説明

運行管理装置

【課題】デマンドバスの運行管理システムにおいて、通信エラーなどに起因する立ち寄り
要求の表示更新漏れを、未然に防ぐ。
【解決手段】デマンドバス2が、デマンドルート入口手前の入口区間A1〜A3に進入し
たときに、運行管理センタ3から立ち寄り情報の再送信を行うとともに、デマンドバス2
がデマンドルート出口奥の出口区間B1〜B3に進入したときには、表示パネルの表示を
強制的に消去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定められた経路を運行する路線バスのうち、利用者からの要求に応じて所定の経路に沿って迂回運行を行う、所謂デマンドバスの運行システムに適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
上記のデマンドバスの技術の例としては、たとえば下に開示するようなものが、知られている。かかる例においては、利用者からのバス呼び出し要求(請求項5)や、バス立ち寄り情報を解除するリセット要求(請求項3)を、通信回線経由で出す技術が、開示されている。これらバス呼び出し要求やリセット要求に応答して、バスの運転手に認知可能なバス立ち寄り指示情報が、情報提示システムによって提示される(請求項5)。
【0003】
ここで、バス立ち寄り情報が生成されると、この立ち寄り情報は表示器23上に表示され、リセット装置30からのリセット信号を受けるまで表示される(0043段落)。また、路側表示板20がリセットされ立ち寄り指示情報が表示されていない場合は、立ち寄りルートをカットしそのまま目的地に向かうショートカット運行が行われる(0045段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−42299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の従来技術では、たとえば図6に開示されているように、通信回線として無線回線を採用している。無線回線は設置に際して回線敷設のための大掛かりな土木工事も要らず、またバスとの間で路車間通信も可能であるなど、大きな利点を備える一方で、種々の原因による通信エラーの可能性も、完全には否定しきれない。
【0006】
この通信エラーが上述のシステムにおいて発生した場合には、立ち寄り要求が正しく表示されなかったり、逆に立ち寄り要求のリセット動作が正しく行われなかったりすることになる。ここでいうリセットとは、デマンドバス側に記憶されたバス立ち寄り情報のリセット、すなわち消去を意味する。従って、通信エラーが起こると、最新のバス立ち寄り情報がデマンドバスに正しく提供されなかったり、あるいは古いバス立ち寄り情報が適切な時点で消去されなかったりして、デマンドバスの運転手が誤ったバス立ち寄り情報を認識してしまう危険性がある。その結果、バスが必要の無い地点へ立ち寄ったり、逆に必要なルートを通らなかったりする事態を招きかねない。
【0007】
このような通信エラーへの対策として、通信回線において通信エラーが検出された場合には、回線に接続された通信機器において、同じデータを再送信する、いわゆるリトライを行うことも、一般的に知られた技術である。しかし、このリトライにより、再送信分だけデータ量が増加することは、避けられない。このデータ量の増加は、特にデマンドバスの台数が多い場合には、無視できない問題となる。さらにデマンドバスが多い地域に限って通信エラーの原因となる電気機器などが多い、ということも、現実に起こりがちである。
【0008】
そこで本発明では、上述の技術的課題に鑑み、たとえ通信エラーが起こっても、立ち寄り要求の表示やリセット動作に事実上悪影響を与えず、デマンドバスが要求通りに正しく運行されるような、デマンドバスの利点を損なわず信頼性の高いシステムを提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するために、所定の基本経路に沿って運行される移動体が、運行管理装置から送信される迂回指示に応じて基本経路から外れた迂回経路に沿って運行する移動体運行管理システムに用いられる運行管理装置であって、運行管理装置は、移動体の位置情報を入手する手段と、迂回経路毎に設定された入口区間の情報と利用者から受信した迂回要求とを記憶する手段と、迂回要求に基づき移動体に向けて対応する迂回経路についての迂回要求があったことを示す迂回要求情報を送信し、移動体が入口区間に進入すると記憶された迂回要求に基づき入口区間に対応する迂回経路についての迂回要求の有無を示す迂回要否情報を移動体に送信する管理手段と、を備えることを特徴とする運行管理装置を提供したものである。
【発明の効果】
【0010】
上記の手段を採用することにより、本発明においては、通信が正しく行われなくても、立ち寄り情報が誤った内容で表示される事態を、最大限回避できる。従って、デマンドバスの誤運行のリスクを、最低限に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のシステムの構成概要を示す説明図である。
【図2】デマンドバスの運行ルート概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の最良と思われる実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に、本発明を適用したシステムの概要を示す。説明の便宜上、システムの構造のうち、本発明の実施形態の説明に必要な部分だけを示す。
【0014】
図1において、1は静止衛星、2はデマンドバス、3は運行管理センタである。静止衛星1は、全地球測位システム、通称GPSシステムを構成するものであり、市販の自動車用ナビゲーションシステムなどに利用される衛星そのものである。デマンドバス2は、構造上は通常の路線バスとほぼ同じであるが、図に示すGPSナビゲーションシステム21、コントローラ22、トランシーバ23、ならびに表示パネル24を、それぞれ搭載している。GPSナビゲーションシステム21は、静止衛星1からの電波を受信してデマンドバス2の現在位置を測位し、結果を緯度ならびに経度の数値として出力する機能を備える。コントローラ22は、GPSナビゲーションシステム21、トランシーバ23、ならびに表示パネル24の動作を、それぞれ制御する。またコントローラ22は記憶機能を備えており、後述するデマンド管理信号を一時的に記憶できる。トランシーバ23は、コントローラ22の制御の下で、無線通信によって後述する運行管理センタ3に向けて送信する一方、運行管理センタ3からデマンド情報管理信号を受信する。表示パネル24は、コントローラ22からデマンド情報管理信号を受け取り、デマンドルートへの立ち寄り要求を示す図示しない表示灯を、点灯もしくは消灯させる。
【0015】
一方、運行管理センタ3には、トランシーバ31、コントローラ32、ならびに運行管
理データベース33が、それぞれ設置されている。トランシーバ31は、デマンドバス2に搭載されたトランシーバ23との間で交信する機能を持ち、デマンドバス2の現在位置を示す情報やデマンドルートへの立ち寄り要求を示す情報を送受信する。コントローラ32は、トランシーバ31と運行管理データベース33を制御する機能を持ち、トランシーバ31から受け取ったデマンドバス2の現在位置の情報に基づいて、運行管理データベース33に対して検索指示を出すほか、運行管理データベース33の検索結果に基づいてデマンド情報管理信号を生成し、このデマンド情報管理信号をトランシーバ31へ出力する。運行管理データベース33は、デマンドバス2が運行されるルートに関する情報を備えており、コントローラ32からデマンドバス2の現在位置情報を受け取って、この現在位置に応じたデマンド情報管理信号を検索結果としてコントローラ32に対して回答する。
【0016】
次に、上記のごとく構成されたシステムの動作について説明する。図2に、本発明を採用したデマンドバスの運行経路の概念を示す。図2において、4は基本ルート、41は第1デマンドルート、42は第2デマンドルートである。また、A1ならびにA2は入口区間、B1ならびにB2は出口区間である。その他の参照符号については、図1の参照符号と同じ構成要件を示している。
【0017】
基本ルート4は、環状のルートを形成している。この基本ルート4に沿ってデマンドバス2が運行される。第1デマンドルート41ならびに第2デマンドルート42は、それぞれ基本ルート4の一部に対して迂回経路を形成している。それぞれ、これらデマンドルートに沿ってデマンドバス2が基本ルート4から外れて迂回運行し、再び基本ルート4上に戻れるようになっている。
【0018】
また、入口区間A1ならびにA2は、それぞれ第1デマンドルート41ならびに第2デマンドルート42が基本ルート4から分岐する点よりやや手前に設定されている。また出口区間B1ならびにB2は、それぞれ第1デマンドルート41ならびに第2デマンドルート42が基本ルート4に合流する点よりやや奥に設定されている。これら入口区間および出口区間が基本ルート上のどの位置に該当するかを示す情報が、図1に示した運行管理データベース33に格納されており、これらの情報は、デマンドバス2の現在位置情報に基づいて検索可能である。
【0019】
まず、デマンドバス2が基本ルート4上の入口区間A1より手前を走行しているときに、利用者からデマンドルートへの立ち寄り要求が有った場合を、想定する。利用者は、図示しない通信端末ならびに通信回線などを用いて、運行管理センタ3に対して、所望のデマンドルートを特定して、デマンドルートへの立ち寄り要求を伝えるものとする。この部分については、周知の技術を流用可能であるため、詳細な説明を省略する。
【0020】
このとき、コントローラ32は、立ち寄り要求を運行経路データベース33に記憶させる。本例では、図2に示すデマンドルート42に立ち寄るべき要求が有ったとする。運行経路データベースには、デマンドルート42に関して立ち寄り要求が有った旨が記憶される。これと並行してコントローラ32は、トランシーバ31とトランシーバ23との間で交信を開始させ、トランシーバ31を介して、デマンドルート42に関して立ち寄り要求が有った旨の信号をデマンドバス2に向けて送信する。
【0021】
デマンドバス2側では、トランシーバ22が、デマンドルート42に関して立ち寄り要求が有った旨の信号を受信する。この信号はコントローラ22に伝達され、コントローラ22内に一旦記憶される。この記憶内容は、運行管理センタ3から立ち寄り要求に関する信号を受信したときには、無条件にすべて消去され、代わって受信した信号に基づいて新しい内容が記憶される。
【0022】
またコントローラ22では、記憶された信号を読み出し、表示パネル24に設けられた表示灯を点灯させる。この表示灯は、少なくとも基本ルート4上のデマンドルートの数と同じ個数(本例では3個)設けられており、個々の表示灯は、それぞれデマンドルート41〜43と1対1に対応している。表示灯の点灯は、当該表示灯に対応したデマンドルートへの立ち寄り要求が有ることを意味する。
【0023】
一方、デマンドバス2に搭載されたGPSナビゲーションシステム21は、静止衛星1から送られる電波を常時受信して、デマンドバス2の位置を測定している。この位置は、デマンドバス2の緯度ならびに経度の数値として、コントローラ22へ送られる。次いでコントローラ22は、トランシーバ23とトランシーバ31との間で交信を開始させ、トランシーバ23を介して、デマンドバス2の位置を示す信号を運行管理センタ3に向けて送信する。
【0024】
運行管理センタ3側では、トランシーバ31がデマンドバス2の位置を示す信号を受信し、受信した信号をコントローラ32に伝える。コントローラ32は、受信した信号をもとに運行経路データベース33を検索して、デマンドバス2が基本ルート4上またはデマンドルート41〜43上のどの位置に居るかを、確認する。
【0025】
やがて、デマンドバス2が基本ルート4上を走行して、入口区間A1に進入する。この入口区間A1は、図からも読み取れるように、基本ルート4上の、デマンドルート41が基本ルート4から分岐する点よりも、やや手前に在る。但し、この入口区間は、実際の道路上に設置されるものではなく、入口区間A1に該当する緯度ならびに経度が、前述の運行管理データベース上に、デマンドバス2の現在位置と照合可能な形態で記憶されているものである。
【0026】
ここでも、GPSナビゲーションシステム21が上記と同様にデマンドバス2の現在位置を測定して、トランシーバ23が現在位置を運行管理センタ3に送信する。運行管理センタ3では、トランシーバ31がデマンドバス2の位置を示す信号を受信し、受信した信号をコントローラ32に伝える。コントローラ32は、受信した信号をもとに運行経路データベース33を検索して、デマンドバス2が基本ルート4上の入口区間A1に居ることを検出する。
【0027】
このようにして、デマンドバス2が入口区間A1に進入したことを検出した時点で、コントローラ32は、内部に記憶した立ち寄り要求の情報のうちから、デマンドルート41に関する立ち寄り要求の情報を読み出し、読み出した情報をトランシーバ31を介してデマンドバス2に向けて送信する。ここで、読み出した情報が既にデマンドバス2に宛てて送信されたものか否かには関係なく、コントローラ32に記憶されたデマンドルート41に関する立ち寄り要求の情報が、送信される。
【0028】
デマンドバス2側では、この立ち寄り要求の情報をトランシーバ23が受信して、コントローラ22に伝える。コントローラ22では、受信した情報を記憶する。コントローラ22が、過去に受信した立ち寄り情報の記憶を保持している場合にも、ここで改めて受信した情報に、記憶内容を全て置き換える。本例では、デマンドルート41には立ち寄らないという内容である。これと並行してコントローラ22は、表示パネル24において、デマンドルート41に対応する表示灯を消灯させる。このとき、デマンドルート42ならびに43に対応する表示灯に関しては、立ち寄り要求情報が更新されないため、それぞれ点灯ならびに消灯したままである。この表示灯を視認することで、デマンドバス2の運転手は、デマンドルート41には立ち寄る必要が無いことを認識し、デマンドルート41を通らず、デマンドバス2に基本ルート4上を引き続き走行させる。
【0029】
その後、デマンドバス2は、出口区間B1に進入する。ここで、上述の入口区間A1のときと同様にして、デマンドバス2が自車の位置を運行管理センタ3に伝え、運行管理センタ3では、コントローラ32が運行経路データベース33を検索して、デマンドバス2が出口区間B1に進入したことを検出する。
【0030】
このときコントローラ32は、運行経路データベース33に利用者からの立ち寄り要求が記憶されているか否かに拘らず、デマンドルート41に関して立ち寄り要求が無いという内容の信号を、トランシーバ31を介してデマンドバス2に向けて送信する。ただし、このときには、コントローラ32は運行経路データベース33に記憶された立ち寄り要求の内容については、変更を加えない。
【0031】
デマンドバス2側では、トランシーバ31から送信された信号をトランシーバ23によって受信し、これをコントローラ22に伝える。コントローラ22では、受信した信号に基づいて、既に記憶していた立ち寄り要求の情報を、デマンドルート41に関しては立ち寄り要求が無いという内容に更新する。これと並行してコントローラ22は,更新された記憶内容に基づいて、表示パネル24において、デマンドルート41に対応する表示灯を消灯させる。
【0032】
その後、デマンドバス2がさらに基本ルート4上を走行して、入口区間A2に進入する。この入口区間A2は、基本ルート4上の、デマンドルート42が基本ルート4から分岐する点よりも、やや手前に在る。その他に関しては、上述の入口区間A1に関して説明した内容と同様である。
【0033】
この状況で、GPSナビゲーションシステム21が上記と同様にデマンドバス2の現在位置を測定して、トランシーバ23が現在位置を運行管理センタ3に送信する。運行管理センタ3では、トランシーバ31がデマンドバス2の位置を示す信号を受信し、受信した信号をコントローラ32に伝える。コントローラ32は、受信した信号をもとに運行経路データベース33を検索して、デマンドバス2が基本ルート4上の入口区間A2に居ることを検出する。
【0034】
このようにして、デマンドバス2が入口区間A2に進入したことを検出した時点で、コントローラ32は、内部に記憶した立ち寄り要求の情報のうち、デマンドルート42に関する立ち寄り要求の情報を読み出し、読み出した情報をトランシーバ31を介してデマンドバス2に向けて送信する。ここで、読み出した情報が既にデマンドバス2に宛てて送信されたものか否かには関係なく、コントローラ32に記憶された立ち寄り要求の情報が、すべて送信される。ここでは、コントローラ32にはデマンドルート42への立ち寄り要求の情報が引き続き記憶されているため、この立ち寄り要求は、そのままデマンドバス2へ向けて送信される。
【0035】
デマンドバス2側では、この立ち寄り要求の情報をトランシーバ23が受信して、コントローラ22に伝える。コントローラ22では、ここで改めて受信した情報に、記憶内容を置き換える。本例では、デマンドルート42に立ち寄るという内容である。これと並行してコントローラ22は、表示パネル24において、デマンドルート42に対応する表示灯を点灯させる。
【0036】
この表示灯を視認することで、デマンドバス2の運転手は、デマンドルート42に立ち寄る必要が有ることを認識し、基本ルート4から外れてデマンドルート42に進入する。
【0037】
その後、デマンドバス2がデマンドルート42上を走行中に、運行管理センタ3に利用者からデマンドルート43への立ち寄り要求が寄せられると、コントローラ32は、デマンドルート43への立ち寄り要求を運行経路データベース33に記憶させる。この時点では、運行経路データベース33にはデマンドルート42への立ち寄り要求の情報は引き続き記憶されているが、この時点では当該情報を消去しない。従って、運行経路データベース33には、デマンドルート42ならびにデマンドルート43の両方のデマンドルートへの立ち寄り要求の情報が記憶される。
【0038】
これと並行してコントローラ32は、トランシーバ31とトランシーバ23との間で交信を開始させ、トランシーバ31を介して、デマンドルート42ならびにデマンドルート43に関して立ち寄り要求が有った旨の信号をデマンドバス2に向けて送信する。
【0039】
デマンドバス2側では、トランシーバ22が、デマンドルート42ならびにデマンドルート43に関して立ち寄り要求が有った旨の信号を受信する。この信号はコントローラ22に伝達され、コントローラ22内に一旦記憶される。この記憶内容は、運行管理センタ3から立ち寄り要求に関する信号を受信したときには、無条件にすべて消去され、代わって受信した信号に基づいて新しい内容が記憶される。
【0040】
またコントローラ22では、記憶された信号を読み出し、表示パネル24に設けられた表示灯を点灯させる。この時点では、デマンドルート42ならびにデマンドルート43に対応する2個の表示灯が点灯する。
【0041】
その後、デマンドバス2がデマンドルート42から脱出して基本ルート4に復帰すると、間もなく出口区間B2に進入する。ここでは上述の出口区間B1の場合と同様に、コントローラ32が、運行経路データベース33に利用者からの立ち寄り要求が記憶されているか否かに拘らず、デマンドルート42へは立ち寄り要求が無いという内容の信号を、トランシーバ31を介してデマンドバス2に向けて送信する。
【0042】
またこのときに、コントローラ32は運行経路データベース33に記憶された立ち寄り要求の内容のうち、デマンドバス2が既に通過したデマンドルート42への立ち寄り情報を消去する。従って、運行経路データベース33には、デマンドルート43に対する立ち寄り要求が有ったことだけが、引き続き記憶される。
【0043】
デマンドバス2側では、トランシーバ31から送信された信号をトランシーバ23によって受信し、これをコントローラ22に伝える。コントローラ22では、受信した信号に基づいて、既に記憶していた立ち寄り要求の情報を、デマンドルート42への立ち寄り要求が無いという内容に更新する。これと並行してコントローラ22は,更新された記憶内容に基づいて、表示パネル24において、デマンドルート42に対応する表示灯を消灯させる。
【0044】
その後、デマンドバス2がさらに基本ルート4上を走行して、入口区間A3に進入する。この入口区間A3は、基本ルート4上の、デマンドルート43が基本ルート4から分岐する点よりも、やや手前に在る。その他に関しては、上述の入口区間A1に関して説明した内容と同様である。
【0045】
この状況で、GPSナビゲーションシステム21が上記と同様にデマンドバス2の現在位置を測定して、トランシーバ23が現在位置を運行管理センタ3に送信する。運行管理センタ3では、トランシーバ31がデマンドバス2の位置を示す信号を受信し、受信した信号をコントローラ32に伝える。コントローラ32は、受信した信号をもとに運行経路データベース33を検索して、デマンドバス2が基本ルート4上の入口区間A3に居ることを検出する。
【0046】
このようにして、デマンドバス2が入口区間A3に進入したことを検出した時点で、コントローラ32は、内部に記憶した立ち寄り要求の情報をすべて読み出し、読み出した情報をトランシーバ31を介してデマンドバス2に向けて送信する。ここで、読み出した情報が既にデマンドバス2に宛てて送信されたものか否かには関係なく、コントローラ32に記憶された立ち寄り要求の情報のうち、デマンドルート43に対応する情報が、送信される。
【0047】
ここでは、コントローラ32上ではデマンドルート42への立ち寄り要求の情報は上述の通り消去され、デマンドルート43への立ち寄り要求の情報だけが引き続き記憶されているため、このデマンドルート43への立ち寄り要求が、デマンドバス2へ向けて送信される。
【0048】
デマンドバス2側では、この立ち寄り要求の情報をトランシーバ23が受信して、コントローラ22に伝える。コントローラ22では、ここで改めて受信した情報に、記憶内容を置き換える。本例では、デマンドルート43に立ち寄るという内容である。
【0049】
これと並行してコントローラ22は、表示パネル24において、デマンドルート43に対応する表示灯のみを点灯させて、運転手に立ち寄り要求の存在を伝える。この表示灯を視認することで、デマンドバス2の運転手は、デマンドルート43に立ち寄る必要が有ることを認識し、基本ルート4から外れてデマンドルート43に進入する。
【0050】
その後、デマンドバス2がデマンドルート43から脱出して基本ルート4に復帰すると、間もなく出口区間B3に進入する。ここでは上述の出口区間B1の場合と同様に、コントローラ32が、運行経路データベース33に利用者からの立ち寄り要求が記憶されているか否かに拘らず、デマンドルート43へは立ち寄り要求が無いという内容の信号を、トランシーバ31を介してデマンドバス2に向けて送信する。
【0051】
またこのときに、コントローラ32は運行経路データベース33に記憶された立ち寄り要求の内容のうち、デマンドバス2が既に通過したデマンドルート43への立ち寄り情報を消去する。
【0052】
デマンドバス2側では、トランシーバ31から送信された信号をトランシーバ23によって受信し、これをコントローラ22に伝える。コントローラ22では、受信した信号に基づいて、既に記憶していた立ち寄り要求の情報を、デマンドルート43へは立ち寄り要求が無いという内容に更新する。これと並行してコントローラ22は,更新された記憶内容に基づいて、表示パネル24において、デマンドルート43に対応する表示灯を消灯させる。
【0053】
上記の例では、運行管理センタ3とデマンドバス2との間で、通信が全く正常に行われた場合について説明した。次に、運行管理センタ3とデマンドバス2との間での通信中に、何らかの原因で通信エラーが起こり、情報の伝達が一部行われなかった場合の動作について、説明する。
【0054】
通信エラーが起こった場合の第1の例として、デマンドバス2が基本ルート4上の入口区間A1より手前を走行しているときに、デマンドルート42に関して立ち寄り要求が有った旨の信号をデマンドバス2に向けて送信しようとした際に、通信エラーが発生し、信号を正しく伝達できなかったものとする。
【0055】
このとき、デマンドバス2側では、通信エラーのために信号を正しく受信できず、デマンドルート42に関して立ち寄り要求が有った旨の信号は、コントローラ22には伝達されない。従ってコントローラ22では、信号の記憶が更新されない。このときには、コントローラ22は通信エラー以前の信号の記憶を保持しており、その旧い記憶内容に基づいて、表示パネル24の表示灯の点灯あるいは消灯を制御する。この表示内容は、本来意図される正しい表示内容ではない。
【0056】
その後にデマンドバス2が基本ルート4上を走行して、入口区間A1に進入する。ここでも、GPSナビゲーションシステム21が上記と同様にデマンドバス2の現在位置を測定して、トランシーバ23が現在位置を運行管理センタ3に送信する。
【0057】
運行管理センタ3では、トランシーバ31がデマンドバス2の位置を示す信号を受信し、受信した信号をコントローラ32に伝える。コントローラ32は、受信した信号をもとに運行経路データベース33を検索して、デマンドバス2が基本ルート4上の入口区間A1に居ることを検出する。
【0058】
このようにして、デマンドバス2が入口区間A1に進入したことを検出した時点で、コントローラ32は、内部に記憶した立ち寄り要求の情報のうち、デマンドルート41に関する情報を読み出し、読み出した情報をトランシーバ31を介してデマンドバス2に向けて送信する。ここで、読み出した情報が既にデマンドバス2に宛てて送信されたものか否かには関係なく、コントローラ32に記憶された立ち寄り要求の情報のうち、デマンドルート41に関する情報が送信される。
【0059】
デマンドバス2側では、この立ち寄り要求の情報をトランシーバ23が受信して、コントローラ22に伝える。コントローラ22では、受信した情報を記憶する。コントローラ22が、過去に受信した立ち寄り情報の記憶を保持している場合にも、ここで改めて受信した情報に、記憶内容を置き換える。本例では、デマンドルート41には立ち寄らないという内容である。
【0060】
これと並行してコントローラ22は、表示パネル24において、デマンドルート41に対応する表示灯を、消灯させる。
【0061】
このようにして、デマンドバス2にはデマンドルート41への立ち寄りに関する情報が正しく伝達され、運転手は立ち寄り情報を正しく認識することができる。その後の動作については、通信エラーが起こらなかった場合について既に説明した内容と、同様である。
【0062】
次に、通信エラーが起こった場合の第2の例として、デマンドバス2が基本ルート4上の入口区間A2より手前を走行しているときに、通信が正常に行われたのち、デマンドバス2が基本ルート4上の入口区間A2を走行しているときに、デマンドルート42に関して立ち寄り要求が有った旨の信号を改めてデマンドバス2に向けて送信しようとした際に、通信エラーが発生し、信号を正しく伝達できなかったものとする。
【0063】
このときには、デマンドバス2側では、通信エラーのために信号を正しく受信できず、デマンドルート42に関して立ち寄り要求が有った旨の信号は、コントローラ22には伝達されない。従ってコントローラ22では、信号の記憶が更新されない。このときには、コントローラ22は通信エラー以前の信号の記憶を保持しており、その旧い記憶内容に基づいて、表示パネル24の表示灯の点灯あるいは消灯を制御する。
【0064】
しかしながら、デマンドバス2が基本ルート4上の入口区間A2より手前を走行しているときに通信が正常に行われた結果、コントローラ22にはデマンドルート42に対する立ち寄り要求の情報が、既に記憶されている。これは本来意図された正しい情報である。従って、表示パネル24の表示灯の表示内容は更新されないとは言うものの、その表示内容はデマンドバス2の運行に関して正しい内容を伝えている。
【0065】
次に、何らかの理由で、デマンドバス2が本来進入すべきデマンドルートに進入せず、そのまま基本ルート4上を走行した場合の動作について、説明する。例として、デマンドルート42に対する立ち寄り要求がありながら、デマンドバス2が入口区間A2を通過後にデマンドルート42に進入せず、引き続き基本ルート4上を走行した場合を考える。
【0066】
このとき、デマンドバス2が基本ルート4を走行し続けると、間もなく出口区間B2に進入する。ここでは上述の出口区間B1の場合と同様に、コントローラ32が、運行経路データベース33に利用者からの立ち寄り要求が記憶されているか否かに拘らず、デマンドルート42に対して立ち寄り要求が無いという内容の信号を、トランシーバ31を介してデマンドバス2に向けて送信する。
【0067】
またこのときに、コントローラ32は運行経路データベース33に記憶された立ち寄り要求の内容のうち、デマンドバス2が誤って進入しなかったデマンドルート42への立ち寄り情報を消去する。従って、運行経路データベース33には、デマンドルート43に対する立ち寄り要求が有る場合には、そのデマンドルート43に対する立ち寄り要求だけが、引き続き記憶される。
【0068】
デマンドバス2側では、トランシーバ31から送信された信号をトランシーバ23によって受信し、これをコントローラ22に伝える。コントローラ22では、受信した信号に基づいて、既に記憶していた立ち寄り要求の情報を、立ち寄り要求が全く無いという内容に更新する。これと並行してコントローラ22は,更新された記憶内容に基づいて、表示パネル24において、すべての表示灯を消灯させる。従って、デマンドルート42に対応する表示灯が、いつまでも点灯し続けるというような事態は、回避される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、上述のデマンドバスにおいてバスの運行を集中管理する運行管理センタの管理装置、ならびに個々のバスに搭載される立ち寄り要求の表示装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
2 デマンドバス
3 運行管理センタ
21 GPSナビゲーションシステム
22 コントローラ
23 トランシーバ
24 表示パネル
31 トランシーバ
32 コントローラ
33 運行管理データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の基本経路に沿って運行される移動体が、運行管理装置から送信される迂回指示に応じて前記基本経路から外れた迂回経路に沿って運行する移動体運行管理システムに用いられる運行管理装置であって、
前記運行管理装置は、
前記移動体の位置情報を入手する手段と、
前記迂回経路毎に設定された入口区間の情報と利用者から受信した迂回要求とを記憶する手段と、
前記迂回要求に基づき前記移動体に向けて対応する迂回経路についての迂回要求があったことを示す迂回要求情報を送信し、該移動体が前記入口区間に進入すると記憶された該迂回要求に基づき該入口区間に対応する迂回経路についての迂回要求の有無を示す迂回要否情報を該移動体に送信する管理手段と、
を備えることを特徴とする運行管理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−165367(P2010−165367A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39215(P2010−39215)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【分割の表示】特願2005−11880(P2005−11880)の分割
【原出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】