行パターン情報に従い経路292を介して列車の走行を制御する。
【0094】
以上により、本発明にかかる運行管理装置の内および列車上の装置を実現することができる。
【0095】
なお、本実施例では、走行パターン生成装置200は、受け取った先行列車の走行パターン情報と、自列車の走行情報と、上記した運行計画上の制約条件情報,軌道上の制約条件情報,信号情報,物理特性情報,運行上の制約条件等の走行制限情報と、から自列車の走行パターン情報を生成することとしているが、先行列車が居ない場合など先行列車の走行状態を考慮する必要が無い場合は、自列車の走行情報と、走行制限情報と、から自列車の走行パターン情報を生成する。
【0096】
なお、本実施例では、軌道情報、及び、物理特性情報は、外部との情報交換を行わない構成になっているが、送受信装置210,通信装置106を用い、外部から最新の情報(降雨情報,風速情報、など)を受け取る構成をとってもよい。その場合、より現状の実態にあった情報を受け走行パターン情報作成に使用することができ、最終的な運行予測の精度向上を図ることもできる。
【0097】
また時刻の一致化は、公共放送の時報等、外部の情報を受信し、それに基づいて、時刻の一致化を図ってもよい。その場合、本システム以外との時系列的な一致化を図ることもできる。
【0098】
ここで、走行パターン情報の生成方法に関して説明する。走行パターン情報として、以下の2種類の情報を導出する。
(1)時刻あたりの列車速度
(2)列車位置あたりの列車速度
【0099】
これら2つの情報を相互に参照しながら導出していく。
【0100】
ある時刻t0における列車速度v0に対して、ある時刻t1(t0<t1)における列車速度v1は、列車の加速度をaとすると、
v1=v0+a×(t1−t0)
あるいは、列車の減速度をbとすると、
v1=v0+b×(t1−t0)
あるいは、列車の加減速度が無い場合には、
v1=v0
となる。
【0101】
また、時刻t0における列車位置をs0とすると、ある時刻t1(t0<t1)における列車位置s1は、
s1=s0+(v1−v0)*(t1−t0)/2
となる。
【0102】
ここで、加速度aおよび減速度bが、列車の持つ物理的な特性(動力,動輪と線路の摩擦係数など),列車の走行する軌道の状態(勾配など)、などによって変化するので、必要な情報を加味して加減速度を導出し、速度を求める必要がある。
【0103】
また、列車速度は、加減速度と経過時刻に対応するのに加えて、
(A)列車の性能上の最高速度(限界性能)
(B)列車の運行上の最高速度(列車を運行する上での適切な速度)
(C)信号保安による制限速度(列車を安全に走行する上での適切な速度)
に従うことが求められる。従って、列車速度の上限に対応した速度を求める必要がある。また、(B),(C)は、規定された位置における列車速度として規定される。例えば、位置sにおける列車速度をvあるいは、位置sにおいて停止(即ち速度ゼロ)等で規定される。具体的には、例えば、(B)については停止駅で停止すること、(C)については先行列車との衝突を避けるために必要な安全な距離を確保すること(即時減速を始めれば衝突停止せずに停止(速度ゼロ)が可能)などがある。
【0104】
これらの導出方法としては、ある地点から実施可能な減速度で減速した場合に、規定された位置で規定された速度が実施できる(2)であることを検証しながら、時刻あたりの速度(1)を決定していく。
【0105】
また、(B)に関しては、適切な駅到着時刻を実施する(遅れない)ために、必要な速度を確保することも必要とされる。これは、制約の範囲内で任意に決定することができ、列車運行上の種々の事情により、調整されることになる。
【0106】
以上から、上記(1),(2)の情報を求め、走行パターン情報として使用する。
【0107】
図3は、本発明にかかる運行管理装置の内、地上装置の一実施形態を示す。
【0108】
図3において、300は地上装置上における情報の送受信装置、310は運行計画情報を記憶および送信する運行計画記憶送信装置、320は運行計画情報の変更装置、330は走行パターン情報の受信記憶・運行予測情報変換装置、350は列車間及び地上装置間の時刻を一致化する装置、をそれぞれ表している。また、経路301は情報の送受信装置300と走行パターン情報受信記憶・運行予測情報変換装置330をつなぐ経路、経路321は運行計画記憶装置310と運行計画変更装置320をつなぐ経路、経路331は運行計画変更装置320と走行パターン情報受信記憶・運行予測情報変換装置330をつなぐ経路、経路311は運行計画記憶送信装置310と送受信装置300をつなぐ経路、経路312は運行計画記憶送信装置310と運行計画表示装置180をつなぐ経路、経路341は運行計画変更装置320と運行計画変更入力装置190をつなぐ経路、経路351は送受信装置300と時刻一致化装置350をつなぐ経路、経路352は時刻一致化装置350と運行計画変更装置320をつなぐ経路を、それぞれ表している。
【0109】
送受信装置300は、コンピュータ,LSI回路,IC回路,トランジスタ回路,真空管回路,リレー回路等の情報処理装置などで構成され、通信装置146との間の情報の受信及び送信を行う。通信装置146は、駅スポット伝送(近距離大容量通信),沿線漏洩同軸ケーブル(LCX),地上波無線通信,衛星無線通信等の情報を伝達する装置からなり、各列車との間における情報の送受信を実施可能とする。
【0110】
時刻一致化装置350は、例えば、コンピュータ,LSI回路,IC回路,トランジスタ回路,真空管回路,リレー回路等の情報処理装置などで構成され、列車上の時刻情報の入力装置と、演算処理装置及び情報処理装置と、自装置の時刻情報の出力装置とを有し、列車間及び地上システム間で時刻の一致化を実施可能とする。
【0111】
走行パターン受信記憶・運行予測変換装置330は、例えば、コンピュータ,LSI回路,IC回路,トランジスタ回路,真空管回路,リレー回路等の情報処理装置などからなる情報入力装置と、磁気テープ,磁気ディスク,光磁気ディスク,ハードディスク,メモリなどからなる情報記憶装置と、前記情報処理装置などからなる情報検索装置と、前記情報処理装置などからなる情報変換処理装置と、前記情報処理装置などからなる情報出力装置とを有し、各列車からの走行パターン情報の受信と記憶,運行予測情報への変換を可能とする。
【0112】
運行計画記憶送信装置310は、例えば、コンピュータ,LSI回路,IC回路,トランジスタ回路,真空管回路,リレー回路等の情報処理装置などからなる情報入力装置と、磁気テープ,磁気ディスク,光磁気ディスク,ハードディスク,メモリなどからなる情報記憶装置と、前記情報処理装置などからなる情報検索装置と、前記情報処理装置などからなる情報出力装置とを有し、列車の運行計画情報の記憶と各列車への送信を実施可能とする。
【0113】
運行計画の変更装置320は、例えば、コンピュータ,LSI回路,IC回路,トランジスタ回路,真空管回路,リレー回路等の情報処理装置などからなる各種情報の入力処理装置と、前記情報処理装置などからなる演算処理装置と、前記情報処理装置などからなる情報の出力処理装置とを有し、運行計画情報の変更を実施可能とする。
【0114】
運行計画の表示装置180は、例えば、CRTディスプレイ,液晶ディスプレイ,プラズマディスプレイ等のグラフィカルな情報表示が可能な装置からなり、列車の運行計画をダイヤ形式で表示することを実施可能とする。
【0115】
運行計画の変更入力装置190は、例えば、マウス,トラッグパッド,トラッグボール,タッチパネル,タブレッドなどの自由に座標入力を可能な装置、あるいは、キーボード等の入力装置からなり、運行計画の変更を指示可能とする。
【0116】
なお、上記装置類は、プログラミング等で処理を分担し、記憶領域を分けることで、同一の処理装置、及び、記憶装置で、実施してもよい。
【0117】
通常、地上装置140は、通信装置146,送受信装置300、及び、経路351を介して、車上装置等と時刻情報の送受信を行い、差分調整により、列車間と、地上システム140との間で、時刻の一致化を、周期的に実施している。例えば、地上システムの時刻に一致化を図ることにより、各列車,地上装置の時刻を一致化する。一致化された時刻情報は、経路352を介して運行計画変更装置320に送られ、運行計画変更の基準情報として使用される。
【0118】
また、運行計画記憶送信装置310は、通常、経路312を介して運行計画情報を運行計画表示装置180に送り、運行計画表示装置180は運行計画の表示(ダイヤ表示)を行う。
【0119】
今、走行中の列車から、伝送装置146を介し送受信装置300に、ある列車の走行パターン情報が伝達されたものとする。走行パターン情報は、経路301を介して走行パターン情報受信記憶・運行予測変換装置330に記憶される。走行パターン受信記憶・運行予測変換装置330は、記憶されている走行パターン情報から、運行計画表示装置180に表示が必要な(例えば、運行計画表示と同時刻帯,同駅範囲帯の)運行予測に対応する走行パターン情報を適時検索し、走行パターン情報から運行予測情報を抽出する。運行計画表示装置180は当該運行予測情報を受信して運行計画表示装置180上に表示する。
【0120】
当該運行計画表示装置180上に表示された運行予測表示に基づき、指令員が、運行計画の変更を検討する。運行計画を変更する場合、運行計画変更入力装置190より、運行計画変更の指示を入力する。入力された情報は、経路341を介して運行計画変更装置320に送られる。運行計画変更装置320は、伝達された運行計画の変更指示に従い運行計画を変更するために、経路321を介して運行計画情報の記憶送信装置310内の運行計画情報を変更する。運行計画記憶送信装置310は、運行計画情報の変更情報を、経路311,送受信装置300,通信装置146を介して、列車の車上装置に伝送する。
【0121】
以上により、本発明にかかる運行管理装置の内、地上装置を実現することができる。
【0122】
なお、本実施例では、走行パターン情報に基づく運行予測情報を指令員に提示の後、指令員の入力で運行計画を変更したが、走行パターン情報受信記憶・運行予測情報変換装置330から経路331を介して、運行予測情報を運行計画変更装置320に送り、当該運行予測情報に合致するよう運行計画情報を変更してもよい。その場合、指令員の指示を受けないまま自動的に予測情報に合致した運行計画に変更することが可能である。
【0123】
図4は、本発明にかかる運行管理装置における、状態遷移を示す。
【0124】
図4において、400は通常の状態、410は列車の運行が乱れた状態、420は列車の運行を予測している状態、430はダイヤを変更している状態を、それぞれ表している。また、401は通常の状態400の継続(繰り返し)、405は通常の状態400から列車運行の乱れ状態410への遷移、415は列車運行の乱れ410から列車の運行予測状態420への遷移、421は列車の運行予測状態420の継続(繰り返し)、425は列車の運行予測状態420からダイヤ変更状態430への遷移、431はダイヤ変更状態430の継続(繰り返し)、435はダイヤ変更状態430から通常状態への遷移、436はダイヤ変更状態430から列車運行の乱れ状態410への遷移、437はダイヤ変更状態430から列車の運行予測状態420への遷移を、それぞれ表している。
【0125】
通常、列車の運行は運行計画(ダイヤ)に従い、列車の運行を実施し続ける(遷移401)。ここで、事故や気象条件等で、列車が所定の走行を実施できない状態が発生すると、列車の運行が乱れた状態に移行する(遷移405)。列車の運行が乱れた場合の対処として、今後の列車の走行がどの様になるかが問題になるため、列車の走行を予測し、列車の運行予測を行う状態へ420移行する(遷移415)。列車の運行予測が行われると予測された結果を基に、ダイヤを変更し、今後の運行計画を再計画する状態430へ移行する(遷移425)。ダイヤの変更は、複数回に渡って繰り返される場合もある(遷移431)。ダイヤの変更により、正常な運行状態が回復され、通常の状態400に移行する(遷移435)場合もあるし、また、新たに別の運行乱れを生じ、運行が乱れた状態410に移行する(遷移436)場合もある。前者の場合は、通常の状態400を繰り返し(遷移401)、後者の場合は、再び、列車の運行予測を行う状態420へ移行(遷移415)し処理を繰り返す。また、運行計画の変更(ダイヤ変更状態430)の結果が、列車の走行に影響する場合もあり、その場合、運行の予測状態420へ移行(遷移437)し、列車の運行の再予測を行うことになる。
【0126】
以上により、本発明にかかる運行管理装置における状態遷移を実現できる。
【0127】
図5は、本発明にかかる運行管理装置において、列車が最速走行をした場合の運行予測の実施形態を示す。
【0128】
図5において、(a)は列車の走行を、経過時間軸−列車の走行速度軸、で表現したもので、500はその軌跡を表している。また、(b)は(a)と同一の列車走行を、列車の走行距離軸−列車の走行速度軸、で表現したもので、510はその軌跡を表している。また、(c)は、列車の運行を、経過時間(時刻)軸−列車の走行距離(駅)軸、で表現したもので、520は(a)及び(b)で列車が走行した場合の軌跡を表している。
【0129】
いま、当該列車は、時刻t1(例えば、A駅出発時刻)に出発し、走行可能な速度まで、実施可能な最高加速度で加速を続け、走行可能な速度v1に達するものとする。・・・(a)
【0130】
また、当該列車は、距離s1(例えば、出発駅Aの位置)から出発し、加速を続ける当該列車の速度と経過時間に対応して走行距離の増加量を徐々に(経過時間の二乗で)増しながら、ある距離まで走行した時点で速度v1に達する。・・・(b)
【0131】
これら当該列車の速度を決定する際、当該列車が、距離s2(例えば、到着駅Bの位置)で停止できる速度・位置であること、及び、当該速度が当該位置で許容されている速度であるかことを照査する。
【0132】
その後、実施可能な最大減速度を用いた場合に、距離s2で停止、即ち、速度ゼロを実施可能な距離まで、速度v1で走行を続ける。・・・(a),(b)
【0133】
その後、距離s2へ向けて最大減速度で減速を実施し、距離s2の地点で速度ゼロ(即ち停止)を実施し、そのときの時刻はt2となるものとする。
【0134】
以上により、距離s1−距離s2間を、最速走行した場合の走行パターン(a)(b)を導出する。
【0135】
これら走行パターンから、距離s1−距離s2間の、
・出発時刻(t1)
・到着時刻(t2)
・駅間の時刻あたりの位置
を表す曲線を求める。・・・(c)
【0136】
これにより、A駅−B駅間を最速走行した場合の、運行予測を導出することができる。通常、列車の運行計画(ダイヤ)は、実施可能な駅間の走行に対して余裕時分を含んでいるため、本例では、運行計画上の到着時刻tBよりも早くB駅に到達する運行予測を導くことになる。
【0137】
以上により、本発明にかかる運行管理装置における、列車が最速走行した場合の運行予測を実施できる。
【0138】
図6は、本発明にかかる運行管理装置において、列車が定刻到着を目的に走行した場合の運行予測の実施形態を示す。
【0139】
図6において、(a)は列車の走行を、時刻軸−列車の走行距離軸、で表現したもので、600はその軌跡を表している。また、(b)は(a)と同一の列車走行を、列車の走行距離軸−列車の走行速度軸、で表現したもので、610はその軌跡を表している。また、(c)は、列車の運行を経過時刻−列車の走行距離(駅)軸、で表現したもので、620は(a)及び(b)で列車が走行した場合の軌跡を表している。
【0140】
いま、当該列車は、時刻t1(例えば、A駅出発時刻)に出発し、実施可能な最高加速度で加速を続け、走行可能な速度v1よりも低い速度v2に達するものとする。・・・(a)
【0141】
また、当該列車は、距離s1(例えば、出発駅Aの位置)から出発し、加速を続ける当該列車の速度と経過時間に対応して走行距離の増加量を徐々に(経過時間の二乗で)増しながら、ある距離まで走行した時点で速度v2に達する。・・・(b)
【0142】
これら当該列車の速度を決定する際、当該列車が、距離s2(例えば、到着駅Bの位置)で停止できる速度・位置であること、及び、当該速度が当該位置で許容されている速度であるかことを照査する。加えて、ここでは、距離s2に達する時刻(時刻t2)が、列車の運行計画(ダイヤ)で規定されているB駅の到着時刻tBと一致させることができる速度・位置であることを照査する。
【0143】
その後、実施可能な最大減速度を用いた場合に、距離s2で停止、即ち、速度ゼロを実施可能な距離まで、速度v2で走行を続ける。・・・(a),(b)
【0144】
その後、距離s2へ向けて最大減速度で減速を実施し、距離s2で速度ゼロ(即ち停止)を実施し、そのときの時刻はt2となるものとする。
【0145】
以上により、距離s1−距離s2間を、最速走行した場合の走行パターン(a),(b)を導出する。
【0146】
これら走行パターンから、距離s1−距離s2間の、
・出発時刻(t1)
・到着時刻(t2)
・駅間の時刻あたりの位置
を表す曲線を求める。・・・(c)
【0147】
これにより、A駅−B駅間を最速走行した場合の、運行予測を導出することができる。加えて、ここでは、列車の運行計画(ダイヤ)上の到着時刻tBにB駅に到達する運行予測を導くことになる。
【0148】
以上により、本発明にかかる運行管理装置において、列車が定刻到着を目的に走行した場合の運行予測を実施できる。
【0149】
なお、本実施例では、最高速度を抑えることで、定刻到着を実施したが、加速度や減速度を変えること、加速度や減速度を細かく数種類使い分けること、加速減速を行わないで惰行すること、ならびに、それら種々組み合わせることなどにより、定刻到着を実施してもよい。その場合、計画時刻に沿った列車運行の実現に加え、列車車輌への負荷の最適化,消費エネルギーの最適化,乗り心地の最適化などを図ることができる。
【0150】
図7は、本発明にかかる運行管理装置において、2列車が追従走行し、続行列車が先行列車の影響を受けない場合の運行予測の実施形態を示す。
【0151】
図7において、(a)は列車の走行を、経過時間軸−列車の走行速度軸、で表現したもので、700は先行列車(列車1)についての軌跡、705は続行列車(列車2)についての軌跡を、それぞれ表している。
【0152】
また、(b)は列車の走行を、列車の走行距離軸−列車の走行速度軸、で表現したもので、710は先行列車(列車1)、及び、続行列車(列車2)についての軌跡を表している。即ち、先行列車(列車1)と続行列車(列車2)とは同一の軌跡であることを表している。
【0153】
(c)は列車の運行を、経過時間(時刻)軸−列車の走行距離(駅)軸、で表現したもので、720は先行列車(列車1)についての軌跡、730は続行列車(列車2)についての軌跡、740は列車間(列車1と列車2)の距離を、それぞれ表している。
【0154】
いま、先行列車は、時刻t1に出発し、実施可能な最高加速度で加速を続け、v1に達するものとする。・・・(a)
【0155】
また、当該先行列車は、距離s1から出発し、加速を続ける当該先行列車の速度と経過時間に対応して走行距離の増加量を徐々に(経過時間の二乗で)増しながら、ある距離まで走行した時点で速度v1に達する。・・・(b)
【0156】
同様にして、続行列車は、時刻t3に出発し、先行列車と同様に、v1に達する。・・・(a),(b)
【0157】
これら当該列車の速度を決定する際、列車間で相互に、位置−速度、及び、時刻−速度を照査し、列車間の距離が、列車走行の安全上の制約,列車運行の制約から適切な範囲内になるようにする。ここでは、それら制約の範囲を越える状態は発生しないものとする。
【0158】
また、先例と同じく、各列車が、距離s2で停止できる速度・位置であること、及び、当該速度が当該位置で許容されている速度であるかことを照査する。
【0159】
その後、実施可能な最大減速度を用いた場合に、距離s2で停止、即ち、速度ゼロを実施可能な距離まで、速度v1で走行を続ける。・・・(a),(b)
【0160】
その後、距離s2へ向けて最大減速度で減速を実施し、距離s2時刻t2(先行列車)、距離s2時刻t4(続行列車)、で速度ゼロを実施する。
【0161】
以上により、距離s1−距離s2間を、2列車が追従走行した場合の走行パターン(a),(b)を導出する。
【0162】
これら走行パターンから、距離s1−距離s2間の、
・先行列車の出発時刻(t1)
・先行列車の到着時刻(t2)
・先行列車の駅間における時刻あたりの位置
・続行列車の出発時刻(t3)
・続行列車の到着時刻(t4)
・続行列車の駅間における時刻あたりの位置
を表す曲線を求める。・・・(c)
【0163】
これにより、A駅−B駅間を2列車が追従走行した場合の、運行予測を導出することができる。
【0164】
以上により、本発明にかかる運行管理装置において、続行列車が先行列車の影響を受けない場合の運行予測を実施できる。
【0165】
図8は、本発明にかかる運行管理装置において、2列車が追従走行し、続行列車が先行列車の影響を受ける場合の走行パターンの実施形態を示す。
【0166】
図8において、(a)及び(c)は、列車の走行を、経過時間(時刻)軸−列車の走行速度軸、で表現したもので、800は先行列車(列車1)についての軌跡、820は続行列車(列車2)についての軌跡を、それぞれ表している。また、(b)及び(d)は、列車の走行を、列車の走行距離軸−列車の走行速度軸、で表現したもので、810は先行列車(列車1)についての軌跡、830は続行列車(列車2)についての軌跡を、それぞれ表している。また、(e)は、列車の運行を、経過時間(時刻)軸−列車の走行距離(駅)軸、で表現したもので、840は先行列車(列車1)についての軌跡、850は続行列車(列車2)についての軌跡、860は列車間(列車1と列車2)の距離を、それぞれ表している。
【0167】
いま、先行列車は、時刻t1に出発し、実施可能な最高加速度より低く加速を続け、v1′に達するものとする。・・・(a)
【0168】
また、当該先行列車は、距離s1から出発し、加速を続ける当該列車の速度と経過時間に対応して走行距離の増加量を徐々に(経過時間の二乗で)増しながら、ある距離まで走行した時点で速度v1′に達する。・・・(b)
【0169】
一方、続行列車は、時刻t3に出発し、実施可能な最高加速度で加速を続け、時刻t5で速度v1に達するものとする。・・・(c)
【0170】
また、当該続行列車は、距離s1から出発し、加速を続ける当該列車の速度と経過時間に対応して走行距離の増加量を徐々に(経過時間の二乗で)増しながら、距離s5まで走行した時点で速度v1に達する。・・・(d)
【0171】
これら当該列車の速度を決定する際、列車間で相互に、位置−速度、及び、時刻−速度を照査し、列車間の距離が、列車走行の安全上の制約,列車運行の制約から適切な範囲内になるようにする。ここでは、続行列車が距離s5時刻t5に達した時点で、両列車の加速度,速度の差異から、続行列車が先行列車に追いつく形で、列車走行の安全上の制約範囲を越える状態が発生したものとする。
【0172】
ここで、続行列車は、減速を開始し、時刻t6の時点で、速度v1′に達する。また、距離s6の位置で、速度v1′に達する。これにより、先行列車との列車走行の安全上の制約を満たし、以降、その制約範囲を維持する形で、v1′を維持し走行するものとする。
【0173】
また、先例と同じく、各列車が、距離s2(先行列車)で停止できる速度、及び、位置であること、及び、当該速度が当該位置で許容されている速度であるかことを照査する。
【0174】
その後、実施可能な最大減速度を用いた場合に、距離s2で停止、即ち、速度ゼロを実施可能な距離まで、速度v1′で走行を続ける。・・・(a),(b),(c),(d)
【0175】
その後、距離s2へ向けて最大減速度で減速を実施し、距離s2時刻t2′(先行列車),距離s2時刻t4′(続行列車)、で速度ゼロを実施する。
【0176】
以上により、距離s1−距離s2間を、2列車が追従走行した場合の走行パターン(a),(b),(c),(d)を導出する。
【0177】
これら走行パターンから、距離s1−距離s2間の、
・先行列車の出発時刻(t1)
・先行列車の到着時刻(t2′)
・先行列車の駅間における時刻あたりの位置
・続行列車の出発時刻(t3)
・続行列車の駅間における時刻あたりの位置
・続行列車の到着時刻(t4′)
を表す曲線を求める。・・・(e)
【0178】
これにより、A駅−B駅間を2列車が追従走行し、続行列車が先行列車に支障した場合の、運行予測を導出することができる。
【0179】
以上により、本発明にかかる運行管理装置において、続行列車が先行列車の影響を受ける場合の運行予測を実施できる。
【0180】
なお、本実施例では、続行列車が先行列車の影響を受けるまで、最速走行を実施しているが、先行列車の走行パターンを基に、予め、走行速度(加速度)を下げて走行することとし、走行パターンを導出してもよい。その場合、先行列車の影響による減速を回避することができ、列車への負荷の観点,省エネルギーの観点,乗り心地の観点等から、より適切な走行となる列車運行予測を導出することができる。
【0181】
図9は、本発明にかかる運行管理装置において、軌道の影響を加味した場合の運行予測の実施形態を示す。
【0182】
図9において、(a)は、A駅−B駅間の軌道の高低(標高)、及び、軌道の曲率を表現したもので、900は軌道の高低、901は起動の曲率を、それぞれ表している。また、(b)は、同A駅−B駅間における列車の走行を、経過時間(時刻)軸−列車の走行速度軸、で表現したもので、910は当該列車についての軌跡を表している。また、(c)は、同A駅−B駅間における列車の走行を、経過時間軸−列車の走行距離軸、で表現したもので、920は当該列車についての軌跡を表している。また、(d)は、列車の運行を、経過時間(時刻)軸−列車の走行距離(駅)軸、で表現したもので、930は当該列車についての軌跡を表している。
【0183】
いま、列車が走行する軌道は、
・A駅−距離s0まで平地
・距離s0−距離s1まで登り勾配
・距離s1−距離s2まで平地
・距離s2−距離s3まで降り勾配
・距離s3−距離s4まで平地で曲率130
・距離s4−B駅まで平地
となっているものとする。・・・(a)
【0184】
一方、列車が走行可能な最高速度は、
・登り勾配時はv1
・平地及び降り勾配時はv3
・曲率130区間はv2
となっているものとする。・・・(a),(b)
【0185】
以下(a),(b),(c)に基づいて説明する。
【0186】
いま、列車は時刻taにA駅を出発するものとする。列車は位置s0時刻t0まで加速した時点で、速度v1距離s0に達するものとする。ここから距離s1までは、登り勾配の最高速度v1で走行することになる。その後、時刻t1で距離s1に達するものとする。距離s1から距離s2までは平地により、最高速度v3で走行することになる。従って、位置s1から位置s1′にかけて、速度v1から速度v3へ加速する。その後、距離s3までは速度v1で走行することが許容され、距離s3以降は最高速度v2(v2<v3)となるため、距離s3の地点で速度v2とすることが可能となるように、逆算から、時刻t3の時点、距離s2′の地点から減速を行うことになる。その結果、距離s3の地点、時刻t4の時点で、速度v2を実現する。その後、距離s4の地点までは速度v2で走行する。その後、地点s4からは、最高速度v1(v1>v2)での走行が可能になるため、地点s4,時刻t5から、最高速度v1に向けて加速を行うことになる。なお、先例と同様に、停止地点sbにおいて停止(即ち速度ゼロ)を達成できる範囲の位置・速度であることを照査しながら実施する。その上で、時刻t6,位置s5,速度v1まで加速した時点で、位置sbでの停止条件から即減速に入り、時刻tbに位置sbにおいて停止(速度ゼロ)を実施することとなる。
【0187】
以上により、距離sa−距離sb間を、規定の軌道条件(a)の下で走行した場合の走行パターン(b),(c)を導出する。
【0188】
これら走行パターンから、距離sa−距離sb間の、
・出発時刻(ta)
・到着時刻(tb)
・駅間における時刻あたりの位置
を表す曲線を求める。・・・(d)
【0189】
これにより、A駅−B駅間を軌道の影響を受けて走行した場合の、運行予測を導出することができる。
【0190】
以上により、本発明にかかる運行管理装置において、軌道の影響を加味した場合の運行予測を実施できる。
【0191】
なお、本例で用いた勾配,曲率の他にも、軌道の条件として、カント(傾き),トンネル,降雨・風量などの気象条件など、走行に影響を与えるものを数多く備え、影響を勘案することで、より運行予測の精度を上げることが可能になる。
【0192】
図10は、本発明にかかる運行管理装置において、先行列車との退避関係における制約を加味した場合の運行予測の実施形態を示す。
【0193】
図10において、(a)は、列車の進行経路を図示したもので、1000は先行列車(列車1)、1010は続行列車(列車2)、1030は先行列車1000の進行経路、1040は続行列車1010の進行経路、1001は先行列車1000の進入線、1002は続行列車1010の進入線、1003は両列車の進出線、1020は先行列車1000が進入線1001へ進入完了するまでに続行列車1010が進行できる限界点を、それぞれ表している。
【0194】
また、(b)は、列車の走行を、経過時間軸−列車の走行速度軸、で表現したもので、1060は先行列車1000についての軌跡、1070は続行列車1010についての軌跡を、それぞれ表している。
【0195】
また、(c)は、列車の走行を、経過時間軸−列車の走行距離軸、で表現したもので、1065が先行列車1000についての軌跡を、1075続行列車1010についての軌跡を、それぞれ表している。
【0196】
また、(d)は、列車の運行を、経過時間(時刻)軸−列車の走行距離(駅)軸、で表現したもので、1080は先行列車(列車1)1000、1090は続行列車(列車2)1010についての軌跡を、それぞれ表している。
【0197】
いま、列車1000(先行列車:列車1)が先行し、経路1003から経路1001へ進行するものとする。また、列車1010(続行列車:列車2)が続行し、経路1003から経路1002へ直進するものとする。こうして、B駅において、列車1000(先行列車:列車1)を列車1010(続行列車:列車2)が追い越す(列車1000が退避する)ものとする。
【0198】
このとき、先行列車1000の経路1001への収容完了予定を、先行列車1000が続行列車1010に伝達する。一方、続行列車1010は、先行列車1000からの収容完了の伝達を受けるまでは、地点1020を越えないように走行するものとする。本例では、先行列車1000が速度v0で進行し、続行列車1010が速度v1で進行し、v0<v1により、続行列車1010が地点1020に達する時点で、先行列車1000の収容が完了していない(追いついてしまう)状態になるものとする。
【0199】
この状況下で、先行列車1000は、時刻ta1に距離sa(A駅)から加速し速度v0で進行する。そして、距離sb(B駅)で停車する(速度ゼロとなる)ように減速し、時刻tb1で距離sb(B駅)に到達し、停車する。また、先行列車1000は、経路1001への収容が完了する時刻を、到着時刻tb1(位置sb)より逆算し、時刻t2を導出し、続行列車1010へ伝達する。
【0200】
一方、続行列車1010は、時刻ta2に距離sa(A駅)から加速し速度v1で進行する。そして、地点1020(距離s1)に達する時刻t1で停止するように減速し、停車する。その後、「時刻t2で先行列車1000経路1001への収容が完了する」の情報から、時刻t2から再度加速し、速度v2に達した時点で、距離sbで停車するために減速を開始し、時刻tb2で距離sbに到達し、停車する。
【0201】
以上により、(a)のようにB駅で退避を実施した場合の走行パターン(b),(c)を導出する。
【0202】
これら走行パターンから、距離sa−距離sb間の、
・先行列車の出発時刻(ta1)
・続行列車の出発時刻(ta2)
・先行列車の到着時刻(tb1)
・続行列車の出発時刻(tb2)
・駅間における時刻あたりの位置
を表す曲線を求める。・・・(d)
【0203】
また、
・続行列車の支障時刻(t1)
・先行列車の収容完了時刻(t2)
も求まる。
【0204】
以上により、本発明にかかる運行管理装置において、先行列車との退避関係における制約を加味した場合の運行予測を実施できる。
【0205】
なお、本実施例では、続行列車が先行列車に支障するような速度での列車走行を求めたが、先行列車からの収容完了予測情報から、予め、進行の限界点1020への到達時刻を、収容完了予測時刻以降になるように、走行パターンを導出してもよい。その場合、続行列車は停止することなく進行でき、消費エネルギー,乗客サービスの観点から、より最適な列車運行予測の導出を実施できる。
【0206】
図11は、本発明にかかる運行管理装置において、対向列車との交差支障関係における制約を加味した場合の運行予測の実施形態を示す。
【0207】
図11において、(a)は、列車の進行経路を図示したもので、1100は進入列車(列車1)、1110は進出列車(列車2)、1140は進出列車1110の進行経路、1150は進入列車1100の進行経路、1101は進入列車1100の進入開始線、1104は進入列車1100の進入完了線、1103は進出列車1110の進出開始線、1102は進出列車1110の進出完了線、1120は列車1110が先に進出した場合に進出列車1110の進出完了前に進入列車1100が進行可能な限界点を、1130は列車1100が先に進入した場合に列車1100の進入完了前に進出列車1100が進行可能な限界点を、それぞれ表している。
【0208】
(b)は、列車の走行を、経過時間軸−列車の速度軸、で表現したもので、1170は進入列車1100についての軌跡、1180は進出列車1110についての軌跡を、それぞれ表している。なお、この場合、進出列車1110の進行が先、進入列車1100の進行が後とする。また(c)は、列車の走行を、経過時間軸−列車の走行距離軸、で表現したもので、1175が進入列車(列車1)1100についての軌跡を、1185は進出列車(列車2)1110についての軌跡を、それぞれ表しており、(b)と同様に、進出列車(列車2)1110の進行が先、進入列車(列車1)1100の進行が後とする。また、(d)は、列車の運行を、経過時間(時刻)軸−列車の走行距離(駅)軸、で表現したもので、1190は進入列車(列車1)1100についての軌跡を、1195は進出列車(列車2)1110についての軌跡を、それぞれ表している。
【0209】
いま、列車1110(先行列車:列車2)が先行し、経路1103から経路1102へ交差し進行ものとする。また、列車1100(続行列車:列車1)が続行し、経路1101から経路1104へ交差し進行するものとする。こうして、A駅において、列車1110(先行列車:列車2)と列車1100(続行列車:列車1)が交差入出するものとする。このとき、先行列車1110の経路1102への収容完了予定を、先行列車1110が続行列車1100に伝達する。一方、続行列車1100は、先行列車1110からの収容完了の伝達を受けるまでは、地点1120を越えないように走行するものとする。本例では、先行列車1110の出発が遅延し、続行列車1100が地点1120に達する時点で、先行列車1110の収容が完了していない状態になるものとする。
【0210】
この状況下で、先行列車1110は、時刻ta2に距離sa(A駅)から加速し速度v0で進行する。そして、距離sb(B駅)で停車する(速度ゼロとなる)ように減速し、時刻tb2で距離sb(B駅)に到達し、停車する。また、先行列車1110は、経路1102への収容が完了する時刻t2を、出発時刻ta2(位置sa),経過時間,速度,走行距離から導出し、続行列車1100へ伝達する。
【0211】
一方、続行列車1100は、時刻tb1に距離sb(B駅)から加速し速度v1で進行する。そして、地点1120(距離s1)に達する時刻t1で停止するように減速し、停車する。その後、「時刻t2で先行列車1110経路1102への収容が完了する」の情報から、時刻t2から再度加速し、速度v2に達した時点で、距離saで停車するために減速を開始し、時刻ta1で距離saに到達し、停車する。
【0212】
以上により、(a)のようにA駅で交差入出を実施した場合の走行パターン(b)(c)を導出する。
【0213】
これら走行パターンから、距離sa−距離sb間の、運行予測、
・先行列車の出発時刻(ta2)
・続行列車の出発時刻(tb1)
・先行列車の到着時刻(tb2)
・続行列車の出発時刻(ta1)
・駅間における時刻あたりの位置を表す曲線
を求める。・・・(d)
【0214】
また、
・続行列車の支障時刻(t1)
・先行列車の収容完了時刻(t2)
も求まる。
【0215】
以上により、本発明にかかる運行管理装置において、対抗列車との交差支障関係における制約を加味した場合の運行予測を実施できる。
【0216】
なお、本実施例では、先行列車の収容完了(支障解消)時刻と続行列車の走行速度の関係で、進入限界点において続行列車が停止する形となったが、続行列車の進入限界点への到達時刻を、先行列車から伝達される収容完了予測時刻以降となるように走行パターンを導出してもよい。その場合、続行列車が停止することなく、省エネルギー,乗客サービスの上から、より最適な運行管理を実施する運行予測の導出を実施することができる。
【0217】
また、本実施例では、予め規定した順序で、それぞれの列車が進行するものとしたが、相互に、走行パターンを照査し、当該支障点に達する時刻が早い順序で進行するものとして、走行パターンも併せて導出し、それらに基づいて、地上の運行管理装置で、複数種類の運行予測を求め、提示してもよい。それにより、適切な運転整理を実施するための情報を、より多く提示することができる。
【0218】
図12は、本発明にかかる運行管理装置において、路線上に臨時速度制限(以下、臨速)が設定されている場合の運行予測の実施形態を示す。
【0219】
図12において、(a)は、A駅−B駅間における臨速の位置と制限速度を表している。(b)は、当該列車の走行を、経過時間軸−列車の速度軸、で表現したもので、1210は当該列車の軌跡を表している。(c)は、当該列車の走行を、列車の走行距離軸−列車の走行速度軸、で表現したもので、1220は当該列車についての軌跡を表している。また、(d)は、列車の運行を、経過時間(時刻)軸−列車の走行距離(駅)軸、で表現したもので、1230は当該列車についての軌跡を、それぞれ表している。
【0220】
ここでは、
・A駅(sa)から距離s0まで臨速なし
・距離s0から距離s1まで臨速v2
・距離s1から距離s2まで臨速なし
・距離s2から距離s3まで臨速v2
・距離s3からB駅(距離sb)まで臨速なし
とする。・・・(a)
【0221】
いま、A駅(距離sa)を時刻taに出発する列車は、距離sa−距離s0間で最大許容される速度v1に向けて加速するものとする。その間、先例と同様にして、距離s0の位置で、速度v2以下を満足するよう減速が可能な速度・位置であるか、あるいは、当該位置で許容される速度かを照査する。そこで、距離s0から速度v2を実現するために、時刻taから時刻t0までの間に速度v1まで加速した後、即、時刻t0から減速を行うものとする。これにより、距離s0において時刻t1で、規定の速度v2を達成する。以降、距離s1まで時刻t2まで、速度v2で進行するものとする。距離s1から距離s2までは、最大許容されている速度v1に向けて加速するものとする、この間も同様に、距離s2の位置で、速度v2以下を満足するような減速が可能な速度・位置であるか、あるいは、当該位置で許容される速度かどうかを照査する。そこで、距離s2から速度v2を実現するために、時刻t2から時刻t3の間に速度v1まで加速した後、即、時刻t3から減速を行うものとする。これにより、距離s2において時刻t4で、規定の速度v2を達成する。その後、距離s3,時刻t5まで速度v2で進行するものとする。距離s3からB駅(距離sb)までは、最大許容されているv1に向けて加速するものとする。この間も同様に、距離sbの位置で、速度ゼロ(即ち停車)を満足するような減速が可能な速度・位置であるか、あるいは、当該位置で許容される速度かどうかを照査する。そこで、距離sbで速度ゼロを実現するために、時刻t5から時刻t6の間に速度v1まで加速した後、即、時刻t6から減速をおこなうことで、距離sb時刻tbにおいて速度ゼロ、即ちB駅に到達停車することになる。以上のようにして、路線上に臨時速度制限が設定されている場合の走行パターン(b),(c)を導出する。
【0222】
これら走行パターンから、運行予測、
・列車のA駅出発時刻(ta)
・列車のB駅到着時刻(tb)
・駅間における時刻あたりの位置の曲線
を求める。・・・(d)
【0223】
以上により、本発明にかかる運行管理装置において、臨時速度制限が設定されている場合の運行予測を実施できる。
【0224】
図13は、本発明にかかる運行管理装置の地上装置における運行計画表示装置180に表示される運行予測の表示の内、多角線による予測表示の実施形態を示す。
【0225】
図13において、1300は表示全体、1310及び1320は列車の運行計画、1330及び1340は列車の運行予測の多角線表示、1350及び1360は列車の運行予測の文字列表示を、それぞれ表している。また、横方向が時刻軸方向、縦方向が距離(駅)軸方向、破線が各駅を表している。
【0226】
走行予測情報から得られる、各駅間の時刻−位置の対応情報を、運行計画ダイヤ表示上に重畳表示することで、列車の運行予測を表示することができる。このように運行予測情報を連続的な多角線で表示する場合、運行計画ダイヤ表示で用いられている、各駅の出発時刻と次駅の到着時刻を直線で結ぶ表示に比べ、駅間での状況が表現でき、列車の運行予測をより細かく把握することができる。
【0227】
以上により、本発明にかかる運行管理装置において、多角線による運行予測表示を実施できる。
【0228】
なお、本実施例では、駅間すべてにおいて連続的な多角線で表現したが、運行管理上の特異点(例えば、交差支障,退避支障、などがある点)だけを結んだ離散的な多角線で表現してもよい。その場合、運行管理上考慮すべき点に対する予測をより明確に表現することができる。
【0229】
図13は、多角線による予測表示の実施形態を示したが、図14は、本発明にかかる運行管理装置の地上装置における運行計画表示装置180に表示される運行予測の表示の内、直線による予測表示の実施形態を示す。
【0230】
図14において、横方向が時刻軸方向、縦方向が距離(駅)軸方向、破線が各駅を表している。また、1430及び1440は列車の運行予測の直線表示を、それぞれ表している。
【0231】
走行予測情報から得られる、各駅の出発時刻と次駅の到着時刻の、各駅を表す線上の対応する点を直線で結び、表示することで、列車の運行予測を表示することができる。この場合、通常、運行管理業務で用いられているダイヤ表示と同様であり、親和性が高い。
【0232】
以上により、本発明にかかる運行管理装置において、直線による運行予測表示を実施できる。
【0233】
図15は、本発明にかかる、運行管理装置の処理フローを示す。
【0234】
図15においては、開始1500から始まる車上側の処理フローと開始1505からなる地上側の処理フローからなる。
【0235】
開始1500から始まる車上側の処理は、経路1501を進んで各種情報(列車の運行計画情報,列車の運行実績情報,他列車の走行パターン情報,信号情報,列車走行に影響を与える軌道上の条件情報,列車走行に関する物理特性情報,列車運行上の制約情報)を受け取る処理1510実施する。その後、経路1511を進んで列車の運行計画情報を参照する処理1520を実施する。その後、経路1521を進んで列車の運行実績情報を参照する処理1530を実施する。その後、経路1531を進んで各種情報の参照する処理1540を実施する。その後、経路1541を進んで走行パターンを作成する処理1550を実施する。その後、経路1551を進んで運行実績情報と走行パターン情報を地上装置に向けて送出処理1560を実施する。送出された情報は経路1580を進んで、地上装置側の受領処理に至る。その後、経路1561を進んで走行パターンに従って運行する処理1570を実施する。その後、経路1571を進んで各種情報を受け取る処理1510に進み、上記の処理を繰り返す。
【0236】
一方、開始1505から始まる地上側の処理は、経路1506を進んで各種情報を受け取る処理1515を実施する。その後、経路1516を進んで列車の運行計画を描画する処理1525を実施する。その後、経路1526を進んで列車の運行実績情報と列車の走行パターン情報を受け取る処理1535を実施する。その後、経路1536を進んで列車の運行実績情報から描画情報を作成する処理1545を実施する。その後、経路1546を進んで列車の運行予測情報から描画情報を作成する処理1555を実施する。その後、経路1556を進み列車の運行計画・列車の運行実績・列車の運行予測を描画する処理1565を実施する。
【0237】
その後、経路1567を進み、自動変更モードの真偽を判断する処理1575へ進み、運行計画の自動変更を実施か否かの判断を行う。自動変更モードが偽(F)の場合、経路1576を進み、各種情報を受け取る処理1515へ進み、処理を繰り返す。一方、自動変更モードが真(T)の場合、経路1577を進み、列車の運行計画を変更する処理と変更後の運行計画の表示する処理1585を実施し、経路1586を進み各種情報を受け取る処理1515へ進み、処理を繰り返す。
【0238】
なお、自動変更モードは、各種情報受け取る処理1515において、受け取る他に、運行計画・運行実績・運行予測の描画処理1565に際して、操作者からの入力待ちにより、獲得して良い。その場合、操作者との間で、対話的に運行計画の変更を実施することができる。
【0239】
以上により、本発明にかかる、運行管理装置の処理を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0240】
本発明は、列車の運行管理において、より正確な運行予測が求められる場面において有用である。また、列車に限らず、運行計画に基づいて、その移動を管理するシステムにおいて、その移動予測を求める場面において有用である。
【符号の説明】
【0241】
100 続行列車
105 列車間の通信経路
106,116,146 通信装置
110 先行列車
115 先行列車−地上間の通信経路
120 駅1
140 地上装置
145 続行列車−地上間の通信経路
150 先行列車の走行パターン(151 時間−速度曲線,152 位置−速度曲線)
160 続行列車の走行パターン(161 時間−速度曲線,162 位置−速度曲線)
170 続行列車−列車2間の速度制限(171 速度制限を表す位置−速度曲線)
180 運行予測情報提示装置(181 先行列車のダイヤ表示,182 続行列車のダイヤ表示)
185 続行列車及び先行列車の運行予測情報(186 先行列車の時刻−位置曲線,187 続行列車の時刻−位置曲線)
190 運転整理入力装置
195 続行列車−先行列車間の距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の運行を予測する運行管理方法において、
予測対象の列車に搭載された車上装置で、
当該列車について現時刻以後に走行可能な列車の走行パターンを生成し、
通信装置を用いて、当該走行パターン情報を地上に設置された地上装置へ送信し、
前記地上装置で、
前記走行パターン情報を受信して、当該走行パターン情報に基づいて現時刻以後の列車の運行を予測することを特徴とする
運行管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の運行管理方法において、
前記地上装置で、
運行管理対象の複数列車から複数の前記走行パターン情報を受信し、
前記複数の走行パターン情報に基づいて現時刻以後の前記複数列車の運行を予測し、
当該運行の予測により生成された予測ダイヤに基づいて前記複数列車の運行管理を実施することを特徴とする
運行管理方法。
【請求項3】
列車の運行を予測する運行管理方法において、
予測対象の列車に搭載された車上装置で、
当該列車について現時刻以後に走行可能な列車の走行パターンを生成し、
当該走行パターン情報に基づいて現時刻以後の列車の運行を予測し、
その上で、予測ダイヤを作成し、
通信装置を用いて、前記列車の予測ダイヤを
地上に設置された地上装置へ送信することを特徴とする
運行管理方法。
【請求項4】
列車の運行を予測する方法において、
予測対象の列車に搭載された車上装置で、
走行センサにより検出される前記列車の現在の走行状況と、軌道の条件,信号の条件,保安条件,進行上の支障の条件,営業上の条件,先行列車の走行条件,対向列車の走行条件、の少なくとも1つの条件に基づく制約と、から生成される時刻―列車の走行速度、及び、列車在線位置―列車の走行速度、からなる現時刻以降の列車の走行パターン情報を生成し、
前記走行パターン情報を、通信方法を用いて地上装置へ送信し、
前記地上装置で、
前記走行パターン情報を地上装置に搭載された通信方法を用いて受信し、
前記走行パターン情報に基づき現時刻以後の列車の運行を予測し、当該予測結果の予測ダイヤを作成することで運行管理を実施することを特徴とする
運行管理方法。
【請求項5】
車上装置及び地上装置を備え、列車の運行を管理する運行管理装置において、
前記車上装置は、
時刻一致化装置,運行計画情報受信記憶装置,走行情報受信記憶装置,走行制御装置,他列車の走行パターン情報受信記憶装置,軌道情報受信記憶装置,信号情報受信記憶装置,物理特性情報記憶装置,運行営業制約情報記憶装置の少なくとも1つと、
現時刻以後に走行可能な列車の走行パターンを生成する走行パターン情報生成装置と、
前記地上装置へ前記走行パターン情報を送信する送信装置と、を備え、
前記地上装置は、
前記走行パターン情報を受信する受信装置と、
運行計画情報変更装置と、運行計画情報記憶装置と、運行計画表示装置と、運行計画変更入力装置と、時刻一致化装置と、
前記走行パターン情報に基づいて現時刻以後の列車の運行予測情報を求める走行パターン情報受信記憶・運行予測情報変換装置と、
前記運行予測情報を表示する運行計画表示装置と、を備えることを特徴とする運行管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の運行管理装置において、
前記運行計画表示装置の表示はダイヤ図形式,多角線形式,文字列形式のうち少なくとも1つの形式で表現することを特徴とする運行管理装置。
【請求項7】
列車に搭載される車上装置と、
地上に設置されて複数の列車の運行を管理する地上装置とを備え、
前記車上装置は、
前記地上装置へ情報を送信可能な車上情報送信装置と、
自列車の走行制限情報を保存する走行制限情報保存装置と、
自列車の走行状態情報を検出する走行センサと、
前記走行制限情報および前記走行状態情報から自列車の現時刻以降の走行情報を生成する走行情報生成装置と、を備え、
前記地上装置は、
前記車上情報送信装置から前記走行情報を受信する地上情報受信装置と、
前記走行情報から列車の運行計画ダイヤを生成する運行計画ダイヤ生成装置と、
を備えることを特徴とする運行管理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の運行管理装置において、
前記車上情報送受信装置は、先行列車の走行予測情報を先行列車から受信し、
前記走行予測情報生成装置は、前記先行列車の走行予測情報と前記走行制限情報と前記走行状態情報とから走行予測情報を生成することを特徴とする運行管理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の運行管理装置において、
前記地上装置は、
前記運行管理装置が管理する複数列車の前記車上装置から前記走行情報をそれぞれ受信する前記地上情報受信装置と、
前記複数の走行情報から複数列車の運行計画ダイヤを生成する前記運行計画ダイヤ生成装置と、を備えることを特徴とする運行管理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の運行管理装置において、
前記地上装置は、前記運行計画ダイヤを変更する情報を入力可能な運行計画変更入力装置を備えることを特徴とする運行管理装置。
【請求項11】
請求項7に記載の運行管理装置において、
前記走行制限情報とは、自列車の加速度または速度の制限であることを特徴とする運行管理装置。
【請求項12】
請求項7に記載の運行管理装置において、
前記走行状態情報は、車輪の回転速度の情報であることを特徴とする運行管理装置。
【請求項13】
地上に設置されて、複数列車の運行を管理する地上装置へ情報の送受信を行う情報送受信装置と、
自列車の走行制限情報を保存する走行制限情報保存装置と、
自列車の走行状態情報を検出する走行センサと、
前記走行制限情報および前記走行状態情報から自列車の現時刻以降の走行情報を生成する走行情報生成装置と、を備え、
生成した前記走行情報を前記情報送受信装置から前記地上装置へ送信することを特徴とする走行制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載の走行制御装置において、
前記情報送受信装置は、先行列車の走行情報を先行列車から受信し、
前記走行情報生成装置は、前記先行列車の走行情報と前記走行制限情報と前記走行状態情報とから自列車の走行情報を生成することを特徴とする走行制御装置。
【請求項15】
請求項13に記載の走行制御装置において、
前記走行制限情報とは、自列車の加速度または速度の制限であることを特徴とする走行制御装置。
【請求項16】
請求項13に記載の運行管理車上装置において、
前記走行状態情報は、車輪の回転速度の情報であることを特徴とする走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−31697(P2011−31697A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178564(P2009−178564)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】