説明

運転支援装置

【課題】死角となる領域に存在する障害物と車体との接触を確実に回避することが可能な運転支援装置を提供する。
【解決手段】運転支援装置1は、物体位置センサ10と死角領域設定部21障害物特定部24と障害物位置判定部25と報知部26とを備える。物体位置センサ10と障害物特定部24とは、車両の周囲の所定の範囲の障害物を検知する。死角領域設定部21は、所定の範囲のうち車両の運転席に着座した運転者にとって車両の死角となる領域を死角領域として設定する。障害物位置判定部25は、死角領域設定部21が設定した死角領域に障害物特定部が特定した障害物が含まれるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体と障害物との衝突を避けるための運転支援をする運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005−145301号公報には、車両の運転支援装置が記載されている。車両の運転支援装置は、障害物までの距離を測定する測距センサと、測距センサが障害物を検知したときに運転者に対して障害物までの距離を表示する表示器と、測距センサが障害物を検知したときに障害物までの距離が近くなるほど運転者に対して大きいブザー音を鳴動するブザーと、を備える。
【0003】
特開2007−336466号公報には、車両用周辺情報提示装置が記載されている。車両用周辺情報提示装置は、自車両周辺に対する運転者の有効視野範囲を周辺有効視野範囲として設定する周辺有効視野範囲設定部と、自車両周辺の画像を撮像する周辺画像撮像部と、周辺有効視野範囲設定手段により設定された周辺有効視野範囲を周辺画像撮像手段により撮像される画像空間に座標変換する領域変換部と、周辺画像撮像手段により撮像された画像範囲のうち、周辺有効視野範囲設定手段により設定された周辺有効視野範囲に対応する画像範囲の画質を(解像度を落としたり、色調を変えたり、明度を低くしたり、網掛け処理を施したりすることにより)変化させた後に画像情報を出力する画質変換部と、自車両の車室内に設けられ、画質変換手段から出力された画像情報を運転者に提示する表示部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−145301号公報
【特許文献2】特開2007−336466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2005−145301号公報の車両の運転支援装置では、例えば、車両の周囲に車両からの距離が略同じで高さが異なる2つの障害物が存在し、高さの低い一方の障害物が運転席に着座した運転者から車両の死角となる領域に完全に含まれ、他方の障害物が運転席に着座した運転者から視認可能な高さのときに、一方の障害物が測距センサによって検知されると、車両から一方の障害物までの距離が表示器の表示やブザー音の大きさによって運転者に報知される。
【0006】
しかし、運転席に着座した運転者は、他方の障害物のみを視認可能であるため、一方の障害物の存在に気付かず、一方の障害物を回避することなく車体と一方の障害物とを接触させてしまうおそれがある。
【0007】
また、上記特開2007−336466号公報の車両用周辺情報提示装置では、周辺画像撮像手段により撮像された画像範囲のうち周辺有効視野範囲以外は、運転者から車両の死角となる範囲であり、画質が変化処理された有効視野範囲よりも明確な画質で表示部に表示される。しかし、運転者は、表示部を視認して、表示部に表示された画像情報のうち、画質が変化処理されていない範囲に障害物があるか否かを、自身で判断しなければならない。このため、運転者から車両の死角となる領域に存在する障害物が表示部に表示されていても、障害物に気付かずに車体と障害物とを接触させてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、死角となる領域に存在する障害物と車体との接触を確実に回避することが可能な運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明の運転支援装置は、障害物検知手段と死角領域設定手段と障害物位置判定手段とを備える。
【0010】
障害物検知手段は、車両の周囲の所定の範囲の障害物を検知する。死角領域設定手段は、所定の範囲のうち車両の運転席に着座した運転者にとって車両の死角となる領域を死角領域として設定する。障害物位置判定手段は、死角領域設定手段が設定した死角領域に障害物検知手段が検知した障害物が含まれるか否かを判定する。
【0011】
所定の範囲のうち死角領域を除く領域は、運転席に着座した運転者から視認可能な領域(以下視認可能領域という)である。
【0012】
所定の範囲において死角領域に含まれる障害物は、運転席に着座した運転者からの見え方の違いによって2つの状態に分かれる。その一方は、死角領域に完全に含まれて運転席に着座した運転者が全く視認できない状態であり、その他方は、死角領域と視認可能領域の双方にそれぞれ部分的に含まれ、運転席に着座した運転者が部分的に視認可能な状態である。また、所定の範囲の障害物のうち上記2つの状態以外の障害物は、死角領域に含まれずに視認可能領域に完全に含まれ、運転席に着座した運転者が全体を視認可能な状態である。
【0013】
障害物位置判定手段は、死角領域に含まれる障害物のうち、死角領域に完全に含まれる障害物と死角領域に部分的に含まれる障害物とを区別せずに、ともに死角領域に含まれる障害物として判定してもよく、死角領域に完全に含まれる障害物のみを死角領域に含まれる障害物として判定してもよい。
【0014】
運転支援装置は、障害物位置判定手段が死角領域に障害物を含むと判定したときに、車両を制動させる制動制御手段を備えてもよい。制動制御手段は、例えば、障害物が死角領域に含まれると判定されたときに、ブレーキを強制的に作動させてもよい。係る構成では、運転者が死角領域の障害物に気付かない場合や障害物に気付くまでに時間を要した場合であっても、車体と障害物との接触を確実に回避することができる。
【0015】
また、運転支援装置は、障害物位置判定手段が死角領域に障害物を含むと判定したときに、死角領域に障害物が含まれていることを示す情報を運転者に報知する報知手段を備えてもよい。
【0016】
報知手段は、音声によって報知するスピーカーや、光によって報知するランプなどであってもよい。
【0017】
上記構成では、死角領域に障害物が含まれると判定されたときに、死角領域に障害物が含まれていることを示す情報が報知されるため、運転者は、係る報知によって、所定の範囲において少なくとも一部が死角領域に含まれている障害物の存在を認識し、所定の範囲の障害物と車体との接触を回避することができる。
【0018】
また、運転者の視界に、死角領域と視認可能領域の双方にそれぞれ部分的に含まれた障害物が存在しない状態で、死角領域に障害物が含まれていることを示す情報が報知されると、運転者は、死角領域に完全に含まれる障害物のみが存在すると判断することができる。この場合、運転者は、例えば、降車して障害物を確認してから走行したり、進路を変更したり、停車させたりすることによって、所定の範囲の障害物と車体との接触を回避することができる。
【0019】
また、障害物位置判定手段は、所定の範囲において、障害物が死角領域に部分的に含まれるか、障害物が死角領域に完全に含まれるかを判定し、報知手段は、障害物が死角領域に部分的に含まれると判定された場合と、障害物が死角領域に完全に含まれると判定された場合とにおいて、死角領域に障害物が含まれていることを示す情報を異なる態様で運転者に報知してもよい。
【0020】
上記構成では、運転席に着座した運転者からの障害物の見え方に対応させて、障害物が死角領域に部分的に含まれると判定された場合と、障害物が死角領域に完全に含まれると判定された場合とにおいて、異なる態様で報知手段が運転者に報知する。これにより、障害物が死角領域に部分的に含まれると判定された場合の態様で報知されたときには、運転者は、運転席に着座した運転者にとって部分的に視認可能な障害物が存在することを認識することができる。この場合、運転者は、部分的に視認可能な障害物の存在を確認して、部分的及び全体が視認可能な障害物を避けて車両を走行させることによって所定の範囲の障害物と車体との接触を回避することができる。また、障害物が死角領域に完全に含まれると判定された場合の態様で報知されたときには、運転者は、運転席に着座した運転者にとって全く視認できない障害物が存在することを認識することができる。
【0021】
また、障害物検知手段は、所定の範囲の複数の障害物を個々に検知してもよく、障害物位置判定手段は、障害物検知手段が複数の障害物を検知した場合、個々の障害物についてそれぞれ死角領域に含まれるか否かを判定してもよく、報知手段は、複数の障害物のうち少なくとも1つの障害物が死角領域に完全に含まれると判定され、且つ、複数の障害物のうち他の少なくとも1つの障害物が死角領域に部分的に含まれると判定された場合に、異なる態様のうち障害物が死角領域に完全に含まれると判定された場合の態様で運転者に報知してもよい。
【0022】
上記構成では、死角領域に完全に含まれる障害物と死角領域に部分的に含まれる障害物とが存在し、運転者の視界に、死角領域と視認可能領域の双方にそれぞれ部分的に含まれた障害物が存在する状態であっても、死角領域に障害物が含まれていることを示す情報が報知されると、運転者は、死角領域に完全に含まれる障害物が必ず存在することを認識することができる。
【0023】
また、障害物位置判定手段は、所定の範囲において、障害物が死角領域に完全に含まれるか否かを判定し、報知手段は、障害物が死角領域に完全に含まれると判定された場合にのみ、死角領域に障害物が含まれていることを示す情報を運転者に報知してもよい。
【0024】
上記構成では、死角領域に障害物が含まれていることを示す情報が報知されると、運転者は、死角領域に完全に含まれる障害物が必ず存在することを認識することができる。
【0025】
なお、障害物位置判定手段は、視認可能領域に障害物が完全に含まれるか否かを判定してもよく、障害物が視認可能領域に完全に含まれると判定された場合に、報知手段は、障害物が視認可能領域に完全に含まれていることを示す情報を運転者に報知してもよい。これにより、運転者は、所定の範囲に含まれる障害物を確実に認識することができるとともに、報知の対象の障害物が死角領域に含まれるか視認可能領域に完全に含まれるかを的確に認識することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、死角となる領域に存在する障害物と車体との接触を確実に回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0028】
図1は本実施形態に係る運転支援装置を示すブロック構成図であり、図2は図1の運転支援装置を備えた車両を示す概略図であり、図3は図1の運転支援装置が検知する所定の範囲の障害物の例を示す側視図であり、図4は図3の障害物を運転席に着座した運転者が矢印IV方向で視認した状態を示す模式図であり、図5は図1の運転支援装置が実行する運転支援処理を示すフローチャートである。
【0029】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る運転支援装置1は、物体位置センサ10とコントローラ20とスピーカ30とを備え、車両2に設けられる。コントローラ20は、死角領域設定部21と障害物特定部24と障害物位置判定部25と音声記憶部27と報知制御部28と制動制御部29とを有し、運転支援処理を実行する。物体位置センサ10と障害物特定部24とは障害物検知手段を構成し、死角領域設定部21は死角領域設定手段を構成し、障害物位置判定部25は障害物位置判定手段を構成し、報知部26(音声記憶部27、報知制御部28、スピーカ30)は報知手段を構成する。
【0030】
物体位置センサ10は、本実施形態では、ミリ波レーダであり、車両2の車体の後部の左右にそれぞれ設けられ、三次元の座標を特定する情報を検知する。物体位置センサ1は、本実施形態では、三次元の座標を特定する情報として、車両2の周囲の所定の範囲40に存在する物体の物体位置センサ10が設けられた位置からの距離と仰俯角と前後方向を基準にする方位角とを検知し、検知した情報を含む信号を出力する。なお、物体位置センサ10は、本実施形態では、ミリ波レーダであるが、これに限らず、3次元の座標を特定する情報を検知可能なセンサであれば、超音波レーダや、赤外線レーザレーダや、カメラなどのセンサであってもよい。また、本実施形態では、物体位置センサ10としてミリ波レーダを2つ設けたが、これに限らず、1つのセンサを設けてもよく3つ以上のセンサを設けてもよい。また、上記したようなセンサを複数種類組み合わせて設けてもよい。
【0031】
物体位置センサ10が検知する所定の範囲40は、運転席に着座した運転者にとって車両2の死角となる領域(以下死角領域という)41と、運転席に着座した運転者にとって視認可能な領域(以下視認可能領域という)42とに分かれる空間であり、本実施形態では、車両2の後進時の進行方向となる車両2の後方の路面上の空間である。なお、所定の範囲40は、本実施形態では車両2の後方の空間であるが、これに限らない。具体的には、車両2の前進時の進行方向となる車両2の前方の路面上の空間を含む範囲や、車両2の側方の空間を含む範囲であってもよく、車両2の全周の空間であってもよい。
【0032】
コントローラ20は、運転者によってシフトレバー(図示省略)がR(バック)に設定されているときに運転支援処理を実行する。
【0033】
死角領域設定部21は、物体位置センサ10が検知する所定の範囲40を死角領域41と死角領域41以外の視認可能領域42とに設定する。本実施形態では、死角領域設定部21は、死角領域記憶部22と死角領域読出部23とを有する。死角領域記憶部22は、所定の範囲40における死角領域41のうち視認可能領域42との境界面43の三次元の座標を予め記憶する。死角領域読出部23は、死角領域記憶部22が記憶した境界面43の三次元座標を運転支援処理の実行開始時に読み出すことによって、所定の範囲40を死角領域41と視認可能領域42とに設定する。具体的には、運転席に着座した平均的体型の成人男性の視線高さにおける死角領域41のうち視認可能領域42との境界の点について、車両2の前後方向の距離と、車両2中央からの左右方向の距離と、水平な路面からの高さとが予め実験や計算によって複数測定され、係る複数の境界の点を含む境界面43の所定の範囲40における三次元の座標が死角領域記憶部21に記憶され、記憶された境界面43の座標に基づいて所定の範囲40の三次元の座標を死角領域41の三次元の座標と、死角領域41を除く視認可能領域42の三次元の座標とに設定する。境界面43は死角領域41の端面である。死角領域41は、本実施形態では、運転席に着座した運転者にとって車両2の死角となる領域であり、車両2に備えられたミラーを使用しても運転者から視認できない領域である。なお、本実施形態では、平均的体型の成人男性の視線高さで設定した死角領域41のみを死角領域設定部21が記憶するが、これに限らず、例えば、複数の身長に応じた異なる視線高さで設定された死角領域41を予め複数記憶し、運転者が運転開始時に自身の身長に応じた死角領域41の設定を複数の中から選択する構成であってもよい。また、死角領域設定部21は、単に死角領域41を記憶する構成ではなく、例えば、運転者の眼球の位置を検知し、検知した眼球の位置に基づいて死角領域41を設定する構成であってもよい。具体的には、運転席に運転者が着座した状態で、座席の位置やミラーの角度などに基づいて、運転者の眼球の位置を判定する判定部と、判定した眼球の位置に基づいて、運転席に着座した運転者の死角領域41を設定する設定部とを備えた構成であってもよい。
【0034】
障害物特定部24は、運転支援処理において、物体位置センサ10が設けられた位置からの距離と仰俯角と前後方向を基準にする方位角との情報を含む信号を物体位置センサ10から読み込み、読み込んだ情報を、所定の範囲40の車両2の前後方向の距離と車両2中央からの左右方向の距離と水平な路面からの高さの三次元の座標に変換する。次に、障害物特定部24は、所定の範囲40において障害物が存在するか否かを判定し、障害物が存在すると判定した場合はその障害物について、車両2の前後方向の距離と車両2中央からの左右方向の距離と水平な路面からの高さの三次元の座標を特定する。本実施形態では、高さが10cm以上の物体を障害物として判定する。また、障害物特定部24は、本実施形態では、所定の範囲40に複数の障害物が存在する場合、複数の障害物について個々に座標を特定する。具体的には、左右方向又は上下方向に離間して存在する障害物を異なる障害物として検知する。
【0035】
障害物位置判定部25は、運転支援処理において、物体位置センサ10が検知する所定の範囲40において、死角領域41に障害物が含まれるか否かを判定する。具体的には、障害物特定部24が特定した個々の障害物の座標について、それぞれ死角領域設定部21が設定する死角領域41の座標に含まれるか否かを判定する。
【0036】
ここで、所定の範囲40において死角領域41に含まれる障害物は、運転席に着座した運転者からの見え方の違いによって2つの状態に分かれる。その一方は、図2に50で示すように、死角領域41に完全に含まれて運転席に着座した運転者が全く視認できない状態であり、その他方は、図2に51で示すように、死角領域41と視認可能領域の双方にそれぞれ部分的に含まれ、運転席に着座した運転者が部分的に視認可能な状態である。障害物位置判定部25は、本実施形態では、死角領域41に含まれる障害物のうち、死角領域41に完全に含まれる障害物と死角領域41に部分的に含まれる障害物とを区別せずに、ともに死角領域41に含まれる障害物として判定する。なお、所定の範囲40の障害物のうち上記2つの状態以外の障害物は、死角領域41に含まれずに視認可能領域42に完全に含まれ、運転席に着座した運転者が全体を視認可能な状態である。
【0037】
また、障害物位置判定部25は、本実施形態では、所定の範囲40において死角領域41に障害物が含まれると判定した場合、さらに、死角領域41に含まれる障害物が死角領域41に完全に含まれるか、死角領域41と視認可能領域42との双方にそれぞれ部分的に含まれるかを判定し、死角領域41に含まれる障害物のうち、少なくとも1つが死角領域41に完全に含まれるか否かを判定する。すなわち、死角領域41に含まれると判定した個々の障害物の座標について、少なくとも1つが死角領域41の座標に完全に含まれるか否かを判定する。係る判定により、障害物位置判定部25は、少なくとも1つの障害物が死角領域41に完全に含まれると判定するか、又は、障害物が死角領域41に含まれるが死角領域41に完全に含まれる障害物は存在しないと判定する。このように、本発明では、死角領域41のみで障害物を検知するのではなく、死角領域41と視認可能領域42とを含む所定の範囲40において障害物の位置を判定するため、死角領域41に部分的に含まれる障害物の存在や、死角領域41に完全に含まれる障害物の存在を適確に判定することができる。
【0038】
図3及び図4に物体位置センサ10が検知する所定の範囲40における障害物位置判定部25が判定する障害物の例を示す。図3は車両2後方の側視図であり、図4は図3の障害物を運転席に着座した運転者が矢印IV方向で視認した状態の模式図である。図3及び図4において、障害物52及び障害物53は、運転者にとって車両2の死角に存在するため視認することができない障害物であり、障害物位置判定部25が死角領域41に完全に含まれると判定する。また、障害物54及び障害物55は、運転者にとって部分的に車両2の死角に存在するため部分的に視認することができる障害物であり、障害物位置判定部25が死角領域41と視認可能領域42の双方にそれぞれ部分的に含まれると判定する。また、障害物56及び障害物57は、運転者にとって全体を視認できる障害物であり、障害物位置判定部25が所定の範囲40に存在し、死角領域41に含まれない(視認可能領域42に完全に含まれる)と判定する。このように、障害物位置判定部25は、所定の範囲40において、障害物が死角領域41に完全に含まれるか、死角領域41と視認可能領域42の双方にそれぞれ部分的に含まれるかを判定する。すなわち、図4に示すように所定の範囲40の車幅方向外側の範囲に部分的に含まれる障害物53と障害物55と障害物57とは、検知される所定の範囲40に存在する部分のうち、全体が死角領域41に含まれるか、部分的に死角領域41に含まれるかが判定される。
【0039】
報知部26は、障害物位置判定部25が死角領域41に障害物を含むと判定したときに、死角領域41に障害物が含まれていることを示す情報を運転者に報知する。報知部26は、本実施形態では、スピーカ30と音声記憶部27と報知制御部28とを有し、音声によって報知する。
【0040】
スピーカ30は、車内に設けられる。音声記憶部27には、少なくとも1つの障害物が死角領域41に完全に含まれると判定された場合と、障害物が死角領域41に含まれるが完全に死角領域41に含まれる障害物は存在しないと判定された場合とにそれぞれ再生される警告音及びアナウンスが記憶される。
【0041】
報知制御部28は、少なくとも1つの障害物が死角領域41に完全に含まれると判定された場合、障害物が死角領域41に完全に含まれることを示す音声を音声記憶部27より読み出してスピーカ30より再生して運転者に報知し、障害物が死角領域41に含まれるが死角領域41に完全に含まれる障害物は存在しないと判定された場合、障害物が死角領域41に部分的に含まれることを示す音声を音声記憶部27より読み出してスピーカ30より再生して運転者に報知する。本実施形態では、それぞれの場合にまず警告音が再生され、警告音に続いてアナウンスが再生される。アナウンスとして、例えば「死角に完全に隠れた障害物が存在します」や、「死角に部分的に隠れた障害物が存在します」などの内容が記憶されて再生される。なお、記憶され報知する音声の態様はこれらに限らず、例えば警告音のみであってもよく、具体的な障害物の回避のための対応方法をアナウンスによって報知してもよい。また、少なくとも1つの障害物が死角領域41に完全に含まれると判定された場合と、障害物が死角領域41に含まれるが完全に死角領域41に含まれる障害物は存在しないと判定された場合とに応じて、異なる音声を報知する構成に限らず、同じ音声を、少なくとも1つの障害物が死角領域41に完全に含まれると判定された場合には比較的大きい音量で報知し、障害物が死角領域41に含まれるが完全に死角領域41に含まれる障害物は存在しないと判定された場合に比較的小さい音量で報知する構成であってもよい。このように、本実施形態では、死角領域41に障害物が含まれることを音声によって報知するため、進行方向を視認しながら運転している運転者に対して障害物の存在を確実に認識させることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、報知部26の報知の態様は、死角領域41に含まれる障害物の個数には対応しないが、これに限らず、複数の障害物が死角領域41に含まれるときに、複数の障害物が死角領域41に含まれることを示す情報を運転者に報知してもよい。例えば、具体的な言葉によって、複数の障害物が存在することを報知したり、障害物の個数に応じた回数の音声を報知してもよい。
【0043】
また、報知部26は、死角領域41に障害物が含まれると判定された場合、障害物までの距離に応じて報知態様を変更してもよい。具体的には、障害物の車両2からの距離が短くなるのに応じて、音量を増大させてもよい。
【0044】
また、報知部26は、死角領域41に障害物が含まれると判定された場合、障害物が存在する方向から音声によって報知してもよい。具体的には、スピーカ30は、運転席の周りに複数配置され、報知制御部28は、報知する1つ又は複数のスピーカ30の選択と報知する音量等の設定とによって、障害物が存在する方向に音像を定位させて報知する。
【0045】
また、報知部26は、音声による報知に限らず、例えば、ランプによって運転者に対して報知してもよい。ランプは、例えば、車両2のインストルメントパネル(図示省略)に設けられる。具体的には、車両2の平面図が描かれ、その周囲が複数区画されてそれぞれにLEDが配置され、区画された領域のどの領域に障害物があるかをLEDの点灯によって報知する。報知部26は、ランプによる報知を、音声による報知に代えて実行してもよく、音声による報知とともに実行してもよい。
【0046】
制動制御部29は、障害物位置判定部25が死角領域41に障害物を含むと判定したときに、車両2を制動させる。制動制御部29は、具体的には、障害物が死角領域41に含まれると判定され、死角領域41に含まれる障害物のうち、車両2に最も近い障害物の車両2からの距離が所定距離以下のときに、ブレーキ(図示省略)を強制的に作動させる。なお、制動制御部29は、ブレーキの作動に限らず、例えば、舵角を強制的に設定してもよい。
【0047】
次に図5のフローチャートに沿って、コントローラ20が実行する報知による運転支援処理を説明する。
【0048】
本処理は、シフトレバーがRに設定されているときに、所定時間毎(例えば100msec毎)に実行される。
【0049】
まず、ステップS1では、障害物特定部24が、物体位置センサ10から入力する信号を読み込み、読み込んだ情報を所定の範囲40の三次元の座標に変換する。次に、ステップS2では、障害物特定部24が、所定の範囲40に障害物が存在するか否かを判定し、障害物が存在しないと判定した場合は本処理を終了し、障害物が存在すると判定した場合はステップS3に移行して、存在する1又は複数の障害物の所定の範囲40における三次元の座標を特定する。
【0050】
次に、ステップS4では、障害物位置判定部25が、ステップS3で特定された1又は複数の障害物の座標と死角領域設定部21に設定された死角領域41の座標とに基づいて、死角領域41に含まれる障害物が存在するか否かを判定し、死角領域41に含まれる障害物が存在しないと判定した場合は本処理を終了し、死角領域41に含まれる障害物が存在すると判定した場合はステップS5へ移行する。
【0051】
次に、ステップS5では、死角領域41に含まれる障害物のうち、車両2に最も近い障害物の車両2からの距離が所定距離以下であるか否かを判定し、所定距離以下である場合は、ステップS6へ移行して制動制御部29がブレーキを強制的に作動させる。
【0052】
また、ステップS5で車両2に最も近い障害物の車両2からの距離が所定距離を超えていると判定された場合は、ステップS7へ移行する。ステップS7では、障害物位置判定部25が、ステップS4で死角領域41に含まれると判定された障害物の座標と死角領域41の座標とに基づいて、死角領域41に含まれる障害物のうち、うち少なくとも1つの障害物が死角領域41に完全に含まれるか否かを判定する。
【0053】
ステップS7で少なくとも1つの障害物が死角領域41に完全に含まれると判定された場合、ステップS8へ移行して、報知制御部28が障害物が死角領域41に完全に含まれることを示す音声を音声記憶部27より読み出してスピーカ30より再生して運転者に報知して本処理を終了する。また、ステップS7で障害物が死角領域41に含まれるが死角領域41に完全に含まれる障害物は存在しないと判定された場合、ステップS9へ移行して、報知制御部28が障害物が死角領域41に部分的に含まれることを示す音声を音声記憶部27より読み出してスピーカ30より再生して運転者に報知して本処理を終了する。
【0054】
次に、本実施形態の運転支援装置1の変形例を示す。例えば、障害物特定部24が複数の障害物の座標を特定する構成において、障害物位置判定部25は、車両2からの距離が最も近い1つの障害物のみについて死角領域41に含まれるか否か判定してもよい。係る構成により、車両2の進行方向で車両2からの距離が最も近く、最も衝突の可能性が高い障害物について、死角領域41に部分的に含まれるか、死角領域41に完全に含まれるかを判定してもよい。また、この構成において、報知制御部28は、障害物が死角領域41に完全に含まれると判定された場合、障害物が死角領域41に完全に含まれることを示す音声を音声記憶部27より読み出してスピーカ30より再生して運転者に報知し、障害物が死角領域41に部分的に含まれると判定された場合、障害物が死角領域41に部分的に含まれることを示す音声を音声記憶部27より読み出してスピーカ30より再生して運転者に報知してもよい。係る構成により、運転者は、最も衝突の可能性が高い障害物が死角領域41に完全に含まれるか死角領域41に部分的に含まれるかを認識することができる。
【0055】
また、障害物特定部24が複数の障害物の座標を特定する構成において、障害物位置判定部25は、車両2からの距離が近い順に所定個数の障害物について死角領域41に含まれるか否か判定してもよい。処理を行う障害物の個数を限定することにより、処理を高速化することができる。
【0056】
また、障害物特定部24が複数の障害物の座標を特定する構成において、障害物位置判定部25は、死角領域41に含まれる障害物のうち、死角領域41に完全に含まれる障害物と死角領域41に部分的に含まれる障害物とを最初から区別して、死角領域41に完全に含まれる障害物のみを死角領域41に含まれる障害物として判定してもよい。すなわち、障害物位置判定部25は、障害物特定部24が特定した個々の障害物の座標について、死角領域41の座標に完全に含まれるか否かのみを判定してもよい。また、この構成において、報知部26は、障害物が死角領域41に完全に含まれると判定された場合にのみ、死角領域41に障害物が含まれていることを示す情報を運転者に報知してもよい。係る構成では、死角領域41に障害物が含まれていることを示す情報が報知されると、運転者は、死角領域41に完全に含まれる障害物が必ず存在することを認識することができる。
【0057】
また、障害物特定部24は、所定の範囲に複数存在する障害物をそれぞれ異なる傷害物であるとして特定せずに単に障害物が存在することを検知する構成であってもよく、障害物位置判定部25は、その障害物が死角領域41に含まれるか否かを判定する構成であってもよい。また、この構成において、報知制御部26は、死角領域41に障害物が含まれると判定された場合に、死角領域41に障害物が含まれていることを示す情報を運転者に報知してもよい。係る構成により、複数の障害物を区別する処理が不要になるため、処理が単純化し、処理を高速化することができる。また、さらに、障害物位置判定部25は、死角領域41に障害物が完全に含まれるか否かを判定し、報知制御部28は、死角領域41に障害物が完全に含まれると判定されたときに、死角領域41に障害物が完全に含まれていることを示す情報を運転者に報知してもよい。
【0058】
また、障害物位置判定部25は、上記いずれかの構成において、視認可能領域42に障害物が完全に含まれるか否かを判定し、障害物が視認可能領域42に完全に含まれると判定された場合に、報知部26は、障害物が視認可能領域42に完全に含まれていることを示す情報を運転者に報知する構成であってもよい。係る構成により、運転者は、所定の範囲40に含まれる障害物を確実に認識することができるとともに、報知の対象の障害物が死角領域41に含まれるか視認可能領域42に完全に含まれるかを的確に認識することができる。
【0059】
また、本実施形態では、制動制御部29を報知部26とともに備えるが、これに限らず、制動制御部29を備えずに報知部26のみを備えた構成であってもよく、報知部26を備えずに制動制御部29のみを備えた構成であってもよい。
【0060】
また、死角領域41の視認可能領域42との境界面43は、実際の境界面43よりも死角領域41を予め大きく(例えば視認可能領域42側へ高さ方向に5〜10cm程度高く)設定してもよい。これにより、視認可能領域42に少なくとも一部が存在すると判定されたときに、運転者から確実に視認できる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態では、死角領域41に障害物が含まれると判定されたときに、死角領域41に障害物が含まれていることを示す情報が報知されるため、運転者は、係る報知によって、所定の範囲40において少なくとも一部が死角領域41に含まれている障害物の存在を認識し、所定の範囲40の障害物と車体との接触を回避することができる。
【0062】
また、運転者の視界に、死角領域41と視認可能領域42の双方にそれぞれ部分的に含まれた障害物が存在しない状態で、死角領域41に障害物が含まれていることを示す情報が報知されると、運転者は、死角領域41に完全に含まれる障害物のみが存在すると判断することができる。この場合、運転者は、例えば、降車して障害物を確認してから走行したり、進路を変更したり、停車させたりすることによって、所定の範囲40の障害物と車体との接触を回避することができる。なお、さらに、死角領域41を含む空間を撮像するカメラと、カメラが撮像した映像を運転者に表示するモニタとを備え、死角領域41に障害物が含まれているときにカメラが撮像した映像をモニタに表示してもよい。これにより、運転者は、モニタを視認することによって死角領域41に完全に含まれる障害物を確認することができる。また、さらに、報知部26は、死角領域41に障害物が完全に含まれると判定されたときに、「モニタに死角を含む空間が表示されています」などの内容をアナウンスする構成であってもよい。
【0063】
また、運転席に着座した運転者からの障害物の見え方に対応させて、障害物が死角領域41に部分的に含まれると判定された場合と、障害物が死角領域41に完全に含まれると判定された場合とにおいて、異なる態様で報知部26が運転者に報知する。これにより、障害物が死角領域41に部分的に含まれると判定された場合の態様で報知されたときには、運転者は、運転席に着座した運転者にとって部分的に視認可能な障害物が存在することを認識することができる。この場合、運転者は、部分的に視認可能な障害物の存在を確認して、部分的及び全体が視認可能な障害物を避けて車両2を走行させることによって所定の範囲40の障害物と車体との接触を回避することができる。また、障害物が死角領域41に完全に含まれると判定された場合の態様で報知されたときには、運転者は、運転席に着座した運転者にとって全く視認できない障害物が存在することを認識することができる。
【0064】
また、死角領域に41完全に含まれる障害物と死角領域41に部分的に含まれる障害物とが存在し、運転者の視界に、死角領域41と視認可能領域42の双方にそれぞれ部分的に含まれた障害物が存在する状態であっても、死角領域41に障害物が含まれていることを示す情報が報知されると、運転者は、死角領域41に完全に含まれる障害物が必ず存在することを認識することができる。
【0065】
また、死角領域41に含まれる障害物の車両2からの距離が所定距離以下であるときに、制動制御部29が車両2を制動させるため、運転者が死角領域41の障害物に気付かない場合や障害物に気付くまでに時間を要した場合であっても、車体と障害物との接触を確実に回避することができる。
【0066】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施形態に係る運転支援装置を示すブロック構成図である。
【図2】図1の運転支援装置を備えた車両を示す概略図である。
【図3】図1の運転支援装置が検知する所定の範囲の障害物の例を示す側視図である。
【図4】図3の障害物を運転席に着座した運転者が矢印IV方向で視認した状態を示す模式図である。
【図5】図1の運転支援装置が実行する運転支援処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1:運転支援装置
2:車両
10:物体位置センサ(障害物検知手段)
21:死角領域設定部(死角領域設定手段)
24:障害物特定部(障害物検知手段)
25:障害物位置判定部(障害物位置判定手段)
27:音声記憶部(報知手段)
28:報知制御部(報知手段)
30:スピーカ(報知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲の所定の範囲の障害物を検知する障害物検知手段と、
前記所定の範囲のうち前記車両の運転席に着座した運転者にとって当該車両の死角となる領域を死角領域として設定する死角領域設定手段と、
前記死角領域設定手段が設定した前記死角領域に前記障害物検知手段が検知した障害物が含まれるか否かを判定する障害物位置判定手段と、を備えた
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置であって、
前記障害物位置判定手段が前記死角領域に前記障害物を含むと判定したときに、前記死角領域に障害物が含まれていることを示す情報を前記運転者に報知する報知手段をさらに備えた
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の運転支援装置であって、
前記障害物位置判定手段は、前記所定の範囲において、前記障害物が前記死角領域に部分的に含まれるか、前記障害物が前記死角領域に完全に含まれるかを判定し、
前記報知手段は、前記障害物が前記死角領域に部分的に含まれると判定された場合と、前記障害物が前記死角領域に完全に含まれると判定された場合とにおいて、前記死角領域に障害物が含まれていることを示す情報を異なる態様で前記運転者に報知する
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の運転支援装置であって、
前記障害物検知手段は、前記所定の範囲の複数の障害物を個々に検知し、
前記障害物位置判定手段は、前記障害物検知手段が複数の障害物を検知した場合、個々の障害物についてそれぞれ前記死角領域に含まれるか否かを判定し、
前記報知手段は、前記複数の障害物のうち少なくとも1つの障害物が前記死角領域に完全に含まれると判定され、且つ、前記複数の障害物のうち他の少なくとも1つの障害物が前記死角領域に部分的に含まれると判定された場合に、前記異なる態様のうち前記障害物が前記死角領域に完全に含まれると判定された場合の態様で前記運転者に報知する
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
請求項2に記載の運転支援装置であって、
前記障害物位置判定手段は、前記所定の範囲において、前記障害物が前記死角領域に完全に含まれるか否かを判定し、
前記報知手段は、前記障害物が前記死角領域に完全に含まれると判定された場合にのみ、前記死角領域に障害物が含まれていることを示す情報を前記運転者に報知する
ことを特徴とする運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−44085(P2011−44085A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193230(P2009−193230)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】