運転支援システム
【課題】車両間通信により車両の位置情報に基づいて、他車に対する自車の走行についての運転支援情報を提供する運転支援システムにおいて、運転支援情報の誤提供の防止を図る。
【解決手段】自車と他車との間で離間距離が所定以下の場合に、前記自車及び他車間で少なくとも位置情報の送受信を行い、当該位置情報に基づいて他車に対する自車の走行の運転支援情報を提供する運転支援システムにおいて、前記自車の走行領域に応じて前記運転支援情報の提供度合いを段階的に変化させる運転支援レベル判定部14と、前記位置情報の誤差が所定以上となる領域を予め地図情報に合わせて記憶する誤差発生領域記憶部16,92とを備え、前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合は、前記運転支援情報の提供度合いを制限する。
【解決手段】自車と他車との間で離間距離が所定以下の場合に、前記自車及び他車間で少なくとも位置情報の送受信を行い、当該位置情報に基づいて他車に対する自車の走行の運転支援情報を提供する運転支援システムにおいて、前記自車の走行領域に応じて前記運転支援情報の提供度合いを段階的に変化させる運転支援レベル判定部14と、前記位置情報の誤差が所定以上となる領域を予め地図情報に合わせて記憶する誤差発生領域記憶部16,92とを備え、前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合は、前記運転支援情報の提供度合いを制限する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体同士で位置情報の送受信を行い、車両に対して位置情報に基づいた走行についての運転支援情報を提供する運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近距離無線を使用して車両間通信で情報を交換して、自車両(自車)に対する他車両(他車)の位置や走行方向及び速度を確認するシステムが提案されている。
このシステムは、例えば、他車からの車両間通信により、ウィンカ等の操作スイッチの作動情報や、他車の位置情報、速度、ヨーレート、横加速度等の車両走行状態の情報を受信することで、自車の周辺に存在する他車の走行状態及び相対位置、画像情報、道路状況や標識等の情報を警報・表示部に表示するものである。
【0003】
このようなシステムにおいては、地図上での他車の正確な位置情報を把握する必要があるため、地図上における他車の現在位置をマップマッチングし、マップマッチングされた他車の現在位置と自車の現在位置に基づき、運転支援情報を報知することが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−352610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したシステムのように、マップマッチングによって得られた情報に基づいて運転支援情報の報知の有無の判断を行う場合、誤報知を防止するため、高精度なマップマッチングを行うことが望ましい。
しかしながら、高精度なマップマッチングは高価なものとなり易い上、マップマッチングの精度によっては、地図上の道路と実際の走行中の道路とが必ずしも一致しない場合も存在する。そのため、このような事象も含めて運転支援情報の報知を行ってしまうと、必要な時に適正な報知が行われないといったことが生じる可能性がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて提案されたもので、車両間通信により車両の位置情報に基づいて、他車に対する自車の走行についての運転支援情報を提供する運転支援システムにおいて、運転支援情報の適正な提供を図るシステムを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1は、自車の通信エリア内に他車が存在する場合に、前記自車及び他車間で少なくとも位置情報の送受信を行い、当該位置情報に基づいて他車に対する自車の危険度に関する走行の運転支援情報を提供する運転支援システムにおいて、前記運転支援システムは、前記自車と他車の位置関係が近づくにつれて前記危険度に関する運転支援情報の提供度合いを段階的に高める運転支援レベル判定部(14)と、前記位置情報の誤差が所定以上となる領域を予め地図情報に合わせて記憶する誤差発生領域記憶部(16,92)とを備えている。
そして、前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合は、前記危険度に関する運転支援情報の提供度合いが所定以上となる前記運転支援情報を制限することを特徴としている。
【0008】
請求項2は、請求項1の運転支援システムにおいて、前記運転支援レベル判定部(14)によって判定される運転支援情報の提供度合いは、
(A)通信エリアに他車が存在することを案内する段階、
(B)自車と位置関係が近い他車が存在する方向を案内する段階、
を少なくとも含み、
前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合は、段階(B)の運転支援情報の提供を禁止することを特徴としている。
【0009】
請求項3は、請求項1又は請求項2の運転支援システムにおいて、前記運転支援レベル判定部(14)は、前記位置情報の誤差が所定以上か否かを判定する誤差レベル判定部(13)を備え、前記誤差レベル判定部(13)によって誤差が所定以上と判定された判定領域が、前記誤差発生領域記憶部(16,92)に記憶されていない領域である場合は、前記誤差発生領域記憶部(16,92)に前記判定領域を新たに記憶することを特徴としている。
【0010】
請求項4は、請求項3の運転支援システムにおいて、前記誤差レベル判定部(13)は、所定間隔で取得される位置情報を記憶するとともに、当該記憶された位置情報に基づいて近似直線を算出し、前記位置情報の誤差の判定は、前記近似直線から前記位置情報が所定以上離れていることを条件として行われることを特徴としている。
【0011】
請求項5は、請求項4の運転支援システムにおいて、前記地図情報は、道路形状に合わせてノードと、ノード間を結ぶ直線リンクとを備え、前記誤差レベル判定部(13)は、前記直線リンクと前記近似直線との平行度が所定以内であるときに、誤差レベルを判定することを特徴としている。
【0012】
請求項6は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の運転支援システムにおいて、前記運転支援情報を出力する出力手段(6)を備え、前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合、その旨の情報を前記出力手段(6)に出力することを特徴としている。
【0013】
請求項7は、請求項6の運転支援システムにおいて、前記出力手段(6)は、地図情報を表示可能な表示手段であって、前記誤差発生領域記憶部(16,92)は、前記地図情報に誤差が所定以上となる領域を視覚的映像として反映するとともに、前記誤差が大きくなるに連れて前記視覚的映像の面積を大きくすることを特徴としている。
【0014】
請求項8は、請求項7の運転支援システムにおいて、前記視覚的映像の面積における幅方向の長さは、誤差の大きさに道路幅を加えた長さとすることを特徴としている。
【0015】
請求項9は、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の運転支援システムにおいて、前記誤差発生領域記憶部(92)は、管理センター(9)で集中管理されるとともに、自車及び他車からの誤差情報を収集・更新・配信することを特徴としている。
【0016】
請求項10は、請求項4の運転支援システムにおいて、前記自車はヨーレートジャイロセンサを備え、自車の軌跡が前記近似直線内で変化した場合に、前記ヨーレートジャイロセンサの値を積分して得られるヨー角度の変化分を、前記誤差レベル判定部(13)で算出した近似直線に加えた新たな近似直線を作成し、当該新たな近似直線により前記位置情報の誤差の判定を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1によれば、自車又は他車の位置情報の誤差が大きい(精度が悪い)領域に自車が存在するときは、運転支援情報の供給度合いを制限できるので、マップマッチングを行わない場合であっても、位置情報の誤差に応じた運転支援情報の提供の度合いを適正に設定することができる。
更に、位置情報の誤差が大きい領域に自車が存在する場合であっても、運転支援情報の度合いを所定未満とした状態で自車へ運転支援情報を継続して提供し続けることができるので、自車の運転者に対して他車の存在を意識付けすることができる。
【0018】
請求項2によれば、運転支援情報によって自車の走行状態に直接影響が出る可能性がある情報については提供を行わないようにすることで、誤差の大きい領域に自車がいる場合に、精度が悪い情報の提供により自車の運転者が誤認識しないようにすることができる。
【0019】
請求項3によれば、誤差が大きい領域を随時誤差発生領域記憶部に更新していくことで、誤差発生領域記憶部(16,92)に記憶される誤差情報の精度を向上させることができる。
【0020】
請求項4によれば、実際に取得した位置情報に基づいて誤差レベルの判定を直ちに行い、誤差発生領域記憶部(16,92)に更新していくので、素早く誤差発生領域記憶部の更新を行うことができる。
【0021】
請求項5によれば、誤差が大きい(位置精度の低い)位置情報を省いた近似直線によって誤差レベルの判定を行うことができるので、より精度の高い誤差レベルの判定を行うことができる。
【0022】
請求項6によれば、自車が誤差の大きい領域に存在するということを自車の運転者自身が認識することができ、提供される運転支援情報の信頼度を運転者自身でも判断し易くすることができる。
【0023】
請求項7によれば、誤差レベルを認識し易くなる。
【0024】
請求項8によれば、道路幅に関わらず、道路幅を含めた誤差領域の表示を行うことができる。
【0025】
請求項9によれば、自車・他車で誤差発生領域記憶部(92)に記憶されている誤差情報を共有することができ、誤差情報の精度をより向上させることができる。
【0026】
請求項10によれば、バンク走行等、進行方向が変わり易い二輪特有の課題に対して誤差の判定の精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の運転支援システムの実施形態の一例を示すブロック図である。
【図2】誤差発生領域記憶部に記憶された誤差地図の一例を示す図である。
【図3】電子地図データの一例を示す図である。
【図4】誤差エリアの判定手順を示すフローチャート図である。
【図5】車両位置データと直線リンク及びフィッティング直線の関係を示す図である。
【図6】車両位置データについて誤差大小によりエリア区分を説明する図である。
【図7】車両位置データについて縦方向誤差を考慮するための説明図であり、(a)は横方向における車両位置データと直線リンクとの関係図、(b)は縦方向における車両位置データと直線リンクとの関係図、(c)は車両速度グラフある。
【図8】縦方向の誤差を考慮した場合に加える誤差エリアの判定手順を示すフローチャート図である。
【図9】ジャイロセンサを使用してフィッティング直線を補正する場合の説明図であり、(a)は車両位置データと直線リンク、補正直線リンク及びフィッティング直線の関係を示す図、(b)はヨーク角度θ1の変化を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例による運転支援レベル設定の手順を示すフローチャート図である。
【図11】本発明の他の実施例による運転支援レベル設定の手順を示すフローチャート図である。
【図12】本発明の運転支援システムの他の実施形態を示すブロック図である。
【図13】本発明の他の実施例による運転支援レベル設定の手順を示すフローチャート図である。
【図14】(a)〜(c)は二輪車のフロントスクリーン内側下部に設置された表示装置の例を示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の運転支援システムの実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。本発明の運転支援システムは、自車の通信エリア内に他車がいる場合、または、自車と他車(四輪車を含む)の離間距離が所定距離以下の場合に、近距離無線を使用して車両間通信(車車間通信)で情報を交換して、自車両(自車)に対する他車両(他車)の位置や走行方向及び速度を確認することにより、自車の走行に際しての運転支援情報を提供するものである。
【0029】
以下、自車が二輪車である場合の運転支援システムについて説明する。
運転支援システムは、例えば図1に示すように、自車に対して運転支援装置1、無線通信機2、GPS受信機4及び各種のセンサ5、運転支援情報を出力する出力装置6、電子地図が格納された外部記憶装置7、運転支援に関する情報を管理する管理センター9との通信用の携帯電話8をそれぞれ設置し、他車3からの他車情報、GPS受信機4からの自車の緯度経度情報、各種のセンサ5から自車の走行情報をそれぞれ得ることで、これらの情報から出力装置6に対して運転支援情報を提供するよう構成されている。
【0030】
無線通信機2は、車車間通信により自車を中心として一定範囲となる通信範囲内を走行している他車3からの他車情報を得るものであり、例えば車車間通信の通信速度は、10Hz(1秒間に10回送信)で行われている。車車間通信の通信速度は、車速に応じて変化するようにしてもよい。他車情報としては、例えば車両の種類(二輪車、普通四輪車、大型四輪車等)、位置、速度、向きの情報が得られるようにする。
また、無線通信機2は、路車間通信により、光ビーコンやETC設置場所等の通過を受信することで渋滞情報を取得する。
【0031】
GPS受信機4は、自車の緯度・経度情報を受信する。
各種のセンサ5は、車速を検知する車速センサ等の各種センサやジャイロセンサにより、自車の車速、加速度、向き、傾き(二輪車の場合)、ブレーキ状態、ウィンカ状態等を検知する。
【0032】
出力装置6は、自車(車両)に搭載された音声出力用のスピーカ、ハンドルバー前方に装着されたメータ内やフロントスクリーン内側下部に設置されたインジケータ、シート付近に装着された振動子等から構成され、運転者(ライダー)が視覚や聴覚等により運転支援装置1により提供された他車情報を認識できるように構成されている。
【0033】
外部記憶装置7には、予め電子地図情報が格納されている。
管理センター9は、走行中の全ての車両情報を一括管理するもので、運転支援に関する情報として、地図上における位置情報についての誤差が発生しやすいエリアを記憶する誤差発生領域記憶部92を備えている。誤差発生領域記憶部92は、位置情報の誤差が所定以上となる領域を予め地図情報に合わせて記憶するものである。
また、管理センター9は、電子地図情報91を備えていても良い。この場合、管理センター9は、自車及び他車からの誤差情報を収集・更新・配信することで、誤差情報を集中管理する。管理センター9で管理される誤差情報は、携帯電話8との間の通信により運転支援装置1側に提供されるようになっている。
【0034】
運転支援装置1は、無線通信機2、GPS受信機4、センサ5からの情報が入力されることで自車の車両情報を把握する車両情報把握部10を備えている。車両情報把握部10は、現在位置判定部11と道路状況把握部12を有し、外部記録装置7の地図データベースからノード・リンク情報を取得し、現在位置判定部11は、GPS受信機4で得られた情報により、外部記憶装置7から取得した電子地図上における自車の現在位置を判定することで、自車の走行先に存在する交差点に対する現時点での自車の位置を把握することができる。
道路状況把握部12は、無線通信機2により路車間通信により、渋滞情報等の道路状況を把握する。
【0035】
また、運転支援装置1は、現在位置判定部11による自車の軌跡から取得情報の誤差レベルを判定する誤差レベル判定部13と、自車の走行領域に応じて運転支援情報の提供度合いを段階的に変化させる運転支援レベル判定部14と、運転支援情報の出力装置6へ提供を制御するHMI制御実行部15と、位置情報の誤差が所定以上となる領域を予め地図情報に合わせて記憶する誤差発生領域記憶部16を備えている。
誤差レベル判定部13による誤差レベルの判定手順の詳細については後述する。
【0036】
運転支援レベル判定部14による運転支援レベルは、自車と他車との距離や速度に応じてHMI制御実行部15を介して出力装置6に情報提供されるもので、例えば、「情報提供」「注意喚起」、「警報」の三段階から構成されて、自車と他車間の距離が離れている場合には「情報提供」が、それよりも両者が近づいた場合(例えば、ある反応時間でブレーキを掛けられれば、停止できる限界位置)には「注意喚起」が、出会うまでに時間的な余裕がない場合(ブレーキを掛けるように指示しないと停止できない位置)には「警報」が発せられる。
【0037】
「情報提供」は、(A)通信エリアに他車が存在することを案内する段階であり、運転支援装置1で判断することなく、情報を提示するだけ(「通信エリア内に他車が存在する」程度の案内)であり、具体的には出力装置6によりインジケータ点灯等を行う。ナビを持った車両では、画面上に他車の位置を表示する。
【0038】
「注意喚起」は、(B)自車と位置関係が近い他車が存在する方向を案内する段階であり、運転支援装置1が判断するが、行動は指示しない。具体的には、出力装置6のインジケータにより何れの方向に存在するかが解る点灯を行う。ナビを持った車両では、画面上に他車の進行する向き表示する。
【0039】
「警報」は、(C)自車の行動を指示する段階であり、運転支援装置1が判断して出力装置6により音声等で行動(減速等)を指示する。尚、情報提供は、(C)をなくして(A)と(B)の二段階としてもよい。
【0040】
誤差発生領域記憶部92は、図2に示すように、数キロメートル四方の領域を1エリア(メッシュ)とし、複数エリアを結合した誤差地図(誤差エリアマップ)が記憶されている。各エリアの地図情報には、各道路の直線リンクAに対して道路幅方向に長さが異なる誤差レベル大エリア、誤差レベル中エリア、誤差レベル小エリア、誤差無しエリアがそれぞれ設定されている。各誤差エリアは、予め設定されている場所が記憶されるとともに、誤差レベル判定部13により新たな誤差エリアが確認された場合は、該当場所が記憶・更新される。
上述の例では、誤差発生領域記憶部92を管理センター9側に設置し、自車側に設置された携帯電話8との間の通信を介して誤差レベル判定部13に誤差情報が提供されるとともに、管理センター9側に新たな誤差情報を送信して誤差発生領域記憶部92における誤差情報の更新が行われる。
【0041】
また、管理センター9側の誤差発生領域記憶部92に代えて、運転支援装置1内に誤差発生領域記憶部16を設置するように構成してもよい。この場合、誤差レベル判定部13により新たに誤差領域が確認された場合は、自車の運転支援装置1内の誤差発生領域記憶部16でのみ情報が更新される。
【0042】
本発明の運転支援システムにおいては、誤差レベル判定部13に対して誤差発生領域記憶部92や誤差発生領域記憶部16から提供される位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合は、自車に対しての運転支援情報の提供度合いが所定以上となる運転支援情報を制限するようになっている。
すなわち、運転支援装置1において、位置情報の誤差が所定(例えば誤差レベル中)以上となる領域に自車が存在すると判断した場合は、出力装置6に対して、少なくとも上述した自車の行動を指示する「警報」に対応する段階(C)の運転支援情報の提供を禁止する。(A)と(B)の二段階の場合は、(B)を禁止する。
【0043】
次に、誤差レベル判定部13による誤差レベルの判定手順について、図3〜図6を参照しながら説明する。
外部記録装置7の地図データベースから取得される電子地図は、図3に示すように、直線道路の両端に存在するノード(端点)と、曲線道路の中心位置に間隔をおいて存在する補助ノード(形状補間点)を備えている。実際に車両が通行した場合に取得される車両位置のデータは、道路の周辺に高い建物が存在する等の状況により受信状況が異なることで誤差が生じ、ノードを結んだ線である直線リンクA上から外れることがある。
例えば、図3において、電子地図上で、車両の走行軌跡がXである場合に、車両が通行した際に取得される車両位置のデータは星印でプロットした位置となり、自車がビルや家等の影になる場所にいてGPS衛星との通信が行い難い場合については誤差が発生し易く、野原のように上方の見通しのよい箇所では誤差が少なくなる。
【0044】
誤差レベル判定部13による誤差レベルの判定は、図4のフローチャートに示すように、先ず、車両情報把握部10がGPS受信機4によりGPS座標と方位情報の取得を行う(ステップ51)。GPS座標及び方位情報の取得は、システム時間(例えば0.5秒)毎に行われ、取得したデータから地図上での近接するノードの位置を検出し、直線リンクAを作成する(ステップ52)。すなわち、図3に示すように、車両位置データ(星印)がプロットされた領域におけるノードOや補助ノードPを検出し、隣接するノード同士(補助ノードもノードとみなす)を直線で結ぶことで直線リンクAを作成する。
【0045】
続いて、1つの直線リンク分のGPSデータを車両位置データ(図5における複数の星印に対応するデータ)として記録する(ステップ53)。
複数の車両位置データ(星印)からフィッティング直線(近似直線)Bを作成する(ステップ54)。フィッティング直線Bは、車両位置データ(星印)のデータ列から最小二乗近似して直線を算出することで行われる。
次に、直線リンクAとフィッティング直線Bの平行度をチェックし所定角度以内かを判断する(ステップ55)。
所定角度以内でない場合は、再度フィッティング直線を作成する(ステップ54)。
すなわち、車両位置データ(星印)のデータ列から最小二乗近似して直線を算出し、その傾きとリンクの傾きを比較し、ある許容量を超えていたら、データ列を選択し直してフィッティング直線Bを作り直す。この場合、一番古い車両位置データ(GPSデータ)を1つ削除して再度フィッティング直線Bを作成し直すことが行われる。
【0046】
フィッティング直線Bの平行度が所定角度以内である場合(ステップ55)、各GPSデータとフィッティング直線Bまでの鉛直線距離Yを計算する(ステップ56)。
距離Yに基づき、誤差の大きい区間の判定を行う(ステップ57)。誤差の大きい区間の判定は、ある値(例えば、その区間の平均値)より大きい場合は、そのデータが入っている区間が誤差の大きくなる区間とする。また、この判定は距離Yの値により、「誤差レベル大」、「誤差レベル中」、「誤差レベル小」、「誤差無し」に分類される。
誤差が生じる区間(「誤差レベル大」、「誤差レベル中」、「誤差レベル小」)を直線リンクAに反映させ、誤差発生領域記憶部92(誤差発生記憶部16)の誤差地図(図2)の情報更新を行う(ステップ58)。
【0047】
誤差エリアの直線リンクAに沿った方向は、レベルが異なる場合の中点で区切る。例えば図6に示すように、直線リンクAに対して発生誤差が異なる車両位置データ(丸星印)が連続して存在する場合、誤差レベルが大きい車両位置データと、誤差レベルが小さい車両位置データとの中間位置(図6における縦線で表示)が、誤差エリアの境となる。
また、誤差エリアの横幅は、誤差量(距離Y)と同じにするか、誤差量+道路の片側幅で設定される。
【0048】
上述した例では、誤差レベル判定部13による誤差レベルの判定手順について、図5に示したように、横方向の誤差のみを判定して処理したが、図7に示すように、横方向の誤差(図7(a))に対して、縦方向の誤差(図7(b))を考慮して判定してもよい。
1つの直線リンク分の車両位置データ(GPSデータ)において、図7(c)のように、ある程度速度がV0で一定の区間があった時、図7(b)における車両位置データのプロット位置は、直線リンクAの進行方向に対して等間隔に位置するはずである。等間隔にない場合は、縦方向において誤差が発生していると考えられる。図7では丸星印で示した二か所のデータについて、速度が略一定にも関わらず進行方向の間隔が等間隔でないので、縦方向の誤差が生じていると判断する。図7(b)の四角で囲まれた部分は、縦方向で誤差の大きそうなエリアを示している。
すなわち、図4のフローチャートの「距離Yに基づき、誤差の大きい区間の判定」ステップ57に続けて、図8のように、縦方向のデータの間隔に基づき、誤差の大きい区間の判定を行い(ステップ61)、「横及び縦両方に含まれる」若しくは、「横又は縦のどちらか含まれる」領域を区間として区切る(ステップ62)。
【0049】
また、誤差発生エリア設定における精度向上を図るため、図4のフローチャートにおいてフィッティング直線を作成する場合に(ステップ54)、ジャイロセンサから得たデータを使用してもよい。二輪車の場合、四輪車と異なり、道路幅を一杯に使って(例えば斜め方向に)走行する場合があり、車両の軌跡と道路に設定される直線リンクとの傾きが異なる可能性がある。このような場合に、車両に装着したジャイロセンサから方位の変化、すなわち走行軌跡の傾きを算出し直線リンクを補正し、補正した直線リンクとフィッティング直線との比較を行うようにする。
すなわち、図9に示すように、車両(二輪車)の実際の軌跡が、直線リンク内で変化した時は、そのヨー角度θ(方位角)をヨーレートジャイロセンサの値(ヨー角速度)を積分することで算出し(図9(b))、その角度変化分θ1を直線リンクAに加えた直線リンクA´を作成し(図9(a))、図4のフローチャートのステップ55において、この直線リンクA´とフィッティング直線との平行度を比較する。すなわち、直線リンクAに対するフィッティング直線の角度をθ2とし、(θ1−θ2)の絶対値が設定値αより小の場合は、フィッティングされたと判定する。
【0050】
次に、管理センター9と外部記憶装置7に電子地図データを備えている運転支援装置1の運転支援レベル判定部14による運転支援レベル設定の処理手順について、図10のフローチャートを参照しながら説明する。
車両情報把握部10がGPS受信機4によりGPS座標と方位情報の取得を行う(ステップ21)。GPS座標及び方位情報の取得は、システム時間(例えば0.5秒)毎に行われる。
外部記憶装置7の電子地図データから取得したGPS座標に該当するメッシュを取得し、近接するノード・リンクを選択する(ステップ22)。
【0051】
直線リンクが切り替わったかどうかを判断し(ステップ23)、次のリンクに切り替わるまで現在のリンクの誤差レベル判定を行う(ステップ29)。次のリンクに切り替わった場合は、直前リンクに対応する誤差地図の作成を完了し(ステップ24)、管理センター9に誤差地図または誤差レベル情報を送信する(ステップ25)。
【0052】
一方、現在位置を含む陳坊エリアに誤差地図があるかどうかを判断し(ステップ26)、ない場合には、管理センター9から近傍のメッシュの誤差地図を取得する(ステップ27)。
取得した誤差地図に基づいて運転支援レベルの設定を行う(ステップ28)。すなわち、誤差地図(図2)における自車の位置が、誤差レベル大、誤差レベル中となる領域にある場合は、少なくとも上述した自車の行動を指示する段階(C)の運転支援情報の提供を禁止する。
この実施例の場合、自車・他車がそれぞれ作成した誤差地図を共有することができ、誤差地図の精度も向上する。
【0053】
次に、外部記憶装置7に電子地図データを備えているが管理センター9が存在しない場合の運転支援装置1による運転支援レベル設定の処理手順について、図11のフローチャートを参照しながら説明する。
車両情報把握部10がGPS受信機4によりGPS座標と方位情報の取得を行う(ステップ31)。GPS座標及び方位情報の取得は、システム時間(例えば0.5秒)毎に行われる。
外部記憶銅値7の電子地図データから取得したGPS座標に該当するメッシュを取得し、近接するノード・リンクを選択する(ステップ22)。
【0054】
直線リンクが切り替わったかどうかを判断し(ステップ33)、次のリンクに切り替わるまで現在のリンクの誤差レベル判定を行う(ステップ36)。次のリンクに切り替わった場合は、直前リンクに対応する誤差地図の作成を完了し更新する(ステップ34)。
一方、既に作成済の誤差地図に基づいて運転支援レベルの設定を行う(ステップ35)。
この実施例の場合、自車のみが作成した誤差地図を使って、運転支援レベルの設定を行う。
【0055】
図12は、運転支援システムの他の例を示すもので、図1と同じ構成をとる部分については同一の符合を付している。
この例は、車両に外部記憶装置7を備えていないタイプであり、この場合、地図に関する情報は管理センター9で管理された電子地図91から取得するようになる。
また、誤差発生領域記憶部92及び誤差レベル判定部93についても管理センター9側に設置され、運転支援装置1側には、図1の誤差レベル判定部13に代えて誤差レベル取得部17を備えている。誤差レベル取得部17は、携帯電話8を介した通信により管理センター9の電子地図91及び誤差レベル判定部93から地図上での自車の位置の誤差レベルの情報を取得するものである。
【0056】
図12の運転支援装置1による運転支援レベル設定の処理手順について、図13のフローチャートを参照しながら説明する。
車両情報把握部10がGPS受信機4によりGPS座標と方位情報の取得を行う(ステップ41)。GPS座標及び方位情報の取得は、システム時間(例えば0.5秒)毎に行われる。
管理センター9に対して自車の位置・方位情報をシステム時間(例えば0.5秒)毎に送信する(ステップ42)。
管理センター9から自車の位置についての誤差レベルを受信する(ステップ43)。
受信した誤差レベルに基づいて運転支援レベルの設定を行う(ステップ44)。
この実施例の場合、管理センター9側で誤差情報の集中管理を行うことができる。
【0057】
次に、出力装置6についての具体例について、図14を参照しながら説明する。
出力装置6は、二輪車のフロントスクリーン80内側に設置された表示装置70から構成され、表示装置70は、左右方向に細長い上側表示部71と、下側表示部72とから構成されている。各表示部は、アレイ状に配列された複数のLEDから構成され、それぞれ複数色が表示可能に構成されている。上側表示部71は、「誤差の大きいエリアに自車が位置する」場合に点灯するようになっている。下側表示部72は、車車間通信において提供された他車情報が表示されるようになっている。
【0058】
例えば、上側表示部71が緑色に点灯(斜線部分で示す)している場合は、自車が誤差の大きいエリア内に位置していることが解り、他車情報に関して通常の情報提供が行われないことが解るようになる(図14(a))。この場合、「情報提供」、「注意喚起」、「警報」のうち、少なくとも「警報」に関する運転支援は行われない(他車情報の提供が限定される)。
下側表示部72が青色に点灯(斜線部分で示す)している場合は、「情報提供」として通信エリア内に他車が存在する情報を意味する(図14(a)(b))。
下側表示部72の全体が青色に点灯し、且つ右側部分のみが異なる色(赤やアンバー等)で点灯(メッシュ部分で示す)している場合は、「注意喚起」として右方から他車が接近中であるという運転支援を意味する(図14(c))。
すなわち、図14(a)では、自車が誤差レベルの大きいエリアに位置し、且つ通信エリアに他車が存在することを示している。
また、図14(b)は、自車が誤差レベルの小さいエリアに位置し、且つ通信エリアに他車が存在することを示している。
図14(c)は、自車が誤差レベルの小さいエリアに位置し、且つ右方から他車が接近中であること示している。
尚、「警報」の運転支援を行う場合には、自車に搭載された音声出力用のスピーカ等を用いて、行動を指示するアナウンスを流す。
【0059】
上述した運転支援システムにおける出力装置6は、自車(車両)に搭載された音声出力用のスピーカや、ハンドルバーに装着されたメータ内やフロントスクリーン内側下部に設置されたインジケータとしたが、地図情報が表示可能な表示手段としてもよい。この場合、表示される地図情報は、誤差発生領域記憶部92,16から取得した誤差地図(図2)に対して自車位置が表示されるように構成すればよい。この地図情報には、「誤差レベル大」「誤差レベル中」「誤差レベル小」(誤差が所定以上となる領域)が視覚的映像として反映されている。この誤差地図では、誤差レベルを視覚的映像で表示する場合に、誤差レベルに対応する面積における幅方向の長さは、誤差の大きさに道路幅を加えた長さとなっているので、誤差が大きくなるに連れて視覚的映像の面積が大きく表示され、自車がどのレベルの誤差レベルエリアに存在しているかを容易に把握することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…運転支援装置、 2…無線通信機、 3…他車、 4…GPS受信機、 5…センサ、 6…出力装置、 7…外部記憶装置、 8…携帯電話、 9…管理センター、 10…車両情報把握部、 11…現在位置判定部、 12…道路状況把握部、 13…誤差レベル判定部、 14…運転支援レベル判定部、 15…HMI制御実行部、 16…誤差発生領域記憶部、 17…誤差レベル取得部、 70…表示装置、 71…上側表示部、 72…下側表示部、 91…電子地図、 92…誤差発生領域記憶部、 93…誤差レベル判定部、 A…直線リンク、 B…フィッティング直線(近似直線)、 O…ノード、 P…補助ノード。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体同士で位置情報の送受信を行い、車両に対して位置情報に基づいた走行についての運転支援情報を提供する運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近距離無線を使用して車両間通信で情報を交換して、自車両(自車)に対する他車両(他車)の位置や走行方向及び速度を確認するシステムが提案されている。
このシステムは、例えば、他車からの車両間通信により、ウィンカ等の操作スイッチの作動情報や、他車の位置情報、速度、ヨーレート、横加速度等の車両走行状態の情報を受信することで、自車の周辺に存在する他車の走行状態及び相対位置、画像情報、道路状況や標識等の情報を警報・表示部に表示するものである。
【0003】
このようなシステムにおいては、地図上での他車の正確な位置情報を把握する必要があるため、地図上における他車の現在位置をマップマッチングし、マップマッチングされた他車の現在位置と自車の現在位置に基づき、運転支援情報を報知することが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−352610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したシステムのように、マップマッチングによって得られた情報に基づいて運転支援情報の報知の有無の判断を行う場合、誤報知を防止するため、高精度なマップマッチングを行うことが望ましい。
しかしながら、高精度なマップマッチングは高価なものとなり易い上、マップマッチングの精度によっては、地図上の道路と実際の走行中の道路とが必ずしも一致しない場合も存在する。そのため、このような事象も含めて運転支援情報の報知を行ってしまうと、必要な時に適正な報知が行われないといったことが生じる可能性がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて提案されたもので、車両間通信により車両の位置情報に基づいて、他車に対する自車の走行についての運転支援情報を提供する運転支援システムにおいて、運転支援情報の適正な提供を図るシステムを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1は、自車の通信エリア内に他車が存在する場合に、前記自車及び他車間で少なくとも位置情報の送受信を行い、当該位置情報に基づいて他車に対する自車の危険度に関する走行の運転支援情報を提供する運転支援システムにおいて、前記運転支援システムは、前記自車と他車の位置関係が近づくにつれて前記危険度に関する運転支援情報の提供度合いを段階的に高める運転支援レベル判定部(14)と、前記位置情報の誤差が所定以上となる領域を予め地図情報に合わせて記憶する誤差発生領域記憶部(16,92)とを備えている。
そして、前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合は、前記危険度に関する運転支援情報の提供度合いが所定以上となる前記運転支援情報を制限することを特徴としている。
【0008】
請求項2は、請求項1の運転支援システムにおいて、前記運転支援レベル判定部(14)によって判定される運転支援情報の提供度合いは、
(A)通信エリアに他車が存在することを案内する段階、
(B)自車と位置関係が近い他車が存在する方向を案内する段階、
を少なくとも含み、
前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合は、段階(B)の運転支援情報の提供を禁止することを特徴としている。
【0009】
請求項3は、請求項1又は請求項2の運転支援システムにおいて、前記運転支援レベル判定部(14)は、前記位置情報の誤差が所定以上か否かを判定する誤差レベル判定部(13)を備え、前記誤差レベル判定部(13)によって誤差が所定以上と判定された判定領域が、前記誤差発生領域記憶部(16,92)に記憶されていない領域である場合は、前記誤差発生領域記憶部(16,92)に前記判定領域を新たに記憶することを特徴としている。
【0010】
請求項4は、請求項3の運転支援システムにおいて、前記誤差レベル判定部(13)は、所定間隔で取得される位置情報を記憶するとともに、当該記憶された位置情報に基づいて近似直線を算出し、前記位置情報の誤差の判定は、前記近似直線から前記位置情報が所定以上離れていることを条件として行われることを特徴としている。
【0011】
請求項5は、請求項4の運転支援システムにおいて、前記地図情報は、道路形状に合わせてノードと、ノード間を結ぶ直線リンクとを備え、前記誤差レベル判定部(13)は、前記直線リンクと前記近似直線との平行度が所定以内であるときに、誤差レベルを判定することを特徴としている。
【0012】
請求項6は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の運転支援システムにおいて、前記運転支援情報を出力する出力手段(6)を備え、前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合、その旨の情報を前記出力手段(6)に出力することを特徴としている。
【0013】
請求項7は、請求項6の運転支援システムにおいて、前記出力手段(6)は、地図情報を表示可能な表示手段であって、前記誤差発生領域記憶部(16,92)は、前記地図情報に誤差が所定以上となる領域を視覚的映像として反映するとともに、前記誤差が大きくなるに連れて前記視覚的映像の面積を大きくすることを特徴としている。
【0014】
請求項8は、請求項7の運転支援システムにおいて、前記視覚的映像の面積における幅方向の長さは、誤差の大きさに道路幅を加えた長さとすることを特徴としている。
【0015】
請求項9は、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の運転支援システムにおいて、前記誤差発生領域記憶部(92)は、管理センター(9)で集中管理されるとともに、自車及び他車からの誤差情報を収集・更新・配信することを特徴としている。
【0016】
請求項10は、請求項4の運転支援システムにおいて、前記自車はヨーレートジャイロセンサを備え、自車の軌跡が前記近似直線内で変化した場合に、前記ヨーレートジャイロセンサの値を積分して得られるヨー角度の変化分を、前記誤差レベル判定部(13)で算出した近似直線に加えた新たな近似直線を作成し、当該新たな近似直線により前記位置情報の誤差の判定を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1によれば、自車又は他車の位置情報の誤差が大きい(精度が悪い)領域に自車が存在するときは、運転支援情報の供給度合いを制限できるので、マップマッチングを行わない場合であっても、位置情報の誤差に応じた運転支援情報の提供の度合いを適正に設定することができる。
更に、位置情報の誤差が大きい領域に自車が存在する場合であっても、運転支援情報の度合いを所定未満とした状態で自車へ運転支援情報を継続して提供し続けることができるので、自車の運転者に対して他車の存在を意識付けすることができる。
【0018】
請求項2によれば、運転支援情報によって自車の走行状態に直接影響が出る可能性がある情報については提供を行わないようにすることで、誤差の大きい領域に自車がいる場合に、精度が悪い情報の提供により自車の運転者が誤認識しないようにすることができる。
【0019】
請求項3によれば、誤差が大きい領域を随時誤差発生領域記憶部に更新していくことで、誤差発生領域記憶部(16,92)に記憶される誤差情報の精度を向上させることができる。
【0020】
請求項4によれば、実際に取得した位置情報に基づいて誤差レベルの判定を直ちに行い、誤差発生領域記憶部(16,92)に更新していくので、素早く誤差発生領域記憶部の更新を行うことができる。
【0021】
請求項5によれば、誤差が大きい(位置精度の低い)位置情報を省いた近似直線によって誤差レベルの判定を行うことができるので、より精度の高い誤差レベルの判定を行うことができる。
【0022】
請求項6によれば、自車が誤差の大きい領域に存在するということを自車の運転者自身が認識することができ、提供される運転支援情報の信頼度を運転者自身でも判断し易くすることができる。
【0023】
請求項7によれば、誤差レベルを認識し易くなる。
【0024】
請求項8によれば、道路幅に関わらず、道路幅を含めた誤差領域の表示を行うことができる。
【0025】
請求項9によれば、自車・他車で誤差発生領域記憶部(92)に記憶されている誤差情報を共有することができ、誤差情報の精度をより向上させることができる。
【0026】
請求項10によれば、バンク走行等、進行方向が変わり易い二輪特有の課題に対して誤差の判定の精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の運転支援システムの実施形態の一例を示すブロック図である。
【図2】誤差発生領域記憶部に記憶された誤差地図の一例を示す図である。
【図3】電子地図データの一例を示す図である。
【図4】誤差エリアの判定手順を示すフローチャート図である。
【図5】車両位置データと直線リンク及びフィッティング直線の関係を示す図である。
【図6】車両位置データについて誤差大小によりエリア区分を説明する図である。
【図7】車両位置データについて縦方向誤差を考慮するための説明図であり、(a)は横方向における車両位置データと直線リンクとの関係図、(b)は縦方向における車両位置データと直線リンクとの関係図、(c)は車両速度グラフある。
【図8】縦方向の誤差を考慮した場合に加える誤差エリアの判定手順を示すフローチャート図である。
【図9】ジャイロセンサを使用してフィッティング直線を補正する場合の説明図であり、(a)は車両位置データと直線リンク、補正直線リンク及びフィッティング直線の関係を示す図、(b)はヨーク角度θ1の変化を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例による運転支援レベル設定の手順を示すフローチャート図である。
【図11】本発明の他の実施例による運転支援レベル設定の手順を示すフローチャート図である。
【図12】本発明の運転支援システムの他の実施形態を示すブロック図である。
【図13】本発明の他の実施例による運転支援レベル設定の手順を示すフローチャート図である。
【図14】(a)〜(c)は二輪車のフロントスクリーン内側下部に設置された表示装置の例を示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の運転支援システムの実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。本発明の運転支援システムは、自車の通信エリア内に他車がいる場合、または、自車と他車(四輪車を含む)の離間距離が所定距離以下の場合に、近距離無線を使用して車両間通信(車車間通信)で情報を交換して、自車両(自車)に対する他車両(他車)の位置や走行方向及び速度を確認することにより、自車の走行に際しての運転支援情報を提供するものである。
【0029】
以下、自車が二輪車である場合の運転支援システムについて説明する。
運転支援システムは、例えば図1に示すように、自車に対して運転支援装置1、無線通信機2、GPS受信機4及び各種のセンサ5、運転支援情報を出力する出力装置6、電子地図が格納された外部記憶装置7、運転支援に関する情報を管理する管理センター9との通信用の携帯電話8をそれぞれ設置し、他車3からの他車情報、GPS受信機4からの自車の緯度経度情報、各種のセンサ5から自車の走行情報をそれぞれ得ることで、これらの情報から出力装置6に対して運転支援情報を提供するよう構成されている。
【0030】
無線通信機2は、車車間通信により自車を中心として一定範囲となる通信範囲内を走行している他車3からの他車情報を得るものであり、例えば車車間通信の通信速度は、10Hz(1秒間に10回送信)で行われている。車車間通信の通信速度は、車速に応じて変化するようにしてもよい。他車情報としては、例えば車両の種類(二輪車、普通四輪車、大型四輪車等)、位置、速度、向きの情報が得られるようにする。
また、無線通信機2は、路車間通信により、光ビーコンやETC設置場所等の通過を受信することで渋滞情報を取得する。
【0031】
GPS受信機4は、自車の緯度・経度情報を受信する。
各種のセンサ5は、車速を検知する車速センサ等の各種センサやジャイロセンサにより、自車の車速、加速度、向き、傾き(二輪車の場合)、ブレーキ状態、ウィンカ状態等を検知する。
【0032】
出力装置6は、自車(車両)に搭載された音声出力用のスピーカ、ハンドルバー前方に装着されたメータ内やフロントスクリーン内側下部に設置されたインジケータ、シート付近に装着された振動子等から構成され、運転者(ライダー)が視覚や聴覚等により運転支援装置1により提供された他車情報を認識できるように構成されている。
【0033】
外部記憶装置7には、予め電子地図情報が格納されている。
管理センター9は、走行中の全ての車両情報を一括管理するもので、運転支援に関する情報として、地図上における位置情報についての誤差が発生しやすいエリアを記憶する誤差発生領域記憶部92を備えている。誤差発生領域記憶部92は、位置情報の誤差が所定以上となる領域を予め地図情報に合わせて記憶するものである。
また、管理センター9は、電子地図情報91を備えていても良い。この場合、管理センター9は、自車及び他車からの誤差情報を収集・更新・配信することで、誤差情報を集中管理する。管理センター9で管理される誤差情報は、携帯電話8との間の通信により運転支援装置1側に提供されるようになっている。
【0034】
運転支援装置1は、無線通信機2、GPS受信機4、センサ5からの情報が入力されることで自車の車両情報を把握する車両情報把握部10を備えている。車両情報把握部10は、現在位置判定部11と道路状況把握部12を有し、外部記録装置7の地図データベースからノード・リンク情報を取得し、現在位置判定部11は、GPS受信機4で得られた情報により、外部記憶装置7から取得した電子地図上における自車の現在位置を判定することで、自車の走行先に存在する交差点に対する現時点での自車の位置を把握することができる。
道路状況把握部12は、無線通信機2により路車間通信により、渋滞情報等の道路状況を把握する。
【0035】
また、運転支援装置1は、現在位置判定部11による自車の軌跡から取得情報の誤差レベルを判定する誤差レベル判定部13と、自車の走行領域に応じて運転支援情報の提供度合いを段階的に変化させる運転支援レベル判定部14と、運転支援情報の出力装置6へ提供を制御するHMI制御実行部15と、位置情報の誤差が所定以上となる領域を予め地図情報に合わせて記憶する誤差発生領域記憶部16を備えている。
誤差レベル判定部13による誤差レベルの判定手順の詳細については後述する。
【0036】
運転支援レベル判定部14による運転支援レベルは、自車と他車との距離や速度に応じてHMI制御実行部15を介して出力装置6に情報提供されるもので、例えば、「情報提供」「注意喚起」、「警報」の三段階から構成されて、自車と他車間の距離が離れている場合には「情報提供」が、それよりも両者が近づいた場合(例えば、ある反応時間でブレーキを掛けられれば、停止できる限界位置)には「注意喚起」が、出会うまでに時間的な余裕がない場合(ブレーキを掛けるように指示しないと停止できない位置)には「警報」が発せられる。
【0037】
「情報提供」は、(A)通信エリアに他車が存在することを案内する段階であり、運転支援装置1で判断することなく、情報を提示するだけ(「通信エリア内に他車が存在する」程度の案内)であり、具体的には出力装置6によりインジケータ点灯等を行う。ナビを持った車両では、画面上に他車の位置を表示する。
【0038】
「注意喚起」は、(B)自車と位置関係が近い他車が存在する方向を案内する段階であり、運転支援装置1が判断するが、行動は指示しない。具体的には、出力装置6のインジケータにより何れの方向に存在するかが解る点灯を行う。ナビを持った車両では、画面上に他車の進行する向き表示する。
【0039】
「警報」は、(C)自車の行動を指示する段階であり、運転支援装置1が判断して出力装置6により音声等で行動(減速等)を指示する。尚、情報提供は、(C)をなくして(A)と(B)の二段階としてもよい。
【0040】
誤差発生領域記憶部92は、図2に示すように、数キロメートル四方の領域を1エリア(メッシュ)とし、複数エリアを結合した誤差地図(誤差エリアマップ)が記憶されている。各エリアの地図情報には、各道路の直線リンクAに対して道路幅方向に長さが異なる誤差レベル大エリア、誤差レベル中エリア、誤差レベル小エリア、誤差無しエリアがそれぞれ設定されている。各誤差エリアは、予め設定されている場所が記憶されるとともに、誤差レベル判定部13により新たな誤差エリアが確認された場合は、該当場所が記憶・更新される。
上述の例では、誤差発生領域記憶部92を管理センター9側に設置し、自車側に設置された携帯電話8との間の通信を介して誤差レベル判定部13に誤差情報が提供されるとともに、管理センター9側に新たな誤差情報を送信して誤差発生領域記憶部92における誤差情報の更新が行われる。
【0041】
また、管理センター9側の誤差発生領域記憶部92に代えて、運転支援装置1内に誤差発生領域記憶部16を設置するように構成してもよい。この場合、誤差レベル判定部13により新たに誤差領域が確認された場合は、自車の運転支援装置1内の誤差発生領域記憶部16でのみ情報が更新される。
【0042】
本発明の運転支援システムにおいては、誤差レベル判定部13に対して誤差発生領域記憶部92や誤差発生領域記憶部16から提供される位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合は、自車に対しての運転支援情報の提供度合いが所定以上となる運転支援情報を制限するようになっている。
すなわち、運転支援装置1において、位置情報の誤差が所定(例えば誤差レベル中)以上となる領域に自車が存在すると判断した場合は、出力装置6に対して、少なくとも上述した自車の行動を指示する「警報」に対応する段階(C)の運転支援情報の提供を禁止する。(A)と(B)の二段階の場合は、(B)を禁止する。
【0043】
次に、誤差レベル判定部13による誤差レベルの判定手順について、図3〜図6を参照しながら説明する。
外部記録装置7の地図データベースから取得される電子地図は、図3に示すように、直線道路の両端に存在するノード(端点)と、曲線道路の中心位置に間隔をおいて存在する補助ノード(形状補間点)を備えている。実際に車両が通行した場合に取得される車両位置のデータは、道路の周辺に高い建物が存在する等の状況により受信状況が異なることで誤差が生じ、ノードを結んだ線である直線リンクA上から外れることがある。
例えば、図3において、電子地図上で、車両の走行軌跡がXである場合に、車両が通行した際に取得される車両位置のデータは星印でプロットした位置となり、自車がビルや家等の影になる場所にいてGPS衛星との通信が行い難い場合については誤差が発生し易く、野原のように上方の見通しのよい箇所では誤差が少なくなる。
【0044】
誤差レベル判定部13による誤差レベルの判定は、図4のフローチャートに示すように、先ず、車両情報把握部10がGPS受信機4によりGPS座標と方位情報の取得を行う(ステップ51)。GPS座標及び方位情報の取得は、システム時間(例えば0.5秒)毎に行われ、取得したデータから地図上での近接するノードの位置を検出し、直線リンクAを作成する(ステップ52)。すなわち、図3に示すように、車両位置データ(星印)がプロットされた領域におけるノードOや補助ノードPを検出し、隣接するノード同士(補助ノードもノードとみなす)を直線で結ぶことで直線リンクAを作成する。
【0045】
続いて、1つの直線リンク分のGPSデータを車両位置データ(図5における複数の星印に対応するデータ)として記録する(ステップ53)。
複数の車両位置データ(星印)からフィッティング直線(近似直線)Bを作成する(ステップ54)。フィッティング直線Bは、車両位置データ(星印)のデータ列から最小二乗近似して直線を算出することで行われる。
次に、直線リンクAとフィッティング直線Bの平行度をチェックし所定角度以内かを判断する(ステップ55)。
所定角度以内でない場合は、再度フィッティング直線を作成する(ステップ54)。
すなわち、車両位置データ(星印)のデータ列から最小二乗近似して直線を算出し、その傾きとリンクの傾きを比較し、ある許容量を超えていたら、データ列を選択し直してフィッティング直線Bを作り直す。この場合、一番古い車両位置データ(GPSデータ)を1つ削除して再度フィッティング直線Bを作成し直すことが行われる。
【0046】
フィッティング直線Bの平行度が所定角度以内である場合(ステップ55)、各GPSデータとフィッティング直線Bまでの鉛直線距離Yを計算する(ステップ56)。
距離Yに基づき、誤差の大きい区間の判定を行う(ステップ57)。誤差の大きい区間の判定は、ある値(例えば、その区間の平均値)より大きい場合は、そのデータが入っている区間が誤差の大きくなる区間とする。また、この判定は距離Yの値により、「誤差レベル大」、「誤差レベル中」、「誤差レベル小」、「誤差無し」に分類される。
誤差が生じる区間(「誤差レベル大」、「誤差レベル中」、「誤差レベル小」)を直線リンクAに反映させ、誤差発生領域記憶部92(誤差発生記憶部16)の誤差地図(図2)の情報更新を行う(ステップ58)。
【0047】
誤差エリアの直線リンクAに沿った方向は、レベルが異なる場合の中点で区切る。例えば図6に示すように、直線リンクAに対して発生誤差が異なる車両位置データ(丸星印)が連続して存在する場合、誤差レベルが大きい車両位置データと、誤差レベルが小さい車両位置データとの中間位置(図6における縦線で表示)が、誤差エリアの境となる。
また、誤差エリアの横幅は、誤差量(距離Y)と同じにするか、誤差量+道路の片側幅で設定される。
【0048】
上述した例では、誤差レベル判定部13による誤差レベルの判定手順について、図5に示したように、横方向の誤差のみを判定して処理したが、図7に示すように、横方向の誤差(図7(a))に対して、縦方向の誤差(図7(b))を考慮して判定してもよい。
1つの直線リンク分の車両位置データ(GPSデータ)において、図7(c)のように、ある程度速度がV0で一定の区間があった時、図7(b)における車両位置データのプロット位置は、直線リンクAの進行方向に対して等間隔に位置するはずである。等間隔にない場合は、縦方向において誤差が発生していると考えられる。図7では丸星印で示した二か所のデータについて、速度が略一定にも関わらず進行方向の間隔が等間隔でないので、縦方向の誤差が生じていると判断する。図7(b)の四角で囲まれた部分は、縦方向で誤差の大きそうなエリアを示している。
すなわち、図4のフローチャートの「距離Yに基づき、誤差の大きい区間の判定」ステップ57に続けて、図8のように、縦方向のデータの間隔に基づき、誤差の大きい区間の判定を行い(ステップ61)、「横及び縦両方に含まれる」若しくは、「横又は縦のどちらか含まれる」領域を区間として区切る(ステップ62)。
【0049】
また、誤差発生エリア設定における精度向上を図るため、図4のフローチャートにおいてフィッティング直線を作成する場合に(ステップ54)、ジャイロセンサから得たデータを使用してもよい。二輪車の場合、四輪車と異なり、道路幅を一杯に使って(例えば斜め方向に)走行する場合があり、車両の軌跡と道路に設定される直線リンクとの傾きが異なる可能性がある。このような場合に、車両に装着したジャイロセンサから方位の変化、すなわち走行軌跡の傾きを算出し直線リンクを補正し、補正した直線リンクとフィッティング直線との比較を行うようにする。
すなわち、図9に示すように、車両(二輪車)の実際の軌跡が、直線リンク内で変化した時は、そのヨー角度θ(方位角)をヨーレートジャイロセンサの値(ヨー角速度)を積分することで算出し(図9(b))、その角度変化分θ1を直線リンクAに加えた直線リンクA´を作成し(図9(a))、図4のフローチャートのステップ55において、この直線リンクA´とフィッティング直線との平行度を比較する。すなわち、直線リンクAに対するフィッティング直線の角度をθ2とし、(θ1−θ2)の絶対値が設定値αより小の場合は、フィッティングされたと判定する。
【0050】
次に、管理センター9と外部記憶装置7に電子地図データを備えている運転支援装置1の運転支援レベル判定部14による運転支援レベル設定の処理手順について、図10のフローチャートを参照しながら説明する。
車両情報把握部10がGPS受信機4によりGPS座標と方位情報の取得を行う(ステップ21)。GPS座標及び方位情報の取得は、システム時間(例えば0.5秒)毎に行われる。
外部記憶装置7の電子地図データから取得したGPS座標に該当するメッシュを取得し、近接するノード・リンクを選択する(ステップ22)。
【0051】
直線リンクが切り替わったかどうかを判断し(ステップ23)、次のリンクに切り替わるまで現在のリンクの誤差レベル判定を行う(ステップ29)。次のリンクに切り替わった場合は、直前リンクに対応する誤差地図の作成を完了し(ステップ24)、管理センター9に誤差地図または誤差レベル情報を送信する(ステップ25)。
【0052】
一方、現在位置を含む陳坊エリアに誤差地図があるかどうかを判断し(ステップ26)、ない場合には、管理センター9から近傍のメッシュの誤差地図を取得する(ステップ27)。
取得した誤差地図に基づいて運転支援レベルの設定を行う(ステップ28)。すなわち、誤差地図(図2)における自車の位置が、誤差レベル大、誤差レベル中となる領域にある場合は、少なくとも上述した自車の行動を指示する段階(C)の運転支援情報の提供を禁止する。
この実施例の場合、自車・他車がそれぞれ作成した誤差地図を共有することができ、誤差地図の精度も向上する。
【0053】
次に、外部記憶装置7に電子地図データを備えているが管理センター9が存在しない場合の運転支援装置1による運転支援レベル設定の処理手順について、図11のフローチャートを参照しながら説明する。
車両情報把握部10がGPS受信機4によりGPS座標と方位情報の取得を行う(ステップ31)。GPS座標及び方位情報の取得は、システム時間(例えば0.5秒)毎に行われる。
外部記憶銅値7の電子地図データから取得したGPS座標に該当するメッシュを取得し、近接するノード・リンクを選択する(ステップ22)。
【0054】
直線リンクが切り替わったかどうかを判断し(ステップ33)、次のリンクに切り替わるまで現在のリンクの誤差レベル判定を行う(ステップ36)。次のリンクに切り替わった場合は、直前リンクに対応する誤差地図の作成を完了し更新する(ステップ34)。
一方、既に作成済の誤差地図に基づいて運転支援レベルの設定を行う(ステップ35)。
この実施例の場合、自車のみが作成した誤差地図を使って、運転支援レベルの設定を行う。
【0055】
図12は、運転支援システムの他の例を示すもので、図1と同じ構成をとる部分については同一の符合を付している。
この例は、車両に外部記憶装置7を備えていないタイプであり、この場合、地図に関する情報は管理センター9で管理された電子地図91から取得するようになる。
また、誤差発生領域記憶部92及び誤差レベル判定部93についても管理センター9側に設置され、運転支援装置1側には、図1の誤差レベル判定部13に代えて誤差レベル取得部17を備えている。誤差レベル取得部17は、携帯電話8を介した通信により管理センター9の電子地図91及び誤差レベル判定部93から地図上での自車の位置の誤差レベルの情報を取得するものである。
【0056】
図12の運転支援装置1による運転支援レベル設定の処理手順について、図13のフローチャートを参照しながら説明する。
車両情報把握部10がGPS受信機4によりGPS座標と方位情報の取得を行う(ステップ41)。GPS座標及び方位情報の取得は、システム時間(例えば0.5秒)毎に行われる。
管理センター9に対して自車の位置・方位情報をシステム時間(例えば0.5秒)毎に送信する(ステップ42)。
管理センター9から自車の位置についての誤差レベルを受信する(ステップ43)。
受信した誤差レベルに基づいて運転支援レベルの設定を行う(ステップ44)。
この実施例の場合、管理センター9側で誤差情報の集中管理を行うことができる。
【0057】
次に、出力装置6についての具体例について、図14を参照しながら説明する。
出力装置6は、二輪車のフロントスクリーン80内側に設置された表示装置70から構成され、表示装置70は、左右方向に細長い上側表示部71と、下側表示部72とから構成されている。各表示部は、アレイ状に配列された複数のLEDから構成され、それぞれ複数色が表示可能に構成されている。上側表示部71は、「誤差の大きいエリアに自車が位置する」場合に点灯するようになっている。下側表示部72は、車車間通信において提供された他車情報が表示されるようになっている。
【0058】
例えば、上側表示部71が緑色に点灯(斜線部分で示す)している場合は、自車が誤差の大きいエリア内に位置していることが解り、他車情報に関して通常の情報提供が行われないことが解るようになる(図14(a))。この場合、「情報提供」、「注意喚起」、「警報」のうち、少なくとも「警報」に関する運転支援は行われない(他車情報の提供が限定される)。
下側表示部72が青色に点灯(斜線部分で示す)している場合は、「情報提供」として通信エリア内に他車が存在する情報を意味する(図14(a)(b))。
下側表示部72の全体が青色に点灯し、且つ右側部分のみが異なる色(赤やアンバー等)で点灯(メッシュ部分で示す)している場合は、「注意喚起」として右方から他車が接近中であるという運転支援を意味する(図14(c))。
すなわち、図14(a)では、自車が誤差レベルの大きいエリアに位置し、且つ通信エリアに他車が存在することを示している。
また、図14(b)は、自車が誤差レベルの小さいエリアに位置し、且つ通信エリアに他車が存在することを示している。
図14(c)は、自車が誤差レベルの小さいエリアに位置し、且つ右方から他車が接近中であること示している。
尚、「警報」の運転支援を行う場合には、自車に搭載された音声出力用のスピーカ等を用いて、行動を指示するアナウンスを流す。
【0059】
上述した運転支援システムにおける出力装置6は、自車(車両)に搭載された音声出力用のスピーカや、ハンドルバーに装着されたメータ内やフロントスクリーン内側下部に設置されたインジケータとしたが、地図情報が表示可能な表示手段としてもよい。この場合、表示される地図情報は、誤差発生領域記憶部92,16から取得した誤差地図(図2)に対して自車位置が表示されるように構成すればよい。この地図情報には、「誤差レベル大」「誤差レベル中」「誤差レベル小」(誤差が所定以上となる領域)が視覚的映像として反映されている。この誤差地図では、誤差レベルを視覚的映像で表示する場合に、誤差レベルに対応する面積における幅方向の長さは、誤差の大きさに道路幅を加えた長さとなっているので、誤差が大きくなるに連れて視覚的映像の面積が大きく表示され、自車がどのレベルの誤差レベルエリアに存在しているかを容易に把握することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…運転支援装置、 2…無線通信機、 3…他車、 4…GPS受信機、 5…センサ、 6…出力装置、 7…外部記憶装置、 8…携帯電話、 9…管理センター、 10…車両情報把握部、 11…現在位置判定部、 12…道路状況把握部、 13…誤差レベル判定部、 14…運転支援レベル判定部、 15…HMI制御実行部、 16…誤差発生領域記憶部、 17…誤差レベル取得部、 70…表示装置、 71…上側表示部、 72…下側表示部、 91…電子地図、 92…誤差発生領域記憶部、 93…誤差レベル判定部、 A…直線リンク、 B…フィッティング直線(近似直線)、 O…ノード、 P…補助ノード。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の通信エリア内に他車が存在する場合に、前記自車及び他車間で少なくとも位置情報の送受信を行い、当該位置情報に基づいて他車に対する自車の危険度に関する走行の運転支援情報を提供する運転支援システムにおいて、
前記運転支援システムは、
前記自車と他車の位置関係が近づくにつれて前記危険度に関する運転支援情報の提供度合いを段階的に高める運転支援レベル判定部(14)と、
前記位置情報の誤差が所定以上となる領域を予め地図情報に合わせて記憶する誤差発生領域記憶部(16,92)とを備え、
前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合は、前記危険度に関する運転支援情報の提供度合いが所定以上となる前記運転支援情報を制限する
ことを特徴とする車両の運転支援システム。
【請求項2】
前記運転支援レベル判定部(14)によって判定される運転支援情報の提供度合いは、
(A)通信エリアに他車が存在することを案内する段階、
(B)自車と位置関係が近い他車が存在する方向を案内する段階、
を少なくとも含み、
前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合は、段階(B)の運転支援情報の提供を禁止する
請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記運転支援レベル判定部(14)は、前記位置情報の誤差が所定以上か否かを判定する誤差レベル判定部(13)を備え、
前記誤差レベル判定部(13)によって誤差が所定以上と判定された判定領域が、前記誤差発生領域記憶部(16,92)に記憶されていない領域である場合は、前記誤差発生領域記憶部(16,92)に前記判定領域を新たに記憶する
請求項1又は請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記誤差レベル判定部(13)は、所定間隔で取得される位置情報を記憶するとともに、当該記憶された位置情報に基づいて近似直線を算出し、
前記位置情報の誤差の判定は、前記近似直線から前記位置情報が所定以上離れていることを条件として行われる
請求項3に記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記地図情報は、道路形状に合わせてノードと、ノード間を結ぶ直線リンクとを備え、
前記誤差レベル判定部は、前記直線リンクと前記近似直線との平行度が所定以内であるときに、誤差レベルを判定する
請求項4に記載の運転支援システム。
【請求項6】
前記運転支援情報を出力する出力手段(6)を備え、
前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合、その旨の情報を前記出力手段(6)に出力する
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の運転支援システム。
【請求項7】
前記出力手段(6)は、地図情報を表示可能な表示手段であって、
前記誤差発生領域記憶部(16,92)は、前記地図情報に誤差が所定以上となる領域を視覚的映像として反映するとともに、前記誤差が大きくなるに連れて前記視覚的映像の面積を大きくする
請求項6に記載の運転支援システム。
【請求項8】
前記視覚的映像の面積における幅方向の長さは、誤差の大きさに道路幅を加えた長さとする
請求項7に記載の運転支援システム。
【請求項9】
前記誤差発生領域記憶部(92)は、管理センター(9)で集中管理されるとともに、自車及び他車からの誤差情報を収集・更新・配信する
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の運転支援システム。
【請求項10】
前記自車はヨーレートジャイロセンサを備え、
自車の軌跡が前記近似直線内で変化した場合に、
前記ヨーレートジャイロセンサの値を積分して得られるヨー角度の変化分を、前記誤差レベル判定部(13)で算出した近似直線に加えた新たな近似直線を作成し、
当該新たな近似直線により前記位置情報の誤差の判定を行う
請求項4に記載の運転支援システム。
【請求項1】
自車の通信エリア内に他車が存在する場合に、前記自車及び他車間で少なくとも位置情報の送受信を行い、当該位置情報に基づいて他車に対する自車の危険度に関する走行の運転支援情報を提供する運転支援システムにおいて、
前記運転支援システムは、
前記自車と他車の位置関係が近づくにつれて前記危険度に関する運転支援情報の提供度合いを段階的に高める運転支援レベル判定部(14)と、
前記位置情報の誤差が所定以上となる領域を予め地図情報に合わせて記憶する誤差発生領域記憶部(16,92)とを備え、
前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合は、前記危険度に関する運転支援情報の提供度合いが所定以上となる前記運転支援情報を制限する
ことを特徴とする車両の運転支援システム。
【請求項2】
前記運転支援レベル判定部(14)によって判定される運転支援情報の提供度合いは、
(A)通信エリアに他車が存在することを案内する段階、
(B)自車と位置関係が近い他車が存在する方向を案内する段階、
を少なくとも含み、
前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合は、段階(B)の運転支援情報の提供を禁止する
請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記運転支援レベル判定部(14)は、前記位置情報の誤差が所定以上か否かを判定する誤差レベル判定部(13)を備え、
前記誤差レベル判定部(13)によって誤差が所定以上と判定された判定領域が、前記誤差発生領域記憶部(16,92)に記憶されていない領域である場合は、前記誤差発生領域記憶部(16,92)に前記判定領域を新たに記憶する
請求項1又は請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記誤差レベル判定部(13)は、所定間隔で取得される位置情報を記憶するとともに、当該記憶された位置情報に基づいて近似直線を算出し、
前記位置情報の誤差の判定は、前記近似直線から前記位置情報が所定以上離れていることを条件として行われる
請求項3に記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記地図情報は、道路形状に合わせてノードと、ノード間を結ぶ直線リンクとを備え、
前記誤差レベル判定部は、前記直線リンクと前記近似直線との平行度が所定以内であるときに、誤差レベルを判定する
請求項4に記載の運転支援システム。
【請求項6】
前記運転支援情報を出力する出力手段(6)を備え、
前記位置情報の誤差が所定以上となる領域に自車が存在する場合、その旨の情報を前記出力手段(6)に出力する
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の運転支援システム。
【請求項7】
前記出力手段(6)は、地図情報を表示可能な表示手段であって、
前記誤差発生領域記憶部(16,92)は、前記地図情報に誤差が所定以上となる領域を視覚的映像として反映するとともに、前記誤差が大きくなるに連れて前記視覚的映像の面積を大きくする
請求項6に記載の運転支援システム。
【請求項8】
前記視覚的映像の面積における幅方向の長さは、誤差の大きさに道路幅を加えた長さとする
請求項7に記載の運転支援システム。
【請求項9】
前記誤差発生領域記憶部(92)は、管理センター(9)で集中管理されるとともに、自車及び他車からの誤差情報を収集・更新・配信する
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の運転支援システム。
【請求項10】
前記自車はヨーレートジャイロセンサを備え、
自車の軌跡が前記近似直線内で変化した場合に、
前記ヨーレートジャイロセンサの値を積分して得られるヨー角度の変化分を、前記誤差レベル判定部(13)で算出した近似直線に加えた新たな近似直線を作成し、
当該新たな近似直線により前記位置情報の誤差の判定を行う
請求項4に記載の運転支援システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−79031(P2012−79031A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222817(P2010−222817)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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