説明

運転支援装置及び障害物検出方法

【課題】一般的な超音波センサを用いて、温度変化などがあっても正確に車両と障害物間の距離を測定して報知することができる運転支援装置を提供する
【解決手段】車両に取り付けた複数の超音波センサで受信した信号を検波し、隣接する第1、第2の超音波センサの一方から他方に直接伝搬された超音波が他方で受信されるまでの第1の時間情報を算出し、第1、第2の超音波センサ間の距離情報及び第1の時間情報をもとに超音波の伝搬速度を測定する第1の測定部と、複数の超音波センサから発射され障害物で反射された超音波を受信するまでの第2の時間情報を算出し、測定した超音波の伝搬速度と第2の時間情報をもとに障害物までの距離を測定する第2の測定部と、車両と障害物間の距離が予め設定した距離以内になったときに警報を発する警告部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体に設置した超音波センサによって移動体周囲の障害物を検出して報知する運転支援装置及び障害物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転支援を目的として、車両に複数の超音波センサを取り付けて車両周囲の障害物を検知し、ディスプレイやスピーカ等に障害物の有無を報知し、車両が障害物に衝突或いは追突するのを避けるようにした障害物検出装置がある。
【0003】
このような障害物検出装置では、超音波センサから車両の周囲に向けて超音波を発信し、障害物がある場合に障害物によって反射した超音波をセンサで受信して障害物の有無を確認し、障害物が車両に接近したときに運転者に報知するようにしている。例えば、車両をバックしながらガレージなどに駐車する場合などの駐車支援に適している。
【0004】
ところで、上記した障害物検出装置では、障害物との距離を高精度で検出する必要があるが、超音波センサは周囲温度や気圧の変化等により音波の伝播速度が変化するため、測定した障害物との距離に誤差を生じ、実際には障害物に接近しているにも関わらず、正確に報知することができずに障害物に衝突してしまうことがある。
【0005】
このような不具合を解消するため、温度センサを車両に取り付け、温度変化に応じて超音波の伝播速度を補償することにより、より正確に距離を測定する技術もあるが、温度センサ等を必要とするためコスト面で不利になる。
【0006】
特許文献1には、超音波センサを車両に装着する場合に、水滴やゴミの付着あるいは温度変化による検出精度の劣化を防止する超音波センサ装置が開示されている。しかしながら特許文献1の例では、1個の送信素子に対して複数の受信素子を同一基板に集積化し、1つの発信信号と複数の受信信号との平均時間値の時間差から障害物までの距離を演算するものであり、特殊な超音波センサを用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−242650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の障害物検出装置では、障害物との距離を高精度で検出する必要があるが、超音波センサは周囲温度や気圧の変化等により音波の伝達速度が変化するため、測定した障害物との距離に誤差を生じ、実際には障害物に接近しているにも関わらず、正確に報知することができないことがある。また特許文献1の例では、1個の送信素子に対して複数の受信素子を有する特殊な超音波センサを用いる必要があり、実用的ではない。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑み、一般的な超音波センサを用いて、温度変化などがあっても正確に車両と障害物間の距離を測定して報知することができる運転支援装置及び障害物検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の本発明の運転支援装置は、車両に取り付けられ、超音波を送受信する複数の超音波センサと、前記複数の超音波センサで受信した信号を検波して出力する検波回路と、前記検波回路の出力信号を用いて、前記複数の超音波センサのうち隣接する第1、第2の超音波センサの一方から他方に直接伝搬された超音波が前記他方で受信されるまでの第1の時間情報を算出し、前記第1、第2の超音波センサ間の距離情報及び前記第1の時間情報をもとに超音波の伝搬速度を測定する第1の測定部と、前記検波回路の出力信号を用いて、前記複数の超音波センサから発射され障害物で反射された超音波を受信するまでの第2の時間情報を算出し、前記測定した超音波の伝搬速度と前記第2の時間情報をもとに前記障害物までの距離を測定する第2の測定部と、前記車両と前記障害物間の距離が予め設定した距離以内になったときに警報を発する警告部と、を具備することを特徴とする。
【0011】
また請求項4記載の本発明の運転支援装置は、車両に取り付けられ、超音波を送受信する超音波センサと、前記超音波センサと所定の距離を置いて前記車両に配置された反射板と、前記超音波センサで受信した信号を検波して出力する検波回路と、前記検波回路の出力信号を用いて、前記超音波センサから前記反射板に直接伝搬された超音波が前記反射板で反射されて前記超音波センサで受信されるまでの第1の時間情報を算出し、前記超音波センサと前記反射板間の距離情報及び前記第1の時間情報をもとに超音波の伝搬速度を測定する第1の測定部と、前記検波回路の出力信号を用いて、前記超音波センサから発射され障害物で反射された超音波を受信するまでの第2の時間情報を算出し、前記測定した超音波の伝搬速度と前記第2の時間情報をもとに前記障害物までの距離を測定する第2の測定部と、前記車両と前記障害物間の距離が予め設定した距離以内になったときに警報を発する警告部と、を具備したことを特徴とする。
【0012】
また請求項6記載の本発明の障害物検出方法は、車両に超音波を送受信する複数の超音波センサを取り付け、前記複数の超音波センサで受信した信号を検波して、前記複数の超音波センサのうち隣接する第1、第2の超音波センサの一方から他方に直接伝搬された超音波が前記他方で受信されるまでの第1の時間情報を算出し、前記第1、第2の超音波センサ間の距離情報及び前記第1の時間情報をもとに超音波の伝搬速度を測定し、前記検波した信号を用いて、前記複数の超音波センサから発射され障害物で反射された超音波を受信するまでの第2の時間情報を算出し、前記測定した超音波の伝搬速度と前記第2の時間情報をもとに前記障害物までの距離を測定することを特徴とする。
【0013】
さらに請求項8記載の本発明の障害物検出方法は、車両に超音波を送受信する超音波センサを取り付け、前記車両に前記超音波センサと所定の距離を置いて反射板を配置し、前記超音波センサで受信した信号を検波して、前記超音波センサから前記反射板に直接伝搬された超音波が前記反射板で反射されて前記超音波センサで受信されるまでの第1の時間情報を算出し、前記超音波センサと前記反射板間の距離情報及び前記第1の時間情報をもとに超音波の伝搬速度を測定し、前記検波した信号を用いて、前記超音波センサから発射され障害物で反射された超音波を受信するまでの第2の時間情報を算出し、前記測定した超音波の伝搬速度と前記第2の時間情報をもとに前記障害物までの距離を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施形態によれば、周辺温度が変化しても障害物までの距離を正確に測定することができ、運転者に対して正確な運転支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る運転支援装置の構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態に係る運転支援装置の動作説明図。
【図3】同実施形態に係る車両への超音波センサの取り付け位置を示す平面図。
【図4】同実施形態に係る運転支援装置の動作を説明する信号波形図。
【図5】温度変化があったときの動作を説明する信号波形図。
【図6】同実施形態に係る運転支援装置の動作を説明するフローチャート。
【図7】本発明の他の実施形態に係る車両への超音波センサと反射板の取り付け位置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る運転支援装置100の構成を示すブロック図である。図1において、運転支援装置100は、複数の超音波送受信器11,12…を含むセンサ群10と、送受信/検波回路20、信号処理部30、メモリ40及び警告部50を備えている。超音波送受信器11,12…は超音波信号を発射する送信器と、入射した超音波信号を受信する受信器を含み、以下の説明では超音波送受信器を超音波センサと呼ぶことにする。
【0018】
超音波センサ11,12…は、例えば車両の後方バンパーや車両の側面に取り付けられ、車両周辺の障害物に対して超音波信号を発射し、発射された超音波信号が障害物によって反射されたとき超音波センサ11,12…で受信する。送受信/検波回路20は、超音波信号を生成して超音波センサ11,12…から送信するとともに、超音波センサ11,12…で受信した超音波信号を受信し検波する。また検波した信号を所定の閾値で波形整形して信号処理部30に供給する。
【0019】
信号処理部30は、例えばマイクロプロセッサ(マイコン)で構成され、上述した閾値の設定を行うとともに、送受信/検波回路20からの波形整形した出力信号を処理して、障害物と車両との距離情報を算出する。メモリ40は閾値の情報を記憶するとともに、信号処理部30で算出した時間情報等を記憶する。
【0020】
警告部50は、スピーカ(又はブザー)等の音声発生部を含み、障害物が車両に対して所定の距離以内に接近したときに音声によって運転者に報知するものである。また音声で報知するだけでなくディスプレイ等の表示部を有し、ディスプレイに警告表示するようにしても良い。
【0021】
本実施形態では、車両周辺の障害物に対して超音波センサ11,12から超音波信号を発射し、発射された超音波信号が障害物によって反射され再び超音波センサ11,12で受信されるまでの往復の伝播時間を測定する。そして、この時間情報をもとに障害物との距離を測定するが、複数の超音波センサ11,12…のうち、隣接するセンサから直接伝搬される超音波を受信して、現温度での超音波の伝播速度を算出し、この伝播速度をもとに正確な距離情報を算出するものである。
【0022】
以下、車両と障害物との距離の測定動作について説明する。図2は、車両1をバックさせながらガレージに駐車する場合を示している。例えば、車両1をガレージにバックで入れる場合、運転者からは壁2やガレージ内に置かれた物体3との距離が分かりにくく、衝突する場合がある。このため、車両1の後部又は側面に設けた複数の超音波センサから超音波を発射し、壁2や物体3から反射した超音波を超音波センサで受信し、受信した信号を処理することで車両1が障害物(壁2や物体3)に接近したときに運転者に知らせるようにしている。
【0023】
図3は、車両1に対する超音波センサの配置を示す平面図である。図3において、例えば車両1の後部バンパーに超音波センサ11と12を所定の距離(L0)だけ離して設置している。また車両1の側面に超音波センサ13と14を設置している。そして超音波センサ11〜14から車両1の周囲に対して超音波信号を発射し、障害物(壁2や物体3)で反射した超音波信号を超音波センサ11〜14で受信するようにしている。
【0024】
超音波センサから測定対象物(障害物)までの距離をL、超音波センサから発射された超音波が測定対象物で反射して再び超音波センサに返ってくるまでの時間をT、気体中における超音波の伝播速度(音速)をCとすると、距離Lは以下の(1)式で求めることができる。
【0025】
L=T・C/2 …(1)
しかしながら、気体中における超音波の伝播速度C(m/sec)は、気体温度により変化し、温度が低下すると遅くなることが知られている。一方、超音波には固体表面に沿った空中を伝わり易いという性質があり、測距用途で車両のバンパーに設置した超音波センサ11,12も例外ではなく、バンパー表面に沿った空中を超音波が伝搬する。その結果として、近接した2つのセンサ(例えば超音波センサ11,12)は、お互いの送信波を直接受信することになる。
【0026】
そこで本発明では、バンパー表面に沿って伝わる超音波を利用して、実際の温度に対応した超音波の伝搬速度を算出し、障害物までの距離を補正することを特徴とする。以下、図4、図5を参照して説明する。尚、図4、図5では、複数の超音波センサのうち、隣接する2つの超音波センサ11,12から超音波を送信し受信する場合を説明する。
【0027】
図4において、(a)は超音波センサ11から送信された超音波(送信波S1)と、送信波S1が障害物によって反射され、再び超音波センサ11で受信された超音波(反射波S2)の信号波形を示している。また同時に隣接する超音波センサ12から直接に伝搬された超音波が車両のバンパー表面に沿って空中を伝わって超音波センサ11によって受信された超音波(伝搬波S3)の信号波形を示している。反射波S2のレベルに比べ、伝搬波S3のレベルは十分小さい。
【0028】
図4(b)は、送受信/検波回路20による検波信号を示している。検波は受信した生の波形を半波整流して行う。検波信号には、送信波S1と,反射波S2及び伝搬波S3の成分が含まれている。図4(c)は、検波信号(b)に対して第1の閾値TH1を設定して波形整形したパルス出力を示している。閾値TH1を設定して、閾値TH1以上の信号を検出することによりノイズ成分を除去することができる。
【0029】
また図4(c)において、送信波S1に相当する検出パルスをS11とし、反射波S2に相当する検出パルスをS21とする。また図4(b)から分かるように、伝搬波S3は閾値TH1以下であるため、図4(c)では伝搬波S3はノイズとして除去される。
【0030】
またパルスS11の発生からパルスS21の発生までの時間をT1としている。通常は、この時間T1を測定することにより、(1)式に基づいて車両と障害物間の距離を測定することができる。しかしながら、気体中における超音波の伝播速度は、気体温度により変化するため、現温度での超音波の伝搬速度を正確に把握する必要がある。そこで、図5のように閾値を下げて波形整形を行う。
【0031】
図5(a),(b),(c)は、図4と同じ信号波形を示しているが、閾値をTH1からTH2に下げた状態を示している。閾値TH2を伝搬波S3の成分を検出できる値まで下げた場合、図5(c)で示すように、送信波S1、反射波S2及び伝搬波S3の検出パルスS11,S21及びS31をそれぞれ得ることができる。またパルスS11の発生からパルスS21の発生までの時間をT2とし、パルスS11の発生からパルスS31の発生までの時間をT3としている(T3<T2である)。
【0032】
一方、超音波センサ11と超音波センサ12間の距離L0(直線距離ではなくバンパー縁を伝った長さ)は、不変であるため、時間T3と距離L0をもとに、信号処理部30は現温度での超音波の伝搬速度C0を以下の(2)式で算出する。
【0033】
C0=L0/T3 …(2)
したがって、障害物までの実際の距離L1をとしたとき、現温度での超音波の伝搬速度C0と、図4(c)での時間T1をもとに、距離L1を以下の(3)式で算出することができる。
【0034】
L1=T1・C0/2 …(3)
かくて信号処理部30は、複数の超音波センサのうち隣接する第1、第2の超音波センサ(11,12)の一方から他方に直接伝搬された超音波が他方で受信されるまでの時間情報T3を算出し、第1、第2の超音波センサ(11,12)間の距離情報(L0)及び時間情報T3をもとに超音波の伝搬速度C0を測定する第1の測定部を構成する。
【0035】
また、信号処理部30は、複数の超音波センサ(11,12…)から発射され障害物で反射された超音波を受信するまでの時間情報T1を算出し、測定した超音波の伝搬速度C0と時間情報T1をもとに障害物までの距離を測定する第2の測定部を構成する。
【0036】
尚、閾値がTH1のときの検出パルスS11の発生から検出パルスS21の発生までの時間T1と、閾値がTH2のときの検出パルスS11の発生から検出パルスS21の発生までの時間T2はほぼ等しいため、時間T2を用いて障害物までの距離L1を算出しても良い。この場合は、検波閾値は常に低いレベルTH2に設定される。但し閾値をTH1とTH2に切り替えた場合、時間T1とT2は多少のずれを生じるため、閾値TH1での時間T1をもとに障害物との距離L1を算出するほうがより正確を期することができる。
【0037】
また、温度変化により超音波の伝搬速度が遅くなった場合を図5(b),(c)の点線の波形で示している。超音波は温度が低下すると気体中の伝搬速度が遅くなる。このため、反射波S2及び伝搬波S3の検出パルスもS22及びS32で示すように遅れを生じ、送信波S1の発生から反射波S2を受信するまでの時間T2及び伝搬波S3を受信するまでの時間T3も遅れ、T2’、T3’となる。また閾値がTH1のときの送信波S1の発生から反射波S2を受信するまでの時間T1も遅れT1’(図示せず)となる。
【0038】
しかしながら、超音波センサ11と超音波センサ12間の距離L0は不変であるため、時間T3’と距離L0をもとに、温度が変化したときの超音波の伝搬速度C0’を以下の(4)式で算出することができる。
【0039】
C0’=L0/T3’…(4)
したがって、障害物までの実際の距離L1をとしたとき、現温度での超音波の伝搬速度C0’と時間T1’をもとに以下の(5)式で算出することができる。
【0040】
L1=T1’・C0’/2 …(5)
逆に周囲温度が高くなった場合は、超音波の伝搬速度が速くなるため、それに即して障害物との距離を正確に測定することができる。
【0041】
尚、近接する2つのセンサ11,12間の距離L0(直線距離ではなくバンパー縁を伝った長さ)の情報や、検波閾値TH1,TH2の情報は予めメモリ40に記憶され、障害物との距離の測定時に必要に応じて読み出される。また閾値TH1,TH2の設定により測定された時間情報T1やT3もメモリ40に記憶可能である。また、以上の説明では超音波センサ11,12について述べたが、車両1に設置されているすべてのセンサ11〜14からは、同期して超音波が発射される。
【0042】
図6は、運転支援装置の動作を示すフローチャートである。図6において、ステップS1は、ACCオン(エンジンスタート)を示し、ステップS2では初期化を行う。ステップS3を経てステップS4では、通常の検波閾値(第1の閾値TH1)に設定する。ステップS5では第1の閾値TH1に設定したときの超音波センサ11,12からの情報(時間情報T1)を取得する。
【0043】
次のステップS6では第2の検波閾値TH2に設定して、隣接する超音波センサからの伝搬波S3を受信するまでの時間情報T3を測定し、ステップS7では、超音波センサ11と12間の距離情報L0を取得する。ステップS8では取得した距離情報L0と時間情報T3をもとに現温度での超音波の伝搬速度C0を測定する。ステップS9では、ステップS5で取得した時間情報T1とステップS8で測定した伝搬速度C0をもとに車両と障害物間の距離を算出する。
【0044】
そしてステップS10では、障害物との距離があらかじめ設定した距離以下になった場合に警告出力処理を行い、警告音の発生や警告表示を行う。以下、ステップS11とステップS3間の処理を繰り返し、車両のエンジンがかかっている間は障害物との距離の測定と警告を行い、エンジンの停止によりステップS12で処理を終了する。
【0045】
こうして、本発明の実施形態では、常に現状の周辺温度に対応した超音波の伝搬速度をリアルタイムに測定して、障害物までの距離を正確に測定することができる。しかも、隣接する超音波センサからの超音波を受信して実際の超音波の伝搬速度を測定するため、温度センサ等の余分の検出素子を用いる必要がないため、回路構成の複雑化やコスト増を抑えることができる。
【実施例2】
【0046】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では隣接する2つの超音波センサ(例えばセンサ11と12)を用いて現温度での超音波の伝搬速度を測定する例を説明したが、第2の実施形態では、1つの超音波センサと反射板を用いて超音波の伝搬速度を測定するものである。
【0047】
図7は、車両1に対する超音波センサと反射板の配置を示す平面図である。例えば車両1の後部バンパーに超音波センサ12に代えて反射板60を設け、この反射板60に対して所定の距離(L0)だけ離して超音波センサ11を設置している。また車両1の側面に超音波センサ13と14を設置している。
【0048】
そして超音波センサ11,13,14から車両の周囲に対して超音波信号を発射し、障害物(壁2や物体3)で反射した超音波信号を超音波センサ11,13,14で受信するようにしている。また図7において、超音波センサ11から送信された超音波は、車両1のバンパー表面に沿って空中を伝わって反射板60に当たって反射し、その反射した超音波を超音波センサ11で受信するようにしている。
【0049】
超音波センサ11と反射板60間の距離L0(直線距離ではなくバンパー縁を伝った長さ)は、不変であるため、超音波センサ11から発射した超音波が反射板60で反射されて再び超音波センサ11で受信されるまでの往復時間をT4とすると、時間T4と距離L0をもとに、現温度での超音波の伝搬速度C1を以下の(6)式で算出することができる。
【0050】
C1=2・L0/T4…(6)
したがって、超音波センサ11から発射した超音波が障害物で反射されて再び超音波センサ11で受信されるまでの時間をT1とすると、障害物までの実際の距離L1は、(6)式で求めた超音波の伝搬速度C1と、時間T1をもとに以下の(7)式で算出することができる。
【0051】
L1=T1・C1/2 ・・・(7)
尚、超音波センサ11は、自身が発した超音波がバンパー縁を伝って反射板60に伝搬し、さらに反射板60で反射した超音波を受信するため、受信時の超音波のレベルが減衰するが、閾値をうまく設定することにより反射した伝搬波を検出することができる。閾値は、図5(b)の閾値TH2よりも低くすれば、反射板60で反射した超音波を検出することができる。したがって、1つの超音波センサを用いて現温度での超音波の伝搬速度を測定することができ、回路構成の簡略化を図ることができる。
【0052】
以上述べたように本発明によれば、周辺温度が変化しても障害物までの距離を正確に測定することができ、運転者に対して正確な運転支援を行うことができる。
【0053】
尚、以上の説明では、超音波センサ11,12によって超音波の伝搬速度を測定する例を述べたが、車両の前方に設置した超音波センサ11と側面に設置した超音波センサ13(又は超音波センサ12と超音波センサ14)を用いて超音波の伝搬速度を測定するようにしてもよい。また車両の後方に超音波センサ11,12を設置して車両後方の障害物を検出する例を説明したが、車両の前方に超音波センサを設置して車両前方の障害物を検出するようにしても良い。また特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0054】
100…運転支援装置
1…車両
2,3…障害物
10…超音波センサ群
11,12,13,14…超音波センサ
20…送受信/検波回路
30…信号処理部(マイコン)
40…メモリ
50…警告部
60…反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられ、超音波を送受信する複数の超音波センサと、
前記複数の超音波センサで受信した信号を検波して出力する検波回路と、
前記検波回路の出力信号を用いて、前記複数の超音波センサのうち隣接する第1、第2の超音波センサの一方から他方に直接伝搬された超音波が前記他方で受信されるまでの第1の時間情報を算出し、前記第1、第2の超音波センサ間の距離情報及び前記第1の時間情報をもとに超音波の伝搬速度を測定する第1の測定部と、
前記検波回路の出力信号を用いて、前記複数の超音波センサから発射され障害物で反射された超音波を受信するまでの第2の時間情報を算出し、前記測定した超音波の伝搬速度と前記第2の時間情報をもとに前記障害物までの距離を測定する第2の測定部と、
前記車両と前記障害物間の距離が予め設定した距離以内になったときに警報を発する警告部と、を具備してなる運転支援装置。
【請求項2】
前記検波回路は、前記検波信号に対して第1の検波閾値を設定して、前記第1、第2の超音波センサの一方から他方に直接伝搬した第1の超音波を検出するとともに、前記第1の検波閾値よりも高い第2の検波閾値を設定して前記障害物で反射された第2の超音波を検出し、
前記第1の測定部は、検出された前記第1の超音波をもとに前記第1の時間情報を測定し、前記第2の測定部は、検出された第2の超音波をもとに前記第2の時間情報を測定することを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記第1、第2の検波閾値の情報を記憶した記憶部を備え、前記検波回路は、前記記憶部から読み出した情報をもとに検波閾値を設定することを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。
【請求項4】
車両に取り付けられ、超音波を送受信する超音波センサと、
前記超音波センサと所定の距離を置いて前記車両に配置された反射板と、
前記超音波センサで受信した信号を検波して出力する検波回路と、
前記検波回路の出力信号を用いて、前記超音波センサから前記反射板に直接伝搬された超音波が前記反射板で反射されて前記超音波センサで受信されるまでの第1の時間情報を算出し、前記超音波センサと前記反射板間の距離情報及び前記第1の時間情報をもとに超音波の伝搬速度を測定する第1の測定部と、
前記検波回路の出力信号を用いて、前記超音波センサから発射され障害物で反射された超音波を受信するまでの第2の時間情報を算出し、前記測定した超音波の伝搬速度と前記第2の時間情報をもとに前記障害物までの距離を測定する第2の測定部と、
前記車両と前記障害物間の距離が予め設定した距離以内になったときに警報を発する警告部と、を具備してなる運転支援装置。
【請求項5】
前記検波回路は、前記検波信号に対して第1の検波閾値を設定して、前記超音波センサで受信された前記反射板からの反射超音波を検出するとともに、前記第1の検波閾値よりも高い第2の検波閾値を設定して、前記障害物で反射された超音波を検出し、
前記第1の測定部は、前記反射板からの反射超音波をもとに前記第1の時間情報を測定し、前記第2の測定部は、前記前記障害物で反射された超音波をもとに前記第2の時間情報を測定することを特徴とする請求項4記載の運転支援装置。
【請求項6】
車両に超音波を送受信する複数の超音波センサを取り付け、
前記複数の超音波センサで受信した信号を検波して、前記複数の超音波センサのうち隣接する第1、第2の超音波センサの一方から他方に直接伝搬された超音波が前記他方で受信されるまでの第1の時間情報を算出し、
前記第1、第2の超音波センサ間の距離情報及び前記第1の時間情報をもとに超音波の伝搬速度を測定し、
前記検波した信号を用いて、前記複数の超音波センサから発射され障害物で反射された超音波を受信するまでの第2の時間情報を算出し、
前記測定した超音波の伝搬速度と前記第2の時間情報をもとに前記障害物までの距離を測定することを特徴とする障害物検出方法。
【請求項7】
前記検波信号に対して第1の検波閾値を設定して、前記第1、第2の超音波センサの一方から他方に直接伝搬した第1の超音波を検出し、
前記第1の検波閾値よりも高い第2の検波閾値を設定して前記障害物で反射された第2の超音波を検出し、
検出された前記第1の超音波をもとに前記第1の時間情報を測定し、
検出された前記第2の超音波をもとに前記第2の時間情報を測定することを特徴とする請求項6記載の障害物検出方法。
【請求項8】
車両に超音波を送受信する超音波センサを取り付け、
前記車両に前記超音波センサと所定の距離を置いて反射板を配置し、
前記超音波センサで受信した信号を検波して、前記超音波センサから前記反射板に直接伝搬された超音波が前記反射板で反射されて前記超音波センサで受信されるまでの第1の時間情報を算出し、
前記超音波センサと前記反射板間の距離情報及び前記第1の時間情報をもとに超音波の伝搬速度を測定し、
前記検波した信号を用いて、前記超音波センサから発射され障害物で反射された超音波を受信するまでの第2の時間情報を算出し、
前記測定した超音波の伝搬速度と前記第2の時間情報をもとに前記障害物までの距離を測定することを特徴とする障害物検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−174735(P2011−174735A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37310(P2010−37310)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(504113008)東芝アルパイン・オートモティブテクノロジー株式会社 (110)
【Fターム(参考)】