説明

運転支援装置、及び運転支援方法

【課題】車両の減速が必要となるときに、その旨を効果的に運転者に通知する。
【解決手段】自車進路前方の道路形状に応じて自車両が減速を開始すべき減速タイミングを判断し、判断した減速タイミングよりも前の時点で、運転のアクセル操作に対する操作反力を増加補正する。すなわち、減速開始閾値thRから早期係数XAを減算した補正開始閾値(thR−XA)を設定し、目標減速度Xgが補正開始閾値(thR−XA)以上となるときに(ステップS25の判定が“Yes”)、アクセル操作反力を増加補正する(ステップS26)。このとき、目標減速度Xgと補正開始閾値(thR−XA)との差分が大きいほど、アクセル操作に対するペダル反力の増加補正量を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の減速を要するときの運転操作を支援する運転支援装置、及び運転支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置やインフラストラクチャからの情報に基づいて、進路前方の道路形状を取得し、カーブに進入する前に、そのカーブに適した進入速度となるように自動減速を行うと共に、その旨を音声や表示によって運転者に報知するものがあった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−236699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動減速を行う旨を音声や表示によって報知しても、運転者の視線方向や周囲の雑音によっては、効果的に通知できない可能性がある。
本発明の課題は、車両の減速が必要となるときに、その旨を効果的に運転者に通知することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明に係る運転支援装置は、自車進路前方の道路形状に応じて自車両が減速を開始すべきタイミングである減速タイミングを判断し、判断した減速タイミングよりも前の時点で、運転の加減速操作に対する操作反力を、減速促進方向に制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る運転支援装置によれば、自車両が減速を開始すべき減速タイミングを判断し、判断した減速タイミングよりも前の時点で、運転の加減速操作に対する操作反力を、減速促進方向に制御することで、車両に減速が必要な旨を、効果的に運転者に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】車両の概略構成である。
【図2】運転支援処理を示すフローチャートである。
【図3】目標ノード点の選出例である。
【図4】係数Ksの算出に用いるマップである。
【図5】早期係数XAの算出に用いるマップである(車速用)。
【図6】早期係数XAの算出に用いるマップである(路面勾配用)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《構成》
図1は、車両の概略構成である。
ブレーキペダル1は、ブレーキブースタ2を介してマスターシリンダ3に連結される。ブレーキブースタ2は、例えば負圧の供給量を変化させることで倍力比を調整できる制御型のブースタであり、コントローラ10によって駆動制御される。この倍力比の調整により、運転者のペダル操作に対する操作反力が制御される。
【0009】
マスターシリンダ3と各ホイールシリンダ4i(i=FL、FR、RL、RR)との間には、スタビリティ制御(VDC:Vehicle Dynamics Control)等に用いられるブレーキアクチュエータ5が介装されている。このブレーキアクチュエータ5は、ソレノイドバルブやポンプ等の油圧機器を備え、これらをコントローラ10によって駆動制御することにより、運転者のブレーキ操作に関らず各ホイールシリンダ4iの液圧を個別に制御することができる。
【0010】
駆動力制御装置20は、エンジン21の燃料噴射量や点火時期、自動変速機22の変速比、及び電子制御スロットルバルブ23の開度を制御することにより、車両の駆動力を制御する。また、駆動力制御装置20は、コントローラ10からの駆動力指令を受けたときは、その駆動力指令に応じて車両の駆動力を制御する。
レーダ装置31は、車両前方の物体までの車間距離Dを検出し、それをコントローラ10へ入力する。
【0011】
ナビゲーション装置32は、GPSで計測した自車両の現在位置(X0,Y0)、及び道路地図情報に基づいて、自車進路前方の道路形状を検出する。ここで、道路形状とは、ノード点情報であり、Xj、Yj、Lj(j=1〜n、nは整数)からなる。Xj及びYjはノード点の位置情報であり、Ljは現在位置(X0,Y0)からノード点(Xj,Yj)までの距離である。なお、現在位置から遠いノード点ほど、jの値が大きくなるように配列されている。なお、車速及びヨーレートに基づいて、現在位置(X0,Y0)を補正してもよい。また、インフラストラクチャから道路形状を入手可能であれば、それを用いる。また、取得した道路地図情報、及び自車両の現在位置は、ディスプレイ等に表示される。
【0012】
モニタ33は、コントローラ10からの指令に応じて、運転者に通知すべき情報を表示すると共に、内蔵されたスピーカを介して音声やブザーで通知する。
加速度センサ11は、車両の前後加速度Xg及び横加速度Ygを検出し、ヨーレートセンサ12は、車両のヨーレートγを検出し、舵角センサ13は、ステアリングホイール6の回転角、つまり運転者のステアリング操作量を検出する。また、圧力センサ14は、マスターシリンダ3の圧力を検出し、車輪速センサ15iは、車輪7iの回転速度を検出する。各検出信号は、コントローラ10へ入力される。
【0013】
アクセルペダル34には、反力モータ35が連結され、アクセルセンサ16は、反力モータ35の回転角に応じて運転者のアクセル操作量(アクセル開度)を検出しコントローラ10へ入力する。反力モータ35は、コントローラ10によって駆動制御され、この反力モータ35により、運転者のペダル操作に対する操作反力が制御される。
なお、上記の各種データに左右の方向性がある場合には、何れも左方向を負値とし、右方向を正値とする。すなわち、ヨー角φ及び操舵角δは、左旋回時を負値とし右旋回時を正値とする。
コントローラ10は、減速制御処理を所定時間毎のタイマ割込みで実行する。
【0014】
図2は、減速制御処理を示すフローチャートである。
先ずステップS1では、各種データを読込む。
続くステップS2では、下記(1)式に示すように、非駆動側の従動輪の車輪速Vw1及びVw2を用い、その平均車輪速を車速Vとして算出する。
V=(Vw1+Vw2)/2 …………(1)
【0015】
続くステップS3では、各ノード点の座標に基づいて各ノード点の曲率半径Rnを算出する。曲率半径Rnの自体の算出方法は、幾つかの方法が考えられるが、例えば下記(2)式に示すように、連続する三つのノード点の座標から、曲率半径Rnを算出する。fは三つのノード点の座標から曲率半径Rnを算出する関数である。
Rn=f(X(j-1)、Y(j-1)、X(j)、Y(j)、X(j+1)、Y(j+1)
…………(2)
【0016】
ここでは、連続する三つのノード点の座標から曲率半径Rnを算出しているが、他にも前後するノード点を結ぶ直線の角度に基づいて曲率半径Rnを算出してもよい。また、その都度、曲率半径Rnを算出するのではなく、地図データ内のノード情報として各ノード点の曲率半径Rnを予め記憶させておき、その値を読込むようにしてもよい。また、各ノード点を通過するように、各ノード点の間を等間隔に区分する補完点を作成し、その作成した補完点毎に曲率半径Rnを算出してもよい。
【0017】
続くステップS4では、制御対象地点となる目標ノード点の算出を行う。本実施例では、自車前方のノード点の中から、制御の対象となる目標ノード点を曲率半径に応じて算出する。本発明は、運転者の目測ミスなどにより、実際のカーブの曲率半径から設定され、運転者が違和感を感じることなくカーブを通過可能な車速(通過可能速度)以上の車速でコーナーを走行しようとしているのを防止することが目的であるので、自車両に最も接近しており、且つ最も曲率半径Rnの小さい位置に対して制御を行う。したがって、目標ノード点は、図3に示すように、自車前方の曲率半径Rnの最初の極小値、つまり最も自車両に近く最も曲率半径が小さくなる地点である。
【0018】
続くステップS5では、各輪の制駆動力とスリップ率との関係に従い、下記(3)に示すように、路面の摩擦係数μを推定する。
μ=g(各輪の制駆動力、各輪のスリップ率) …………(3)
なお、路面の摩擦係数μをインフラストラクチャから入手可能であれば、それを用いればよい。また、運転者の判断で摩擦係数μを推定してもよく、例えば高・中・低のように大まかな段階に切り替え可能なスイッチを設けて、これを運転者の判断で選択操作させてもよい。
【0019】
続くステップS6では、下記(4)式に示すように、路面の摩擦係数μに応じて許容横加速度YgLIMを算出する。Ksは係数であり、例えば0.8程度の値である。
YgLIM=Ks×μ …………(4)
なお、係数Ksをするのではなく、図4のマップを参照し、車速に応じて係数Ksを算出してもよい。このマップは、車速が高くなるほど、係数Ksが小さくなるように設定されている。したがって、車速が高くなるほど、許容横加速度YgLIMも小さくなる。
続くステップS7では、下記(5)式に示すように、目標ノード点の曲率半径Rn、及び許容横加速度YgLIMに応じて、目標ノード点を通過するときの目標車速Vrを算出する。
Vr=√(YgLIM×|Rn|) …………(5)
【0020】
続くステップS8では、下記(6)式に示すように、車速V、目標車速Vr、及び目標ノード点までの距離Lに応じて、目標減速度Xgを算出する。目標減速度Xgは、正値のときに減速を指し、負値のときに加速を指す。
Xg=(V2−Vr2)/2L
=(V2−YgLIM×|Rn|)/2L …………(6)
上記(6)式により、V>Vrの場合、車速Vが大きいほど、且つ目標車速Vrが小さいほど、目標減速度Xgが大きくなる。また、許容横加速度Ygが小さいほど、且つ曲率半径Rnが小さいほど、目標減速度Xgが大きくなる。また、目標ノード点までの距離Lが短いほど、目標減速度Xgが大きくなる。
【0021】
続くステップS9では、警報の作動状態を表す警報フラグがFW=0にリセットされているか否かを判定する。判定結果がFW=0であれば、警報が非作動状態であると判断してステップS10に移行する。一方、判定結果がFW=1であれば、既に警報が作動状態にあると判断してステップS13に移行する。
ステップS10では、目標減速度Xgが警報開始閾値thW以上であるか否かを判定する。判定結果がXg≧thWであれば、減速を促す警報が必要であると判断してステップS11に移行する。一方、判定結果がXg<thWであれば、減速を促す警報は不要であると判断してステップS14に移行する。
【0022】
ステップS11では、モニタ33を駆動し、表示や音声などによって減速を促す警報を発する。
続くステップS12では、警報フラグをFW=1にセットしてからステップS16に移行する。
ステップS13では、目標減速度Xgが警報解除閾値(thW−KW)以上であるか否かを判定する。KWは警報のON/OFFのハンチングを防ぐためのヒステリシスであり、例えば0.03G程度の値とする。判定結果がXg≧(thW−KW)であれば、依然として減速を促す警報が必要であると判断して前記ステップS11に移行する。一方、判定結果がXg<(thW−KW)であれば、もはや減速を促す警報は不要であると判断してステップS14に移行する。
【0023】
ステップS14では、警報を終了する。
続くステップS15では、警報フラグをFW=0にリセットしてからステップS16に移行する。
ステップS16では、減速制御の作動状態を表す減速フラグがFR=0にリセットされているか否かを判定する。判定結果がFR=0であれば、減速制御が非作動状態であると判断してステップS17に移行する。一方、判定結果がFR=1であれば、既に減速制御が作動状態にあると判断してステップS20に移行する。
【0024】
ステップS17では、目標減速度Xgが減速開始閾値thR以上であるか否かを判定する。thRはthWより少し大きい値とする。判定結果がXg≧thRであれば、減速制御が必要であると判断してステップS18に移行する。一方、判定結果がXg<thRであれば、減速制御は不要であると判断してステップS21に移行する。
ステップS18では、制動力制御、及び駆動力抑制によって減速制御を実行する。
【0025】
[制動力制御]
先ず、下記(7)式に示すように、目標減速度Xgに応じて目標制動液圧Pcを算出する。Kbはブレーキ諸元に応じた定数である。
Pc=Kb×Xg …………(7)
そして、下記(8)式に示すように、目標制動液圧Pcとマスターシリンダ圧力Pmとを比較し、セレクトハイしたものを新たな目標制動液圧Pcとする。
Pc ← max〔Pc,Pm〕 …………(8)
そして、最適な前後輪制動力配分を決定し、目標制動液圧Pcに応じて各輪の目標制動液圧Piを算出し、この目標制動液圧Piを実現するためにブレーキアクチュエータ5を駆動制御する。
【0026】
[駆動力制御]
ここでは、下記(9)式に示すように、目標駆動トルクTを算出し、この目標駆動トルクTに応じた駆動力指令を駆動力制御装置20に出力する。Faは運転者のアクセル操作に応じた通常の駆動トルクであり、Gは目標制動液圧Pcに応じて発生すると予想される制動トルクである。
T=Fa−G …………(9)
こうして制動力の増加と、エンジン出力の抑制によって、車両を効果的に減速させる。
続くステップS19では、減速フラグをFR=1にセットしてからステップS23に移行する。
【0027】
ステップS20では、目標減速度Xgが減速解除閾値(thR−KR)以上であるか否かを判定する。KRは減速制御のON/OFFのハンチングを防ぐためのヒステリシスであり、例えば0.05G程度の値とする。判定結果がXg≧(thR−KR)であれば、依然として減速制御が必要であると判断して前記ステップS18に移行する。一方、判定結果がXg<(thR−KR)であれば、もはや減速制御は不要であると判断してステップS21に移行する。
【0028】
ステップS21では、減速制御を終了する。
続くステップS22では、減速フラグをFR=0にリセットしてからステップS23に移行する。
ステップS23では、アクセル操作に対する反力増加補正を開始するタイミングを、減速制御を開始するタイミングよりも早めるための早期係数XAを、車速及び路面勾配の少なくとも一方に応じて算出する。
【0029】
先ず、図5のマップを参照し、車速に応じて早期係数XAを算出する。このマップは、車速が高いほど、早期係数XAが最大値XMAXから最小値XMINの範囲で小さくなるように設定されている。
また、図6のマップを参照し、路面勾配に応じて早期係数XAを算出する。このマップは、路面勾配が0のときに、早期係数XAが中間値XMIDとなり、下り勾配が大きくなるほど、早期係数XAが中間値XMIDから最大値XMAXの範囲で大きくなり、上り勾配が大きくなるほど、早期係数XAが中間値XMIDから最小値XMINの範囲で小さくなるように設定されている。
【0030】
なお、車速及び路面勾配の双方に応じて早期係数XAを算出する場合には、個別に算出した早期係数XAの平均値を用いたり、重み付けをしてから加算したりすればよい。
続くステップS24では、反力補正の実施状態を表す補正フラグがFA=0にリセットされているか否かを判定する。判定結果がFA=0であれば、反力補正は実施されていないと判断してステップS25に移行する。一方、判定結果がFA=1であれば、既に反力補正が実施されていると判断してステップS28に移行する。
【0031】
ステップS25では、目標減速度Xgが補正開始閾値(thR−XA)以上であるか否かを判定する。判定結果がXg≧(thR−XA)であれば、減速を促す必要があると判断してステップS26に移行する。一方、判定結果がXg<(thR−XA)であれば、減速を促す必要はないと判断してステップS28に移行する。
ステップS26では、反力モータ35を駆動し、アクセル操作に応じた通常反力を増加補正する。ここでは、目標減速度Xgと所定値(thR−XA)との差分が大きいほど、増加補正量を大きくする。
【0032】
続くステップS27では、補正フラグをFA=1にセットしてから所定のメインプログラムに復帰する。
ステップS28では、目標減速度Xgが補正解除閾値(thR−XA−KR)以上であるか否かを判定する。判定結果がXg≧(thR−XA−KR)であれば、依然として減速を促す必要であると判断して前記ステップS26に移行する。一方、判定結果がXg<(thR−XA−KR)であれば、もはや減速を促す必要はないと判断してステップS29に移行する。
ステップS29では、反力補正を終了する。
続くステップS30では、補正フラグをFA=0にリセットしてから所定のメインプログラムに復帰する。
【0033】
《作用》
先ず、ナビゲーション装置32から取得した道路形状に基づいて、車両の目標減速度Xgを算出する(ステップS3〜S8)。このとき、車両がカーブに近づいてくると、その道路形状に基づいて算出される目標減速度Xgが次第に増加してくる。
そして、目標減速度Xgが警報開始閾値thW以上となるときに(ステップS10の判定が“Yes”)、モニタ33を駆動し、表示や音声などによって減速を促す警報を発する(ステップS11)。この警報により、運転者が速やかにアクセル操作を緩める、又は制動操作に移行する等、減速操作を実行することで、目標減速度Xgが警報開始閾値(thW−KW)未満になれば(ステップS13の判定が“No”)、警報を終了する(ステップS14)。減速開始閾値thRは警報開始閾値thWよりも大きいので、このときに減速制御が開始されることはない。
【0034】
一方、警報を開始しても、運転者が速やかに減速操作を実行せず、目標減速度Xgが減速開始閾値thR以上となるときに(ステップS17の判定が“Yes”)、ブレーキアクチュエータ5及び駆動力制御装置20を駆動し、制動力の増加と駆動力の抑制によって、減速制御を行う(ステップS18)。この減速制御により、目標減速度Xgが減速解除閾値(thR−KR)未満になれば(ステップS20の判定が“No”)、減速制御を終了する(ステップS21)。
【0035】
このように、自車進路前方の道路形状を取得し、カーブに進入する前に、そのカーブに適した進入速度となるように自動減速を行うと共に、その旨を音声や表示によって運転者に報知することで、運転支援を行うことができる。
ところで、自動減速を行う旨を音声や表示によって報知しても、運転者の視線方向や周囲の雑音によっては、効果的に通知できない可能性がある。
そこで、本実施形態では、自車進路前方の道路形状に応じて自車両が減速を開始すべき減速タイミングを判断し、判断した減速タイミングよりも前の時点で、運転のアクセル操作に対する操作反力を増加補正する。
【0036】
具体的には、先ず減速開始閾値thRから早期係数XAを減算した補正開始閾値(thR−XA)を設定し、目標減速度Xgが補正開始閾値(thR−XA)以上となるときに(ステップS25の判定が“Yes”)、操作反力を増加補正する(ステップS26)。すなわち、補正開始閾値(thR−XA)は減速開始閾値thRよりも小さいので、減速制御が開始されるよりも、必ずアクセルペダル34の操作反力が強まることになる。これにより、車両に減速が必要なことを効果的に運転者に通知することができ、且つ運転者の減速操作を促すことができる。
【0037】
このとき、車速が高いほど、早期係数XAを大きくすることで(ステップS23、図5)、補正開始閾値(thR−XA)を小さくする。これにより、目標減速度Xgが補正開始閾値(thR−XA)を超えやすくなるので、減速タイミングに対して反力補正を開始するタイミング差が大きくなり、より早く反力補正が開始される。したがって、高速で走行しているときには、カーブに進入する前に、十分な余裕を持って運転者に減速操作を促すことができ、運転者の安心感を与えることができる。
【0038】
また、路面勾配に応じても、早期係数XAを変化させ(ステップS23、図6)、補正開始閾値(thR−XA)を調整する。
先ず、下り勾配が大きいほど、早期係数XAを大きくすることで、補正開始閾値(thR−XA)を小さくする。これにより、目標減速度Xgが補正開始閾値(thR−XA)を超えやすくなるので、減速タイミングに対して反力補正を開始するタイミング差が大きくなり、より早く反力補正が開始される。したがって、降坂路のように、車速が増加しやすい状況では、カーブに進入する前に、十分な余裕を持って運転者に減速操作を促すことができ、運転者の安心感を与えることができる。
【0039】
一方、上り勾配が大きいほど、早期係数XAを小さくすることで、補正開始閾値(thR−XA)を大きくする。これにより、目標減速度Xgが補正開始閾値(thR−XA)を超えにくくなるので、減速制御が開始されるよりかは早いものの、この減速タイミングに対して反力補正を開始するタイミング差が小さくなる。したがって、降坂路のように、車速が減速しやすい状況では、不必要に減速操作を促すことを抑制し、運転者に違和感を与えることがない。
【0040】
また、早期係数XAは最大値MAXから最小値XMINの範囲に制限する。これにより、車速が高すぎたり、下り勾配が大きすぎたりしたときに、反力補正が不必要に早まることを防止することができる。逆に、車速が低い、又は上り勾配が大きく、車両が減速しやすい状況にあるとはいえ、減速タイミングに対して反力補正を開始するタイミング差が小さくなり過ぎて、その差を運転者が認識できない、といった事態を防ぐことができる。
【0041】
また、目標減速度Xgと補正開始閾値(thR−XA)との差分が大きいほど、アクセル操作に対するペダル反力の増加補正量を大きくする。これにより、運転者はペダル反力の大きさから、車両が今どの程度減速すべきなのかを、把握することができる。
こうして、アクセルペダル34の反力増加により、目標減速度Xgが補正解除閾値(thR−XA−KR)未満になれば(ステップS28の判定が“No”)、反力補正を終了する(ステップS29)。
【0042】
《応用例》
なお、本実施形態では、減速制御を行う前に、アクセルペダル34の反力を増加させて減速操作を促しているが、これに限定されるものではない。すなわち、運転者がアクセル操作をしているとは限らず、ブレーキ操作をしていることも考えられる。したがって、減速制御を行う前に、運転者がアクセル操作をしているか、ブレーキ操作をしているかを判定し、ブレーキ操作をしているときには、ブレーキペダル1の反力を減少させることで、ブレーキペダル1の更なる踏込みを促してもよい。
また、本実施形態では、減速制御を行う場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、カーブに進入する前に、警報を行い、且つ反力補正を行うだけの構成であってもよい。
【0043】
《効果》
以上より、アクセルペダル34、ブレーキペダル1が「運転操作子」に対応し、反力モータ33、ブレーキブースタ2が「反力制御手段」に対応し、ナビゲーション装置32、ステップS3、S4の処理がが「検出手段」に対応する。また、ステップS16、S17、S20の処理がが「判断手段」に対応し、ブレーキアクチュエータ5、駆動力制御装置20、ステップS18の処理が「減速制御手段」に対応し、ステップS23〜S30の処理が「補正手段」に対応する。
【0044】
(1)運転者によって加減速操作される運転操作子と、運転者の加減速操作に応じて前記運転操作子に操作反力を付与する反力制御手段と、自車進路前方の道路形状を検出する検出手段と、該検出手段が検出した道路形状に応じて自車両が減速を開始すべきタイミングである減速タイミングを判断する判断手段と、該判断手段が判断した減速タイミングよりも前の時点で、前記操作反力に対する減速促進方向への補正を開始する補正手段と、を備える。
このように、減速タイミングよりも前の時点で、運転の加減速操作に対する操作反力を、減速促進方向に制御することで、車両に減速が必要な旨を、効果的に運転者に通知することができる。
【0045】
(2)前記判断手段は、前記検出手段が検出した道路形状に応じて、自車進路前方で最も自車両に近く最も曲率半径が小さくなる地点を制御対象地点として算出し、算出した制御対象地点における曲率半径に基づいて当該制御対象地点を通過するときの目標車速を算出し、算出した目標車速、前記制御対象地点までの距離、及び現在の車速に基づいて、自車両の目標減速度を算出し、当該目標減速度が所定の減速開始閾値よりも大きいときに、自車両が減速を開始すべき減速タイミングであると判断する。
これにより、自車両が減速すべき減速タイミングを容易に判断できる。
【0046】
(3)前記補正手段は、前記減速開始閾値よりも小さな補正開始閾値を設定し、前記目標減速度が当該補正開始閾値より大きくなったときに、前記補正を開始する。
これにより、減速タイミングよりも前の時点で、運転の加減速操作に対する操作反力を、減速促進方向に制御することができる。
(4)前記補正手段は、前記目標減速度と前記補正開始閾値との差分が大きいほど、前記操作反力に対する減速促進方向への補正量を大きくする。
これにより、運転者はペダル反力の大きさから、車両が今どの程度減速すべきなのかを、把握することができる。
【0047】
(5)前記判断手段が判断した減速タイミングで、車両を減速させる減速制御手段を備える。
これにより、カーブに進入する前に、そのカーブに適した進入速度となるように、車両を確実に減速させることができる。
(6)前記補正手段は、自車速が高いほど、前記減速タイミングに対して前記補正を開始するタイミング差を大きくする。
これにより、高速で走行しているときには、カーブに進入する前に、十分な余裕を持って運転者に減速操作を促すことができ、運転者の安心感を与えることができる。
【0048】
(7)前記補正手段は、路面勾配に応じて、前記減速タイミングに対して前記補正を開始するタイミング差を変更する。
これにより、路面勾配に応じた適切なタイミングで、運転者に減速操作を促すことができる。
(8)前記補正手段は、下り勾配が大きいほど、前記減速タイミングに対して前記補正を開始するタイミング差を大きくする。
これにより、降坂路のように、車速が増加しやすい状況では、カーブに進入する前に、十分な余裕を持って運転者に減速操作を促すことができ、運転者の安心感を与えることができる。
【0049】
(9)前記補正手段は、上り勾配が大きいほど、前記減速タイミングに対して前記補正を開始するタイミング差を小さくする。
これにより、降坂路のように、車速が減速しやすい状況では、不必要に減速操作を促すことを抑制し、運転者に違和感を与えることがない。
(10)前記補正手段は、前記減速タイミングに対して前記補正を開始するタイミング差を、所定範囲に制限する。
これにより、車速が高すぎたり、下り勾配が大きすぎたりしたときに、反力補正が不必要に早まることを防止することができる。逆に、車速が低い、又は上り勾配が大きく、車両が減速しやすい状況にあるとはいえ、減速タイミングに対して反力補正を開始するタイミング差が小さくなり過ぎて、その差を運転者が認識できない、といった事態を防ぐことができる。
【0050】
(11)前記運転操作子は、アクセル操作子を含み、前記反力制御手段は、運転者のアクセル操作に応じて前記アクセル操作子に操作反力を付与し、前記補正手段は、前記アクセル操作子に対する操作反力を増加補正する。
これにより、アクセル操作を緩める減速操作を運転者に促すことができる。
(12)前記運転操作子は、ブレーキ操作子を含み、前記反力制御手段は、運転者のブレーキ操作に応じて前記ブレーキ操作子に操作反力を付与し、前記補正手段は、前記ブレーキ操作子に対する操作反力を減少補正する。
これにより、ブレーキ操作を強める減速操作を運転者に促すことができる。
【0051】
(13)自車進路前方の道路形状に応じて自車両が減速を開始すべき減速タイミングを判断し、判断した減速タイミングよりも前の時点で、運転の加減速操作に対する操作反力を、減速促進方向に制御する。
このように、減速タイミングよりも前の時点で、運転の加減速操作に対する操作反力を、減速促進方向に制御することで、車両に減速が必要な旨を、効果的に運転者に通知することができる。
【0052】
(14)自車進路前方で最も自車両に近く最も曲率半径が小さくなる地点を制御対象地点として算出し、算出した制御対象地点における曲率半径に基づいて当該制御対象地点を通過するときの目標車速を算出し、算出した目標車速、前記制御対象地点までの距離、及び現在の車速に基づいて、自車両の目標減速度を算出し、当該目標減速度が所定の減速開始閾値よりも大きいときに、自車両が減速を開始すべき減速タイミングであると判断する。
これにより、自車両が減速を開始すべき減速タイミングを容易に判断できる。
【符号の説明】
【0053】
1 ブレーキペダル
2 ブレーキブースタ
5 ブレーキアクチュエータ
10 コントローラ
20 駆動力制御装置
32 ナビゲーション装置
34 アクセルペダル
35 反力モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によって加減速操作される運転操作子と、運転者の加減速操作に応じて前記運転操作子に操作反力を付与する反力制御手段と、
自車進路前方の道路形状を検出する検出手段と、該検出手段が検出した道路形状に応じて自車両が減速を開始すべきタイミングである減速タイミングを判断する判断手段と、該判断手段が判断した減速タイミングよりも前の時点で、前記操作反力に対する減速促進方向への補正を開始する補正手段と、を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記検出手段が検出した道路形状に応じて、自車進路前方で最も自車両に近く最も曲率半径が小さくなる地点を制御対象地点として算出し、算出した制御対象地点における曲率半径に基づいて当該制御対象地点を通過するときの目標車速を算出し、算出した目標車速、前記制御対象地点までの距離、及び現在の車速に基づいて、自車両の目標減速度を算出し、当該目標減速度が所定の減速開始閾値よりも大きいときに、自車両が減速を開始すべき減速タイミングであると判断することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記減速開始閾値よりも小さな補正開始閾値を設定し、前記目標減速度が当該補正開始閾値より大きくなったときに、前記補正を開始することを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記目標減速度と前記補正開始閾値との差分が大きいほど、前記操作反力に対する減速促進方向への補正量を大きくすることを特徴とする請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記判断手段が判断した減速タイミングで、車両を減速させる減速制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記補正手段は、自車速が高いほど、前記減速タイミングに対して前記補正を開始するタイミング差を大きくすることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記補正手段は、路面勾配に応じて、前記減速タイミングに対して前記補正を開始するタイミング差を変更することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記補正手段は、下り勾配が大きいほど、前記減速タイミングに対して前記補正を開始するタイミング差を大きくすることを特徴とする請求項7に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記補正手段は、上り勾配が大きいほど、前記減速タイミングに対して前記補正を開始するタイミング差を小さくすることを特徴とする請求項7又は8に記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記補正手段は、前記減速タイミングに対して前記補正を開始するタイミング差を、所定範囲に制限することを特徴とする請求項6〜9の何れか一項に記載の運転支援装置。
【請求項11】
前記運転操作子は、アクセル操作子を含み、
前記反力制御手段は、運転者のアクセル操作に応じて前記アクセル操作子に操作反力を付与し、
前記補正手段は、前記アクセル操作子に対する操作反力を増加補正することを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の運転支援装置。
【請求項12】
前記運転操作子は、ブレーキ操作子を含み、
前記反力制御手段は、運転者のブレーキ操作に応じて前記ブレーキ操作子に操作反力を付与し、
前記補正手段は、前記ブレーキ操作子に対する操作反力を減少補正することを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の運転支援装置。
【請求項13】
自車進路前方の道路形状に応じて自車両が減速を開始すべき減速タイミングを判断し、判断した減速タイミングよりも前の時点で、運転の加減速操作に対する操作反力を、減速促進方向に制御することを特徴とする運転支援方法。
【請求項14】
自車進路前方で最も自車両に近く最も曲率半径が小さくなる地点を制御対象地点として算出し、算出した制御対象地点における曲率半径に基づいて当該制御対象地点を通過するときの目標車速を算出し、算出した目標車速、前記制御対象地点までの距離、及び現在の車速に基づいて、自車両の目標減速度を算出し、当該目標減速度が所定の減速開始閾値よりも大きいときに、自車両が減速を開始すべき減速タイミングであると判断することを特徴とする請求項13に記載の運転支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−195087(P2010−195087A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39628(P2009−39628)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】