説明

過度に色素沈着した皮膚を処置するための組成物および方法

改良された化粧用および皮膚科用の組成物、ならびに、過度に色素沈着した皮膚を処置するための方法が開示される。この組成物は、哺乳動物の皮膚の色を美白する高い能力を示し、そして毒性はなく、刺激性もない。この組成物には、1つ以上のヒドロキシ基を有する化合物(例えば、エチレングリコールのモノC1-4アルキルエーテルもしくはプロピレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテル)および/またはシリコーン溶液の中に溶解させられたヒドロキシ桂皮酸またはメトキシ桂皮酸が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年2月11日に提出された米国仮特許出願番号60/652,303および2005年1月14日に提出された米国仮特許出願番号60/643,797の権利を請求する。
【0002】
本発明は、過度に色素沈着した皮膚を処置することができる、化粧用および皮膚科用の組成物に関する。さらに具体的には、本発明は、哺乳動物の皮膚の色を美白する高い能力を有している組成物に関する。この組成物には、1つ以上のヒドロキシ基を有している有機化合物(例えば、エチレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテル、もしくはモノC1-4アルキルプロピレングリコールオリゴマー)および/またはシリコーン溶液の中に溶解させられたヒドロキシ桂皮酸またはメトキシ桂皮酸が含まれている。
【背景技術】
【0003】
有効成分の投与は、多くの場合は、所望される標的部位への有効成分の適切な導入を妨ぐ天然のバリアによって制限される。通常は、バリアが、有効成分を十分に浸透させることができないことがその原因である。局所塗布される化合物については、天然のバリアは皮膚の上層である。
【0004】
ヒトの皮膚は2つの成分、すなわち、真皮と呼ばれる深部区画と、表皮と呼ばれる表面区画から構成されている。真皮は表皮を支え、そして表皮に栄養分を与える。表皮は、外部環境と接触し、その役割は脱水および外部からの攻撃(自然界での化学的、機械的、物理的攻撃、または感染性の攻撃を問わず)に対して体を防御することである。ヒトの表皮は主に、いくつかのタイプの細胞(例えば、ケラチン生成細胞、メラニン細胞、およびランゲルハンス細胞)から構成されている。必須の役割に寄与しているそれぞれのタイプの細胞は、その固有の機能に基づいて皮膚によって役割を果たす。
【0005】
哺乳動物の表皮は、過度の色素沈着(例えば、審美的に濃すぎるか、または色調が均一ではない皮膚の色)を示す可能性がある。The American Academy of Dermatologyは、500〜600万人のアメリカ人が彼らの生涯のいくつかの時点で皮膚の色素沈着の症状に悩むであろうと推定している。肝斑は妊娠中の女性の50%から70%に起こり、そして肌が白い白人の約90%に、60歳を超えると皮膚の染みが生じることも報告されている。過度の色素沈着は、個体の社会的、情緒的、および精神心理学的健康状態に深刻なネガティブな影響を与える可能性がある。
【0006】
過度の色素沈着、または異常なほどに進行した色素沈着、またはメラニンの蓄積は、様々な病気の原因となり得る。これには、薬剤の使用(例えば、カルシウムアンタゴニスト)によって生じる局所性の過度の色素沈着、青色の肝斑、老人性肝斑、白斑、硬化療法後または炎症後または外傷性の反応の後の有害な後遺症が含まれる。他の局所性の過度の色素沈着は、妊娠の間に(妊娠性肝斑として知られている)、エストロプロゲステロン性(estroprogestative)避妊の後に、光感作によって、または病変の後の瘢痕形成によって起こる場合がある。
【0007】
例えば、過度の色素沈着には、そばかす、「日光黒子」、または「肝斑」(これらは主に、過度の太陽への露出によって生じ、そして一般的には、手、顔、前腕に生じる);妊娠中の女性における肝斑(すなわち、「妊娠黒皮症」)または経口避妊薬を摂取している女性における肝斑;薬剤によって誘導される皮膚の黒ずみ、または炎症後の皮膚の黒ずみ;ならびに、疾患に関係している皮膚の黒ずみ(例えば、アジソン病における皮膚の黒ずみ)が含まれる。過度の色素沈着はまた、その生存期間全体にわたる累積的な太陽への露出によって生じる場合もあり、これによっては、そばかす、または「太陽により誘導されたそばかす」が導かれる。過度の色素沈着は、さらに、固有の遺伝的プロフィール(例えば、紫外線(UV)に対する暴露がない条件でメラニンを分泌するメラニン細胞を有している個体)に関係している可能性がある。
【0008】
強く色素沈着した皮膚はまた、様々な民族のグループの個体について非審美的であるとみなされる場合があり、したがって、皮膚の色を薄くすることが望まれる場合がある。例えば、最初の色素除去クリームは、淡い顔の肌の色を持ちたいという一部のアジア人の女性の審美的欲求の結果として、数十年前に韓国に登場した。これらの最初の色素除去クリームには、水銀化合物が含まれており、その作用は、チロシンからメラニンを生じる経路のチロシナーゼ酵素の不可欠な補因子である銅の置換に基づいていた。それ以来、水銀剤は、それらの神経毒性が原因で禁止された。
【0009】
皮膚の着色はメラニンの形成に直接関係している。メラニンは、最終的な分化の前に増殖したケラチン形成細胞間の表皮の基部層に見られるメラニン形成細胞の中で合成される。より多くのメラニンが生成されると、皮膚の色はより濃くなる。次々にメラニンが形成されることは、チロシンとシステインに対するチロシナーゼの作用に直接関係している。チロシナーゼ活性が阻害されると、チロシンとシステインのメラニンへの酵素による転換が減少する。最終的な結果は、メラニンの生成が減少するかまたは妨げられることが原因である、予防的または治療的な皮膚の美白である。
【0010】
過度の色素沈着についての現在の処置としては、日焼け防止剤を使用すること(これによって、チロシナーゼの活性が妨げられる);ハイドロキノンのような化合物の塗布が原因であるメラニン細胞毒性;剥離;ナイアシンアミドのような化合物を使用する、ケラチン生成細胞へのメラニン細胞の転換の阻害;チロシナーゼの阻害;およびそのような処置の組み合わせが挙げられる。
【0011】
これまでに使用されきた皮膚の色素除去剤としては、過酸化物(例えば、過酸化水素、過酸化亜鉛、過酸化ナトリウム、過酸化ベンゾイルなど)が挙げられる。しかし、過酸化物の活性には、多くの場合、有害な副作用が伴う。いくつかのこれまでに使用されてきた天然の化合物は、メラニンの合成および/またはチロシナーゼの活性を部分的に阻害し(例えば、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン)、そして、植物抽出物(その作用が、メラニン形成の真の刺激因子であるフリーラジカルの遮断に関係しているもの)を部分的に阻害する。植物抽出物にはまた、不安定であること、標準化されている生成物がないこと、および効率が低いことの欠点もある。抗酸化剤(例えば、ビタミンCおよびE、ならびにそれらのエステル)もまた、穏やかな色素除去活性を示し、メラニン形成を部分的に阻害する。しかし、このような抗酸化剤は通常は、十分に効果的ではない。アゼライン酸もまた、それがメラニン細胞の中でのチロシナーゼおよびDNA合成の競合的阻害を示すので、色素除去剤として使用されてきた。
【0012】
チロシナーゼ阻害因子は、過度の色素沈着の処置に関して、化粧品および医薬品製品において重要となりつつある。いくつかの抗メラニン形成試薬(例えば、モノベンゾンおよびヒドロキノン)もまた、臨床的に有用である。ヒドロキノンは、チロシンに対してアンタゴニスト作用と競合作用を有しているチロシナーゼ基質である。
【0013】
ヒドロキノンおよびその誘導体(例えば、ヒドロキノンおよびアルビチンのモノメチルエーテル)は、局所用組成物に使用されている最も一般的な色素除去剤である。上記の皮膚の美白用組成物には、3重量%から5重量%のヒドロキノンが含まれている場合がある。しかし、投与量は、通常、2重量%の濃度に限られる。なぜなら、ヒドロキノンは不安定であり、刺激性があり、そしてメラニン細胞に対しては細胞毒性もあり、局所性の顆粒状の過度な色素沈着、および弾性線維症の形成、さらには長期にわたる使用の後には、白斑の出現の傾向があるからである。引用により本明細書中に組み入れられる特許文献1を参照のこと。
【0014】
別のチロシナーゼ阻害因子は、コウジ酸である。これは不安定であり、弱い変異原性を示し、そして皮膚感作物質であり刺激物である。フェルラ酸は、比較的効力の弱いチロシナーゼ阻害因子である。グラブリジン(カンゾウ抽出物)には、不安定性および純度の問題、ならびに、コストが高いという問題がある。アルブチンにはコストが高いという問題がある。これらのチロシナーゼ阻害因子にはまた、作用の標的部位(すなわち、メラニン細胞)に対する皮膚浸透性が低いことが原因で、比較的効力が低いという問題もある。
【0015】
多数の皮膚の美白用化合物もまた、毒性および環境問題の理由から、一部または完全に禁止されている。例えば、水銀、ヒドロキノン、ホルモン調製物、および酸化剤は、皮膚の美白剤としては禁止されている。コウジ酸は、皮膚の美白のために現在使用されている主要な活性のある物質である。コウジ酸は真菌由来であり、これには、不安定性(例えば、時間とともに光分解を受けやすく、それによって効力が下がる);経時的に、処方物の色が黄色から茶色に変化する傾向がある;変異原性であり腫瘍を促進する;感作電位での刺激;ならびに、皮膚の接触アレルギーの誘発のような欠点がある。これらの欠点によって、皮膚の美白剤としてのコウジ酸は部分的に禁止された。
【0016】
本発明は、過度の色素沈着の処置において、これまでのチロシナーゼ阻害因子の欠点を克服する有効なチロシナーゼ阻害因子を使用することに関する。チロシナーゼ阻害因子は、有効であり、毒性はなく、そして安定でなければならず、そして、有効量のチロシナーゼ阻害因子を皮膚に浸透させてチロシナーゼ阻害の標的部位に到達させることが可能なデリバリーシステムによって適用できなければならない。
【0017】
ヒドロキシ桂皮酸は、抗酸化性フェノール化合物であり、これは、植物において、主に、細胞壁の成分として一般的である。ヒドロキシ桂皮酸は、ラジカルスカベンジャー活性を有している抗酸化剤であり、化学的予防特性も示す(非特許文献1)。他のチロシナーゼ阻害因子と比較すると、p−ヒドロキシ桂皮酸および関連するヒドロキシ桂皮酸、ならびにそのエーテル(本明細書中では、まとめて「HCA」と呼ばれる)には毒性はなく、無色、無臭であり、したがって、皮膚の美白剤としての使用についての優れた候補である。
【0018】
メラニン細胞中のメラノソーム顆粒の中に存在する酵素であるチロシナーゼは、メラニンの生合成の律速段階を触媒する(非特許文献2)。メラニンの生成および蓄積は、様々な遊離基の間でのヒトの色素沈着および肌の色合いのバリエーションに関係する。チロシナーゼ阻害因子は、肌の色合いを均一にするために、そして色素沈着障害(例えば、そばかす、および妊娠黒皮症を処置するために使用される。HCAは、これまでに、インビトロで有意な抗チロシナーゼ活性を示すことが報告されている(非特許文献3)。
【0019】
複数の研究によって、他の市販されているチロシナーゼ阻害因子と比較して、特に、コウジ酸よりも、チロシナーゼを阻害することにおいてHCAが優れていることが明らかにされている(非特許文献4)。ヒドロキシ桂皮酸はまた、化合物を皮膚の美白剤としての使用について優れた候補とするという他の利点も有している。これらの利点には、これが植物由来であるので供給源が豊富であること、純度が高いこと、刺激性がないこと、防御特性があり抗変異原性であること、安定であること(50℃で6ヶ月間の保存後も変性していない)、色分解しないこと、ならびに、保存力があり静菌性であることが含まれる。
【0020】
HCAは、チロシナーゼの阻害およびメラニン形成の遮断について、安全であり有効な化合物と考えられるが、HCAは、過度の色素沈着を処置するための化粧品または皮膚科用の処方物には使用されていない。商品化されていないことは、HCAの物理的特性に、特に、担体中へのHCAの溶解が困難であることに関係しており、これは、生体利用性に有害な影響を与える、すなわち、メラニン細胞に到達するには不十分な皮膚の浸透を生じる可能性がある。
【特許文献1】国際公開公報WO 01/17497号パンフレット
【非特許文献1】H.K. Kuzaki et al., J.Agric.Food Chem., 50,2161-68(2002)
【非特許文献2】S.H. Pomerantz et al., J.Clin.Invest., 55,1127-31(1975)
【非特許文献3】J.Y. Lim et al., Phytother.Res., 13,371-5(1999);H.S. Lee, J.Agric.Food Chem., 50,1400-03(2002)
【非特許文献4】N. Dayan et al., AAPS Annual Meeting, Abstract, USA, AM-04-0053(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、過度の色素沈着を処置するために使用されてきたこれまでのチロシナーゼ阻害因子に伴う問題点を克服する組成物を提供することに関する。この組成物にはHCAが含まれており、消費者が満足できる皮膚の美白用組成物にHCAを配合することに付随する複数の問題点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、過度の色素沈着を処置する方法で使用される化粧品および皮膚科用組成物に関する。より具体的には、本発明は、皮膚の表面からの有効成分の浸透の改善により、皮膚の色を美白する高い能力を示す組成物に関する。
【0023】
本発明に従うと、有効成分(すなわち、HCA)は、1つ以上のヒドロキシ基を有する有機化合物、シリコーン溶液、またはそれらの混合物の中に溶解させられる。ヒドロキシ基を有する化合物は、有機溶媒または界面活性剤であり得、例えば、エチレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテル、またはプロピレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテルであり得る。得られる溶液は、通常、皮膚への局所塗布用の化粧品または皮膚科用組成物に配合される。
【0024】
したがって、本発明の1つの態様は、1つ以上のヒドロキシ基を有する有機化合物、シリコーン溶液、またはそれらの混合物の中に溶解させられたHCAを約0.01重量%から約30重量%含む組成物を提供することである。得られる溶液は皮膚に直接塗布することができ、また、化粧品または皮膚科用処方物(例えば、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、またはゲル)に配合させることもできる。
【0025】
本発明の方法の別の態様は、哺乳動物(ヒトを含む)の過度の色素沈着を処置する方法を提供することである。この方法には、1つ以上のヒドロキシ基を有する有機化合物、シリコーン溶液、またはそれらの混合物の中に溶解させられたHCAを含む組成物を、哺乳動物の皮膚表面に塗布する工程が含まれる。この方法によって、例えば、そばかすまたは肝斑に関係している濃くなった皮膚を美白することができる。
【0026】
本発明に従うと、HCAは、1つ以上のヒドロキシ基を有する有機化合物、シリコーン溶液、またはそれらの混合物(具体的には、エチレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテル、またはプロピレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテル)と混合させて、哺乳動物の皮膚(頭皮を含む)への塗布に適している溶液が提供される。この溶液は、化粧品処方物になるように配合することができ、また、化粧品処方物の成分を、皮膚へのHCAの効率的かつ効果的な塗布のために、それに添加することもできる。
【0027】
本発明のなお別の態様は、1つ以上のヒドロキシ基を有する有機化合物および/またはシリコーン溶液の中に溶解させたHCAを含む組成物と、皮膚のケア用製品、局所用薬剤製品、または化粧品としての組成物の使用を提供することである。
【0028】
本発明のこれらおよび他の態様、ならびに新規の特徴は、以下の、好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
過度の色素沈着を処置するための薬剤は、多くの場合、メラニンの生合成を阻害することによって作用する。一例は、チロシナーゼ活性を阻害することであり、それによって、チロシンのメラニンへの転換が妨げられる。多数のチロシナーゼ阻害因子が知られており、いくつかは、過度の色素沈着を処置するため、すなわち、皮膚を美白するために使用されている。
【0030】
中でも、最も強力なチロシナーゼ阻害因子はHCAであり、これには毒性はなく、そして刺激性もない。いくつかのHCAは、p−ヒドロキシ桂皮酸(p-HCA)と同様に、果実および野菜の中に見ることができ、現在は、抗酸化剤として食品産業において使用されている。
【0031】
p−ヒドロキシ桂皮酸はフェノール性桂皮酸誘導体であり、これはガンの発症を阻害し、様々な植物(例えば、トマト、ピーマン、ニンジン、イチゴ、およびパイナップル、ならびに、バジルおよびターメリックのような薬草植物)において見られる。p−ヒドロキシ桂皮酸は消化の間に活性化され、ガンを引き起こすニトロサミンの発生を妨害する。p−ヒドロキシ桂皮酸はまた、静菌薬としても化粧品業界で使用されている。
【0032】
これらのポジティブな性質とは無関係に、一般的なHCA、特にp-HCAを含む市販用の皮膚の美白用組成物は現れていない。HCAを含む市販用の製品がないことの理由は、2つある。まず第1に、HCAは皮膚浸透性が低いからである。第2に、HCAは、皮膚のケアおよび皮膚科用組成物に通常使用される溶媒および担体には極めて不溶性であるからである。本発明は、これらの欠点を克服して、過度の色素沈着の処置においてHCAの使用を可能にする。
【0033】
本明細書中で使用される場合は、用語「過度の色素沈着」は、過度に濃い色の現実的な、または認識としての皮膚の機能障害である。皮膚の機能障害は、現実的なもの(すなわち、年齢、過度の太陽への露出、または濃い皮膚の領域を生じる疾患もしくは症状に関係しているもの)であり得る。濃い皮膚の領域は、スポット、染み、または比較的大きい濃い色の領域の形態であり得る。皮膚の機能障害はまた、認識としてのものであり、すなわち、彼/彼女の皮膚の陰影が暗すぎる、および個体が皮膚の陰影を明るくする化粧品を望むという、個体による認識である。
【0034】
したがって、本発明の組成物は、様々な皮膚の過度の色素沈着を処置することに(例えば、肝斑(すなわち、顔または体の他の部分の色素沈着の模様)の色素除去を行うことに)、または自発的に皮膚の色素沈着を白くすることに有用である。
【0035】
通常、濃い色の皮膚の機能障害は、メラニンの高いレベルに関係している。本発明に従うと、組成物および方法を、過度の色素沈着を処置するために(すなわち、濃い色の皮膚を白くするために)、または過度の色素沈着を予防するために(すなわち、過剰な量のメラニンの生成を減少させるかまたはメラニンの生成を排除し、それによって皮膚の色が濃くなることを防ぐために)使用することができる。したがって、本発明は、ヒドロキシを含む化合物(例えば、エチレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテル、プロピレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテル、シリコーン溶液、またはそれらの混合物)の中に溶解させられたHCAを含む組成物、ならびに、過度の色素沈着を処置する方法におけるその組成物の使用に関する。
【0036】
本発明の組成物および方法での有効成分はHCAである。本発明にしたがうと、HCAは、1つ以上のヒドロキシル基を有する有機化合物、シリコーン溶液、またはそれらの混合物の中に溶解させられる。1つ以上のヒドロキシ基を含む有機化合物は、界面活性剤または有機溶媒であり得る。1つ以上のヒドロキシル基を含む化合物には、1個から6個のヒドロキシ基が含まれ得、通常は、1個から3個のヒドロキシ基が含まれる。
【0037】
1つの実施形態においては、HCAは、エチレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテルまたはプロピレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテル(本明細書中では、まとめて「モノC1-4アルキルエーテル」と呼ぶ)の中に溶解させられる。他の実施形態においては、HCAは、C2-4アルコール、C3-5グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリオール、ポリオール、エトキシ化グリセリン、またはそれらの混合物の中煮溶解させられる。有用な化合物の限定ではない例としては、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセレス−7からグリセレス−31、PEG-4からPEG-800、PPG-3からPPG-69、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブチルアルコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、へキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0038】
1つ以上のヒドロキシ基を有する有用な界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が挙げられ、エトキシ化オクチルフェノール、エトキシ化ノニルフェノール、エトキシ化直鎖C8-22アルコール、プロポキシ化直鎖C8-22アルコール、エトキシ化およびプロポキシ化C8-22アルコール、ソルビトールのポリエチレングリコールエーテル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックコポリマー、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0039】
有用なシリコーン溶液としては、直鎖および環状の、揮発性および不揮発性のジメチルシロキサン溶液が挙げられ、これには、フェニル置換を有しているシロキサン溶液が含まれる。有用なシリコーン溶液は、引用により本明細書中に組み入れられる米国特許第5,456,863に開示されている。例示的なシロキサンとしては、フェニルトリメチコン、それぞれシクロメチコンおよびジメチコンとして知られている環状または直鎖の低分子量の揮発性のポリジメチルシロキサン、ならびにメチコンが挙げられる。シクロメチコンは、粘性が低く、低分子量の、水に不溶性の環状化合物であり、1つの分子あたり平均で約3個から約6個の6-[O-Si(CH3)2]-反復基単位を有している。シクロメチコンは、例えば、登録商標SILICONE 344 FLUIDおよびSILICONE 345 FLUIDとしてDow Corning Corporation, Midland, MIから、そしてSILICONE SF-1173およびSILICONE SF-1202としてGeneral Electric,Waterford, NYから市販されている。
【0040】
直鎖状の低分子量の揮発性ジメチコンの一例は、化合物ヘキサメチルジシロキサンであり、Dow Corning Corporation, Midland, MIから登録商標DOW CORNING 200 FLUIDとして市販されている。DOW CORNING 200 FLUIDは、0.65 cs(センチストーク)の粘性を有している。他の直鎖状のポリジメチルシロキサン(例えば、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、およびドデカメチルペンタシロキサン)もまた有用である。他の有用な直鎖状シロキサンは、ヘキシルジメチコン、ポリフェニルメチルシロキサン、およびビスフェニルヘキサメチコンである。不揮発性シロキサンもまた使用することができる。
【0041】
得られる溶液には、約0.01重量%から約30重量%のHCAが含まれる。組成物は、皮膚への局所塗布用の有効な審美用組成物を提供するために、化粧品または皮膚科用製品において公知の他の組成物の成分で稀釈して、またはそのような成分と混合して、使用することができる。
【0042】
HCAは、2−、3−、または4−ヒドロキシ桂皮酸;2,3−、2,4−、または3,4−ジヒドロキシ桂皮酸;2−、3−、または4−メトキシ桂皮酸;3−ヒドロキシ−4−メトキシ桂皮酸;4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸;あるいはそれらの混合物であり得るが、これらに限定はされない。好ましくは、HCAには、2−、3−、または4−ヒドロキシ桂皮酸が含まれる。本発明の十分な利点を得るためには、HCAには、4−ヒドロキシ桂皮酸が含まれる。
【0043】
簡略化のために、以下の開示は、特に、p−クマリン酸としても知られている、本明細書中では「p-HCA」と呼ばれるp−ヒドロキシ桂皮酸に関する。他のHCAで、本発明の組成物または方法のp-HCAを置き換えることが理解されるはずである。
【0044】
上記のHCA溶液は、皮膚に直接塗布することができる。この場合、溶液中のHCAの量は、通常、溶液の約0.01重量%から約10重量%であり、好ましくは、約0.05重量%から約5重量%である。上記のHCA溶液はまた、皮膚への塗布の前に溶媒または他の担体で稀釈することができる。希釈用溶媒は、1つ以上のヒドロキシ基を有する有機化合物またはシリコーン溶液と同じであっても、また異なっていてもよい。希釈用溶媒は、最終的な溶液からのHCAの沈殿を引き起こしてはならないか、または、別の方法で、皮膚の表面に浸透し、過度の色素沈着を処置する溶液中のHCAの能力に悪影響を与えてはならない。
【0045】
上記のHCA溶液はまた、種々の製品の形態、例えば、皮膚用パッチ、エマルジョン、またはゲルになるように、HCA溶液に対して処方物の成分を添加することによって、または処方物の成分に対してHCA溶液を添加することによって、処方することができる。限定ではない処方物の成分および製品形態が以下に議論され、これらは、過度の色素沈着を処置するHCA溶液の能力に有害な影響は与えない。
【0046】
HCAは、1つ以上のヒドロキシ基を有する有機化合物、および/またはシリコーン溶液(例えば、エチレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテルまたはプロピレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテル)の中に溶解させられる。以下で議論されるように、適切なヒドロキシを含む化合物の中にHCAを溶解させることによって、皮膚の表面からのHCAの浸透を改善し、HCAを使用することによってこれまでは得ることができなかったほどの皮膚の美白が可能となる。
【0047】
HCAを溶解させるために使用されるエチレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテルまたはプロピレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテルは、以下の一般式:
【0048】
【化1】

【0049】
または
【0050】
【化2】

【0051】
(式中、R1はC1-4アルキルであり、R2は水素またはメチルであり、そして、nは2または3である)を有している。例えば、R1はメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、またはターシャルブチルである。
【0052】
エチレングリコールのモノC1-4アルキルエーテルまたはプロピレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテルの限定ではない例としては、エトキシジグリコール、メトキシジグリコール、ブトキシジグリコール、メトキシトリグリコール、エトキシトリグリコール、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましいモノC1-4アルキルエーテルとしては、エトキシジグリコールおよびメトキシジグリコールが挙げられる。本発明の十分な利点を得るためには、モノC1-4アルキルエーテルにはエトキシジグリコールが含まれる。
【0053】
先に記載されたように、HCAと、1つ以上のヒドロキシ基を有する有機化合物、シリコーン溶液、またはそれらの混合物を含む溶液は、希釈後に、または化粧品または皮膚科用処方物にそのまま配合させた後に、塗布することができる。最終的な組成物には、状況に応じた活性のある皮膚を美白する第2の薬剤が含まれる場合もある。有用な活性のある第2の皮膚美白剤としては、皮膚用エクスフォリアント;コウジ酸;レチノイン酸;ヒドロキノンまたはその誘導体(例えば、ベンジルヒドロキノンエーテル);アスコルビン酸またはその誘導体(例えば、マグネシウムアスコルビルホスフェート) ;コーヒー酸またはそのエステル;ベンゾフラン(例えば、5−または6−ヒドロキシ−ベンゾフラン) ;植物抽出物(例えば、リコライス、マルベリー、ヒース、およびアンゼリカアシタバ);真珠抽出物;ヒドロコルチゾン型などのステロイド性抗炎症剤;アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、ナプロキセン、およびフェナム酸誘導体(例えば、ナトリウム塩)からなる群より選択される非ステロイド性抗炎症剤;抗炎症剤(例えば、α−ビサボロール、β−グリシレチン酸、アラントイン、アロエ抽出物、ローズマリー酸、アズレンまたはその誘導体、アシアティコシド、セリコシド、ルスコゲニン、エスシン、エスコリン、ケルセチン、ルチン、ベツリン酸またはその誘導体、カテキンまたはその誘導体);ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0054】
ヒドロキシを含む化合物を含むHCA溶液は、個人的なケア用、化粧品、または薬学的な組成物に有用である。本発明の溶液によって、皮膚を美白するためのHCAの効率的なデリバリーが提供される。得られる皮膚を美白するための組成物は、皮膚の美白と、皮膚の美白とは異なる第2の化粧品または治療効果の両方を達成するための、状況に応じた活性のある第2の皮膚美白剤に加えて、またはその代わりに、他の局所塗布される活性のある化合物と共に、処方することができる。
【0055】
本発明の重要な特徴に従うと、第2の化粧品または治療効果を提供するための局所塗布される化合物は、水溶性であるかまたは油溶性であるかのいずれかである、任意の広範な種々の化合物であり得る。
【0056】
このような局所塗布される活性のある化合物は、したがって、化粧用化合物、医学的活性のある化合物、化粧品または個人的なケアに使用される化合物、あるいは、皮膚への局所塗布に有用な任意の他の化合物の1つ、またはそれらの混合物であり得る。このような局所用の活性のある物質としては、皮膚のケア用化合物、植物抽出物、抗酸化剤、昆虫忌避剤、反対刺激剤、ビタミン剤、ステロイド、抗菌性化合物、抗真菌性化合物、抗炎症性化合物、局所麻酔剤、日焼け止め剤、蛍光増白剤、ならびに、他の化粧用および医学用の局所的に有効である化合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0057】
例えば、皮膚用コンディショナーは、局所塗布される化合物であり得る。皮膚用コンディショナーとしては、保湿剤(例えば、フルクトース、グルコース、グリセリン、プロピレングリコール、グリセレス−26、マンニトール、尿素、ピロリドンカルボン酸、加水分解レシチン、ココベタイン、塩酸システイン、グルカミン、PPG-15、グルコン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、オレイルベタイン、チアミン塩酸塩、ラウレス硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解タンパク質、加水分解ケラチン、アミノ酸、アミン酸化物、ビタミンA、E、およびDの水溶性誘導体、アミノ官能性シリコーン、エトキシ化グリセリン、α−ヒドロキシ酸およびその塩、脂肪油誘導体(例えば、PEG-24水素化ラノリン)ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。多数の他の皮膚用コンディショナーは、引用により本明細書中に組み入れられるCTFA Cosmetic Ingredient Handbook, First Ed., J. Nikotakis, 編., The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association (1988),(本明細書中以後、CTFA Handbook)、79-84頁に列挙されている。
【0058】
皮膚用コンディショナーはまた、少なくとも10個の炭素原子、好ましくは、10個から約32個の炭素原子を有する、水不溶性のエステルでもあり得る。適切なエステルとしては、約8個から約20個の炭素原子を有する脂肪族アルコールと2個から約12個の炭素原子を含む脂肪族もしくは芳香族カルボン酸、または逆に、約2個から約12個の炭素原子を有する脂肪族アルコールと約8個から約20個の炭素原子を含む脂肪族もしくは芳香族カルボン酸を含むエステルが挙げられる。エステルは、直鎖であるかまたは分岐しているかのいずれかである。したがって、適切なエステルとしては、例えば以下が挙げられるが、これらに限定はされない:
(a)以下を含むがこれらに限定はされない、脂肪族1価アルコールエステル:
プロピオン酸ミリスチル、
イソステアリン酸イソプロピル、
ミリスチン酸イソプロピル、
パルミチン酸イソプロピル、
酢酸セチル、
プロピオン酸セチル、
ステアリン酸セチル、
ネオペンタノン酸イソデシル、
オクタン酸セチル、
ステアリン酸イソセチル;
(b)以下を含むがこれらに限定はされない、ポリカルボン酸の脂肪族ジエステルおよびトリエステル:
アジピン酸ジイソプロピル、
フマル酸ジイソステアリル、
アジピン酸ジオクチル、および
クエン酸トリイソステアリル;
(c)以下を含むがこれらに限定はされない、脂肪族多価アルコールエステル
プロピレングリコールジペラルゴネート;
(d)以下を含むがこれらに限定はされない、芳香族酸の脂肪族エステル
安息香酸のC12-15アルコールエステル、
サリチル酸オクチル、
安息香酸スクロース、および
フタル酸ジオクチル。
【0059】
多数の他のエステルが、引用により本明細書中に組み入れられるCTFA Handbook, 24から26ページに列挙されている。
【0060】
局所塗布される化合物はまた、抗酸化剤または蛍光増白剤でもあり得、例えば、ジスチルルビフェニル誘導体、スチルベンまたはスチルベン誘導体、ピラロジン誘導体、またはクマリン誘導体であり得る。局所塗布される化合物として有用な蛍光増白剤は、日光のスペクトルの不可視UV部分を吸収することができ、そしてこのエネルギーをスペクトルのより長い可視波長部分に変換させることができる任意の化合物であり得る。蛍光増白剤は基材の上では無色であり、スペクトルの可視部分のエネルギーは吸収しない。蛍光増白剤は、通常、スチルベンの誘導体または4,4'−ジアミノスチルベン、ビフェニル、5員複素環(例えば、トリアゾール、オキサゾール、またはイミダゾール)、または6員複素環(例えば、クマリン、ナフタルアミド、またはs−トリアジン)である。
【0061】
蛍光増白剤は、種々の登録商標で、例えば、TINOPAL(登録商標)、LEUCOPHOR(登録商標)、およびCALCOFLUOR(登録商標)として入手することができる。特定の蛍光化合物としては、TINOPAL(登録商標)5BM、CALCOFLOUR(登録商標)CG、およびLEUCOPHOR(登録商標)BSBが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0062】
加えて、他の化合物を、それらの意図される機能を発揮させるために十分な量で、局所的に活性のある化合物として本発明の組成物に含めることができる。例えば、日焼け防止効果のある化合物(例えば、ベンゾフェノン−3、タンニン酸、尿酸、キニーネ塩、ジヒドロキシナフトール酸、アントラニル酸塩、p−アミノ安息香酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、PEG-25、またはp−アミノ安息香酸)を、局所塗布される化合物として使用することができる。さらに、日焼け防止効果のある化合物(例えば、ジオキシベンゾン、エチル4−[ビス(ヒドロキシプロピル)]アミノ安息香酸、グリセリルアミノ安息香酸、ホモサレート、メチルアントラニレート、オクトクリレン、メトキシ桂皮酸オクチル、サリチル酸オクチル、オキシベンゾエート、パディメートO、レッドワセリン、二酸化チタン、4−メチルベンジリデンカンフル、ベンゾフェノン−1、ベンゾフェノン−2、ベンゾフェノン−6、ベンゾフェノン−12、イソプロピルジベンゾイルメタン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ゾトクリレン、または酸化亜鉛)を、局所塗布される化合物として使用することができる。他の日焼け防止効果のある化合物は、引用により本明細書中に組み入れられるCTFA Handbook, 86および87頁に列挙されている。
【0063】
同様に、局所塗布される薬剤(例えば、抗真菌性化合物、抗菌性化合物、抗炎症性化合物、局所麻酔剤、皮膚発疹、皮膚疾患および皮膚炎用の医薬品、ならびに、痒みを抑えるおよび刺激を減少させる化合物)を、本発明の組成物において有効成分として使用することができる。例えば、鎮痛薬(例えば、ベンゾカイン、塩酸ジクロニン、アロエベラなど);麻酔剤(例えば、ピクリン酸ブタンベン、塩酸リドカイン、キシロカインなど);抗菌剤および防腐剤(例えば、ポビドンヨード、硫酸ポリミキシンb−バシトラシン、亜鉛−硫酸ネオマイシン−ヒドロコルチゾン、クロラムフェニコール、エチル塩化ベンゼトニウム、エリスロマイシンなど);抗寄生虫剤(例えば、リンダン);原則として、全ての皮膚科用薬(例えば、ニキビ用の薬(例えば、過酸化ベンゾイル、エリスロマイシンベンゾイルペルオキシド、リン酸クリンダマイシン、5,7−ジクロロ−8−ヒドロキシキノリンなど);抗炎症剤(例えば、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾンなど);火傷を緩和する軟膏(例えば、o−アミノ−p−トルエンスルホンアミドモノアセテートなど);色素除去剤(例えば、モノベンゾン);皮膚炎を緩和する薬剤(例えば、活性のあるステロイドアムシノニド、ジフロラゾンジアセテート、ヒドロコルチゾンなど);オムツかぶれを緩和する薬剤(例えば、塩化メチルベンゼトニウムなど);皮膚軟化剤および保湿剤(例えば、ミネラルオイル、PEG-4ジラウレート、ラノリンオイル、ワセリン、ミネラルワックスなど);殺菌剤(例えば、硝酸ブトコウアゾール、ハロプロギン、クロトリマゾールなど);ヘルペスの処置薬(例えば、O−[(2−ヒドロキシメチル)−メチル]グアニン);掻痒のための医薬品(例えば、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ミリスチン酸イソプロピルMSDなど)、乾癬、脂漏症、および疥癬虫を殺すための薬剤(例えば、アントラリン、メトキサレン、コールタールなど);ステロイド(例えば、2−(アセチルオキシ)−9−フルオロ−1',2',3',4'−テトラヒドロ−11−ヒドロキシプレグナ−1,4−ジエノ−[16、17−b]ナフタレン−3,20−ジオン、および21−クロロ−9−フルオロ−1',2',3',4'−テトラヒドロ−11b−ヒドロキシプレグナ−1,4−ジエノ−[16、17−b]ナフタレン−3,20−ジオン)である。任意の他の局所塗布できる医薬品(例えば、皮膚保護剤(例えば、アラントイン)およびニキビ用の薬(例えば、サリチル酸)もまた、その意図される機能を行うために十分な量で本発明の組成物の中に組み込ませることができる。他の局所塗布される化合物は、引用により本明細書中に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences, 第17版., Mack Publishing Co., Easton, PA (1985), 773-791頁、および1054-1058頁(本明細書中以後、Remington's)に列挙されている。
【0064】
局所的に活性である化合物はまた、植物抽出物または天然の油でもあり得る。多数の植物抽出物が、Lipo Chemicals, Inc. Paterson, New Jerseyから市販されている。限定ではない植物抽出物は、アルファルファ、アロエ、アマラキの実、アンゼリカの根、アニスの種子、リンゴ、アプリコット、アーティチョークの葉、アスパラガスの根、バナナ、メギ、オオムギの芽、蜜花粉、ビートの葉、コケモモの実、カバノキの葉、ニガウリ、クロフサスグリの葉、黒コショウ、クログルミ、ブルーベリー、ブラックベリー、ゴボウ、ニンジン、唐辛子、セロリの種子、サクランボ、チークウッド、コーラの木の実、トウモロコシの毛、クランベリー、タンポポの根、アメリカ・ニワトコの実、ユーカリの葉、亜麻油粉末、ショウガの根、イチョウの葉、朝鮮人参の根、アキノキリンソウ、ヒドラスチス、ブドウ、グレープフルーツ、グアバ、ハイビスカス、ジュニパー、キウィ、クズ、レモン、カンゾウの根、ライム、麦芽、マリーゴールド、ミルラ、オリーブの葉、オレンジの実、オレンジの皮、オレガノ、パパイヤの実、パパイヤの葉、パッションフルーツ、桃、西洋ナシ、松樹皮、プラム、ザクロの実、スモモ、ラズベリー、ダイオウの根、ローズマリーの葉、セージの葉、オランダハッカの葉、セントジョーンズワート、イチゴ、スイートクローバ、タンジェリン、バイオレットハーブ、オランダガラシ、スイカ、セイヨウシロヤナギの皮、ウィンターグリーンの葉、マンサクの皮、ヨヒンベ、およびユッカの根から得られる抽出物である。天然の油の例は、ぬか油である。
【0065】
本発明の組成物は、1つ以上のヒドロキシ基を有する有機化合物、シリコーン溶液、またはそれらの混合物(例えば、モノC1-4アルキルエーテル)の中にHCAを溶解させることによって調製される。本発明の組成物は、化粧品、皮膚科用の組成物、医薬品組成物、および他のそのような組成物に伝統的に含まれている他の成分と混合することができる。これらの成分としては、色素、香料、保存剤、抗酸化剤、粘着除去剤、および同様のタイプの化合物が挙げられるが、これらに限定はされない。複数の成分が、それらの意図される機能を行うために十分な量で組成物の中に含まれる。
【0066】
以下のさらなる成分は、通常、モノC1-4アルキルエーテル中のHCAの溶液と組み合わせられて、本発明の組成物に含まれる。これらの成分および任意の他の成分のそれぞれは、過度の色素沈着を処置することに関するHCAの効力に悪影響を与えることなく、その意図される機能を行うために十分な量で存在する。
【0067】
例えば、本発明の組成物には界面活性剤が含まれ得る。界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、または、界面活性剤の相溶性混合物であり得る。界面活性剤はまた、両性または酸・塩基の両方の性質を持つ界面活性剤でもあり得、これは、組成物のpHに応じて陰イオン性の特性または陽イオン性の特性を有する。
【0068】
本発明の組成物にはまた、ヒドロトロープも含まれ得る。ヒドロトロープは、他の化合物の水溶性を高める能力を有している化合物である。ヒドロトロープの具体的な例としては、ナトリウムクメンスルホネート、アンモニウムクメンスルホネート、アンモニウムキシレンスルホネート、カリウムトルエンスルホネート、ナトリウムトルエンスルホネート、ナトリウムキシレンスルホネート、トルエンスルホン酸、およびキシレンスルホン酸が挙げられるが、これらに限定はされない。他の有用なヒドロトロープとしては、ナトリウムポリナフタレンスルホネート、ナトリウムポリスチレンスルホネート、ナトリウムメチルナフタレンスルホネート、ナトリウムカンファースルホネート、およびコハク酸2ナトリウムが挙げられる。
【0069】
本発明の組成物にはまた、さらに別の有機溶媒も含まれる場合がある。この溶媒は、1個から6個、通常は、1個から3個のヒドロキシル基を含む水溶性の有機化合物であり得、例えば、アルコール、ジオール、トリオール、およびポリオールであり得る。溶媒の具体的な例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、n−プロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、へキシレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、PEG-4、1,5−ペンタンジオール、同様のヒドロキシを含む化合物、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定はされない。溶媒はまた、水または非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシドまたはテトラヒドロフラン)でもあり得る。
【0070】
本発明の組成物には、増粘剤またはゲル化剤も含まれる場合がある。増粘剤またはゲル化剤は、例えば、水溶性であるか、またはコロイド状水溶液を生じるポリマーであり得る。したがって、増粘剤またはゲル化剤は、例えば、不飽和カルボン酸または不飽和エステルのポリマーまたはコポリマー、多糖誘導体、ガム、コロイド状ケイ酸塩、ポリエチレングリコール(PEG)およびそれらの誘導体、ポリビニルピロリドンおよびそれらの誘導体、ポリアクリルアミドおよびそれらの誘導体、ポリアクリロニトリル、親水性シリカゲル、あるいはそれらの混合物であり得る。
【0071】
具体的な増粘剤またはゲル化剤は、例えば、アクリル酸および/またはメタクリル酸ポリマーまたはコポリマー、ビニルカルボン酸ポリマー、ポリグリセリルアクリレートまたはメタクリレート、ポリアクリルアミド誘導体、セルロースまたはデンプン誘導体、キチン誘導体、アルギン酸塩、ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸、キサンタン、ゲラン、ラムサン、カラヤ、またはグアーガム、イナゴマメ粉、およびモンモリロナイト型のコロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウムであり得る。
【0072】
さらに別の増粘剤またはゲル化剤としては、登録商標CARBOPOL(登録商標)(Goodrich)として販売されているビニルカルボン酸ポリマー、アクリル酸/エチルアクリレートコポリマー、アクリル酸/ステアリルメタクリレートコポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロチルセルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルグアー、コロイド状ヘクトライト、ベントナイトなどが挙げられる。
【0073】
本発明の組成物に含まれる状況に応じた成分の他のクラスは、pH調整剤、キレート化剤、保存剤、緩衝化剤、気泡安定剤、乳白剤、および同様のクラスの当業者に公知の成分であり得るが、これらに限定はされない。具体的な状況に応じた成分としては、緩衝化剤としての無機リン酸塩、硫酸塩、およびカルボン酸塩;キレート化剤としてのEDTAおよびリン酸塩;ならびにpH調整剤としての酸および塩基が挙げられる。
【0074】
塩基性pH調整剤の限定ではない例は、アンモニア;モノ−、ジ−、およびトリ−アルキルアミン;モノ−、ジ−、およびトリ−アルカノールアミン;アルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物;ならびにそれらの混合物である。具体的な、塩基性pH調整剤の限定ではない例は、アンモニア;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウム;モノエタノールアミン;トリエチルアミン;イソプロパノールアミン;ジエタノールアミン;およびトリエタノールアミンである。酸性pH調整剤の例は、無機酸および有機カルボン酸である。無機酸の限定ではない例は、クエン酸、塩酸、硝酸、リン酸、および硫酸である。
【0075】
個人的なケアの分野においては、1つ以上のヒドロキシ基を有する有機化合物、シリコーン溶液、またはそれらの混合物中のHCAの溶液を、化粧用のベースコートおよびアンダーコート、バスカプセル、バスオイル、バスタブレット、バスソルト、浴用石鹸、頬紅、顔用、全身用、および手用のクリームおよびローション、化粧用ファンデーション、ホルモンクリームおよびローション、足および全身用化粧品、メイクアップベース、メイクアップ固定剤、メイクアップ製品、保湿クリームおよびローション、夜用クリームおよびローション、ペーストマスク、皮膚のケア用製品、皮膚用フレッシュナー、皮膚美白剤、トニック、包帯剤、およびしわ伸ばしクリームおよびローションとして設計された組成物に配合することができる。
【0076】
具体的には、本発明の、ヒドロキシを含む化合物の中のHCAの溶液は、ローション;メイクアップ調製物(例えば、メイクアップファンデーション);皮膚のケア用調製物(例えば、ハンドローション、バニシングクリーム;夜用クリーム;日焼け止め剤、ボディーローション、顔用クリーム、クレイマスク、保湿ローション、メイク落とし、ニキビ用の調製物、アンチエイジング調製物、および皮脂を抑えるもの);鎮痛剤およびコルチゾンステロイドクリームおよび調製物;昆虫忌避剤;ならびにフェイシャルマスクおよび滋養強壮剤に配合させることができる。組成物はまた、絆創膏、包帯、包帯剤、ガーゼのパッド、および同様のものに配合させることもできる。
【0077】
最終的な組成物は、溶液、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、ゲルの形態、または皮膚のケア用および皮膚科用のものにおいて公知の他の製品の形態であり得る。組成物の形態は、例えば、液体形態(例えば、溶液、ゲル化溶液、または水性媒体もしくは油性媒体の中の懸濁液);あるいは、半液体処方物(例えば、クリーム、ゲル、ペースト、軟膏、軟膏剤、リポソーム、エマルジョン、またはマイクロエマルジョン)であり得る。
【0078】
本発明の組成物は、所望される程度に皮膚の色を美白するために、必要に応じて皮膚に局所塗布される。通常、組成物は、1日に1回から4回皮膚に局所塗布される。しかし、本発明の組成物の塗布は、先に記載される、必要とされる、または所望されるよりも多い頻度、または少ない頻度である場合もある。本発明の組成物は、噴霧またはすり込むことによって皮膚に塗布される。好ましい投与経路は、皮膚との密接な接触を確実にするために穏やかにマッサージしながら皮膚にすり込むことである。
【0079】
本発明の組成物および方法によって提供される新規のおよび予想を上回る利点を明らかにするために、以下の試験を行った。最初に、p-HCAのインビボでの活性を確認するために、皮膚の中でのp-HCAの代謝を決定した。この試験では、ヒトの皮膚をPBS(リン酸
緩衝化生理食塩水)−エタノール溶液中でホモジナイズし、その後、p-HCAを溶解させた。溶液を37℃で8時間インキュベートした。試料を、0時間後、4時間後、および8時間後に採取し、遠心分離した。上清を濾過し、HPLCによって分析した。皮膚酵素との8時間のインキュベーション後でも、わずかに3.6%しかp-HCAは代謝されていなかったことが明らかになった。代謝されたp-HCAの量は、過度の色素沈着の効率的な処置に関しては有意ではないと考えられた。
【0080】
メラニンの形成を防ぐためにチロシナーゼを阻害するためには、HCAは作用部位の酵素(すなわち、メラニン細胞中に存在しているメラノソーム)と接触するための十分な程度に皮膚に浸透しなければならない。皮膚に効率よく浸透して標的部位に達するためには、HCAは可溶化させられなければならない。HCAは不溶性化合物であり、モノC1-4アルキルエーテル中にHCAを溶解させること、その後、得られた溶液を局所塗布用の処方物に配合させること、または稀釈物として、もしくは稀釈後に得られる組成物をそのまま使用することによって、メラノソームにまでのHCAの浸透を促進することが見出されている。
【0081】
種々の溶媒を、p-HCAを溶解させ、そして過度の色素沈着を効率よく処置するための局所塗布に適している組成物を提供する能力について試験した。p-HCAを種々の溶媒に添加し、その後、それ以上HCAが溶解しなくなるまで、35℃で2時間超音波処理した。試料を室温(25℃)に冷却し、15時間安定化させた。溶解しなかったp-HCAを沈殿させ、上清の液体を濾過し、そしてアッセイのためにHPLCの移動相で稀釈した。全ての試料を、移動相として水、メタノール、氷酢酸(55:45:1)を使用して、Hypersil ODS C18カラム上でHPLCによって分析した。流速は1ml/分であり、検出波長は270nmであった。この試験では、p-HCAが、25℃のエトキシジグリコールの中では19.7重量%の溶解度を有していることが明らかになった。
【0082】
別の実験では、エトキシジグリコール中のp-HCAの10%の溶液を最初に調製した。この溶液を、最終的な組成物において0.3重量%または0.1重量%のいずれかのp-HCAとなるように、十分な量の皮膚のケア用エマルジョンに添加した。比較例として、0.3重量%の固体のp-HCAを同じ皮膚のケア用エマルジョンに添加した。固体のp-HCAまたはp-HCA溶液を添加した皮膚のケア用エマルジョンは以下の式(w/w%)を有していた:
85.35 水
0.2 メチルパラベン
0.35 キサンタンガム
5.0 ブチレングリコール
4.0 ゴマ油
2.5 グリセリルステアレート
0.5 PEG-150ジステアレート
1.25 ネオペンチルグリコール
ジカプリレート/ジカプレート
0.6 乳化ワックス
0.25 イミダゾリジニル尿素
p-HCAを含む皮膚のケア用エマルジョンを、死体の皮膚に塗布した。p-HCAの皮膚への浸透を、Franz拡散セル、n=5(Permegear, Bethlehem, PA)を使用して実験した。レセプターには、30%のエタノールを含む等張性リン酸緩衝液を含め、そして600rpmで持続的に攪拌した。ヒトの死体の皮節の皮膚(NDRA, Philadelphia)の試料を細胞の上に置き、実験前に1時間、事前に水和させた。1mlの個々の処方物を、各セルのドナー区画に添加し、これをPARAFILM(登録商標)できっちりと覆い、試料(300μl)を、8時間にわたって1時間ごとにレセプター区画から採取し、そして300μlの新しいレセプター溶液で置き換えた。8時間後、皮膚を取り出し、そして小さい断片に切り刻んだ。皮膚の小片を、Kinematica POLYTRON(登録商標)ホモジナイザーを使用してホモジナイズし、そして遠心分離した。上清を、0.22μのフィルターを通して濾過し、そしてp-HCA含有量を定量した。
【0083】
全ての試料を、移動相として水、メタノール、氷酢酸(55:45:1)を使用し、1ml/分の流速、270nmでの検出で、Hypersil ODS C18カラム上でHPLCによって分析した。遅延時間および流速を浸透プロフィールから得、そして皮膚の薬剤含有量もまた記録した。
【0084】
【表1】

表1には、エトキシジグリコールが皮膚を介するp-HCAの浸透を促進したことがまとめられている。エトキシジグリコールの存在下では、死体の皮膚に浸透したp-HCAの割合は43%上昇し、皮膚の中に留まっていたp-HCAの割合は約50%上昇した。皮膚を介したp-HCAの流速もまた2倍になった。
【0085】
図1にはさらに、グラフの形態で表1の結果が説明される。図1は、このインビトロでの試験において、皮膚を介してメラニン細胞が存在している下部表皮にまで浸透したp-HCAの量(μg/cm2)が、固体として乳化させた組成物にp-HCAを添加したものとは反対に、p-HCAをモノC1-4アルキルエーテル中に最初に溶解させた場合には、実質的に多かったことを示している。図1および表1は、エトキシジグリコールが、皮膚への流速を107%増大させ、そして皮膚の中でのp-HCAの蓄積を93%増加させことを示している。
【0086】
さらに別のヒドロキシを含む化合物を、HCAを可溶化させ、そしてHCAが皮膚の表面に浸透してメラニン形成の部位にHCAが蓄積する能力について試験した。この試験では、化合物中でのHCAの溶解度を以下のように決定した。
【0087】
p−ヒドロキシ桂皮酸をヒドロキシを含む化合物に添加し、そして、35℃で2時間の超音波処理の後、それ以上p-HCAが溶解しなくなるまで超音波処理した。試験試料を室温に冷却し、その後、15時間安定化させた。p-HCAを沈殿させた後、上清を、0.2マイクロンのシリンジフィルターを通して濾過した。およそ0.08gのこの濾過した材料を、25mlの容量フラスコに計り取り、そしてHPLC移動相で容量まで稀釈した。2つの標準物をHPLCによって分析し、そして2つの試料を比較した。HPLCアッセイは、上記で議論したHPLCアッセイと同一であった。
【0088】
p-HCAが、wt%で、以下の溶解度を有していることが明らかになった:
ヒドロエタノール溶液/ゲル:
例えば、30%のヒドロエタノール溶液: 0.75%
エタノール: 14.8%
PEG-8: 5.4%
ペンチレングリコール: 1.75%;
ブチレングリコール: 2.25%;
グリセレス−26: 7%
シリコーン溶液DC 193:4.7
以下の処方を皮膚への浸透について試験した:
水 28.1%(重量で);
カルボポール 981(2%)17.0%;
エタノール SDA 40b-190 53.0%;
グリセリン 1.0%;
トリエタノールアミン 0.4%;
p−ヒドロキシ桂皮酸 0.5%。
【0089】
皮膚浸透性を決定するために使用した方法は、上記に開示したFranz拡散方法であった。試験結果は、上記の処方によって、皮膚を介して移動した量よりも4倍多い量のHCAが皮膚に蓄積したことを示した。これは、メラニンの形成の部位へのp-HCAの標的化された送達を示している。具体的には、皮膚の中で見られた16.3mcg/mlのp-HCAとは対照的に、3.9mcg/mlのp-HCAが皮膚のレセプター区画で見られ(すなわち、皮膚を介して浸透した)。
【0090】
本発明の1つの実施形態においては、エトキシジグリコール中の15(重量)%のp-HCA溶液を調製した。通常、このような溶液は、個人向けのケア用、化粧用、または皮膚科用の組成物に、約1重量%から約10重量%、好ましくは、約2重量%から約6重量%の量で取り込ませられて、約0.15重量%から約0.15重量%、好ましくは、0.3重量%から約0.9重量%のp-HCAを含む最終的な組成物が提供される。
【0091】
別の試験では、インビトロでチロシナーゼを阻害する、エトキシジグリコール中のp-HCA溶液の能力を決定した。この実験では、チロシナーゼ溶液と、試験組成物または対照のいずれかを、分光光度計のセルの中で混合し、セルを、UV−可視分光光度計に入れた。基質としてチロシンを添加し、吸光度を30分間記録した。阻害の割合(%)を阻害曲線の勾配から計算し、対照に対して正規化した。
【0092】
図2は、エトキシジグリコール中のp-HCAが、チロシナーゼを阻害することに関してコウジ酸よりも優れていることを示している。図2の棒グラフは、エトキシジグリコール中のp-HCAが、コウジ酸よりも約4倍から5倍大きくチロシナーゼを阻害することを具体的に示している。
【0093】
コウジ酸に対するエトキシジグリコール中のp-HCAの皮膚の美白効率もまた、臨床試験で試験した。この実験では、0.3重量%のp-HCAまたはコウジ酸を含むエマルジョンを、20人の大部分が女性である、30歳から50歳の間の年齢の被験体に使用した。試験組成物を、腹部に1日に2回(午前と午後)塗布した。試験は8週間行い、色度計の読み取り値を、ベースラインで、そして2週間後、4週間後、6週間後、および8週間後に得た。
【0094】
図3は、エトキシジグリコール中のp-HCAが、実験の2週目から5週目にはコウジ酸よりも有効であったこと(すなわち、より早く皮膚を美白する効果、4週間での60%の改善を含む)、および実験の6週目から8週目にはコウジ酸の有効性に匹敵することを示している。
【0095】
図4は、臨床試験で観察された皮膚の発赤の軽減を示すさらに別の試験の結果を示している。エトキシジグリコール中のp-HCAは、8週間の臨床試験の間を通じて発赤の軽減を示した。対照的に、コウジ酸は発赤を軽減することはなく、実際には、4週目と8週目に発赤を誘導した。
【0096】
明らかに、本明細書中で先に示した本発明の多くの改良およびバリエーションを、その精神および範囲を逸脱することなく行うことができる。したがって、添付の特許請求の範囲によって示されるようなそのような制限だけが、課されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の組成物について、および対照組成物についての、時間に対する皮膚に浸透したp−ヒドロキシ桂皮酸(p-HCA)の量(μg/cm)のプロットである。
【図2】チロシナーゼを阻害することについての、種々の濃度でのp-HCAとコウジ酸の能力を比較する棒グラフである。
【図3】皮膚の美白効率に関する臨床試験において、コウジ酸に対してエトキシジグリコール中のp-HCAの能力を比較した、時間に対する色度計の読み取り値のプロットである。
【図4】皮膚の発赤の軽減に関する臨床試験において、コウジ酸に対してエトキシジグリコール中のp-HCAの能力を比較した、時間に対する色度計の読み取り値のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のヒドロキシ基を有する化合物、シリコーン溶液、またはそれらの混合物の中に溶解させられた、約0.01重量%から約30重量%のヒドロキシ桂皮酸、メトキシ桂皮酸、またはそれらの混合物を含む、組成物。
【請求項2】
約0.1重量%から約20重量%のヒドロキシ桂皮酸、メトキシ桂皮酸、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約0.5重量%から約15重量%のヒドロキシ桂皮酸、メトキシ桂皮酸、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシ桂皮酸またはメトキシ桂皮酸が、2−ヒドロキシ桂皮酸、3−ヒドロキシ桂皮酸、4−ヒドロキシ桂皮酸、2,3−ジヒドロキシ桂皮酸、2,4−ジヒドロキシ桂皮酸、3,4−ジヒドロキシ桂皮酸、2−メトキシ桂皮酸、3−メトキシ桂皮酸、4−メトキシ桂皮酸、3−ヒドロキシ−4−メトキシ桂皮酸、3−メトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒドロキシ桂皮酸が、2−ヒドロキシ桂皮酸、3−ヒドロキシ桂皮酸、4−ヒドロキシ桂皮酸、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒドロキシ桂皮酸に4−ヒドロキシ桂皮酸が含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記1つ以上のヒドロキシ基を有する化合物に、エチレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテル、プロピレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテル、またはそれらの混合物が含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記エチレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテルまたはプロピレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテルが以下の一般式:
【化1】


または
【化2】


(式中、R1はC1-4アルキルであり、R2は水素またはメチルであり、そして、nは2または3である)を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記エチレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテルまたはプロピレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテルが、エトキシジグリコール、メトキシジグリコール、ブトキシジグリコール、メトキシトリグリコール、エトキシトリグリコール、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記エチレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテルまたはプロピレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテルにエトキシジグリコールが含まれる、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記1つ以上のヒドロキシ基を有する化合物が、C2-4アルコール、C3-5グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリオール、ポリオール、エトキシ化グリセリン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記1つ以上のヒドロキシ基を有する化合物が、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセレス−7からグリセレス−31、PEG-4からPEG-800、PPG-3からPPG-69、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブチルアルコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、へキシレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記1つ以上のヒドロキシ基を有する化合物に非イオン性界面活性剤が含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記非イオン性界面活性剤が、エトキシ化オクチルフェノール、エトキシ化ノニルフェノール、エトキシ化直鎖C8-22アルコール、プロポキシ化直鎖C8-22アルコール、エトキシ化およびプロポキシ化直鎖C8-22アルコール、ソルビトールのポリエチレングリコールエーテル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックコポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記シリコーン溶液に、環状ポリジメチルシロキサン、直鎖のポリジメチルシロキサン、またはそれらの混合物が含まれている、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物を含む、皮膚のケア用処方物。
【請求項17】
溶液、エマルジョン、またはゲルの形態である、請求項16に記載の皮膚のケア用処方物。
【請求項18】
殺虫剤、麻薬(drug)、治療薬、消臭剤、皮膚用コンディショナー、抗酸化剤、昆虫忌避剤、反対刺激剤、ビタミン剤、植物抽出物、ステロイド、抗菌性化合物、抗真菌性化合物、抗炎症性化合物、局所麻酔剤、表皮脂質置換、日焼け止め剤、蛍光増白剤、皮膚炎または皮膚疾患用の医薬品、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される局所塗布される化合物がさらに含まれている、請求項16に記載の皮膚のケア用処方物。
【請求項19】
前記局所塗布される化合物が、ベンゾカイン、塩酸ジクロニン、アロエ、ピクリン酸ブタンベン、塩酸リドカイン、キシロカイン、ポビドンヨード、硫酸ポリミキシンb−バシトラシン、亜鉛−硫酸ネオマイシン−ヒドロコルチゾン、クロラムフェニコール、エチル−塩酸ベンゼトニウム、エリスロマイシン、リンダン、過酸化ベンゾイル、エリスロマイシンベンゾイルペルオキシド、リン酸クリンダマイシン、5,7−ジクロロ−8−ヒドロキシ−キノリン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、o−アミノ−p−トルエンスルホンアミドモノアセテート、モノベンゾン、アムシノニド、ジフロラゾンジアセテート、ヒドロコルチゾン、塩化メチルベンゼトニウム、PEG-4ジラウレート、ラノリン油、ワセリン、ミネラルワックス、硝酸ブトコウアゾール(butocouazole nitrate)、ハロプロギン、クロトリマゾール、O−[(2−ヒドロキシメチル)メチル]グアニン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ミリスチン酸イソプロピルMSD、アントラリン、メトキサレン、コールタール、2−(アセチルオキシ)−9−フルオロ−1',2',3',4'−テトラヒドロ−1−ヒドロキシプレグナ−1,4−ジエノ−[16、17−b]ナフタレン−3,20−ジオン、21−クロロ−9−フルオロ−1',2',3',4'−テトラヒドロ−11b−ヒドロキシプレグナ−1,4−ジエノ−[16z、17−b]ナフタレン−3,20−ジオン、アラントイン、サリチル酸、ミリスチン酸イソプロピル、アスコルビン酸、レチノール、サリチル酸、亜鉛ピリチオン、ベンゾフェノン−3、香料、グリコール酸、ヒアルロン酸、過酸化水素、タンパク質、酵素、トコフェロール、ブテイン、ヒドロキノン、コウジ酸、ホホバオイル、αまたはβヒドロキシ酸、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項18に記載の皮膚のケア用処方物。
【請求項20】
皮膚用エクスフォリアント(EXFOLIANT)、コウジ酸、レチノイン酸、ヒドロキノンまたはその誘導体、アスコルビン酸またはその誘導体、コーヒー酸またはそのエステル、ベンゾフラン、植物抽出物、真珠抽出物、ヒドロコルチゾン型ステロイド性抗炎症剤、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、ナプロキセン、およびフェナム酸誘導体からなる群より選択される非ステロイド性抗炎症剤、α−ビサボロール、β−グリシレチン酸、アラントイン、アロエ抽出物、ローズマリー酸、アズレンまたはその誘導体、アシアティコシド、セリコシド、ルスコゲニン、エスシン、エスコリン、ケルセチン、ルチン、およびベツリン酸またはその誘導体からなる群より選択される抗炎症剤、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、活性のある第2の皮膚の美白用化合物がさらに含まれている、請求項16に記載の皮膚のケア用処方物。
【請求項21】
皮膚を十分な量の請求項1に記載の組成物と接触させて皮膚の色を美白する工程が含まれている、哺乳動物の皮膚を処置する方法。
【請求項22】
前記哺乳動物の皮膚がヒトの皮膚である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ヒドロキシ桂皮酸またはメトキシ桂皮酸が皮膚の表面に浸透して表皮または真皮に達する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
皮膚に浸透してメラニン細胞に達する前記ヒドロキシ桂皮酸またはメトキシ桂皮酸の量が、皮膚への組成物の塗布と比較して約40%を上回り、前記ヒドロキシ桂皮酸またはメトキシ桂皮酸が固体として組成物に添加される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記哺乳動物の皮膚には過度に色素が沈着している、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記過度の色素沈着が、薬剤の使用、青色の肝斑、老人性肝斑、白斑、硬化療法後の有害な後遺症、炎症後の反応、外傷後の反応、妊娠、エストロプロゲステロン性避妊、過度の太陽への露出、光感作、病変の後の瘢痕形成、アジソン病、または固有の遺伝的プロフィールに関係している、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
過度に色素沈着した哺乳動物の皮膚を処置する方法であって、皮膚を十分な量の請求項1に記載の組成物を含む処方物と接触させて皮膚の色を美白する工程が含まれている、方法。
【請求項28】
哺乳動物の皮膚の過度の色素沈着を予防する方法であって、皮膚を十分な量の請求項1に記載の組成物と接触させて皮膚の過度の黒ずみを防ぐ工程が含まれている、方法。
【請求項29】
哺乳動物の皮膚の過度の色素沈着を予防する方法であって、皮膚を十分な量の請求項1に記載の組成物を含む処方物と接触させて皮膚の過度の黒ずみを防ぐ工程が含まれている、方法。
【請求項30】
哺乳動物の皮膚に浸透し、哺乳動物の皮膚の色を美白する高い能力を有している皮膚の美白用組成物を調製する方法であって、1つ以上のヒドロキシ基を有する化合物、シリコーン溶液、またはそれらの混合物の中に、約0.01重量%から約30重量%のヒドロキシ桂皮酸、メトキシ桂皮酸、またはそれらの混合物を溶解させて溶液を形成させる工程、その後、(a)前記溶液を皮膚のケア用処方物に添加する工程、または(b)皮膚のケア用処方物を前記溶液に添加する工程、または(c)前記溶液を皮膚のケア用処方物の成分と混合する工程のいずれかを行って、皮膚の美白用組成物を得る工程が含まれる、方法。
【請求項31】
前記1つ以上のヒドロキシ基を有する化合物に、エチレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテル、プロピレングリコールオリゴマーのモノC1-4アルキルエーテル、またはそれらの混合物が含まれる、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−526963(P2008−526963A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551269(P2007−551269)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/046175
【国際公開番号】WO2006/078399
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(503440071)リポ ケミカルズ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】