説明

運転支援装置

【課題】円滑かつ操作性に優れるとともに、安全性の高い運転操作支援を実現する運転支援装置を提供する。
【解決手段】車両20を目標位置Pまで自動的に速度制御しながら移動させる運転操作支援を実行するとともに運転操作支援を予め設定した条件に基づき解除する運転支援装置において、車両20の移動速度を自動制御する速度制御手段13と、車両20が目標位置Pに達したときに車両20を自動停止させる停止手段15とを備え、速度制御手段13は、車両20の移動速度を目標速度に一致させる速度制御モード13aと、目標位置Pに停止させるため車両20の移動速度を漸次減速させる停止制御モード13bとを有するとともに、目標速度が段階的に複数設定され、車両20の乗員の操作に基づき当該目標速度を変更する目標速度変更手段13cを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を目標位置まで自動的に速度制御しながら移動させる運転操作支援を実行する運転支援装置に関し、特に車両を目標位置に駐車させる際に好適な運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を目標位置まで自動的に移動させる運転操作支援を実行する運転支援装置においては、自動変速機を備えた車両のクリープ力を利用し、また、車両を自動操舵することにより、車両を目標位置まで移動させている。このとき、乗員のブレーキ操作の場合に限り、運転操作支援を継続させる技術が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
一方、目標位置までの経路に段差などの障害物がある場合や経路が上り坂である場合は、クリープ力だけで車両を目標位置まで移動させることは困難であり、かかる場合にはブレーキ操作だけではなくアクセル操作も必要とされる。アクセル操作を許容する場合、車両が比較的高速度で移動する可能性が高くなるため、適切な運転操作支援の解除条件を設定する必要がある。そこで、運転操作支援中にアクセル操作を許容するとともに、車速とアクセル開度(アクセルの踏み込み量)との関係に基づいて、運転操作支援の解除の必要性を判断する技術がある。この場合、閾値となるアクセル開度を超えるアクセル操作があった場合に、運転操作支援が解除され、必要に応じて車両を自動的に停車させる(例えば特許文献2)。
【0004】
また、運転操作支援を解除した場合、解除したことを乗員に認識させる必要があるが、このような技術としては、乗員が運転操作支援の解除を認識しているか否か判断する手段を備え、認識していないと判断した場合には、音、光などで解除を乗員に報知するとともに、弱い減速度でブレーキをかけ続ける制御などを行う技術がある(例えば特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−114272号公報
【特許文献2】特開2004−284530号公報
【特許文献3】特開2003−34205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両を運転操作支援により目標位置まで移動させる場合、目標位置までの経路上に段差などの障害物がある場合などのほか、車両の移動速度を車両周囲の状況に応じて適切に変更したい場合があり、ブレーキ操作だけを許容したのでは不十分である。
【0007】
また、上述したアクセル操作を許容した運転支援装置においては、アクセル操作及びブレーキ操作により乗員が速度制御を行う一方、閾値以上のアクセル開度、すなわちアクセルの踏み込みがあった場合には、運転操作支援が解除されてしまうので、アクセル操作の際に乗員の意に反して解除がなされてしまうという問題がある。
【0008】
さらに、運転操作支援を予め設定した解除条件に基づき解除する運転支援装置においてアクセル操作を許容した場合、設定されている解除条件のタイプによっては、ブレーキと間違えてアクセルを踏んでいる状況で運転操作支援の解除がなされてしまうといった事態が生じる可能性がある。このような場合、車両が急発進して周囲の人や他の車両などに衝突してしまうものとなるので、衝突しない対策が必要となる。
【0009】
本発明は、かかる問題点に着目してなされたものであり、その目的は、円滑かつ操作性に優れるとともに、安全性の高い運転操作支援を実現する運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る運転支援装置の第一特徴構成は、車両を目標位置まで自動的に速度制御しながら移動させる運転操作支援を実行するとともに前記運転操作支援を予め設定した条件に基づき解除する運転支援装置において、前記車両の移動速度を自動制御する速度制御手段と、前記車両が前記目標位置に達したときに前記車両を自動停止させる停止手段とを備え、前記速度制御手段は、前記車両の移動速度を目標速度に一致させる速度制御モードと、前記目標位置に停止させるため前記車両の移動速度を漸次減速させる停止制御モードとを有するとともに、前記目標速度が段階的に複数設定され、前記車両の乗員の操作に基づき当該目標速度を変更する目標速度変更手段を備えた点にある。
【0011】
本構成により、車両を目標位置まで自動的に速度制御しながら移動させる運転操作支援において、車両周囲の情況などに応じて、車両の移動速度を設定された複数の目標速度のいずれかに変更することが可能となり、これにより、円滑かつ操作性に優れるとともに、安全性の高い運転操作支援を実現することができる。
すなわち、移動経路上に存在する段差などを乗り越えるために、ある程度の速度が必要な場合や、移動する車両の周囲に人や他の車両がない場合などには、目標速度を上げることにより、かかる段差を乗り越えられ、又は速やかな移動が可能になり、円滑な運転操作支援を実現することができる。また、移動する車両の周囲に人や他の車両が多い場合などは、目標速度を下げることにより、車両の移動を遅くして、より安全な運転操作支援が行われる。
また、目標速度は段階的に設定されているので、移動速度を変える際に従来のような繊細なアクセル操作などは必要なく、操作性にも優れている。
【0012】
本発明に係る運転支援装置の第二特徴構成は、前記車両の乗員の操作がアクセル操作であり、当該アクセル操作に基づき前記目標速度変更手段が目標速度を上昇させる点にある。
また、本発明に係る運転支援装置の第三特徴構成は、前記車両の乗員の操作がブレーキ操作であり、当該ブレーキ操作に基づき前記目標速度変更手段が目標速度を下降させる点にある。
【0013】
本構成のごとく、目標速度を上昇させるための操作をアクセル操作とし、また、目標速度を下降させるための操作をブレーキ操作とすることで、乗員は従来の速度変更と同様の感覚で、かつ容易に目標速度の変更を行うことができる。
【0014】
本発明に係る運転支援装置の第四特徴構成は、前記運転操作支援を解除する条件が、前記車両の乗員による所定操作であり、前記停止制御モード終了時に前記所定操作の実行を前記車両の乗員に促す報知手段を備えた点にある。
【0015】
前記停止制御モード終了に伴い運転操作支援の解除が必要な運転支援装置の場合、予め設定された解除条件に基づき運転操作支援を解除する必要がある。本構成のごとく、停止制御モード終了時に、かかる解除操作の実行を乗員に促す報知手段を備えることで、確実に運転操作支援を解除することができる。
そして、このように乗員により確実に運転操作支援を解除することで、乗員の意に反して運転支援操作が解除され、又は継続されるなどの突然の車両の動作を防止することができる。
【0016】
本発明に係る運転支援装置の第五特徴構成は、前記報知手段が前記車両を振動させる振動制御手段である点にある。
【0017】
前記報知手段としては様々な手段があるが、本構成のごとく車両を振動させることで、周囲の雑音のために音声が聞こえ難い場合や車両内に設置された表示モニタが見え難い場合など、聴覚的又は視覚的な報知手段による認識が困難な場合であっても、乗員は解除操作の必要性をより確実に認識することができる。
【0018】
本発明に係る運転支援装置の第六特徴構成は、前記運転操作支援を解除する条件が、所定のアクセル操作である点にある。
【0019】
本発明に係る運転支援装置は、運転操作支援の解除条件を予め設定し、解除条件が満たされた場合には、運転操作支援を解除するようにしている。このため、例えば運転操作支援中において目標位置を変更したい場合には、設定された解除条件を成立させることにより、運転操作支援を解除し、改めて目標位置を設定し直すことができる。
運転操作支援の解除条件としては様々な条件が設定可能であるが、その好適な例として、乗員による所定のアクセル操作を、運転操作支援を解除する条件として設定することができる。例えば、速度制御中にアクセルペダルを短時間に2度踏む操作を解除条件として予め設定しておくことで、容易に運転操作支援の解除を行うことができる。
【0020】
本発明に係る運転支援装置の第七特徴構成は、前記運転操作支援の実行中にアクセルを踏み続けている状態では、前記運転操作支援を解除する条件が満たされた場合でも、前記運転操作支援が解除されない点にある
【0021】
上述のように、本発明に係る運転支援装置はアクセル操作を許容しているため、ブレーキと間違えてアクセルを踏んでしまうという事態が生じる可能性がある。そして、運転操作支援の実行中に、誤ってアクセルを踏み込続けている状態で運転操作支援の解除条件が満たされた場合には、車両が急発進し、車両周囲の人や他の車両などに衝突することが起こり得る。そこで、本構成のごとく、アクセルを踏み続けている状態では、解除条件が満たされた場合でも運転操作支援を解除しないように構成することで、かかる危険性を回避することができ、より安全性の高い運転支援装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る運転支援装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔システム構成〕
図1は、本発明に係る運転支援装置の構成を模式的に示すブロック図である。図2及び図3は、本発明に係る運転支援装置を搭載する車両20の一例を示す斜視図である。図1及び図2に示す運転支援ECU(Electronic Control Unit)1は、マイクロコンピュータやDSP(Digital Signal Processor)などによって構成されており、本発明の運転支援装置の中核をなすものである。運転支援ECU1は、カメラ3、速度センサ4、シフトレバースイッチ5、操舵角センサ6、アクセルペダルセンサ7、ブレーキペダルセンサ8などから、車両及び車両周辺の種々の情報を得て、乗員による車両20の運転操作を支援する。モニタ装置(表示手段)2aやスピーカ2bなどは、運転支援ECU1からの支援情報を、乗員に提供するための報知装置である。モニタ装置2aにはボタンが設けられ、又は、その画面がタッチパネルになっている。すなわち、モニタ装置2aは、表示手段であると共に、乗員による指示の入力を受け付ける入力手段でもある。
【0023】
また、運転支援ECU1は、車両20の他の制御装置、例えばアクセル制御ECU31や制動制御ECU32にも支援情報を提供する。アクセル制御ECU31は、支援情報に基づいて車両20を進行させる。制動制御ECU32は、この支援情報に基づいて車両20の制動装置を制御して車両20を制動する。より具体的には、速度制御手段13(速度制御部13a)の演算結果に基づいて車両20の移動速度を予め設定された目標とする速度(以下「目標速度」という)となるように速度制御して、速度制御手段13(停止制御部13b)の演算結果に基づいて車両20の移動速度を漸次減速させ、停止手段15の演算結果に基づいて車両20を停止させるなどして車両20の移動を制御する。つまり、運転支援ECU1は、アクセル制御ECU31や制動制御ECU32などを介して、車両20を自動運転あるいは半自動運転する。
【0024】
図1に示すように、運転支援ECU1は、大きくHMI(Human Machine Interface)部1Bと、演算部1Aとを備えている。HMI部1Bは、入力指示部17と、GUI(Graphic User Interface)制御部18と、音響制御部19とを有している。入力指示部17は、GUI制御部18を介してモニタ装置2aに表示された画像上において、乗員が設定する車両20の到達目標の位置(以下「目標位置」という)を受け付ける。GUI制御部18は、演算部1Aの演算結果を受けて、車両20の周辺の情景の画像や、この画像上に文字や線による運転支援情報を重ね合わせた画像をモニタ装置2aに表示するための制御を行う。また、モニタ装置2aの画面上のタッチパネルの内容を表示するための制御を行う。
【0025】
演算部1Aは、目標設定手段10と、画像処理手段11と、操舵制御手段12と、速度制御手段13と、振動制御手段14と、停止手段15と、解除手段16とを有している。
目標設定手段10は、モニタ装置2aのタッチパネル、入力指示部17を介して乗員から指示された車両20を停止させたい場所を目標位置として設定する。
画像処理手段11は、カメラ3から入力された画像などによる検出結果に基づいて、種々の画像処理を行う。例えば、カメラ3が複数設けられている場合には、その画像を1つに合成する。また、車両20の予想移動軌跡や、車両20の前後方向への車幅の延長線などを算出する。
操舵制御手段12は、操舵角センサ6からの検出結果に基づいて、ステアリング9aの駆動モータやギア(図示せず)を操作して、算出された車両20の予想移動軌跡に沿って車両20が移動するよう制御する。
速度制御手段13は、さらに、速度制御部13aと、停止制御部13bと、目標速度変更部13cとを有する。なお、速度制御部13aによる制御、停止制御部13bによる制御、目標速度変更部13cは、特許請求の範囲における速度制御モード、停止制御モード、目標速度変更手段に夫々対応する。速度制御部13aは、車両20の移動速度を段階的に複数設定された目標速度のうち、指定された目標速度に一致させる制御を行う。この制御結果は、車両20が備える他の制御装置、アクセル制御ECU31や制動制御ECU32に送られる。運転支援ECU1からの制御結果に基づいて、アクセル制御ECU31は駆動装置を、制動制御ECU32は制動装置を制御する。これにより、車両20の移動速度は指定された目標速度に一致させられる。目標速度変更部13cは、後述するように、アクセルペダルセンサ7やブレーキペダルセンサ8からの検出結果に基づいて、指定された目標速度を他の目標速度に変更する。そして、停止制御部13bは、車両20を目標位置に停止させるため車両20の移動速度を漸次減速させる制御を行う。
振動制御手段14は、車両20が目標位置に接近した場合に車両20を振動させるため、断続的に制動制御を行う。例えば、制動制御ECU32に短い時間間隔でブレーキ指示・ブレーキ解除指示を繰り返し伝達し、制動制御ECU32はこの指示に基づいて制動装置を制御する。その結果、車両20は、短い時間間隔で移動・停止を繰り返し、これにより車両20に振動を生じさせる。
停止手段15は、車両20が目標位置に達したか否かを判定し、目標位置に達していると判定すれば、車両20を自動的に停止させる。例えば、制動制御ECU32に停止指示を伝達し、制動制御ECU32はこの指示に基づいて制動装置を制御する。
解除手段16は、予め設定された運転操作支援の解除条件が満たされたか否かを判定し、解除条件が満たされたと判定すれば、演算部1Aによる関連する演算を中断又は終了させ、運転操作支援を解除する。
なお、運転支援ECU1の各部、各手段は、機能としての区別を示すものであり、それぞれが独立して設けられる必要はない。例えば、運転支援ECU1が実行するソフトウェアプログラムによって、それぞれの機能が実現されるものであってもよい。
【0026】
図1〜図3に示すように、カメラ3は、後方カメラ3R、前方カメラ3Fの2つ備えられている。カメラ3の配置は、これに限定されず、前方、後方の何れか一方だけ備えられるものであってもよいし、前方、後方のそれぞれ左右に備えられてもよい。カメラ3により撮影された画像は、車両周辺の情景として、モニタ装置2aに表示される。また、カメラ3により撮影された画像に基づいて、演算部1Aの画像処理手段11が車両20と目標位置との距離(以下「設定距離」という)を演算する。他の方法として、ソナーやレーザレーダなどの距離センサを備え、車両周囲の物体との距離を測定してもよい。もちろん、演算部1Aにおいて、カメラ3により撮影された画像と、この距離センサの計測結果とを合わせて距離を演算してもよい。
【0027】
速度センサ4は、例えば各車輪に備えられた回転検出センサである。各車輪の回転数を検出することにより、車両20の速度を計測する。あるいは、速度センサ4(回転検出センサ)は回転数だけを検出し、運転支援ECU1がこの回転数から車両20の移動速度を演算してもよい。また、運転支援ECU1は、回転検出センサの回転数から移動距離を求め、車両20と目標位置との残りの距離(=設定距離−移動距離)を求める。
【0028】
ステアリング9aの近傍には、操舵角センサ6が備えられている。この操舵角センサ6の検出結果より、運転支援ECU1は車両20の操舵の状態を把握する。また、シフトレバースイッチ5により、運転支援ECU1は、車両20が前進運転状態であるか、後退運転状態であるかを把握する。そして、運転支援ECU1は、車両20の進行方向や移動軌跡を演算する。
なお、速度センサ4が回転検出センサを用いて構成されている場合、この回転検出センサの回転方向によって、前進運転状態であるか、後退運転状態であるかを検出してもよい。また、回転検出センサが4輪に備えられていれば、それぞれの車輪の回転数の違いにより、運転支援ECU1が操舵角を演算してもよい。
【0029】
また、アクセルペダル21、ブレーキペダル22の近傍には、夫々アクセルペダルセンサ7、ブレーキペダルセンサ8が備えられている。これらのアクセルペダルセンサ7、ブレーキペダセンサ8は、夫々アクセルペダル21、ブレーキペダル22の踏み込みの有無や踏み込み量などを検出する。
【0030】
〔駐車支援への適用例〕
次に、本発明に係る運転支援装置を利用して、駐車場への駐車運転を支援する場合の適用例を説明する。図4に示すように、車両20は、駐車枠E1〜E3を有する駐車場の駐車枠E2へ、直進後退して進入しようとしている。図4は、車両20の上方より見た説明図であり、符号Wは駐車場に描かれた枠線、符号Kは壁面を示している。
【0031】
ここで、駐車枠の前後方向に長さの余裕が無いような場合には、車両20が駐車枠からはみ出すことを防ぐために、出来るだけ、ぎりぎりまで車両20を後退させる必要がある。このため、乗員は、好ましくは、地面に対して垂直、かつ車両20の後バンパー部の後方端部に接する仮想面が、符号P1近傍となるように車両20を後退させる。なお、符号P1(P)は、後述するように、目標位置に相当するものである。
【0032】
図5は、車両20が図4に示す位置にある場合に、車室内に設けられたモニタ装置2aに表示された画面Vを示す説明図である。図5では、理解を容易にするためにカメラ3Rによって撮影された情景のみを示している。画面Vの上方には壁面Kが映し出されている。そして、駐車枠E2のほぼ全景が映しだされ、画面V下方には、車両20の後バンパー部の一部が映っている。図6〜図12は、運転支援の進行に応じて変化するモニタ装置2aが表示する画面、及びスピーカ2bが発する音響を示す説明図である。以下、図6〜図12に基づいて、運転操作支援の手順について説明する。
【0033】
”MODE_REAR_MON”
図6に示す画面V1は、運転操作支援が可能となったことを乗員に知らせる表示である。運転支援ECU1のプログラムの状態(ステータス)は、後退駐車支援可能状態である「MODE_REAR_MON」である。ここで、乗員が、モニタ装置2aのタッチパネルに表示された「駐車支援開始」の表示に触れると、スピーカ2bより、「支援を開始します。」とのメッセージが発せられ、運転操作支援が開始される。つまり、乗員がタッチパネルに触れることによって、運転支援モードの起動スイッチ(mode_sw)が、オン状態となり、運転支援ECU1のプログラムのステータスが遷移する。
【0034】
”MODE_WAIT2”
運転操作支援が開始されると、図7に示すようにモニタ装置2aの画面V2には、「駐車支援中止」の表示が現れる。つまり、現時点において運転操作支援中であることを示し、乗員が運転操作支援を解除したい場合に、この表示に触れることによって運転操作支援を解除できることを示している。すなわち、「駐車支援中止」へのタッチ操作が、運転操作支援の解除条件として予め設定されている。ここで、スピーカ2bより、「目標位置を設定してください。」とのメッセージが発せられ、乗員はタッチパネル上で、図4に示した符号P1に相当する位置に触れる。これにより、車両20の到達すべき目標位置、ここでは車両20の後バンパーの後端部分が到達すべき目標位置が設定され、同時に車両20と目標位置P1との距離(設定距離)が設定される(set_up)。設定を完了すると、「設定を完了しました。」などのメッセージが発せられるようにしてもよい。運転支援ECU1のプログラムのステータスは、支援制御待ちの状態である「MODE_WAIT2」である。このステータスにおいて、運転支援ECU1は、目標位置P1及び設定距離の設定を行い、乗員によりブレーキが解除されて車両20が動き始めることを待つ。
【0035】
”MODE_LOW_SPD”
図8は、目標位置P1が設定され、運転操作の支援が行われている場合に、モニタ装置2aに表示される画面V3を示す説明図である。運転支援ECU1のプログラムは、「MODE_WAIT2」のステータスにおいて、目標位置P1が設定されており(set_up)、ブレーキペダルセンサ7の検出結果などによりブレーキが解除されていることを確認すると、「MODE_LOW_SPD」のステータスへと遷移する。このステータスにおいて、運転支援ECU1(速度制御部13a)は、車両20の移動速度を目標速度に一致させる制御をしつつ、車両20を後進させる。また、種々のガイド線を演算し、モニタ装置2aにカメラ3による撮影画像と合成して表示する。
【0036】
本実施形態において車両20を自動的に後進させるときの目標速度が、図15に示されている。「MODE_LOW_SPD」のステータスは、目標位置Pと車両20との距離L1以上の範囲に対応する。本実施形態の運転支援装置においては、目標速度として、通常の目標速度である「Level0」、それよりも高速の目標速度である「Level+」、低速の目標速度である「Level−」が段階的に設定されている。「MODE_LOW_SPD」のステータスにおいては、これらの目標速度「Level−」、「Level0」又は「Level+」のうち、指定されたいずれかの目標速度に移動速度を一致させる制御が行われる。なお、本実施形態では3段階の目標速度を設定したが、勿論、これ以上の多段階の目標速度を設定してもよい。なお、安全性の観点から車両20の速度には上限が設けられており(図15参照)、移動速度を指定された目標速度に一致させる際にはこの上限を超えることがないように制御が行われる。
【0037】
通常、運転操作支援の開始時には、目標速度は「Level0」に指定されている。目標速度変更部13cは、アクセルペダルセンサ7又はブレーキペダルセンサ8からの検出結果に基づき、指定された目標速度の変更を行う。具体的には、アクセルペダル21を短時間に1回踏むごとに、この目標速度が「Level−」→「Level0」→「Level+」と変更し、ブレーキペダル22を短時間に1回踏むごとに目標速度が「Level+」→「Level0」→「Level−」と変更していくように構成されている。これにより、車両20の周囲に人や他の車両が多い場合には、「Level−」に変更することにより、より安全性の高い駐車支援を行うことができる。しかも、アクセルペダルの操作などの簡単な操作で目標速度の変更をすることができる。なお、目標速度を変更する操作としては、勿論、上述したアクセル操作又はブレーキ操作以外の操作を採用しても良い。
また、車両での移動経路上に段差等があり、段差で車両が停止した場合には、乗員はアクセルペダルを踏むことにより、段差を乗り越えることができる。この際、車両の速度制御が働き、目標速度を超えることはないため、段差の乗り越え時のアクセル操作が容易となる。この場合、車両が自動運転の場合には、目標速度を「Level+」に変更することにより、かかる段差を乗り越えることができる。
【0038】
目標速度は適宜定めればよいが、一例として「Level−」、「Level0」、「Level+」について、夫々時速1km、2km、3km程度とすることができる。また、距離L1としては、例えば1.5mとすることができる。
【0039】
なお、図8に示し、以下に説明するような種々のガイド線(符号Y、G、R)、及び画像を確認し、乗員はブレーキペダル22を踏んで車両20を停止させることができる。例えば、ガイド線の確認により、乗員が自分の所望の位置への駐車運転がなされていないと判断した場合に車両20を停止させて、画面V上の「駐車支援中止」表示へのタッチにより駐車支援を一旦解除し、目標位置の設定からやり直すことができる。また、車両20の進路上に人や動物、物体などが進入してきた場合に、乗員の判断により車両を停止させることができる。このように、運転操作支援に際してはブレーキ操作が優先されている。なお、ブレーキペダル22を踏むことにより車両20を停止して運転操作支援を中断した場合でも、画面V上の「駐車支援中止」表示へのタッチを行わず、ブレーキペダル22を離した場合には、運転操作支援を継続させるように構成している。
【0040】
図8に示すように、画面V3上には、設定された目標位置P1、車両20の車幅延長線G、車両20の予想移動軌跡線Y、注意線Rが撮影画像とともに表示されている。また、指定された目標速度(図8では「Level+」)、車両20の自動運転を実施していることを示す注意Cも表示されている。同時にスピーカ2bは、車両20の速度制御を実施していることを示す注意音を発している。画面V3において、注意線R、車幅延長線G、予想移動軌跡Yのガイド線は視認性を考慮して、注意線Rが赤、車幅延長線Gが緑、予想移動軌跡Yが黄色で示されている。
【0041】
ここで、注意線Rは、車両20の後方約50cm程度の位置を示すガイド線である。例えば、この注意線Rと目標位置P1とが重なると、目標位置P1の約50cm手前まで後進したことになる。車幅延長線Gは、車両20の車幅の延長線である。本実施形態では、図8に示すように駐車枠E2のほぼ中央に車幅延長線Gが描かれている。従って、車両20は、この時点における姿勢のまま後進すれば、駐車枠E2に収まることを示している。予想移動軌跡Yは、移動速度や操舵角に基づいて運転支援ECU1において演算された車両20の移動軌跡を示すものであり、車両20の車幅の後部の左右端がどのように推移するかによって描かれている。
【0042】
図8に示した例では、車幅延長線Gと予想移動軌跡Yとがほぼ重なるように描かれている。図4に示した例では、車両20がほぼ真っ直ぐに後進することによって駐車枠E2に駐車できる。従って、操舵角度はゼロ度であり、予想移動軌跡も真っ直ぐな後進方向となる。このため、予想移動軌跡Yは、ほぼ車幅延長線Gに重なるように描かれる。
一方、図13に示すように車両20が斜めに駐車枠E2に進入する場合には、矢印A2のように移動する。この場合、運転支援ECU1は、矢印A2のように移動できるようにステアリング9aなどを制御する。従って、図14に示すように、予想移動軌跡Yは、車幅延長線Gとは重ならず、目標位置P1の方向へ向かっている。
【0043】
”MODE_DWN_SPD”
車両20が距離L1より目標位置Pに近づくと、「MODE_LOW_SPD」から「MODE_DWN_SPD」のステータスへと遷移する。図9は「MODE_DWN_SPD」のステータスにおける画面V4の説明図である。このステータスにおいて、運転支援ECU1(停止制御部13b)は、目標位置Pに近づくに従って、車両20の移動速度を漸次減速させ、目標位置Pにおいて、つまり車両20と目標位置Pとの距離がゼロとなるときに、速度がゼロとなるように移動速度を制御する。すなわち、停止制御部13bは、目標位置Pにおいて、車両20の移動速度が0となるようにアクセル制御ECU31や制動制御ECU32を制御する。これにより車両20の円滑な停止を行うことができる。なお、このステータスにおいては車両20がまもなく目標位置Pに来ることを乗員が認識できるよう、図9に示すように画像V4に「まもなく停車します。」との表示がなされる。
【0044】
”MODE_SHAKING”
本実施形態においては、車両20の停止制御部13bによる制御(停止制御モード)終了に伴い運転操作支援の解除を必要としており、具体的には、乗員によるブレーキペダル22の踏み込み操作を運転操作支援の解除条件として予め設定している。また、後述するように、車両Pが停止手段15により目標位置Pで停止させられた場合も、確認のために、乗員によるブレーキペダル22の踏み込み操作が求められ、これにより、運転操作支援が解除される。このように、本実施形態における運転支援装置は、最終的に乗員によるブレーキペダル22の踏み込み操作(解除操作)を必要としている。
そして、このように乗員により解除操作がなされ、確実に運転操作支援を解除することで、乗員の意に反して運転支援操作が解除され、又は継続されるなどの突然の車両の動作を防止することができる。
【0045】
そこで、本実施形態においては、この運転操作支援の解除操作を乗員に確実に実行させるため、車両20が目標位置Pにほぼ到達したときに、かかる操作の実行を乗員に促すための報知手段として、車両20を振動させて乗員に報知する。すなわち、車両20が目標位置Pの近傍である距離L2以内、例えば0.5m以内の距離まで近づいた後は、停止制御部13bによる制御(停止制御モード)を終了し、運転支援ECU1(振動制御手段14)は断続的にブレーキをかける制動制御を行う。すなわち、短い時間間隔で後進と停止を繰り返し、車両20に振動を生じさせる。このときプログラムのステータスは、「MODE_DWN_SPD」から「MODE_SHAKING」へと遷移する。すなわち、「MODE_DWN_SPD」のステータスは距離L2以上、距離L1以下の範囲に対応し、「MODE_SHAKING」のステータスは距離L2以下の範囲に対応する。
このとき、画面V5には、「停車位置目前です。支援を終了してください。」との表示がなされ、スピーカ2bは車両20の速度制御・停止制御を実施している場合とは異なる注意音を発する。または、かかるメッセージを流しても良い。乗員は車両20の振動などにより車両20がほぼ目標位置Pにあること、そして運転操作支援を解除する必要性があることを認識し、ブレーキペダル22の踏み込み操作をすることにより、運転操作支援を解除するとともに車両20を停止させる。この場合、プログラムのステータスは「MODE_DWN_SPD」から「MODE_END」に遷移する。
【0046】
”MODE_STOPPING”
上述した車両20の振動などによる報知に対して、運転操作支援を解除する操作を乗員が行わず、車両20が目標位置Pに向けて後退と停止を繰り返し、その結果、車両20が目標位置Pに達したと停止手段14が判定すると、制動制御ECU32を介して車両20が停止させられる。運転支援ECU1のプログラムのステータスは、「MODE_DWN_SPD」から、「MODE_STOPPING」に遷移する。このとき、車両20は目標位置Pに達しているため、図11に示すようにモニタ装置2aの画面V6ほぼ全面に壁面Kが表示される。また、乗員による解除操作を促すため、「停車しました。支援を終了して下さい。」というメッセージが画面V6に表示され、スピーカ2bからは同様のメッセージが流される。かかる報知により乗員は運転操作支援の解除操作の必要性を認識し、予め設定された解除条件であるブレーキペダル22の踏み込み操作を行うことにより、運転操作支援を解除する。なお、停車時における解除操作として、シフトレバー9bをニュートラル(shift = N)やパーキング(shift = P)にする操作を予め設定しておいても良い。
【0047】
本実施形態では役割(機能)の分担をより明確にするために、速度制御手段13と、振動制御手段14と、停止手段15とを別々の手段として説明した。しかし。上述したように速度制御手段13は、制動制御ECU32も制御の対象とするので、例えば速度制御手段13に振動制御手段14と停止手段15の機能を含ませても、もちろん構わない。
【0048】
”MODE_END”
上述したように、車両20の振動や音声ガイドなどにより運転操作支援の解除操作が促された場合には、乗員により確認のためにブレーキペダル22の踏み込み操作がなされ、解除手段16により運転操作支援が解除される。これにより、運転支援ECU1のプログラムのステータスは、「MODE_END」に遷移する。車両20は目標位置Pにほぼ達して停止するため、図11と同様、図12に示すようにモニタ装置2aの画面V7はほぼ全面に壁面Kを表示している。運転支援ECU1は、「MODE_END」に遷移した後、所定時間(例えば1秒)を経過すると、スピーカ2bより「支援を終了します」とメッセージを流し、運転操作支援を解除する。
なお、「MODE_WAIT2」のステータスにおいて、目標位置Pが設定されずに(set_up = not completed)、ブレーキが解除されたことをブレーキペダルセンサ8の検出結果などにより確認した場合も、「MODE_END」のステータスへと遷移する。また、速度センサ4の検出結果(speed)から車両20が動き始めたことを検出してもよい。
【0049】
なお、運転操作支援中においてアクセル操作を許容しているため、アクセル操作中に「運転支援中止」表示に誤って触れて運転操作支援が解除されると、車両20が急発進して周囲の人や他の車両などに衝突することが起こり得る。そのため、本実施形態においては、かかる危険性を回避するため、アクセルペダル21を踏み続けている状態では、「運転支援中止」表示へ触れることで予め設定した解除条件が満たされた場合でも、運転操作支援を解除しないように構成している。すなわち、アクセルペダルセンサ7がアクセルペダル21の踏み込みを検出し、運転支援ECU1に検出信号が送られている間は、解除手段16は解除条件が満たされたと判定した場合でも、運転操作支援を解除しない構成となっている。
【0050】
〔別実施形態1〕
上述した実施形態においては、予め設定された運転操作支援の解除条件を、速度制御・停止制御中における画面Vに表示された「駐車支援中止」表示へのタッチ、車両20の振動制御中及び停止時におけるブレーキペダル22の踏み込み操作としたが、勿論、これ以外の解除条件を設定しても良い。例えば、上述したように、停止時においてシフトレバー9bをパーキング(shift = P )やニュートラル(shift = N)に入れる操作のほか、速度制御中などにおける所定のアクセル操作(アクセルペダル21を短時間に2度踏む操作など)などを解除条件として設定しても良い。また、ステアリング9aを乗員が所定量以上操作したことを操舵角センサ6が検出し、この検出結果に基づき運転操作支援を解除してもよい。なお、これらの条件を設定した場合においても、アクセルペダルを踏み続けている状態では、解除条件が満たされたとしても、運転操作支援を解除しない構成としておく。
【0051】
〔別実施形態2〕
上述した実施形態においては、車両が目標位置Pに達する前に振動制御手段14による振動制御を開始したが、目標位置Pに達した時に振動制御を開始して車両を振動させることにより、運転操作支援の解除条件であるブレーキ操作の実行を乗員に促すように構成しても良い。なお、この場合、「MODE_DWN_SPD」のステータスは、図15において距離0以上、距離L1以下の範囲に対応することになる。この場合、車両が目標位置Pに停止した後の振動制御になるので、目標位置Pから車両が移動することができる距離(駐車エリア等)が必要となる。
【0052】
〔別実施形態3〕
上述した実施形態においては、車両の振動を車両の後退と停止を繰り返すことで実現したが、勿論、これに限定されるわけではない。例えば、駐車エリアが小さく、後退により車両後部が壁面などに衝突する虞のある場合は、後退と停止、前進と停止を交互に繰り返して、車両に振動を与えることができる。
【0053】
〔運転支援ECU1のプログラムのステータス遷移の例〕
以下、図16〜18の状態遷移図に基づいて、上述した運転操作支援における運転支援ECU1のプログラムのステータス遷移について説明する。図16は、上記にて図4〜図14に基づいて説明したものと同様、後退運転による駐車の際の状態遷移図である。
通常運転中において、運転支援ECU1のプログラムのステータスは、MODE_NON(#0)である。このステータスにおいて、シフトレバースイッチ5がリバースを検出した場合(shift = R)、MODE_REAR_MON(#12)に遷移する。このステータスにおいて、例えば、図6に示すように車両20の後方の情景がモニタ装置2aに表示される。ここで、シフトレバースイッチ5がリバース以外を検出した場合、MODE_NONのステータスに戻る。
【0054】
MODE_REAR_MONのステータスにおいて、図6に基づいて説明したように駐車支援開始の指示を受けると(mode_sw = on)、MODE_WAIT2のステータス(#22)に遷移する。なお、より安全を期するために、ブレーキペダル22が踏まれていること(brake = on)、車両20の速度がゼロであること(speed = 0)なども遷移条件とするとよい。図7に基づいて説明したように、運転支援ECU1は、このステータスにおいて目標位置Pを設定し、車両20が動き出すまで待機する。ここで、「駐車支援中止」が乗員により指示されると、再びMODE_REAR_MONのステータスへ戻る。
【0055】
MODE_WAIT2のステータスにおいて、目標位置Pが設定(set_up = completed)された後、ブレーキペダル22が解除され、車両20が動き始めると、ステータスは、MODE_LOW_SPD(#3)に遷移する。図8に基づいて説明したように、運転支援ECU1(速度制御部13a)は車両20の移動速度を指定された目標速度に一致させながら、自動的に走行させる。なお、上述したように、このステータスにおいては、アクセルペダル21又はブレーキペダル22の操作に基づき、目標速度変更部13cが目標速度を変更する。
【0056】
車両20が所定位置よりも目標位置Pに近づくと、運転支援ECU1(停止制御部13b)により、車両20が漸次減速させられる。このとき、ステータスは、MODE_DWN_SPD(#4)に遷移する。さらに目標位置Pに近い別の所定位置よりも目標位置Pに接近すると、運転支援ECU1(振動制御手段14)により車両20が振動させられ、ステータスは、MODE_SHAKING(#5)に遷移する。なお、MODE_SHAKINGにおいて、乗員によりブレーキペダル22が操作され(brake = on)ると、ステータスは、MODE_END(#7)に遷移する。そして、かかる操作がなされずに車両20が目標位置Pに達すると、運転支援ECU1(停止手段14)により制動制御ECU32が制御され、車両20は停止させられる。この停止により、ステータスは、MODE_STOPPING(#6)に遷移する。
【0057】
MODE_STOPPINGにおいて、乗員により確認のためにブレーキペダル22が操作され(brake = on)、又はシフトレバー9bがニュートラル(shift = N)やパーキング(shift = P)に操作されると、ステータスは、MODE_END(#7)に遷移する。運転支援ECU1は、タイマ(図示せず)を備えており、ステータスがMODE_ENDに遷移してからの時間(pass_t)を計測する。運転支援ECU1は、ステータスがMODE_ENDに遷移した後、例えば約1秒が経過すると(pass_t > 1sec)、運転操作支援を解除し、通常走行状態のステータスMODE_NON(#0)に遷移する。
なお、MODE_WAIT2のステータスにおいて、目標位置Pが設定されずに(set_up= not completed)、車両20が動き始めた(brake = off)場合も、MODE_END(#)のステータスへと遷移する。
【0058】
図17は、前進運転による駐車の際の状態遷移図である。基本的な状態遷移は後退運転の場合と同様である。後退運転の場合は、一般的に前進運転の状態より、一旦停止したのち、シフトレバー9bをリバースに切り替えて後退する。しかし、前進の場合には必ずしもこのようなシフトレバー9bの操作が発生するとは限らない。このため、MODE_NON(#0)からの遷移条件に、車両20の速度が加味されている。例えば、シフトレバースイッチ5が前進を示し(shift = D)、車両10の速度が時速6km以下の場合に、ステータスが、MODE_FRONT_MON(#11)に遷移する。このステータスにおいて、モニタ装置2aに映し出される情景が車両20の前方であることを除けば、図6に示したものと同様の画面Vがモニタ装置2aに表示される。このステータスにおいて、車両20の速度が例えば時速10km以上となると、再びMODE_NONに戻る。
【0059】
MODE_FRONT_NONのステータスにおいて、後退運転時と同様に乗員により運転操作支援が指示されると、ステータスは、MODE_WAIT1(#21)に遷移する。そして、このステータスにおいて、後退運転時と同様の条件によって、次のステータスであるMODE_LOW_SPD(#3)に遷移する。以降、MODE_DWN_SPD(#4)、MODE_SHAKING(#5)、MODE_STOPPING(#6)、MODE_END(#7)、MODE_NON(#0)の各ステータスへの遷移についても同様である。なお、MODE_WAIT1(#21)からMODE_ENDへの遷移についても同様である。
【0060】
図18は、図16及び図17に基づいて説明した前進運転と後退運転とを統合した場合の状態遷移図である。理解を容易にするために、図16及び図17を利用して前進運転の場合と後退運転の場合とを別々に説明した。しかし、通常は、この図18に示した状態遷移図に基づいて、運転支援ECU1のプログラムが実行されている。つまり、実際の制御においては、前進運転と後退運転とが、相互に遷移可能に制御される。例えば、MODE_FRONT_MON(#11)に遷移していても、シフトレバー9bがリバースに操作されると、MODE_REAR_MON(#12)に移行する。ここで、再び、シフトレバー9bがリバース以外に操作されると、MODE_NON(#0)に戻り、シフトレバー9bが前進に操作されていれば、MODE_FRONT_MON(#11)に遷移する。また、MODE_WAIT1(#21)や、MODE_WAIT2(#22)に遷移した後であっても、シフトレバー9bの操作によっては、互いに前進及び後進を遷移可能である。なお、シフトレバー9bが、いわゆるロー、トップ、オーバートップなどの何れであったとしても、シフトレバースイッチ5は前進(shift = D)として検出してよい。
【0061】
また、図16〜図18において、特に図示してはいないが、各ステータスにおいて、運転操作支援を解除する条件が満たされた場合には、MODE_ENDを通してMODE_NONに戻るように制御されている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る運転支援装置の構成を模式的に示すブロック図
【図2】本発明に係る運転支援装置を搭載する車両の一例を示す斜視図(後方視)
【図3】本発明に係る運転支援装置を搭載する車両の一例を示す斜視図(前方視)
【図4】本発明に係る運転支援装置により駐車運転を支援する場合の適用例を示す説明図
【図5】車両が図4に示す位置にある場合に、モニタ装置に表示される画面を示す説明図
【図6】運転支援の進行に応じて変化する表示画面及びスピーカが発する音響を示す説明図(1)
【図7】運転支援の進行に応じて変化する表示画面及びスピーカが発する音響を示す説明図(2)
【図8】運転支援の進行に応じて変化する表示画面及びスピーカが発する音響を示す説明図(3)
【図9】運転支援の進行に応じて変化する表示画面及びスピーカが発する音響を示す説明図(4)
【図10】運転支援の進行に応じて変化する表示画面及びスピーカが発する音響を示す説明図(5)
【図11】運転支援の進行に応じて変化する表示画面及びスピーカが発する音響を示す説明図(6)
【図12】運転支援の進行に応じて変化する表示画面及びスピーカが発する音響を示す説明図(7)
【図13】本発明に係る運転支援装置により駐車運転を支援する場合の他の適用例を示す説明図
【図14】図13の場合に表示手段に表示される表示画面の一例を示す説明図
【図15】車両と目標位置との距離と、目標速度との関係の一例を示すグラフ
【図16】後退運転時の運転支援の一例を示す状態遷移図
【図17】前進運転時の運転支援の一例を示す状態遷移図
【図18】前進及び後退運転時の運転支援の一例を示す状態遷移図
【符号の説明】
【0063】
1 運転支援ECU
13 速度制御手段
13a 速度制御部
13b 停止制御部
13c 目標速度変更部
14 振動制御手段
15 停止手段
16 解除手段
20 車両
31 アクセル制御ECU
32 制動制御ECU
P、P1 目標位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を目標位置まで自動的に速度制御しながら移動させる運転操作支援を実行するとともに前記運転操作支援を予め設定した条件に基づき解除する運転支援装置において、
前記車両の移動速度を自動制御する速度制御手段と、
前記車両が前記目標位置に達したときに前記車両を自動停止させる停止手段とを備え、
前記速度制御手段は、前記車両の移動速度を目標速度に一致させる速度制御モードと、
前記目標位置に停止させるため前記車両の移動速度を漸次減速させる停止制御モードとを有するとともに、
前記目標速度が段階的に複数設定され、前記車両の乗員の操作に基づき当該目標速度を変更する目標速度変更手段を備えた運転支援装置。
【請求項2】
前記車両の乗員の操作がアクセル操作であり、当該アクセル操作に基づき前記目標速度変更手段が目標速度を上昇させる請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記車両の乗員の操作がブレーキ操作であり、当該ブレーキ操作に基づき前記目標速度変更手段が目標速度を下降させる請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記運転操作支援を解除する条件が、前記車両の乗員による所定操作であり、
前記停止制御モード終了時に前記所定操作の実行を前記車両の乗員に促す報知手段を備えた請求項1から3のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記報知手段が前記車両を振動させる振動制御手段である請求項4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記運転操作支援を解除する条件が、所定のアクセル操作である請求項1から5のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記運転操作支援の実行中にアクセルを踏み続けている状態では、前記運転操作支援を解除する条件が満たされた場合でも、前記運転操作支援が解除されない請求項1から6のいずれか一項に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−118804(P2007−118804A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314520(P2005−314520)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】