説明

運転支援装置及びプログラム

【課題】ユーザの納得性を向上させつつ、簡易な構成で運転支援を行う。
【解決手段】情報取得部22が、GPS装置12から自車両の位置を示す情報を取得すると共に、自車両位置周辺の規制速度、道路構造及び道路幅を含む道路情報を電子地図データシステム14から取得し、ハザード選定部24が、規制速度及び道路構造に対応するハザード候補を選定する。通過可能領域幅算出部26が、選定されたハザード候補に応じたマージンを得て、道路幅からマージンを差し引いて自車両が通過可能な領域幅を算出する。目標通過速度算出部28は、通過可能な領域幅に応じて、目標通過速度を算出し、支援判定部30が、通過可能な領域幅または目標通過速度と現在の車速とから求まる減速度に応じて、運転支援の可否または支援レベルを判定し、支援制御部32が、支援判定部30の判定結果に応じた運転支援が実行されるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置及びプログラムに係り、特に、障害物を考慮した運転支援を行う運転支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車走行状態と移動障害物との関係から、緊急回避すべき状態かどうかを判定し、周囲道路構造も含めた状態評価関数(例えば、リスクのポテンシャル)に対する最適制御軌道を算出して、車両制御を行う車両用支援制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、一次主体と1つ又はそれ以上の非一次主体との間の衝突の警報を容易にするシステムであって、一次主体の状態に基づいて、トリガ条件が満たされるかどうかを判断するように構成されたトリガ機構と、予備的評価機構とを含み、トリガ条件が満たされる場合に、予備的評価機構は、トリガ条件に関連する1つ又はそれ以上の衝突シナリオを生成し、衝突シナリオにおける衝突の予備確率を評価し、衝突シナリオにおける衝突の予備確率に基づいて、衝突シナリオにおける衝突の改善した確率を評価するように特化評価機構を作動させるように構成されることを特徴とするシステムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、センタが、車両の走行上の危険事態が発生した複数の危険発生地点のそれぞれについて、危険事態の種別を示す危険種別情報をヒヤリハットマップDBから取得し、危険発生地点上の道路走行に影響を及ぼす道路属性情報を地図DBから取得し、センタが、取得したこれらの複数の道路属性情報について、危険種別情報等の組みが同じもの毎に頻度分布統計を取り、その統計に基づいて、危険種別情報等の組み毎に道路環境の代表的特徴と特定し、地図DBを検索して、特定した複数の代表的特徴のいずれかに合致する地点を潜在危険地点として抽出する潜在危険地点検出装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−253770号公報
【特許文献2】特開2008−310803号公報
【特許文献3】特開2009−104531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1及び2に記載の技術のように、他者の将来位置の予測を精緻に行うためには、移動物の位置だけでなく、速度、加速度、対象の属性等の情報が必要であり、非常に高度なセンシング機器が必要となる、という問題がある。また、そのような高度なセンシング機器により詳細な情報を取得したとしても、人間はその情報を全て使用した上で他者に対する危険度合いを判断しているわけではなく、ユーザの納得性を向上させることができない、という問題がある。
【0007】
また、特許文献3に記載の技術のように、地図情報及びヒヤリハット地点の属性情報による危険度地点算出方法では、動的な状況を考慮することが難しいため、危険地点であると情報を提示されても、眼前に広がる状況だけでは理解が難しい等のユーザへの納得性を向上させることができない、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、ユーザの納得性を向上させつつ、簡易な構成で運転支援を行うことができる運転支援装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の運転支援装置は、自車両が走行する道路の規制速度を示す情報、及び前記道路の道路幅を含む道路構造を示す情報を取得する取得手段と、前記取得手段により取得した規制速度を示す情報及び道路構造を示す情報、並びに規制速度毎に予め定めた道路構造と該道路構造に対応して存在する可能性がある障害物候補との関係を示す情報に基づいて、前記自車両の前方に存在する可能性のある障害物候補を選定する選定手段と、前記選定手段により選定された障害物候補、前記取得手段により取得した規制速度を示す情報、及び道路幅を示す情報に基づいて、前記選定手段により選定した障害物候補付近を通過する際に必要な規制速度に応じた通過可能な領域幅を算出する幅算出手段と、前記幅算出手段により算出された通過可能な領域幅に応じた警告及び運転制御の少なくとも一方の運転支援を行う支援手段と、を含んで構成されている。
【0010】
本発明の運転支援装置によれば、取得手段が、自車両が走行する道路の規制速度を示す情報、及び道路の道路幅を含む道路構造を示す情報を取得し、選定手段が、取得手段により取得した規制速度を示す情報及び道路構造を示す情報、並びに規制速度毎に予め定めた道路構造と道路構造に対応して存在する可能性がある障害物候補との関係を示す情報に基づいて、自車両の前方に存在する可能性のある障害物候補を選定する。規制速度は、道路構造や交通状況に応じて定められているため、規制速度及び道路構造に応じてどのような障害物候補が存在する可能性があるかを予め定めておくことができる。
【0011】
そして、幅算出手段が、選定手段により選定された障害物候補、取得手段により取得した規制速度を示す情報、及び道路幅を示す情報に基づいて、選定手段により選定した障害物候補付近を通過する際に必要な規制速度に応じた通過可能な領域幅を算出し、支援手段が、幅算出手段により算出された通過可能な領域幅に応じた警告及び運転制御の少なくとも一方の運転支援を行う。
【0012】
このように、規制速度が設定されている背景を考慮した上で、規制速度の情報及び道路構造に基づいて障害物候補を選定して、通過可能な領域幅を算出し、この通過可能な領域幅に応じた運転支援を行うため、高度なセンシング技術を必要とすることなく、ユーザの納得性を向上させつつ、簡易な構成で運転支援を行うことができる。
【0013】
また、前記幅算出手段は、規制速度と障害物候補との関係から予め定めた該障害物候補を回避するために必要な幅を用いて、前記通過可能な領域幅を算出することができる。このように、予め障害物候補を回避するために必要な幅を定めておくことで、より簡易な処理で通過可能な領域幅を算出することができる。
【0014】
また、本発明の運転支援装置は、通過可能な領域幅と規制速度との関係に基づいて予め定めた前記障害物候補を回避して通過するための目標通過速度、前記幅算出手段により算出した通過可能な領域幅、及び前記取得手段により取得した規制速度基づいて、前記目標通過速度を算出する速度算出手段を含んで構成することができ、前記支援手段は、前記速度算出手段により算出した目標通過速度及び現在の自車両の速度から前記目標通過速度を達成するための減速度を求め、該減速度に応じた運転支援を行うようにすることができる。これにより、回避行動の可否に応じた運転支援を行うことができる。
【0015】
また、本発明の運転支援装置は、前記自車両周辺に存在する障害物を検出する検出手段を含んで構成することができ、前記幅算出手段は、前記道路幅から前記検出手段により検出した障害物の幅を差し引いて前記通過可能な領域幅を算出することができる。これにより、より安全な運転支援を行うことができる。
【0016】
また、本発明の運転支援プログラムは、コンピュータを、自車両が走行する道路の規制速度を示す情報、及び前記道路の道路幅を含む道路構造を示す情報を取得する取得手段、前記取得手段により取得した規制速度を示す情報及び道路構造を示す情報、並びに規制速度毎に予め定めた道路構造と該道路構造に対応して存在する可能性がある障害物候補との関係を示す情報に基づいて、前記自車両の前方に存在する可能性のある障害物候補を選定する選定手段、前記選定手段により選定された障害物候補、前記取得手段により取得した規制速度を示す情報、及び道路幅を示す情報に基づいて、前記選定手段により選定した障害物候補付近を通過する際に必要な規制速度に応じた通過可能な領域幅を算出する幅算出手段、及び前記幅算出手段により算出された通過可能な領域幅に応じた警報及び運転制御の少なくとも一方の運転支援を行う支援手段として機能させるためのプログラムである。
【0017】
なお、本発明のプログラムを記憶する記憶媒体は、特に限定されず、ハードディスクであってもよいし、ROMであってもよい。また、CD−ROMやDVDディスク、光磁気ディスクやICカードであってもよい。更にまた、該プログラムを、ネットワークに接続されたサーバ等からダウンロードするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の運転支援装置及びプログラムによれば、規制速度が設定されている背景を考慮した上で、規制速度の情報及び道路構造に基づいて障害物候補を選定して、通過可能な領域幅を算出し、この通過可能な領域幅に応じた運転支援を行うため、高度なセンシング技術を必要とすることなく、ユーザの納得性を向上させつつ、簡易な構成で運転支援を行うことができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態に係る運転支援装置を示すブロック図である。
【図2】走行路を所定区分毎に処理することを説明するための図である。
【図3】規制速度毎に道路構造とハザード候補との関係を定めたテーブルの一例を示す図である。
【図4】規制速度とハザード候補の種類との関係に応じたマージンを定めたテーブルの一例を示す図である。
【図5】通過可能な領域幅を説明するためのイメージ図である。
【図6】通過可能な領域幅と目標通過速度との関係を示す図である。
【図7】所定区間毎に算出された目標通過速度の一例を示す図である。
【図8】減速度の算出を説明するための図である。
【図9】支援レベルに応じた警告の一例を示す図である。
【図10】第1の実施の形態に係る運転支援装置における運転支援処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施の形態に係る運転支援装置を示すブロック図である。
【図12】規制速度毎に道路構造とハザード候補との関係を定めたテーブルの他の例を示す図である。
【図13】規制速度とハザード候補の種類との関係に応じたマージンを定めたテーブルの他の例を示す図である。
【図14】検出障害物が存在する場合の通過可能な領域幅を説明するためのイメージ図である。
【図15】第2の実施の形態に係る運転支援装置における運転支援処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、車両に搭載された運転支援装置に、本発明を適用した場合を例に説明する。
【0021】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る運転支援装置10は、自車両の位置を検出するGPS装置12と、規制速度を示す情報及び道路構造を示す情報を含む道路情報が記憶された電子地図データシステム14と、自車両の速度を検出する車速センサ16と、GPS装置12及び電子地図データシステム14からの情報を取得して、運転支援制御を実行するコンピュータ20と、を備えている。
【0022】
電子地図データシステム14に記憶された道路情報には、車線、横断歩道、交差点、建築物、及びこれらにより制約される道路幅の情報が含まれる。また、周辺環境が市街地か郊外かを示す情報を含んでいてもよい。
【0023】
コンピュータ20は、CPU、後述する運転支援処理ルーチンを実行するためのプログラムを記憶したROM、データ等を記憶するRAM、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。また、記憶手段としてのHDDを含んで構成してもよい。このコンピュータ20をハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、図1に示すように、GPS装置12から自車両の位置を示す情報を取得すると共に、自車両位置周辺の道路情報を電子地図データシステム14から取得する情報取得部22と、情報取得部22により取得した情報に基づいて、自車両の前方に存在する可能性があるハザード(注意すべき対象、障害物)候補を選定するハザード選定部24と、ハザード選定部24により選定されたハザード候補に応じたマージン、及び情報取得部22により取得した情報に基づいて、自車両が通過可能な領域幅を算出する通過可能領域幅算出部26と、通過可能領域幅算出部26により算出された通過可能な領域幅に応じて、目標通過速度を算出する目標通過速度算出部28と、通過可能な領域幅に応じて、または目標通過速度算出部28により算出された目標通過速度と現在の車速とから求まる減速度に応じて、運転支援の可否、及び必要がある場合の支援レベルを判定する支援判定部30と、支援判定部30の判定結果に応じた運転支援が実行されるように制御する支援制御部32と、を含んだ構成で表すことができる。
【0024】
情報取得部22では、GPS装置12から自車両の位置を取得し、自車両周辺の所定領域の道路情報を電子地図データシステム14から取得し、自車両の走行路に沿って所定区間毎に道路構造を認識する。所定区間は、例えば、図2に示すように、自車両の位置を基準として、10m間隔に区画することができる。
【0025】
ハザード選定部24は、規制速度毎に予め定めた道路構造とその道路構造に対応して存在する可能性があるハザード候補との関係に基づいて、自車両の前方に存在する可能性のあるハザード候補を所定区間毎に選定する。規制速度は、交通状況や道路構造を加味して決定されており、例えば、規制速度が30km/hの場合では、交通弱者である歩行者や自転車の交通が想定されており、ドライバにとっても、規制速度30km/hの道路では、歩行者や自転車が存在する可能性が高いことや、交差点などでは死角からの飛び出し等を意識している。一方、規制速度60km/hの場合では、ガードレールが設けられていたり、道路幅が広くなっていたりと、そもそも死角からの飛び出しが生じにくい道路構造となっている場合が多く、ドライバにとっても、規制速度30km/hの場合とは異なる意識を持つものと考えられる。そこで、規制速度毎に道路構造に応じたハザード候補を選定することで、ドライバにとって納得性の高い支援が可能となる。
【0026】
例えば、図3に示すように、テーブル(1)に規制速度30km/hの場合、テーブル(2)に規制速度40km/hの場合、テーブル(3)に規制速度50km/hの場合、・・・のように、規制速度毎に道路構造とハザード候補との関係を定めたテーブルを予め記憶しておく。そして、このテーブルを参照して、情報取得部22により取得された規制速度を示す情報に従って該当するテーブルを選択し、情報取得部22により取得された道路構造を示す情報に従ってハザード候補を選定する。例えば、ある所定区間について、規制速度が30km/hで、道路構造として郊外で交差点なし、という情報が取得された場合には、その所定区間のハザード候補は「道路工作物」となる。道路工作物とは、例えば電柱等である。なお、1つの所定区間に複数のハザード候補を選定してもよい。
【0027】
通過可能領域幅算出部26は、ハザード選定部24により選定されたハザード候補、情報取得部22により取得された規制速度を示す情報、及び道路幅を示す情報に基づいて、所定区間毎に通過可能な領域幅を算出する。例えば、図4に示すように、規制速度とハザード候補の種類との関係に応じて、ハザード候補を回避してハザード候補脇を通過するために必要なマージン(許容横方向間隔)を定めたテーブルを予め記憶しておく。そして、このテーブルを参照して、ハザード選定部24により所定区間毎に選定されたハザード候補について、情報取得部22により取得された規制速度に対応して定められたマージンを得て、道路幅からマージンを差し引いて通過可能な領域幅を算出する。
【0028】
例えば、図5に示すように、規制速度が30km/hの走行路における自車両からの距離が30〜40mの区間B30−40では、道路構造として、郊外、交差点あり、中央線なし、という情報が取得されるため、図3のテーブル(1)を参照して、「道路工作物」及び「交差点、横断歩道左右からの侵入他者(以下、「侵入他者」という)」がハザード候補として選定される。そして、図5のテーブルを参照して、「道路工作物」のマージンαとして「1.0m」、及び「侵入他者」のマージンβとして「1.5m」が得られる。そして、情報取得部22で取得した道路幅を示す情報を用いて、道路幅Lからマージンの総和(α+β)を差し引いて、区間B30−40の通過可能な領域幅Y30−40を算出する。なお、通過可能な領域幅を算出する際の道路幅Lは、車道内幅の最大値を用いるとよい。また、歩道が存在する場合には、歩道分を差し引いた道路幅を用いる。また、例えば、ハザード候補αとハザード候補βとが道路の同じ側に存在することが想定される場合には、マージンは重複分を除いて、値の大きい方のマージンのみを用いるとよい。
【0029】
目標通過速度算出部28は、通過可能な領域幅と規制速度との関係に基づいて予め定めたハザード候補を回避して通過するための目標通過速度、通過可能領域幅算出部26により算出された通過可能な領域幅、及び情報取得部22により取得された規制速度に基づいて、所定区間毎に目標通過速度を算出する。通過可能な領域幅が広いほど速い速度で通過することができ、狭いほど速度を落とす必要がある。そこで、例えば、図6に示すように、通過可能な領域幅の広さに比例して大きくなる通過目標速度を定めたテーブルまたは関係式を記憶しておく。また、目標通過速度が規制速度に達した場合は、通過可能な領域幅の広さに関わらず規制速度で一定とする。区間Bx1−x2毎に算出された目標通過速度の一例を図7に示す。
【0030】
なお、各種テーブルや関係式は、コンピュータ20の所定の記憶領域に記憶しておいてもよいし、外部装置に記憶しておき、ネットワークを介して取得するようにしてもよい。
【0031】
支援判定部30は、通過可能な領域幅Yx1−x2が自車幅δより広いか否かにより、運転支援の可否を判定する。また、通常の回避行動で行う前後加速度の範囲内で、ハザード候補通過時の速度が目標通過速度を達成可能か否かを判定することにより、運転支援の可否及び支援レベルを判定する。具体的には、車速センサ16から自車両の現在の車速を取得し、目標通過速度算出部28により算出された区間毎の目標通過速度の変化が生じる変化点に到達すために要する減速度を算出する。例えば、図7の例では、進行方向距離30mの地点及び50mの地点が目標通過速度の変化点となる。そして、変化点に到達する到達予想時間を進行方向距離X/現在の車速vnowとして、図8に示すように、変化点までの減速度(一点鎖線の傾き)を算出する。支援判定部30は、減速度が所定範囲内(例えば、0〜−1.0)であれば、支援の必要なしと判定する。減速度が所定範囲を超えた場合には、その度合いに応じて支援レベルを決定する。例えば、下記のように支援レベルを決定することができる。
【0032】
−1.0≧減速度>−2.0 なら レベル1
−2.0≧減速度>−3.0 なら レベル1
−3.0≧減速度 なら レベル3
支援制御部32では、支援判定部30で判定された支援レベルに応じて、ドライバに警告を発するように制御する。例えば、インストルメントパネル内に設けた画像表示領域の色調を変化させたり、スピーカから警告音を鳴らしたり、アクセルペダルに反力を生じさせたりすることにより、警告を発する。この場合の支援レベルに応じた警告の種類の一例を図9に示す。
【0033】
次に、図10を参照して、第1の実施の形態の運転支援装置10において実行される運転支援処理ルーチンについて説明する。
【0034】
ステップ100で、GPS装置12から自車両の位置を取得し、自車両周辺の所定領域の道路情報を電子地図データシステム14から取得し、自車両の走行路に沿って所定区間Bx1−x2毎に道路構造を認識する。
【0035】
次に、ステップ102で、例えば、図3に示すような、規制速度毎に予め定めた道路構造とその道路構造に対応して存在する可能性があるハザード候補との関係を定めたテーブルを参照して、上記ステップ100で取得した道路情報に含まれる規制速度を示す情報に従って該当するテーブルを選択し、道路情報に含まれる道路構造を示す情報に従って、区間Bx1−x2毎にハザード候補を選定する。
【0036】
次に、ステップ104で、例えば、図4に示すような、規制速度とハザード候補の種類との関係に応じて、ハザード候補を回避するために必要な幅であるマージンを定めたテーブルを参照して、上記ステップ102で区間Bx1−x2毎に選定されたハザード候補について、規制速度に対応して定められたマージン(α、β)を得て、道路幅Lからマージンの総和を差し引いて、通過可能な領域幅Yx1−x2を、区間Bx1−x2毎に算出する。
【0037】
次に、ステップ106で、上記ステップ104で算出した通過可能な領域幅Yx1−x2が、自車幅δより大きいか否かを判定する。Yx1−x2>δの場合には、ステップ110へ移行し、Yx1−x2≦δの場合には、ステップ108へ移行して、支援レベルを最大(ここでは、レベル3)に設定して、ステップ114へ移行する。
【0038】
ステップ110では、図6に示すような、通過可能な領域幅と規制速度との関係を定めたテーブルを参照して、区間Bx1−x2毎に目標通過速度を算出する。次に、ステップ112で、車速センサ16から自車両の現在の車速を取得し、上記ステップ110で算出された区間毎の目標通過速度の変化が生じる変化点に到達すために要する減速度を算出し、減速度に応じた支援レベルを設定する。減速度が所定範囲であれば支援なしと設定し、所定範囲を超える場合には、その度合いに応じて支援レベルを設定する。
【0039】
次に、ステップ114で、上記ステップ112またはステップ108で設定した支援レベルに応じて、例えば、インストルメントパネル内に設けた画像表示領域の色調を変化させたり、スピーカから警告音を鳴らしたり、アクセルペダルに反力を生じさせたりするように制御して、処理を終了する。
【0040】
以上説明したように、第1の実施の形態の運転支援装置によれば、規制速度が設定されている背景を考慮した上で、規制速度の情報及び道路構造に基づいてハザード候補を選定して、運転支援の可否または支援レベルを定めるための通過可能な領域幅を算出するため、高度なセンシング技術を必要とすることなく、ユーザの納得性を向上させつつ、簡易な構成で運転支援を行うことができる。
【0041】
また、他者挙動を高度に推定するのではなく、規制速度に応じたハザード候補、及び規制速度に応じたハザード候補毎のマージンを定めておくことで、簡易な方法で、高精度のセンサを用いることなく運転支援を行うことができる。
【0042】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、実際に検出した物体の情報も用いて通過可能な領域幅を算出する場合について説明する。なお、第1の実施の形態の運転支援装置10と同様の構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
図11に示すように、第2の実施の形態に係る運転支援装置210は、GPS装置12と、電子地図データシステム14と、車速センサ16と、自車両の前方に対してレーザを走査しながら照射し、レーザの反射によりレーザが照射された物体の2次元位置を検出するレーザレーダ18と、自車両の前方を撮像する撮像装置19と、運転支援制御を実行するコンピュータ220と、を備えている。
【0044】
レーザレーダ18は、車両前方に設置され、装置を基準とする車両前方に存在する物体までの距離を検出する装置であり、出力するレーザを水平方向に走査することで、レーザの反射により自車両前方に存在する複数の物体表面上の複数の点の位置を検出することができる。レーザレーダ18による検出結果は、自車両前方に存在する物体表面のある点の位置を表す2次元座標の集合である。レーザレーダ18による検出処理は一定サイクルで実行され、レーザレーダ18は、各時点での自車両前方に存在する物体表面の複数の点の2次元位置を示すデータをコンピュータ220に出力する。
【0045】
撮像装置19は、小型のCCDカメラ又はCMOSカメラで構成され、車両の前方を撮影するように車両のフロントウィンドウ上部等に取り付けられている。撮像装置19で撮影された前方の道路状況等の画像データは、コンピュータ220に入力される。
【0046】
コンピュータ220をハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、図11に示すように、GPS装置12、電子地図データシステム14、レーザレーダ18及び撮像装置19から情報を取得する情報取得部222と、ハザード選定部224と、情報取得部222により取得した情報に基づいて、自車両前方に存在する高さのある物体を識別する物体識別部34と、ハザード選定部224により選定されたハザード候補に応じたマージン、情報取得部222により取得した情報、及び物体識別部34での識別結果に基づいて、自車両が通過可能な領域幅を算出する通過可能領域幅算出部226と、目標通過速度算出部28と、支援判定部30と、支援制御部32と、を含んだ構成で表すことができる。
【0047】
ハザード選定部224は、第1の実施の形態と略同様であるが、第2の実施の形態では、規制速度及び道路構造との関係で自車両の前方に存在する可能性のある歩行者、自転車、他車両等の高さのある移動可能な他者(以下、「高さあり他者」という)もハザード候補として加わる点が異なる。例えば、図12に示すように、テーブル(21)に規制速度30km/hの場合、・・・、テーブル(24)に規制速度60km/hの場合、のように、規制速度毎に道路構造と高さあり他者を含むハザード候補との関係を定めたテーブルを予め記憶しておく。なお、同図のテーブル(24)に示す規制速度60km/hの場合の例のように、道路構造に関わらず、ハザード候補を選定するようにしてもよい。
【0048】
物体識別部34は、レーザレーダ18による検出結果である自車両前方に存在する物体表面の複数の点の2次元位置を示すデータを取得し、レーザレーダ18による検出と同期するタイミングで撮像装置19により撮像された撮像画像を取得する。レーザレーダ18による検出結果及び撮像装置19により撮像された撮像画像を、以下、周辺検出情報という。取得した周辺検出情報に基づいて、レーザレーダ18の検出結果が示す物体のうち、道路情報に含まれない物体について、撮像画像を画像認識することによりその物体の種別を識別する。具体的には、検出された物体が歩行者、自転車、駐車車両等の障害物となり得る高さのある物体(以下、「検出障害物」という)か否かを識別する。
【0049】
通過可能領域幅算出部226は、ハザード選定部224により選定されたハザード候補、情報取得部222により取得された規制速度を示す情報、道路幅を示す情報、及び物体識別部34により識別された検出障害物の情報に基づいて、所定区間毎に通過可能な領域幅を算出する。例えば、図13に示すように、規制速度とハザード候補の種類との関係に応じて、ハザード候補を回避するために必要な幅であるマージンを定めたテーブルを予め記憶しておく。そして、このテーブルを参照して、ハザード選定部224により所定区間毎に選定されたハザード候補について、情報取得部222により取得された規制速度に対応して定められたマージンを得て、道路内で検出障害物が存在する領域を含まない連続する領域の幅からマージンを差し引いて通過可能な領域幅を算出する。
【0050】
例えば、図14に示すように、規制速度が30km/hの走行路における自車両からの距離が20〜30mの区間B20−30では、道路構造として、郊外、交差点なし、という情報が取得されるため、図12のテーブル(21)を参照して、「道路工作物」及び「高さあり他者」がハザード候補として選定される。そして、図13のテーブルを参照して、「道路工作物」のマージンαとして「1.0m」、及び「高さあり他者」のマージンγとして「2.0m」が得られる。また、物体識別部34により、区間B20−30に、駐車車両等の検出障害物が識別されている場合には、情報取得部222で取得した道路幅を示す情報から、識別された検出障害物の幅を差し引いた領域Aの幅を算出する。そして、領域Aの幅からマージンの総和(α+γ)を差し引いて、区間B20−30の通過可能な領域幅Y20−30を算出する。
【0051】
次に、図15を参照して、第2の実施の形態の運転支援装置210において実行される運転支援処理ルーチンについて説明する。なお、第1の実施の形態の運転支援処理と同一の処理については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
ステップ200で、GPS装置12から自車両の位置を取得し、自車両周辺の所定領域の道路情報を電子地図データシステム14から取得し、自車両の走行路に沿って所定区間Bx1−x2毎に道路構造を認識する。また、レーザレーダ18及び撮像装置19から周辺検出情報を取得する。
【0053】
次に、ステップ102で、区間Bx1−x2毎にハザード候補を選定し、次に、ステップ202で、上記ステップ200で取得した周辺検出情報に基づいて、レーザレーダ18の検出結果が示す物体のうち、道路情報に含まれない物体について、撮像画像を画像認識することによりその物体の種別を識別し、検出された物体が検出障害物か否かを識別する。
【0054】
次に、ステップ204で、例えば、図14に示すような、規制速度とハザード候補の種類との関係に応じて、高さあり他者を含むハザード候補を回避するために必要な幅であるマージンを定めたテーブルを参照して、上記ステップ102で区間Bx1−x2毎に選定されたハザード候補について、規制速度に対応して定められたマージン(α、β、γ)を得る。そして、上記ステップ202で、区間Bx1−x2に、駐車車両等の検出障害物が識別されている場合には、道路幅Lから識別された検出障害物の幅を差し引いた領域Aの幅を算出し、領域Aの幅からマージンの総和を差し引いて、通過可能な領域幅Yx1−x2を、区間Bx1−x2毎に算出する。
【0055】
以下、第1の実施の形態と同様に、ステップ106〜114を実行して、運転支援制御の処理を行う。
【0056】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、実際に検出した障害物の情報も用いることで、より安全な運転支援を行うことができる。
【0057】
なお、第2の実施の形態では、自車両前方の物体の2次元位置を検出するためにレーザレーダを用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ミリ波などの電磁波を前方に走査して物体の位置を検出するものを用いてもよし、ステレオカメラによって撮影された前方画像から、自車両前方の物体の位置を検出するようにしてもよい。
【0058】
また、上記第1及び第2の実施の形態では、運転支援として、ドライバに警告を行う場合について説明したが、制動制御や操舵制御等の運転制御を行うようにしてもよい。
【0059】
また、上記第1及び第2の実施の形態では、規制速度を示す情報を含む道路情報を電子地図データシステムに記憶しておき、この電子地図データシステムから道路情報を取得することにより、規制速度を取得する場合について説明したが、撮像装置により撮像した撮像画像を画像認識することにより規制速度を表す標識を検出し、この検出結果から規制速度を示す情報を取得するようにしてもよい。
【0060】
また、例えばインストルメントパネル上に設けられた本装置のON/OFFスイッチに対するユーザの操作を検知することにより、または、本装置によりドライバに提示された警告に対する意図的な行動(例えば、アクセルペダルの踏み込みやステアリング操作)を検知することにより、本装置による運転支援のON/OFFを制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10、210 運転支援装置
12 GPS装置
14 電子地図データシステム
16 車速センサ
18 レーザレーダ
19 撮像装置
20、220 コンピュータ
22、222 情報取得部
24、224 ハザード選定部
26、226 通過可能領域幅算出部
28 目標通過速度算出部
30 支援判定部
32 支援制御部
34 物体識別部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が走行する道路の規制速度を示す情報、及び前記道路の道路幅を含む道路構造を示す情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得した規制速度を示す情報及び道路構造を示す情報、並びに規制速度毎に予め定めた道路構造と該道路構造に対応して存在する可能性がある障害物候補との関係を示す情報に基づいて、前記自車両の前方に存在する可能性のある障害物候補を選定する選定手段と、
前記選定手段により選定された障害物候補、前記取得手段により取得した規制速度を示す情報、及び道路幅を示す情報に基づいて、前記選定手段により選定した障害物候補付近を通過する際に必要な規制速度に応じた通過可能な領域幅を算出する幅算出手段と、
前記幅算出手段により算出された通過可能な領域幅に応じた警告及び運転制御の少なくとも一方の運転支援を行う支援手段と、
を含む運転支援装置。
【請求項2】
前記幅算出手段は、規制速度と障害物候補との関係から予め定めた該障害物候補を回避するために必要な幅を用いて、前記通過可能な領域幅を算出する請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
通過可能な領域幅と規制速度との関係に基づいて予め定めた前記障害物候補を回避して通過するための目標通過速度、前記幅算出手段により算出した通過可能な領域幅、及び前記取得手段により取得した規制速度基づいて、前記目標通過速度を算出する速度算出手段を含み、
前記支援手段は、前記速度算出手段により算出した目標通過速度及び現在の自車両の速度から前記目標通過速度を達成するための減速度を求め、該減速度に応じた運転支援を行う
請求項1または請求項2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記自車両周辺に存在する障害物を検出する検出手段を含み、
前記幅算出手段は、前記道路幅から前記検出手段により検出した障害物の幅を差し引いて前記通過可能な領域幅を算出する
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の運転支援装置。
【請求項5】
コンピュータを、
自車両が走行する道路の規制速度を示す情報、及び前記道路の道路幅を含む道路構造を示す情報を取得する取得手段、
前記取得手段により取得した規制速度を示す情報及び道路構造を示す情報、並びに規制速度毎に予め定めた道路構造と該道路構造に対応して存在する可能性がある障害物候補との関係を示す情報に基づいて、前記自車両の前方に存在する可能性のある障害物候補を選定する選定手段、
前記選定手段により選定された障害物候補、前記取得手段により取得した規制速度を示す情報、及び道路幅を示す情報に基づいて、前記選定手段により選定した障害物候補付近を通過する際に必要な規制速度に応じた通過可能な領域幅を算出する幅算出手段、及び
前記幅算出手段により算出された通過可能な領域幅に応じた警告及び運転制御の少なくとも一方の運転支援を行う支援手段
として機能させるための運転支援プログラム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図2】
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【図5】
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【図8】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−141770(P2012−141770A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293706(P2010−293706)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】