説明

運転支援装置、運転支援方法及び運転支援プログラム

【課題】緊急車両の接近に備え取るべき動作を通知し、緊急車両の通過に対処することのできる運転支援装置、運転支援方法及び運転支援プログラムを提供する。
【解決手段】運転支援装置1は、CPU2を備え、CPU2は、緊急車両が接近する方向を検出すると、その方向の他の車両を検出する。そして、接近方向にある他の車両を検出すると、その他の車両の動作を取得し、該動作が緊急車両に対する退避動作か判断する。そして、他の車両の動作が緊急車両に対する退避動作である場合には、CPU2は、他の車両の動作と同じ動作を行うように、スピーカ15を介して音声で案内するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援方法及び運転支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の運転を支援する運転支援方法として、消防車、救急車等の緊急車両の接近を検出し、該緊急車両の現在位置、予定走行経路、予定走行車線を含む緊急車両データを受信し、緊急車両の現在位置、予定走行経路、予定走行車線を地図上に重畳表示する運転支援装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−15498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記運転支援装置では、緊急車両の現在位置、予定走行経路、予定走行車線を地図上に重畳表示するだけであるため、ドライバーは、緊急車両が接近した場合にどのような動作を行うべきかがわからなかった。例えば、片側二車線の道路を走行中に後方から緊急車両が接近してきた場合、車線変更を行うべきなのか、車線変更を行わずに停止すべきなのか、或いは車線内でどちらの車線の端に寄るべきなのかが把握できなかった。
【0005】
本発明の目的は、緊急車両の接近に備え取るべき動作を通知し、緊急車両の通過に対処することのできる運転支援装置、運転支援方法及び運転支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、自車に対する緊急車両の接近方向を検出する接近方向検出手段と、前記緊急車両の接近方向を検出したとき、前記接近方向に存在する他車両の動作を検出する他車両動作検出手段と、検出された前記他車両の動作と同じ動作を行うように案内を行う走行案内手段とを備えた。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、緊急車両の接近してくる方向に存在する他車両を検出し、ドライバーに対して、その他車両と同じ動作を具体的に指示することができるので、ドライバーは周囲の状況に合った適切な動作を行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の運転支援装置において、前記接近方向検出手段は、前記緊急車両の走行予定経路情報と前記自車の自車走行経路情報とに基づいて、前記緊急車両の接近方向を検出する。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、緊急車両の走行予定経路と自車走行経路とを比較することにより、緊急車両が、自車に対して、前方から接近してくるか、後方から接近してくるかを正確に判断し、適切な緊急車両の接近方向に存在する他車両の動作を検出し、同じ動作を案内することで、ドライバーは周囲の状況にあった適切な動作を行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の運転支援装置において、前記他車両の動作が前記緊急車両に対する退避動作であるか否かを判断する他車両動作判断手段を有し、前記走行案内手段は、前記他車両動作判断手段にて他車両の動作が前記緊急車両に対する退避動作であると判断されたとき、該他車両の動作と同じ動作を行うように案内する。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、他車両判断手段にて他車両の動作が前記緊急車両に対する退避動作と判断されると、走行案内手段は、ドライバーに対して、他車両と同じ動作を具体的に指示する。従って、不要な動作の案内を行わず、必要な場合にのみ動作の案内を行うことができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の運転支援装置において、前記他車両動作検出手段は、前記他車両の走行軌跡に基づいて、該他車両の動作を検出し、前記他車両動作判断手段は、地図データに基づいて、前記他車両の走行軌跡と前記自車の走行している道路の道路形状とが合致しない場合に、前記他車両の動作が退避動作であると判断する。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、他車両動作判断手段が他車両の動作が通常では行われない動作であるとして、他車両の動作が退避動作であると判断した場合、走行案内手段は、ドライバーに対して、他車両と同じ動作を具体的に指示する。従って、不要な動作の案内を行わず、必要な場合にのみ動作の案内を行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1に記載の運転支援装置において、前記緊急車両の接近方向が前記自車の前方である場合に、前記自車が走行する道路が中央分離帯を備えた道路であるか否かを判断する道路判断出手段を備え、前記道路判断手段において、前記中央分離帯を備えた道路であると判断されたとき、前記走行案内手段は、前記案内を行わないようにする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、中央分離帯を備えた道路を走行している時に、前方から緊急車両が前方から接近する場合には、中央分離帯を越えた反対車線を緊急車両は走行し、自車の走行経路に何の影響を与えないので案内を行わない。従って、不要な動作の案内を行わず、必要な場合にのみ動作の案内を行うことができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、接近する緊急車両に対応して運転支援を行う制御手段よる運転支援方法であって、自車に対する前記緊急車両の接近方向を検出する接近方向検出段階と、前記緊急車両の接近方向を検出したとき、前記接近方向に存在する他車両の動作を検出する他車両動作検出段階と、検出された前記他車両の動作と同じ動作を行うように案内を行う走行案内段階とを備えた。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、緊急車両の接近してくる方向に存在する他車両を検出し、ドライバーに対して、その他車両と同じ動作を具体的に指示することができるので、ドライバーは周囲の状況に合った適な動作を行うことができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、接近する緊急車両に対応して運転支援を行う制御手段に用いる運転支援プログラムであって、前記制御手段を、自車に対する前記緊急車両の接近方向を検出する接近方向検出手段と、前記緊急車両の接近方向を検出したとき、前記接近方向に存在する他車両の動作を検出する他車両動作検出手段と、検出された前記他車両の動作と同じ動作を行うように案内を行う走行案内手段として機能させる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、緊急車両の接近してくる方向に存在する他車両を検出し、ドライバーに対して、その他車両と同じ動作を具体的に指示することができるので、ドライバーは周囲の状況に合った適な動作を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、緊急車両の接近に備え取るべき動作を通知し、緊急車両の通過に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の運転支援装置の電気的構成を説明するブロック回路図。
【図2】経路データのデータ構成を説明するための説明図。
【図3】地図データのデータ構成を説明するための説明図。
【図4】前方カメラ及び後方カメラの撮像範囲を説明するための説明図。
【図5】(a)前方から緊急車両が接近している状態を示す図、(b)前方からの緊急車両に対する前方車両の退避動作を示す図。
【図6】(a)後方から緊急車両が接近している状態を示す図、(b)後方からの緊急車両に対する後方車両の退避動作を示す図。
【図7】緊急車両の接近に基づく運転支援動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の運転支援装置を具体化した実施形態を図1〜図7に従って説明する。図1は、自動車(自車両)に搭載された運転支援装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【0023】
図1に示す運転支援装置1は、接近方向検出手段、走行案内手段、他車両検動作出手段、他車両動作判断手段、制御手段を構成する主制御を行うCPU2、そのCPU2の演算結果等を一時記憶するRAM3、経路案内プログラム、接近方向検出プログラム、走行案内プログラム、他車両動作検出プログラム、他車両動作判断プログラム等、各種の運転支援プログラムを記憶するROM4を備えている。
【0024】
また、運転支援装置1は、地理データ記憶部5を備えている。地理データ記憶部5は、経路データRD及び地図データMDが格納されている。経路データRDは、全国を各区域に区画したリージョン毎のデータであって、図2に示すように、ヘッダRDa、ノードデータRDb、リンクデータRDc、リンクコストデータRDd、座標データRDeを有している。
【0025】
ヘッダRDaは、各経路データRDを管理するためのデータを有している。ノードデータRDbは、交差点、道路の端点等を示す各ノードの識別データ、隣接するノードの識別データ等を有している。リンクデータRDcは、リンク列を構成し、接続ノードを示す各リンクレコード、通行規制を示すデータ等を有している。リンクコストデータRDdは、各リンクレコードに対して付与されたリンクID、リンク長、走行レーンの数(車線数)、平均旅行時間等から構成されたデータ群である。座標データRDeは、各ノードの絶対座標を示す。
【0026】
一方、地図データMDは、全国の地図を分割したエリア毎に格納され、広域の地図から狭域の地図まで各階層に分かれている。図3に示すように、各地図データMDは、ヘッダMDa、道路データMDb、背景データMDcを有している。
【0027】
ヘッダMDaは、その地図データMDの階層、エリア等を示し、管理目的のデータである。道路データMDbは、道路の形状・種類を示すデータであって、道路属性データMDd、リンク形状データMDe、接続データMDfを有している。
【0028】
道路属性データMDdは、道路名称、道路方向、道路幅、車線数、中央分離帯の有無を有している。接続データMDfは、各リンクと各ノードの接続状態を表すデータである。リンク形状データMDeは、座標データMDg、形状補間データMDhを有している。座標データMDgは、リンク及びノードの座標を示している。形状補間データMDhは、リンク途中に設定され、道路のカーブ形状補間点に関するデータであり、形状補間点の座標、リンクの方位等のデータである。また、背景データMDcは、道路、市街地、河川等を描画する描画データである。
【0029】
また、運転支援装置1は、自車位置検出手段を構成するGPS受信部6及び車両側センサ入力インターフェース(車両側センサ入力I/F部)7を備えている。
CPU2は、GPS受信部6と接続され、そのGPS受信部6から入力した位置検出信号に基づいて、絶対座標を算出する。さらに、CPU2は、車両側センサ入力I/F部7を介して、自車両C(図4参照)に設けた同じく自車位置検出手段を構成する車速センサ7a及びジャイロセンサ7bから、車速パルス及び方位検出信号を入力して、自律航法により基準位置からの相対座標を演算する。そして、CPU2は、GPS受信部6の位置検出信号に基づく絶対座標と合わせて現在位置、即ち自車位置を特定するとともに、地理データ記憶部5に記憶した経路データRD及び地図データMDに基づいて自車両Cが走行している走行レーンを特定する。尚、自車位置検出手段はGPS受信部6のみにて構成されてもよい。また、CPU2は、車速センサ7aからの車速パルス信号に基づいてその時々の自車両Cの車速を演算している。
【0030】
運転支援装置1は、画像プロセッサ8及び外部入出力インターフェース(外部入出力I/F部)9を備えている。CPU2は、画像プロセッサ8を介してタッチパネルであるディスプレイDSPに接続されている。CPU2は、そのディスプレイDSPに隣接した位置に設けられた操作スイッチSW1の操作により、外部入出力I/F部9を介して、目的地を示すデータを入力する。この目的地のデータを入力すると、CPU2は、地理データ記憶部5に記憶した経路データRDを用いて、目的地と自車位置とを結ぶ推奨経路を探索するようになっている。
【0031】
また、CPU2は、車両側センサ入力I/F部7を介して、イグニッションスイッチ7cからのオン信号を入力すると、画像プロセッサ8を制御して、自車位置周辺の地図データMDを地理データ記憶部5から読み出す。そして、CPU2は、画像プロセッサ8を介して、その地図データMDに基づく地図画面P(道路案内画面)をディスプレイDSPに出力する。このとき、画像プロセッサ8は、地図画面Pに、その地図内での道路(例えば、探索して選択した目的地までの道路R)上に自車位置を示す指標Poを重畳して表示するようになっている。
【0032】
運転支援装置1は、CPU2とともに他車両動作検出手段及び他車両動作判断手段を構成する画像データ入力部11を備えている。その画像データ入力部11は、同じく他車両動作検出手段及び他車両動作判断手段を構成する前方カメラCA1及び後方カメラCA2が接続されている。CPU2は、画像データ入力部11に接続され、同画像データ入力部11を介して、常時、前方カメラCA1及び後方カメラCA2を起動させている。前方カメラCA1及び後方カメラCA2は、広角レンズ、ミラー等から構成される光学機構とCCD撮像素子とを備えている。
【0033】
前方カメラCA1は、図4に示すように、自車両Cの前端に取り付けられて、自車両Cの前端から前方に向いた光軸を有し、前方に広がる前方撮像領域Z1を撮像する。つまり、前方カメラCA1は、図5に示すように、自車両Cの前方を走行している前方車両C1を撮像することができるようになっている。
【0034】
後方カメラCA2は、図4に示すように、自車両Cの後端に取り付けられて、自車両Cの後端から後方に向いた光軸を有し、後方に広がる後方撮像領域Z2を撮像する。つまり、後方カメラCA2は、図6に示すように、自車両Cの後方を走行している後方車両C2を撮像することができるようになっている。
【0035】
CPU2は、画像データ入力部11を制御して、前方カメラCA1が撮像した前方画像データG1及び後方カメラCA2が撮像した後方画像データG2を取得し、RAM3に一時記憶する。
【0036】
CPU2は、RAM3に一時記憶した前方画像データG1及び後方画像データG2に基づいて画像認識を行う。CPU2は、取得した前方画像データG1について、補正処理し、補正した前方画像データG1に基づいて、前方車両C1を画像認識するとともに、前方車両C1の車線変更、停止、車線の端への寄せ等の動作を検出する。同様に、後方画像データG2に基づいて、後方車両C2の動作を検出する。
【0037】
具体的には、画像プロセッサ8は、前方画像データG1又は後方画像データG2に基づいて、撮像したタイミングの異なる複数のフレームを比較し、特定輝度の画素の位置や画素数の変化等及び自車両Cの車速等によって、前方車両C1又は後方車両C2の走行軌跡及び車速を取得する。そして、取得された他車両の走行軌跡及び車速に基づいて、車線変更、停止、車線の端への寄せ等の前方車両C1又は後方車両C2の動作を検出する。
【0038】
そして、CPU2は、検出した前方車両C1又は後方車両C2の車線変更、停止、車線の端への寄せ等の動作が、通常では行われない動作、即ち、前方車両C1又は後方車両C2の緊急車両C3に対する退避動作どうかを判断するようになっている。具体的には、例えば、前方車両C1及び後方車両C2の動作が、車線変更や車線の端への寄せを行った後に停止した場合に、前方車両C1及び後方車両C2の動作が緊急車両C3に対する退避動作であると判断する。
【0039】
また、その際に、道路データMDb(道路属性データMDd)に基づいて、前方車両C1又は後方車両C2の緊急車両C3に対する退避動作かどうか判断してもよい。
例えば、図5(a)に示すように、前方から救急車、消防車等の緊急車両C3が接近してくる場合であって前方の第二の所定距離(例えば、20m)以内の前方車両C1が存在する場合、CPU2は、道路データMDb(道路属性データMDd)に基づいて自車両Cが走行している道路の道路形状が直線道路であって、前方車両C1の走行軌跡が図5(a)に矢印で示すような直線ではない、つまり、道路形状に合致しない走行軌跡を取った後に停止した時、前方車両C1の動作は退避動作であると判断する。
【0040】
なお、前方から緊急車両C3が接近してくる場合に、前方の第二の所定距離以内の前方車両C1が存在する場合であって自車両Cが走行している道路が左にカーブをしている時には、CPU2は、前方車両C1の走行軌跡が左カーブに沿った走行軌跡を取った後に停止した時には、前方車両C1の動作は退避動作ではないと判断する。
【0041】
また、運転支援装置1は、CPU2とともに接近方向検出手段を構成する車車間通信装置12を備えている。車車間通信装置12は、図示しないアンテナを介して、緊急車両C3が送信する緊急車両情報を受信する。緊急車両C3が送信する緊急車両情報は、緊急車両がその時々で生成する車両情報であって、その時々の緊急車両C3の現在位置を示す現在位置情報、緊急車両C3が目的地まで走行する経路を示す予定経路情報を有している。
【0042】
CPU2は、車車間通信装置12に接続され、車車間通信装置12を介して、緊急車両C3からの緊急車両情報が受信できるように、常時、車車間通信装置12を起動させている。そして、CPU2は、車車間通信装置12を介して緊急車両C3からの緊急車両情報を受信すると、緊急車両C3の現在位置情報と、自車両Cの自車位置とに基づいて、緊急車両C3が自車両Cの自車位置を中心とした第一の所定距離(例えば、300m)以内にあるかどうか演算する。
【0043】
CPU2は、緊急車両C3が自車両Cから第一の所定距離以内にあると演算すると、緊急車両C3の現在位置情報及び予定経路情報と、自車両Cの自車位置及び走行経路とに基づいて、自車両Cに対する緊急車両C3の接近方向を検出する。即ち、緊急車両C3の接近方向が自車両Cの前方から接近する「前方」であるのか、又は、自車両Cの後方から接近する「後方」であるかを検出する。具体的には、緊急車両C3の予定経路情報の示す予定経路に含まれる道路に自車位置が存在するかどうかを判断し、予定経路に含まれる道路に自車位置が存在する場合に、予定経路が示す緊急車両C3の進行方向と、自車両Cの走行経路が示す進行方向が一致する場合には、緊急車両C3の接近方向を「後方」と検出し、また、一致しない場合には、緊急車両C3の接近方向を「前方」と検出する。尚、自車両Cの走行経路を替えて、ジャイロセンサ7b等のセンサから求めた自車両Cの進行方向を用いてもよい。
【0044】
そして、CPU2は、緊急車両C3の接近方向が前方であるとき、前方カメラCA1の前方画像データG1に基づいて、自車両Cの前方の第二の所定距離に前方車両C1が存在するかどうかの検出を行う。また、緊急車両C3の接近方向が後方であるとき、後方カメラCA2の後方画像データG2に基づいて、自車両Cの後方の第二の所定距離に後方車両C2が存在するかどうかの検出を行う。
【0045】
そして、CPU2は、緊急車両C3の接近方向が前方であって自車両Cの前方の第二の所定距離以内に前方車両C1が存在すると判断したとき、前方カメラCA1の前方画像データG1に基づいて、前方車両C1の車線変更、停止、車線の端への寄せ等の動作を検出する。また、緊急車両C3の接近方向が後方であって自車両Cの後方の第二の所定距離以内に後方車両C2がいると判断したとき、後方カメラCA2の後方画像データG2に基づいて、後方車両C2の車線変更、停止、車線の端への寄せ等の動作を検出する。
【0046】
運転支援装置1は、CPU2とともに走行案内手段を構成する音声プロセッサ14を備えている。CPU2は、音声プロセッサ14と接続され、その音声プロセッサ14には同じく走行案内手段を構成するスピーカ15が接続されている。音声プロセッサ14は、CPU2の制御により、スピーカ15を駆動して、その時々の経路案内や、緊急車両C3の接近に基づく走行指示等、各種の運転支援のための音声案内をするようになっている。この各種音声案内のための音声データは、予め音声プロセッサ14の記憶部に記憶されている。
【0047】
例えば、図5(a)に示すように、緊急車両C3の接近方向が前方であるときに、図5(b)に示すように、前方車両C1が、車線を変更して停止するという退避動作を行っているとCPU2が判断したとき、同CPU2は、音声プロセッサ14を制御して、「前方車両が、左側に車線変更して停止しています。前方車両と同じように、左側に車線変更して停止してください。」、また、図6(a)に示すように、緊急車両C3の接近方向が後方であるときに、図6(b)に示すように、後方車両C2が、車線を変更して停止するという退避動作を行っているとCPU2が判断したとき、同CPU2は、音声プロセッサ14を制御して、「後方車両が、左側に車線変更して停止しています。後方車両と同じように、左側に車線変更し、停止してください。」等の案内をスピーカ15からアナウンスさせるようになっている。
【0048】
次に、上記のように構成した運転支援装置1の緊急車両C3の接近に基づく運転支援処理動作を図7に示すCPU2の処理動作を示すフローチャートに従って説明する。
今、自車両Cが目的地を設定して探索した走行経路に従って走行しているとき、CPU2は、その時々で自車位置を演算し、画像プロセッサ8を介して、ディスプレイDSPに表示する地図画面Pに、探索して選択した走行道路Rを表示するとともに、自車位置を示す指標Poを表示する。
【0049】
そして、この状態において、CPU2は、車車間通信装置12を介して緊急車両C3からの緊急車両情報を受信すると、上述のようにその緊急車両情報中の緊急車両C3の現在位置情報と、自車両Cの自車位置とで、緊急車両C3が自車両Cを中心とした第一の所定距離以内にあるかどうか演算する(ステップS1)。緊急車両C3が第一の所定距離以内にいない場合(ステップS1でNO)、CPU2は、次の新たな緊急車両C3からの緊急車両情報を待つ。
【0050】
一方、CPU2は、緊急車両C3が第一の所定距離以内にある場合(ステップS1でYES)、上述のように緊急車両C3の接近方向が後方であるか検出する(ステップS2)。そして、CPU2は、緊急車両C3の接近方向が後方であると検出すると(ステップS2でYES)、上述のように自車両Cの後方の第二の所定距離以内に後方車両C2が存在するかどうか判断する(ステップS3)。CPU2は、上述のように自車両Cの後方の第二の所定距離以内に後方車両C2がいると判断すると(ステップS3でYES)、上述のようにその後方車両C2の動作を検出する(ステップS4)。
【0051】
次に、CPU2は、上述のように後方車両C2の動作が緊急車両C3に対する退避動作かどうか判断する(ステップS5)。そして、CPU2は、後方車両C2の動作が退避動作であると判断すると(ステップS5でYES)、上述のようにスピーカ15を介して、後方車両C2と同じ退避動作を行うように案内する(ステップS6)。
【0052】
このとき、後方車両C2が、左側に車線変更して停止しているときには、CPU2は、音声プロセッサ14を制御して、「後方車両が、左側に車線変更して停止しています。後方車両と同じように、左側に車線変更して停止してください。」という音声案内をスピーカ15からアナウンスする。
【0053】
従って、ドライバーに対して、後方車両C2と同じ動作を具体的に指示することができることから、ドライバーは周囲の状況に合った適な動作を行うことができ、緊急車両C3の通過に対処することができる。
【0054】
また、前記ステップS2において、緊急車両C3の接近方向が後方でないと判断すると(ステップS2でNO)、CPU2は、上述のように緊急車両C3の接近方向が前方かどうか判断する(ステップS7)。
【0055】
そして、CPU2は、緊急車両C3の接近方向が前方であると判断すると(ステップS7でYES)、上述のように自車両Cの前方の第二の所定距離以内に前方車両C1が存在するかどうか判断する(ステップS8)。
【0056】
CPU2は、自車両Cの前方の第二の所定距離以内に前方車両C1が存在すると判断すると(ステップS8でYES)、上述のようにその前方車両C1の動作を検出する(ステップS9)。
【0057】
その後、CPU2は、上述のように前方車両C1の動作が緊急車両C3に対する退避動作かどうか判断する(ステップS5)。そして、CPU2は、前方車両C1の動作が緊急車両C3に対する退避動作であると判断すると(ステップS5でYES)、スピーカ15を介して、前方車両C1と同じ退避動作を行うように案内する(ステップS6)。
【0058】
このとき、前方車両C1が、左側に車線変更して停止しているときには、CPU2は、音声プロセッサ14を制御して、「前方車両が、左側に車線変更して停止しています。前方車両と同じように、左側に車線変更して停止してください。」という音声案内をスピーカ15からアナウンスする。
【0059】
従って、ドライバーに対して、前方車両C1と同じ動作を具体的に指示することができることから、ドライバーは周囲の状況に合った適な動作を行うことができ、緊急車両C3の通過に対処することができる。
【0060】
なお、前記ステップS3又は前記ステップ8において、第二の所定距離以内に後方車両C2又は前方車両C1がいないと判断すると(ステップS3又はステップS8でNO)、また、前記ステップS7において、前方から接近していないと判断すると(ステップS7でNO)、CPU2は、スピーカ15を介して、緊急車両C3が近づいている旨を報知する(ステップS10)。
【0061】
このとき、例えば、後方から緊急車両C3が接近しているときには、CPU2は、音声プロセッサ14を制御して、「後方から緊急車両が接近しています。注意して下さい。」という音声案内をスピーカ15からアナウンスする。
【0062】
また、前方から緊急車両C3が接近しているときには、CPU2は、音声プロセッサ14を制御して、「前方から緊急車両が接近しています。注意して下さい。」という音声案内をスピーカ15からアナウンスする。
【0063】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態によれば、CPU2は、走行時に、緊急車両C3が後方から接近していることを検出したとき、後方車両C2の有無を検出するようにした。そして、CPU2は、後方車両C2が存在する場合には、その後方車両C2の動作を取得し、該動作が緊急車両C3に対する退避動作かどうかを判断する。後方車両C2の動作が緊急車両C3に対する退避動作である場合には、CPU2は、後方車両C2の動作と同じ動作を行うように、音声で案内するようにした。
【0064】
従って、ドライバーに対して、後方車両C2と同じ動作を具体的に指示することができドライバーは周囲の状況に合った適な動作を行うことができる。
(2)上記実施形態によれば、CPU2は、走行時に、緊急車両C3が前方から接近していることを検出したとき、前方車両C1の有無を検出するようにした。そして、CPU2は、前方車両C1が存在する場合には、その前方車両C1の動作を取得し、該動作が緊急車両C3に対する退避動作かどうかを判断する。前方車両C1の動作が緊急車両C3に対する退避動作である場合には、CPU2は、前方車両C1の動作と同じ動作を行うように、音声で案内するようにした。
【0065】
従って、ドライバーに対して、前方車両C1と同じ動作を具体的に指示することができドライバーは周囲の状況に合った適な動作を行うことができる。
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0066】
・上記実施形態では、ステップS2において、緊急車両C3が後方から接近していない、即ち緊急車両C3の接近方向が前方であると判断すると(ステップS7でYES)、CPU2は、前方の第二の所定距離以内に前方車両C1がいるかどうかを判断した(ステップS8)。これを、前方車両C1を判断する前に、道路判断手段としてのCPU2にて、自車両Cの走行する道路が中央分離帯を備える道路であるか否かを判断してもよい。
【0067】
つまり、CPU2は、現在位置と地理データ記憶部5に記憶した地図データMDの道路データMDb(道路属性データMDd)に基づいて、走行している道路の中央分離帯の有無を判断する。そして、CPU2において、自車両Cの現在位置が中央分離帯のない道路である時には、ステップS8に移行させる。
【0068】
反対に、自車両Cの現在位置が中央分離帯を備えた道路である時は、CPU2は、緊急車両C3の接近に基づく処理動作を終了し、次の新たな緊急車両C3からの緊急車両情報を待つようにして実施してもよい。
【0069】
これによって、中央分離帯を備えた道路を走行している時に、緊急車両C3の接近方向が前方である場合には、中央分離帯を越えた反対車線を緊急車両C3は走行し、自車両Cの走行経路に何の影響を与えないので、CPU2の負荷を軽減でき、ドライバーに無用な緊張感を与えなくて済む。
【0070】
・上記実施形態では、緊急車両C3が後方から接近した場合、後方車両C2の有無を判断したが、合わせて前方車両C1の有無を検出し、前方車両C1の退避動作も検出してもよい。同様に、緊急車両C3が前方から接近した場合、前方車両C1の有無を判断したが、合わせて後方車両C2の有無を検出し、後方車両C2の退避動作も検出してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、第二の所定距離として20mとしていたが、20mに限定されることなく適宜変更して実施してもよい。例えば、自車両Cの車速に応じて変更してもよい。つまり、車速が遅くなればなるほど、前方車両C1及び後方車両C2の車間距離を短くするように第二の所定距離を適宜変更して実施してもよい。このようにすることによって、車の流れに応じた最適な案内が実現できる。
【0072】
・上記実施形態では、前方カメラCA1及び後方カメラCA2で取得した前方画像データG1及び後方画像データG2に基づいて、前方車両C1及び後方車両C2の退避動作を判断したが、ミリ波レーダ装置を用いて判断するようにして実施してもよい。
【0073】
・上記実施形態では、緊急車両C3は、1台を想定して説明したが、緊急車両C3が複数台であってもよい。この場合、各緊急車両C3に対して、上記処理動作を実行する。
・上記実施形態では、緊急車両C3が消防車、救急車といった名称をあわせてアナウンスするようにして実施してもよい。
【0074】
・上記実施形態では、第一の所定距離として300mとしたが、これを、例えば、100m以内、150m以内、200m以内、又は、350m以内といったように、適宜変更して実施してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…運転支援装置、2…CPU、3…RAM、4…ROM、5…地理データ記憶部、6…GPS受信部、7…車両側センサ入力インターフェース(車両側センサI/F部)、7a…車速センサ、7b…ジャイロセンサ、7c…イグニッションスイッチ、8…画像プロセッサ、9…外部入出力インターフェース(外部入力I/F部)、11…画像データ入力部、12…車車間通信装置、14…音声プロセッサ、15…スピーカ、C…自車両、C1…前方車両、C2…後方車両、C3…緊急車両、CA1…前方カメラ、CA2…後方カメラ、DSP…ディスプレイ、MD…地図データ、MDd…道路属性データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車に対する緊急車両の接近方向を検出する接近方向検出手段と、
前記緊急車両の接近方向を検出したとき、前記接近方向に存在する他車両の動作を検出する他車両動作検出手段と、
検出された前記他車両の動作と同じ動作を行うように案内を行う走行案内手段と
を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記接近方向検出手段は、前記緊急車両の走行予定経路情報と前記自車の自車走行経路情報とに基づいて、前記緊急車両の接近方向を検出することを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運転支援装置において、
前記他車両の動作が前記緊急車両に対する退避動作であるか否かを判断する他車両動作判断手段を有し、
前記走行案内手段は、前記他車両動作判断手段にて他車両の動作が前記緊急車両に対する退避動作であると判断されたとき、該他車両の動作と同じ動作を行うように案内することを特徴とする運転支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の運転支援装置において、
前記他車両動作検出手段は、前記他車両の走行軌跡に基づいて、該他車両の動作を検出し、
前記他車両動作判断手段は、地図データに基づいて、前記他車両の走行軌跡と前記自車の走行している道路の道路形状とが合致しない場合に、前記他車両の動作が退避動作であると判断することを特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の運転支援装置において、
前記緊急車両の接近方向が前記自車の前方である場合に、前記自車が走行する道路が中央分離帯を備えた道路であるか否かを判断する道路判断手段を備え、
前記道路判断手段において、前記中央分離帯を備えた道路であると判断されたとき、前記走行案内手段は、前記案内を行わないようにすることを特徴とする運転支援装置。
【請求項6】
接近する緊急車両に対応して運転支援を行う制御手段よる運転支援方法であって、
自車に対する前記緊急車両の接近方向を検出する接近方向検出段階と、
前記緊急車両の接近方向を検出したとき、前記接近方向に存在する他車両の動作を検出する他車両動作検出段階と、
検出された前記他車両の動作と同じ動作を行うように案内を行う走行案内段階と
を備えたことを特徴とする運転支援方法。
【請求項7】
接近する緊急車両に対応して運転支援を行う制御手段に用いる運転支援プログラムであって、
前記制御手段を、
自車に対する前記緊急車両の接近方向を検出する接近方向検出手段と、
前記緊急車両の接近方向を検出したとき、前記接近方向に存在する他車両の動作を検出する他車両動作検出手段と、
検出された前記他車両の動作と同じ動作を行うように案内を行う走行案内手段として機能させることを特徴とする運転支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−237792(P2010−237792A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82611(P2009−82611)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】