説明

過剰電圧保護回路を伴ったDC−DC変換器

本発明によって、プラズマを点火させることを提供する装置と方法とが提供される。該装置と方法とでは、アークの場合は、シャントスイッチが電力をプラズマからそらせるために使われ、該プラズマは、過剰電圧保護回路に組み込まれている。アークが消失すれば、プラズマを再点火させるための点火電圧をブースとするため、蓄えられたインダクタエネルギーが使用されるよう、該過剰電圧保護回路は、アークが消失したときに、シャントスイッチをブーストスイッチとして動作するように制御する。アークが消失し、インダクタ電流が減少し、プラズマが点火するとき、スイッチS1はオフにされ、インダクタエネルギーはプラズマに行き、電源は通常動作モードで動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に過剰電圧保護を伴ったdc/dc変換器を利用した電源に関し、特に、電源の出力を横切るシャントスイッチを用いてプラズマに電力を供給する電源のための過剰電圧保護に関する。
【背景技術】
【0002】
大部分のDC/DC電源は、出力電圧のリップルを減少させるために出力フィルターステージを用いている。このフィルターは通常、インダクタとコンデンサーとから成り、これらは両方ともエネルギーを蓄える。この電源がdcプラズマプロセスに電力を供給するために使用されるとき、アークが発生する場合において、この出願の譲受人に譲渡された、参照として組み込まれる、同時係属の特許出願、第10/884,119号、2004年7月2日出願、タイトル「Apparatus and Method for Fast Arc Extinction with Early Shunting of Arc Current in Plasma」に記述されるように、このエネルギーはプロセスに有害なプラズマアークへ供給され得る。アークに供給されるエネルギーを減少させるために、シャントスイッチがインダクタ電流を電源内部で循環させるために使用される。アークが消失したとき、シャントスイッチは開く。エネルギーがプラズマに放たれたときにインダクタ中に蓄積されるエネルギーは、電源またはチェンバーにダメージを与え得る、非常に高いdv/dtを伴う非常に高い出力電圧を生成し得る。電源を保護するために、異なる過剰電圧保護回路が使用されてきた。より単純な過剰電圧保護スキームデザインは、RCスナバー回路、トランジェント電圧サプレッサー回路、または、金属酸化物バリスタなどの、受動的な構成要素上で消失するエネルギーに基づいている。さらに複雑なデザインは、エネルギーを入力バスへ戻すように転送する。
【0003】
図1で示されたようなシャントスイッチSW2を伴うdc−dc変換器を利用する典型的なスイッチモード電源では、出力ステージは、図に示されるようにインダクタLおよび容量Cを備える二極出力フィルターで近似され得る。この構成では、出力コンデンサーCからのエネルギーは、アークに捨てられる。電源設計者の目標は、出力コンデンサーのサイズを最小にすることである。結果として、出力電圧リップルを低く保持するために、インダクタは増加されなくてはならない。インダクタに蓄積されたエネルギーはシャントスイッチSW2によって簡単に制御され得る。アークの間にスイッチを閉じることは、インダクタ電流が、位置p2におけるスイッチSW1とシャントスイッチSW2とを介して電源の内部で循環することを許可する。スイッチ上にわずかな損失がある場合、インダクタ電流は、この時間間隔中に認識できるほどに減衰しない。シャントスイッチを開くことによって電源が再始動する瞬間、インダクタエネルギーはコンデンサーを充電させ始め、出力電圧を非常に高くし得る。スイッチSW2を保護するために、過剰電圧回路10が要求される。
【0004】
dc電源のための過剰電圧保護を教示する特許が数多く存在する。dcスパッタリングプロセスでの応用には、例えば、Jeff Sellersに対して1996年12月17日付けで発行された特許文献1を参照されたい。これは、一連のツェナーダイオードまたは印加電圧に接続された等価な電圧制限デバイスを備える過剰電圧検出クランプ回路を開示している。この回路は、閾値を超える電圧のはみ出しを吸収し、電源とプラズマチェンバーにおける基板とを保護する。その結果として、インダクタエネルギーの大部分はツェナーダイオードを横切って消失し、次には、この電源が動作可能な毎秒あたりのアークの個数を制限する。
【0005】
アークに供給されるエネルギーを最小化するために使用され、電源がアークを消させたときに電圧を点火電圧レベルまでに制限するシャントスイッチに対する過剰電圧保護を伴うdc−dc変換器を利用する電源が提供されれば望ましい。
【特許文献1】米国特許第5,584,974号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって、アークの開始時にプラズマからエネルギーをそらせるシャントスイッチを使用するdcプラズマプロセスのための電源の出力における過剰電圧スキームが提供される。本発明は、シャントスイッチが開くことにより、変換器の出力上での消失したプラズマへエネルギーが解放されて戻されるときに通常起こる過剰電圧を、ゼロ入力電圧でブースト変換器として回路を動作させるようシャントスイッチを利用することによって妨ぐ。インダクタの蓄積したエネルギーは、一度アークが消失すると、点火レベルに向かってプラズマの出力電圧をブースとするのに使用される。一度エネルギーが消失すると、電源は通常動作モードに切り替わる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図2を参照すると、本発明の原理にしたがってプラズマチェンバーから電流をそらせるシャントスイッチS1を利用するdc電源12が図示されている。一度アークが電源によって検出されたら、シャントスイッチS1がオンされる。一度スイッチがオンされると、電源12からの電流が出力およびプラズマチェンバー14からそらせられる。これは、ケーブル16のエネルギーを減衰させる。電流の傾きは、出力ケーブルインダクタンスと電源12における損失とに依存する。スイッチS1をオフする代わりにアークシャットダウン時間の終わりには、回路がゼロ入力電圧でブースト変換器として作動するようシャントスイッチが使用されるであろう。インダクタ蓄積エネルギーは、出力電圧を点火レベルにブーストするのに使用される。インダクタに蓄積されるエネルギーと、特別な真空チェンバーの特徴とに依存して、エネルギーは、プラズマを横切って電圧をブーストする際に放散されるか、または、プラズマ上で点火が一度起これば、プラズマ中に放たれ得る。一度、エネルギーが放散されれば、電源12は通常動作モードに切り替わる。
【0008】
図3は、過剰電圧回路の制御のためのフローチャートを図示している。アークが検出されたとき、シャントスイッチはオンになる。アークが消失したとき、点火ルーチンが開始する。高インダクタ電流が存在する場合、電源は、スイッチS1を制御することからそれらをオフしつつ、主電源スイッチ(図示されていない)のためのパルスをリダイレクトする。インダクタに蓄積されたエネルギーは、点火電圧を形成するのに使用される。アークが消失した後に低インダクタ電流が存在し、かつプラズマチェンバー14中のプラズマ(図示されていない)が点火されるとき、シャントスイッチS1はオフにされ電源12は通常動作を続けるだろう。しかしながら、アークが消失した後に低インダクタ電流が存在し、かつプラズマが点火されないとき、シャントスイッチS1はオフにされ、電源は通常点火モードになるよう主電源スイッチを制御する。
【0009】
図4は、図3に示される電源制御スキームの動作のための波形を図示している。アークが検出されたとき、シャントスイッチS1がオンになるにつれて出力電流は落ちる。プラズマが点火されておらずインダクタ電流が高い場合に一度アークが消失すると、スイッチS1が、ブースト変換器として該スイッチを動作させるよう使用され、かつインダクタ電流18は、それが減少するまで点火電圧を形成するよう使用され、プラズマが点火していない場合は、電源の通常点火制御スキームが使用される。
【0010】
しかしながら、アークが消失し、インダクタ電流が減少し、プラズマが点火されるときは、スイッチS1はオフにされ、インダクタエネルギーはプラズマへ行く。この制御スキームは、制御信号を電源から当業者にとって周知のシャントスイッチへリダイレクトする、いくらかの図示されていない低電力構成要素を必要とし得る。先の記述によって示され記述された過剰電圧保護回路は、毎秒あたりのアークの個数に対して制限のないロスレス回路として動作する。
【0011】
インダクタエネルギーが過剰電圧回路において消失する消失回路を利用する従来の過剰電圧保護スキームと異なるユニークな過剰電圧保護スキームが提供されたのが見られ得る。これらのタイプの回路は、毎秒当たりのアークの要求された個数を取り扱うために、過剰電圧に対する有意な電力見積量を要求する。回路に蓄積されたエネルギーを消失する代わりに、エネルギーは、プラズマが消失したときにプラズマを再点火させるための点火電圧を形成するために使用される。
【0012】
特別な構造と動作の詳細が図示され記述されているが、同じものは単に図示の目的のためであり、本発明の精神と範囲とから外れることなく、当業者によって変更と修正とが簡単に加えられ得ることは、明らかに理解される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、シャントスイッチと過剰電圧保護回路とを利用した電源の先行技術の出力ステージを図示している。
【図2】図2は、本発明の原理を組み込んだ、シャントスイッチと過剰電圧保護回路とを利用する電源の出力ステージを図示している。
【図3】図3は、図2に示される電源の出力ステージのための制御フローチャートを図示している。
【図4】図4は、図2に示される電源の出力ステージのための電圧波形と電流波形とを図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
dcプラズマ処理のための装置であって、
a)プラズマ処理のためのチャンバーであって、該チャンバーに含まれる少なくとも二つの電極を有するチャンバーと、
b)該電極に電圧を供給することにより、プラズマを点火し、電力を供給する電源と、
c)シャントスイッチをオンにすることにより、アークの開始時にてプラズマから電流をそらせる回路と、
d)アークが消失したとき、該シャントスイッチをブーストスイッチとして動作するよう制御する過剰電圧保護回路であって、プラズマが消失したとき、プラズマを再点火するための点火電圧をブーストするのに、蓄えられたインダクタエネルギーが用いられる過剰電圧保護回路と
を備える装置。
【請求項2】
シャントスイッチをブーストスイッチとして制御する際に、前記インダクタ電流が高く、かつ前記プラズマが点火していない場合は、前記電源のメインスイッチのための制御信号が前記シャントスイッチにリダイレクトされる、請求項1に記載のdcプラズマ処理のための装置。
【請求項3】
前記アークが消失し、かつ、前記インダクタ電流が低く、かつ、前記プラズマが点火されていないことにより、前記電源がそのメインスイッチによって通常の点火動作を続けることが許可されているとき、前記過剰電圧保護回路が前記シャントスイッチをオフ位置にする、請求項2に記載のdcプラズマ処理のための装置。
【請求項4】
前記アークが消失し、かつ、前記プラズマが点火されていることにより、前記電源が通常動作を続けることが許可されているとき、前記過剰電圧保護回路が前記シャントスイッチをオフ位置にする、請求項3に記載のdcプラズマ処理のための装置。
【請求項5】
dcプラズマ処理を行う方法であって、
a)電源の1組の少なくとも二つの出力端子からプラズマチェンバーの電極へ、電圧と電流と電力とを供給することにより、プラズマを点火し維持するステップであって、該電源は蓄積されたエネルギーを有するステップと、
b)プラズマ中でのアークコンディションの発生を感知するステップと、
c)アークが消失するまでエネルギーをそらせるシャントスイッチを利用して、前記電源からプラズマへのエネルギーの流れを抑制するステップと、
d)アークが消失し、かつ、プラズマが点火しない後に、該電源の点火電圧をブーストするための蓄積されたエネルギーを利用して、前記シャントスイッチが開くことによりエネルギーが、消失したプラズマに戻るよう放散されるときに生ずるシャントスイッチ上での過剰電圧を消去するステップと、
e)アークが消失して該電源の正常動作が再構築された後にプラズマが点火される場合、該電源の任意の蓄積されたエネルギーをプラズマへリダイレクトするステップと
を包含する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−511127(P2008−511127A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530005(P2007−530005)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/029770
【国際公開番号】WO2006/023847
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(597112542)アドバンスト・エナジー・インダストリーズ・インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】Advanced Energy Industries, Inc.
【Fターム(参考)】