説明

運転判断支援装置、運転判断支援方法および車両

【課題】運転者がより現実の走行環境に即した運転を行いつつ走行環境に潜在する危険を予防および回避することが可能な運転判断支援装置、運転判断支援方法およびそれを備えた車両を提供することである。
【解決手段】走行環境認識装置10は車両状態を取得する。相対運動演算部20は各他車両と自車両との相対運動を算出する。リスク評価部30は各他車両について相対運動から顕在リスクおよび潜在リスクレベルを算出し、潜在リスクレベルが2以上の他車両については1次危険顕在化判定値を算出する。余裕度評価部40は潜在リスクレベルが2以上の他車両について自車両が取り得る動作の対1次危険余裕度および対2次危険余裕度を算出する。判断情報生成部50は各他車両についての顕在リスク、潜在リスクレベル、1次危険顕在化判定値、対1次危険余裕度および対2次危険余裕度を統合し、判断情報を生成する。情報提示装置60は運転者に判断情報の提示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援する運転判断支援装置、運転判断支援方法およびそれを備えた車両に関する。
【0002】
本明細書において、車両は、自動車、自動二輪車、鞍乗型四輪駆動車、小型船舶等の種々の移動体を含む。
【背景技術】
【0003】
従来より、自車両の周囲に複数の他車両が存在する道路環境において、安全な運転操作を支援する装置が提案されている(例えば、特許文献1,2,3,4参照)。このような装置では、各他車両と自車両との相対運動からそれぞれの衝突の危険度を判定し、運転者に危険に対する注意を喚起させ、さらには適切な回避行動の提示または操作アシストを行う。
【0004】
特許文献1に開示されている自動車の潜在危険検知装置では、環境認識部により実際に認識される自車両と他車両との相対運動から予測される衝突を一次危険とし、一次危険の危険度を衝突に到るまでの予測時間をもとに導出する。この特許文献1によれば、総合的な危険度の判定には、各種一次危険の危険度のみではなく、一次危険に対する回避動作に伴い二次的に発生する危険も見越した危険度も考慮する必要があるとされている。
【0005】
そこで、自車両の各種の突発的な動作変化(例えば急ブレーキ)を要因として発生する潜在的な一次危険全般をその突発的な動作変化に対応する二次危険として定義している。そして、その二次危険が発生したと仮定して、仮定された運動に基づいて各種一次危険の危険度を評価し、その平均値を二次危険の危険度として導出する。
【0006】
さらに、このように求められた各種一次危険の危険度および二次危険の危険度に重み付けを行い、加え合わせることにより、その状況に潜在する総合的な危険度を導出し、その値に応じた警報を発することにより、運転者に潜在的な危険に対する注意を喚起させることができるとしている。
【特許文献1】特開平7−65295公報
【特許文献2】特開平10−211886号公報
【特許文献3】特開2004−157910号公報
【特許文献4】特開平06−162396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された潜在危険検知装置では、一次危険の危険度判定において他車両の突発的な動作変化を想定していない。また、運転者が一次危険を回避するために二次危険の要因である自車両の各種突発的な動作変化が発生するとしているが、どの突発的な動作変化が一次危険の回避動作として有効であるかの推定については説明されていない。
【0008】
二次危険の危険度の評価では、自車両の突発的な動作変化が一次危険の回避のために行われているか否かに関わらず、純粋に自車両の各種の突発的な動作変化がどのくらいの危険度の一次危険を引き起こすことになるかをその平均値により評価しているにすぎない。
【0009】
以上のように求められた各種一次危険の危険度および二次危険の危険度について、それぞれに重み付けした上で加え合わせを行うことにより総合的な危険度を導出し、その値を運転者に提示したとしても、その状況において注意を向けるべき個々の危険およびその危険度、さらにそれに対して有効かつ二次的な危険の要因にならない回避操作を、運転者に判断させることは不可能である。
【0010】
一方、特許文献2に開示されている車両の操舵装置および特許文献3に開示されている車両用推奨操作量生成装置では、自車両の周囲に危険度が高い他車両が複数存在する場合であっても、それらを同時に回避するための操作を推定する。
【0011】
特許文献2の車両の操舵装置では、障害物認識手段から出力される相対運動状態情報から潜在的危険度合を求めている。また、特許文献3の車両用推奨操作量生成装置では、自車と物体との相対運動および道路の走行位置を評価した上で車線が関係する操作に対してアシスト機能を発揮している。
【0012】
しかしながら、これらの従来の装置では、自車両および他車両の少なくとも一方の突発的な動作の急変を想定した危険度が評価されていない。つまり、他車両が動作を急変しても危険要因として成立し得ない十分余裕のある安全な相対関係を、運転者が常に維持することを前提としていると考えることができる。
【0013】
しかし、これは運転者が注意を払ってさえいれば回避可能な他車両に対しても、必要以上に余裕のある相対関係の生成を運転者に強いることになる。ところが、現実の運転の多くの場面では、このような必要以上に余裕のある相対関係を周囲のすべての他車両に対して成立させることは困難である。
【0014】
この場合、一部の他車両に対してはその突発的な動作の急変による危険の顕在化の可能性を許容して運転することになるが、回避操作の推定において他車両の突発的な動作の急変を想定していないため、その顕在化に対して安全に回避できる保証はない。
【0015】
また、その顕在化した危険を回避できたとしても、その回避動作により別の他車両との衝突の可能性が生じてしまう。
【0016】
特許文献4の車載用安全運転支援装置では、先行車の急ブレーキの発生と先行車への追突を回避するための自車両の急ブレーキの発生とを想定した追突予測を行い、追突の危険性が大のときに自車両および後続車の運転者に対して警報を行う。さらに、同様の方法で自車両に対する後続車の追突予測を行い、追突の危険性が大きいときに自車両および後続車の運転者に対して警報を行う。
【0017】
しかし、特許文献4の車載用安全運転支援装置では、先行車への自車両の追突および自車両への後続車の追突の危険性をそれぞれ独立に警報するにすぎない。
【0018】
例えば、先行車と自車両との車間距離が比較的大きい場合には、先行車の急ブレーキの発生に対して自車両の運転者はブレーキの強さを調整することが考えられる。しかし、この際、自車両への後続車の追突の危険性を自車両の急ブレーキを前提として予測し、警報を行うため、運転者に対して後続車との安全距離を必要以上に強いることになる。その結果、現実の走行環境に即した運転を行うことが困難となり、運転支援が運転者にとって煩わしくなる可能性がある。
【0019】
このように、従来の装置では、現実の走行環境に即した運転を行いつつ走行環境に潜在する危険を予防および回避することが困難である。
【0020】
本発明の目的は、運転者がより現実の走行環境に即した運転を行いつつ走行環境に潜在する危険を予防および回避することが可能な運転判断支援装置、運転判断支援方法およびそれを備えた車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(1)第1の発明に係る運転判断支援装置は、運転者の運転に関する判断を支援する運転判断支援装置であって、自車両と他車両と相対運動を算出する相対運動算出手段と、相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて自車両および他車両の少なくとも一方の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いを潜在リスクレベルとして評価する潜在リスク評価手段と、顕在化する危険を回避する際の自車両の動作変化に対する余裕度を評価する余裕度評価手段と、潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルおよび余裕度評価手段により評価された余裕度に基づいて、他車両の突発的な動作変化を起因とする衝突の危険を回避するための自車両の動作変化を推定し、推定された動作変化を推奨動作として含む判断情報を生成する判断情報生成手段と、判断情報生成手段により生成された判断情報を運転者に提示する情報提示手段とを備えたものである。
【0022】
本発明に係る運転判断支援装置においては、自車両と他車両と相対運動が相対運動算出手段により算出され、算出された相対運動に基づいて自車両および他車両の少なくとも一方の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いが潜在リスクレベルとして潜在リスク評価手段により評価される。また、顕在化する危険を回避する際の自車両の動作変化に対する余裕度が余裕度評価手段により評価される。評価された潜在リスクレベルおよび余裕度に基づいて、他車両の突発的な動作変化を起因とする衝突の危険を回避するための自車両の動作変化が推定され、推定された動作変化を推奨動作として含む判断情報が判断情報生成手段により生成される。生成された判断情報が情報提示手段により運転者に提示される。
【0023】
それにより、自車両および他車両の少なくとも一方の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いおよび顕在化する危険を回避する際の自車両の動作変化に対する余裕度に基づく判断情報が運転者に提示される。したがって、運転者は、走行環境に潜在する危険を予防および回避することが可能となる。また、運転者は、危険の顕在化を想定し、自車両の動作変化による回避がどれだけの余裕度を持って行えるかを容易に把握することができる。その結果、運転者は、より現実の走行環境に即した運転を行いつつ走行環境に潜在する危険を予防および回避することができる。
【0024】
(2)余裕度評価手段は、他車両に対する潜在リスクレベルを増大させる他車両の突発的な動作変化を想定し、想定された動作変化に対する回避動作のための自車両の動作変化の余裕度を対1次危険余裕度として評価する対1次危険余裕度評価手段を含んでもよい。
【0025】
この場合、対1次危険余裕度評価手段により他車両に対する潜在リスクレベルを増大させる他車両の突発的な動作変化が想定され、想定された動作変化に対する回避動作のための自車両の動作変化の余裕度が対1次危険余裕度として評価される。
【0026】
それにより、運転者は、他車両の突発的な動作変化による衝突の危険を回避するために自車両の動作変化をどれだけの余裕度で行えるかを容易に把握することができる。
【0027】
(3)余裕度評価手段は、自車両の突発的な動作変化を想定し、想定された動作変化による他車両に対する潜在リスクレベルの増大を所定範囲内に抑制するための余裕度を対2次危険余裕度として評価する対2次危険余裕度評価手段をさらに含んでもよい。
【0028】
この場合、対2次危険余裕度評価手段により自車両の突発的な動作変化が想定され、想定された動作変化による他車両に対する潜在リスクレベルの増大を所定範囲内に抑制するための余裕度が対2次危険余裕度として評価される。
【0029】
それにより、運転者は、自車両の突発的な動作変化により連鎖的に増大しうる他車両に対する潜在リスクレベルの増大を所定範囲内に抑制するための余裕度を容易に把握することができる。
【0030】
(4)余裕度評価手段は、他車両に対する対1次危険余裕度と、別の他車両に対する対2次危険余裕度の最小値との和に基づいて、他車両の突発的な動作変化を起因とする1次危険の顕在化に対する回避動作のための自車両の動作変化の総合的な余裕度を算出してもよい。
【0031】
この場合、他車両に対する対1次危険余裕度と、別の他車両に対する対2次危険余裕度の最小値との和に基づいて、他車両の突発的な動作変化を起因とする1次危険の顕在化に対する回避動作のための自車両の動作変化の総合的な余裕度が算出される。
【0032】
それにより、運転者は、他車両の突発的な動作変化を起因とする1次危険の顕在化に対する回避動作を行う場合に自車両の動作変化の総合的な余裕度を容易に把握することができる。
【0033】
(5)判断情報生成手段は、余裕度評価手段により評価された総合的な余裕度が所定値よりも小さい場合に、他車両を識別するための情報を含む判断情報を生成してもよい。
【0034】
この場合、総合的な余裕度が所定値よりも小さい場合に、他車両を識別するための情報を含む判断情報が運転者に提示される。それにより、運転者は、潜在リスクレベルが高い他車両に対する回避動作を想定している場合に、仮にその他車両による危険を回避できたとしても、その回避動作が別の他車両との衝突の要因となり得ることを容易に把握することができる。
【0035】
(6)判断情報生成手段は、余裕度評価手段により評価された総合的な余裕度が所定値よりも小さい場合に、総合的な余裕度が最大となる動作変化を推奨動作として選択し、他車両を識別するための情報および推奨動作を含む判断情報を生成してもよい。
【0036】
この場合、総合的な余裕度が所定値よりも小さい場合に、総合的な余裕度が最大となる動作変化が推奨動作として選択され、他車両を識別するための情報および推奨動作を含む判断情報が運転者に提示される。
【0037】
それにより、運転者は、1次危険の顕在化に備えて事前に総合的な余裕度の高い回避動作を把握することができる。したがって、運転者は、1次危険が顕在化したとしても、時間的および精神的に余裕のある回避動作のための操作を迅速に行うことができる。
【0038】
(7)運転判断支援装置は、潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かを判定する1次危険顕在化判定手段をさらに備え、判断情報生成手段は、1次危険顕在化判定手段の判定結果および余裕度評価手段により評価された総合的な余裕度に基づいて判断情報を生成してもよい。
【0039】
この場合、潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、1次危険顕在化判定手段により相対運動に基づいて他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かが判定され、1次危険顕在化判定手段の判定結果および総合的な余裕度に基づいて判断情報が生成される。
【0040】
それにより、潜在リスクレベルが高い場合に他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かおよび総合的な余裕度に基づく判断情報が運転者に提示される。したがって、運転者は、即座に回避動作を行うべきか否かを迅速に判断することができるとともに、自車両の動作変化の総合的な余裕度を容易に把握することができる。
【0041】
(8)判断情報生成手段は、1次危険顕在化判定手段により他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあると判定された場合に、余裕度評価手段により評価された総合的な余裕度が最大となる動作変化を推奨動作として選択し、他車両を識別するための情報および推奨動作を含む判断情報を生成してもよい。
【0042】
この場合、他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあると判定された場合に、総合的な余裕度が最大となる動作変化が推奨動作として選択され、他車両を識別するための情報および推奨動作を含む判断情報が運転者に提示される。
【0043】
それにより、運転者は、他車両との衝突の危険だけでなく回避動作により連鎖的に発生し得る別の他車両との衝突の危険の度合いを低減することが可能となる。
【0044】
(9)潜在リスク評価手段は、他車両が自車両に近づく方向の第1の相対速度成分、第1の相対速度成分に直交する方向の第2の相対速度成分、および自車両と他車両との車間距離に基づいて、潜在リスクレベルを評価してもよい。
【0045】
この場合、自車両に近づく方向の第1の相対速度成分、それに直交する方向の第2の相対速度成分および車間距離に基づいて潜在リスクレベルを簡便に評価することができる。
【0046】
(10)判断情報生成手段は、潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、他車両を識別するための情報を含む判断情報を生成してもよい。
【0047】
この場合、潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、他車両を識別するための情報を含む判断情報が運転者に提示される。それにより、運転者は、潜在リスクレベルが高い他車両を容易に把握することができる。その結果、潜在リスクレベルが高い他車両の突発的な動作変化による危険を予防および回避することが可能となる。
【0048】
(11)運転判断支援装置は、相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて予測される衝突の危険の度合いを顕在リスクとして評価する顕在リスク評価手段をさらに備え、判断情報生成手段は、潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルおよび顕在リスク評価手段により評価された顕在リスクに基づいて判断情報を生成してもよい。
【0049】
この場合、相対運動に基づいて予測される衝突の危険度合いが顕在リスクとして顕在リスク評価手段により評価され、潜在リスクレベルおよび顕在リスクに基づいて判断情報生成手段により判断情報が生成される。
【0050】
それにより、相対運動に基づいて予測される衝突の危険度合いおよび自車両および他車両の少なくとも一方の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いに基づく判断情報が運転者に提示される。したがって、運転者は、走行環境に顕在する危険および潜在する危険を予防および回避することが可能となる。その結果、さらに現実の走行環境に即した運転を行うことができる。
【0051】
(12)顕在リスク評価手段は、他車両が自車両に近づく方向の相対速度成分および自車両と他車両との車間距離に基づいて、顕在リスクを評価してもよい。
【0052】
この場合、他車両が自車両に近づく方向の相対速度成分および自車両と他車両との車間距離に基づいて顕在リスクを簡便に評価することができる。
【0053】
(13)判断情報生成手段は、顕在リスク評価手段により評価された顕在リスクが所定値よりも低くかつ潜在リスクレベル評価手段により評価された潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、他車両を識別するための情報を含む判断情報を生成してもよい。
【0054】
この場合、顕在リスクが所定値よりも低くかつ潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、他車両を識別するための情報を含む判断情報が運転者に提示される。
【0055】
それにより、潜在リスクレベルは高いにもかかわらず顕在リスクが低いために他車両の危険度合いを正確に認識することが困難な場合であっても、その他車両の突発的な動作変化による危険の顕在化に備えて、運転者にその他車両に対する注意を予め促すことができる。したがって、運転者は、他車両の突発的な動作変化により危険が顕在化した場合でも、その危険を迅速に回避することができる。
【0056】
(14)運転判断支援装置は、潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かを判定する1次危険顕在化判定手段をさらに備え、判断情報生成手段は、潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルおよび1次危険顕在化判定手段の判定結果に基づいて判断情報を生成してもよい。
【0057】
この場合、潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、相対運動に基づいて他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かが1次危険顕在化判定手段により判定され、潜在リスクレベルおよび1次危険顕在化判定手段の判定結果に基づいて判断情報が生成される。
【0058】
それにより、潜在リスクレベルが高い場合に他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かに基づく判断情報が運転者に提示される。したがって、運転者は、即座に何らかの回避動作を行うべきか否かを把握することができる。
【0059】
(15)1次危険顕在化判定手段は、潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて所定時間後の相対速度ベクトルを予測し、予測された相対速度ベクトルおよび自車両と他車両との車間距離に基づいて所定時間後の潜在リスクレベルを予測することにより他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かを判定してもよい。
【0060】
この場合、潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、相対運動に基づいて所定時間後の相対速度ベクトルが予測され、予測された相対速度ベクトルおよび自車両と他車両との車間距離に基づいて所定時間後の潜在リスクレベルが予測される。それにより、他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かが簡便に判定される。
【0061】
(16)判断情報生成手段は、1次危険顕在化判定手段により他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあると判定された場合に、他車両を識別するための情報を含む判断情報を生成してもよい。
【0062】
この場合、他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあると判定された場合に、他車両を識別するための情報を含む判断情報が運転者に提示される。それにより、運転者は、即座に何らかの回避動作を行うことができる。
【0063】
(17)運転判断支援装置は、相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて予測される衝突の危険度合いを顕在リスクとして評価する顕在リスク評価手段と、潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かを判定する1次危険顕在化判定手段とをさらに備え、判断情報生成手段は、顕在リスク評価手段により評価された顕在リスクおよび1次危険顕在化判定手段の判定結果に基づいて判断情報を生成してもよい。
【0064】
この場合、相対運動に基づいて予測される衝突の危険度合いが顕在リスクとして顕在リスク評価手段により評価される。また、潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、相対運動に基づいて他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かが1次危険顕在化判定手段により判定され、顕在リスクおよび1次危険顕在化判定手段の判定結果に基づいて判断情報が生成される。
【0065】
それにより、顕在リスクおよび衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かに基づく判断情報が運転者に提示される。したがって、運転者は、即座に何らかの回避動作を行うべきか否かを把握することができる。
【0066】
(18)判断情報生成手段は、1次危険顕在化判定手段により他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあると判定された場合に、他車両を識別するための情報および顕在リスク評価手段により評価された顕在リスクを含む判断情報を生成してもよい。
【0067】
この場合、他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあると判定された場合に、他車両を識別するための情報および顕在リスクを含む判断情報が運転者に提示される。それにより、運転者は、衝突の危険の顕在化およびその緊急度合いを容易に把握することができる。
【0068】
(19)第2の発明に係る運転判断支援方法は、運転者の運転に関する判断を支援する運転判断支援方法であって、自車両と他車両と相対運動を算出するステップと、算出された相対運動に基づいて自車両および他車両の少なくとも一方の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いを潜在リスクレベルとして評価するステップと、顕在化する危険を回避する際の自車両の動作変化に対する余裕度を評価する余裕度評価手段と、評価された潜在リスクレベルおよび評価された余裕度に基づいて、他車両の突発的な動作変化を起因とする衝突の危険を回避するための自車両の動作変化を推定し、推定された動作変化を推奨動作として含む判断情報を生成するステップと、生成された判断情報を運転者に提示するステップとを備えたものである。
【0069】
本発明に係る運転判断支援方法においては、自車両と他車両と相対運動が算出され、算出された相対運動に基づいて自車両および他車両の少なくとも一方の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いが潜在リスクレベルとして評価される。また、顕在化する危険を回避する際の自車両の動作変化に対する余裕度が評価される。評価された潜在リスクレベルおよび余裕度に基づいて、他車両の突発的な動作変化を起因とする衝突の危険を回避するための自車両の動作変化が推定され、推定された動作変化を推奨動作として含む判断情報が生成される。生成された判断情報が情報提示手段により運転者に提示される。
【0070】
それにより、自車両および他車両の少なくとも一方の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いおよび顕在化する危険を回避する際の自車両の動作変化に対する余裕度に基づく判断情報が運転者に提示される。したがって、運転者は、走行環境に潜在する危険を予防および回避することが可能となる。また、運転者は、危険の顕在化を想定し、自車両の動作変化による回避がどれだけの余裕度を持って行えるかを容易に把握することができる。その結果、運転者は、より現実の走行環境に即した運転を行いつつ走行環境に潜在する危険を予防および回避することができる。
【0071】
(20)第3の発明に係る車両は、運転者の運転により走行する車両本体と、運転者の運転に関する判断を支援する運転判断支援装置とを備え、運転判断支援装置は、車両本体と他車両と相対運動を算出する相対運動算出手段と、相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて車両本体または他車両の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いを潜在リスクレベルとして評価する潜在リスク評価手段と、顕在化する危険を回避する際の自車両の動作変化に対する余裕度を評価する余裕度評価手段と、潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルおよび余裕度評価手段により評価された余裕度に基づいて、他車両の突発的な動作変化を起因とする衝突の危険を回避するための自車両の動作変化を推定し、推定された動作変化を推奨動作として含む判断情報を生成する判断情報生成手段と、判断情報生成手段により生成された判断情報を運転者に提示する情報提示手段とを備えたものである。
【0072】
本発明に係る車両においては、運転者の運転により車両本体が走行する。この場合、運転者の運転に関する判断が運転判断支援装置により支援される。
【0073】
その運転判断支援装置においては、自車両と他車両と相対運動が相対運動算出手段により算出され、算出された相対運動に基づいて自車両および他車両の少なくとも一方の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いが潜在リスクレベルとして潜在リスク評価手段により評価される。また、顕在化する危険を回避する際の自車両の動作変化に対する余裕度が余裕度評価手段により評価される。評価された潜在リスクレベルおよび余裕度に基づいて、他車両の突発的な動作変化を起因とする衝突の危険を回避するための自車両の動作変化が推定され、推定された動作変化を推奨動作として含む判断情報が判断情報生成手段により生成される。生成された判断情報が情報提示手段により運転者に提示される。
【0074】
それにより、自車両および他車両の少なくとも一方の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いおよび顕在化する危険を回避する際の自車両の動作変化に対する余裕度に基づく判断情報が運転者に提示される。したがって、運転者は、走行環境に潜在する危険を予防および回避することが可能となる。また、運転者は、危険の顕在化を想定し、自車両の動作変化による回避がどれだけの余裕度を持って行えるかを容易に把握することができる。その結果、運転者は、より現実の走行環境に即した運転を行いつつ走行環境に潜在する危険を予防および回避することができる。
【発明の効果】
【0075】
本発明によれば、自車両および他車両の少なくとも一方の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いおよび顕在化する危険を回避する際の自車両の動作変化に対する余裕度に基づく判断情報が運転者に提示される。したがって、運転者は、走行環境に潜在する危険を予防および回避することが可能となる。また、運転者は、危険の顕在化を想定し、自車両の動作変化による回避がどれだけの余裕度を持って行えるかを容易に把握することができる。その結果、運転者は、より現実の走行環境に即した運転を行いつつ走行環境に潜在する危険を予防および回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
(1)自動車の構成
図1は本発明の一実施の形態に係る運転判断支援装置を備えた自動車の構成を示す模式図である。
【0077】
図1の自動車100は、本体部101および車輪102を備える。本体部10内には、ECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)103、GPS(全地球測位システム:Global Positioning System)104、加速度を検出する加速度センサ105、角速度を検出するジャイロセンサ106、速度を検出する車速センサ107および通信装置108が設けられている。さらに、本体部101の運転席には、複数のスピーカ109が取り付けられている。
【0078】
以下の説明において、対象とする自動車100を自車両0と呼び、自車両0が認識する他の自動車100を他車両iと呼ぶ。他車両iの数をNとすると、iは1〜Nの任意の整数である。ここで認識対象となる他車両iは、例えば自車両0からの車間距離が基準値以内に含まれるものとして決定する。また、自車両0の各パラメータに添え字0を付し、他車両iの各パラメータに添え字iを付す。
【0079】
(2)運転判断支援装置の機能的な構成
図2は図1の自動車に搭載される運転判断支援装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【0080】
図2に示すように、運転判断支援装置200は、走行環境認識装置10、相対運動演算部20、リスク評価部30、余裕度評価部40、判断情報生成部50および情報提示装置60を備える。リスク評価部30、余裕度評価部40および判断情報生成部50が運転判断部70を構成する。
【0081】
走行環境認識装置10は、図1のGPS104、加速度センサ105、ジャイロセンサ106、車速センサ107、通信装置108およびECU103により構成される。通信装置108は、車車間通信を行う。また、ECU103は、通信装置108による車車間通信を制御するとともに、各種演算処理を行う。
【0082】
また、相対運動演算部20および運転判断装置70は、図1のECU103およびプログラムにより実現される。ECU103は、エンジン制御等の車両制御用と運転判断支援装置200用とに共用されてもよく、または車両制御用ECUとは独立に設けられてもよい。
【0083】
情報提示装置60としては、複数のスピーカ109および音源制御器により構成される音像定位オーディオシステム110が用いられる。音源制御器はECU103に含まれてもよい。あるいは、音源制御器はECU103とは独立したECUにより構成され、ECU103から通信により後述する判断情報を取得してもよい。
【0084】
(3)運動判断支援装置200の全体動作
図3は図2の運転判断支援装置200の動作を示すフローチャートである。
【0085】
まず、走行環境認識装置10が自車両および他車両の車両状態を取得する(ステップS1)。車両状態の詳細については後述する。
【0086】
次に、相対運動演算部20が取得された自車両および他車両の車両状態に基づいて各他車両と自車両との相対運動を算出する(ステップS2)。相対運動の詳細については後述する。
【0087】
さらに、リスク評価部30が各他車両についてリスク評価を行う(ステップS3)。この場合、リスク評価部30は、各他車両について算出された相対運動から顕在リスクおよび潜在リスクレベルを算出し、さらに潜在リスクレベルが2以上の他車両については1次危険顕在化判定値を算出する。顕在リスク、潜在リスクレベルおよび1次危険顕在化判定値の詳細については後述する。
【0088】
次に、余裕度評価部40が自車両の余裕度の評価を行う(ステップS4)。この場合、余裕度評価部40は、潜在リスクレベルが2以上の他車両について自車両が取り得る動作の対1次危険余裕度および対2次危険余裕度を算出する。対1次危険余裕度および対2次危険余裕度の詳細については後述する。
【0089】
次に、判断情報生成部50が判断情報の生成を行う(ステップS5)。この場合、判断情報生成部50は、各他車両についての顕在リスク、潜在リスクレベル、1次危険顕在化判定値、対1次危険余裕度および対2次危険余裕度を統合し、判断情報を生成する。判断情報の詳細については後述する。
【0090】
最後に、情報提示装置60が運転者に判断情報の提示を行う(ステップS6)。以上のステップS1〜S6の処理を例えば0.1秒毎の周期で行う。
【0091】
(4)走行環境認識装置10
図4は自車両0および他車両iの車両状態を示す模式図である。
【0092】
図2の走行環境認識装置10は、図1のGPS104、加速度センサ105、ジャイロセンサ106および車速センサ107の出力信号に基づいて自身の速度、進行方向、加速度、加速方向、道路上の位置等からなる自車両0の車両状態に関する情報を取得するとともに、図1の通信装置108を用いて各他車両iと車車間通信を行うことにより各他車両iの車両状態に関する情報を取得する。
【0093】
走行環境認識装置10は、自車両0および各他車両iの車両状態に関する情報に基づいて、図4に示すように、自車両0の速度v0 、加速度a0 、加速方向ψ0 、他車両iの速度vi 、進行方向θi 、加速度ai および加速方向ψi 、自車両0と他車両iとの車間距離li 、ならびに他車両iの位置Ψi を車両状態として認識する。本実施の形態では、他車両iの位置Ψi は、自車両0から他車両iの方向で表される。
【0094】
なお、自車両0の加速方向ψ0 、他車両iの進行方向θi 、他車両iの加速方向ψi および他車両iの位置Ψi は、自車両0の進行方向θ0 を基準とする相対角で表される。
【0095】
車車間通信としては、例えば特許第3374042号に記載されている公知の方法を用いることができる。また、車車間通信の代わりに、路車間通信により基地局から他車両iの車両状態に関する情報を取得してもよい。この場合、路車間通信としては、DSRC(専用狭域通信:Dedicated Short Range Communication)等を用いることができる。
【0096】
(5)相対運動演算部20
図5は自車両0および他車両iの相対速度ベクトルを示す模式図である。
【0097】
なお、以下の説明で、各パラメータに付される添え字x,yはそれぞれベクトルの第1成分(自車両0と他車両iとを結ぶ方向に平行な成分)および第2成分(自車両0と他車両iとを結ぶ方向に垂直な成分)を表す。
【0098】
図2の相対運動演算部20は、走行環境認識装置10により認識された車両状態に基づいて、各他車両iと自車両0との相対運動を演算し、図5に示すように、相対速度ベクトルVreli =(Vrelxi,Vrelyi)および相対加速度ベクトルAreli =(Arelxi,Arelyi)を求める。
【0099】
相対速度ベクトルVreli の第1成分Vrelxiは、他車両iと自車両0とを結ぶ直線に平行な方向の軸に対する成分であり、自車両0に近づく方向に正の値を有する。相対速度ベクトルVreli の第2成分Vrelyiは、第1成分の軸に直交する方向に対する成分である。相対加速度ベクトルについても、同様の2つの方向に対する第1成分Arelxiおよび第2成分Arelyiが求められる。
【0100】
このようにして、N台の他車両i(i=1〜N)と自車両0との相対速度ベクトルVreli および相対加速度ベクトルAreli が求められる。
【0101】
(6)リスク評価部30
図6は図2のリスク評価部30の機能的な構成を示すブロック図である。
【0102】
図6に示すように、リスク評価部30は、顕在リスク評価部31、潜在リスク評価部32および1次危険顕在化判定部33により構成される。顕在リスク評価部31、潜在リスク評価部32および1次危険顕在化判定部33の機能はECU103およびプログラムにより実現される。
【0103】
(6−1)顕在リスク評価部31
図6の顕在リスク評価部31は、各他車両iについて、相対運動演算部20により求められた相対速度ベクトルVreli および車間距離li から次式により顕在リスクREMi を求める。
【0104】
【数1】

【0105】
ただし、Kは正の係数である。顕在リスクREMi は、衝突の危険度合いを表す。車間距離li が小さいほど衝突までの時間(TTC:Time to Collision)が小さくなり、衝突の危険度合いが大きくなる。また、相対速度ベクトルの第1成分Vrelxiが大きいほど衝突までの時間が小さくなり、衝突の危険度が大きくなる。
【0106】
ただし、相対速度ベクトルの第2成分Vrelyiの絶対値|Vrelyi|は互いの運動方向のずれの大きさを意味する。したがって、|Vrelyi|が大きい場合には、衝突の危険度合いは小さくなると考えることができる。
【0107】
(6−2)潜在リスク評価部32
図6の潜在リスク評価部32は、各他車両iについて、相対運動演算部20により求められた相対速度ベクトルVreli および車間距離li から潜在リスクレベルRPSLvi を評価する。潜在リスクレベルRPSLvi は4段階に分けられる。
【0108】
ここで、潜在リスクとは、自車両0と他車両iとの相対運動の突発的な動作変化による衝突の可能性の発生とそれに対する回避動作の存在の有無とを考慮した危険度である。
【0109】
(6−3)潜在リスクレベル
図7は潜在リスクレベルRPSLvi を示す図である。図7に示すように、潜在リスクレベルRPSLviは、レベル1、レベル2、レベル3およびレベル4の4段階に分けられる。
【0110】
レベル1は、自車両0と他車両iとの相対運動の突発的な変化が発生しても短時間でレベル3以上の状態に遷移する可能性が無い状態である。レベル2は、自車両0と他車両iとの相対運動の突発的な変化により短時間でレベル3に遷移する可能性があるがレベル4に変化する可能性は無い状態である。レベル3は、自車両0と他車両iとの相対運動の突発的な変化により短時間でレベル4に遷移する可能性がある状態である。レベル4は、危険の顕在化が確実となり、どのような回避行動も間に合わず衝突に到る状態である。
【0111】
潜在リスクレベルRPSLvi は、相対速度ベクトルVreli および車間距離li から求められる。潜在リスクレベルRPSLvi と相対速度ベクトルVreli および車間距離li との関係は、潜在リスクレベルマップとして予め求められ、ECU103のメモリに記憶される。
【0112】
(6−4)潜在リスクレベルマップ
図8は潜在リスクレベルマップの例を示す図である。図8の横軸は相対速度ベクトルの第1成分Vrelx を表し、縦軸は車間距離lを表す。図8は、説明を簡単にするために、自車両0は最大の加速度ベクトルAMAX =(AxMAX ,AyMAX )で回避動作が可能であると仮定した場合の例である。
【0113】
本例では、レベル4の領域は次式(2)のように定義される。
【0114】
【数2】

【0115】
ただし、他車両iが自車両0に近づく方向に直交する方向の相対運動において初速度を相対速度ベクトルVreli の第2成分Vrelyiとし、その第2成分Vrelyと同じ符号の方向における加速度を自車両0の最大の加速度ベクトルの第2成分AyMAXとした場合に、自車両0と他車両iとがすれ違うのに必要な距離R離れるためにかかる時間をtyとする。本例では、時間tyは次式のように定義される。
【0116】
【数3】

【0117】
レベル3の領域はレベル4の領域の上方を覆うように分布する。レベル3の領域では、車間距離li が小さい場合は相対速度ベクトルの第1成分Vrelx が小さく、かつ、式(1)の顕在リスクREMi が小さい値であっても、他車両iの突発的な動作変化によりレベル4に遷移する可能性がある。
【0118】
レベル2の領域はレベル3の領域の上方を覆うように分布し、レベル1の領域はレベル2の領域の上方を覆うように分布する。
【0119】
レベル1とレベル2との境界B1 、レベル2とレベル3との境界B2 およびレベル3とレベル4との境界B3 は、相対速度ベクトルの第1成分Vrelx の関数fB1(Vrelx )、fB2(Vrelx )およびfB3(Vrelx )として事前に定式化される。
【0120】
レベル3とレベル4との境界B3 を表す関数fB3 (Vrelx )は、上式(2)から次式のようになる。
【0121】
【数4】

【0122】
レベル2とレベル3との境界B2 を表す関数fB2 (Vrelx )は、次式のようになる。
【0123】
【数5】

【0124】
ただし、aMAX は他車両iが突発的に自車両0に近づく方向に動作する際に想定される加速度である。
【0125】
レベル1とレベル2との境界B1 を表す関数fB1 (Vrelx )は、次式のようになる。
【0126】
【数6】

【0127】
境界B1 ,B2 ,B3 を表す関数fB1(Vrelx ),fB2(Vrelx ),fB3(Vrelx )の導出方法については後述する。
【0128】
(6−5)1次危険顕在化判定部33
図6の1次危険顕在化判定部33は、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上と評価された他車両iについて、相対速度ベクトルVreli 、相対加速度ベクトルAreli および車間距離li から1次危険顕在化判定値EMEi を以下のように求める。1次危険顕在化判定値EMEi は、短時間後に潜在リスクレベルRPSLvi が3以上に変化する可能性があるか否かを表している。
【0129】
まず、相対速度ベクトルVreli および相対加速度ベクトルAreli から時間τ後に想定される相対速度ベクトル(想定相対速度ベクトル)Vrel*i を次式のように求める。
【0130】
Vrel*i =(Vrelxi+τ・Arelxi,Vrelyi+τ・Arelyi) ・・・(7)
ここで、時間τは短時間(例えば1秒)であるとする。
【0131】
次に、説明を簡単にするために時間τ後に車間距離li は変化無しとみなして、この想定相対速度ベクトルVrel*i における潜在リスクレベルRPSLvi を図8の潜在リスクレベルマップにより求める。その結果、潜在リスクレベルRPSLvi が3以上になる場合には、1次危険顕在化判定値EMEi を1とする。それ以外の場合には、1次危険顕在化判定値EMEi を0とする。
【0132】
(6−6)リスク評価処理
図9はリスク評価部30によるリスク評価処理を示すフローチャートである。図9において、変数iは他車両iを指定するために用いられ、Nは自車両0により認識される他車両の数を示す。
【0133】
まず、リスク評価部30は、変数iを1に設定する(ステップS11)。次に、相対速度ベクトルVreli および車間距離li から他車両iに対する顕在リスクREMi を評価する(ステップS12)。また、相対速度ベクトルVreliおよび車間距離li から他車両iに対する潜在リスクレベルRPSLvi を評価する(ステップS13)。
【0134】
その後、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上であるか否かを判別する(ステップS14)。潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の場合には、相対速度ベクトルVreli および相対加速度ベクトルAreli から短時間後の相対速度ベクトルを想定し、想定相対速度ベクトルVrel*iを用いて潜在リスクレベルRPSLvi を評価する(ステップS15)。
【0135】
さらに、評価された潜在リスクレベルRPSLvi が2以上であるか否かを判別する(ステップS16)。評価された潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の場合には、1次危険顕在化判定値EMEi を1に設定する(ステップS17)。
【0136】
ステップS14において潜在リスクレベルRPSLvi が2よりも低い場合およびステップS16において評価された潜在リスクレベルRPSLvi が2よりも低い場合には、1次危険顕在化判定値EMEi を0に設定する(ステップS20)。
【0137】
その後、変数iに1を加算し(ステップS18)、変数iがNを超えたか否かを判別する(ステップS19)。変数iがN以下の場合には、ステップS13に戻り、ステップS13〜S19の処理を繰り返す。変数iがNを超えた場合には、リスク評価処理を終了する。
【0138】
このようにして、他車両i(i=1〜N)について顕在リスクREMi 、潜在リスクレベルRPSLvi および1次危険顕在化判定値EMEi が算出される。
【0139】
(7)余裕度評価部40
次に、図2の余裕度評価部40の機能的な構成および動作について説明する。余裕度評価部40は、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の他車両iについて、自車両0が取り得る動作の対1次危険余裕度および対2次危険余裕度を求める。
【0140】
(7−1)対1次危険余裕度
ここで、1次危険とは、他車両iの突発的な動作変化による危険をいう。また、対1次危険余裕度とは、他車両iの突発的な動作変化に対して自車両0の回避動作により潜在リスクレベルRPSLvi を2以下に抑える場合の余裕度をいう。この対1次危険余裕度は、他車両iが潜在リスクレベルRPSLvi を高める方向に突発的に最大の動作変化を起こした場合に潜在リスクレベルRPSLvi を2以下に抑えるために最低限必要な自車両0の動作変化の大きさと、自車両0の動作変化の可能な最大値との比を用いて表される。
【0141】
なお、他車両iの突発的な動作変化および自車両0の動作変化はそれぞれ短時間で行われるため、ここでは、計算を簡単にするために、それらの動作変化にかかる時間および位置の変化は無いものとし、動作変化は相対速度の変化のみで表現されるものとする。
【0142】
(7−2)対1次危険余裕度の評価の概念
図10は対1次危険余裕度の評価の概念を示す図であり、(a)〜(c)は自車両0および他車両iの動作変化を示し、(d)は(a)〜(c)の動作変化に伴う潜在リスクレベルマップ上での状態遷移を示す。
【0143】
現在、自車両0とある他車両iとがある相対運動により図10(a)の状態であるとする。このとき、図10(d)に符号Aで示すように、潜在リスクレベルマップ上では、他車両iに対する自車両0の潜在リスクレベルRPSLvi は2である。
【0144】
ここで、他車両iが潜在リスクレベルRPSLvi を高める方向に突発的に最大の動作変化を起こしたと仮定し、その際の相対運動を推定する。この結果、潜在リスクレベルRPSLvi は3に上昇すると予測される。図10(b)の例では、他車両iが自車両0に近づく方向に最大の動作変化を起こしたと仮定する。このとき、図10(d)に符号Bで示すように、潜在リスクレベルマップ上では潜在リスクレベルRPSLvi は3となる。
【0145】
これに対して、自車両0の各種動作変化により潜在リスクレベルRPSLvi を2以下に抑えることを考える。例えば、図10(c)に示すように、自車両0が減速動作を行ったと仮定する。自車両0が最大の変化量で減速動作を行った場合には、図10(d)に符号Cで示すように、潜在リスクレベルマップ上で潜在リスクレベルRPSLvi は1となる。それに対して、潜在リスクレベルマップ上で符号C’で示すように、潜在リスクレベルRPSLvi が2と3との境界B2 になるために最低限必要な変化量を求める。この最低限必要な変化量と最大変化量との比に基づいて自車両0の動作変化の1つである減速動作に関して他車両iに対する余裕度が求められる。
【0146】
(7−3)対1次危険余裕度の算出方法
ここで、対1次危険余裕度の具体的な算出方法について説明する。まず、潜在リスクレベルRPSLvi を最大に高める他車両iの突発的な動作変化を仮定した際に想定される相対速度ベクトル(想定相対速度ベクトル)VrelMAXi=(VrelMAXxi ,VrelMAXyi )を次のように求める。
【0147】
本実施の形態では、他車両iはすべての方向に対して最大の加速度aMAX で動作変化を行うことが可能であるとする。その結果、短時間τ(例えば1秒)後の想定相対速度ベクトルVrelMAXi は次式のようになる。
【0148】
VrelMAXi=(Vrelxi+aMAXτ,Vrelyi) ・・・(8)
ここでは、計算を簡単にするために、このような相対速度ベクトルの変化は時間遅れ無し、かつ車間距離li の変化無しに生じるものとする。
【0149】
次に、このような突発的な相対運動の変化に対し、自車両0が即座にM種類の動作変化ACTj (j=1〜M)をそれぞれ行う場合のさらなる相対運動の変化および潜在リスクレベルRPSLvi を考える。
【0150】
ここでは、自車両0のM種類の動作変化ACTj として、前方(j=1)、右前方(j=2)、左前方(j=3)、右方(j=4)、左方(j=5)、右後方(j=6)、左後方(j=7)、および後方(j=8)への8種類(M=8)の動作変化を考えることとする。それぞれの動作変化ACTj により、潜在リスクレベルRPSLvi が2と3との境界B2 に遷移する際の変化量|ΔvACTj|を反復法(探索的手法)により求める。
【0151】
図11は自車両0が後方への動作変化ACT8 を行ったと仮定した場合の例を示す図である。
【0152】
ここで、自車両0の動作変化ACTj による速度変化ベクトルをvACTj =(vxACTj,vyACTj )とし、、速度変化ベクトルの大きさ(変化量)を|ΔvACTj|とし、単位速度ベクトルをveACTj とする。
【0153】
図11の例では、自車両0が後方への速度変化を変化量|ΔvACT8 |で行った場合を仮定している。このような速度変化の結果、想定相対速度ベクトルVrel*i は次式のようになる。
【0154】
Vrel*i =(Vrelxi+aMAXτ−vxACTj ,Vrelyi−vyACTj ) ・・・(9)
ここでも、計算を簡単にするために、このような速度変化は時間遅れ無し、かつ車間距離li の変化無しに生じるものとする。
【0155】
そして、図8の潜在リスクレベルマップにおいて、想定相対速度ベクトルVrel*i および現在の車間距離li で定まる点が境界B2 上に位置するために必要な変化量|ΔvACTj|を求める。このような変化量|ΔvACTj|を求める方法としては、例えば連立一次方程式の反復解法として一般的なヤコビ法、ガウス−ザイデル法、SOR法(Successive Over-Relaxation Method)等の反復法が挙げられる。反復法による変化量|ΔvACTj|の算出方法の詳細については後述する。
【0156】
このように求めた変化量|ΔvACTj|を用いて、自車両0の動作変化ACTj についての対1次危険余裕度S1stij を次式により求める。本実施の形態では、自車両0も他車両iと同様にすべての方向に対して最大の加速度aMAX で動作変化を行うことが可能であるとする。
【0157】
【数7】

【0158】
ただし、潜在リスクレベルRPSLvi が2と3との境界B2となる変化量|Δ ACTj|が存在しない動作変化ACTj については対1次危険余裕度S1stij を次式のように0とする。
【0159】
1stij=0 ・・・(11)
上式(9)から、自車両0の最大の加速度aMAX が大きいほど対1次危険余裕度S1stij が大きくなる。また、自車両0の動作変化ACTj により潜在リスクレベルRPSLvi が2と3との境界B2 に遷移する際の変化量|ΔvACTj|が小さいほど対1次危険余裕度S1stij が大きくなる。一方、自車両0の動作変化ACTj により潜在リスクレベルRPSLvi が2に遷移することができない場合には、対1次危険余裕度S1stij は0となる。
【0160】
(7−4)対2次危険余裕度
次に、2次危険とは、自車両0の突発的な動作変化による危険をいう。例えば、対象となる他車両iとは別の他車両の突発的な動作変化による1次危険に対して自車両0が回避動作を行った場合に他車両iに対して新たに2次危険が生じる。
【0161】
また、対2次危険余裕度とは、潜在リスクレベルRPSLvi を2以下に抑える際の自車両0の動作変化の許容量をいう。自車両0が動作変化を起こした場合に潜在リスクレベルRPSLvi を2以下に抑えるために許容可能な動作変化の大きさを推定する。この対2次危険余裕度は、許容可能な動作変化の大きさと、自車両0の動作変化の可能な最大値との比を用いて表される。それにより、自車両0の動作変化が2次危険に対してどの程度の余裕を有するかが評価される。
【0162】
なお、自車両0の動作変化は短時間で行われるため、ここでは、計算を簡単にするために、その動作変化にかかる時間および位置の変化は無いものとし、動作変化は相対速度の変化のみで表現されるものとする。
【0163】
(7−5)対2次危険余裕度の評価の概念
図12は対2次危険余裕度の評価の概念を示す図であり、(a)および(b)は自車両0および他車両iの動作変化を示し、(c)は(a)および(b)の動作変化に伴う潜在リスクレベルマップ上での状態遷移を示す。
【0164】
現在、自車両0と他車両iとがある相対運動により図12(a)の状態であるとする。このとき、図12(c)に符号Aで示すように、潜在リスクレベルマップ上では、他車両iに対する自車両0の潜在リスクレベルRPSLvi は2である。
【0165】
ここで、自車両0が何らかの理由で潜在リスクレベルRPSLvi を高める方向に突発的に動作変化を起こしたと仮定する。この結果、潜在リスクレベルRPSLvi は3に上昇すると予測される。図12(b)の例では、自車両0が対象としている他車両iとは別の他車両k(k≠i)(図示せず)との衝突すなわち1次危険を回避するために最大の変化量で減速動作を起こしたと仮定する。このとき、図12(c)に符号Bで示すように、潜在リスクレベルマップ上で潜在リスクレベルRPSLvi は3となる。
【0166】
それに対して、最大限許容される変化量は、潜在リスクレベルマップ上で符号B’で示すように、潜在リスクレベルRPSLvi が2と3との境界B2 になる量である。
【0167】
(7−6)対2次危険余裕度の算出方法
ここで、対2次危険余裕度の具体的な算出方法について説明する。まず、ある相対運動の関係を持つ他車両iに対して、自車両0がM種類の動作変化ACTj (j=1〜M)をそれぞれ行う場合の相対運動の変化および潜在リスクレベルRPSLvi を考える。
【0168】
それぞれの動作変化ACTj により、潜在リスクレベルRPSLvi が2と3との境界B2 に遷移する際の変化量|Δ ACTj|を反復法(探索的手法)により求める。
【0169】
図13は自車両0が後方への動作変化ACT8 を行ったと仮定した場合の例を示す図である。
【0170】
図13の例では、自車両0が後方への動作変化ACT8 を変化量|ΔvACT8|で行った場合を仮定している。このような速度変化の結果、想定相対速度ベクトルVrel*i は次式のようになる。
【0171】
Vrel*i=(Vrelxi−vxACTj ,Vrelyi−vyACTj )・・・(12)
ここでも、計算を簡単にするために、このような速度変化は時間遅れ無し、かつ車間距離li の変化無しに生じるものとする。
【0172】
そして、図8の潜在リスクレベルマップにおいて、想定相対速度ベクトルVrel*i および現在の車間距離li により定まる点が境界B2 上に位置するために必要な変化量|ΔvACTj|を求める。このような変化量|ΔvACTj|を求める方法としては、例えば連立一次方程式の反復解法として一般的なヤコビ法、ガウス−ザイデル法、SOR法等の反復法が挙げられる。反復法による変化量|ΔvACTj|の算出方法の詳細については後述する。
【0173】
このように求めた変化量|ΔvACTj|を用いて、自車両0の動作変化ACTjについての対2次危険余裕度S2ndij を次式により求める。本実施の形態では、自車両0も他車両iと同様に全ての方向に対して最大の加速度aMAX で動作変化を行うことが可能であるとする。
【0174】
【数8】

【0175】
ただし、潜在リスクレベルRPSLvi が2と3との境界B2 となる変化量|Δ ACTj|が存在しない動作変化については、対2次危険余裕度S2ndij を次式のように0とする。
【0176】
2ndij =1 ・・・(14)
(7−7)余裕度評価部40の機能的な構成
次に、余裕度評価部40の機能的な構成および動作について説明する。図14は図2の余裕度評価部40の機能的な構成を示すブロック図である。
【0177】
図14に示すように、余裕度評価部40は、1次危険相対運動想定部401、対1次危険余裕度評価部402および対2次危険余裕度評価部403を含む。1次危険相対運動想定部401、対1次危険余裕度評価部402および対2次危険余裕度評価部403の機能は、ECU103およびプログラムにより実現される。
【0178】
1次危険相対運動想定部401は、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の他車両iについて、相対速度ベクトルVreli =(Vrelxi,Vrelyi)から、他車両iが自車両0に近づく方向に最大限可能な動作変化を突発的に生じたと仮定した際の想定相対速度ベクトルVrelMAXi=(VrelMAXxi ,VrelMAXyi )を求める。
【0179】
対1次危険余裕度評価部402は、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の他車両iについて、想定相対速度ベクトルVrelMAXi から、自車両0のM種類の動作変化ACTj(j=1〜M)の対1次危険余裕度S1stij をそれぞれ求める。
【0180】
対2次危険余裕度評価部403は、各他車両i(1〜N)について、現在の相対速度ベクトルVreli =(Vrelxi,Vrelyi)から、自車両0のM種類の動作変化ACTj (j=1〜M)の対2次危険余裕度S2ndij をそれぞれ求める。
【0181】
(7−8)余裕度評価処理
図15は余裕度評価部40による余裕度評価処理を示すフローチャートである。図15において、変数iは他車両iを識別するために用いられ、Nは自車両0により認識される他車両の数を示す。また、変数jは動作変化の種類を表すために用いられ、Mは動作変化の種類の数を示す。以下の図16および図20においても同様である。
【0182】
まず、余裕度評価部40は変数iを1に設定し、変数jを1に設定する(ステップS21)。次に、他車両iの潜在リスクレベルRPSLvi が2以上であるか否かを判別する(ステップS22)。
【0183】
他車両iの潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の場合には、他車両iに対する自車両0の動作変化ACTjの対1次危険余裕度S1stij を評価する(ステップS23)。対1次危険余裕度S1stij の評価処理については後述する。また、他車両iに対する自車両0の動作変化ACTjの対2次危険余裕度S2ndij を評価する(ステップS24)。対2次危険余裕度S2ndij の評価処理については後述する。
【0184】
その後、変数jに1を加算し(ステップS25)、変数jがMを超えたか否かを判別する(ステップS26)。変数jがM以下の場合には、ステップS24に戻り、ステップS24〜S26の処理を繰り返す。
【0185】
ステップS22において他車両iの潜在リスクレベルRPSLvi が2よりも低い場合には、対1次危険余裕度S1stij を1に設定し、対2次危険余裕度S2ndij を1に設定し(ステップS29)、ステップS27に進む。
【0186】
変数jがMを超えた場合には、変数iに1を加算し(ステップS27)、変数iがNを超えたか否かを判別する(ステップS28)。変数iがN以下の場合には、ステップS23に戻り、ステップS23〜S28の処理を繰り返す。
【0187】
このようにして、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の他車両i(i=1〜N)について自車両0の動作変化ACTjの対1次危険余裕度S1stij および対2次危険余裕度S2ndij が算出される。
【0188】
(7−9)対1次危険余裕度の評価処理
図16は反復法による対1次危険余裕度の評価処理を示すフローチャートである。
【0189】
まず、対1次危険余裕度評価部402は、変化量|ΔvACTj|の初期値を例えば0.1・aMAXに設定する(ステップS31)。変化量|ΔvACTj|の初期値は任意の値に設定することができる。
【0190】
次に、1次危険相対運動想定部401は、他車両iが自車両0に近づく方向への突発的な動作変化を仮定し、想定相対速度ベクトルVrelMAXiを求める(ステップS32)。
【0191】
次に、対1次危険余裕度評価部402は、自車両0の変化量|ΔvACTj|による動作変化ACTj を仮定し、想定相対速度ベクトルVrel*i を求める(ステップS33)。
【0192】
また、潜在リスクレベルマップ上の境界B2の関数fB2(Vrel*i )の値と現在の車間距離li との差(以下、誤差と呼ぶ)を算出し、誤差の絶対値|fB2(Vrel*i )−li |が所定のしきい値Thより小さいか否かを判別する(ステップS34)。
【0193】
誤差の絶対値|fB2(Vrel*i )−li |がしきい値Thより小さい場合には、変化量|ΔvACTj|の動作変化ACTj により潜在リスクレベルRPSLvi が境界B2に十分に近づいたとみなすことができる。この場合、自車両0の動作変化ACTj についての対1次危険余裕度S1stij を上式(10)により算出し(ステップS35)、対1次危険余裕度S1stij の評価を終了する。
【0194】
ステップS34において誤差の絶対値|fB2(Vrel*i )−li |がしきい値Th以上の場合には、変化量|ΔvACTj|の動作変化ACTj により潜在リスクレベルRPSLvi が境界B2 に十分に近づいていないとみなすことができる。この場合、変化量|ΔvACTj|に誤差(fB2(Vrel*i )−li )に応じた修正量p(fB2(Vrel*i)−li )を加算することにより変化量|ΔvACTj|を更新する(ステップS36)。ここで、pは正の係数である。
【0195】
さらに、変化量|ΔvACTj|が負であるかまたはaMAXτよりも大きいかを判別する(ステップS37)。変化量|ΔvACTj|が0以上でかつaMAXτ以下の場合には、ステップS33に戻り、ステップS33,S34,S36,S37の処理を繰り返す。
【0196】
自車両0の動作変化ACTjがむしろ危険を増大させる場合には、変化量|ΔvACTj|は負になろうとする。また、この動作変化ACTjでは潜在リスクレベルRPSLvi が境界B2に到達できない場合には、変化量|ΔvACTj|はaMAXτを超える。したがって、ステップS37において変化量|ΔvACTj|が負であるかまたはaMAXτよりも大きい場合には、対1次危険余裕度S1stij を0とする(ステップS38)。これは、自車両0の動作変化ACTj により危険を回避することができないことを示している。この場合、対1次危険余裕度S1stij の評価を終了する。
【0197】
このようにして、反復法を用いて他車両iに対する自車両0の動作変化ACTj の対1次危険余裕度S1stij が算出される。
【0198】
(7−10)対1次危険余裕度の評価の具体例
図17〜図19は対1次危険余裕度評価の際の反復法による自車両の動作変化の変化量の探索例を示す図である。図17〜図19の横軸は相対速度ベクトルの第1成分Vrelx を表し、縦軸は車間距離lを表す。
【0199】
なお、各パラメータに付される添え字0,1,2は反復法の0ステップ目、1ステップ目および2ステップ目に得られるパラメータであることを表す。
【0200】
まず、初期状態(0ステップ目)では、図17に示すように、潜在リスクレベルマップ上で現在の状態が点Pに位置するものとする。現在の車間距離はli であり、現在の相対速度ベクトルの第1成分はVrelxi である。現在の状態から他車両iの突発的な動作変化を仮定する。他車両iの突発的な動作変化により状態は点P0に遷移する。
【0201】
初期条件として、自車両0の動作変化ACTjの変化量|Δv0ACTj|、自車両0の速度変化ベクトルv0ACTjおよび想定相対速度ベクトルVrel0*i を次式のように設定する。
【0202】
|Δv0ACTj|=0.1・|AACTjMAX
0ACTj=|Δv0ACTj|veACTj
Vrel0*i =VrelMAXi
ここで、|AACTjMAX |は動作変化ACTj が可能な最大の加速度の大きさ、|Δv0ACTj|は動作変化ACTjの大きさ(変化量)、veACTj は単位速度ベクトル、VrelMAXi は潜在リスクレベルRPSLvi を最大に高める他車両iの動作変化の際の想定相対速度ベクトルである。点P0での想定相対速度ベクトルの第1成分Vrel0x*iはVrelMAXxiとなる。
【0203】
また、点P0での想定相対速度ベクトルの第2成分Vrel0y*iはVrelMAXyiとなるため、境界B2の関数はfB2(Vrelx,Vrely)からfB2(Vrelx , Vrel0y*i)に変化し、潜在リスクレベルマップ上での境界B2の位置が図17に実線で示す位置(図18に点線で示す位置)から矢印δ0 で示すように、図18に実線で示す位置に変化する。
【0204】
次に、1ステップ目で自車両0が他車両iから遠ざかる方向へ変化量|Δv0ACTj|の動作変化ACTjを行うことを仮定する。ここで、想定相対速度ベクトルVrel1*i は次式のようになる。
【0205】
Vrel1*i =Vrel0*i −v0ACTj
この場合、想定相対速度ベクトルの第1成分および第2成分は次式のようになる。
【0206】
Vrel1x*i=Vrel0x*i−v0XACTj
Vrel1y*i =Vrel0y*i −v0yACTj
その結果、図18に示すように、潜在リスクレベルマップ上の状態が点P1に遷移する。この場合、境界B2の関数がfB2(Vrelx,Vrel0y*i)からfB2(Vrelx,Vrel1y*i)に変化し、潜在リスクレベルマップ上での境界B2 の位置が図18に実線で示す位置(図19に点線で示す位置)から矢印δ1 で示すように、図19に実線で示す位置に変化する。
【0207】
ここで、車間距離lの方向における点P1と境界B2 との誤差Δ1 を次式により評価する。
【0208】
Δ1 =fB2(Vrelx,Vrel1y*i)−li
この誤差Δ1 に応じて変化量|Δv0ACTj |を次式のように|Δv1ACTj |に更新し、更新された変化量|Δv1ACTj |に基づいて速度変化ベクトルv1ACTj を求める。
【0209】
|Δv1ACTj |=|Δv0ACTj |+pΔ1
1ACTj=|Δv1ACTj|veACTj
ここで、pは正の係数である。変化量|Δv1ACTj |に基づいて次式のように想定相対速度ベクトルVrel1*iをVrel2*iに更新する。
【0210】
Vrel2*i=Vrel1*i−v1ACTj
この場合、想定相対速度ベクトルの第1成分および第2成分は次式のようになる。
【0211】
Vrel2x*i=Vrel1x*i−v1xACTj
Vrel2y*i=Vrel1y*i −v1yACTj
図19に示すように、潜在リスクレベルマップ上の状態が点P2に遷移する。さらに、更新された想定相対速度ベクトルVrel2*i に基づいて境界B2の関数をfB2(Vrelx,Vrel2y*i)に更新する。
【0212】
以後、同様の処理を反復することにより車間距離li が境界B2 に近づく。
【0213】
反復法による最適な変化量|ΔvACTj|の探索を要約すると次のようになる。ここで、sはステップを表す。
【0214】
(a)まず、車間距離lの方向における車間距離li と境界B2との誤差Δsを次式により評価する。
【0215】
Δs=fB2(Vrelsx*i,Vrelsy*i)−li
誤差Δs がしきい値Thよりも小さくなれば、処理を終了する。
【0216】
(b)誤差Δs がしきい値Th以上の場合には、誤差Δs に応じて変化量|Δvs-1ACTj |を次式のように|ΔvsACTj |に更新し、更新された変化量|ΔvsACTj|に基づいて速度変化ベクトルvsACTj を求める。
【0217】
|ΔvsACTj|=|Δvs-1ACTj|+pΔs
sACTj=|ΔvsACTj|veACTj
(c)その後、想定相対速度ベクトルVrels*i を速度変化ベクトルvsACTjを用いて次式のようにVrels+1*iに更新する。
【0218】
Vrels+1*i =Vrels*i −vsACTj
この場合、想定相対速度ベクトルの第1成分および第2成分は次式のようになる。
【0219】
Vrel(s+1)x*i =Vrelsx*i −vsxACTj
Vrel(s+1)y*i =Vrelsy*i −vsyACTj
さらに、更新された想定相対速度ベクトルVrels+1*i に基づいて境界B2の関数をfB2(Vrelx,Vrel(s+1)y*i)に更新する。
【0220】
その後、sに1を加算し、誤差Δsがしきい値Thよりも小さくなるまで上記の(a)〜(c)の処理を繰り返す。
【0221】
(7−11)対2次危険余裕度の評価処理
図20は反復法による対2次危険余裕度の評価処理を示すフローチャートである。
【0222】
まず、対2次危険余裕度評価部403は、変化量|ΔvACTj|の初期値を例えば0.1・aMAX に設定する(ステップS41)。変化量|ΔvACTj|の初期値は任意の値に設定することができる。
【0223】
次に、自車両0の変化量|ΔvACTj|による動作変化ACTjを仮定し、想定相対速度ベクトルVrel*i を求める(ステップS42)。
【0224】
次に、潜在リスクレベルマップ上の境界B2の関数fB2(Vrel*i )の値と現在の車間距離li との差(以下、誤差と呼ぶ。)を算出し、誤差の絶対値|fB2(Vrel*i )−li |が所定のしきい値Thより小さいか否かを判別する(ステップS43)。
【0225】
誤差の絶対値|fB2(Vrel*i )−li |がしきい値Thより小さい場合には、変化量|ΔvACTj|による動作変化ACTj により潜在リスクレベルRPSLvi が境界B2 に十分に近づいたとみなすことができる。この場合、自車両0の動作変化ACTj についての対2次危険余裕度S2stij を上式(13)により算出し(ステップS44)、対2次危険余裕度S2stij の評価を終了する。
【0226】
ステップS43において誤差の絶対値|fB2(Vrel*i )−li |がしきい値Th以上の場合には、変化量|ΔvACTj|の動作変化ACTj により潜在リスクレベルRPSLvi が境界B2 に十分に近づいていないとみなすことができる。この場合、変化量|ΔvACTj|に誤差(fB2(Vrel*i )−li )に応じた修正量p(fB2(Vrel*i )−li )を加算することにより変化量|ΔvACTj|を更新する(ステップS45)。ここで、pは正の係数である。
【0227】
さらに、変化量|ΔvACTj|が負であるかまたはaMAXτよりも大きいかを判別する(ステップS46)。変化量|ΔvACTj|が0以上でかつaMAXτ以下の場合には、ステップS42に戻り、ステップS42,S43,S45,S46の処理を繰り返す。
【0228】
自車両0の動作変化ACTj がむしろ危険を減少させる場合には、変化量|ΔvACTj|は負になろうとする。また、この動作変化ACTj では潜在リスクレベルRPSLvi が境界B2に到達できない場合には、変化量|ΔvACTj|はaMAXτを超える。したがって、ステップS46において変化量|ΔvACTj|が負であるかまたはaMAXτよりも大きい場合には、対2次危険余裕度S1stij を1とする(ステップS47)。これは、自車両0の動作変化ACTj では危険になり得ないことを示している。この場合、対2次危険余裕度S1stij の評価を終了する。
【0229】
このようにして、反復法を用いて他車両iに対する自車両0の動作変化ACTj の対2次危険余裕度S1stij が算出される。
【0230】
(7−12)対2次危険余裕度の評価の具体例
図21〜図23は対1次危険余裕度評価の際の反復法による自車両の動作変化の変化量の探索例を示す図である。図21〜図23の横軸は相対速度ベクトルの第1成分Vrelx を表し、縦軸は車間距離lを表す。
【0231】
なお、各パラメータに付される添え字0,1,2は反復法の0ステップ目、1ステップ目および2ステップ目に得られるパラメータであることを表す。
【0232】
まず、初期状態(0ステップ目)では、図21に示すように、潜在リスクレベルマップ上で現在の状態が点P0に位置するものとする。現在の車間距離はli であり、現在の相対速度ベクトルの第1成分はVrelxi である。
【0233】
初期条件として、自車両0の動作変化ACTjの変化量|Δv0ACTj|、自車両0の速度変化ベクトルv0ACTjおよび想定相対速度ベクトルVrel0*i を次式のように設定する。
【0234】
|Δv0ACTj|=0.1・|AACTjMAX
0ACTj=|Δv0ACTj|veACTj
Vrel0*i =Vreli
ここで、|AACTjMAX|は動作変化ACTjが可能な最大の加速度の大きさ、|Δv0ACTj|は動作変化ACTjの大きさ(変化量)、veACTj は単位速度ベクトルである。点P0での想定相対速度ベクトルの第1成分Vrel0x*iはVrelxi、第2成分Vrel0y*iはVrelyiとなり、その際の境界B2の関数はfB2(Vrelx,Vrel0y*i)と表される。
【0235】
次に、1ステップ目で自車両0が他車両iに近づく方向へ変化量|Δv0ACTj|の動作変化ACTjを行うことを仮定する。ここで、想定相対速度ベクトルVrel1*i は次式のようになる。
【0236】
Vrel1*i =Vrel0*i −v0ACTj
自車両0が他車両iに近づく場合には、変化量|Δv0ACTj|は負となり、速度変化ベクトルv0ACTjは負となるので、上式の想定相対速度ベクトルVrel1*i の大きさは大きくなる。なお、ここでは、便宜上、絶対値記号で表される変化量|Δv0ACTj|が負の値をとり得るものとしている。想定相対速度ベクトルの第1成分および第2成分は次式のようになる。
【0237】
Vrel1x*i=Vrel0x*i−v0xACTj
Vrel1y*i=Vrel0y*i−v0yACTj
その結果、図22に示すように、潜在リスクレベルマップ上の状態が点P1に遷移する。この場合、境界B2の関数はfB2(Vrelx,Vrel0y*i)からfB2(Vrelx,Vrel1y*i)に変化し、潜在リスクレベルマップ上での境界B2の位置が図21に実線で示す位置(図22に点線で示す位置)から矢印δ0 で示すように、図22に実線で示す位置に変化する。
【0238】
ここで、車間距離lの方向における点P1と境界B2 との誤差Δ1 を次式により評価する。
【0239】
Δ1 =fB2(Vrel1x*i,Vrel1y*i)−li
この誤差Δ1 に応じて変化量|Δv0ACTj |を次式のように|Δv1ACTj |に更新し、更新された変化量|Δv1ACTj |に基づいて速度変化ベクトルv1ACTj を求める。
【0240】
|Δv1ACTj |=|Δv0ACTj |+pΔ1
1ACTj=|Δv1ACTj|veACTj
ここで、pは正の係数である。変化量|Δv1ACTj |に基づいて次式のように想定相対速度ベクトルVrel1*iをVrel2*iに更新する。
【0241】
Vrel2*i=Vrel1*i−v1ACTj
この場合、想定相対速度ベクトルの第1成分は次式のようになる。
【0242】
Vrel2x*i=Vrel1x*i−v1xACTj
Vrel2y*i=Vrel1y*i−v1yACTj
図23に示すように、潜在リスクレベルマップ上の状態が点P2に遷移する。さらに、更新された想定相対速度ベクトルVrel2*i に基づいて境界B2の関数をfB2(Vrelx,Vrel2y*i)に更新する。その結果、潜在リスクレベルマップ上での境界B2 の位置が図22に実線で示す位置(図23に点線で示す位置)から矢印δ1 で示すように、図23に実線で示す位置に変化する。
【0243】
以後、同様の処理を反復することにより車間距離liが境界B2に近づく。
【0244】
反復法による最適な変化量|Δv1ACTj |の探索を要約すると、対2次危険余裕度評価の際の(a)〜(c)の処理と同様になる。
【0245】
(8)判断情報生成部50
図2の判断情報生成部50は、各他車両i(1〜N)についての顕在リスクREMi 、潜在リスクレベルRPSLvi 、1次危険顕在化判定値EMEi 、自車両0のM種類の動作変化ACTj (j=1〜M)についての対1次危険余裕度S1stij および対2次危険余裕度S2ndij に基づいて判断情報CONを生成する。
【0246】
本実施の形態では、判断情報生成部50は、判断情報CONとして第1〜第7判断情報を生成し、生成された第1〜第7判断情報のうち少なくとも1つを情報提示装置60に出力する。
【0247】
(8−1)第1〜第7判断情報
判断情報生成部50は、第1判断情報として、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の他車両iについてその位置Ψi を識別子“1”とともに判断情報CONに次のように記述する。
【0248】
CON={1,Ψm ,Ψn ,・・・} ・・・(15)
ここで、識別子“1”は判断情報CONが第1判断情報であることを示す。また、mおよびnは潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の他車両を示す。
【0249】
判断情報生成部50は、第2判断情報として、顕在リスクREMi が所定のしきい値Rthより小さくかつ潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の他車両iについてその位置Ψi を識別子“2”とともに判断情報CONに次のように記述する。
【0250】
CON={2,Ψm ,Ψn ,・・・} ・・・(16)
ここで、識別子“2”は判断情報CONが第2判断情報であることを示す。また、mおよびnは顕在リスクREMi がしきい値Rthより小さく潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の他車両を示す。
【0251】
判断情報生成部50は、第3判断情報として、1次危険顕在化判定値EMEi が1の他車両iについてその位置Ψi を識別子“3”とともに判断情報CONに次のように記述する。
【0252】
CON={3,Ψm ,Ψn ,・・・} ・・・(17)
ここで、識別子“3”は判断情報CONが第3判断情報であることを示す。また、mおよびnは1次危険顕在化判定値EMEi が1の他車両を示す。
【0253】
判断情報生成部50、第4判断情報として、1次危険顕在化判定値EMEi が1の他車両iについてその位置Ψi および顕在リスクREMi を識別子“4”とともに判断情報CONに次のように記述する。
【0254】
CON={4,Ψm ,REMm ,Ψn ,REMn,・・・} ・・・(18)
ここで、識別子“4”は判断情報CONが第4判断情報であることを示す。また、mおよびnは1次危険顕在化判定値EMEi が1の他車両を示す。
【0255】
判断情報生成部50は、第5判断情報として、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上で総合的な余裕度STotaliが所定のしきい値Sthより小さい他車両iについてその位置Ψi を識別子“5”とともに判断情報CONに次のように記述する。
【0256】
CON={5,Ψm ,Ψn ,・・・} ・・・(19)
ここで、識別子“5”は判断情報CONが第5判断情報であることを示す。また、mおよびnは潜在リスクレベルRPSLvi が2以上で総合的な余裕度STotaliがしきい値Sthより小さい他車両を示す。
【0257】
上記の総合的な余裕度STotaliは、他車両iの突発的な動作変化により1次危険が顕在化した際の自車両0の余裕度であり、対1次危険余裕度S1stij および対2次危険余裕度S2ndij から次式により演算する。
【0258】
【数9】

【0259】
ここで、minki2ndkjは別の他車両kに対する対2次危険余裕度S2ndkj の最小値である。また、max{S1stij +minki2ndkj}は、他車両iに対する対1次危険余裕度S1stijと別の他車両kに対する対2次危険余裕度S2ndkj の最小値minki2ndkjとの和のうちの最大値である。
【0260】
判断情報生成部50は、第6判断情報として、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上で総合的な余裕度STotaliがしきい値Sthより小さい他車両iについてその位置Ψi および推奨動作変化ACTRECiを識別子“6”とともに判断情報CONに次のように記述する。
【0261】
CON={6,Ψm ,ACTRECm,Ψn ,ACTRECn,・・・} ・・・(21)
ここで、識別子“6”は判断情報CONが第6判断情報であることを示す。また、mおよびnは潜在リスクレベルRPSLvi が2以上で総合的な余裕度STotaliがしきい値Sthより小さい他車両を示す。推奨動作変化ACTRECiの演算方法については後述する。
【0262】
判断情報生成部50は、第7判断情報として、1次危険顕在化判定値EMEi が1の他車両iについてその位置Ψi および推奨動作変化ACTRECiを識別子“7”とともに判断情報CONに次のように記述する。
【0263】
CON={7,Ψm ,ACTRECm,Ψn ,ACTRECn,・・・} ・・・(22)
ここで、識別子“7”は判断情報CONが第7判断情報であることを示す。また、mおよびnは1次危険顕在化判定値EMEi が1の他車両を示す。推奨動作変化ACTRECiの演算方法については後述する。
【0264】
本実施の形態では、他車両iの位置Ψi は自車両0から他車両iの方向で表される。
【0265】
以上のような他車両が存在しない場合には、判断情報CONとして以下のように順に記述する。
【0266】
CON={8} ・・・(23)
ここで、識別子“8”は判断情報CONを生成しないことを示す。
【0267】
(8−2)判断情報の生成処理
図24は判断情報生成部50による判断情報CONの生成処理を示すのフローチャートである。
【0268】
まず、判断情報生成部50は、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の他車両iについて、その位置Ψi を第1判断情報として生成する(ステップS51)。
【0269】
次に、判断情報生成部50は、顕在リスクREMi がしきい値Rthより小さく、かつ潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の他車両iについて、その位置Ψi を第2判断情報として生成する(ステップS52)。
【0270】
また、判断情報生成部50は、1次危険顕在判定値EMEi が1の他車両iについて、その位置Ψi を第3判断情報として生成する(ステップS53)。
【0271】
さらに、判断情報生成部50は、1次危険顕在判定値EMEi が1の他車両iについて、顕在リスクREMi およびその位置Ψi を第4判断情報として生成する(ステップS54)。
【0272】
次いで、判断情報生成部50は、潜在リスクレベルRPSLviが2以上で総合的な余裕度STotaliがしきい値Sthより小さい他車両iについて、その位置Ψi を第5判断情報として生成する(ステップS55)。
【0273】
また、判断情報生成部50は、潜在リスクレベルRPSLviが2以上で総合的な余裕度STotaliがしきい値Sthより小さい他車両について、最も総合的な余裕度STotaliの高い動作変化を推奨動作変化ACTRECiとして選択し、その推奨動作変化ACTRECiをその他車両iの位置Ψi とともに第6判断情報として生成する(ステップS56)。
【0274】
さらに、判断情報生成部50は、1次危険顕在判定値EMEi が1の他車両iについて、最も総合的な余裕度STotaliの高い動作変化を推奨動作変化ACTRECiとして選択し、その推奨動作変化ACTRECiをその他車両iの位置Ψi とともに第7判断情報として生成する(ステップS57)。
【0275】
最後に、判断情報生成部50は、第1〜第7判断情報のうち少なくとも1つを情報提示装置60に出力する(ステップS58)。
【0276】
なお、第1〜第7判断情報に優先順位を設け、最も高い優先順位を有する判断情報CONが生成された時点で判断情報CONの生成を中止し、最も高い優先順位を有する判断情報CONを情報提示装置60に出力してもよい。
【0277】
次に、図25〜図32を参照しながら第1〜第7判断情報の生成処理について説明する。図25〜図32において、変数iは他車両iを指定するために用いられ、Nは自車両0により認識される他車両の数を示す。
【0278】
(8−3)第1判断情報の生成処理
図25は第1判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【0279】
まず、判断情報生成部50は変数iを1に設定する(ステップS61)。次に、判断情報CONに識別子を記述する(ステップS62)。ここでは、識別子は1である。識別子が1である場合には、判断情報CONが第1判断情報であることを示す。
【0280】
次に、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上であるか否かを判別する(ステップS63)。潜在リスクレベルRPSLvi が2以上である場合には、判断情報CONに他車両iの位置Ψi を記述する(ステップS64)。その後、変数iに1を加算する(ステップS65)。ステップS63で潜在リスクレベルRPSLvi が2より低い場合には、ステップS65に進む。
【0281】
次に、変数iがNを超えたか否かを判別する(ステップS66)。変数iがN以下の場合には、ステップS63に戻り、ステップS63〜S66の処理を繰り返す。変数iがNを超えた場合には処理を終了する。
【0282】
このようにして、第1判断情報は、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の他車両iの位置Ψi を示す。
【0283】
(8−4)第2判断情報の生成処理
図26は第2判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【0284】
まず、判断情報生成部50は変数iを1に設定する(ステップS71)。次に、判断情報CONに識別子を記述する(ステップS72)。ここでは、識別子は2である。識別子が2である場合には、判断情報CONが第2判断情報であることを示す。
【0285】
次に、他車両iの顕在リスクREMi がしきい値Rthより小さいか否かを判別する(ステップS73)。他車両iの顕在リスクREMi がしきい値Rthより小さい場合には、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上であるか否かを判別する(ステップS74)。
【0286】
潜在リスクレベルRPSLvi が2以上である場合には、判断情報CONに他車両iの位置Ψi を記述する(ステップS75)。その後、変数iに1を加算する(ステップS76)。
【0287】
ステップS73で他車両iの顕在リスクREMi がしきい値Rth以上の場合およびステップS74で潜在リスクレベルRPSLvi が2よりも小さい場合には、ステップS76に進む。
【0288】
次に、変数iがNを超えたか否かを判別する(ステップS77)。変数iがN以下の場合には、ステップS73に戻り、ステップS73〜S77の処理を繰り返す。変数iがNを超えた場合には処理を終了する。
【0289】
このようにして、第2判断情報は、顕在リスクREMi がしきい値Rthより小さくかつ潜在リスクレベルRPSLvi が2以上である他車両iの位置Ψi を示す。
【0290】
(8−5)第3判断情報の生成処理
図27は第3判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【0291】
まず、判断情報生成部50は変数iを1に設定する(ステップS81)。次に、判断情報CONに識別子を記述する(ステップS82)。ここでは、識別子は3である。識別子が3である場合には、判断情報CONが第3判断情報であることを示す。
【0292】
次に、他車両iの1次危険顕在化判定値EMEi が1であるか否かを判別する(ステップS83)。他車両iの1次危険顕在化判定値EMEi が1である場合には、判断情報CONに他車両iの位置Ψi を記述する(ステップS84)。その後、変数iに1を加算する(ステップS85)。ステップS83で1次危険顕在化判定値EMEi が1でない場合には、ステップS85に進む。
【0293】
次に、変数iがNを超えたか否かを判別する(ステップS86)。変数iがN以下の場合には、ステップS83に戻り、ステップS83〜S86の処理を繰り返す。変数iがNを超えた場合には処理を終了する。
【0294】
このようにして、第3判断情報は、1次危険顕在化判定値EMEi が1の他車両iの位置Ψi を示す。
【0295】
(8−6)第4判断情報の生成処理
図28は第4判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【0296】
まず、判断情報生成部50は変数iを1に設定する(ステップS91)。次に、判断情報CONに識別子を記述する(ステップS92)。ここでは、識別子は4である。識別子が4である場合には、判断情報CONが第4判断情報であることを示す。
【0297】
次に、他車両iの1次危険顕在化判定値EMEi が1であるか否かを判別する(ステップS93)。他車両iの1次危険顕在化判定値EMEi が1である場合には、判断情報CONに他車両iの位置Ψi および顕在リスクREMi を記述する(ステップS94)。その後、変数iに1を加算する(ステップS95)。ステップS93で1次危険顕在化判定値EMEi が1でない場合には、ステップS95に進む。
【0298】
次に、変数iがNを超えたか否かを判別する(ステップS96)。変数iがN以下の場合には、ステップS93に戻り、ステップS93〜S96の処理を繰り返す。変数iがNを超えた場合には処理を終了する。
【0299】
このようにして、第4判断情報は、1次危険顕在化判定値EMEi が1である他車両iの位置Ψi および顕在リスクREMi を示す。
【0300】
(8−7)第5判断情報の生成処理
図29は第5判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【0301】
まず、判断情報生成部50は変数iを1に設定する(ステップS101)。次に、判断情報CONに識別子を記述する(ステップS102)。ここでは、識別子は5である。識別子が5である場合には、判断情報CONが第5判断情報であることを示す。
【0302】
次に、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上であるか否かを判別する(ステップS103)。潜在リスクレベルRPSLvi が2以上である場合には、他車両iに対する総合的な余裕度STotaliを演算する(ステップS104)。
【0303】
次に、総合的な余裕度STotaliがしきい値Sthよりも小さいか否かを判別する(ステップS105)。総合的な余裕度STotaliがしきい値Sthよりも小さい場合には、判断情報CONに他車両iの位置Ψi を記述する(ステップS106)。その後、変数iに1を加算する(ステップS107)。ステップS103で潜在リスクレベルRPSLvi が2より低い場合およびステップS105で総合的な余裕度STotaliがしきい値Sth以上の場合には、ステップS107に進む。
【0304】
次に、変数iがNを超えたか否かを判別する(ステップS108)。変数iがN以下の場合には、ステップS103に戻り、ステップS103〜S108の処理を繰り返す。変数iがNを超えた場合には処理を終了する。
【0305】
このようにして、第5判断情報は、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上で総合的な余裕度STotaliがしきい値Sthよりも小さい他車両iの位置Ψi を示す。
【0306】
(8−8)第6判断情報の生成処理
図30は第6判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【0307】
まず、判断情報生成部50は変数iを1に設定する(ステップS111)。次に、判断情報CONに識別子を記述する(ステップS112)。ここでは、識別子は6である。識別子が6である場合には、判断情報CONが第6判断情報であることを示す。
【0308】
次に、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上であるか否かを判別する(ステップS113)。潜在リスクレベルRPSLvi が2以上である場合には、他車両iに対する総合的な余裕度STotaliおよび他車両iの突発的な動作変化を仮定した際の推奨動作変化の種類RECi を演算する(ステップS114)。
【0309】
ここで、推奨動作変化とは、潜在リスクレベルRPSLvi が高い他車両iによる1次危険を回避するための自車両0の動作変化のうち総合的な余裕度STotaliが高い回避動作である。推奨動作変化の種類RECi の演算処理については後述する。
【0310】
次に、判断情報CONに他車両iの位置Ψi および推奨動作変化ACTRECiを記述する(ステップS115)。
【0311】
その後、変数iに1を加算する(ステップS116)。ステップS113で潜在リスクレベルRPSLvi が2より低い場合には、ステップS116に進む。
【0312】
次に、変数iがNを超えたか否かを判別する(ステップS117)。変数iがN以下の場合には、ステップS113に戻り、ステップS113〜S117の処理を繰り返す。変数iがNを超えた場合には処理を終了する。
【0313】
このようにして、第6判断情報は、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の他車両iの位置Ψi および推奨動作変化ACTRECiを示す。
【0314】
(8−9)第7判断情報の生成処理
図31は第7判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【0315】
まず、判断情報生成部50は変数iを1に設定する(ステップS121)。次に、判断情報CONに識別子を記述する(ステップS122)。ここでは、識別子は7である。識別子が7である場合には、判断情報CONが第7判断情報であることを示す。
【0316】
次に、他車両iの1次危険顕在化判定値EMEi が1であるか否かを判別する(ステップS123)。他車両iの1次危険顕在化判定値EMEi が1である場合には、他車両iに対する総合的な余裕度STotaliおよび他車両iの突発的な動作変化を仮定した際の推奨動作変化の種類RECi を演算する(ステップS124)。
【0317】
ここで、推奨動作変化とは、衝突の危険の顕在化の過程にある他車両iによる1次危険を回避するための自車両0の動作変化のうち総合的な余裕度STotaliが高い回避動作である。推奨動作変化の種類RECi の演算処理については後述する。
【0318】
次に、判断情報CONに他車両iの位置Ψi および推奨動作変化ACTRECiを記述する(ステップS125)。その後、変数iに1を加算する(ステップS126)。ステップS123で1次危険顕在化判定値EMEi が1でない場合には、ステップS126に進む。
【0319】
次に、変数iがNを超えたか否かを判別する(ステップS126)。変数iがN以下の場合には、ステップS123に戻り、ステップS123〜S127の処理を繰り返す。変数iがNを超えた場合には処理を終了する。
【0320】
このようにして、第7判断情報は、1次危険顕在化判定値EMEi が1の他車両iの位置Ψi および推奨動作変化ACTRECiを示す。
【0321】
(8−10)推奨動作変化の種類の演算
次に、他車両iに対する総合的な余裕度および他車両iの突発的な動作変化を仮定した際の推奨動作変化の種類の演算処理について説明する。
【0322】
図32は推奨動作変化の種類の演算処理を示すフローチャートである。図32において、変数jは他車両iの動作変化の種類を表し、Mは動作変化の種類の総数を表す。
【0323】
まず、判断情報生成部50は総合的な余裕度STotaliを0に設定し、変数jを1に設定する(ステップS131)。
【0324】
次に、Sij=S1stij+minki2ndkj を演算する(ステップS132)。すなわち、動作変化ACTjについて、他車両iに対する対1次危険余裕度S1stijと、別の他車両kに対する対2次危険余裕度S2ndkj の最小値minki2ndkjとを加算することにより、余裕度 ijを演算する。ここで、i≠kである。
【0325】
次に、余裕度Sijが総合的な余裕度STotaliを超えたか否かを判別する(ステップS133)。余裕度Sijが総合的な余裕度STotaliを超えた場合には、総合的な余裕度STotaliを余裕度Sijに設定し、推奨動作変化の種類RECiを変数jに設定する(ステップS134)。
【0326】
その後、変数jに1を加算する(ステップS135)。ステップS133で余裕度Sijが総合的な余裕度STotali以下の場合には、ステップS135に進む。
【0327】
次に、変数jがMを超えたか否かを判別する(ステップS136)。変数jがM以下の場合には、ステップS133に戻り、ステップS133〜S136の処理を繰り返す。変数jがMを超えた場合には処理を終了する。
【0328】
このようにして、図30のステップS114および図31のステップS124における推奨動作変化の種類RECiが演算される。
【0329】
(9)情報提示装置60
図2の情報提示装置60は、判断情報生成部50から出力された判断情報CONを運転者に対して提示する。
【0330】
情報提示装置60は、音像定位オーディオシステム110により運転者が対象となる他車両iの方向から聴覚するように判断情報CONの識別子に応じて異なるパターンの警告音を発生する。
【0331】
これにより、運転者は警告音の方向およびパターンに基づいて危険な他車両iおよび余裕度を認識することができる。
【0332】
例えば、判断情報CONの識別子が4の場合、情報提示装置60は、音像定位オーディオシステム110により対象となる他車両iの方向から運転者が聴覚するように連続的な警告音を発生する。この場合、その対象となる他車両iの顕在リスクの大きさに従って警告音の大きさを変化させる。
【0333】
また、判断情報CONの識別子が5の場合、情報提示装置60は、例えば、音像定位オーディオシステム110により対象となる他車両iの方向から運転者が聴覚するように一定周期の断続的なパターン(例えば1秒毎)の警告音を発生する。
【0334】
これにより、運転者は同方向から継続的に警告音を聴覚すると、対象となる他車両iの不意の動作変化に対する自身の回避動作に余裕が無いことを認識することができる。その結果、運転者が余裕を生成する運転動作を自発することが期待できる。
【0335】
なお、情報提示装置60は、判断情報CONの識別子が8の場合には、特に情報提示を行わない。
【0336】
(10)運転判断支援装置200の効果
本実施の形態に係る運転判断支援装置200においては、自車両0と他車両iとの相対運動に基づいて予測される衝突の危険度合いおよび自車両0および他車両iの少なくとも一方の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いに基づく判断情報CONが運転者に提示される。したがって、運転者は、走行環境に顕在する危険および潜在する危険を予防および回避することが可能となる。その結果、さらに現実の走行環境に即した運転を行うことができる。
【0337】
特に、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上である他車両iの位置Ψi を示す第1判断情報が運転者に提示される。それにより、運転者は、潜在リスクレベルRPSLvi が高い他車両iを容易に把握することができる。その結果、潜在リスクレベルRPSLvi が高い他車両iの突発的な動作変化による危険を予防および回避することが可能となる。
【0338】
また、顕在リスクREMi がしきい値Rthより小さくかつ潜在リスクレベルRPSLvi が2以上である他車両iの位置Ψi を示す第2判断情報が運転者に提示される。それにより、潜在リスクレベルRPSLvi は高いにもかかわらず顕在リスクREMi が低いために他車両iの危険度合いを正確に認識することが困難な場合であっても、その他車両iの突発的な動作変化による危険の顕在化に備えて、運転者にその他車両iに対する注意を予め促すことができる。したがって、運転者は、他車両iの突発的な動作変化により危険が顕在化した場合でも、その危険を迅速に回避することができる。
【0339】
また、1次危険顕在化判定値EMEi が1の他車両iの位置Ψi を示す第3判断情報が運転者に提示される。それにより、運転者は、即座に何らかの回避動作を行うことができる。
【0340】
さらに、1次危険顕在化判定値EMEi が1である他車両iの位置Ψi および顕在リスクREMi を示す第4判断情報が運転者に提示される。それにより、運転者は、衝突の危険の顕在化およびその緊急度合いを容易に把握することができる。
【0341】
また、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上で総合的な余裕度STotaliがしきい値Sthよりも小さい他車両iの位置Ψi を示す第5判断情報が運転者に提示される。それにより、運転者は、潜在リスクレベルRPSLvi が高い他車両iに対する回避動作を想定している場合に、仮にその他車両iによる危険を回避できたとしても、その回避動作が別の他車両iとの衝突の要因となり得ることを容易に把握することができる。
【0342】
また、潜在リスクレベルRPSLvi が2以上の他車両iの位置Ψi および推奨動作変化ACTRECiを示す第6判断情報が運転者に提示される。それにより、運転者は、1次危険の顕在化に備えて事前に総合的な余裕度の高い回避動作を把握することができる。したがって、運転者は、1次危険が顕在化したとしても、時間的および精神的に余裕のある回避動作のための操作を迅速に行うことができる。
【0343】
さらに、1次危険顕在化判定値EMEi が1の他車両iの位置Ψi および推奨動作変化ACTRECiを示す第7判断情報が運転者に提示される。それにより、運転者は、他車両iとの衝突の危険だけでなく回避動作により連鎖的に発生し得る別の他車両iとの衝突の危険の度合いを低減することが可能となる。
【0344】
(11)潜在リスクレベルマップの境界を表す関数の導出方法
(11−1)境界B3 を表す関数
境界B3 を表す関数fB3(Vrelx )の導出方法について説明する。図33は潜在リスクレベルマップの境界B3 を表す関数fB3(Vrelx )の導出方法を説明するための図である。
【0345】
ある初期状態(車間距離l=l0 、相対速度ベクトルの第1成分Vrelx =Vrelx0、および相対速度ベクトルの第2成分Vrely =0)において、自車両が最大の加速度AxMAX で他車両から遠ざかる運動を開始したにもかかわらず衝突が生じる(車間距離が0以下となる)条件は次式のようになる。
【0346】
【数10】

【0347】
上式(A1)において、tは時間である。上式(A1)を変形すると次式のようになる。
【0348】
【数11】

【0349】
上式(A2)の第1項は0以上になるので、左辺が負になるためには少なくとも次式を満足する必要がある。
【0350】
【数12】

【0351】
さらに、自車両が最大の加速度AyMAXで他車両から遠ざかる方向と直交する方向への運動も伴って回避動作を行った場合について考える。この方向に回避動作するのに必要な距離をRとし、初速度をVrely0とし、加速度AyMAXによる運動で距離R移動するのにかかる時間をtyとする。この場合、次式が成り立つ。
【0352】
【数13】

【0353】
上式(A4)より時間tyが次式のように導出される。
【0354】
【数14】

【0355】
上式(A2)より車間距離が最小値となるのにかかる時間tは(Vrelx0/AxMAX)となる。したがって、車間距離が最小値となるのにかかる時間よりも時間tyが大きい場合は次式で表される。
【0356】
【数15】

【0357】
上式(A6)を満足する場合、衝突の条件は上式(A3)に従う。この場合、他車両から遠ざかる方向と直交する方向への自車両の運動では衝突の回避が不可能となる。
【0358】
次に、車間距離が最小値となるのにかかる時間よりも時間tyが大きい場合は次式で表される。
【0359】
【数16】

【0360】
上式(A7)を満足する場合、衝突の条件は衝突の条件はtx≦tyである。ここで、txは衝突までにかかる時間であり、上式(A1)より次式で表される。
【0361】
【数17】

【0362】
衝突条件は上式(A8)のようになる。上式(A8)より次式が導出される。
【0363】
【数18】

【0364】
境界B3 は上式を満たす点(l0 ,Vrelx0)の集合であるから、境界B3 を表す関数fB3(Vrelx )は次式のようになる。
【0365】
【数19】

【0366】
(11−2)境界B2 を表す関数
境界B2 を表す関数fB2(Vrelx )の導出方法について説明する。図34は潜在リスクレベルマップの境界B2 を表す関数fB2(Vrelx )の導出方法を説明するための図である。
【0367】
境界B2 上のある初期状態(車間距離l=l0 、相対速度ベクトルの第1成分Vrelx =Vrelx0)においては、他車両が最大の加速度aMAX で自車両に近づく運動を時間τで行った場合、相対速度ベクトルの第1成分Vrelx は境界B3 上でVrelx=Vrelx0+aMAXτとなる。したがって、Vrelx0+aMAXτ≦AxMAXyのとき、車間距離lおよび相対速度ベクトルの第1成分Vrelx が境界B2 上に位置する条件は、上式(3)より次式のようになる。
【0368】
【数20】

【0369】
上式(B1)から次式が成立する。
【0370】
【数21】

【0371】
また、Vrelx0+aMAXτ>AxMAXyのとき、車間距離lおよび相対速度ベクトルの第1成分Vrelx が境界B2 上に位置する条件は次式のようになる。
【0372】
【数22】

【0373】
上式(B3)から次式が成立する。
【0374】
【数23】

【0375】
境界B2 は上式を満たす点(l0 ,Vrelx0)の集合であるから、境界B2 を表す関数fB2(Vrelx )は次式のようになる。
【0376】
【数24】

【0377】
(11−3)境界B1 を表す関数
境界B1 を表す関数fB1(Vrelx )の導出方法について説明する。図35は潜在リスクレベルマップの境界B1 を表す関数fB1(Vrelx )の導出方法を説明するための図である。
【0378】
境界B1 上のある初期状態(車間距離l=l0 、相対速度ベクトルの第1成分Vrelx =Vrelx0)においては、他車両が最大の加速度aMAX で自車両に近づく運動を時間τで行った場合、相対速度ベクトルの第1成分Vrelx は境界B2 上でVrelx=Vrelx0+aMAXτとなる。したがって、Vrelx0+aMAXτ≦AxMAXy−aMAXτのとき、車間距離l=l0 および相対速度ベクトルの第1成分Vrelx が境界B1 上に位置する条件は、上式(4)より次式のようになる。
【0379】
【数25】

【0380】
上式(C1)から次式が成立する。
【0381】
【数26】

【0382】
また、Vrelx0+aMAXτ>AxMAXy−aMAXτのとき、車間距離lおよび相対速度ベクトルの第1成分Vrelx が境界B1 上に位置する条件は次式のようになる。
【0383】
【数27】

【0384】
上式(C3)から次式が成立する。
【0385】
【数28】

【0386】
境界B1 は上式を満たす点(l0 ,Vrelx0)の集合であるから、境界B1 を表す関数fB1(Vrelx )は次式のようになる。
【0387】
【数29】

【0388】
(11−4)潜在リスクレベルマップの各境界の計算例
図36は潜在リスクレベルマップの各境界の計算結果を示す図である。図36には、他車両が最大の加速度aMAX =6.86[m/s2 ]で突発的に自車両に近づく方向に動作変化する際に、自車両は最大の加速度ベクトルAMAX=(6.86,4.0)[m/s2 ]で回避動作が可能であると仮定し、時間τを1.0[sec]とし、相対速度ベクトルの第2の成分Vrelyを0とした場合の潜在リスクレベルマップの境界B1 ,B2 ,B3 の計算結果が示される。
【0389】
(11−5)潜在リスクレベルマップの境界の他の導出方法
なお、潜在リスクレベルマップの各境界B1 ,B2をコンピュータシミュレーション等により試行錯誤的に探索してもよい。
【0390】
まず、境界B2 の探索方法について説明する。ここで、他車両iもすべての方向に最大の加速度aMAXによる動作変化が可能あると仮定する。そして、初期相対速度ベクトルVrelINIT=(VrelINITx,0)を有する他車両iが自車両0に近づく方向に加速度aMAXで短時間τ(例えば1秒)運動した結果、車間距離lが境界fB3(VrelINITx)に過不足無く到達することができる初期車間距離lINITを求める。このような初期車間距離lINITを求める方法としては、例えば連立一次方程式の反復解法として一般的なヤコビ法、ガウス−ザイデル法、SOR法等の反復法が挙げられる。
【0391】
このような初期相対速度ベクトルの第1成分VrelINITxと初期車間距離lINITとの種々の組み合わせを相対速度ベクトルの第1成分Vrelxに対して一様に分布するように求める。この分布が境界B2を形成すると考え、次に境界B2を表す関数fB2(Vrelx)を求める。関数fB2(Vrelx)を求める方法としては、ニューラルネットワーク、ファジィニューラルネットワーク等が挙げられる。これらの方法によれば、任意の非線形システムに対し、有限個の入出力信号の組み合わせを観測することにより、その入出力関係を学習により同定することができる。
【0392】
次に、境界B1の探索方法は、境界fB2(VrelINITx)に到達することができる初期車間距離lINITを求めるという点が異なる以外は、境界B2の探索方法と同様である。
【0393】
(12)他の実施の形態
(12−1)
図37はリスク評価部30の機能的な構成の他の例を示すブロック図である。
【0394】
上記実施の形態に係る運転判断支援装置200において、図6のリスク評価部30の代わりに図37のリスク評価部30を用いてもよい。
【0395】
図37(a)の例では、リスク評価部30は潜在リスク評価部32により構成される。この場合、図2の判断情報生成部50は、第1、第5および第6判断情報を生成して情報提示装置60に出力する。
【0396】
本例のリスク評価部30によれば、運転者は相対運動からは直接には評価できない他車両iの突発的な動作変化を起因とする危険の危険度合いを容易に把握することができる。
【0397】
図37(b)の例では、リスク評価部30は顕在リスク評価部31および潜在リスク評価部32により構成される。この場合、図2の判断情報生成部50は、第1、第2、第5および第6判断情報を生成して情報提示装置60に出力する。
【0398】
本例のリスク評価部30によれば、運転者は潜在リスクレベルRPSLvi が高いにもかかわらず顕在リスクREMi が低いためにその危険度合いを認識するのが困難な他車両iの存在を容易に把握することができる。
【0399】
図37(c)の例では、リスク評価部30は潜在リスク評価部32および1次危険顕在化判定部33により構成される。この場合、図2の判断情報生成部50は、第1、第3、第5、第6および第7判断情報を生成して情報提示装置60に出力する。
【0400】
本例のリスク評価部30によれば、運転者は1次危険として顕在化しつつある他車両iの存在を容易に把握することができる。
【0401】
(12−2)
走行環境認識装置10は、ECU103、GPS104、加速度センサ105、ジャイロセンサ106、車速センサ107、電磁波またはレーザ光を用いた測距レーダ装置および画像処理装置により構成されてもよい。この場合、ECU103は、自車両0の走行状態をGPS104、加速度センサ105、ジャイロセンサ106および車速センサ107により取得し、周囲の他車両iの相対位置を測距レーダ装置および画像処理装置により取得する。ECU103は、相対位置の時間1階差分および2階差分を演算することにより他車両iの相対速度および相対加速度を求める。
【0402】
(12−3)
上記実施の形態では、相対運動演算部20、リスク評価部30、余裕度評価部40および判断情報生成部50がECU103およびプログラムにより実現されているが、相対運動演算部20、リスク評価部30、余裕度評価部40および判断情報生成部50の一部または全てが大規模集積回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0403】
(12−4)
余裕度評価部40において、自車両0または他車両iの突発的な最大の動作変化により想定される相対速度ベクトルを算出する際に、すべての方向に最大の加速度aMAXによる動作変化が可能とするのではなく、前方、後方および横方向の各々について可能な最大の加速度を予め個別に設定し、車両の方向を考慮して想定される相対速度ベクトルを算出してもよい。
【0404】
また、余裕度評価部40において、自車両0または他車両iの車種ごとに各方向への可能な最大の加速度を予め個別に設定し、走行環境認識装置10により他車両iの車種を識別し、車種を考慮して想定される相対速度ベクトルを算出してもよい。
【0405】
(12−5)
上記実施の形態では、情報提示装置60が音像定位オーディオシステムおよび音源制御器により構成されているが、情報提示装置60がメータパネル、ヘッドアップディスプレイ、ウェアラブルディスプレイ等の画像表示装置により構成されてもよい。この場合、画像表示装置に表示される画像上に注意対象車両の位置、危険度合い等が図形等により表示される。あるいは、情報提示装置60は音像定位オーディオシステムおよび画像表示装置により構成されてもよい。
【0406】
(12−6)
上記実施の形態では、本発明に係る運転判断支援装置を4輪の自動車に適用した場合について説明したが、本発明に係る運転判断支援装置は、4輪の自動車に限らず、3輪の自動車、自動二輪車等の種々の車両に適用することができる。
【0407】
(13)請求項と実施の形態との対応
上記実施の形態では、走行環境認識装置10および相対運動演算部20が相対運動算出手段に相当し、潜在リスク評価部32が潜在リスク評価手段に相当し、判断情報生成部50が判断情報生成手段に相当し、情報提示装置60が情報提示手段に相当する。
【0408】
また、顕在リスク評価部31が顕在リスク評価手段に相当し、1次危険顕在化判定部33が1次危険顕在化判定手段に相当する。
【0409】
さらに、余裕度評価部40が余裕度評価手段に相当し、1次危険相対運動想定部401および対1次危険余裕度評価部402が対1次危険余裕度評価手段に相当し、対2次危険余裕度評価部403が対2次危険余裕度評価手段に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0410】
本発明は、自動車、自動二輪車、鞍乗型四輪駆動車、小型船舶等の種々の車両に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0411】
【図1】本発明の一実施の形態に係る運転判断支援装置を備えた自動車の構成を示す模式図である。
【図2】図1の自動車に搭載される運転判断支援装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図3】図2の運転判断支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】自車両および他車両の車両状態を示す模式図である。
【図5】自車両および他車両の相対速度ベクトルを示す模式図である。
【図6】図2のリスク評価部の機能的な構成を示すブロック図である。
【図7】潜在リスクレベルを示す図である。
【図8】潜在リスクレベルマップの例を示す図である。
【図9】リスク評価部によるリスク評価処理を示すフローチャートである。
【図10】対1次危険余裕度の評価の概念を示す図である。
【図11】自車両が後方への動作変化を行ったと仮定した場合の例を示す図である。
【図12】対2次危険余裕度の評価の概念を示す図である。
【図13】自車両が後方への動作変化を行ったと仮定した場合の例を示す図である。
【図14】余裕度評価部の機能的な構成を示すブロック図である。
【図15】余裕度評価部による余裕度評価処理を示すフローチャートである。
【図16】反復法による対1次危険余裕度の評価処理を示すフローチャートである。
【図17】対1次危険余裕度評価の際の反復法による自車両の動作変化の変化量の探索例を示す図である。
【図18】対1次危険余裕度評価の際の反復法による自車両の動作変化の変化量の探索例を示す図である。
【図19】対1次危険余裕度評価の際の反復法による自車両の動作変化の変化量の探索例を示す図である。
【図20】対2次危険余裕度の評価処理を示すフローチャートである。
【図21】対2次危険余裕度評価の際の反復法による自車両の動作変化の変化量の探索例を示す図である。
【図22】対2次危険余裕度評価の際の反復法による自車両の動作変化の変化量の探索例を示す図である。
【図23】対2次危険余裕度評価の際の反復法による自車両の動作変化の変化量の探索例を示す図である。
【図24】判断情報生成部による判断情報の生成処理を示すのフローチャートである。
【図25】第1判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【図26】第2判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【図27】第3判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【図28】第4判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【図29】第5判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【図30】第6判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【図31】第7判断情報の生成処理を示すフローチャートである。
【図32】推奨動作変化の種類の演算処理を示すフローチャートである。
【図33】潜在リスクレベルマップの境界を表す関数の導出方法を説明するための図である。
【図34】潜在リスクレベルマップの境界を表す関数の導出方法を説明するための図である。
【図35】潜在リスクレベルマップの境界を表す関数の導出方法を説明するための図である。
【図36】潜在リスクレベルマップの各境界の計算結果を示す図である。
【図37】リスク評価部の機能的な構成の他の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0412】
10 走行環境認識装置
20 相対運動演算部
30 リスク評価部
31 顕在リスク評価部
32 潜在リスク評価部
33 1次危険顕在化判定部
40 余裕度評価部
50 判断情報生成部
60 情報提示部
70 運転判断部
100 自動車
101 本体部
102 車輪
103 ECU
104 GPS
105 加速度センサ
106 ジャイロセンサ
107 車速センサ
108 通信装置
109 複数のスピーカ
110 音像定位オーディオシステム
200 運転判断支援装置
401 1次危険相対運動想定部
402 対1次危険余裕度評価部
403 対2次危険余裕度評価部
ACTj 動作変化
Areli 相対加速度ベクトル
Arelxi 第1成分
Arelyi 第2成分
i 加速度
i 他車両
0 自車両
CON 判断情報
EMEi 1次危険顕在化判定値
i 車間距離
EMi 顕在リスク
PSLvi 潜在リスクレベル
1stij 対1次危険余裕度
2ndij 対2次危険余裕度
i 速度
Vreli 相対速度ベクトル
VrelMAXi 想定相対速度ベクトル
Vrelxi 第1成分
Vrelyi 第2成分
ψi 加速方向
Ψi 位置
θi 進行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の運転に関する判断を支援する運転判断支援装置であって、
自車両と他車両との相対運動を算出する相対運動算出手段と、
前記相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて自車両および他車両の少なくとも一方の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いを潜在リスクレベルとして評価する潜在リスク評価手段と、
顕在化する危険を回避する際の自車両の動作変化に対する余裕度を評価する余裕度評価手段と、
前記潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルおよび前記余裕度評価手段により評価された余裕度に基づいて、前記他車両の突発的な動作変化を起因とする衝突の危険を回避するための自車両の動作変化を推定し、推定された動作変化を推奨動作として含む判断情報を生成する判断情報生成手段と、
前記判断情報生成手段により生成された判断情報を運転者に提示する情報提示手段とを備えたことを特徴とする運転判断支援装置。
【請求項2】
前記余裕度評価手段は、
前記他車両に対する潜在リスクレベルを増大させる前記他車両の突発的な動作変化を想定し、想定された動作変化に対する回避動作のための自車両の動作変化の余裕度を対1次危険余裕度として評価する対1次危険余裕度評価手段を含むことを特徴とする請求項1記載の運転判断支援装置。
【請求項3】
前記余裕度評価手段は、
自車両の突発的な動作変化を想定し、想定された動作変化による他車両に対する潜在リスクレベルの増大を所定範囲内に抑制するための余裕度を対2次危険余裕度として評価する対2次危険余裕度評価手段をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の運転判断支援装置。
【請求項4】
前記余裕度評価手段は、
前記他車両に対する対1次危険余裕度と、前記別の他車両に対する対2次危険余裕度の最小値との和に基づいて、前記他車両の突発的な動作変化を起因とする1次危険の顕在化に対する回避動作のための自車両の動作変化の総合的な余裕度を算出することを特徴とする請求項3記載の運転判断支援装置。
【請求項5】
前記判断情報生成手段は、前記余裕度評価手段により評価された総合的な余裕度が所定値よりも小さい場合に、前記他車両を識別するための情報を含む判断情報を生成することを特徴とする請求項4記載の運転判断支援装置。
【請求項6】
前記判断情報生成手段は、前記余裕度評価手段により評価された総合的な余裕度が所定値よりも小さい場合に、前記総合的な余裕度が最大となる動作変化を前記推奨動作として選択し、前記他車両を識別するための情報および前記推奨動作を含む判断情報を生成することを特徴とする請求項4記載の運転判断支援装置。
【請求項7】
前記潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、前記相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて前記他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かを判定する1次危険顕在化判定手段をさらに備え、
前記判断情報生成手段は、前記1次危険顕在化判定手段の判定結果および前記余裕度評価手段により評価された総合的な余裕度に基づいて前記判断情報を生成することを特徴とする請求項4記載の運転判断支援装置。
【請求項8】
前記判断情報生成手段は、前記1次危険顕在化判定手段により前記他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあると判定された場合に、前記余裕度評価手段により評価された総合的な余裕度が最大となる動作変化を前記推奨動作として選択し、前記他車両を識別するための情報および前記推奨動作を含む判断情報を生成することを特徴とする請求項7記載の運転判断支援装置。
【請求項9】
前記潜在リスク評価手段は、
前記他車両が自車両に近づく方向の第1の相対速度成分、前記第1の相対速度成分に直交する方向の第2の相対速度成分、および自車両と前記他車両との車間距離に基づいて、潜在リスクレベルを評価することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の運転判断支援装置。
【請求項10】
前記判断情報生成手段は、前記潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、前記他車両を識別するための情報を含む判断情報を生成することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の運転判断支援装置。
【請求項11】
前記相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて予測される衝突の危険度合いを顕在リスクとして評価する顕在リスク評価手段をさらに備え、
前記判断情報生成手段は、前記潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルおよび前記顕在リスク評価手段により評価された顕在リスクに基づいて判断情報を生成することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の運転判断支援装置。
【請求項12】
前記顕在リスク評価手段は、
前記他車両が自車両に近づく方向の相対速度成分および自車両と前記他車両との車間距離に基づいて、顕在リスクを評価することを特徴とする請求項11記載の運転判断支援装置。
【請求項13】
前記判断情報生成手段は、
前記顕在リスク評価手段により評価された顕在リスクが所定値よりも低くかつ前記潜在リスクレベル評価手段により評価された潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、前記他車両を識別するための情報を含む判断情報を生成することを特徴とする請求項11または12記載の運転判断支援装置。
【請求項14】
前記潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、前記相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて前記他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かを判定する1次危険顕在化判定手段をさらに備え、
前記判断情報生成手段は、前記潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルおよび1次危険顕在化判定手段の判定結果に基づいて前記判断情報を生成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の運転判断支援装置。
【請求項15】
前記1次危険顕在化判定手段は、前記潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、前記相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて所定時間後の相対速度ベクトルを予測し、予測された相対速度ベクトルおよび自車両と前記他車両との車間距離に基づいて前記所定時間後の潜在リスクレベルを予測することにより前記他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かを判定することを特徴とする請求項14記載の運転判断支援装置。
【請求項16】
前記判断情報生成手段は、前記1次危険顕在化判定手段により前記他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあると判定された場合に、前記他車両を識別するための情報を含む判断情報を生成することを特徴とする請求項14または15記載の運転判断支援装置。
【請求項17】
前記相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて予測される衝突の危険度合いを顕在リスクとして評価する顕在リスク評価手段と、
前記潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルが所定レベル以上の場合に、前記相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて前記他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあるか否かを判定する1次危険顕在化判定手段とをさらに備え、
前記判断情報生成手段は、前記顕在リスク評価手段により評価された顕在リスクおよび前記1次危険顕在化判定手段の判定結果に基づいて前記判断情報を生成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の運転判断支援装置。
【請求項18】
前記判断情報生成手段は、前記1次危険顕在化判定手段により前記他車両が衝突の危険の顕在化の過程にあると判定された場合に、前記他車両を識別するための情報および前記顕在リスク評価手段により評価された顕在リスクを含む判断情報を生成することを特徴とする請求項17記載の運転判断支援装置。
【請求項19】
運転者の運転に関する判断を支援する運転判断支援方法であって、
自車両と他車両と相対運動を算出するステップと、
前記算出された相対運動に基づいて自車両および他車両の少なくとも一方の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いを潜在リスクレベルとして評価するステップと、
顕在化する危険を回避する際の自車両の動作変化に対する余裕度を評価する余裕度評価手段と、
前記評価された潜在リスクレベルおよび前記評価された余裕度に基づいて、前記他車両の突発的な動作変化を起因とする衝突の危険を回避するための自車両の動作変化を推定し、推定された動作変化を推奨動作として含む判断情報を生成するステップと、
前記生成された判断情報を運転者に提示するステップとを備えたことを特徴とする運転判断支援方法。
【請求項20】
運転者の運転により走行する車両本体と、
前記運転者の運転に関する判断を支援する運転判断支援装置とを備え、
前記運転判断支援装置は、
前記車両本体と他車両と相対運動を算出する相対運動算出手段と、
前記相対運動算出手段により算出された相対運動に基づいて車両本体または前記他車両の突発的な動作変化を起因として発生しうる衝突の危険度合いを潜在リスクレベルとして評価する潜在リスク評価手段と、
顕在化する危険を回避する際の自車両の動作変化に対する余裕度を評価する余裕度評価手段と、
前記潜在リスク評価手段により評価された潜在リスクレベルおよび前記余裕度評価手段により評価された余裕度に基づいて、前記他車両の突発的な動作変化を起因とする衝突の危険を回避するための自車両の動作変化を推定し、推定された動作変化を推奨動作として含む判断情報を生成する判断情報生成手段と、
前記判断情報生成手段により生成された判断情報を運転者に提示する情報提示手段とを備えたことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2006−127491(P2006−127491A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279294(P2005−279294)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】